説明

頭部伝達関数補間用係数算出装置、音像定位装置、頭部伝達関数補間用係数算出方法、及びプログラム

【課題】頭部伝達関数の補間用の補間用係数を算出する頭部伝達関数補間用係数算出装置を提供する。
【解決手段】被験者のダミーに対して、第1の角度単位ごとの方位角で測定された頭部伝達関数の複素フーリエ係数が記憶される補間用フーリエ係数記憶部13、第1の角度単位の整数倍であって、第1の角度単位の2倍以上の角度単位である第2の角度単位ごとの角度ではない補間方位角に対応する複素フーリエ係数を補間するための補間用係数を、補間用フーリエ係数記憶部13で記憶されている、補間方位角に対応する複素フーリエ係数が、補間用フーリエ係数記憶部13で記憶されている、第2の角度単位ごとの3以上の方位角に対応する複素フーリエ係数に補間用係数を掛けることによって補間されるように算出する補間用係数算出部14、補間用係数を蓄積する補間用係数蓄積部15を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部伝達関数に関する補間のための係数を算出する処理等を行う頭部伝達関数補間用係数算出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
頭部伝達関数や、その頭部伝達関数を時間領域で表現した頭部インパルス応答は、仮想聴覚ディスプレイシステムにおいて、ヘッドホンやイヤホンから出力する音信号に空間的な情報を付加するために重要なものである。しかしながら、すべての方向について頭部伝達関数を測定することは、煩雑で時間のかかる作業である。さらに、頭部伝達関数は、個々人によって異なるため、被験者ごとに測定することが好適であるが、その頭部伝達関数を測定するためには、被験者は長時間にわたって静止していることが求められ、被験者に対する負担も非常に大きいものであった。
【0003】
したがって、頭部伝達関数を補間することが必要となる。被験者に対する頭部伝達関数の測定では、ある程度粗い角度ごとに測定を行う。そして、その粗い角度で測定された頭部伝達関数を補間することによって、仮想聴覚ディスプレイシステムにおいて用いる細かい角度の頭部伝達関数を得ることができる。なお、頭部伝達関数の補間方法は、この10年ぐらいで開発されてきており、例えば、次の非特許文献1〜4の補間方法などが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】T.Djelani,C.Porschmann,J.Sahrhage,J.Blauert,「An interactive virtual−environment generator for psychoacoustic research II:Collection of head−related impulse responses and evaluation of auditory localization」、Acta Acustica united with Acustica,vol.86,no.6,p.1046−1053,2000年11月
【非特許文献2】M.A.Blommer,G.H.Wakefield,「Pole−zero approximation for head−related transfer functions using a logarithmic error criterion」、IEEE Trans.on Speech and Audio Processing,vol.5,no.3,p.278−287,1997年5月
【非特許文献3】K.Watanabe,S.Takane,Y.Suzuki,「A novel interpolation method of HRTFs based on the common−acoustical−pole and zero model」、Acta Acustica united with Acustica,vol.91,no.6,p.958−966,2005年11月,12月
【非特許文献4】J.Chen,B.D.V.Veen,K.E.Hecox,「A spatial feature extraction and regularization model for the head−related transfer function」、J.Acoust.Soc.Am.,vol.97,no.1,p.439−452,1995年1月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実測した頭部伝達関数の補間方法について、精度の高い手法の開発が望まれてきていた。
本発明は、上記状況においてなされたものであり、頭部伝達関数に関する補間のための係数を算出する処理等を行う頭部伝達関数補間用係数算出装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による頭部伝達関数補間用係数算出装置は、被験者のダミーに対して、基準となる方位角である基準方位角を基準とした第1の角度単位ごとの方位角で測定された頭部伝達関数の複素フーリエ係数が記憶される補間用フーリエ係数記憶部と、前記基準方位角を基準とした前記第1の角度単位の整数倍の角度であって、前記基準方位角を基準とした、前記第1の角度単位のM倍(Mは2以上の整数である)の角度単位である第2の角度単位ごとの角度ではない角度である1以上の補間方位角に対応する複素フーリエ係数を補間するための係数である補間用係数を、前記補間用フーリエ係数記憶部で記憶されている、当該補間方位角に対応する複素フーリエ係数が、前記補間用フーリエ係数記憶部で記憶されている、前記基準方位角を基準とした、前記第2の角度単位ごとの3以上の方位角に対応する複素フーリエ係数に前記補間用係数を掛けることによって補間されるように算出する補間用係数算出部と、前記補間用係数算出部が算出した補間用係数を蓄積する補間用係数蓄積部と、を備えたものである。
【0007】
このような構成により、頭部伝達関数の補間で用いる補間用係数を算出することができる。この補間用係数を用いることによって、方位角の粗い単位で測定された被験者の頭部伝達関数を精度高く補間することができうる。また、被験者の頭部伝達関数を、方位角の粗い単位で測定することができるため、頭部伝達関数を測定する際に被験者を拘束する時間が短くなり、被験者の負荷が軽減されると共に、被験者の頭部伝達関数を短時間で得ることができるようになる。
【0008】
また、本発明による頭部伝達関数補間用係数算出装置では、前記補間用係数は、当該補間用係数に対応する補間方位角が前記第2の角度単位の整数倍だけ変化しても同じ値となる係数であってもよい。
このような構成により、頭部伝達関数の方位角方向に関する周期性を考慮した補間を行うための補間用係数を適切に算出することができうる。
【0009】
また、本発明による頭部伝達関数補間用係数算出装置では、前記被験者のダミーに対する、前記基準方位角を基準とした前記第1の角度単位ごとの方位角に対応する頭部インパルス応答を受け付ける補間用インパルス応答受付部と、前記補間用インパルス応答受付部が受け付けた頭部インパルス応答をフーリエ変換し、当該フーリエ変換した複素フーリエ係数を前記補間用フーリエ係数記憶部に蓄積する補間用フーリエ変換部と、をさらに備えてもよい。
このような構成により、ダミーに対する頭部インパルス応答から頭部伝達関数の複素フーリエ係数を得ることができる。
【0010】
また、本発明による頭部伝達関数補間用係数算出装置では、被験者に対して、前記基準方位角を基準とした前記第2の角度単位ごとの方位角で測定された頭部伝達関数の複素フーリエ係数が記憶されるフーリエ係数記憶部と、前記補間用係数蓄積部が蓄積した、一の補間方位角に対応する補間用係数と、前記フーリエ係数記憶部で記憶されている、当該補間用係数の算出で用いられた複素フーリエ係数に対応する3以上の方位角に対応する複素フーリエ係数とを用いた補間を行うことによって、当該一の補間方位角に対応する複素フーリエ係数を算出する補間部と、前記補間部が算出した複素フーリエ係数を蓄積する補間フーリエ係数蓄積部と、をさらに備えてもよい。
【0011】
このような構成により、被験者に対する頭部伝達関数の複素フーリエ係数を、補間用係数を用いて補間することができる。したがって、方位角の粗い単位で測定された被験者の頭部伝達関数を用いて、方位角の細かい単位の頭部伝達関数を得ることができる。
【0012】
また、本発明による頭部伝達関数補間用係数算出装置では、被験者に対する、前記基準方位角を基準とした前記第2の角度単位ごとの方位角に対応する頭部インパルス応答を受け付けるインパルス応答受付部と、前記インパルス応答受付部が受け付けた頭部インパルス応答をフーリエ変換し、当該フーリエ変換した複素フーリエ係数を前記フーリエ係数記憶部に蓄積するフーリエ変換部と、をさらに備えてもよい。
このような構成により、被験者に対する頭部インパルス応答から頭部伝達関数の複素フーリエ係数を得ることができる。
【0013】
また、本発明による音像定位装置は、前記頭部伝達関数補間用係数算出装置と、音像定位を行う方位角である音像定位方位角を受け付ける方位角受付部と、音像定位を行う音信号を受け付ける音信号受付部と、前記補間フーリエ係数蓄積部が蓄積した複素フーリエ係数であって、前記音像定位方位角に応じた複素フーリエ係数を用いて、前記音信号受付部が受け付けた音信号に対して音像定位処理を行う音像定位処理部と、前記音像定位処理部が音像定位処理を行った音信号を出力する出力部と、を備えたものである。
このような構成により、頭部伝達関数補間用係数算出装置において補間された被験者の頭部伝達関数を用いて、音像定位処理を行うことができる。
【0014】
また、本発明による音像定位装置では、前記補間部は、前記方位角受付部が受け付けた音像定位方位角に対応する補間方位角に対応する補間処理を行ってもよい。
