説明

頭頸部扁平上皮癌の治療に使用されるCD44に対するモノクローナル抗体

哺乳動物の頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の治療において使用される、モノクローナル抗CD44抗体、又はその抗原結合断片が開示され、ここで、前記HNSCCはCD44の発現により特徴付けられる。前記モノクローナル抗体は、受託番号PTA-4621でATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成され得、またそのキメラ又はヒト化型でありうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一又は複数の癌性疾患修飾抗体(CDMAB)を使用する、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)を予防し、治療し又は診断するための方法に関する。ある態様では、CDMABは、CD44に対して特異的な抗体である。癌を予防又は治療する手段として、本発明に係るCDMABを、場合によっては一又は複数の第2のCDMAB及び/又は化学療法剤と組合せて使用することを含む、併用治療法がまた開示される。
【背景技術】
【0002】
頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)は、通常、後期で発見される衰弱し死に至る疾患であり、毎年、アメリカ合衆国で50000人の人々、世界中では500000人の個人が罹患している。HNSCCは、特に発声及び嚥下機能に関して、有意な罹患率を生じさせる疾患である。手術、放射線療法、化学療法、又はこれらの組合せが、治療選択肢として一般に利用できる。
【0003】
手術、化学療法及び放射線の厳密な併用にもかかわらず、後期疾患に対する治癒率は、わずか30%に達しているだけであり、再発が、標準的な治療後の失敗の最も一般的な原因として残ったままである(患者の40%−50%)。救援(サルベージ)療法は、第一選択治療と同じ治療選択肢からなる。しかしながら、姑息手術は、多くの場合困難で外観が美しくない。さらに、放射線治療は、めったに実用可能とならないか、有益ではなく、化学療法は、HNSCC患者における生存率を実質的に改善しない。これらの患者にとっての予後は良好ではなく、再発後の生存期間中央値は、約6ヶ月にすぎない。
【0004】
転帰不良は、腫瘍始原細胞又は癌幹細胞(CSC)の無効殺傷による可能性がある。CSCは自己再生可能であり、分化した表現型及び制限された自己再生を有する子孫を生じさせる。正常な幹細胞と同様に、CSCは、生存優位性、例えば増加したDNA修復能力のために、化学療法及び放射線治療に対して耐性がある。実際、標準的な化学療法、例えばシスプラチン、及び放射線治療レジメンは、幹細胞集団を実際に増殖する。
【0005】
CD44は、腫瘍形成において重要な役割を担っている。膜貫通糖タンパク質、CD44は、細胞外マトリックス及び細胞骨格タンパク質においてヒアルロン酸(HA)に結合する。CD44、HA、細胞骨格成分、及びシグナル伝達分子、例えばサイクリンD1、EGFR、Rho及びRasの間の相互作用により、増殖及び遊走が促進される。さらに、CD44は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)により、膜から放出されて可溶型(solCD44)になるが、これは細胞遊走にとって重要なイベントである。また、CD44は、乳癌、結腸直腸癌及びHNSCCに見いだされる重要なCSCマーカーであることが見いだされている。また、CD44活性は、異種移植モデルにおいて腫瘍形成に活性を示すことが分かっている;CD44+HNSCC腫瘍細胞は、易感染性マウスにおいて腫瘍化するが、コントロールCD44−HNSCC腫瘍細胞は、同じモデルで腫瘍を生成した。
【0006】
BIWA1とも命名されているVFF-18は、ポリペプチドの360−370領域に特異的な、CD44のv6変異体に対する高親和性抗体である。BIWA1の様々なバージョン又は誘導体は、癌の治療のための臨床試験を受けている。特に、BIWA1は、頭頸部の扁平上皮癌を有する12名の患者において、安全性及びターゲティングの可能性の試験についての第1相臨床試験において、99mテクネチウム標識コンジュゲートとして使用されている。注射後40時間で、注射された用量の14パーセントが腫瘍に取り込まれ、他の器官、例えば腎臓、脾臓及び骨髄では最小の蓄積であった。高度に選択的な腫瘍結合性は、BIWA1の放射免疫療法における役割を示唆しており、この抗体の非常に高度な親和性が、腫瘍の深層への浸透を防止した。さらに、BIWA1は、有意に免疫原性であることが見いだされている。12の研究の11で、患者には、腫瘍のあらゆる場所で不均一な蓄積を示したヒト抗マウス抗体(HAMA)が生じており、抗体-可溶性CD44複合体の形成に至る。
【0007】
国際公開第02/094879号には、BIWA4及びBIWA8と命名された、HAMA反応を克服するように設計されたVFF-18のヒト化型が開示されている。BIWA4は、親VFF18抗体と比較して、有意に低い抗原結合親和性を有していることが見いだされている。しかしながら、より低い親和性のBIWA4抗体は、より高い親和性のBIWA8に対して、優れた腫瘍取込特性を有することが示された。99mテクネチウム標識及び186レニウム標識抗体の双方が、安全性、耐用性、腫瘍蓄積性を、また186Re-標識BIWA4については最大耐用量を決定するために、33名の患者での第1相臨床試験において評価された。99mTc標識BIWA4の腫瘍関連の取込があるようであった。如何なる用量の186Re標識BIWA4でも腫瘍反応は観察されなかった。多くの患者は、研究の過程を通して安定(不変)を示したが、用量規制毒性が60mCi/mで生じた。また、50−65パーセントの割合の有害事象が存在し、33名の患者のうち12名が、重度の有害事象(血小板減少症、白血球減少症及び発熱)を有すると判断された。さらに、これら12名の患者のうち6名は、全て186Re標識BIWA4で治療され、疾患進行のため、治療又は経過観察の過程で死亡した。また、2名の患者では、ヒト抗ヒト抗体(HAHA)が生じた。従って、放射標識VFF-18は、如何なる臨床効果も示さなかった。
【0008】
また、186Re標識BIWA4の第1相用量漸増試験を20名の患者で実施した。口腔粘膜炎及び用量規制血小板減少症及び白血球減少症が観察された;1名の患者ではHAHA反応が生じた。安定が、最も高い用量60mCi/mで治療された5名の患者で見られた。この用量範囲では安全性及び耐用性の双方が許容可能であると思われるが、研究では、疾患の安定性のみという結果になった。さらに、これらの研究は、臨床研究における、他の非放射性同位元素コンジュゲート生物学的療法と比較して、高い割合の有害事象を有している。
【0009】
米国特許出願第2003/0103985号には、BIWI1と命名された、腫瘍治療に使用するために、メイタンシノイドにコンジュゲートしたVFF-18のヒト化型(BIWA4)が開示されている。BIWI1は、外陰部のヒト類表皮癌、咽頭の扁平上皮癌及び乳癌のマウスモデルにおいて、有意な抗腫瘍効果を有することが見いだされている。未コンジュゲート型、すなわちBIWA4は、抗腫瘍効果を示さなかった。コンジュゲートBIWI1は、ヒトにおいて、安全性または効能の証拠がない。
【0010】
Mab U36は、UM-SCC-22Bヒト下咽頭癌細胞での免疫化により生じたマウスモノクローナルIgG1抗体で、癌及び組織特異性について選択されている。cDNAクローニング及び配列分析を介した抗原の特徴付けにより、ケラチノサイト特異的CD44スプライスバリアントエピカンのv6ドメイン内に存在するMab U36のエピトープが同定された。免疫組織化学研究により、細胞膜に制限される認識エピトープが示されている。Mab U36は、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の94パーセントを強く標識し、これらの腫瘍内は、細胞染色に均一性があった。
【0011】
10名の患者の99mTc標識Mab U36研究では、HNSCC癌に対して抗体の選択的蓄積(2日で、20.4+/−12.4パーセントの注射用量/kg)が示された;何の有害作用も報告されていないが、2名の患者ではHAMAが生じていた。放射性ヨウ化マウスMab U36の研究において、18名の患者において3例のHAMA、及びHNSCCに選択的に均質な取込があった。Mab U36の抗原性を増加させ、HAMAの比率を低減させるために、ADCC活性を示す、キメラ又は元来のマウスMab U36のどちらも用いず、キメラ抗体を構築した。しかしながら、研究では、未標識Mab U36の抗癌活性の証拠は見いだせなかった。
【0012】
186Re標識キメラMab U36は、治療剤としての、Mab U36の有用性を決定するために使用した。この第1相用量漸増試験では、13名の患者が、偵察用量の99mTc標識キメラMab U36、続いて186Re標識キメラMab U36を受容した。しかしながら、治療後、用量規制骨髄毒性(1.5GBq/m)が、3名の患者のうち2名にあり、最大耐用性用量(1.0GBq/m)で治療された1名の患者に、血小板減少症が観察された。腫瘍サイズに対してある程度の効果があったが、これらの効果は、治療に対する奏効性についての基準を満たしていなかった。186Re標識キメラMab U36のさらなる研究では、2.8Gyに対して2倍の最大耐用活性まで、顆粒球コロニー刺激因子で刺激された全血の再注入を使用する方策を用いた。頭頸部の様々な腫瘍を有する9名の患者のこの研究では、薬剤関連貧血に対して3名が輸血を必要とした。他の毒性は、グレード3の骨髄毒性及びグレード2の粘膜炎を含む。安定は、5名の患者で3−5ヶ月の間に達成されたが、腫瘍の奏効は報告されなかった。
【0013】
HNSCC患者に対する予後不良、生活の質に対する疾患の影響、及び制限された治療選択肢のために、HNSCCに対する新規な治療法の開発には、かなりの関心と、切迫した需要がある。今日まで、HNSCCに効力のある、いわゆる「ネイキッド」(すなわち未コンジュゲート)抗CD44抗体の報告はない。よって、CD44は免疫治療のための潜在的な抗癌標的であると思われるところ、抗CD44抗体が、抗癌効果を達成するためには放射性免疫コンジュゲートを必要とする。しかしながら、放射標識抗CD44の研究では、達成される臨床効果に関連し、治療に付随して許容できない毒性が証明された。従って、新規なHNSCC特異的治療を開発する必要性がある。
【0014】
本発明の基礎をなす技術的課題は、抗CD44抗体、特にいくつかの態様では、未標識抗CD44抗体を使用して、HNSCCを予防し、治療し又は診断する方法及び手段を提供することにある。
【0015】
該技術的課題は、特許請求の範囲で特徴付けられる実施態様の提供により解決される。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、抗CD44抗体の使用を含む、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)を予防し、治療し又は診断するための新規方法に関する。ある態様では、本発明は、CD44の細胞外ドメインのアミノ末端ドメインに結合し、及び/又はヒトにおいて発現される一又は複数の、好ましくは多くのヒト変異体CD44に免疫特異的に結合する抗CD44抗体の使用を含む。特定の態様では、本発明は、受託番号PTA-4621を有する、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成される抗CD44抗体、及びその変異体及び/又は誘導体、例えばPTA-4621のキメラ及びヒト化型の使用を含む。本発明はさらにPTA-4621と結合について競合する抗体及びその抗原結合断片の使用を包含する。
【0017】
本発明の方法に従って使用される抗体及び断片は、CD44、特に細胞表面に発現するCD44に特異的であり、好ましくは、例えばHNSCC癌細胞の表面で発現したヒトCD44の一又は複数の変異体のアミノ末端細胞外ドメインに対して特異的である。ある種の態様では、ここで開示された方法に従って使用される抗体は、受託番号PTA-4621を有し、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成される抗体のヒト化又はキメラ型である。特定の実施態様では、ここで開示された方法に従って使用される抗体、又はその抗原結合断片は、
アミノ酸配列RYWMS(配列番号:3)を有する重鎖可変ドメイン(V)CDR1、
アミノ酸配列EVNPDSTSINYTPSLKD(配列番号:4)を有するVCDR2、
アミノ酸配列PNYYGSRYHYYAMDY(配列番号:5)を有するVCDR3、
アミノ酸配列RASQDINNYLN(配列番号:6)を有する軽鎖可変ドメイン(V)CDR1、
アミノ酸配列YTSRLHS(配列番号:7)を有するVCDR2、
アミノ酸配列QQGSTLPFT(配列番号:8)を有するVCDR3、
の一又は複数を含む。
【0018】
また、本発明に包含される抗体は、配列番号:3のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:4のアミノ酸配列を有するVCDR2、配列番号:5のアミノ酸配列を有するVCDR3、配列番号:6のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:7のアミノ酸配列を有するVCDR2、及び配列番号:8のアミノ酸配列を有するVCDR3の2又はそれ以上、3又はそれ以上、4又はそれ以上、5又はそれ以上、ある態様においては全てを含む。
【0019】
本発明の方法に従って使用される抗体及び抗原結合断片は、
アミノ酸配列EVKLLESGGGLVQPGGSLKLSCATSGFDFSRYWMSWVRQAPGKGLEWIGEVNPDSTSINYTPSLKDQFIISRDNAKNTLDLQMSKVSSEDTALYYCTRPNYYGSRYHYYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号:1)を有するVドメイン、及び/又は
アミノ酸配列DIQMTQTTSSLSVSLGDRVTINCRASQDINNYLNWYQQKPDGTVKLLIYYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDFSLTISNLEKEDVATYFCQQGSTLPFTFGSGTKLEIK(配列番号:2)を有するVドメイン、
