説明

顆粒状板状チタン酸塩、その製造方法及び顆粒状板状チタン酸塩を含有する樹脂組成物

【課題】混練時にブリッジ、詰まり等を低減し、製造環境を改善することができる顆粒状板状チタン酸塩、その製造方法及びその顆粒状板状チタン酸塩を含有する樹脂組成物を得る。
【解決手段】板状チタン酸塩を、バインダーにより成形したことを特徴としており、板状チタン酸塩としては、層状チタン酸塩化合物、板状8チタン酸カリウム、及び複合板状チタン酸金属塩などを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒状板状チタン酸塩、その製造方法及び顆粒状板状チタン酸塩を含有する樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ウィスカー、無機繊維、有機繊維などの繊維状化学製品の使用に際しては、発塵による作業環境の悪化、嵩比重の低さによる運搬性ひいては作業性の低下、貯蔵時に荷重がかかって団結を起こすことによる樹脂マトリックス内での均一分散性の低下などが問題となっている。特に樹脂マトリックス内での均一分散性の低下は、得られるコンパウンドの性能を著しく劣化させるので、重要な問題点である。
【0003】
上記の問題点を解決する為に、例えば、界面活性剤及び/又はバインダーを有効成分として含有する組成物を用いて顆粒化を行うことにより、上記問題を解決することを開示している(特許文献1参照)。上記特許文献1によれば、得られる顆粒の樹脂マトリックスに対する分散性が非常に良好なものになることが見出されている。
【0004】
また、結晶性熱可塑性樹脂40〜97重量%に、かさ比重0.20〜0.80g/cmの顆粒形態状チタン酸カリウム3〜60重量%を配合することにより、上記問題点を解決することを開示している(特許文献2参照)。上記特許文献2によれば、混練時にブリッジ、詰まり等の問題もなく優れた物性を示す樹脂組成物が得られることが見出されている。
【0005】
しかし、繊維状物を樹脂組成物に配合し成形した場合、繊維状物特有の成形異方性の問題がある。
【0006】
一方、上記チタン酸カリウム繊維のような繊維形状を有していない、板状あるいは鱗片状物のチタン酸塩化合物が提案されている(特許文献3および4参照)。上記特許文献によれば、製造工程において供給路を閉塞するおそれがなく、吸入性繊維による労働環境の悪化が生じることのないものが見出されている。
【0007】
しかし、より混練時にブリッジ、詰まり等を低減し、製造環境を改善する為の充填材が望まれている。
【特許文献1】特開平6−144999号公報
【特許文献2】特開平5−125218号公報
【特許文献3】WO02/010069
【特許文献4】WO03/037797
【特許文献5】国際公開第99/11574号公報
【特許文献6】特許第3062497号公報
【特許文献7】特許第3102789号公報
【特許文献8】特開2001−253770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、混練時にブリッジ、詰まり等を低減し、製造環境を改善する為の顆粒状板状チタン酸塩、その製造方法及び顆粒状板状チタン酸塩を含有する樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、板状チタン酸塩を、バインダーにより成形した顆粒状板状チタン酸塩である。
【0010】
本発明で使用する板状チタン酸塩は、特に限定なく使用することができる。例えば、層状チタン酸塩化合物、板状8チタン酸カリウム、複合板状チタン酸金属塩等を挙げることができる。
【0011】
層状チタン酸塩化合物としては、層状チタン酸塩化合物(A)、及び層状チタン酸塩化合物(A)を酸処理した後、焼成して得られる層状チタン酸塩化合物(B)などが挙げられる。
【0012】
層状チタン酸塩化合物(A)としては、例えば、式(1)で表される層状チタン酸塩化合物を挙げることができる。
□Ti2−(y+z) (1)
(式中A及びMは互いに異なる1〜3価の金属、□はTiの欠陥部位を示す。xは0<x<1.0を満たす正の実数であり、y及びzはそれぞれ0<y+z<1.0を満たす0または正の実数である。)
