説明

音響構造体および調音装置

【課題】可搬性と収納性に優れた音響構造体を提供する。
【解決手段】音響構造体10は、4つの側面板12、14、13および15と、2つの底面板17および16とにより取り囲まれ、一方向に延在する中空の四角柱をなしている。音響構造体10は、側面板14および15を各々の折れ目xa1およびxa2において折り曲げ、かつ、底面部16および17を各々の折れ目ya1およびya2において折り曲げつつ、側面板12および13を互いに接近させ、全体として扁平な板状をなすように畳むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響空間における音響障害を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ホールや劇場などの壁に囲まれた音響空間では、平行対面する壁面間で音が繰り返し反射することによりブーミングやフラッターエコーなどの音響障害が発生する。特許文献1には、この種の音響障害の防止に好適な技術の開示がある。同文献に開示された音響構造体は、音響空間の内壁や天井などに設置して利用される。同文献に開示された音響構造体は、全体として平面をなすように並列配置された複数の角筒状のパイプを有している。これらのパイプは、同じ方向を向いた開口部を各々有している。そして、音響構造体は、各パイプの開口部を音響空間の中央に向けた状態で、音響空間の内壁や天井などに設置される。
【0003】
音響空間内において発生した音は、音響構造体の各パイプの開口部を介して各々の内部の空洞に入射する。各パイプの空洞に入射した音はそれらのパイプの共鳴周波数に応じた定在波を発生させる。各パイプの空洞内で発生した定在波は各パイプの開口部から音響空間に向けて放射される。そして、この定在波の吸音効果と散乱効果により、音響空間内における音響障害の発生が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−30744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の音響構造体の利用者は、自身が音響空間において演奏するときだけその音響空間に音響構造体を設置し、それ以外のときは音響構造体を別の場所に収納しておきたい場合がある。しかしながら、特許文献1に開示された音響構造体は体積が大きいため、設置場所から収納場所への搬送が容易でなく、また、その収納に大きなスペースを要するという問題があった。
本発明は、このような背景の下に案出されたものであり、可搬性と収納性に優れた音響構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、4つの側面と、前記4つの側面のうち対向する2つの側面の各辺間に各々介在する2つの底面とにより取り囲まれ、前記2つの底面間の方向に延在する中空の四角柱をなし、前記4つの側面のうちいずれか1つの側面には開口部を有し、開口部が設けられた側面とこの側面に対向する側面とを除いた2つの側面は、前記四角柱の延在方向に平行な折れ目を有し、前記2つの底面は、前記折れ目と同じ一つの平面をなす折れ目を各々有し、前記2つの側面と前記2つの底面を各々の折り目において折り曲げることにより前記開口部が設けられた側面とこの側面に対向する側面とを互いに近接させて畳める構成としたことを特徴とする音響構造体を提供する。
本発明によると、音響構造体を折れ目に沿って折り曲げることができるので、各々を板状に折り曲げた複数の音響構造体を重ねて搬送したり、狭いスペースに重ねて収納したりすることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態である音響構造体の斜視図および上面図である。
【図2】図1(A)の切断線A−Aで音響構造体を切断したときの断面図である。
【図3】同音響構造体の側面板と直交する入射方向から閉管の共鳴周波数fan,fbnを含む周波数帯域の入射波が側面板に入射したときの反射波の挙動を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態である調音装置の斜視図である。
【図5】本発明の第3実施形態である調音装置の斜視図である。
【図6】同調音装置の音響構造体の右側面図である。
【図7】本発明の他の実施形態である調音装置の音響構造体の右側面図である。
【図8】本発明の他の実施形態である調音装置の音響構造体の右側面図である。
【図9】本発明の他の実施形態である調音装置の音響構造体の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1(A)および(B)は、この発明の第1実施形態である音響構造体10の構成を示す斜視図である。図1(A)に示すように、音響構造体10は、4つの側面板12、14、13および15と、2つの底面板16よび17とにより取り囲まれ、底面板16及び17間の方向に延在する中空の四角柱をなしている。ここで、4つの側面板12、14、13および15のうち側面板12は、開口部11を有している。