を含みうる。
【0020】
ある態様では、本発明は、配列番号:1のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号:2のアミノ酸配列を有するVドメインを含有する、抗CD44抗体又は抗原結合断片の使用を包含する。
【0021】
本発明は、HNSCCを治療し、予防し又は診断するための、抗CD44抗体、又はその抗原結合断片の使用をさらに包含し、ここで、抗CD44抗体はヒト化されている。いくつかの態様では、ヒト化された抗CD44抗体又は抗原結合断片は、
アミノ酸配列EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFDFSRYWMSWVRQAPGKGLVWVGEVNPDSTSINYTPSLKDRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCTRPNYYGSRYHYYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号:9)、又は
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCATSGFDFSRYWMSWVRQAPGKGLVWIGEVNPDSTSINYTPSLKDQFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCTRPNYYGSRYHYYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号:10)
を有するVドメイン、及び/又は
アミノ酸配列DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDINNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQGSTLPFTFGQGTKLEIK(配列番号:11)を有するVドメイン
を含む。
【0022】
特定の態様では、本発明は、被験者において、HNSCCを予防し、治療し又は診断する際に使用するための、ヒト化抗CD44抗体又はその抗原結合断片を提供し、ここで、該ヒト化抗CD44抗体は、配列番号:9のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号:11のアミノ酸配列を有するVドメインを含み、又はここで該抗CD44抗体は、配列番号:10のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号:11のアミノ酸配列を有するVドメインを含む。特定の態様では、被験者はヒトである。また本発明は、被験者におけるHNSCCの予防、治療又は診断のための、ヒト化抗CD44抗体又はその抗原結合断片の使用を提供し、ここで、該ヒト化抗CD44抗体は、配列番号:9のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号:11のアミノ酸配列を有するVドメインを含み、又はここで該抗CD44抗体は、配列番号:10のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号:11のアミノ酸配列を有するVドメインを含む。
【0023】
ある態様では、本発明の方法に従って使用される抗体又は抗体断片は、アミノ酸配列AFDGPITITIV(配列番号:12)を有するCD44の細胞外領域のアミノ酸末端ドメイン内のエピトープを認識する。
【0024】
本発明での使用のための抗CD44抗体は、活性部分、例えば治療又はレポーター部分にコンジュゲートされうる。また、抗CD44抗体は、患者からの造血細胞(hematogeneous cells)にコンジュゲートされうる。ある態様では、治療部分は、HNSCCの治療、予防又は診断に有益であることが、当該技術分野で知られている部分、例えば限定されるものではないが、細胞毒、酵素、放射性元素、サイトカイン、代謝拮抗剤、又はインターフェロンである。
【0025】
また本発明は、単剤治療として、又は一又は複数の他の化学療法又は診断剤及び/又は治療法と組合せての、抗CD44抗体又は抗原結合断片の使用を含む。従って、本発明は、HNSCCのための標準的又は実験的治療レジメン(例えば、化学療法、放射免疫治療、放射線治療)と組合せての、抗CD44抗体(例えば、ヒト化又はキメラ抗体)、又はその抗原結合断片の使用を含む。HNSCCを予防し、治療し又は診断するためのここで開示された方法に従い、CD44特異的抗体又はその抗原結合断片と組合せて特に有用な治療剤の例には、限定されるものではないが、当該技術技術で知られている化学療法剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然物、及びホルモン類が含まれる。ここで開示された併用療法では、治療又は予防効果を達成するために、HNSCCを患っている被験者に、抗CD44抗体又はその抗原結合断片を投与する頻度を少なくし、及び/又は抗CD44抗体又はその抗原結合断片の投与量を少なくすることができる。ここで開示された方法に従い、抗CD44抗体又はその抗原結合部位は、一又は複数の他の化学療法剤又は診断剤と同時投与され、同時的に投与され、及び/又は逐次投与され得、又は放射線治療又は外科手術と併せて投与されうる。抗体、断片及び/又は付加的な薬剤又は治療の投与は、腫瘍部位に特定の薬剤又は治療を送達させるのに適した、当該技術分野で知られている任意の手段でありうる。このような投与は、非経口(例えば、IV、筋肉内又は皮下投与)、経口的であり得、又はある態様では、腫瘍部位又は腫瘍の発生又は再発が疑われる部位に直接送達されうる。また、抗体、断片及び/又は組成物は、徐放性製剤として投与されうる。
【0026】
さらに、本発明は、(i)ここで開示された抗CD44抗体(例えば、キメラ又はヒト化抗体)、又はその抗原結合断片の治療的有効量と;(ii)薬学的に許容可能な担体を含有する、被験者におけるHNSCCの予防、治療又は診断のための薬学的組成物を提供する。
【0027】
またここに開示されるものは、(i)ここで開示された抗CD44抗体、又はその抗原結合断片を有効量、被験者からの生体試料と接触させ;(ii)該抗体又はその断片との結合性を検出するもので、バックグラウンド又は標準レベル以上での、該抗体又は断片の検出により、該被験者がHNSCCを患っていると示されることを含む、このような疾患に罹患していることが疑われている被験者において、HNSCCを診断する方法が開示される。抗CD44抗体又はその抗原結合断片の検出は、当該技術分野で知られている検出可能マーカーの使用により補助されうる。また本発明は、HNSCC細胞を含むことが知られているか又は疑われている被験者からの組織試料において、HNSCCを検出するための診断又は予後キットを含む。ある態様では、キットは、特にHNSCC細胞を含むことが知られているか又は疑われている被験者からの組織試料、及び/又はHNSCC細胞により発現された、CD44を検出する手段を含む。キットは、(1)受託番号PTA-4621として、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されたモノクローナル抗体、(2)受託番号PTA-4621として、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されたモノクローナル抗体と結合について競合する抗体;(3)配列番号:3のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:4のアミノ酸配列を有するVCDR2、配列番号:5のアミノ酸配列を有するVCDR3、配列番号:6のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:7のアミノ酸配列を有するVCDR2、及び配列番号:8のアミノ酸配列を有するVCDR3の一又は複数を含む抗体;又は(4)(1)、(2)又は(3)の抗体の抗原結合断片を含みうる。またキットは次の一又は複数を含みうる:生体試料、溶液又は固体形態でのバイオマーカー(類)の参照標準体(類)(例えば、抗体PTA-4621により生成される抗体に特異的に結合するCD44又はペプチド)、バイオマーカーに特異的な一又は複数の抗体(例えば、抗体PTA-4621、及びその抗原結合断片、又はその変異体又は誘導体)を保持するための基材又は容器、及びキットの内容物を用いてバイオマーカーとの検出アッセイ(群)を実施するための指示書。
【0028】
さらに、抗体PTA-4621又はその抗原結合断片を使用するHNSCCの治療方法を教示することが本発明の目的である。抗体PTA-4621又はその抗原結合断片を使用するHNSCCの診断を教示することが本発明の他の目的である。HNSCCの予後又はステージ分類のためのPTA-4621又はその抗原結合断片の使用を教示することが、本発明のさらなる目的である。HNSCCの治療のための患者の選択のための、PTA-4621又はその抗原結合断片の使用を教示することが本発明のさらなる目的である。
【0029】
ある態様では、ここで開示された方法に従って使用される、抗CD44抗体及びその抗原結合断片は、受託番号PTA-4621を有し、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されるマウスモノクローナル抗体のVドメイン及び/又はVドメインのアミノ酸と、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一である、Vドメイン及び/又はVドメインのアミノ酸配列を含んでいてよく、但し、抗CD44抗体又は断片は、CD44に対する結合特異性を示し、及び/又はPTA-4621と結合について競合する。また本発明は、配列番号:1のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び/又は配列番号:2のアミノ酸配列を有するVドメインと、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一である、Vドメイン及び/又はVドメインのアミノ酸配列を含む、抗CD44抗体又はその抗原結合断片の使用を包含し、但し、抗CD44抗体又は断片は、CD44に対する結合特異性を示し、及び/又はPTA-4621と結合について競合する。ある態様では、本発明は、CD44に特異的に結合し、受託番号PTA-4621を有し、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されるマウスモノクローナル抗体の一又は複数のCDRのアミノ酸と、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一である、一又は複数のCDRのアミノ酸配列を含む抗体又はその断片を含み、但し、該抗体又は断片は、CD44に対する結合特異性を示し、及び/又はPTA-4621と結合について競合する。また本発明は、配列番号:3のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:4のアミノ酸配列を有するVCDR2、配列番号:5のアミノ酸配列を有するVCDR3、配列番号:6のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:7のアミノ酸配列を有するVCDR2、及び配列番号:8のアミノ酸配列を有するVCDR3の一又は複数と、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一である、一又は複数のCDRのアミノ酸配列を含む、抗CD44抗体又はその抗原結合断片の使用を包含し、但し、該抗体又は断片は、CD44に対する結合特異性を示し、及び/又はPTA-4621と結合について競合する。
【0030】
また本発明は、CD44に対して特異的であるか、又は抗体PTA-4621と結合について競合するヒト化抗体及び抗体断片の使用を包含し、ここで、ヒト抗体(レシピエント抗体)の重鎖及び/又は軽鎖可変領域の一又は複数のCDRの一又は複数の領域が、例えばクローンPTA-4621により生成されるマウスモノクローナル抗体の、CD44に特異的に結合するドナーモノクローナル抗体の一又は複数のCDRの類似部分に置き換えられている。好ましくは、ヒト化抗体は、ドナーマウス抗体と同じエピトープに特異的に結合する。当業者であれば、本発明が、一般的に抗体のCDRグラフティングを含むことを理解するであろう。特定の態様では、本発明は、CD44に特異的に結合し、及び/又はPTA-4621と結合について競合するヒト化抗体又は抗体断片の使用を包含し、ここでヒト化抗体又は抗体断片は、配列番号:9又は配列番号:10のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び/又は配列番号:11のアミノ酸配列を有するVドメインと、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一である。
【0031】
ここで開示された方法に従って使用される、抗CD44抗体及び抗原結合断片は、マウスモノクローナル抗体PTA-4621のVドメイン、完全重鎖、Vドメイン又は完全軽鎖をコードするヌクレオチド配列に対して、緊縮条件下でハイブリダイズする、ヌクレオチド配列によりコードされうる。他の態様では、本発明は、配列番号:1、配列番号:9又は配列番号:10のアミノ酸配列をコードする核酸配列に対して、緊縮条件下でハイブリダイズする、核酸配列によりコードされるVドメインを含む、抗CD44抗体又はその抗原結合断片の使用を含む。他の態様では、本発明は、配列番号:2又は配列番号:11のアミノ酸配列をコードする核酸配列に対して、緊縮条件下でハイブリダイズする、核酸配列によりコードされるVドメインを含む、抗CD44抗体又はその抗原結合断片の使用を含む。本発明は、配列番号:3のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:4のアミノ酸配列を有するVCDR2、配列番号:5のアミノ酸配列を有するVCDR3、配列番号:6のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:7のアミノ酸配列を有するVCDR2、及び配列番号:8のアミノ酸配列を有するVCDR3の一又は複数をコードする核酸配列、又はマウスモノクローナル抗体PTA-4621の一又は複数のCDRをコードするヌクレオチド配列に対して、緊縮条件下でハイブリダイズする、ヌクレオチド配列によりコードされる一又は複数のCDRを含む、抗CD44抗体又はその抗原結合断片の使用を含む。緊縮ハイブリダイゼーション条件は、限定されるものではないが、(i)約45℃での6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中での、フィルター結合DNAへのハイブリダイゼーション、続いて約50−65℃での、0.2X SSC/0.1%のSDSにおける一又は複数の洗浄;(ii)高度な緊縮条件、例えば約45℃での6X SSCにおける、フィルター結合DNAへのハイブリダイゼーション、続いて約60℃での、0.1X SSC/0.2%のSDSにおける一又は複数の洗浄、又は(iii)当業者に知られている任意の他の緊縮ハイブリダイゼーション条件が含まれる。