このような構成により、多くの補間方位角に対応する補間処理を行う場合に比較して、最低限の補間処理を行うことになり、補間処理の負荷を軽減することができる。また、様々な補間方位角に対応する補間後の頭部伝達関数を記憶する必要もないため、記憶領域の節約にもなり得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明による頭部伝達関数補間用係数算出装置等によれば、頭部伝達関数に関する補間を行う際に用いる補間用係数を算出することができる。また、その補間用係数を用いて頭部伝達関数に関する補間を行う場合には、精度の高い補間を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1による音像定位装置の構成を示すブロック図
【図2】同実施の形態における補間について説明するための図
【図3】同実施の形態による音像定位装置の動作を示すフローチャート
【図4】同実施の形態による音像定位装置の動作の詳細を示すフローチャート
【図5】同実施の形態における頭部インパルス応答の測定について説明するための図
【図6】同実施の形態における頭部伝達関数の一例を示す図
【図7】同実施の形態における頭部伝達関数の周期性について説明するための図
【図8】同実施の形態における比較結果の一例を示す図
【図9】同実施の形態におけるコンピュータシステムの外観一例を示す模式図
【図10】同実施の形態におけるコンピュータシステムの構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による頭部伝達関数補間用係数算出装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0018】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による頭部伝達関数補間用係数算出装置1,音像定位装置2について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による頭部伝達関数補間用係数算出装置1は、頭部伝達関数(HRTF:Head−Related Transfer Function)に関する補間を行う際に用いる補間用係数を算出する処理等を行うものである。また、本実施の形態による音像定位装置2は、頭部伝達関数補間用係数算出装置1が補間用係数を用いて補間した頭部伝達関数を用いて音像定位処理を行うものである。
【0019】
図1は、本実施の形態による音像定位装置2の構成を示すブロック図である。本実施の形態による音像定位装置2は、頭部伝達関数補間用係数算出装置1と、方位角受付部21と、音信号受付部22と、音像定位処理部23と、出力部24とを備える。
【0020】
本実施の形態による頭部伝達関数補間用係数算出装置1は、補間用インパルス応答受付部11と、補間用フーリエ変換部12と、補間用フーリエ係数記憶部13と、補間用係数算出部14と、補間用係数蓄積部15と、インパルス応答受付部16と、フーリエ変換部17と、フーリエ係数記憶部18と、補間部19と、補間フーリエ係数蓄積部20とを備える。
【0021】
まず、本実施の形態による頭部伝達関数補間用係数算出装置1において、頭部伝達関数の補間を行う方法について簡単に説明する。ここでは、被験者のダミーに対する頭部伝達関数の測定と、被験者に対する頭部伝達関数の測定とを行う。被験者のダミーは、頭部伝達関数の測定で用いられる一般的なダミーであり、例えば、頭部とトルソからなるダミーである。また、被験者は、頭部伝達関数の測定対象となる人である。被験者のダミーに関する頭部伝達関数の測定については、細かい方位角ごとに、すなわち、第1の角度単位ごとに頭部伝達関数を測定する。そして、その測定した頭部伝達関数を用いて、補間用の係数をあらかじめ算出しておく。一方、被験者に関する頭部伝達関数の測定については、粗い方位角ごとに、すなわち、第2の角度単位ごとに頭部伝達関数を特定する。なお、第2の角度単位は、第1の角度単位のM倍(Mは2以上の整数である)の角度単位である。そして、その被験者の頭部伝達関数を補間することによって、方位角が第1の角度単位ごとの被験者の頭部伝達関数を求めることができる。なお、本実施の形態において用いる方位角は、頭部伝達関数の測定対象である被験者や被験者のダミーに対する方位角であり、被験者等を中心とした平面における被験者等の周りの方位角である。
【0022】
補間用インパルス応答受付部11は、被験者のダミーに対する、基準方位角を基準とした第1の角度単位ごとの方位角に対応する頭部インパルス応答(HRIR:Head−Related Impulse Response)を受け付ける。基準方位角は任意に設定することができる基準となる方位角である。本実施の形態では、被験者や被験者のダミーの前方を基準方位角とする。被験者のダミーにインパルス信号を与えた場合には、被験者のダミーの耳の位置のマイクで集音された音信号そのものである頭部インパルス応答が、この補間用インパルス応答受付部11で受け付けられてもよい。一方、被験者のダミーに時間伸長パルスを与えた場合には、被験者のダミーの耳の位置のマイクで集音された音信号に対して、所定の解析が行われ、被験者のダミーにインパルス信号が与えられたときに得られる頭部インパルス応答が再現され、その再現されたインパルス信号が、この補間用インパルス応答受付部11で受け付けられてもよい。本実施の形態では、後者の場合について説明する。
【0023】
補間用インパルス応答受付部11は、例えば、マイクから入力された頭部インパルス応答を受け付けてもよく、他の機器から入力された頭部インパルス応答を受け付けてもよく、有線もしくは無線の通信回線を介して送信された頭部インパルス応答を受信してもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)から読み出された頭部インパルス応答を受け付けてもよい。なお、補間用インパルス応答受付部11は、受け付けを行うためのデバイス(例えば、モデムやネットワークカードなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、補間用インパルス応答受付部11は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは所定のデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0024】
補間用フーリエ変換部12は、補間用インパルス応答受付部11が受け付けた頭部インパルス応答をフーリエ変換し、そのフーリエ変換した複素フーリエ係数を補間用フーリエ係数記憶部13に蓄積する。このフーリエ変換については、データ処理や、頭部伝達関数の測定方法などとしてすでに公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0025】
補間用フーリエ係数記憶部13では、被験者のダミーに対して、基準となる方位角である基準方位角を基準とした第1の角度単位ごとの方位角で測定された頭部伝達関数の複素フーリエ係数が記憶される。その複素フーリエ係数は、補間用フーリエ変換部12によって変換されたものである。補間用フーリエ係数記憶部13での記憶は、RAM等における一時的な記憶でもよく、あるいは、長期的な記憶でもよい。補間用フーリエ係数記憶部13は、所定の記録媒体(例えば、半導体メモリや磁気ディスク、光ディスクなど)によって実現されうる。
【0026】
補間用係数算出部14は、1以上の補間方位角に対応する複素フーリエ係数を補間するための係数である補間用係数を算出する。補間用係数算出部14は、その補間用係数を、補間用フーリエ係数記憶部13で記憶されている、補間方位角に対応する複素フーリエ係数が、補間用フーリエ係数記憶部13で記憶されている、基準方位角を基準とした、第2の角度単位ごとの連続した3以上の方位角に対応する複素フーリエ係数に補間用係数を掛けることによって補間されるように算出する。ここで、補間方位角は、基準方位角を基準とした第1の角度単位の整数倍(正の整数倍であってもよく、そうでなくてもよい)の角度である。ただし、補間方位角は、基準方位角を基準とした第2の角度単位ごとの角度ではない角度である。また、第2の角度単位は、前述のように、第1の角度単位のM倍(Mは2以上の整数である)の角度単位である。また、補間用係数算出部14は、補間方位角から一定の方位角だけ離れた方位角が端点の方位角となる連続した3以上の方位角に対応する複素フーリエ係数を用いて補間用係数を算出してもよい。また、補間用係数は、その補間用係数に対応する補間方位角が第2の角度単位の整数倍だけ変化しても同じ値となる係数であってもよい。補間用係数に対応する補間方位角は、厳密に言えば、補間用係数を用いて補間される複素フーリエ係数に対応する補間方位角である。
【0027】
この補間用係数の算出について、さらに詳細に説明する。まず、方位角θ、周波数ωに対応する頭部伝達関数の複素フーリエ係数をc(ω、θ)とする。また、第1の角度単位をaとする。また、第2の角度単位をkとする。したがって、k=M×aとなる。ただし、Mは2以上の整数である。また、基準方位角をφとする。また、方位角θ(j=0,1,…,K−1)は、基準方位角を基準とした、第2の角度単位ごとの方位角であるとする。すなわち、次式のようになるものとする。
【0028】
θ=φ+k×j
ただし、jは0からK−1までの整数である。また、Kは、次式で示される値である。
【数1】

【0029】
kが360の因数である場合には、360/kが整数となるため、K=360/kとなる。本実施の形態では、説明の便宜上、kが360の因数であるとする。また、d(ω)を次式のように定義する。
【数2】

【0030】
ただし、i=1,2,…,M−1である。この(1)式で示されるd(ω)の各要素の複素フーリエ係数における方位角が補間方位角である。したがって、このd(ω)の各要素は、補間方位角に対応する複素フーリエ係数となる。
【0031】
また、C(ω)を次式のように定義する。
【数3】

【0032】
ただし、Nはタップ長であり、3以上の整数である。また、Nは任意の整数である。したがって、この(2)式で示されるC(ω)の各要素は、基準方位角を基準とした第2の角度単位「k」ごとの方位角に対応する複素フーリエ係数となる。
【0033】