【0009】
そして、側面板12、14、13および15のうち開口部11を有する側面板12とこれに対向する側面板13とを除いた側面板14および15は、四角柱の延在方向に平行な折れ目xa1およびxa2を有している。また、側面板14と側面板15とは互いに対向している。さらに、底面板16および17は、この側面板14および15の各折れ目xa1およびxa2と同じ一つの平面をなす折れ目ya1およびya2を各々有している。
【0010】
音響構造体10は、図1(B)に示すように、側面板14および15を各々の折れ目xa1およびxa2において折り曲げ、かつ、底面板16および17を各々の折れ目ya1およびya2において折り曲げつつ、側面板12および13を互いに接近させ、全体として扁平な板状をなすように畳むことができる。図1(C)は、この扁平な板状に畳まれた音響構造体10を側面板12側から見た平面図である。
【0011】
また、底面板16および17の各々と側面板14および15との各間にはフィルム20、21、22および23が各々介在している。側面板14および15並びに底面板16および17が各々の折り目において折れ曲がり、底面16および17と側面板14および15の間の距離が変化したときに、その距離の変化に合わせてフィルム20、21、22および23が変形する。
【0012】
側面板12、14、13および15並びに底面板16および17は、音を反射する素材であることが求められる。一方、本実施形態による音響構造体10は、図1(C)に示すように折り畳んだり、図1(A)に示すように折り畳んでいない状態に戻せるものでなくてはならない。従って、音響構造体10において、稜線を境界として隣り合った各板(例えば側面板12および14)の互いの間の角度が自在に変化し得るものでなければならない。
【0013】
また、側面板14および15は、各々の折れ目xa1およびxa2において折れ曲げることができ、底面板16および17は、各々の折れ目ya1およびya2において折れ曲げることができなければならない。このような板表面における音の反射性を実現しつつ板間の自在な角度調整および折れ目における折り曲げを可能にするための構成としては、各種のものが考えられるが、例えば次のような構成を採用してもよい。すなわち、自在に折り曲げることが可能で気密性のある素材(例えば、伸縮性のある膜)により構成された四角柱の殻体の上に、稜線および折れ目となる領域を避けて、アクリル樹脂等の剛性率の高い材質の反射性の板材を貼り付けた構成である。
【0014】
以上が、音響構造体10の構成の詳細である。利用者は、図1(A)に示す状態とした音響構造体10の開口部11を音響空間の中央に向け、その側面板13を音響空間内の壁や天井に固定する。このようにして音響空間内に備え付けられた音響構造体10は、吸音効果及び散乱効果を発生させ、音響空間から音響構造体10に向かって伝搬される音波の音響エネルギーを散逸させる。音響構造体10による吸音効果及び散乱効果の発生の原理は次の通りである。
【0015】
図2は、図1(A)の切断線A−Aで音響構造体10を切断したときの断面図である。図2に示すように、音響構造体10における開口部11の奥の空洞には、開口部11を開口端とし空洞の左側の端部を閉口端とする音響管25と、開口部11を開口端とし空洞の右側の端部を閉口端とする音響管26とが形成されているとみなすことができる。音響空間から開口部11を介して空洞内に音波が入射すると、空洞内では、音響管25の開口端(開口部11)から閉口端(空洞の左側の端部)に向かう進行波と、音響管26の開口端(開口部11)から閉口端(空洞の右側の端部)に向かう進行波とが発生する。そして、前者の進行波は、音響管25の閉口端において反射され、その反射波が開口部11へ戻る。また、後者の進行波は、音響管26の閉口端において反射され、その反射波が開口部11へ戻る。
【0016】
そして、音響管25では、下記式(1)に示す共鳴周波数fa(n=1、2、…)において共鳴が発生し、音響管25内において進行波と反射波とを合成した音波は、音響管25の閉口端に粒子速度の節を有し、開口端に粒子速度の腹を有する定在波となる。また、音響管26では、下記式(2)に示す共鳴周波数fb(n=1、2、…)において共鳴が発生し、音響管26内において進行波と反射波とを合成した音波は、音響管26の閉口端に粒子速度の節を有し、開口端に粒子速度の腹を有する定在波となる。なお、下記式(1)および(2)において、Laは音響管25の延在方向の長さ(空洞の左側の端部から開口部11までの長さ)、Lbは音響管26の延在方向の長さ(空洞の右側の端部から開口部11までの長さ)、cは音波の伝搬速度、nは1以上の整数である。
fa=(2n−1)・(c/(4・La)) (n=1,2…)…(1)