【0032】
また本発明は、ここで開示された核酸(抗CD44抗体又は抗原結合断片のVドメイン、Vドメイン及び/又は一又は複数のCDRをコードする核酸)を含むベクターの使用に関する。ある実施態様では、前記ベクターは発現ベクターであり、ここで記載されたアミノ酸配列をコードする核酸配列は、コードされたアミノ酸配列の適切な発現に必要な、核酸制御配列又はアミノ酸制御配列をコードする配列(例えば、転写、翻訳、転座シグナル)に、作用可能に結合している。さらに本発明は、ここで開示された抗体又は抗体断片をコードするヌクレオチド配列又はベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0033】
本発明の他の目的及び利点は、例証及び実施例、この発明の所定の実施態様により記載される以下の記載から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(定義)
一般に、以下の用語又は語句は、概要、説明、実施例、及び特許請求の範囲で使用される場合、示した定義を有する。
【0035】
「抗体」なる用語は、最も広義に使用され、例えば、単一のモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、及び中和抗体、脱免疫化(de-immunized)、マウス、キメラ、ヒト化又はヒト抗体を含む)、多エピトープ特異性を持つ抗体組成物、単鎖抗体、ダイアボディー、トリアボディー、免疫-コンジュゲート、合成抗体、ラクダ化(camelized)抗体、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、Fab断片、F(ab')断片、ジスルフィド結合断片、細胞内抗体、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id及び抗抗Id抗体)、及び上述のいずれかのエピトープ結合断片を特に包含する。特に、抗体には、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、すなわち抗原結合部位を含む分子が含まれる。本発明は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA及びIgA)又はサブクラスの免疫グロブリン分子を包含する。
【0036】
「抗体断片」又は「抗原結合断片」には、インタクトな抗体の一部で、好ましくは、その抗原結合又はエピトープ結合、又はその可変領域を含むものが含まれる。抗体断片の例には、全長未満の抗体、例えばFab、Fab'、F(ab')、並びに抗体可変ドメインのコンストラクト、例えばFv断片;ダイアボディ;線形抗体;単鎖抗体分子;融合タンパク質、組換えタンパク質及び多重特異性抗体で、抗体断片から形成されたものが含まれる。
【0037】
非ヒト(例えばマウス)抗体/免疫グロブリンの「ヒト化」及び/又は「キメラ」型とは、元々の抗体と比較して、ヒト抗マウス抗体(HAMA)、ヒト抗キメラ抗体(HACA)又はヒト抗ヒト抗体(HAHA)応答の低減を生じる特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、又は抗体の他の抗原結合サブシーケンス)を含む抗体を意味し、前記非ヒト免疫グロブリンに匹敵する結合特性を同時に保持しながら、所望の効果を再現するのに必要な前記非ヒト免疫グロブリンから誘導された必要な部分(例えば、CDR、抗原結合領域、可変ドメイン等)を含む。殆どの部分において、ヒト化抗体は、レシピエント抗体の補体決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力(例えば、CD44に対する特異性)を有する非ヒト種(ドナー抗体)の補体決定領域の残基に置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入CDR又はFR配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに洗練し、最適化するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR残基がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒトの免疫グロブリンのものを含む。
【0038】
ここで使用される場合、「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合の原因となる抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」(例えば、Kabatら, Sequences of Polypeptides of Immunological Interest, 5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991)に従った、軽鎖可変ドメイン中の残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)と、重鎖可変ドメイン中の残基31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3))からのアミノ酸残基、及び/又は「高頻度可変ループ」(つまり、軽鎖可変ドメイン中の残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)と、重鎖可変ドメイン中の26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及び Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917(1987))からの残基を含む。「フレームワーク領域」あるいは「FR」残基は、ここに定義される高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。ここで使用される場合、「重鎖可変ドメイン」、「Vドメイン」及び/又は「V」は、交換可能に使用され、抗体の重鎖の高頻度可変領域(CDR及びフレームワークドメインの双方を含む)を言及し;「軽鎖可変ドメイン」、「Vドメイン」及び/又は「V」は、交換可能に使用され、抗体の重鎖の高頻度可変領域(CDR及びフレームワークドメインの双方を含む)に言及する。
【0039】
本明細書を通して、ハイブリドーマ細胞株、並びにそこから生成されるモノクローナル抗体は、ATCC受託番号PTA-4621により引用される。この抗体の内部名称はARH460-16-2である。よって、PTA-4621に対する引用は、抗CD44抗体を生成するATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞クローンに言及し得、又はハイブリドーマそれ自体により生成される抗CD44に言及しうる。また、PTA-4621に対する引用は、内部名称ARH460-16-2を有する抗体も意味する。従って、ここで使用される場合、PTA-4621のキメラ型は、「chPTA-4621」又は「chARH460-16-2」と言及されてもよく、PTA-4621のヒト化型は、「huPTA-4621」又は「huARH460-16-2」と言及されてもよい。当業者であれば、抗体又はハイブリドーマクローンに言及されているかどうかにかかわらず、文脈からすぐに認識するであろう。マウスモノクローナル抗CD44抗体PTA-4621は、米国特許第6180357号で教示された患者特異的抗癌抗体を生成するための方法論を使用して発見された。該プロセスを使用し、患者の肺腫瘍バイオプシー及びNCI-H460肺癌細胞株の双方からの細胞で、マウスを免疫化した。抗体は米国特許第7252821号に開示され、抗体を発現するハイブリドーマ細胞株は、受託番号PTA-4621にて、2002年9月4日に、American Type Culture Collection, 10801 University Blvd., Manassas, VA 20110-2209に寄託されている。この抗体は、双方の予防性を含む、多くの前臨床性異種移植において、かなりの抗腫瘍効果を示し、ヒトの乳癌(米国特許第7252821号に開示)、肝臓癌(米国特許出願第11/786165号に開示)、及び前立腺癌(米国特許第7507537号に開示)のインビボモデルで確立されている。さらに、化学療法剤(シスプラチン)と併用したPTA-4621治療により、インビボ前立腺癌モデル(同頁)で樹立された抗腫瘍活性が示された。マウス抗体PTA-4621/ARH460-16-2のキメラ及びヒト化型は、米国特許出願第11/807887号に開示されている。
【0040】
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能性がある突然変異を除いて同一な抗体を意味する。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物に対して、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体によって合成的に汚染されていない点で有利である。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要として構築されたものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ(マウス又はヒト)法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4816567号を参照)。また「モノクローナル抗体」は、Clacksonら.,Nature, 352:624-628(1991)及びMarksら, J. Mol. Biol. 222: 581-597(1991)に記載の技術を使用し、ファージ抗体ライブラリーから単離することができる。
【0041】
「癌性疾患修飾抗体」(CDMAB)は、患者に有益な方法、例えば腫瘍量を低減させ、又は腫瘍を担持する個体、及びその抗体-リガンドの生存率を長くすることにより、癌性疾患のプロセスを修飾するモノクローナル抗体を称する。
【0042】
関心ある抗原、例えばCD44に「結合する」又は「特異的に結合する」抗体又は抗体断片は、抗体が抗原を発現する細胞のターゲティングにおける治療剤又は診断剤として有用であるように、十分な親和性で抗原と結合可能なものである。抗体がCD44に結合する場合、通常は、他のレセプターに対して、CD44に優先的に結合し、偶発的結合、例えば非特異的Fc定常、又は他の抗原と共通の翻訳後修飾への結合を含まず、他のタンパク質と実質的に交差反応しないものであってよい。関心ある抗原に結合する抗体を検出する方法は、当該技術でよく知られており、限定されるものではないが、FACS、細胞ELISA、及びウエスタンブロット等のアッセイが含まれる。
【0043】
好ましい実施態様では、本発明の方法に使用される抗体又は抗体断片は、当該技術分野で知られている標準的な方法を使用し、CD44へのマウスモノクローナル抗体PTA-4621の結合に競合し、及び/又は、特にHNSCCにおいて発現する場合に、CD44に特異的に結合する。CD44は、細胞外マトリックスと細胞骨格との間の、それらの保存された細胞外HA結合領域及び細胞内アンキリン結合領域を介した、直接結合を媒介する。また、CD44タンパク質はプロテアーゼを介して可溶性形態(solCD44)で放出され、通常の循環中、及び唾液で検出可能である。CD44レセプターは、多くの細胞型で発現するイソ型のファミリーを含む。これらのイソ型は、CD44mRNAに存在する可変エクソン(エクソン5-14)の領域の代替スプライシングにより生じ、膜貫通ドメインに細胞外領域のアミノ末端ドメインを結合させる、異なる「幹」に帰する。イソ型は、ケラチノサイトにおいて、CD44v3-10、及びCD44v8-10又はCD44上皮(CD44E)、CD44標準(CD44s)等、正常細胞で見いだされる。他のCD44変異体イソ型(CD44v)は、種々の腫瘍で特異的に発現する。特定の態様では、本発明の方法に使用される抗体及びその抗原結合断片は、CD44の細胞外領域のアミノ末端ドメインに免疫特異的に結合し、よってヒトにおいて発現するCD44の多く、好ましくは全ての機能的イソ型に対する特異性を示す。特定の態様では、本発明は、HNSCCにより発現した場合、CD44に特異的に結合する抗体及び抗原結合断片の使用を含む。特定の態様では、本発明の方法に使用される抗体及び抗原結合断片は、AFDGPITITIV(配列番号:12)のアミノ酸配列を有するCD44の細胞外領域のアミノ末端ドメインのエピトープに結合する。好ましくは、ここで開示された方法に使用される抗体は、当該技術分野で知られている標準的な方法により決定される場合、PTA-4621とCD44と結合について競合する。
【0044】
ここで使用される場合、「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養」なる表現は交換可能に使用され、全てのこのような名称は子孫を含む。また、全ての子孫は、計画的又は偶発的な突然変異により、DNA含有量が厳密に同一でなくてもよいと理解される。最初に形質転換した細胞についてスクリーニングし、同じ機能又は生物活性を有する変異体子孫が含まれる。それは明確な命名が意図される文脈から明らかになるであろう。
【0045】