また、補間用係数をw(ω)とする。なお、厳密に言えば、w(ω)は、補間用係数を各要素として有する補間用係数の集合であるが、その補間用係数の集合も、説明の便宜上、単に補間用係数と呼ぶことにする。d(ω)と、C(ω)と、補間用係数w(ω)は、次式の関係を有する。
【数4】

【0034】
したがって、補間用係数算出部14は、(3)式の右辺のd(ω)と、左辺のC(ω)とに補間用フーリエ係数記憶部13で記憶されている複素フーリエ係数を代入し、補間用係数w(ω)についての連立方程式を解くことによって、補間用係数w(ω)を算出することができる。なお、具体的には、最小二乗法を用いることによって、次式のように補間用係数を算出することができる。ただし、は複素共役を示すものである。
【数5】

【0035】
このようにして算出された補間用係数w(ω)を用い、後述する被験者に対して第2の角度単位ごとに測定された頭部伝達関数の複素フーリエ係数をC(ω)の各要素に代入して(3)式の左辺を計算することにより、(1)式の各構成要素を算出することができ、頭部伝達関数の補間を行うことができる。この処理については後述する。
【0036】
上記各式からも明らかなように、補間用係数算出部14は、補間用係数w(ω)を各i(i=1,2,…,M−1)と、各周波数ωについて算出することになる。また、図2で示されるように、補間方位角θ0+i×aの複素フーリエ係数の補間を行うための補間用係数w(ω)は、方位角θ0−Ns,θ1−Ns,…,θN−1−Nsに対応する複素フーリエ係数のそれぞれに掛けられる係数である。また、補間方位角θ1+i×aの複素フーリエ係数の補間を行うための補間用係数w(ω)は、方位角θ1−Ns,θ2−Ns,…,θN−Nsに対応する複素フーリエ係数のそれぞれに掛けられる係数である。したがって、「i」が同じ場合、すなわち、基準方位角を基準とした第2の角度単位の範囲における補間方位角の相対的な位置関係が同じ場合には、補間方位角から一定の方位角「b」だけ離れた方位角が端点の方位角となる連続した3以上の方位角に対応する複素フーリエ係数を用いた補間が行われることになる。なお、図2の「b」の値は、「i」が異なると、すなわち、第2の角度単位の範囲における補間方位角の相対的な位置関係が異なると、異なる値となる。また、補間用係数w(ω)については、補間方位角が第2の角度単位の整数倍だけ変化する(1)式の各要素に対して同じ補間用係数が用いられることが分かる。
【0037】
なお、補間方位角は、補間で用いられる3以上の複素フーリエ係数の各方位角の最小値と最大値との間に位置することが好適である。例えば、図2において、補間方位角θ0+i×aは、補間で用いられる複素フーリエ係数の方位角θ0−NsとθN−1−Nsの間に含まれることが好適である。さらに、補間方位角は、補間で用いられる3以上の複素フーリエ係数の各方位角の最小値と最大値との間のちょうど中央付近に位置することがさらに好適である。そのためには、例えば、Nが次式のように設定されていてもよい。なお、補間方位角と、補間で用いられる3以上の複素フーリエ係数の各方位角との関係は、この段落で説明した以外の関係であってもよいことは言うまでもない。したがって、ここでは、外挿を行う場合にも補間と呼ぶことにする。
【数6】

【0038】
補間用係数蓄積部15は、補間用係数算出部14が算出した補間用係数を所定の記録媒体に蓄積する。この記録媒体は、例えば、半導体メモリや、光ディスク、磁気ディスク等であり、補間用係数蓄積部15が有していてもよく、あるいは補間用係数蓄積部15の外部に存在してもよい。また、この記録媒体は、補間用係数を一時的に記憶するものであってもよく、そうでなくてもよい。また、補間用係数蓄積部15は、補間用係数w(ω)を、対応する角度(i)や、周波数(ω)が分かるように蓄積することが好適である。すなわち、補間用係数蓄積部15は、補間用係数を角度や周波数に対応付けて蓄積してもよい。
【0039】
インパルス応答受付部16は、被験者に対する、基準方位角を基準とした第2の角度単位ごとの方位角に対応する頭部インパルス応答(HRIR)を受け付ける。このインパルス応答受付部16が受け付ける頭部インパルス応答は、被験者のダミーが被験者となり、第1の角度単位ごとの方位角が第2の角度単位ごとの方位角となった以外、補間用インパルス応答受付部11と同様のものであり、その説明を省略する。
【0040】
フーリエ変換部17は、インパルス応答受付部16が受け付けた頭部インパルス応答をフーリエ変換し、そのフーリエ変換した複素フーリエ係数をフーリエ係数記憶部18に蓄積する。このフーリエ変換部17も、処理対象となる頭部インパルス応答が異なる以外、補間用フーリエ変換部12と同様のものであり、その説明を省略する。
【0041】
フーリエ係数記憶部18では、被験者に対して、基準方位角を基準とした第2の角度単位ごとの方位角で測定された頭部伝達関数の複素フーリエ係数が記憶される。その複素フーリエ係数は、フーリエ変換部17によって変換されたものである。フーリエ係数記憶部18での記憶は、RAM等における一時的な記憶でもよく、あるいは、長期的な記憶でもよい。フーリエ係数記憶部18は、所定の記録媒体(例えば、半導体メモリや磁気ディスク、光ディスクなど)によって実現されうる。
【0042】
補間部19は、補間用係数蓄積部15が蓄積した、一の補間方位角に対応する補間用係数と、フーリエ係数記憶部18で記憶されている、その補間用係数の算出で用いられた複素フーリエ係数に対応する連続した3以上の方位角に対応する複素フーリエ係数とを用いた補間を行うことによって、その一の補間方位角に対応する複素フーリエ係数を算出する。具体的には、補間部19は、フーリエ係数記憶部18で記憶されている複素フーリエ係数を読み出して、上記(2)式のC(ω)の各要素に代入し、補間用係数蓄積部15が蓄積した補間用係数を読み出して、上記(3)式のw(ω)の各要素に代入し、両者を掛け合わせることによってd(ω)を算出する。このようにして算出されたd(ω)が補間された複素フーリエ係数となる。なお、上記(1)式から明らかなように、d(ω)の各要素は、異なる方位角に対応している。したがって、所望の方位角に対応する複素フーリエ係数を算出したい場合には、その所望の方位角に対応するd(ω)の要素についてのみ計算を行えばよいことになる。その場合には、その所望の成分に対応するC(ω)の行の各要素と、w(ω)の各要素とを掛け合わせることによって、所望の方位角に対応する複素フーリエ係数を算出(補間)することができる。一方、補間部19が、基準方位角を基準とした第1の角度単位ごとの複数の方位角に対応する複素フーリエ係数を算出してもよいことは言うまでもない。また、補間部19は、各周波数ωについて、複素フーリエ係数を算出することになる。
【0043】
なお、補間部19は、後述する方位角受付部21が受け付けた音像定位方位角に対応する補間方位角に対して補間処理を行ってもよい。音像定位方位角については後述する音像定位処理を行いたい方位角である。「音像定位方位角に対応する補間方位角」とは、例えば、音像定位方位角が、基準方位角を基準とした第1の角度単位ごとの方位角のいずれかと一致する場合には、その音像定位方位角そのものであってもよい。一方、音像定位方位角が、基準方位角を基準とした第1の角度単位ごとの方位角のいずれとも一致しない場合には、「音像定位方位角に対応する補間方位角」は、その音像定位方位角を挟む直近の方位角であって、基準方位角を基準とした第1の角度単位ごとの方位角であってもよい(この場合には、音像定位方位角に対応する補間方位角は2個になる)。
【0044】
補間フーリエ係数蓄積部20は、補間部19が算出した複素フーリエ係数を所定の記録媒体に蓄積する。この記録媒体は、例えば、半導体メモリや、光ディスク、磁気ディスク等であり、補間フーリエ係数蓄積部20が有していてもよく、あるいは補間フーリエ係数蓄積部20の外部に存在してもよい。また、この記録媒体は、補間された複素フーリエ係数を一時的に記憶するものであってもよく、そうでなくてもよい。また、補間フーリエ係数蓄積部20は、補間された複素フーリエ係数を、対応する方位角や、周波数が分かるように蓄積することが好適である。すなわち、補間フーリエ係数蓄積部20は、補間された複素フーリエ係数を方位角や周波数に対応付けて蓄積してもよい。
【0045】
方位角受付部21は、音像定位を行う方位角である音像定位方位角を受け付ける。方位角受付部21は、入力デバイス(例えば、キーボードやマウス、タッチパネルなど)から入力された音像定位方位角を受け付けてもよく、有線もしくは無線の通信回線を介して送信された音像定位方位角を受信してもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)から読み出された音像定位方位角を受け付けてもよい。なお、方位角受付部21は、受け付けを行うためのデバイス(例えば、モデムやネットワークカードなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、方位角受付部21は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは所定のデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。また、方位角受付部21が受け付けた音像定位方位角は、図示しない記録媒体において一時的に記憶されてもよい。
【0046】
音信号受付部22は、音像定位を行う音信号を受け付ける。音信号受付部22は、例えば、マイクから入力された音信号を受け付けてもよく、有線もしくは無線の通信回線を介して送信された音信号を受信してもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)から読み出された音信号を受け付けてもよい。なお、音信号受付部22は、受け付けを行うためのデバイス(例えば、モデムやネットワークカードなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、音信号受付部22は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは所定のデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。また、音信号受付部22が受け付けた音信号は、図示しない記録媒体において一時的に記憶されてもよい。