fb=(2n−1)・(c/(4・Lb)) (n=1,2…)…(2)
【0017】
ここで、音響空間から開口部11および側面板12における開口部11の近傍に入射する音波のうち共鳴周波数faの成分に着目すると、音響管25の閉口端において反射されて開口部11から音響空間へと放射される音波は、音響空間から開口部11に入射する音波に対して逆相の音波となる。一方、側面板12における開口部11の近傍では、音響空間からの入射波が位相回転を伴うことなく反射される。
【0018】
よって、図3に示すように、共鳴周波数fa(n=1、2、…)の成分を含む音波が開口部11を介して空洞に入射した場合、開口部11から見て入射方向(図3の吸音領域)に対しては、音響管25から開口部11を介して放射される音波と側面板12における開口部11の近傍の各点から反射される音波が逆相となって互いの位相が干渉し合い、吸音効果が発生する。また、開口部11からの音波と側面板12からの反射波とが互いに隣接する散乱領域では、開口部11からの音波と側面板12からの反射波の位相が不連続となる。このような位相差のある波が隣接することにより、散乱領域付近では、位相の不連続を解消しようとする気体分子の流れが発生する。この結果、散乱領域付近では、入射方向に対する鏡面反射方向以外の方向への音響エネルギーの流れが発生し、散乱効果が発生する。同様に、共鳴周波数fb(n=1、2、…)の成分を含む音波が開口部11を介して空洞に入射した場合、開口部11への入射方向に鏡面反射する方向(図3の吸音領域)に対しては、吸音効果が発生する。また、散乱領域付近では、散乱効果が発生する。
【0019】
また、共鳴周波数faおよびfbの各々の近傍の周波数帯域においては、共鳴周波数faまたはfbからずれていたとしても、周波数がある程度近ければ、開口部11から音響空間に放射される音波の位相と側面板12から音響空間に放射される反射波の位相とが逆相に近い関係になる。このため、共鳴周波数faおよびfbの各々の近傍の周波数帯域では、共鳴周波数faまたはfbに対する周波数の近さに応じた程度の吸音効果および散乱効果が発生する。
【0020】
以上が、吸音効果および散乱効果の発生の原理である。本実施形態では、音響構造体10の側面板14および15を各々の折れ目xa1およびxa2において折り曲げ、かつ、底面部16および17を各々の折れ目ya1およびya2において折り曲げつつ、側面板12および13を互いに接近させ、全体として扁平な板状をなすように畳むことができる。よって、各々を扁平に折り曲げた複数の音響構造体10を積み重ねて運搬したり、それらを狭小なスペースに纏めて収納することが容易になる。これにより、運搬、収納、流通、廃棄等における省スペース化とコストの負担の軽減とが実現される。また、この音響構造体10では、底面板16および17の各々と側面板14および15との各間に伸縮自在なフィルム20、21、22および23を各々介在させている。よって、折り畳んでいない状態(図1(A))にしたときに、互いに接触する各面16,17,14,15の間に充分な気密性を持たせることができる。これにより、開口部11以外の部位において密閉された閉管25及び26が形成される。従って、大きな吸音効果及び散乱効果を得ることができる。
【0021】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態である調音装置30の構成を示す斜視図である。この調音装置30は、3つの音響構造体10−1,10−2,10−3を各々の延在方向を平行にして並列化し、隣り合ったものの折れ目xa1及びxa2同士を連結させたものである。より具体的に説明すると、この調音装置30では、音響構造体10−1の折れ目xa1と音響構造体10−2の折れ目xa2とがヒンジ31,32により連結されており、音響構造体10−2の折れ目xa1と音響構造体10−3の折れ目xa2とがヒンジ33,34により連結されている。
【0022】
そして、この調音装置30では、音響構造体10−1の側面板12−1における開口部11−1は一方の底面板16−1から距離L1Aだけ離れた位置に設けられており、音響構造体10−2の側面板12−2における開口部11−2は底面16−1と同じ側の底面板16−2から距離L2A(L2A≠L1A)だけ離れた位置に設けられており、音響構造体10−3の側面板12−3における開口部11−3は底面16−1と同じ側の底面板16−3から距離L3A(L3A≠L1A≠L2A)だけ離れた位置に設けられている。
【0023】
この調音装置30では、音響構造体10−1,10−2,10−3をそれぞれ連結した状態のまま板状に折り畳んだり元に戻したりすることができる。また、この調音装置30では、音響構造体10−1,10−2,10−3の各底面板16−1,16−2,16−3から開口部11−1,11−2,11−3までの距離L1A,L2A,L3Aがそれぞれ異なる。よって、音響構造体10−1,10−2,10−3の各々の内部に形成される閉管の共振周波数は異なる。従って、第1実施形態の音響構造体10よりも広い周波数帯域において吸音効果や散乱効果を奏することができる。
