説明

音響装置台

【課題】 ピアノ等の音響装置から発生した音波振動が床に直接伝わらないように該音響装置と床面との間を音響的に絶縁し得るのみならず、前記音波振動を吸収、制振しつつこれを有効に利用して該音響装置の音響特性を高めることができる音響装置台を提供する。
【解決手段】 床F面に載置されると共に表面でグランドピアノP底部を受ける木材ブロック1と、木材ブロック1裏面にそれと実質的に平行に埋設された金属板2と、木材ブロック1裏面に被覆された弾性シート3とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピアノやスピーカ付きアンプ等の音響装置を載置してそれらの音響特性を高め或いは変化させる音響装置台に関する。
【背景技術】
【0002】
ピアノ等の音響装置を床面上に直接設置すると、該音響装置から発生した音波振動が直接空気中に伝播される一方、床等に伝達されてそれらを振動させると共に二次的に空気中に伝播されるため両者が干渉し、それによって前記音響装置の音響特性が低下することになる。このような問題を解消するために、通常、前記アンプは、その使用に際して適宜のアンプ台上に載置され、それによってスピーカ本体からの音波振動が直接床に伝達されないようにしている。
【0003】
前記音響装置台としては、従来、例えば木製の矩形枠体や箱体等が適宜代用され、また専用の「グランマ(GRAMMA)」音響絶縁台(米国アウラレックス・アコースティック社製)等も市販され、これは、アンプ等を床から浮上させて共振を抑制するものである。
【0004】
一方、特開平10−304484号公報には、スピーカボックスと床との機械的振動伝達関係を切り離すことにより変調歪みの改善、床の振動低減を図るために、前記スピーカボックスと床との間にばね鋼等の吸振部材を介在させるようにしたインシュレータが開示されている。また、特開平11−194760号公報にも、床面上に置かれたスピーカに振動の自由度を与えることにより音質への悪影響や音波の振動波形の歪を減少させるために、床面とスピーカとの間に弾性変形可能なばね材製の荷重担持部材を配置するようにした楽器又はスピーカの支持具が開示されている。
【特許文献1】特開平10−304484号公報
【特許文献2】特開平11−194760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の前記音響装置台は、アンプ等の音響装置から発生した音波振動が床に直接伝わらないように該音響装置と床面との間をばね部材等の制振機構により音響的に絶縁し得るものではあるが、これらの音響装置台には、前記音波振動を吸収、制振しつつこれを有効に利用して該アンプの音響特性を高めようとする視点や着想が見られない。
【0006】
本発明の課題は、ピアノ等の音響装置から発生した音波振動が床に直接伝わらないように該音響装置と床面との間を音響的に絶縁し得るのみならず、前記音波振動を吸収、制振しつつこれを有効に利用して該音響装置の音響特性を高めることができる音響装置台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る音響装置台は、床面に載置されると共に表面で音響装置底部を受ける木材ブロックと、木材ブロック裏面にそれと実質的に平行に埋設された金属板と、木材ブロック裏面に被覆された弾性シートとからなるものである。
【0008】
前記音響装置台を構成する木材ブロックは、音響装置から発生した音波振動を適度に吸収するものであり、その表面が音波振動吸収性の塗料で被覆されていてもよい。前記木材ブロックの形状に特別の制限はなく、例えば円筒形や三角柱、四角柱その他の多角柱形であってもよい。
【0009】
また、前記木材ブロック裏面に埋設された金属板は、木材ブロック内を伝播してきた音波振動を制振するものである。前記金属板は、木材ブロック裏面に穿設された凹部内に、例えば圧入、接着、ねじ止め、ビス止め等の手段で埋設される。前記金属板の材質、形状、サイズ及び厚さ等に特別の制限はなく、所要の効果が得られるように適宜選択することができ、材質として例えば鉄板や鋼板等を選択することができ、また形状として例えば円形や三角形、四角形その他の多角形、さらにはそれを変形した形状を選択することができる。
【0010】
木材ブロック裏面に被覆された弾性シートは、床面上における木材ブロックの滑動を防止すると共に、音響装置から発生した音波振動が木材ブロックを介して床に直接伝わらないように該音響装置と床面との間を音響的に絶縁するものであり、例えばウレタンゴム等を使用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る音響装置台によれば、音響装置から発生した音波振動が床に直接伝わらないように該音響装置と床面との間を音響的に絶縁し得るのみならず、前記音波振動を吸収、制振しつつこれを有効に利用して該音響装置の音響特性を高めることができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