ここで使用される場合、「癌又は腫瘍部位に直接投与」なる語句、及び類似する語句は、限定されるものではないが、腫瘍又は腫瘍周囲に直接、腫瘍又は腫瘍周囲に連続又は不連続にかん流、腫瘍又は腫瘍周囲に容器の導入、腫瘍又は腫瘍周囲に持続放出装置の導入、腫瘍又は腫瘍周囲に持続放出製剤の導入、腫瘍への直接適用、腫瘍領域に実質的に直接供給される動脈に直接注射、腫瘍領域に実質的に排出されるリンパ管に直接注射、実質的に被包化された腔(例えば、胸膜腔)又は管腔(例えば、小胞内)に直接又は実質的に直接導入等、抗体、断片又は組成物を一回又は複数回注射することを含む、直接又は実質的直接導入を称する。「腫瘍周囲」は、腫瘍境界、例えば限定するものではないが、触知知る腫瘍境界に関し、約10cm内、好ましくは5cm内、より好ましくは1cm内の領域を記載する用語である。発生予防又は再発予防において「直接投与」は、癌の発症又は再発の危険性がある部位に、直接投与することと定められる。
【0046】
ここで使用される場合、「核酸」、「核酸配列」及び「ヌクレオチド配列」なる用語には、DNA分子(例えば、cDNA又はゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、DNAとRNA分子の組合せ、又はハイブリッドDNA/RNA分子、及びDNA又はRNA分子の類似体が含まれる。このような類似体は、例えば限定されるものではないが、イノシン又はトリチル化塩基を含む、ヌクレオチド類似体を使用して生じさせることができる。またこのような類似体は、ヌクレアーゼ耐性又は細胞膜を通過する能力の増大等、分子に有益な特性を付与する修飾骨格を有する、DNA又はRNA分子を含むことができる。核酸又はヌクレオチド配列は単鎖、二本鎖であってよく、単鎖及び二本鎖部分の双方を含んでいてよく、三本鎖部分を含んでいてよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0047】
ここで使用される「ハイブリダイゼーション」又は「ハイブリダイズ」なる用語は、緊縮又は非緊縮条件下でのハイブリダイゼーションに関する。前記ハイブリダイゼーション条件は、例えばSambrook, Russell;「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y.(2001); Ausubel; 「Current Protocols in Molecular Biology」, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.(1989),又は Higgins and Hames(編); 「Nucleic acid hybridization, a practical approach」 IRL Press Oxford, Washington DC,(1985)に記載されている従来からのプロトコルに従い確立されていてよい。条件の設定は当業者の技量の範囲内であり、当該技術で記載されているプロトコルに従い決定することができる。よって、特異的にハイブリダイズする配列のみの検出には、通常、緊縮ハイブリダイゼーション、及び洗浄条件、例えば65℃で、0.1X SSC、0.1%のSDSが必要となるであろう。相同又は厳密ではない相補性配列についての、非緊縮ハイブリダイゼーション条件は、65℃での、6x SSC、1%のSDSに設定可能である。よく知られているように、測定される核酸の組成及びプローブ長は、ハイブリダイゼーション条件のさらなるパラメーターを構成する。上述した条件の変形例の記載は、ハイブリダイゼーション実験の背景を抑制するために使用される代替ブロック試薬の包含及び/又は置換を介して、当該技術で常套的な方法に従い達成されてよい。典型的なブロック試薬には、デンハート試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA、及び商業的に入手可能な特許製剤が含まれる。特定のブロック試薬の包含には、融和性の問題のために、上述したハイブリダイゼーション条件の変更を必要とする可能性がある。また、ハイブリダイズする核酸分子は上述した分子の断片も含む。このような断片は、WAVE1をコードする核酸配列、又は少なくとも12のヌクレオチド、好ましくは少なくとも15、さらに好ましくは少なくとも18、より好ましくは少なくとも21のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも30のヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも40のヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも60のヌクレオチド長を有するその機能的断片を含む。さらに、上述した任意の核酸分子とハイブリダイズするあ、核酸分子には、これらの分子の相補性断片、誘導体及び対立遺伝子変異体が含まれる。さらに、ハイブリダイゼーション複合体は、相補性G及びC塩基の間、相補性A及びT塩基の間の水素結合の形成による、2つの核酸配列の間の複合体を称し;これらの水素結合は、塩基の積み重ね相互作用により、さらに安定化させることができる。2つの相補的核酸配列は、抗平行配置に水素結合する。ハイブリダイゼーション複合体は、溶液中(例えば、Cot又はRot分析)、又は一方が溶液中に存在する核酸配列と、他方が固体状支持体(例えば、膜、フィルター、チップ、ピン又はスライドガラスで、そこに細胞が固定化されるもの)に固体化された核酸配列との間に形成されてもよい。「相補的」又は「相補性」なる用語は、塩基対形成による、許容的塩及び温度条件下での、ポリヌクレオチドの自然な結合を称する。例えば、配列「A-G-T」は相補性配列「T-C-A」に結合する。2本の単鎖分子間の相補性は、いくつかの核酸のみが結合する場合は「部分的」であってよく、又は全体的な相補性が単鎖分子間に存在する場合には完全であってよい。核酸鎖の間の相補性の程度は、核酸鎖のハイブリダイゼーションの効率及び強度において、十分な効果を有している。このことは、増幅反応において特に重要であり、核酸鎖間の結合に依存する。
【0048】
「ハイブリダイズする配列」なる用語は、本発明の抗CD44抗体又は抗原結合断片MPVHドメイン又はVLドメインをコードする上述した核酸配列(例えば、配列番号:1-11)、及び/又はこのような抗CD44抗体又は断片のCDRと、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%、より特に好ましくは少なくとも90%、さらに特に好ましくは少なくとも95%、及び最も好ましくは少なくとも97%の同一性を示す配列を意味する。
【0049】
本発明において、2又はそれ以上の核酸又はアミノ酸配列における「同一性」又は「パーセント同一性」なる用語は、比較ウインドウ上、又は当該技術分野で知られている配列比較アルゴリズムを使用して測定した場合の指定領域上の最大一致について比較又は整列させた場合、又は手動アルゴリズム及び目視検査により、同様であるか、特定のパーセンテージのアミノ酸残基又はヌクレオチドが同様である(例えば、配列番号:1−11のアミノ酸配列、又は配列番号:1−11のアミノ酸配列をコードする核酸配列と60%又は65%同一性、好ましくは70−95%同一性、より好ましくは少なくとも95%同一性)、2又はそれ以上の配列又はサブシーケンスを称する。例えば、60%ないし95%、又はそれ以上の配列同一性を有する配列は、実質的に同一であるとみなされる。また、このような定義は試験配列の相補鎖に適用される。当業者であれば、アルゴリズム、例えば当該技術分野で知られているCLUSTALWコンピュータプログラム(Thompson, Nucl. Acids Res. 2(1994) 4673-4680)又はFASTDB(Brutlag, Comp. App. Biosci. 6(1990) 237-245)をベースにしたものを使用し、如何にして配列間の同一性を決定するか分かるであろう。
【0050】
FASTDBアルゴリズムは、典型的には、その計算において、配列内部の非適合欠失又は付加、すなわちギャップを考慮しないが、これは手動で訂正可能で、%同一性の過大評価を回避することができる。しかしながら、CLUSTALWは、その同一性の計算において、考慮される配列ギャップをとる。また、これにおいて当業者が入手可能なのはBLAST及びBLAST2.0アルゴリズムs(Altschul, Nucl. Acids Res. 25(1997) 3389-3402; Altschul, J. Mol. Evol. 36(1993) 290-300; Altschul, J. Mol. Biol. 215(1990) 403-410)である。核酸配列についてのBLASTNプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)3、期待値(E)10、M=5、N=4、及び双方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)3、及び期待値(E)10を使用する。BLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff, PNAS 89(1989) 10915)は、アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4、及び双方の鎖の比較を使用する。
【0051】
さらに、本発明は、その配列が、上述のハイブリダイズする分子の配列との比較において変化している核酸分子に関する。本発明で使用される場合、「遺伝コードの結果として変化」なる用語は、同様のアミノ酸に対して、遺伝コードが異なるヌクレオチド配列の重複のためであることを意味する。
【0052】
BLASTを使用する類似のコンピューター技術を用い、ヌクレオチドデータベース、例えばGenBank又はEMBLにおいて、同一又は関連する分子について探索する。この分析は多重膜ベースのハイブリダイゼーションよりもかなり速い。さらに、コンピューター探索の感度を変更し、任意の特定の適合が正確又は類似に分類されているかどうかを決定することができる。探索の基本は、
(%配列同一性×%最大BLASTスコア)/100
として定義される生成物スコアであり、2つの配列間の類似度合い、及び配列適合の長さの双方を考慮する。例えば、生成物スコア40であると、適合は1−2%の誤差内で正確であり、70であると、適合は正確であろう。類似の分子が、15〜40の生成物スコアを示すものを選択することにより同定されるが、低スコアであると、関連分子が同定される可能性がある。配列アルゴリズムを生成可能なプログラムの他の例は、当該技術分野で知られているCLUSTALWコンピュータプログラム(Thompson, Nucl. Acids Res. 2(1994) 4673-4680)又はFASTDB(Brutlag, Comp. App. Biosci. 6(1990) 237-245)である。
【0053】
「治療又は治療する」とは、治療的処置及び予防又は防止手段の双方を意味し、ここで目的は、標的となる病状又は疾患(例えば、HNSCC)、又はそれに関連した一又は複数の症候を予防、寛解又は遅延化させる(和らげる)ことである。また、本用語は、癌、特にHNSCCに罹患している患者の発症の遅延、阻害(又は増殖の低減又は停止)、影響の軽減、生命の延長を示すためにも使用される。処置が必要な者には、疾患を患っていると診断された者、疾患に罹患している疑いがある者、疾患に罹患しやすい者、並びに疾患が予防される者が含まれる。よって、ここで処置される哺乳動物は、疾患を患っているか、又は疾患に罹患しやすいか、又はその疑いがあると診断されている。いくつかの実施態様では、処置は、本発明の方法の一又は複数の治療剤の投与に起因して、原発性、局所性、又は転移性の癌組織を根絶、除去、変性、又は制御することを意味する。他の実施態様では、このような用語は、このような病気を患っている被験者への、一又は複数の治療剤の投与に起因して、癌の広がりを最小化又は遅延化させることを意味する。
【0054】
ここで使用される場合、「予防する」、「予防の」及び「予防」なる用語は、予防又は治療剤の投与に起因して、被験者における癌疾患の一又は複数の症候の発生又は再発を予防することを意味する。
【0055】
主として、疾患の何らかの証拠(例えば、前悪性「前癌」又は異形成病変で、裸眼で可視できる又はできないが、組織学的に前悪性的変化を包含しているもの)が存在する前に、予防処置を開始することができるため、本発明は、癌を発症する危険性があるとみなされている個体に特に有益である。「危険性がある」個体には、例えば、影響を受けやすい個体において、統計的に癌を促進させることが示されているレベルで、例えば消費、例えば吸入及び/又は摂取により、発癌性物質に暴露されている個体が含まれる。また、紫外線に暴露されている、又はその環境、職業、及び/又は遺伝の危険性にある個体、並びにポリープ等、前癌状態の兆候を示す者も含まれる。同様に、癌又は転移発症の非常に初期(すなわち、一つのみ又は数個の異常細胞が個体の体内、又は個体の組織の特定の部位に存在している)段階の個体には、このような予防的処置が有益である。
【0056】
ここで使用される「有効量」及び「治療に有効」なる用語は、意図する効果又は生理学的結果を生じさせるために、その投与内で効果的な期間有用な、抗体の量及び濃度を意味する(急性又は慢性投与、及び周期的又は連続投与を含む)。本発明で使用される抗体の有効量は、例えば癌、特に腫瘍及び/又は腫瘍細胞の増殖を阻害し、癌に罹患している、又は癌の危険性にある患者の予後を改善する、他の癌治療の予後を改善する量を含む。
【0057】
「患者」及び「被験者」なる用語は交換可能に使用され、本発明の方法での治療又は診断が提供される動物、ヒト又は非ヒトを記述するために、本明細書で使用される。
【0058】
「頭頸部扁平上皮癌」又はHNSCCなる用語には、限定されるものではないが、口、唇、鼻腔、副鼻腔、咽頭、喉頭、上咽頭、喉及び気管の癌が含まれる。
【0059】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学化合物である。
【0060】
治療目的の「哺乳動物」は、哺乳動物として分類される任意の動物を意味し、ヒト、マウス、SCID又はヌードマウス又はマウス系統のもの、飼育動物及び家畜、動物園、スポーツ又はペット用動物、例えばヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を含む。好ましくは、ここでの哺乳動物はヒトである。
【0061】