【0047】
音像定位処理部23は、補間フーリエ係数蓄積部20が蓄積した複素フーリエ係数であって、音像定位方位角に応じた複素フーリエ係数を用いて、音信号受付部22が受け付けた音信号に対して音像定位処理を行う。具体的には、音像定位処理部23は、音信号受付部22が受け付けた音信号に、方位角受付部21が受け付けた音像定位方位角に応じた複素フーリエ係数で示される頭部伝達関数を畳み込むことによって音像定位処理を行う。なお、音像定位処理部23による音像定位処理については、すでに公知であり、その詳細な説明を省略する。この音像定位処理が行われることによって、音信号受付部22が受け付けた音信号が、方位角受付部21が受け付けた音像定位方位角の方向から聞こえてくる音信号が生成されることになる。なお、「音像定位方位角に応じた複素フーリエ係数」とは、例えば、音像定位方位角が、基準方位角を基準とした第1の角度単位ごとの方位角のいずれかと一致する場合には、音像定位方位角である補間方位角に対応する複素フーリエ係数(厳密には、各周波数に対応した複数の複素フーリエ係数である)であってもよい。一方、音像定位方位角が、基準方位角を基準とした第1の角度単位ごとの方位角のいずれとも一致しない場合には、「音像定位方位角に応じた複素フーリエ係数」は、その音像定位方位角を挟む直近の方位角であって、基準方位角を基準とした第1の角度単位ごとの方位角である複素方位角にそれぞれ対応する複素フーリエ係数であってもよい(この場合には、音像定位方位角に応じた複素フーリエ係数は2セットになる)。音像定位方位角に応じた複素フーリエ係数が2個になる場合には、その2セットの複素フーリエ係数を用いた補間を行うことによって、音像定位方位角の複素フーリエ係数を算出し、その算出した複素フーリエ係数を用いて音像定位処理を行ってもよい。その2セットの複素フーリエ係数を用いた補間については、すでに公知の線形補間等を用いることができる。例えば、後述する線形補間や、補正した線形補間を用いてもよい。
【0048】
なお、前述したように、補間部19が方位角受付部21によって受け付けられた音像定位方位角に対応する補間方位角に関する補間処理のみを行っている場合には、音像定位処理部23は、補間フーリエ係数蓄積部20が蓄積した複素フーリエ係数を用いて音像定位処理を行えばよいことになる。一方、補間部19が音像定位方位角に関係なく多数の補間方位角に関する補間処理を行っている場合には、音像定位処理部23は、補間フーリエ係数蓄積部20が蓄積した複素フーリエ係数のうち、方位角受付部21が受け付けた音像定位方位角に応じた複素フーリエ係数を選択し、その選択した複素フーリエ係数を用いて音像定位処理を行えばよいことになる。なお、補間部19が音像定位方位角に関係なく多数の補間方位角に関する補間処理を行っている場合には、方位角受付部21がダイナミックに変化する音像定位方位角を受け付けた場合であっても、その音像定位方位角に対応した音像定位をリアルタイムで、あるいは、少ない遅延で行うことができる。
【0049】
また、方位角受付部21が、基準方位角を基準とした第2の角度単位ごとの方位角である音像定位方位角を受け付けた場合には、音像定位処理部23は、図示しない経路を介して、その音像定位方位角に応じた複素フーリエ係数をフーリエ係数記憶部18から読み出して音像定位処理を行うようにしてもよい。あるいは、フーリエ係数記憶部18で記憶されている、基準方位角を基準とした第2の角度単位ごとの方位角に対応する頭部伝達関数の複素フーリエ係数も、補間フーリエ係数蓄積部20が複素フーリエ係数を蓄積する記録媒体で記憶されるようにしてもよい。そして、音像定位処理部23は、基準方位角を基準とした第2の角度単位ごとの方位角である音像定位方位角が受け付けられた場合に、その記録媒体で記憶されている複素フーリエ係数を用いて音像定位処理を行ってもよい。
【0050】
出力部24は、音像定位処理部23が音像定位処理を行った音信号を出力する。ここで、この出力は、例えば、ヘッドホンやイヤホン等への音声出力でもよく、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。なお、送信された場合や、記録媒体に蓄積された場合、他の構成要素に引き渡された場合であっても、最終的には、その音像定位処理後の音信号がヘッドホンやイヤホン等を介してユーザによって聴かれることが好適である。また、出力部24は、出力を行うデバイスを含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、出力部24は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは、それらのデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0051】
なお、補間用フーリエ係数記憶部13と、補間用係数蓄積部15が補間用係数を蓄積する記録媒体と、フーリエ係数記憶部18と、補間フーリエ係数蓄積部20が補間後の複素フーリエ係数を蓄積する記録媒体とのうち、任意の2以上の記憶部や記録媒体は、同一の記録媒体によって実現されてもよく、あるいは、別々の記録媒体によって実現されてもよい。前者の場合には、例えば、被験者のダミーに関する複素フーリエ係数を記憶している領域が補間用フーリエ係数記憶部13となり、被験者に関する複素フーリエ係数を記憶している領域がフーリエ係数記憶部18となる。
【0052】
次に、本実施の形態による頭部伝達関数補間用係数算出装置1,音像定位装置2の動作について、図3のフローチャートを用いて説明する。なお、このフローチャートでは、補間部19が方位角受付部21によって受け付けられた音像定位方位角に対応する補間方位角に関する補間処理を行う場合について説明する。
【0053】
(ステップS101)補間用インパルス応答受付部11は、被験者のダミーに対する頭部インパルス応答を受け付けたかどうか判断する。そして、受け付けた場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、ステップS104に進む。
【0054】
(ステップS102)補間用フーリエ変換部12は、補間用インパルス応答受付部11が受け付けた頭部インパルス応答をフーリエ変換する。
【0055】
(ステップS103)補間用フーリエ変換部12は、フーリエ変換後の複素フーリエ係数を補間用フーリエ係数記憶部13に蓄積する。そして、ステップS101に戻る。
【0056】
(ステップS104)インパルス応答受付部16は、被験者に対する頭部インパルス応答を受け付けたかどうか判断する。そして、受け付けた場合には、ステップS105に進み、そうでない場合には、ステップS107に進む。
【0057】
(ステップS105)フーリエ変換部17は、インパルス応答受付部16が受け付けた頭部インパルス応答をフーリエ変換する。
【0058】
(ステップS106)フーリエ変換部17は、フーリエ変換後の複素フーリエ係数をフーリエ係数記憶部18に蓄積する。そして、ステップS101に戻る。
【0059】
(ステップS107)補間用係数算出部14は、補間用係数を算出する処理を行うかどうか判断する。そして、その処理を行う場合には、ステップS108に進み、そうでない場合には、ステップS109に進む。なお、補間用係数算出部14は、例えば、ユーザからの補間用係数を算出する旨の指示を受け付けた場合に、補間用係数を算出すると判断してもよく、補間用フーリエ係数記憶部13において、補間用係数を算出するために十分な複素フーリエ係数が記憶されている場合に、補間用係数を算出すると判断してもよく、あるいは、その他のタイミングで補間用係数を算出すると判断してもよい。
【0060】
(ステップS108)補間用係数算出部14等は、補間用係数を算出する処理等を行う。そして、ステップS101に戻る。なお、この処理の詳細については、図4のフローチャートを用いて後述する。
【0061】
(ステップS109)方位角受付部21は、音像定位方位角を受け付けたかどうか判断する。そして、受け付けた場合には、ステップS110に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。
【0062】
(ステップS110)補間部19は、方位角受付部21が受け付けた音像定位方位角に対応する補間方位角に関する補間処理を行う。すなわち、補間部19は、その補間方位角に対応する複素フーリエ係数を、その補間方位角に対応する補間用係数と、フーリエ係数記憶部18で記憶されている複素フーリエ係数とを用いて算出する。その複素フーリエ係数の算出は、各周波数について行われるものとする。
【0063】
(ステップS111)補間フーリエ係数蓄積部20は、補間部19が補間した複素フーリエ係数を所定の記録媒体に蓄積する。
【0064】
(ステップS112)音信号受付部22は、音信号を受け付けたかどうか判断する。そして、音信号を受け付けた場合には、ステップS113に進み、そうでない場合には、ステップS115に進む。
【0065】
(ステップS113)音像定位処理部23は、音信号受付部22が受け付けた音信号に対して、方位角受付部21が受け付けた音像定位方位角に応じた複素フーリエ係数を用いて音像定位処理を行う。
【0066】
(ステップS114)出力部24は、音像定位処理部23が音像定位処理を行った音信号を出力する。そして、ステップS112に戻る。
【0067】
(ステップS115)音像定位処理部23は、音像定位処理を終了するかどうか判断する。そして、終了する場合には、ステップS101に戻り、そうでない場合には、ステップS112に戻る。なお、音像定位処理部23は、例えば、ユーザからの音像定位処理を終了する旨の指示を受け付けた場合に、音像定位処理を終了すると判断してもよく、所定の時間以上、一定レベル以上の音信号が音信号受付部22で受け付けられない場合に、音像定位処理を終了すると判断してもよく、あるいは、その他のタイミングで音像定位処理を終了すると判断してもよい。
