説明

顆粒組成物及びそれを含有する食品又は医薬品

【課題】 平均粒子径や嵩比重等の物理的特性が異なる顆粒や表面がコーティングされた顆粒同士が組成物中に均一に分散・混合されている組成物、前記組成物を含む食品又は医薬品、前記組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 異なる粒子径と異なる嵩比重を有する二種以上の顆粒状成分と、セルロース粉末とが均一に分散した組成物であって、セルロースの平均粒子径が約50μmで、嵩比重が約0.1g/mlである顆粒組成物。顆粒状成分の平均粒子径は、0.1〜0.5mmが好ましく、セルロース粉末の含有量は、組成物の重量当たり、1〜10質量%であることが好ましい。前記顆粒組成物を内包するカプセル形態の食品又は医薬品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒組成物、その製造方法及びそれを含有する食品又は医薬品に関する。さらに詳しく言うと、本発明は、異なる粒子径と異なる嵩比重を有する顆粒が均一に混合された顆粒組成物、その製造方法及びその組成物を内包するカプセル形態の食品又は医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
健康食品や医薬品は、複数の有効成分を含有するものが多数提供されている。それらは錠剤の形態で提供されることが多い。複数の成分を含有する錠剤は、複数の成分を均一に含有するように調整されるので、有効成分に比して相対的に大量の乳糖やステアリン酸塩等の賦形剤中に有効成分を分散させ、これを打錠整形して錠剤とする。しかし、このような錠剤は、賦形剤の量が多いので、有効量を摂取するためには、一回当たり数粒、場合によっては10粒以上を飲用しなければならないこともあり、摂取が負担となるケースがある。
【0003】
このような問題を解決するために、極少量の添加剤を用いて、有効成分の粉末を造粒、顆粒化した後、カプセルに充填して、カプセル剤とすることにより、賦形剤の使用量を減らし、一回当たりの飲用粒数を減らす工夫がなされている。
【0004】
しかし、顆粒化した成分を混合した場合、異なった成分同士の接触により化学反応が生じ、変色や潮解、あるいは固化など、製剤上に不都合な状況が発生する。たとえば、特許文献1に開示されている複合粒子の調整技術を応用して、ミネラル、チアミン等のビタミン及びDHA等の不飽和脂肪酸を用いると、各成分が相互に反応して、悪臭が発生する。
そのため、各顆粒の表面を、ゼラチン皮膜やポリグリセリン脂肪酸エステル等で被覆するなどして、活性成分が相互に直接接触しないように予め処置した後、顆粒を混合し、これをカプセルに充填する方法や、再度造粒して複合粒子とする方法が採用されている。このようにして調製した顆粒剤は、表面が不活性成分でコーティングされているため、相互に接触して反応することはない。
【0005】
しかし、顆粒の表面を被覆する方法によると、成分の特性によっては、得られる顆粒の平均粒子径や嵩比重が異なったものとなってしまう。平均粒子径が異なる粒子は、均一に混合することが困難である。均一に混合するために、種々の攪拌装置や混合装置が提案されているが、混合攪拌によって顆粒が破壊され、コーティングされていない内部の成分が表面に露出して、混合終了後に化学反応を起こすといったことがしばしば発生していた。
このような問題を解決するため、特許文献2には、超臨界技術を応用して、微粒子の表面をコーティングし、これを造粒する技術が開示されている。しかし、超臨界技術を採用するための装置の設置や、高圧ガスの処理など解決しなければならないなど問題が多い。
そのため、異なる成分を含有する顆粒をカプセルに充填して複合製剤とするためには、顆粒の調製の際に、顆粒の粒子径や嵩比重をいかにして調節し、同じ物理的特性を持たせるようにするかなどについて、研究が重ねられてきた。物理的-特性が共通であれば、容易に混合することができ、得られた組成物も均一の組成物となるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−060276号公報
【特許文献2】特開平11−197494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況を鑑み、本発明は、顆粒の物理的特性を同じにするのではなく、従来あえて避けられていた、異なる物理的特性を有する顆粒を均一に混合する技術を提供することを課題とする。
即ち、本発明は、平均粒子径や嵩比重等の物理特性が異なる顆粒や表面がコーティングされた顆粒同士が、組成物中に均一に分散・混合されている顆粒組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、この顆粒組成物の調製における顆粒の製造方法を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、この組成物を充填したカプセル形態の食品又は医薬品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、特定の形状と大きさのセルロース粉末を用いて調製すると、活性成分を含む顆粒の平均粒子径や嵩比重が異なっていても、それらを均一に混合・分散することができることを見出した。
そして、さらに、このようなセルロース粉末の物理的特性が混合顆粒の流動性を制御するために重要なポイントとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の混合顆粒剤、その製造方法並びに食品及び医薬品を提供するものである。
(1) 異なる粒子径と異なる嵩比重を有する二種以上の顆粒状成分と、セルロース粉末とが均一に分散した組成物であって、セルロースの平均粒子径が約50μmで、嵩比重が約0.1g/mlである顆粒組成物。
(2) 顆粒状成分の平均粒子径が、0.1〜0.5mmである前記(1)に記載の顆粒組成物。
(3) セルロース粉末の含有量が、組成物の重量当たり1〜10質量%である前記(1)又は(2)に記載の顆粒組成物。