ここで使用される場合、「併用して」なる用語は、1を越える予防及び/又は治療剤、例えば、ここで開示された抗CD44抗体又はその抗原結合断片に加えて、予防又は治療剤を使用することを意味する。「併用して」なる用語の使用は、予防及び/又は治療剤を、HNSCC等の疾患を患っている被験者に投与する順番を制限するものではない。第1の予防又は治療剤は、第2の予防又は治療剤の投与の(例えば、1分、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間)前、同時、又は逐次(例えば、1分、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、12週間後に)、疾患に罹患しているか、又は罹患している疑いのある被験者に投与することができる。予防又は治療剤は、それらが他の方法で投与されるよりも、増加した有益性をもたらすように、本発明の薬剤を他の薬剤と一緒に作用可能な順序及び時間間隔で、被験者に投与される。任意の付加的な予防又は治療剤は、他の付加的な予防又は治療剤と共に、任意の順序で投与することができる。また「併用して」なる用語は、当該技術分野で知られている標準的な抗癌処置様式、例えば放射線治療又は外科手術と共に、ここで開示された抗CD44抗体又はその抗原結合断片を使用することを意味する。
【0062】
ここで使用される場合、「イムノ-コンジュゲート」は、例えば細胞毒、放射性剤、サイトカイン類、インターフェロン、標的又はレポーター部分、酵素、毒素、抗腫瘍剤又は治療剤に、化学的又は生物学的に結合した抗体のような任意の分子又はCDMABを意味する。抗体又はCDMABは、それがその標的と結合できる限り、分子に沿った任意の位置で、細胞毒、放射性剤、サイトカイン、インターフェロン、標的又はレポーター部分、酵素、毒素、抗腫瘍剤又は治療剤と結合されうる。イムノ-コンジュゲートの例には、抗体毒素化学コンジュゲート、及び抗体-毒素融合タンパク質が含まれる。イムノコンジュゲートは特に診断剤としての用途が見いだされている。
【0063】
抗腫瘍剤としての使用に、及び/又はここで開示された診断方法に関連して、適した放射性剤は当業者に知られている。例えば、131I又は211Atが使用されうる。これらの同位体は一般的な技術を使用して抗体に結合させられる(例えば、Pedleyら, Br. J. Cancer 68, 69-73(1993))。あるいは、抗体に結合される抗腫瘍剤は、プロドラッグを活性化させる酵素である。抗体複合体が投与されるとすぐに、その細胞毒型に転換される腫瘍部位に到達するまで、その不活性型を保持しているプロドラッグが投与されうる。実際、抗体-酵素コンジュゲートが患者に投与され、治療される組織の領域への局在が許容される。ついで、プロドラッグは、細胞毒剤への転換が、処置される組織の領域で生じるように、患者に投与される。あるいは、抗体にコンジュゲートされる抗腫瘍剤は、サイトカイン、例えばインターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、又は腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)である。抗体は、サイトカインが、他の組織に影響を及ぼすことなく、腫瘍への損傷又はその破壊を媒介するように、腫瘍へのサイトカインを標的とする。サイトカインは、一般的な組換えDNA技術を使用し、DNAレベルで抗体に融合される。インターフェロンもまた使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1A】図1は、HNSCC細胞株T.Tn、SCC-15及びDetroit-562(図1A)に対するARH460-16-2抗体の代表的FACSヒストグラムを示し、ARH460-16-2がこのような細胞株に結合することが示されている。図1Aにおいては、抗体C225(抗EGFR)がコントロールである。
【図1B】図1は、HNSCC細胞株CAL27(図1B)に対するARH460-16-2抗体の代表的FACSヒストグラムを示し、ARH460-16-2がこのような細胞株に結合することが示されている。図1Bにおいては、抗CD20抗体リツキサンTMがコントロールである。
【図2】図2は、樹立されたヒトT.Tn HNSCCモデルでの腫瘍増殖に対するchARH460-16-2の効果を示す。垂直の破線は、抗体が腹腔内投与された期間を示す。データ点は平均+/−SEMを表す。
【図3】図3は、樹立されたヒトT.Tn HNSCCモデルでのマウス体重における、キメラPTA-4621の効果を示す。データ点は平均+/−SEMを表す。
【図4】図4は、樹立されたSCC-15 HNSCCモデルでの腫瘍増殖に対するヒト化PTA-4621の効果を示す。垂直な破線は、抗体が腹腔内投与された期間を示す。データ点は平均+/−SEMを表す。
【図5】図5は、樹立されたSCC-15 HNSCCモデルでのマウス体重における、ヒト化PTA-4621の効果を示す。データ点は平均+/−SEMを表す。
【図6】図6は、樹立されたDetroit562 HNSCCモデルでの腫瘍増殖に対するヒト化PTA-4621の効果を示す。垂直な破線は、抗体が腹腔内投与された期間を示す。データ点は平均+/−SEMを表す。
【図7】図7は、樹立されたDetroit562 HNSCCモデルでのマウス体重に対するヒト化PTA-4621の効果を示す。データ点は平均+/−SEMを表す。
【図8】図8は、樹立されたCAL27 HNSCCモデルでの相対的腫瘍体積に対するヒト化PTA-4621の効果を示す。
【図9】図9は、樹立されたCAL27 HNSCC異種移植モデルでの腫瘍増殖に対するヒト化PTA-4621の効果を示す。腫瘍体積は群平均±マイナスSEMで提供される。垂直な破線は、投与の初日及び最終日を示す。
【図10】図10は、樹立されたCAL27 HNSCCモデルでのマウスに対するヒト化PTA-4621の効果を示す。体重は群平均±SEMで提供される。
【図11】図11は、マウスモノクローナル抗体PTA-4621(配列番号:1)のVドメインのアミノ酸配列を表す。配列の残基はカバットに従い番号付けされている。CDRには下線を付し、さらに配列の上部に破線で識別し;VCDR1(配列番号:3)は残基31から35に相当し、VCDR2(配列番号:4)は残基50から65に相当し、VCDR3(配列番号:5)は残基95から102に相当する。
【図12】図12は、マウスモノクローナル抗体PTA-4621(配列番号:2)のVドメインのアミノ酸配列を表す。配列の残基はカバットに従い番号付けされている。CDRには下線を付し、さらに配列の上部に破線で識別し;VCDR1(配列番号:6)は残基24から34に相当し、VCDR2(配列番号:7)は残基50から67に相当し、VCDR3(配列番号:8)は残基89から97に相当する。
【図13】図13は、マウスモノクローナル抗体PTA-4621(配列番号:9及び10)に基づく2つの代替的ヒト化Vドメインのアミノ酸配列を表す。配列の残基はカバットに従い番号付けされている。
【図14】図14は、マウスモノクローナル抗体PTA-4621(配列番号:11)に基づくヒト化Vドメインのアミノ酸配列を表す。配列の残基はカバットに従い番号付けされている。
【0065】
(詳細な説明)
本発明は、抗CD44抗体PTA-4621が、ネイキッド(すなわち未コンジュゲート)抗体として、HNSCCの治療に効果的であることを驚くべきことに示したという点で、特定された技術的問題を解決する。特に、HNSCCの樹立されたモデルにおける過去の抗CD44治療とは異なり、PTA-4621の未コンジュゲートキメラ及びヒト化型が、T.Tn、SCC-15、Detroit562及びCal27細胞の異種移植を含むHNSCCモデルにおいて腫瘍増殖を有意に低減し、及び/又は阻害した。
【0066】
従って、本発明は、抗CD44抗体、特に当該技術分野で知られている方法に従い、マウスモノクローナル抗体PTA-4621と結合について競合する抗CD44抗体、及び/又はCD44の細胞外領域のアミノ末端ドメインに免疫特異的に結合し、ヒトにおいて発現する場合、CD44の一又は複数のアイソタイプを認識する抗CD44抗体の使用を含む、HNSCCに罹患している患者の臨床状態を予防し、治療し及び/又は寛解する方法を提供する。ある態様では、本発明は、ここで開示されたような抗CD44抗体、又はその抗原結合断片を有効量、患者に投与することを含む、(i)HNSCCの腫瘍サイズ、増殖速度、感染度、悪性度合い、及び/又は再発の危険性を低減させ、(ii)治療後の無病間隔を長くし、及び/又は(iii)HNSCCを患っている患者における、呼吸、嚥下、及び/又は言語機能を改善する方法を提供する。臨床的改善性は、例えば被験者があまり困難なく呼吸できる能力、患者が固形物に対して液体を嚥下する能力、閉塞度合い、言語の質又は量、及び臨床技術分野で知られている他の指標を評価することにより、主観的又は客観的に決定することができる。
【0067】
本発明の方法を使用する癌治療の臨床転帰は、関連する技術の当業者、例えば医師により、容易に識別可能である。例えば、癌の臨床マーカーを測定するための標準的医療試験を、処置の有効性の強力な指標とすることができる。このような試験には、限定されるものではないが、理学的検査、性能尺度、疾患マーカー、12誘導心電図、腫瘍測定、組織バイオプシー、細胞検査、細胞学、腫瘍計測の最長径、X線写真、腫瘍のデジタル画像、バイタルサイン、重量、有害事象の記録、感染エピソードの評価、併用剤の評価、痛みの評価、血液又は血清生化学検査、尿検査、CTスキャン、及び薬物動態分析が含まれる。さらに、本発明の方法で開示されたような抗CD44抗体、断片又は組成物と、他の癌治療とを含む併用治療の相乗効果は、単独治療を受けた患者での比較研究により測定されてよい。
【0068】
特に、HNSCCの場合、呼吸、嚥下、言語、及びある種の寿命測定の質における改善性は、容易に解明可能である。さらに、HNSCCの寛解は、当業者により許容可能な基準、例えば「New guidelines to evaluate the response to treatment in solid tumors. European Organization for Research and Treatment of Cancer, National Cancer Institute of the United States, National Cancer Institute of Canada」,J Natl Cancer Inst. 92(2000) 205-16を使用して評価することができる。
【0069】
ある実施態様では、癌は、ここで開示された抗CD44抗体、断片又は組成物の直接投与による治療に対して影響を受けやすい。例えば、標的となる腫瘍質量は、皮膚の表面に近い場合がある。他の例では、病変組織は嚢胞により被包されている場合があるし、又は限定されるものではないが、管腔を含む実質的に囲い込まれた腔に見いだされる。投与されるここで開示された抗CD44抗体、断片又は組成物の有効投与量は、投与態様に応じて変化しうる。直接投与(例えば、腫瘍内注射)は、全身、静脈内投与と比較して、かなり少量の、開示された抗CD44抗体又は断片の全身投与量を必要とする。それらの環境では、局所投与をさらに少量にでき、免疫毒素の循環血漿レベルの低下が予期及び所望されていることは、当業者には明らかであろう。このような場合、ここで開示されたような抗CD44抗体又は抗原結合断片は、サイクル当量当たりの全投与量で、又は安全性が樹立された最大耐性投与量以下で、腫瘍内的に投与することができるが、投与量は腫瘍量に関して標準化される。ある実施態様では、投与量は、腫瘍量の約20−50%を超えない容量で投与される。
【0070】
また本発明は、HNSCCを治療するための外科手術前、手術中、又は手術後に、ここで開示された抗CD44抗体、断片又は組成物を有効量投与することを含む、手術後の合併症の危険性を低減するための方法を提供する。
【0071】
さらに本発明は、ここで開示された抗CD44抗体、断片又は組成物を有効量、それを必要とする患者に投与(例えば、直接投与)することを含む、HNSCCの発症を予防し、再発を予防し又は遅延化させ、又は再発率を低減するための方法を提供する。このような処置を必要とする患者への、ここで開示されたような抗CD44抗体、断片又は組成物の直接投与により、臨床的に有意な効能を有する他の癌治療剤の用量を低減させることができる。他の癌治療剤の用量を低減させるというかかる有用性は、本発明の方法なしには観察されない場合がある。従って、本発明は、一又は複数の他の癌の治療剤を低減した用量で投与することを含む、腫瘍又は癌を治療するための方法を提供する。
【0072】
また本発明は、ここで開示された抗CD44抗体、断片又は組成物を投与することを含む、一又は複数の他の癌治療剤に対して腫瘍又は癌を感作させるための方法を提供する。非限定的実施態様では、他の癌治療剤は、当該技術分野で知られているHNSCCに対して活性があることが知られている化学療法剤を含む。他の非限定的実施態様では、他の癌治療剤は放射線を含む。他の癌治療剤は、ここで開示された抗CD44抗体、断片又は組成物の投与前、重複して、同時に、及び/又は後に投与されうる。同時に投与される場合、ここで開示された抗CD44抗体、断片又は組成物と他の癌治療剤は、単一の製剤又は別の製剤で投与され得、別々であるならば、場合によっては、異なった投与方法による。従って、一又は複数の免疫毒素と一又は複数の他の癌治療剤との組合せが、腫瘍又は癌に抗するように、相乗的に作用しうる。
【0073】
本発明の方法に使用される抗CD44抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号:1、配列番号:9又は配列番号:10のアミノ酸配列を有するVドメイン、配列番号:2又は配列番号:11のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び/又は配列番号:3のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:4のアミノ酸配列を有するVCDR2、配列番号:5のアミノ酸配列を有するVCDR3、配列番号:6のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:7のアミノ酸配列を有するVCDR2、及び配列番号:8のアミノ酸配列を有するVCDR3の一又は複数を含みうる。特定の実施態様では、本発明は、配列番号:1のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号:2の配列を有するVドメインを含む、抗CD44抗体又はその抗原結合断片の使用を包含する。他の実施態様では、本発明は、配列番号:9のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号:11の配列を有するVドメインを含み、又は配列番号:10のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号:11の配列を有するVドメインを含む、抗CD44抗体又はその抗原結合断片の使用を包含する。ある種の実施態様では、本発明は、配列番号:3のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:4のアミノ酸配列を有するVCDR2、配列番号:5のアミノ酸配列を有するVCDR3、配列番号:6のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:7のアミノ酸配列を有するVCDR2、及び配列番号:8のアミノ酸配列を有するVCDR3のそれぞれを含む、抗CD44抗体又はその抗原結合断片の使用を包含する。