【0024】
<第3実施形態>
図5は、本発明の第3実施形態である調音装置30Aの構成を示す斜視図である。この調音装置30Aは、音響構造体50と1対のキャップ80L,80Rまたは81L,81Rとを有する。図5に示すように、調音装置30Aの音響構造体50は、4つの側面板54、55、56および57により囲まれ、一方向に延在する中空の四角柱をなしている。4つの側面板54、55、56および57のうちの側面板54は、音響構造体10−1,10−2,10−3(図4)の側面板12−1,12−2,12−3を繋げて一枚板としたものである。側面板54と対向する側面板55の寸法は、側面板54の寸法と同じである。側面板56と側面板57の間には、両板56および57と側面板54および55とに囲まれた四角柱内を3つの中空の四角柱に仕切る仕切板58,59が配されている。そして、この音響構造体50では、側面板54および55とそれら以外の4つの板56,57,58,59とが、各々の接合部位が折れ目xc1,xc2,xc3,xc4,xc5,xc6,xc7,xc8となるように接合されている。接合部位が折れ目となるような接合の態様としては、種々のものが考えられる。たとえば、側面板56および57と仕切板58および59の各々の端部を接合部561,562,571,572,581,582,591,592とし、接合部561,562,571,572,581,582,591,592を折り曲げて側面板54および55の面に接合するとよい。
【0025】
より詳細に説明すると、図6(A)の右側面図に示すように、側面板56の接合部561,562は内側に折れ曲がり、折れ曲がった接合部561,562は側面板54,55の内側の面における一方の端の近傍に接合されている。同様に、側面板57の接合部571,572は内側に折れ曲がり、折れ曲がった接合部571,572は側面板54,55の内側の面における他方の端の近傍に接合されている。
【0026】
また、側面板58の接合部581,582は相反する方向に折れ曲がり、折れ曲がった接合部581,582が側面板54,55の内側の面における一方の端から距離dだけ内側の部位に接合されている。この距離dは、側面板56と側面板57の間の距離の1/3の距離である。側面板59の接合部591,592は相反する方向に折れ曲がり、折れ曲がった接合部591,592が側面板54,55の内側の面における他方の端から距離dだけ内側に接合されている。
【0027】
キャップ80L,80Rの各々は、長方形状をなす嵌合面板83の4辺から幅薄の縁板84を起立させたものである。キャップ81L,81Rの各々は、平行四辺形をなす嵌合面板85の4辺から幅薄の縁板86を起立させたものである。キャップ80L,80Rの各々の嵌合面板83は2組の対角の各々が90度であるのに対し、キャップ81L,81Rの各々の嵌合面板85は1つの対角の角度が120度でもう1つの対角の角度が60度である。
【0028】
音響構造体50における側面板54,55,56,57と仕切板58,59における延在方向の両側の端部は、それらの板54,55,56,57,58,59に囲まれた四角柱の内側に連通する開放面60,61,62を構成している。利用者は、音響空間において音響構造体50を利用するときは、その延在方向における両側の開放面60,61,62にキャップ80L,80Rまたはキャップ81L,81Rを固定する。音響構造体50の開放面60,61,62にキャップ80L,80Rが固定されると、この音響構造体50の開放面60,61,62がキャップ80L,80Rの嵌合面板83によって塞がれ、板54,55,56,57,58,59とキャップ80L,80Rの嵌合面板83とにより取り囲まれた音響管が音響構造体50内に形成される。また、音響構造体50の開放面60,61,62にキャップ81L,81Rが固定されると、この音響構造体50の開放面60,61,62がキャップ81L,81Rの嵌合面板85によって塞がれ、板54,55,56,57,58,59とキャップ81L,81Rの嵌合面板85とにより取り囲まれた音響管が音響構造体50内に形成される。音響構造体50の開放面60,61,62にキャップ80L,80Rが固定された場合、図6(A)の右側面図に示すように、音響構造体50は側面板54,55と側面板56,57および仕切板58,59とが直交した姿勢となる。また、音響構造体50の開放面60,61,62にキャップ81L,81Rが固定された場合、図6(B)の右側面図に示すように、音響構造体50は側面板54,55に対して側面板56,57および仕切板58,59が傾斜した姿勢となる。
【0029】