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載の顆粒組成物を内包するカプセル形態の食品又は医薬品。
(5) 異なる粒子径と異なる嵩比重を有する二種以上の顆粒状成分が均一に混合された組成物を製造する方法であって、異なる粒子径と異なる嵩比重を有する二種以上の顆粒状成分に、組成物の重量当たり1〜10質量%の、平均粒子径が約50μmで嵩比重が0.1g/mlであるセルロースを添加し、5分間混合することを特徴とする、前記顆粒組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粒子径や嵩比重が異なる活性成分を含む顆粒を含有するにもかかわらず、それらが均一に分散された組成物及びその製造方法が提供される。また、本発明の組成物は、カプセルに充填することにより、安定性に優れた食品や医薬品を得ることができる。本発明によれば、複数の成分を一つのカプセルに含有させることができるため、医薬やサプリメント等の飲用量を減らし、それを摂取する人の負担を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】試験例1で得られた顆粒組成物の分散状態を示す写真である。(A)は試験組成1、(B)は試験組成2、(C)は試験組成3の各顆粒組成物の分散状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、詳しく説明する。
本発明の組成物の調製に使用される顆粒状成分は、通常、食品や医薬品として使用されるために調製されている顆粒をそのまま用いることができる。また、目的に応じて、種々の有効成分を顆粒状とした後、用いることができる。さらに、本発明の組成物の調製に使用される顆粒状成分は、各種のコーティングが施されたものであってもよい。
【0013】
本発明において、顆粒状成分の調製及びそのコーティングの方法は、限定されず、いずれの方法によっても行うことができる。顆粒の調製方法としては、攪拌造粒、流動造粒、押し出し造粒等が好ましい方法として挙げられる。また、脂肪酸などの油脂成分の場合は、シームレスカプセルと呼ばれるマイクロカプセル調製技術によって製造されたものを用いることができる。シームレスカプセルは、例えば、シームレスカプセル製造装置(スフェレックス:フロイント産業社製)等を用いて、定法により製造することができる。
【0014】
本発明で使用される顆粒状成分の平均粒子径は、カプセルに一定量を充填するための工程を考慮すると、0.1〜0.5mmであることが好ましい。平均粒子径が0.5mmを超えると、混合しても偏析し、均一な組成物とならず好ましくない。
【0015】
本発明の組成物を調製するには、セルロース粉末が用いられる。セルロース粉末は、走査型電子顕微鏡で形状を観察したときに、球状である粉末はあまり好ましくなく、細長い形状の粒子が好ましい。特に、長径の平均粒子径が約50μm、嵩比重が約0.1g/mlの粒子を有する細長い形状の粒子が好ましい。このようなセルロース粉末としては、旭化成ケミカルズ株式会社製のセオラス(登録商標)STシリーズが挙げられる。セオラスシリーズの中でも「セオラスST−100」を用いた場合に、特に優れた効果を得ることができる。
【0016】
本発明の組成物を調製するには、所望の成分を含有する顆粒状成分を秤量し、組成物の重量に対して、1〜10質量%のセルロース粉末(上記したように、長径の平均粒子径が約50μm、嵩比重0.1〜0.15g/mlの粒子)を添加し、混合することが好ましい。混合の際に用いる混合装置は、特に限定されず、市販されている混合装置を使用することができ、ソフトに混合できる容器回転式(V形、二重円錐形、円筒形等)の混合装置は好ましい。
【0017】
顆粒状成分とセルロース粉末の撹拌、混合時間は、長時間行う必要はない。長時間攪拌すると、顆粒が破砕されて、内部の成分が表面に露出するため好ましくない。混合時間は、適宜調節する必要があるが、通常は3〜5分間の混合操作、特に約5分程度の混合操作によると、均一の組成物を得ることができる。
【0018】
本発明においては、セルロースに加えて、種々の添加物等を添加することができる。
食品を調製する場合は、食品添加物の他、食品として使用することができる他の添加剤、例えば乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、ショ糖、還元麦芽糖、還元乳糖、澱粉デキストリンなどの賦形剤、吸着剤、着色料、香料等を使用することができる。
医薬を調製する場合は、製剤学的に許容され得る添加物であれば、特に限定されずいずれのものも用いることができる。
【0019】
また、本発明の顆粒組成物は、種々の方法により製剤化して、食品や医薬品として用いることができる。特に、本発明の顆粒組成物を含む食品や医薬品の形態は特に限定されないが、顆粒組成物をカプセルに充填して、前記顆粒組成物を内包するカプセル形態の製剤や、三方シールを施した包装体とすることが好ましい。カプセル形態の製剤の調製方法や三方シールを施した包装体の調製方法は、特に限定されず、いずれの方法によって調製してもよい。カプセル形態の製剤は、各種医薬品、健康食品、サプリメント等として使用することができる。また、三方シールを施した包装体は、食品原料等として流通させることができ、一般飲料、焼き菓子、パン等の任意の食品に添加することができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例及び試験例により説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
(試験例1:セルロース粉末添加による効果)
本試験例では、下記表1に示す物理的特性を有するカルシウム顆粒、エイコサペンタエン酸(EPA)含有シームレスゼラチンカプセル顆粒及びコエンザイムQ10(CoQ10)顆粒の3種の顆粒の混合を行い、セルロースの添加による効果を確認した。
試験組成1では、セルロース粉末を用い、試験組成1及び2ではセルロース粉末を用いなかった。セルロース粉末は、結晶セルロース(セオラスST−100:旭化成ケミカルズ社製)を用いた。
【0021】
【表1】