【0068】
なお、図3のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。また、図3のフローチャートで示される処理に代えて、あらかじめ可能なすべての補間方位角に関する補間処理を行っておき、方位角受付部21が受け付けた音像定位方位角に対応する複素フーリエ係数を読み出して補間を行うようにしてもよい。その場合には、ステップS113において、方位角受付部21が受け付けた音像定位方位角に応じた複素フーリエ係数を読み出して用いることになる。
【0069】
図4は、図3のフローチャートにおける補間用係数の算出等の処理(ステップS108)の詳細を示すフローチャートである。
【0070】
(ステップS201)補間用係数算出部14は、カウンタiを1に設定する。
【0071】
(ステップS202)補間用係数算出部14は、周波数ωを初期値に設定する。
【0072】
(ステップS203)補間用係数算出部14は、d(ω)の各要素である複素フーリエ係数を補間用フーリエ係数記憶部13から読み出す。
【0073】
(ステップS204)補間用係数算出部14は、C(ω)の各要素である複素フーリエ係数を補間用フーリエ係数記憶部13から読み出す。
【0074】
(ステップS205)補間用係数算出部14は、ステップS203,S204で読み出した複素フーリエ係数を用いて補間用係数w(ω)を算出する。この算出は、例えば、前述の(4)式を用いてなされてもよい。
【0075】
(ステップS206)補間用係数蓄積部15は、補間用係数算出部14が算出した補間用係数w(ω)を記録媒体に蓄積する。
【0076】
(ステップS207)補間用係数算出部14は、周波数ωを次の周波数に更新する。この更新は、例えば、その時点の周波数ωに、一定の値を加算や減算することによってなされてもよい。
【0077】
(ステップS208)補間用係数算出部14は、更新された周波数ωが存在するかどうか判断する。そして、存在する場合には、ステップS203に戻り、存在しない場合には、ステップS209に進む。なお、更新された周波数ωが存在するかどうかは、例えば、補間用フーリエ係数記憶部13で記憶されている複素フーリエ係数に、その周波数ωの係数が含まれるかどうかによって判断してもよい。
【0078】
(ステップS209)補間用係数算出部14は、カウンタiを1だけインクリメントする。
【0079】
(ステップS210)補間用係数算出部14は、カウンタiがM以上であるかどうか判断する。そして、M以上である場合には、すべての方位角について補間用係数を算出したことになるため、図3のフローチャートに戻り、そうでない場合には、ステップS202に戻る。
【0080】
次に、前述の(1)〜(4)式などを用いて補間処理を行う理由について簡単に説明する。まず、発明者らは、空間的な周波数特性を解析するために、頭部伝達関数を1°ごとの方位角で測定した。この測定は図5で示される無響室を用いてなされた。その無響室には、頭部伝達関数の測定システムが設けられている。スピーカの設けられている弓形のアームが水平方向に旋回可能に設けられている。そのスピーカの方位角と仰俯角は、パーソナル・コンピュータ(PC:Personal Computer)によって自動的に制御される。頭部インパルス応答を得るために、16384ポイントの長さを有するOATSP(Optimized Aoki's Time−Stretched Pulse)信号が、16ビットの分解能、48kHzのサンプリングレートで使用される。また、測定の対象となる被験者のダミーは、頭部とトルソのもの(HATS:B&K 4128)を用いた。そして、そのダミーの両耳の入口に設けたマイク(Sound Professionals SP−TFB−2)を用いて、16ビットの分解能、48kHzのサンプリングレートで頭部インパルス応答を特定した。OATSP信号は、各スピーカの位置について40回ずつ出力され、頭部インパルス応答は、S/N比を改善するために平均値をとった。そのようにして左耳の位置で測定された頭部インパルス応答をフーリエ変換した頭部伝達関数が図6で示されるものである。図6において、ダミーの前方方向が方位角「0°」に対応する。また、その方位角は時計回りに増加するものとする。右耳の位置で測定された頭部伝達関数も、同様の対象なパターンとなった。図6において、方位角が161°から164°の間のデータが存在しないが、これは弓形のアームが機構上の制限から、その方位角の範囲に移動することができないからである。
【0081】
図6のパワースペクトルを方位角方向についてさらにフーリエ変換したものが図7である。図7において、横軸は頭部伝達関数における各周波数である。縦軸は、方位角方向に沿ったパワースペクトルレベルの周期的な繰り返しに対応している。例えば、繰り返し周期が5°であると言うことは、波長が5°に対応する周期性に近いことを示している。なお、図6のパワースペクトルに対してフーリエ変換を行う前に、データの欠落している方位角が161°から164°の間の領域がデータの両端となるように移動させることによって、それらの領域を除去した。これは、データの連続性が失われることによって、頭部伝達関数の周期性が不鮮明になることを避けるために行われたものである。図7において、白い部分で示される周期性は顕著である。その周期性は約15kHzまでであり、また、繰り返し周期は、約6〜7°である。ナイキストの定理によれば、この周期性によるエリアシングの影響を避けるために、頭部伝達関数を測定するためには3°以下の分解能のあることが好ましいことになる。
【0082】
この方位角方向の周期性は、頭部周りに回折した音の干渉によるものでありうる。なぜならば、スピーカの反対側でその周期性が顕著だからである。したがって、同様のサイズの頭部については、同様の周期性が観測されることが予測できる。実際、このことはMRIデータを用いて人の物理的な特徴の精密な推定に基づいて制作されたダミーヘッドを用いた頭部伝達関数の測定においても当てはまっている。
【0083】
このように、方位角方向に周期性が存在するため、頭部伝達関数の補間において、複数の位置で測定された頭部伝達関数を用いることによって、よりよい補間を実現することができると予想できる。特に、従来の線形補間のように2個の位置で測定された頭部伝達関数を用いて補間を行うのではなく、3個以上の位置で測定された頭部伝達関数を用いて補間を行うことによって、より精度の高い補間になると考えられる。なお、図7において、周期性はパワースペクトルについて観測されたのであるが、この周期性は、頭部伝達関数の複素スペクトルについても当てはまると考え、前述の(1)〜(4)式などを用いて補間処理を行うことを定式化したものである。
【0084】
次に、本実施の形態による頭部伝達関数補間用係数算出装置1,音像定位装置2の動作について、具体例を用いて説明する。この具体例において、基準方位角は、ダミーや被験者の前方の0°であるとする。
【0085】
まず、被験者のダミーに対する頭部伝達関数を測定する場合について説明する。前述の図5で示される無響室において、頭部とトルソからなるダミー(HATS:B&K 4128)を用いて、1°の方位角ごとに頭部インパルス応答を測定する。したがって、この具体例では、第1の角度単位は1°である。また、この具体例では、その方位角ごとに、測定できない角度を除いて略360°の頭部インパルス応答が測定されたとする。また、この頭部インパルス応答の測定でも、OATSP信号を用いて各スピーカの位置について40回ずつ測定を行い、S/N比を改善するために平均値をとる。そのようにして測定された頭部インパルス応答が音像定位装置2に入力されると、その頭部インパルス応答は、補間用インパルス応答受付部11によって受け付けられる(ステップS101)。そして、補間用フーリエ変換部12によってフーリエ変換が行われ(ステップS102)、フーリエ変換後の複素フーリエ係数が補間用フーリエ係数記憶部13に蓄積される(ステップS103)。
【0086】
次に、被験者に対する頭部伝達関数を測定する場合について説明する。前述の図5で示される無響室において、被験者に対する5°の方位角ごとに頭部インパルス応答を測定する。したがって、この具体例では、第2の角度単位は5°である。また、この具体例では、その方位角ごとに、測定できない角度を除いて略360°の頭部インパルス応答が測定されたとする。また、この被験者に対する頭部インパルス応答の測定でも、前述のダミーの頭部インパルス応答の測定と同様に、OATSP信号を用いて各スピーカの位置について40回ずつ測定を行い、平均値をとる。そのようにして測定された頭部インパルス応答が音像定位装置2に入力されると、その頭部インパルス応答は、インパルス応答受付部16で受け付けられる(ステップS104)。そして、フーリエ変換部17によってフーリエ変換が行われ(ステップS105)、フーリエ変換後の複素フーリエ係数がフーリエ係数記憶部18に蓄積される(ステップS106)。
【0087】
その後、ダミーの頭部伝達関数の複素フーリエ係数と、被験者の頭部伝達関数の複素フーリエ係数とがそれぞれ全方位角について蓄積されたことを検知すると、補間用係数算出部14は、補間用係数を算出すると判断し(ステップS107)、補間用係数の算出を行う(ステップS108)。具体的には、前述のように、すべてのi(この具体例では、i=1〜4である)と、すべての周波数ωについて、補間用係数w(ω)が算出され、蓄積される(ステップS201〜S210)。
【0088】
なお、この補間用係数の算出の際に、頭部伝達関数を測定できない範囲の方位角の頭部伝達関数の複素フーリエ係数を用いないで補間用係数を算出する。前述の式から明らかなように、その連立方程式において式の個数(K個)の方が、求めたい係数の個数(N個)よりも大きいことが一般的であるため、測定できない範囲の方位角の頭部伝達関数の複素フーリエ係数を用いなくても、補間用係数を算出することができる。なお、頭部伝達関数の測定において、測定できない方位角の範囲が存在しない場合には、このようなことを考える必要はないことになる。