上記式(1)におけるAは、価数1〜3価の金属であり、好ましくは、K、Rb、及びCsから選ばれる少なくとも一種である。Mは、金属Aとは異なる価数1〜3価の金属であり、好ましくは、Li、Mg、Zn、Cu、Fe、Al、Ga、Mn、及びNiから選ばれる少なくとも一種である。
【0013】
具体的な例としては、K0.80Li0.27Ti1.73、Rb0.75Ti1.75Li0.25、Cs0.70Li0.23Ti1.77、Ce0.700.18Ti1.83、Ce0.70Mg0.35Ti1.65、K0.8Mg0.4Ti1.6、K0.8Ni0.4Ti1.6、K0.8Zn0.4Ti1.6、K0.8Cu0.4Ti1.6、K0.8Fe0.8Ti1.2、K0.8Mn0.8Ti1.2、K0.76Li0.22Mg0.05Ti1.73、K0.67Li0.2Al0.07Ti1.73等を挙げることができる。
【0014】
特にチタン酸リチウムカリウムK0.80Li0.27Ti1.73、およびチタン酸マグネシウムカリウムK0.8Mg0.4Ti1.6が好ましい。
【0015】
層状チタン酸塩の製造方法としては、例えば、特許文献5に開示の方法に従い、炭酸カリウムと炭酸リチウムと二酸化チタンをK/Li/Ti=3/1/6.5(モル比)で混合して摩砕し、800℃で焼成することにより得られる。
【0016】
また、特許文献6に開示の方法に従い、アルカリ金属またはアルカリ金属のハロゲン化物もしくは硫酸塩をフラックスとし、フラックス/原料の重量比が0.1〜2.0となるように混合した混合物を700〜1200℃で焼成することにより得られる。
【0017】
層状チタン塩酸化合物(A)を酸処理後焼成して得られる層状チタン酸塩化合物(B)としては、例えば、K0.5〜0.7Li0.27Ti1.733.85〜3.95、あるいは、K0.2〜0.7Mg0.4Ti1.63.7〜4が挙げられる。
【0018】
層状チタン酸化合物を酸処理後焼成して得られる層状チタン酸塩化合物の製造方法としては、例えば、特許文献3および4に開示された方法に従い、チタン酸リチウムカリウムK0.80Li0.27Ti1.73、またはチタン酸マグネシウムカリウムK0.8Mg0.4Ti1.6の水性スラリーに酸を添加して該スラリーのpHを6〜8に、好ましくは6.5〜7.5に調整した後、該スラリーから固形分を分離し、400〜700℃程度で焼成することにより得られる。
【0019】
板状8チタン酸カリウムとしては、例えば、KTi16、K1.88〜2.13Mg0.4Ti16.94〜17.07等を挙げることができる。
【0020】
板状8チタン酸カリウムの製造方法としては、例えば、特許文献7に開示の方法に従い、チタン酸リチウムカリウムまたはチタン酸マグネシウムカリウムを酸処理して板状チタン酸とし、水酸化カリウム溶液中に浸漬した後、400〜650℃で焼成することにより得られる。
【0021】
複合板状チタン酸塩としては、例えば、MO・TiO(式中、Mは二価金属を示す)で表される組成を有するチタン酸金属結晶の表面の一部又は全面が非結晶質および/又は結晶質TiOで覆われてなる複合板状チタン酸金属塩を挙げることができる。
【0022】
二価金属としては、アルカリ土類金属が好ましく、カルシウムが更に好ましい。
【0023】
複合板状チタン酸金属塩の製造方法としては、例えば、特許文献8に開示の方法に従い板状酸化チタン化合物と金属元素Mの酸化物、水酸化物、無機酸塩、有機酸塩の群から選ばれた1種または2種以上の金属化合物とをモル比でTi>Mとなる割合に混合し、500〜1400℃で焼成することにより得られる。
【0024】
本発明組成物のバインダーとしては特に制限されず、公知の有機系バインダー及び無機系バインダーが使用できる。
【0025】
有機系バインダーの具体例としては例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニルなどを挙げることができる。更に有機系バインダーの化学構造及び/又は重合度を変化させたものでもよい。この様なバインダーとしては、ポリビニルアルコールや酢酸ビニルポリマーなどの重合度を低下させ、その鹸化度を90%以下にした部分鹸化型のもの、セルロース系バインダーのOH基やCHOH基にアルキルハライド、アルキレンオキサイドなどを反応させて、そのエーテル化度を1〜3程度の範囲に調整したものなどを例示できる。
【0026】