また、利用者は、音響空間内における音響構造体50の利用を終えたときは、開放面60,61,62に固定されているキャップ80L,80Rまたは81L,81Rを外す。その後、図6(C)の右側面図に示すように、音響構造体50を、折れ目xc1,xc2,xc3,xc4,xc5,xc6,xc7,xc8において折り曲げつつ、側面板54および55を近接させ、全体として扁平な板状をなすように畳むことができる。
【0030】
この調音装置30Aでは、音響構造体50の開放面60,61,62に固定するキャップ80,81の種類を変えることにより、側面板54,55と側面板56,57および仕切板58,59とが直交した姿勢と側面板54,55に対して側面板56,57および仕切板58,59が傾斜した姿勢の2つの姿勢で当該調音装置30Aを利用することができる。よって、側面板54と側面板55の幅厚を薄くしないと入らないような狭い場所に設置するときはキャップ81L,81Rを固定し、そうでない場合はキャップ80L,80Rを固定する、というように、音響空間内における調音装置30Aの設置場所の幅厚にあった姿勢で利用することができる。
【0031】
また、音響構造体50内の空間の断面積の大きさはキャップ80L,80Rを固定した場合とキャップ81L,81Rを固定した場合とで異なるため、吸音効果及び散乱効果の大きさの程度はキャップ80L,80Rを固定した場合とキャップ81L,81Rを固定した場合とで異なる。よって、本実施形態では、使用するキャップ80L,80R及び81L,81Rの種類を変えることにより、音響効果及び散乱効果の大きさの程度を変えることができる。
【0032】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態があり得る。例えば、以下の通りである。
(1)上記第1実施形態では、音響構造体10は直方体状をなしていた。しかし、音響構造体10を三角柱状としてもよい。この場合において、軸を包囲する3つの側面板のうち1つの側面板にその延在方向と平行な折れ目を設け、折れ目を設けた側面板をその折れ目において山折りまたは谷折りに折り曲げられるように構成するとよい。
【0033】
(2)上記第2実施形態では、調音装置30をなす音響構造体10−1の折れ目xa1と音響構造体10−2の折れ目xa2がヒンジ31,32により連結され、音響構造体10−2の折れ目xa1と音響構造体10−3の折れ目xa2がヒンジ33,34により連結されていた。しかし、各々の折れ目xa1と折れ目xa2を突き合わせ、その状態で付き合わせ箇所に接着剤を塗布した布を貼付するなどしてもよい。
【0034】
(3)上記第3実施形態において、調音装置30Aの音響構造体50における側面板56,57および仕切板58,59自体に折れ目xd1,xd2,xd3,xd4を設けてもよい。この実施形態では、図7(A)の側面図に示すように、音響空間内において調音装置30Aを利用するときは、側面板56,57および仕切板58,59を折り曲げることなく起立させておく。そして、図7(B)の側面図に示すように、音響空間内における調音装置30Aの利用を終えたときは、側面板56,57および仕切板58,59の各々を折れ目xd1,xd2,xd3,xd4においてくの字に折り曲げて扁平な板状にする。
【0035】
(4)上記第1および第2実施形態において、底面板16,17およびフィルム20,21,22,23を無くし、音響構造体10,10−1,10−2,10−3内に開管が形成されるような構成としてもよい。
【0036】
(5)上記第2実施形態では、3つの音響構造体10−1,10−2,10−3における隣り合った折れ目xa1及びxa2同士がそれぞれヒンジ31及び32、ヒンジ33及び34により連結されていた。しかし、隣り合った音響構造体10−1,10−2,10−3における折れ目xa1及びxa2以外の部分を連結してもよい。図8は、この実施形態の第1の例である調音装置30Bの右側面図である。図9は、この実施形態の第2の例である調音装置30Cの右側面図である。
【0037】
図8に示すように、調音装置30Bは、4つの音響構造体60−1,60−2,60−3、60−4からなる。そして、音響構造体60−1,60−2,60−3、60−4の各々は、4つの側面板61,62,63,64により取り囲まれ、一方向に延在する中空の四角柱状をなしている。4つの側面板61,62,63,64のうち側面板61には開口部(不図示)が設けられている。また、各音響構造体60−1,60−2,60−3、60−4では、互いに向かい合う側面板61および62と側面板63および64とが、各々の接合部位が折れ目となるように接合されている。この調音装置30Bでは、音響構造体60−1における側面板61と側面板64の接合部位である折れ目と音響構造体60−2における側面板62と側面板63の接合部位である折れ目とがヒンジ70により連結されている。また、音響構造体60−2における側面板61と側面板64の接合部位である折れ目と音響構造体60−3における側面板62と側面板63の接合部位である折れ目とがヒンジ71により連結されている。また、音響構造体60−3における側面板61と側面板64の接合部位である折れ目と音響構造体60−4における側面板62と側面板63の接合部位である折れ目とがヒンジ72により連結されている。この調音装置30Bは、音響構造体60−1,60−2,60−3、60−4を、図8に示す矢印方向に折り曲げることにより、全体として扁平な板状をなすように畳むことができる。