【0074】
本発明の方法に使用される抗CD44抗体又は抗原結合断片は、(i)CD44、特にCD44の細胞外領域のアミノ末端ドメインに特異的に結合することを特徴とし、(ii)AFDGPITITIV(配列番号:12)のアミノ酸配列を有するCD44の細胞外領域のアミノ末端ドメインのエピトープに特異的に結合することを特徴とし、又は(iii)CD44又はそのエピトープに対する(特異的)抗体の相互作用の定量化を含むことを特徴とする、当該技術分野で知られている任意の免疫学又は生化学をベースとした方法を使用し、マウスモノクローナル抗体PTA-4621と結合について競合することを特徴としうる。CD44又はそのエピトープへの、本発明の抗体の特異的又は競合的結合は、例えば限定されるものではないが、ELISAアッセイ、表面プラズモン共鳴アッセイ、免疫沈降アッセイ、アフィニティークロマトグラフィー、及び平衡透析を含む、免疫学又は生化学をベースとした方法を使用して測定可能である。イムノアッセイには、限定されるものではないが、若干の例を挙げれば、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散法、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線測定法、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ等の技術を使用する、競合及び非競合アッセイシステムが含まれる。 このようなアッセイは常套的であり、当該技術分野でよく知られている。
【0075】
本発明のヒト化抗体は、抗原、例えばCD44と、抗体との相互作用の動力学的パラメータを特徴とする、当該技術分野で知られている任意の表面プラズモン共鳴をベースにしたアッセイを使用して、アッセイすることができる。当該技術分野で知られているように、商業的に入手可能な任意のSPR機器を本発明で使用することができる。
【0076】
本発明は、標的又はレポーター部分が結合する、CDMAB、例えば抗CD44抗体又はその抗原結合断片の使用を考慮する。標的部分は、結合対の第1のメンバーである。例えば抗腫瘍剤は、このような対の第2のメンバーにコンジュゲートし、抗原結合タンパク質が結合する部位を指向する。このような結合対の一般的な例は、アビジン及びビオチンである。好ましい実施態様では、ビオチンは本発明のCDMABの標的抗原にコンジュゲートし、よってアビジン又はストレプトアビジンにコンジュゲートする抗腫瘍剤又は他の部分に対しての標的が提供される。また、ビオチン又は他のこのような部分は、本発明のCDMABの標的抗原に結合し、検出可能なシグナル生成剤がアビジン又はストレプトアビジンにコンジュゲートする、例えば診断システムにおけるレポーターとして使用される。さらに本発明の方法のCDMABは、付与された生物学的反応を修飾する治療剤又は薬剤部分にコンジュゲートすることもできる。治療剤又は薬剤部分は、古典的な化学療法剤に限定されるとは解釈されない。例えば、薬剤部分は、所望の生物活性を有するタンパク質又はペプチドであってもよい。このようなタンパク質には、例えば毒素(例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、ジフテリア毒素、リシン、ゲオニン)、及び酵素、タンパク質(例えば、腫瘍壊死因子)、インターフェロン(例えば、α-インターフェロン(IFN-α)、β-インターフェロン(IFN-β))、アポトーシス剤、血栓剤、抗血管新生剤(例えば、アンジオスタチン、エンドスタチン)、生体応答修飾物質(例えば、リンホカイン、マクロファージコロニー刺激因子又は増殖因子)、プロテアーゼ、又はリボヌクレアーゼが含まれうる。また、本発明の方法に使用されるCDMABは、治療部分、例えば放射活性物質又は大環状キレート剤で、放射性金属イオンのコンジュゲートに有用なものにコンジュゲートすることもできる。大環状キレート剤の一般的な例には、リンカー分子を介して抗体に結合可能な、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N''-四酢酸(DOTA)である。このようなリンカー分子は一般的に知られており、当該技術分野で常套的に使用されている。
【0077】
標識化抗体、特にここで開示された抗CD44抗体又はそれらの抗原結合断片は、癌性疾患を検出、診断、又はモニターするための、診断又は予防目的で、本発明の方法に使用することができる。ここで記載される標識は、例えば本発明のインビボ又はインビトロ診断方法に使用される、抗CD44抗体又は抗原結合断片にカップリングする検出可能なシグナルである。シグナル生成剤は、外部手段、通常は電子放射により検出可能で、測定可能なシグナルである。最も多くの部分について、シグナル生成剤は、酵素、又は発色団又は放射性核種であるか、又は蛍光、リン光、又は化学発光により光を放出する。発色団は、紫外線又は可視領域の光を吸収する染料を含み、酵素触媒反応の基質又は分解生成物とすることができる。
【0078】
さらに、本発明の範疇には、当該技術分野でよく知られている調査又は診断方法のための、インビボ又はインビトロでのCDMABの使用が含まれる。ここで考慮されるような診断方法を実施するために、本発明は、本発明に有用なCDMABを収容するキットをさらに含む。このようなキットは、このような個体の細胞における、CDMAB標的抗原の過剰発現を検出することによる、ある種の癌の危険性がある個体を同定するのに有用である。
【0079】
本発明の実施に有用な抗体は、癌を予防し、治療し又は診断するための組成物として使用することができる。これらの組成物は低毒性であり、それらが液状調製物の形態である場合、又はヒトもしくは哺乳動物に経口的又は非経口的(例えば、血管内、腹腔内、皮下的等)に適した調製物の薬学的組成物である場合に、投与することができる。本発明の実施に有用な抗体は、それら自体により投与されてもよいし、又は適切な組成物として投与されてもよい。このような投与に使用される組成物は、抗体又はその塩、希釈剤又は賦形剤と共に、薬理学的に許容可能な担体を含有していてもよい。このような組成物は、経口又は非経口投与に適した薬学的調製物の形態で提供される。
【0080】
非経口投与用の組成物の例は、注射可能な調製物、坐薬等である。注射可能な調製物は、血管内、皮下、皮内及び筋肉内注射、点滴、関節内注射等の投与形態を含みうる。これらの注射可能な調製物は、公に知られている方法により調製することができる。例えば、注射可能な調製物は、注射用に従来から使用されている滅菌された水性媒体又は油性媒体に、本発明の抗体又はその塩を溶解、懸濁又は乳化させることによって調製することができる。注射用の水性媒体である場合、例えば、生理食塩水、等張液で、適切な可溶化剤、例えばアルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、硬化ヒマシ油のHCO-50(ポリオキシエチレン(50mol)付加物))等と組合せて使用可能な他の補助剤、及びグルコースを含有するものが存在する。油性媒体の場合、可溶化剤、例えば安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等と組合せて、例えば、ゴマ油、大豆油などが使用される。このように調製された注射は、通常、適切なアンプルに充填される。直腸投与用に使用される坐薬は、本発明の抗体又はその塩と、坐薬用の従来からの基剤を混合することにより調製することができる。経口投与用の組成物には、固体状又は液状の調製物、特に錠剤(糖衣及びフィルムコーティング錠剤)、丸薬、顆粒、パウダー状調製物、カプセル(ソフトカプセルを含む)、シロップ、エマルション、懸濁剤等が含まれる。このような組成物は、公に知られている方法により製造され、薬学的調製物の分野で常套的に使用されているビヒクル、希釈剤又は賦形剤を含みうる。錠剤用のビヒクル又は賦形剤の例は、ラクトース、デンプン、スクロース、ステアリン酸マグネシウム等である。
【0081】
有利には、上述の経口又は非経口用途の組成物は、活性成分の用量に適した単位用量で、薬学的調製物に調製される。このような単位用量調製物には、例えば錠剤、丸薬、カプセル、注射(アンプル)、坐薬等が含まれる。
【0082】
本発明の方法の抗体を含有する、前述の予防剤/治療剤の用量は、投与される被験者、標的とする病気、状態、投与経路等に応じて変えることができる。例えば、成人におけるHNSCC等を治療/予防する目的で使用される場合は、患者の体重の約0.0001mg/kg〜200mg/kg、又は0.0001mg/kg〜100mg/kgの用量で、本発明の抗体を静脈内に投与することが有利である。他の態様では、患者に投与される用量は、患者の体重の0.0001mg/kg〜20mg/kg、0.0001mg/kg〜10mg/kg、0.0001mg/kg〜5mg/kg、0.0001〜2mg/kg、0.0001〜1mg/kg、0.0001mg/kg〜0.75mg/kg、0.0001mg/kg〜0.5mg/kg、0.0001mg/kg〜0.25mg/kg、0.0001〜0.15mg/kg、0.0001〜0.10mg/kg、0.001〜0.5mg/kg、0.01〜0.25mg/kg、又は0.01〜0.10mg/kgである。一般的に、ヒト抗体は、外来ポリペプチドに対する免疫反応のために、他の種からの抗体よりも、ヒトの体内でより長い半減期を有する。よって、多くの場合、ヒト抗体の投与量を低下させ、投与頻度を少なくすることは可能である。さらに、例えば脂質化等の修飾により、抗体の組織浸透度、及び取込を高めることで、本発明の抗体又はその断片の投与量及び投与頻度は低減させることができる。他の態様では、本発明の抗体は、他の治療用組成物と組合せて使用され、被験者に投与される投与量は、該抗体が単剤治療として使用される場合よりも少ない。
【0083】
ここて提供される投与量及び投与頻度は、治療的に有効な及び予防的に有効なという用語に包含される。さらに、投与量及び頻度は、典型的には、投与される特定の治療剤又は予防剤、重症度、投与経路、並びに年齢、体重、反応性、及び患者の過去の病歴に応じて、各患者についての特異的な要因に従い変えることができる。適切なレジメンは、このような要因を考慮し、文献で報告され、米医薬品便覧(56.sup.th ed., 2002)で推奨されている投与量に従い、当業者により選択可能である。本発明の抗体、断片又は組成物の毎日の投与量は、単一のボーラス投与、又は24時間以上送達されるように、複数回投与に分割して投与することができる。また、毎日の全投与量は、全投与量が12時間、6時間、4時間、2時間、1.5時間、1.0時間、45分、30分、25分、20分、15分、10分、9分、8分、7分、6分、5分、4分、3分、2分、又は1分以上投与されるように、例えば注入を介して、延長期間投与されてもよい。状態が特に重度である場合は、投与量を状態に応じて増やしてもよい。
【0084】
本発明の方法に使用される抗体は、そのままで、又は適切な組成物の形態で投与することができる。投与に使用される組成物は、前述の抗体又はその塩、希釈剤又は賦形剤と共に、薬理学的に許容可能な担体を含有していてもよい。このような組成物は、経口又は非経口投与(例えば、血管内注射、皮下注射等)に適した、薬学的調製物の形態で提供される。上述した各組成物は、他の活性成分をさらに含有していてもよい。さらに本発明の抗体は、他の薬剤、例えばアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド等)、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート、5-フルオロウラシル等)、抗腫瘍抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン等)、植物由来の抗腫瘍剤(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソール等)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、イリノテカン等と組合せて使用してもよい。本発明の抗体及び上述した薬剤は、同時に、又は時差的に投与されてよい。本発明のヒト化抗体の投与方法には、限定されるものではないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内及び皮下)、硬膜外、及び粘膜(例えば、鼻腔内及び経口経路)が含まれる。特定の実施態様では、本発明の抗体は、筋肉内、静脈内、又は皮下的に投与される。組成物は、任意の簡便な経路、例えば注入又はボーラス注射により、上皮又は皮膚粘膜裏層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜)を介して吸収されることにより投与され得、他の生物学的活性剤と共に投与されうる。投与は、全身又は局所的でありうる。さらに、例えば、吸入剤又はネブライザー、及びエアロゾル化剤を含有する製剤の使用による、肺投与も使用可能である。
【0085】
利用される化学療法剤/他の抗体レジメンは、患者の状態の治療に適していると思われる任意のレジメンを含む。種々の悪性腫瘍は、特定の抗腫瘍抗体と特定の化学療法剤の使用が必要であり、患者間ベースで測定されるであろう。本発明の好ましい実施態様では、化学療法剤は、抗体治療と同時に、より好ましくはその後で投与される。しかしながら、本発明は、特定の方法又は投与経路に限定されるものではないことを強調すべきである。
【0086】
この明細書で述べられる全ての特許及び文献は、本発明が関連する分野の当業者のレベルを示している。
【0087】
本発明のある種の形態が例証されるが、ここに記載され、本発明は示される特定の形態及び部分の配置に限定されるものではないことが理解される。本発明の範囲を逸脱しない限り、様々な変化がなされ、本発明が明細書に示され記載されたものに限定されるとみなされるべきではないことは、当業者には明らかであろう。