【0089】
次に、ユーザがマウスやキーボード等の入力デバイスを操作することにより、音像定位方位角「32°」を入力し、その音像定位方位角が方位角受付部21で受け付けられたとする(ステップS109)。すると、補間部19は、その角度に関する補間を行う(ステップS110)。具体的には、前述の表記法において、この具体例では、φ=0°、k=5°、a=1°となるため、32°=θ+2×aとなる。ただし、θ=30°である。したがって、d(ω)の7番目の要素を算出すればよいことになる。そのため、補間部19は、C(ω)の7番目の行の各列に関する複素フーリエ係数をフーリエ係数記憶部18から読み出し、補間用係数をw(ω)を補間用係数蓄積部15が補間用係数を蓄積した記録媒体から読み出し、それらを掛け合わせることによって、c(ω,θ+2×a=32°)を算出する。また、補間部19は、この算出をすべての周波数ωについて実行する。
【0090】
そのようにして補間された複素フーリエ係数c(ω,θ+2×a=32°)は、補間フーリエ係数蓄積部20によって所定の記録媒体に蓄積される(ステップS111)。その後、音信号受付部22が音信号を受け付けると(ステップS112)、音像定位処理部23は、補間フーリエ係数蓄積部20が蓄積した補間フーリエ係数c(ω,32°)の頭部伝達関数を畳み込むことによって音像定位処理を行う(ステップS113)。そして、出力部24は、その音像定位処理のなされた音信号をヘッドホン等に出力する(ステップS114)。そして、この音信号の受け付けと、音像定位処理と、その音像定位処理のなされた音信号の出力とが繰り返されることによって、所望の音像定位方位角に対応する音像定位が実行されることになる。
【0091】
なお、この具体例では、ダミーの頭部伝達関数を測定する方位角の単位、すなわち、第1の角度単位が1°である場合について説明したが、そうでなくてもよい。ただし、方位角に依存する周期性を測定できる第1の角度単位で測定することが好適である。また、この具体例では、被験者の頭部伝達関数を測定する方位角の単位、すなわち、第2の角度単位が第1の角度単位の5倍である場合について説明したが、そうでなくてもよい。ただし、適切に補間することができる範囲の第2の角度単位を用いることが好適である。
【0092】
次に、本実施の形態による補間方法と、他の従来の補間方法との比較について説明する。従来の補間方法としては、(1)線形補間と、(2)補正した線形補間とを用いる。それぞれについて簡単に説明する。
【0093】
(1)線形補間
方位角θの頭部インパルス応答h(n,θ)を、方位角θ,θで測定された頭部インパルス応答を用いて線形補間する方法は、次式で得られる。なお、nはサンプル時間を示すものである。
【数7】

【0094】
ただし、αは次式の通りである。
【数8】

【0095】
(2)補正した線形補間
この補間方法では、まず、方位角に依存する頭部インパルス応答の初期遅延を除く。そして、その除いた初期遅延と、残りの部分とを別々に補間し、補間後に両者を再度つなげる。このようにすることで、単純な線形補間の場合よりもより適切な補間を行うことができるようになる。なお、この補正した線形補間の詳細については、次の文献を参照されたい。
【0096】
文献:M.Matsumoto,S.Yamanaka,M.Tohyama,H.Nomura、「Effect of arrival time correction on the accuracy of binaural impulse response interpolation」、J.Audio Eng.Soc.,vol.52,no.1/2,p.56−61,2004年1月,2月
【0097】
また、この比較において、各補間方法の性能を次式で示される最小二乗誤差(MSE)によって評価するものとする。
【数9】

【0098】
ここで、j=L,Rは、左耳、右耳を示す添字である。また、Sは、頭部インパルス応答が測定される方位角の数である。ここでは、360°のうち、測定できない範囲と、補間で用いられる5°ごとの方位角が除かれるため、S=284となる。また、h(n,θ)は方位角θに対応する被験者に対する頭部インパルス応答であり、h(n,θ)のハット(^)は、補間された頭部インパルス応答である。したがって、この評価では、誤差の算出のために、被験者についても第1の角度単位ごとの頭部伝達関数の測定を行った。
【0099】
この比較において、本実施の形態による補間方法では、本実施の形態で説明したように、補間用係数を用いた補間を行った。一方、比較対象となる(1)線形補間、(2)補正した線形補間では、前述の方法によってそれぞれ補間を行った。また、補間の対象となる被験者の複素フーリエ係数はすべてについて同じである。そして、前述の最小二乗誤差の式のように、被験者の測定結果と、その補間した結果との差をとることによって、各補間方法の性能を評価した。
【0100】
図8は、その補間方法の性能の比較結果を示すグラフである。図8において、タップ長は、補間で用いる複素フーリエ係数の個数を示すものである。また、被験者1と被験者2は、実在する人間のMRIデータを用いて制作された2種類のダミーヘッドである。また、被験者3は、被験者のダミーと同じHATS(B&K 4128)である。したがって、被験者3の場合には、被験者のダミーと、被験者との両方が同じものであることになる。また、このグラフでは見やすさのために、プロットした各点の横軸方向を少しだけ意図的にずらしている。また、この比較結果では、タップ長が偶数の場合のみを示している。タップ長が「2」の場合には、従来の補間方法と、本実施の形態による頭部伝達関数補間用係数算出装置1の補間方法とは、ほとんど差がないことになる。一方、タップ長が2を超えると、本実施の形態による頭部伝達関数補間用係数算出装置1の補間方法の方が、従来の補間方法よりも精度が高くなっていることが分かる。したがって、タップ長が3以上の場合、すなわち、補間で用いられる複素フーリエ係数の個数が3以上である場合に、従来の補間方法よりも高い精度で補間を行うことができるようになることが分かる。
【0101】
以上のように、本実施の形態による頭部伝達関数補間用係数算出装置1によれば、方位角の粗い単位で測定された被験者の頭部伝達関数を、方位角の細かい単位で測定されたダミーの頭部伝達関数から算出された補間用係数を用いて補間することができる。したがって、被験者に対する頭部伝達関数の測定において、方位角の細かい単位で測定する場合に比べて被験者を拘束する時間が短くなり、被験者の負荷が軽減される。また、短時間で被験者の頭部伝達関数を測定することも可能となる。また、そのようにして補間された頭部伝達関数を用いることによって、音像定位装置2において音像定位を行うことができる。
【0102】
また、方位角受付部21が受け付けた音像定位方位角に応じた補間のみを行う場合には、必要十分な範囲の頭部伝達関数を保持することになり、すべての方位角に対応する頭部伝達関数をはじめから保持している場合に比べて必要なメモリ量を削減することもできうる。
【0103】
なお、本実施の形態では、補間用フーリエ係数記憶部13で記憶される複素フーリエ係数が補間用フーリエ変換部12によって蓄積されたものである場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、別の装置等において被験者のダミーに対する頭部インパルス応答がフーリエ変換された複素フーリエ係数が補間用フーリエ係数記憶部13に蓄積されてもよい。その場合に、補間用フーリエ係数記憶部13に複素フーリエ係数が記憶される過程は問わない。例えば、記録媒体を介して複素フーリエ係数が補間用フーリエ係数記憶部13で記憶されるようになってもよく、通信回線等を介して送信された複素フーリエ係数が補間用フーリエ係数記憶部13で記憶されるようになってもよく、あるいは、入力デバイスを介して入力された複素フーリエ係数が補間用フーリエ係数記憶部13で記憶されるようになってもよい。
【0104】
また、本実施の形態では、フーリエ係数記憶部18で記憶される複素フーリエ係数がフーリエ変換部17によって蓄積されたものである場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、別の装置等において被験者に対する頭部インパルス応答がフーリエ変換された複素フーリエ係数がフーリエ係数記憶部18に蓄積されてもよい。その場合に、フーリエ係数記憶部18に複素フーリエ係数が記憶される過程は問わない。例えば、記録媒体を介して複素フーリエ係数がフーリエ係数記憶部18で記憶されるようになってもよく、通信回線等を介して送信された複素フーリエ係数がフーリエ係数記憶部18で記憶されるようになってもよく、あるいは、入力デバイスを介して入力された複素フーリエ係数がフーリエ係数記憶部18で記憶されるようになってもよい。
【0105】
また、本実施の形態では、音像定位装置2が頭部伝達関数補間用係数算出装置1を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。頭部伝達関数補間用係数算出装置1のみが音像定位装置2とは別個に用いられてもよい。その場合には、頭部伝達関数補間用係数算出装置1は、補間フーリエ係数蓄積部20が蓄積した複素フーリエ係数や、フーリエ係数記憶部18で記憶されている複素フーリエ係数を出力する出力部(図示せず)を備えてもよい。ここで、この出力は、例えば、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。
【0106】
また、本実施の形態では、頭部伝達関数補間用係数算出装置1において補間の処理も行う場合について説明したが、頭部伝達関数補間用係数算出装置1は、補間用係数を算出する処理までを行い、他の装置において、その補間用係数を用いた補間の処理が行われてもよい。その場合には、頭部伝達関数補間用係数算出装置1は、インパルス応答受付部16や、フーリエ変換部17、フーリエ係数記憶部18、補間部19、補間フーリエ係数蓄積部20を備えていなくてもよい。また、補間用係数蓄積部15が蓄積した補間用係数を出力する出力部(図示せず)を備えてもよい。ここで、この出力は、例えば、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。