【0038】
図9に示すように、調音装置30Cは、4つの音響構造体80−1,80−2,80−3、80−4からなる。そして、音響構造体80−1,80−2,80−3、80−4の各々は、4つの側面板81,82,83,84により取り囲まれ、一方向に延在する中空の四角柱状をなしている。4つの側面板81,82,83,84のうち側面板81には開口部(不図示)が設けられている。また、各音響構造体80−1,80−2,80−3、80−4では、互いに向かい合う側面板81および83と側面板82および84とが、各々の接合部位が折れ目となるように接合されている。この調音装置30Cでは、音響構造体80−1における側面板84と側面板82の接合部位である折れ目と音響構造体80−2における側面板82と側面板83の接合部位である折れ目とがヒンジ90により連結されている。また、音響構造体80−2における側面板82と側面板84の接合部位である折れ目と音響構造体80−3における側面板82と側面板83の接合部位である折れ目とがヒンジ91により連結されている。また、音響構造体80−3における側面板82と側面板84の接合部位である折れ目と音響構造体80−4における側面板82と側面板84の接合部位である折れ目とがヒンジ92により連結されている。この調音装置30Cは、音響構造体80−1,80−2,80−3、80−4を、図9に示す矢印方向に折り曲げることにより、全体として扁平な板状をなすように畳むことができる。
【0039】
(6)上記第1実施形態では、側面板14及び15に折れ目xa1及びxa2が設けられていた。しかし、開口部11を有する側面板12とこれに対向する側面板13に折れ目を設けてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10,10−1,10−2,10−3…音響構造体、11,11−1,11−2,11−3…開口部、12,12−1,12−2,12−3,13,14,15,54,55,56,57…側面板、16,16−1,16−2,16−3,17…底面板、20,21,22,23…フィルム、59,60…仕切板、30,30A…調音装置、80,80A…キャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの側面と、前記4つの側面のうち対向する2つの側面の各辺間に各々介在する2つの底面とにより取り囲まれ、前記2つの底面間の方向に延在する中空の四角柱をなし、
前記4つの側面のうちいずれか1つの側面には開口部を有し、開口部が設けられた側面とこの側面に対向する側面とを除いた2つの側面は、前記四角柱の延在方向に平行な折れ目を有し、前記2つの底面は、前記折れ目と同じ一つの平面をなす折れ目を各々有し、
前記2つの側面と前記2つの底面を各々の折り目において折り曲げることにより前記開口部が設けられた側面とこの側面に対向する側面とを互いに近接させて畳める構成としたことを特徴とする音響構造体。
【請求項2】
4つの側面により取り囲まれ、一方向に延在する中空の四角柱をなし、
前記4つの側面のうちいずれか1つの側面には開口部を有し、開口部が設けられた側面とこの側面に対向する側面とを除いた2つの側面は、前記四角柱の延在方向に平行な折れ目を有し、
前記第2つの側面を各々の折れ目において折り曲げることにより前記開口部が設けられた側面とこの側面に対向する側面とを互いに接近させて畳める構成としたことを特徴とする音響構造体。
【請求項3】
前記四角柱の両端のうち少なくとも一方の端部は、前記四角柱の内側に連通する開放面となっており、前記開放面を塞ぐようにして当該開放面となっている方の端部に固定されるキャップを有することを特徴とする請求項1または2に記載の音響構造体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の音響構造体を複数有し、各音響構造体を各々の延在方向を平行にして並列化し、隣り合った音響構造体同士を連結させたことを特徴とする調音装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−242554(P2011−242554A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113673(P2010−113673)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】