【0088】
当業者であれば、本発明は、目的を実施し、記載された目標及び利点、並びにそこに固有のものを得るのに、良好に適合化されることを、容易に理解するであろう。ここに記載した任意のオリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、生物学的に関連する化合物、方法、手順及び技術は、現在、好ましい実施態様を表すものであり、例示を意図するもので、範囲の限定を意図しているものではない。発明の精神に含まれ、添付の特許請求の範囲により定まるここでの変更及び他の使用が当業者には生じる。本発明は、特定の好ましい実施態様に関連して記載したが、請求項記載の発明は、このような特定の実施態様に不当に限定されるべきではないことが理解されなければならない。実際、当業者には自明である本発明を実施するための記載された態様の様々な変形が、次の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【0089】
本発明にまた含まれるものは次の項目である:
1項: 抗CD44モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を、哺乳動物の腫瘍量の低減を生じさせるのに有効な量で、哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)を治療する方法。
2項: 抗CD44モノクローナル抗体がARH460-16-2である、1項の方法。
3項: 前記モノクローナル抗体が細胞毒部分にコンジュゲートしている、2項の方法。
4項: 前記モノクローナル抗体が、受託番号PTA-4621として、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されたモノクローナル抗体のヒト化型、又は該ヒト化抗体から生成された抗原結合断片である、1項の方法。
5項: 前記モノクローナル抗体が、受託番号PTA-4621として、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されたモノクローナル抗体のキメラ型、又は該キメラ抗体から生成された抗原結合断片である、1項の方法。
6項: 抗CD44モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を、哺乳動物の腫瘍量の低減を生じさせるのに有効な量で、哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるHNSCCの治療のための、抗CD44モノクローナル抗体又はその抗原結合断片の使用。
7項: 抗CD44モノクローナル抗体がARH460-16-2である、6項の使用。
8項: 前記モノクローナル抗体が細胞毒部分にコンジュゲートしている、7項の使用。
9項: 前記モノクローナル抗体が、受託番号PTA-4621として、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されたモノクローナル抗体のヒト化型である、6項の使用。
10項: 前記モノクローナル抗体が、受託番号PTA-4621として、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されたモノクローナル抗体のキメラ型である、6項の使用。
11項: 抗CD44モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を、哺乳動物の腫瘍量の低減を生じさせるのに有効な量で、少なくとも1の化学療法剤と共に哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるHNSCCを治療する方法。
12項: 抗CD44モノクローナル抗体がARH460-16-2である、13項の方法。
13項: 前記モノクローナル抗体又はCDMABが、前記化学療法剤にコンジュゲートしている、14項の方法。
14項: 前記化学療法剤が細胞毒部分である、15項の方法。
15項: 前記モノクローナル抗体が、受託番号PTA-4621として、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されたモノクローナル抗体のヒト化型である、11項の方法。
16項: 前記モノクローナル抗体が、受託番号PTA-4621として、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されたモノクローナル抗体のキメラ型である、11項の方法。
17項: 受託番号PTA-4621として、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成された抗CD44モノクローナル抗体、又はその抗原結合断片;及び
必要量の薬理学的に許容可能な担体;
を組み合わせて含有する、HNSCCの治療に有効な組成物。
18項: 細胞毒部分、酵素、放射活性化合物、サイトカイン類、インターフェロン、標的又はレポーター部分、及び造血細胞からなる群から選択されるメンバーと、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合断片のコンジュゲートをさらに含む、17項の組成物。
19項: HNSCCの存在を検出するためのアッセイキットであって、該HNSCCが、受託番号PTA-4621として、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されたモノクローナル抗体、又はその抗原結合断片に特異的に結合する抗原の少なくとも1のエピトープを発現し、該キットが、受託番号PTA-4621として、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成され、特定のカットオフレベルでのその存在が前記HNSCCの前記存在の診断となるポリペプチドに結合するモノクローナル抗体、又はその抗原結合断片を含むキット。
【0090】
ここに開示された発明がさらに十分に理解されるように、以下の非限定的実施例を記載する。
【実施例】
【0091】
実施例1
HNSCC細胞株へのインビトロ結合
PTA-4621のキメラ及びヒト化型を、ここに開示したようにして生じさせた。キメラPTA-4621(「chPTA-4621」)は、それぞれ配列番号:1及び配列番号:2のアミノ酸配列を有するV及びVドメインを含む。それらの重鎖可変ドメインのアミノ酸配列に少しの差異を有する、PTA-4621の2つのヒト化型(huPTA-4621)を生じさせた。huPTA-4621は、配列番号:9又は配列番号:10のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号:11のアミノ酸配列を有するVドメインを含む。huPTA-4621の2つの型の抗原結合親和性及び結合活性は、当該技術分野で知られている標準的なアッセイを使用して、識別不能であった。
【0092】
HNSCC細胞株T.Tn、SCC-15、Detroit-562及びCALL27に対するchPTA-4621及びhuPTA-4621の結合を、フローサイトメトリー(FACS)により評価した。細胞を、最初にDPBS(Ca++及びMg++を含有しない)を用いて細胞単層を洗浄することにより、FACS用に調製した。ついで、細胞解離バッファー(INVITROGEN, Burlington, ON;T.Tn、SCC-15及びDetroit-562用)、又は細胞剥離溶液ACCUTASETM(SIGMA, St. Lois, MO, USA, CAL27用)のいずれかを使用し、37℃で、その細胞培養プレートから細胞を取り除いた。遠心分離及び収集後、細胞を、MgCl、CaCl及び2パーセント(T.Tn、SCC-15及びDetroit-562)又は3パーセント(CAL27)のウシ胎児血清(染色媒体)を含むDPBSに、4℃で再懸濁させ、カウントし、適切な細胞密度に等分し、細胞をペレットにスピンさせ、試験抗体(キメラ又はヒト化PTA-4621)、又はコントロール抗体(アイソタイプコントロール、抗EGFR(C225;T.Tn、SCC-15及びDetroit-562)又は抗CD20(リツキサンTM;CAL27)の存在下、4℃で染色媒体に再懸濁させた。アイソタイプコントロール及び試験用抗体を、30分、氷上にて、20μg/mLで評価した。結合抗体を検出するために、Alexa Fluor 546コンジュゲート二次抗体を、T.Tn、SCC-15及びDetroit-562細胞に対して、APCコンジュゲート二次抗体を、CLA27試験において使用した。二次抗体を添加する前に、細胞を染色媒体で洗浄した。ついで、染色媒体に二次抗体が入ったものを、製造者の指示書に従い添加した。ついで、最終的な時間、細胞を洗浄し、固定媒体(1.5%パラホルムアミドを含む染色媒体)に再懸濁させた。T.Tn、SCC-15及びDetroit-562細胞のフローサイトメトリー取得を、CellQuestソフトウェア(BD Biosciences, Oakville, ON)を使用し、FACScanに試料を流すことにより評価する一方、CAL27細胞の取得を、Diva6システムソフトウェア(BD Biosciences, Rockville, MD USA)を使用し、LSR-IIに試料を流すことにより評価した。細胞の前方(FSC)及び側方散乱(SSC)を、FSC及びSSC検出器において、電圧及び振幅を調節することにより設定した。蛍光(FITC又はAPC)チャンネルを、染色されていないか、又はAlexa Fluor 546-コンジュゲート二次抗体(T.Tn、SCC-15及びDetroit-562)でのみ染色された細胞(CAL27)を流すことにより、細胞が、約1-5単位の蛍光強度中央値を有する均一なピークを有するように調節した。各試料について、約10000の染色された固定細胞を分析用に得、結果を図1A−Bにまとめる。
【0093】
要約すれば、得られたデータは、PTA-4621及びキメラ及びヒト化型が、T.Tn、SCC-15及びDetroit-562(図1A)、及びCAL27(図1B)細胞株に結合することを示している。
【0094】
実施例2
ヒトT.Tn細胞を用いたインビボ実験
ヒトHNSCC癌細胞株に対する効能をインビボで証明するために、キメラPTA-4621(chPTA-4621)を、樹立されたT.Tn HNSCC異種移植モデルにおいて試験した。図2及び3を参照し、6から8週齢の雌SCIDマウスに、100マイクロリットルのPBS溶液に10000000のT.Tn細胞が入ったものを、右側腹部に皮下注射して移植した。マウスを、10を2つの治療群にランダムに分けた。マウスの平均腫瘍体積が約264−268mmに達した時に、20mg/kgのchPTA-4621試験用抗体、又はバッファーコントロールを、2.7mMのKCl、1mMのKHPO、137mMのNaCl、及び20mMのNaHPOを含む希釈液で、原液濃度から希釈した後、300マイクロリットルの容量で、各コホートに腹腔内的に投与した。ついで、抗体又はコントロール試料を、研究期間中、週当たり3回投与した。腫瘍増殖をノギスを使用し、約7日毎に測定した。抗体を10回投与した後に、研究を完了した。動物の体重を、研究期間中、1週間に1回記録した。研究の終わりに、全ての動物を、CCACガイドラインに従い安楽死させた。
【0095】
chPTA-4621は、ヒトHNSCCのT.Tnインビボでの樹立されたモデルにおいて、腫瘍増殖を低減した。抗体chPTA-4621を用いた治療により、105日目、研究期間の最終日に測定した場合、バッファーで処置された群と比較して、54.9パーセント(p=0.0068、t-検定)まで、T.Tn腫瘍の増殖が低減した(図2)。
【0096】
この研究を通して、毒性の臨床的兆候はなかった。週間隔で測定された体重は、満足と成功の失敗のサロゲートであった(図3)。治療期間の終わりに、群間で、平均体重に有意差はなかった。また、研究の始まりから終わりまで、各群内での平均体重にも有意差はなかった。
【0097】
要約すると、chPTA-4621は良好な耐性を有し、このヒトHNSCC異種移植モデルにおいて、腫瘍量を有意に低減させた。
【0098】
実施例3
ヒトSCC-15細胞を用いたインビボ実験
ヒトHNSCC癌細胞株に対するインビボでの効能を証明するために、ヒト化PTA-4621(huPTA-4621)を、SCC-15 HNSCC異種移植モデルにおいて試験した。図4及び5を参照し、6から8週齢の雌SCIDマウスに、100マイクロリットルのPBS溶液に3000000のSCC-15細胞が入ったものを、右側腹部に皮下注射して移植した。マウスを、10を2つの処置群にランダムに分けた。マウスの平均腫瘍体積が約233−235mmに達した時に、30mg/kgのhuPTA-4621試験用抗体、又はHNTバッファーコントロールを、20mMのヒスチジンHCl、150mMのNaCl、及び0.01%のポリソルベート80、Ph6.0を含む希釈液で、原液濃度から希釈した後、100マイクロリットルの容量で、各コホートに腹腔内的に投与した。ついで、抗体又はコントロール試料を、研究期間中、週当たり1回投与した。腫瘍増殖をノギスを使用し、約7日毎に測定した。抗体を4回投与した後に、研究を完了した。動物の体重を、研究期間中、週毎に1回記録した。研究の終わりに、全ての動物を、CCACガイドラインに従い安楽死させた。
【0099】
huPTA-4621は、ヒトHNSCCのSCC-15インビボでの樹立モデルにおいて、腫瘍増殖を低減した。抗体huPTA-4621を用いた治療により、23日目、研究期間の最終日に測定した場合、バッファーで処置された群と比較して、44.5パーセント(p=0.0379、t-検定)まで、SCC-15腫瘍の増殖が低減した(図4)。
【0100】
この研究を通して、毒性の臨床的兆候はなかった。週間隔で測定された体重は、満足と成功の失敗のサロゲートであった(図5)。治療期間の終わりに、群間で、平均体重に有意差はなかった。また、研究の始まりから終わりまで、各群内での平均体重にも有意差はなかった。
【0101】
要約すると、huPTA-4621は良好な耐性を有し、このヒトHNSCC異種移植モデルにおいて、腫瘍量を有意に低減させた。
【0102】
実施例4
ヒトDetroit562細胞を用いたインビボ実験