【0107】
また、本実施の形態では、例えば、図5で示されるように、仰俯角が略0°の位置(水平の位置)で方位角を変化されることによって頭部伝達関数を測定する場合について説明したが、そうでなくてもよい。仰俯角が0°以外の位置で測定された頭部伝達関数を測定し、その測定した頭部伝達関数に対して、本実施の形態で説明した補間の処理を実行してもよい。ただし、被験者のダミーに対する頭部伝達関数を測定する際の仰俯角と、被験者に対する頭部伝達関数を測定する際の仰俯角とは同じであることが好適である。
【0108】
また、前述のように、同様のサイズの頭部については、同様の周期性が観測されることが予測できるため、例えば、種々のサイズの被験者のダミーについて補間用係数を算出しておき、被験者の頭部伝達関数の補間を行う際には、その被験者の頭部のサイズに最も近いダミーの補間用係数を用いて補間を行うようにしてもよい。このようにすることで、より精度の高い補間を実現することができると考えられる。
【0109】
また、本実施の形態では、被験者が人間である場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。被験者は、頭部伝達関数を測定する対象であれば、人間であってもよく、ダミーであってもよい。被験者がダミーである場合には、あらかじめ別のダミーで頭部伝達関数の細かい測定を行い、補間用係数を算出しておくことによって、その被験者としてのダミーの頭部伝達関数を補間することができ、被験者としてのダミーに対する頭部伝達関数の測定時間を端出することができるメリットがある。
【0110】
また、本実施の形態において、補間用フーリエ係数記憶部13や、フーリエ係数記憶部18で記憶されている複素フーリエ係数は、補間用係数の算出や、補間に必要な範囲の方位角に対応した複素フーリエ係数であればよい。したがって、それらの記憶部で記憶されている複素フーリエ係数は、全方位角に対応したものでなくてもよい。例えば、補間方位角の範囲が決まっている場合には、その補間方位角に応じた補間を行う際に必要な複素フーリエ係数が少なくともそれらの記憶部で記憶されていればよい。例えば、補間用フーリエ係数記憶部13で記憶されている複素フーリエ係数は、基準方位角から180°程度離れた位置の第1の角度単位ごとの連続した方位角に対応する頭部伝達関数の複素フーリエ係数であってもよい。
【0111】
また、本実施の形態では、kが360°の因数である場合について説明したが、そうでなくてもよいことは前述の通りである。ただし、kが360°の因数でない場合には、第2の角度単位ごとに頭部伝達関数を測定したとしても、一部に、第2の角度単位ごとではない方位角の間隔が存在してしまう。例えば、φ=0°であり、k=7°であれば、被験者の頭部伝達関数は、0°と、357°とで測定されるが、それらの方位角の間隔(=3°)は、第2の角度単位(=7°)とは異なることになる。このような場合には、その第2の角度単位と異なる方位角の間隔の範囲をまたがないように補間を行うことが好適である。すなわち、前述の(2)式において、各列の複素フーリエ係数の方位角の最小値と最大値との間に、その第2の角度単位と異なる方位角の間隔の範囲(上記の例の場合は、357°から360°(=0°)の範囲)が含まれないように補間を行うことが好適である。
【0112】
また、本実施の形態では、補間用係数算出部14が補間用係数を算出する際に、1以上の補間方位角に対応する複素フーリエ係数を補間するための係数である補間用係数を、補間用フーリエ係数記憶部13で記憶されている、その補間方位角に対応する複素フーリエ係数が、補間用フーリエ係数記憶部13で記憶されている、基準方位角を基準とした、第2の角度単位ごとの連続した3以上の方位角に対応する複素フーリエ係数に補間用係数を掛けることによって補間されるように算出する場合について説明したが、その3以上の方位角は、連続したものでなくてもよい。すなわち、補間用係数算出部14は、補間用フーリエ係数記憶部13で記憶されている、補間方位角に対応する複素フーリエ係数が、基準方位角を基準とした、第2の角度単位ごとの3以上の方位角に対応する複素フーリエ係数に補間用係数を掛けることによって補間されるように、補間用係数を算出してもよい。このことを言い換えると、前述の(2)式において、ある行の隣り合う複素フーリエ係数の方位角の差の絶対値は、第2の角度単位に2以上の整数を掛けた値であってもよいことになる。ただし、その場合であっても、(2)式において、ある行におけるi番目の列の複素フーリエ係数と、i+1番目の列の複素フーリエ係数との方位角の差は、任意の他の行におけるi番目の列の複素フーリエ係数と、i+1番目の列の複素フーリエ係数との方位角の差と同じであるとする。ただし、iは、1からN−1の任意の整数であるとする。なお、前述のように、Nはタップ長である。
【0113】
また、上記実施の形態では、頭部伝達関数補間用係数算出装置1や音像定位装置2がスタンドアロンである場合について説明したが、頭部伝達関数補間用係数算出装置1や音像定位装置2は、スタンドアロンの装置であってもよく、サーバ・クライアントシステムにおけるサーバ装置であってもよい。後者の場合には、出力部や受付部は、通信回線を介して入力を受け付けたり、情報を出力したりしてもよい。
【0114】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0115】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していない場合であっても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0116】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いるしきい値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していない場合であっても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0117】
また、上記実施の形態において、頭部伝達関数補間用係数算出装置1や音像定位装置2に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、あるいは、別々のデバイスを有してもよい。例えば、補間用インパルス応答受付部11と、インパルス応答受付部16とは、物理的には同一のものであってもよい。
【0118】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。なお、上記実施の形態における頭部伝達関数補間用係数算出装置1を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータを、被験者のダミーに対する基準となる方位角である基準方位角を基準とした第1の角度単位の整数倍の角度であって、前記基準方位角を基準とした、前記第1の角度単位のM倍(Mは2以上の整数である)の角度単位である第2の角度単位ごとの角度ではない角度である1以上の補間方位角に対応する頭部伝達関数の複素フーリエ係数を補間するための係数である補間用係数を、被験者のダミーに対して、前記基準方位角を基準とした前記第1の角度単位ごとの方位角で測定された頭部伝達関数の複素フーリエ係数が記憶される補間用フーリエ係数記憶部で記憶されている、当該補間方位角に対応する複素フーリエ係数が、前記補間用フーリエ係数記憶部で記憶されている、前記基準方位角を基準とした、前記第2の角度単位ごとの3以上の方位角に対応する複素フーリエ係数に前記補間用係数を掛けることによって補間されるように算出する補間用係数算出部、前記補間用係数算出部が算出した補間用係数を蓄積する補間用係数蓄積部、として機能させるためのプログラムである。
【0119】
また、このプログラムでは、被験者に対して、前記補間用係数蓄積部が蓄積した、一の補間方位角に対応する補間用係数と、前記基準方位角を基準とした前記第2の角度単位ごとの方位角で測定された頭部伝達関数の複素フーリエ係数が記憶されるフーリエ係数記憶部で記憶されている、当該補間用係数の算出で用いられた複素フーリエ係数に対応する3以上の方位角に対応する複素フーリエ係数とを用いた補間を行うことによって、当該一の補間方位角に対応する複素フーリエ係数を算出する補間部、前記補間部が算出した複素フーリエ係数を蓄積する補間フーリエ係数蓄積部、としてさらにコンピュータを機能させるためのプログラムであってもよい。
【0120】
また、上記実施の形態における音像定位装置2を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータを、前記補間用係数算出部、前記補間用係数蓄積部、前記補間部、前記補間フーリエ係数蓄積部、音像定位を行う方位角である音像定位方位角を受け付ける方位角受付部、音像定位を行う音信号を受け付ける音信号受付部、前記補間フーリエ係数蓄積部が蓄積した複素フーリエ係数であって、前記音像定位方位角に応じた複素フーリエ係数を用いて、前記音信号受付部が受け付けた音信号に対して音像定位処理を行う音像定位処理部、前記音像定位処理部が音像定位処理を行った音信号を出力する出力部、として機能させるためのプログラムである。
【0121】
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。例えば、情報を受け付ける受付部や、情報を出力する出力部などにおけるモデムやインターフェースカードなどのハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には少なくとも含まれない。
【0122】
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD−ROMなどの光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。