図1(A)は、本発明の第一実施例に係る音響装置台の平面図、同図(B)は、同図(A)におけるI−I線切断断面図、図2(A)は、本発明の第二実施例に係る音響装置台の平面図、同図(B)は、同図(A)におけるII−II線切断断面図、図3(A)は、本発明の第三実施例に係る音響装置台の平面図、同図(B)は、同図(A)におけるIII−III線切断断面図である。
図4は、グランドピアノの各脚部を図1に示す第一実施例に係る音響装置台上に載置して音響状態を測定した試験1により得られた伝送周波数特性を示す周波数スペクトルの図表、図5は、音響装置台を用いずに、グランドピアノを床面上に直接載置して音響状態を測定した試験2により得られた伝送周波数特性を示す周波数スペクトルの図表である。
【0013】
[音響装置台の構成]
図1(A)及び(B)に示す第一実施例に係る音響装置台においては、縦、横、厚さが各々100mm、120mm、20mmである四角柱状の木材ブロック1の裏面中央に、該裏面と平行に、縦、横、厚さが各々20mm、20mm、2mmである四角形状の鉄製金属板2が埋設され、前記木材ブロック1裏面全面に厚さが2mmであるウレタンゴムからなる弾性シート3が被覆されている。
【0014】
また、図2(A)及び(B)に示す第二実施例に係る音響装置台においては、一辺が100mmである正三角柱状の木材ブロック11の裏面中央に、該裏面と平行に、一辺が25mm、厚さが2mmである正三角形状の鉄製金属板12が埋設され、前記木材ブロック1裏面全面に厚さ2mmのウレタンゴムからなる弾性シート13が被覆されている。
【0015】
また、図3(A)及び(B)に示す第二実施例に係る音響装置台においては、一辺が130mmである正三角柱状の木材ブロック21の裏面中央に、該裏面と平行に、縦、横、厚さが各々15mm、20mm、2mmである四角形状の鉄製金属板22が埋設され、前記木材ブロック1裏面全面に厚さ2mmのウレタンゴムからなる弾性シート23が被覆されている。
【0016】
[音響特性の比較試験]
幅、奥行き、高さが各々3.24m、5.7m、2.3mの広さを有するスタジオの床F上にグランドピアノP(ヤマハ製「G3−70」)を、試験1では各脚部に第一実施例に係る音響装置台を介して、また試験2では該音響装置台を用いずに直接設置すると共にその前方50cmの位置にマイクロホンを配置し、これらにマランツ製オーディオコンピュータ「AX1000」を接続し、これらの測定機器両側に吸音パネルを配置して各場合の音響特性を測定し、音圧レベル(dB)を縦軸、周波数(Hz)を対数目盛の横軸とする伝送周波数特性を示す周波数スペクトルを得た。図4は試験1により得られた周波数スペクトルであり、図5は試験2により得られた周波数スペクトルである。
【0017】
本発明に係る音響装置台を用いた場合における図4に示す周波数スペクトルと、前記音響装置台を用いない場合における図5に示す周波数スペクトルとを比較すると、概して、250Hz以下の低周波数域及び8KHz以上の高周波数域において両者間に顕著な変化が認めら、それらの周波数域において本発明に係る音響装置台による音波振動の効果的な吸収、制振効果が認められると共に、全体として音響特性の改善が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1(A)は、本発明の第一実施例に係る音響装置台の平面図、同図(B)は、同図(A)におけるI−I線切断断面図である。
【図2】図2(A)は、本発明の第二実施例に係る音響装置台の平面図、同図(B)は、同図(A)におけるII−II線切断断面図である。
【図3】図3(A)は、本発明の第三実施例に係る音響装置台の平面図、同図(B)は、同図(A)におけるIII−III線切断断面図である。
【図4】図4は、グランドピアノの各脚部を図1に示す第一実施例に係る音響装置台上に載置して音響状態を測定した試験1により得られた伝送周波数特性を示す周波数スペクトルの図表である。
【図5】図5は、音響装置台を用いずに、グランドピアノを床面上に直接載置して音響状態を測定した試験2により得られた伝送周波数特性を示す周波数スペクトルの図表である。
【符号の説明】
【0019】
F 床
P グランドピアノ
1 木材ブロック
2 金属板
3 弾性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に載置されると共に表面で音響装置底部を受ける木材ブロックと、木材ブロック裏面にそれと実質的に平行に埋設された金属板と、木材ブロック裏面に被覆された弾性シートとからなる音響装置台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−70632(P2008−70632A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249600(P2006−249600)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(504085831)
【Fターム(参考)】