また無機系バインダーの具体例としては、例えば、水ガラス、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、シランカップリング剤などの無機系バインダーなどを挙げることができる。シランカップリング剤としては例えば、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイドなどを挙げることができる。
【0027】
バインダーとしては、無機系バインダーが好ましく、シカンカップリング剤が更に好ましく、アミノプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0028】
バインダーは、1種を単独で用いてもよく或いは2種以上を併用してもよい。
【0029】
本発明の顆粒状板状チタン酸塩の製造方法は、板状チタン酸塩をバインダーを用いて顆粒状に成形することを特徴としている。
【0030】
本発明の顆粒状板状チタン酸塩の製造方法としては、板状チタン酸塩と上記バインダーの所定量を、水又は適当な有機溶媒に溶解又は分散することにより得られたものとを混合し、これを常法に従って造粒し、乾燥することにより行われる。混合割合は特に制限されず、得ようとする顆粒の性質、用途などに応じて適宜選択すればよいが、通常板状チタン酸塩100重量部に対してバインダーを0.01〜50重量部程度、好ましくは0.1〜5重量部程度とすればよい。また顆粒化法としても特に制限はないが、例えば、攪拌造粒法、流動層造粒法、噴射造粒法、転動造粒法などを挙げることができ、攪拌造粒法が好ましい。得ようとする顆粒の形状、寸法は特に制限されず、任意の形状、寸法とすることができる。例えば、篩を通すことにより、任意の寸法を得ることができる。
【0031】
本発明の顆粒状板状チタン酸塩には、バインダー以外に、界面活性剤を用いても良い。界面活性剤としては、特に制限されず公知のものを使用でき、例えば、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性などの界面活性剤を挙げることができる。
【0032】
アニオン性界面活性剤としては特に制限されず、具体的には例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリル硫酸エステル塩、スルホコハク酸エステル塩などを挙げることができる。
【0033】
非イオン性界面活性剤としても特に制限されず、具体的には例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールモノステアレートなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのソルビタン脂肪酸エステル類、グリコールモノステアレートなどのグリコール脂肪酸エステル類、脂肪酸モノグリセリド類などを挙げることができる。
【0034】
カチオン界面活性剤としても特に制限されず、具体的には例えば、高級アミンハロゲン酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム、第4級アンモニウム塩などを挙げることができる。
【0035】
両性界面活性剤としては特に制限されず、具体的には例えば、式RNHR′COOH〔式中R及びR′は、同一又は異なって、基C2n+1−(n=8〜16)を示す。〕で表されるアミノ酸類などを挙げることができる。
【0036】
これらの界面活性剤はアニオン性及びノニオン性界面活性剤を好ましく使用できる。
【0037】
かかる界面活性剤の中でもアニオン性、非イオン性、カチオン性又は両性のものを単独で用いてもよく、或いは2種以上を混合して用いてもよい。更に単独種(例えばアニオン性のみ)の異なる化合物を2種以上混合して用いてもよい。
【0038】
界面活性剤の使用量は特に制限されず目的とする顆粒の物性(例えば、硬さ、粒度、嵩比重、使用時の分散性など)、顆粒の用途などに応じて適宜選択すればよいが、通常全組成物中0.01〜50重量%程度、好ましくは0.1〜5重量%程度とすればよい。
【0039】
得られる顆粒状チタン酸塩は用途に応じて各種の樹脂に添加され、射出成形、押出成形、カレンダー成形、コーティング成形、プレス成形などの通常の成形方法に従って成形物とすることができる。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、上記本発明の顆粒状板状チタン酸塩を樹脂中に含有させたことを特徴としている。