【0123】
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
【0124】
図9は、上記プログラムを実行して、上記実施の形態による頭部伝達関数補間用係数算出装置1,音像定位装置2を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。上記実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
【0125】
図9において、コンピュータシステム900は、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ905、FD(Floppy(登録商標) Disk)ドライブ906を含むコンピュータ901と、キーボード902と、マウス903と、モニタ904とを備える。
【0126】
図10は、コンピュータシステム900の内部構成を示す図である。図10において、コンピュータ901は、CD−ROMドライブ905、FDドライブ906に加えて、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM(Random Access Memory)913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス915とを備える。なお、コンピュータ901は、LANへの接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
【0127】
コンピュータシステム900に、上記実施の形態による頭部伝達関数補間用係数算出装置1,音像定位装置2の機能を実行させるプログラムは、CD−ROM921、またはFD922に記憶されて、CD−ROMドライブ905、またはFDドライブ906に挿入され、ハードディスク914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ901に送信され、ハードディスク914に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、CD−ROM921やFD922、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。
【0128】
プログラムは、コンピュータ901に、上記実施の形態による頭部伝達関数補間用係数算出装置1,音像定位装置2の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能(モジュール)を呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
【0129】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0130】
以上より、本発明による頭部伝達関数補間用係数算出装置等によれば、頭部伝達関数を補間できるという効果が得られ、例えば、音像定位を行う装置などにおいて有用である。
【符号の説明】
【0131】
1 頭部伝達関数補間用係数算出装置
2 音像定位装置
11 補間用インパルス応答受付部
12 補間用フーリエ変換部
13 補間用フーリエ係数記憶部
14 補間用係数算出部
15 補間用係数蓄積部
16 インパルス応答受付部
17 フーリエ変換部
18 フーリエ係数記憶部
19 補間部
20 補間フーリエ係数蓄積部
21 方位角受付部
22 音信号受付部
23 音像定位処理部
24 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者のダミーに対して、基準となる方位角である基準方位角を基準とした第1の角度単位ごとの方位角で測定された頭部伝達関数の複素フーリエ係数が記憶される補間用フーリエ係数記憶部と、
前記基準方位角を基準とした前記第1の角度単位の整数倍の角度であって、前記基準方位角を基準とした、前記第1の角度単位のM倍(Mは2以上の整数である)の角度単位である第2の角度単位ごとの角度ではない角度である1以上の補間方位角に対応する複素フーリエ係数を補間するための係数である補間用係数を、前記補間用フーリエ係数記憶部で記憶されている、当該補間方位角に対応する複素フーリエ係数が、前記補間用フーリエ係数記憶部で記憶されている、前記基準方位角を基準とした、前記第2の角度単位ごとの3以上の方位角に対応する複素フーリエ係数に前記補間用係数を掛けることによって補間されるように算出する補間用係数算出部と、
前記補間用係数算出部が算出した補間用係数を蓄積する補間用係数蓄積部と、を備えた頭部伝達関数補間用係数算出装置。
【請求項2】
前記補間用係数は、当該補間用係数に対応する補間方位角が前記第2の角度単位の整数倍だけ変化しても同じ値となる係数である、請求項1記載の頭部伝達関数補間用係数算出装置。
【請求項3】
前記被験者のダミーに対する、前記基準方位角を基準とした前記第1の角度単位ごとの方位角に対応する頭部インパルス応答を受け付ける補間用インパルス応答受付部と、
前記補間用インパルス応答受付部が受け付けた頭部インパルス応答をフーリエ変換し、当該フーリエ変換した複素フーリエ係数を前記補間用フーリエ係数記憶部に蓄積する補間用フーリエ変換部と、をさらに備えた、請求項1または請求項2記載の頭部伝達関数補間用係数算出装置。
【請求項4】
被験者に対して、前記基準方位角を基準とした前記第2の角度単位ごとの方位角で測定された頭部伝達関数の複素フーリエ係数が記憶されるフーリエ係数記憶部と、
前記補間用係数蓄積部が蓄積した、一の補間方位角に対応する補間用係数と、前記フーリエ係数記憶部で記憶されている、当該補間用係数の算出で用いられた複素フーリエ係数に対応する3以上の方位角に対応する複素フーリエ係数とを用いた補間を行うことによって、当該一の補間方位角に対応する複素フーリエ係数を算出する補間部と、
前記補間部が算出した複素フーリエ係数を蓄積する補間フーリエ係数蓄積部と、をさらに備えた、請求項1から請求項3のいずれか記載の頭部伝達関数補間用係数算出装置。
【請求項5】
被験者に対する、前記基準方位角を基準とした前記第2の角度単位ごとの方位角に対応する頭部インパルス応答を受け付けるインパルス応答受付部と、
前記インパルス応答受付部が受け付けた頭部インパルス応答をフーリエ変換し、当該フーリエ変換した複素フーリエ係数を前記フーリエ係数記憶部に蓄積するフーリエ変換部と、をさらに備えた、請求項4記載の頭部伝達関数補間用係数算出装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載の頭部伝達関数補間用係数算出装置と、
音像定位を行う方位角である音像定位方位角を受け付ける方位角受付部と、
音像定位を行う音信号を受け付ける音信号受付部と、
前記補間フーリエ係数蓄積部が蓄積した複素フーリエ係数であって、前記音像定位方位角に応じた複素フーリエ係数を用いて、前記音信号受付部が受け付けた音信号に対して音像定位処理を行う音像定位処理部と、
前記音像定位処理部が音像定位処理を行った音信号を出力する出力部と、を備えた音像定位装置。
【請求項7】
前記補間部は、前記方位角受付部が受け付けた音像定位方位角に対応する補間方位角に対応する補間処理を行う、請求項6記載の音像定位装置。
【請求項8】
被験者のダミーに対して、基準となる方位角である基準方位角を基準とした第1の角度単位ごとの方位角で測定された頭部伝達関数の複素フーリエ係数が記憶される補間用フーリエ係数記憶部と、補間用係数算出部と、補間用係数蓄積部とを用いて処理される頭部伝達関数補間用係数算出方法であって、
前記補間用係数算出部が、前記基準方位角を基準とした前記第1の角度単位の整数倍の角度であって、前記基準方位角を基準とした、前記第1の角度単位のM倍(Mは2以上の整数である)の角度単位である第2の角度単位ごとの角度ではない角度である1以上の補間方位角に対応する複素フーリエ係数を補間するための係数である補間用係数を、前記補間用フーリエ係数記憶部で記憶されている、当該補間方位角に対応する複素フーリエ係数が、前記補間用フーリエ係数記憶部で記憶されている、前記基準方位角を基準とした、前記第2の角度単位ごとの3以上の方位角に対応する複素フーリエ係数に前記補間用係数を掛けることによって補間されるように算出する補間用係数算出ステップと、
前記補間用係数蓄積部が、前記補間用係数算出ステップで算出した補間用係数を蓄積する補間用係数蓄積ステップと、を備えた頭部伝達関数補間用係数算出方法。
【請求項9】
コンピュータを、
被験者のダミーに対する基準となる方位角である基準方位角を基準とした第1の角度単位の整数倍の角度であって、前記基準方位角を基準とした、前記第1の角度単位のM倍(Mは2以上の整数である)の角度単位である第2の角度単位ごとの角度ではない角度である1以上の補間方位角に対応する頭部伝達関数の複素フーリエ係数を補間するための係数である補間用係数を、被験者のダミーに対して、前記基準方位角を基準とした前記第1の角度単位ごとの方位角で測定された頭部伝達関数の複素フーリエ係数が記憶される補間用フーリエ係数記憶部で記憶されている、当該補間方位角に対応する複素フーリエ係数が、前記補間用フーリエ係数記憶部で記憶されている、前記基準方位角を基準とした、前記第2の角度単位ごとの3以上の方位角に対応する複素フーリエ係数に前記補間用係数を掛けることによって補間されるように算出する補間用係数算出部、
前記補間用係数算出部が算出した補間用係数を蓄積する補間用係数蓄積部、として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−171785(P2010−171785A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12959(P2009−12959)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】