【0022】
各成分を下記表2の配合組成により、合計重量が100gになるように秤量し、V型混合機(ミクロ型透視式混合器S−3:筒井理化学機械社製)を用いて、回転数50rpmで回転混合した。混合時間は、試験組成1及び試験組成2は5分間、試験組成3は10分間とした。
混合終了後、混合機の内部から、上部3箇所、底部2箇所から無作為にサンプリングし、各サンプル1g中のEPAシームレスカプセルの粒数を計数した。結果を表3に示す。また、各粒子の分散状態を肉眼で観察し、評価した。また分散状態を撮影した写真を図1に示す。
【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
(評価)
図1(A)の写真及び表3に示されるように、試験組成1は、粒子が均一に分散分布していることが確認できた。
しかし、セルロース粉末を添加しなかった試験組成2では、図1(B)の写真中、楕円で囲んだ部分に偏析が見られ、表3の結果からみても不均一な混合物しか得られなかった。
また、10分間の混合を行った試験組成3では、表3の結果からみて、試験組成1に次いで、均一に粒子が分散分布していた。しかし、図1(C)に見られるように、楕円で囲んだ部分に若干の偏析が見られ、大粒子が破砕されて、コーティング効果が減少していることが判明した。
これらの結果より、顆粒状成分とセルロースを混合して、5分間の混合を行うことにより、均一の組成物ができることが明らかとなった。
得られた混合組成物の物理的特性を表4に示す。
【0026】
【表4】