【0041】
本発明の顆粒状板状チタン酸塩を含有する樹脂組成物で使用できる樹脂としては、特に制限されず、公知のものをいずれも使用できる。例えば、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン等)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアセタール、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニルサルフォン、ポリサルフォン、液晶ポリマー、熱可塑性ポリイミド、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0042】
本発明で使用するポリフェニレンサルファイドとしては、式(1)で示される構成単位を主鎖に持つ重合体である。
【0043】
【化1】

【0044】
(式中、Rは、炭素数6以下のアルキル基、アルコキシル基、フェニル基、カルボキシル基もしくはその金属塩、アミノ基、ニトロ基、およびフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子から選ばれる置換基であり、aは、0〜4の整数である。)
また、単重合体のほかに共重合体も用いることができる。例えば、その共重合体の構成単位としては、m−フェニレンサルファイド単位、o−フェニレンサルファイド単位、p、p’−ジフェニレンケトンサルファイド単位、p、p’−ジフェニレンスルホンサルファイド単位、p、p’−ビフェニレンサルファイド単位、p、p’−ジフェニレンメチレンサルファイド単位、p、p’−ジフェニレンクメニルサルファイド単位、ナチルサルファイド単位等を上げることができる。
【0045】
また、その分子構造は、線上構造、分岐構造、あるいは架橋構造のいずれでも良いが、好ましくは、リニア型および/またはセミリニア型である。
【0046】
ポリアミドとしては、例えば、4−ナイロン、6−ナイロン、6,6−ナイロン、4,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン、11−ナイロン、6,10−ナイロン等の脂肪族ナイロンや、MXD6−ナイロン等の芳香族ナイロン等を挙げることができる。
【0047】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラメチレンナフタレート等を挙げることができる。
【0048】
ポリカーボネートとしては、例えば、ビスフェノールAポリカーボネートなどの芳香族ポリカーボネート類等が挙げられる。
【0049】
ポリフェニレンエーテルとしては、式(2)で示される構成単位を種鎖に持つ重合体を挙げることができる。
【0050】
【化2】

【0051】
(式中、Rは炭素数1〜3の低級アルキル基、R、Rは水素原子または炭素数1〜3の低級アルキル基である。)
また、単重合体のほかに共重合体も挙げることができる。例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル等を挙げることができる。
【0052】
ポリスチレンとしては、スチレン重合体およびスチレンを主成分とする重合体が包含され、例えば、一般用ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂等を挙げることができる。
【0053】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1などのポリオレフィン類またはオリゴマー類、あるいはマレイン酸等の極性が付与された変性ポリオレフィン等を挙げることができる。
【0054】
熱可塑組成エラストマーとしては、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0055】
顆粒状板状チタン酸塩の含有量としては、目的とする物性により、適宜選択すればよいが、例えば、樹脂組成物100重量部に対して、顆粒状板状チタン酸塩の含有量が1〜100重量部とすればよい。
【0056】
溶融混練方法としては特に制限は無く、ポリマー溶融状態下で機械的せん断を行うことができれば良い。具体的な混練装置としては、押出機、特に二軸押出機が好ましい。また、溶融混練時に発生する水分や低分子量揮発成分除去する目的で、ベント口を設けることが好ましい。