ヒトHNSCC癌細胞株に対するインビボでの効能を証明するために、huPTA-4621を、Detroit562 HNSCC異種移植モデルにおいて試験した。図6及び7を参照し、6から8週齢の雌SCIDマウスに、100マイクロリットルのPBS溶液に3000000のDetroit562細胞が入ったものを、右側腹部に皮下注射して移植した。マウスを、10を2つの治療群にランダムに分けた。マウスの平均腫瘍体積が約188−192mmに達した時に、30mg/kgのhuPTA-4621試験用抗体、又はバッファーコントロールを、20mMのヒスチジンHCl、150mMのNaCl、及び0.01%のポリソルベート80、Ph6.0を含有する希釈液で、原液濃度から希釈した後、100マイクロリットルの容量で、各コホートに腹腔内的に投与した。ついで、抗体又はコントロール試料を、研究期間中、週当たり1回投与した。腫瘍増殖をノギスを使用し、約7日毎に測定した。抗体を5回投与した後に、研究を完了した。動物の体重を、研究期間中、週毎に1回記録した。研究の終わりに、全ての動物を、CCACガイドラインに従い安楽死させた。
【0103】
huPTA-4621は、ヒトHNSCCのDetroit562インビボでの樹立モデルにおいて、腫瘍増殖を低減した。抗体huPTA-4621を用いた治療により、42日目、研究期間の最終日に測定した場合、バッファーで処置された群と比較して、52.1パーセント(p=0.0259、t-検定)まで、T.Tn腫瘍の増殖が低減した(図6)。
【0104】
この研究を通して、毒性の臨床的兆候はなかった。週間隔で測定された体重は、満足と成功の失敗のサロゲートであった(図7)。処置期間の終わりに、群の間で、平均体重に有意差はなかった。また、研究の始まりから終わりまで、各群内での平均体重にも、有意差はなかった。
【0105】
要約すると、huPTA-4621は良好な耐性を有し、このヒトHNSCC異種移植モデルにおいて、腫瘍量を有意に低減させた。
【0106】
実施例5
ヒトCAL27細胞を用いたインビボ実験
ヒトHNSCC癌細胞株に対するインビボでの効能を証明するために、huPTA-4621を、CAL27細胞(ATCC CRL-2095)が移植されたヌードマウス(NU/J, stock #: 002019, Jackson Laboratories)を含む、CAL27HNSCC異種移植モデルにおいて試験した。CAL27細胞を、細胞がコンフルエントになるまで、空気雰囲気中5%のCO、37℃にて、75mmのフラスコに10%のFBS(ATCCカタログ番号30-2020)が補填されたDMEM(ATCC、カタログ番号30-2002)において培養した。ヒトCAL27細胞を、0.25%(w/v)のトリプシン(Invitrogen、カタログ番号25200)を使用して培養フラスコから剥離させ、計測し、PBSに溶解させ、0.2ml容量に、マトリゲルTM(BD Biosciences、カタログ番号354248)と3x10細胞/動物が入った用量(PBS+100μlのマトリゲルに100μlの細胞が入ったもの)で、7週齢の雄ヌードマウスの中背部領域に皮下的に注射した。細胞の注射後、2週間経過させ、腫瘍小結節を形成させた。腫瘍量(mm)をデジタルノギス(VWR、カタログ番号36934-152)で測定し、楕円式:[π/6]×a×bによって推定し、ここで、a及びbは、腫瘍のmmでの第1及び第2の最も長い直交測定値である。腫瘍体積が400−600mmに達した時、動物を2つの群(n=5)に無作為化した。モノクローナル抗体huPTA-4621及びヒトIgG1(Sigma、I5154)を、全体で10回、週当たり3回、3mg/kgを腹腔内注射により投与した。デジタルノギスを使用し、腫瘍小結節を、週当たり3回モニターした。抗腫瘍活性を、次の式:RTV=TV/TVに従い、相対的腫瘍体積(RTV)を算出することで、一次腫瘍増殖阻害に関して測定し、ここでTVはn日目の腫瘍量であり、TVは0日目の腫瘍量である。腫瘍サイズを27日間追跡した。治療の27日後、T/C%=100×(治療群の平均RTV)/(コントロール群の平均RTV)として、RTVを算出することにより、T/C%を測定した。60%の腫瘍増殖阻害が抗体治療群で見いだされ(図8)、治療が腫瘍量の軽減に有用であることが示された(P<0.0002)。
【0107】
これらのデータには、huPTA-4621が、この研究で試験されたCAL27異種移植腫瘍に対して有意な治療活性を有していることが明確に証明されている。
【0108】
実施例6
ヒトCAL27細胞を用いたインビボ実験
PTA-4621抗体治療の効能を標準的な化学療法治療と比較するため、実施例5に記載したモデルシステムを使用して、シスプラチンを用いた治療と、PTA-4621治療を比較した。実施例5に記載したようにして、CAL27細胞を培養し、収集した。CAL27細胞異種移植モデルを、100μlのマトリゲルと100μlのD-PBSに5X10のCAL27細胞が入ったものを、7週齢の雄ヌードマウス(NU/J, stock #: 002019, Jackson Laboratories)の中背部領域に皮下的に注射することで樹立させた。接種の18日後、マウスを腫瘍形成について評価し、3つの群(各コホートについて、n=6):huPTA-4621での治療、シスプラチンでの治療又はコントロールでの治療(無関係のコントロールIgG1抗体での治療)に無作為化した。腫瘍体積(mm)をデジタルノギス(VWR、カタログ番号36934-152)で測定し、楕円式:[π/6]×a×bによって推定し、ここで、a及びbは、腫瘍のmmでの第1及び第2の最も長い直交測定値である。無作為化で、平均腫瘍体積は84mm(79−94mmの範囲)であった。
【0109】
無作為化で、試験用又はコントロール抗体を3mg/kgの用量、又はシスプラチンを0.75mg/kgの用量、動物にi.p.投与した。全ての治療に対して投与量は6.6ml/kgであった。その後、抗体及びコントロール治療を、第1週及び第3週については週当たり3回、第2週については週当たり2回の投与、全体で8回の治療になるようにした。最後の処置から1週間後、動物を、CCACガイドラインに従い安楽死させ;46日目に研究を完了した。腫瘍成長及び体重を、研究の間、週当たり3回測定した。
【0110】
抗腫瘍活性を、次の式:RTV=TV/TVに従い、相対腫瘍体積(RTV)を算出することで、一次腫瘍増殖阻害を決定した。ここで、TVはn日目の腫瘍体積であり、TVは0日目の腫瘍体積である。腫瘍サイズを46日間追跡した。研究の完了時、T/C%=100×(治療群の平均RTV)/(コントロール群の平均RTV)として、RTVを算出することにより、T/C%を決定した。86%の腫瘍増殖阻害度が抗体治療群で見いだされ(図9)、治療が腫瘍量の軽減に有用であることが示された(P=0.024)。有意な増殖阻害は、コントロールと比較して、シスプラチンで治療された群では観察されなかった(図9)。従って、huPTA-4621は、ヒトHNSCCのCAL27インビボ樹立モデルにおいて腫瘍増殖を低減した。
【0111】
治療期間の終わりに、群の間で、平均体重に有意差はなかった。また、試験の始まりから終わりまで、各群内での平均体重にも有意差はなかった(図10)。コントロールIgG1群の一匹の動物は、研究決定のためのIACUCエンドポイントに達したために、26日目に屠殺した。
【0112】
要約すると、huPTA-4621は良好な耐性を有し、このヒトHNSCC異種移植モデルにおいて、標準的な化学療法剤(シスプラチン)に対して、腫瘍量を有意に低減させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の治療のための、モノクローナル抗CD44抗体、又はその抗原結合断片の使用であって、該HNSCCがCD44の発現により特徴付けられる使用。
【請求項2】
哺乳動物の頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の治療に使用される、モノクローナル抗CD44抗体、又はその抗原結合断片であって、該HNSCCがCD44の発現により特徴付けられる抗体又は断片。
【請求項3】
前記抗CD44抗体が、受託番号PTA-4621でATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されたモノクローナル抗体のキメラ型である、請求項1に記載の使用、又は請求項2に記載の抗体又は断片。
【請求項4】
前記抗CD44抗体が、受託番号PTA-4621でATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されたモノクローナル抗体のヒト化型である、請求項1に記載の使用、又は請求項2に記載の抗体又は断片。
【請求項5】
前記抗CD44抗体が、配列番号:3のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:4のアミノ酸配列を有するVCDR2、配列番号:5のアミノ酸配列を有するVCDR3、配列番号:6のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:7のアミノ酸配列を有するVCDR2、及び配列番号:8のアミノ酸配列を有するVCDR3の一又は複数を含む、請求項1、3又は4のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2、3又は4のいずれか一項に記載の抗体又は断片。
【請求項6】
前記抗CD44抗体が、配列番号:1のアミノ酸配列を有するVドメインを含む、請求項1、3又は5のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2、3又は5のいずれか一項に記載の抗体又は断片。
【請求項7】
前記抗CD44抗体が、配列番号:2のアミノ酸配列を有するVドメインを含む、請求項1、3、5又は6のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2、3、5又は6のいずれか一項に記載の抗体又は断片。
【請求項8】
前記抗CD44抗体がヒト化抗体である、請求項1又は5に記載の使用、又は請求項2又は5に記載の抗体又は断片。
【請求項9】
前記ヒト化抗CD44抗体が、配列番号:9又は配列番号:10のアミノ酸配列を有するVドメインを含む、請求項8に記載の使用、抗体又は断片。
【請求項10】
前記ヒト化抗CD44抗体が、配列番号:11のアミノ酸配列を有するVドメインを含む、請求項8又は9に記載の使用、抗体又は断片。
【請求項11】
前記抗体が、受託番号PTA-4621でATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成された抗体と結合について競合する、請求項1及び3から10のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2から10のいずれか一項に記載の抗体又は断片。
【請求項12】
前記抗体又は断片が、治療又はレポーター部分又は造血細胞にコンジュゲートしている、請求項1及び3−11のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2−11のいずれか一項に記載の抗体又は断片。
【請求項13】
前記治療部分が細胞毒部分、酵素、サイトカイン、又はインターフェロンである、請求項12に記載の使用、抗体又は断片。
【請求項14】
前記治療又はレポーター部分が、放射性同位元素又は放射性核種である、請求項12に記載の使用、抗体又は断片。
【請求項15】
ヒトの頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の治療のための、ヒト化抗CD44抗体、又はその抗原結合断片の使用であって、該HNSCCがCD44の発現により特徴付けられ、該ヒト化抗体が、配列番号:9のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号:11のアミノ酸配列を有するVドメインを含み、又は配列番号:10のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号:11のアミノ酸配列を有するVドメインを含む使用。
【請求項16】
ヒトの頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の治療に使用される、ヒト化抗CD44抗体、又はその抗原結合断片であって、該HNSCCがCD44の発現により特徴付けられ、該ヒト化抗体が、配列番号:9のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号:11のアミノ酸配列を有するVドメインを含み、又は配列番号:10のアミノ酸配列を有するVドメイン、及び配列番号:11のアミノ酸配列を有するVドメインを含む抗体又は断片。
【請求項17】
試料中のHNSCCの存在を検出するためのキットであって、該HNSCCが、受託番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されたモノクローナル抗体と特異的に結合する抗原の発現により特徴付けられ、
(1)受託番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されたモノクローナル抗体;
(2)受託番号PTA-4621としてATCCに寄託されたハイブリドーマにより生成されたモノクローナル抗体と結合について競合する抗体;
(3)配列番号:3のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:4のアミノ酸配列を有するVCDR2、配列番号:5のアミノ酸配列を有するVCDR3、配列番号:6のアミノ酸配列を有するVCDR1、配列番号:7のアミノ酸配列を有するVCDR2、及び配列番号:8のアミノ酸配列を有するVCDR3の一又は複数を含む抗体;又は
(4)(1)、(2)又は(3)の抗体の抗原結合断片;
を含んでなるキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−518848(P2013−518848A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551602(P2012−551602)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051436
【国際公開番号】WO2011/095498
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(306021192)エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト (58)
【出願人】(507056483)ユニバーシティー・オブ・マイアミ (3)
【氏名又は名称原語表記】University of Miami
【Fターム(参考)】