【0027】
(評価)
表4に示されるように、得られた組成物の物理的特性から、安息角が重要であるものと推定される。また、表4に示される粒度分布における試験組成2及び3を比較すると、試験組成3の粒子のほうが、細かい粒子の割合が多い。嵩比重の結果と併せて考えると、顆粒が破壊されていることが推測される。
したがって、図1及び表3の結果と同様、この表4の結果からみても、セルロースを含み、混合時間を5分とした試験組成2のほうが、顆粒成分の均一性が優れていることが分かる。
【0028】
(試験例2:セルロース粉末の物理的特性による効果)
市販の各種結晶セルロースを入手し、セルロースの物理的特性について比較試験を行った。市販の結晶セルロースは、旭化成ケミカルズ社製の種々の物理的特性を有する各セオラスを使用した。表5における記号は、同社製の各セオラスの商品番号である。各セオラスの物理的特性は次の表5とおりである。
【0029】
【表5】

【0030】
(評価)
表5に示される各結晶セルロースの中で、本発明の効果が得られたものは、平均粒子径が50μmで、嵩比重が0.10〜0.15g/mlのセオラスST−100のみであった。すなわち、粒子径が約50μm程度で、嵩比重が約0.1g/mlのセルロースが最も本発明の効果を得るために適していることが判明した。嵩比重の小さい結晶セルロースが顆粒の分散に効果を発揮することが確認された。
【0031】
(実施例1)
下記表6に示す配合組成により顆粒の混合を行った。各原料を秤量後、V型混合機(徳寿工作所社製)に投入し、回転数25rpmで5分間混合した後、試験例1と同様に混合機内の上部3点、底部2点で5gずつサンプリングし、EPA含有量を指標として組成物の均一性を確認した。測定結果を表7に示す。「評価」に示すように、顆粒成分が均一に分散、混合されていることを確認した。
【0032】
【表6】

【0033】
【表7】

【0034】
(評価)
表7に示されるように、上部1〜3及び底部1〜2の均一性はほとんど変らず、顆粒が均一に分散・分布していることが確認できた。また、顆粒が破砕されたような形状の粒子は肉眼的に観察されなかった。
【0035】
(実施例2)
下記表8の配合により顆粒成分の混合を行った。各原料を秤量後、実施例1と同様にV型混合機(徳寿工作所社製)に投入し、回転数25rpmで5分間混合した後、試験例1と同様に、混合機内の上部3点、底部2点で5gずつサンプリングし、ビタミンE含有量を指標として組成物の均一性を確認した。測定結果を表9に示す。
【0036】
【表8】

【0037】
【表9】

【0038】
表9に示されるように、セルロースを用いた本実施例において、顆粒が均一に分散・分布していることが確認できた。また、顆粒が破砕されたような形状の粒子は肉眼的に観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、組成物中に、表面がコーティングされた顆粒や、平均粒子径や嵩比重などの異なる顆粒同士を、均一に分散・混合させることができるので、多くの有効成分を1つの製剤に含有する医薬や食品を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる粒子径と異なる嵩比重を有する二種以上の顆粒状成分と、セルロース粉末とが均一に分散した組成物であって、セルロースの平均粒子径が約50μmで、嵩比重が約0.1g/mlである顆粒組成物。
【請求項2】
顆粒状成分の平均粒子径が、0.1〜0.5mmである請求項1記載の顆粒組成物。
【請求項3】
セルロース粉末の含有量が、組成物の重量当たり1〜10質量%である請求項1又は2記載の顆粒組成物。
【請求項4】
請求項1〜3記載のいずれかに記載の顆粒組成物を内包するカプセル形態の食品又は医薬品。
【請求項5】
異なる粒子径と異なる嵩比重を有する二種以上の顆粒状成分が均一に混合された組成物を製造する方法であって、異なる粒子径と異なる嵩比重を有する二種以上の顆粒状成分に、組成物の重量当たり1〜10質量%の、平均粒子径が約50μmで嵩比重が0.1g/mlであるセルロースを添加し、5分間混合することを特徴とする、前記顆粒組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−51832(P2012−51832A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194969(P2010−194969)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】