【0057】
二軸押出機を用いる場合は、2種以上の熱可塑性ポリマーを使用する場合、予めブレンダー等で混合しておき、それを押出機の上流側のフィード口から供給し、該顆粒状板状チタン酸塩を下流側のフィード口から投入する方法や、配合されるすべてのポリマーと該顆粒状板状チタン酸塩をあらかじめブレンダー等で混合しておき、フィード口から供給するなどの方法が考えられるが、特に制限は無い。押出機のスクリューアレンジにも特に制限は無いが、ポリマー同士が十分に分散し、相溶性を向上させやすくするために、ニーディングゾーンを設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、混練時にブリッジ、詰まり等を低減し、製造環境を改善する為の顆粒状板状チタン酸塩、その製造方法及び顆粒状板状チタン酸塩を含有する樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0060】
(合成例1;チタン酸マグネシウムカリウムの合成)
酸化チタン496.6g、炭酸カリウム213.7g、水酸化マグネシウム89.4gを常法により混合し、原料混合物を振動ミル(中央化工機社製、MB−1)に充填し、振動数1200cpm、振幅6.0mmの条件で30分間摩砕処理した。摩砕混合物に水48mLを加えて混合し、この摩砕混合物の15gを油圧プレス機にて圧力10MPaでペレット形状に成形した。このペレットを電気炉中にて1000℃で4時間焼成した後、冷却し、得られた焼成物を粉砕した。粉砕物の組成はK0.8Mg0.4Ti1.6であった。この粉砕物の10重量%水性スラリー1Lを調製し、ディスパミル(ホソカワミクロン社製)にて、15分間分散させ、この水性スラリーを吸引濾過し、分取したケーキ(固形分)を110℃で乾燥し、電気炉にて600℃で1時間焼成した後、冷却し、得られた焼成物を20メッシュの篩に通して、平均長径4μm、組成K0.6Mg0.4Ti1.63.9のチタン酸マグネシウムカリウムを得た。
【0061】
(合成例2;チタン酸リチウムカリウムの合成)
酸化チタン542.0g、炭酸カリウム216.8g、炭酸リチウム41.2gを常法により混合し、合成例1と同様の方法にて、平均長径15μm、組成K0.6Li0.27Ti1.733.9のチタン酸リチウムカリウムを得た。
【0062】
(合成例3;板状8チタン酸カリウムの合成)
合成例2で得られたチタン酸リチウムカリウム154.6gを、70%硫酸1.57kgを水29.4Lに溶解させた溶液に分散させ、5%スラリーとした。攪拌羽根により約5時間攪拌を続けた後、濾過、水洗、乾燥して、板状チタン酸(HTi)を得た。得られた板状チタン酸全量を、85%水酸化カリウム0.74kgを水11.2Lに溶解させた溶液に分散させ、10%スラリーとした。攪拌羽根により約5時間攪拌を続けた後、濾過、水洗し、110℃にて2時間乾燥した。次いで、このものを電気炉により500℃にて3時間焼成し、平均長径16μmの板状8チタン酸カリウムを得た。
【0063】
(合成例4;複合板状チタン酸カルシウムの合成)
炭酸カルシウムと塩化カルシウムをモル比7:3になるような配合割合で混合粉砕し、さらに、合成例2で得られたチタン酸リチウムカリウムをTi:Ca=1.11:1のモル比となるように配合して混合物とし、この混合物をミキサーにて十分混合した。この混合粉末をアルミナ坩堝に充填し、電気炉にて800℃で5時間焼成した。得られた焼成物を0.1N硝酸水溶液に浸漬し、可溶成分を溶解させた後、濾別分離し乾燥させ、平均長径14μm、組成比Ti:Ca=1.12:1、結晶質CaTiO89%、非晶質TiO11%が複合一体化した複合板状チタン酸カルシウムを得た。
【0064】
(実施例1)
合成例1で得られたチタン酸マグネシウムカリウムをヘンシェル型ミキサーにて攪拌しながら、アミノプロピルトリエトキシシラン10%水溶液をチタン酸マグネシウムカリウムに対して30重量%滴下し、5分間攪拌した。得られた顆粒状粒子を送風乾燥機にて110℃で一晩乾燥し、850μ目開きの篩を通して、通過した粒子である顆粒状板状チタン酸塩Aを得た。上段より250μm、150μm、75μmの篩を重ね、顆粒状板状チタン酸塩Aを通して各篩残分を測定したところ、250μm篩上34wt%、150μm篩上32wt%、75μm篩上33wt%、75μm篩通過1wt%であった。
【0065】
(実施例2〜10)
合成例1〜4で得られた各種板状チタン酸塩を表1に示すように、単独あるいは所定配合比(重量%)で混合し、実施例1と同様の方法で顆粒状板状チタン酸塩B〜Jを得た。顆粒状板状チタン酸塩Aも合わせて表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
(実施例11〜20)
実施例1〜10で得られた顆粒状板状チタン酸塩A〜J各30重量%、PPS樹脂(トレリナL2120−60;東レ(株)製)70重量%をブレンダー混合し、二軸押出機(TEX44,(株)日本製鋼所製)に供給し、押出機へのフィード状況(ホッパーでの付着、詰まり)、および環境衛生性を下記方法にて評価した。評価結果を表4に示す。
【0068】
(フィード状況)
目視にて表2に示す下記4段階で評価した。
【0069】
【表2】

【0070】
(環境衛生性)
押出機周囲の粉塵濃度を、ハイボリューム・エアサンプラーHVS―500−5型(柴田科学機器工業(株)製)にて測定し、表3に示す下記4段階で評価した。
【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
(比較例1〜4)
合成例1〜4の各種板状酸化チタン酸塩を用い、実施例11〜20と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0074】
【表5】

【0075】
表4及び表5から明らかなように、顆粒状板状酸化チタン酸塩は、板状酸化チタン酸塩に比べて、フィード状況および環境衛生上が大きく改善されていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状チタン酸塩を、バインダーにより成形したことを特徴とする顆粒状板状チタン酸塩。
【請求項2】
板状チタン酸塩が、層状チタン酸塩化合物、板状8チタン酸カリウム、及び複合板状チタン酸金属塩からなるグループより選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の顆粒状板状チタン酸塩。
【請求項3】
層状チタン酸塩化合物が、層状チタン酸塩化合物(A)を酸処理した後、焼成して得られる層状チタン酸塩化合物(B)であることを特徴とする請求項2に記載の顆粒状板状チタン酸塩。
【請求項4】
層状チタン酸塩化合物(A)が、式(1)で表される層状チタン酸塩化合物であることを特徴とする請求項3に記載の顆粒状板状チタン酸塩。
□Ti2−(y+z) (1)
(式中A及びMは互いに異なる1〜3価の金属、□はTiの欠陥部位を示す。xは0<x<1.0を満たす正の実数であり、y及びzはそれぞれ0<y+z<1.0を満たす0または正の実数である。)
【請求項5】
層状チタン酸塩化合物(A)が、K0.80Li0.27Ti1.73またはK0.8Mg0.4Ti1.6で表される層状チタン酸塩化合物であることを特徴とする請求項4に記載の顆粒状板状チタン酸塩。
【請求項6】
層状チタン酸塩化合物(B)が、K0.5〜0.7Li0.27Ti1.733.85〜3.95またはK0.2〜0.7Mg0.4Ti1.63.7〜4で表される層状チタン酸塩化合物である請求項5に記載の顆粒状板状チタン酸塩。
【請求項7】
複合板状チタン酸金属塩が、
MO・TiO(式中、Mは二価金属を示す)
で表される複合板状チタン酸金属塩である請求項2に記載の顆粒状板状チタン酸塩。
【請求項8】
板状チタン酸塩を、バインダーを用いて顆粒状に成形することを特徴とする顆粒状板状チタン酸塩の製造方法。
【請求項9】
樹脂100重量部に対して、請求項1〜7のいずれか1項に記載の顆粒状板状チタン酸塩を1〜100重量部含有させたことを特徴とする樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−321009(P2007−321009A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150571(P2006−150571)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【Fターム(参考)】