説明

顎運動測定装置に用いる支持部品

【課題】 口裂の中央部分を開放し状況に応じた顎運動の測定が可能となること。
【解決手段】 上顎支持体21は、上顎枠体113と接続する上枠固定部22と、該上枠固定部22と接続する上顎連結部23と、前記上顎連結部23と連接している上顎固着部24とを有し、下顎支持体41は下顎枠体133と接続する下枠固定部42と、該下枠固定部42と接続する下顎連結部43と、前記下顎連結部43と連接している下顎固着部44とを有し、前記上顎連結部23及び前記上顎固着部24は、曲げた後の変位状態を維持する材料によって作られており、前記下顎連結部43及び前記下顎固着部44は、曲げた後の変位状態を維持する材料によって作られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顎運動を測定する顎運動測定装置に用いる支持部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野においては、人の上下顎の運動の測定や観察が様々な技法によってできるようになってきている。顎運動の測定や観察の技法としては、例えば、解剖学的法、写真法、映画法、描写法、電気的な測定法などがある。
【0003】
上記顎運動を測定する技法の一例としては、上顎に対する下顎の相対運動として前後、左右、上下、ロール、ピッチ、ヨーの6種類のパラメーターにより数値化して測定する6自由度顎運動測定器が知られている。
【0004】
6自由度顎運動測定装置は、複数の信号生成体を有する上顎枠体及び上顎支持体、下顎枠体及び下顎支持体、生体標点支持具と全ての信号生成体の位置を計測するセンサを有する計測ユニットを備えている。
【0005】
6自由度顎運動測定器では、上顎枠体及び上顎支持体、下顎枠体及び下顎支持体、生体標点支持具が有する全ての信号生成体が生成する全ての信号を、患者の正面の計測ユニットに向かって信号伝播するようにしている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−195151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、6自由度顎運動測定装置によって顎運動を測定する際に、上顎枠体及び下顎枠体と歯を繋ぐ上顎支持体及び下顎支持体の形状が問題となる。
【0008】
即ち、特許文献1の6自由度顎運動測定装置による顎運動測定では、上顎支持体の固定部及び下顎支持体の固定部が人体の中央に存在するため、口裂を閉じることが困難となる。なお、口裂は、口の上下に開く部分である。
【0009】
即ち、特許文献1では、摂取した食物を歯で咬み、粉砕する咀嚼運動等の軽度な測定であれば利用できる。しかし、物体を口で咥えた状態、例えば、楽器の演奏中の顎運動の測定をしようとした場合には、顎運動の測定ができないという問題がある。
【0010】
さらに、特許文献1では、口裂の中央に上顎支持体の固定部及び下顎支持体の固定部が存在するため、上顎支持体及び下顎支持体を取り付けたまま口腔内に物体を挿入しようとしても、口腔内に物を挿入するようなことができない。
【0011】
それ故に、本発明の課題は、人体の口唇の自由度を持たせたまま顎運動測定を行うことを可能とする顎運動測定装置に用いる支持部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施の態様によれば、上顎枠体及び下顎枠体を有する顎運動測定装置に用いる支持部品において、前記上顎枠体と接続する上顎支持体及び前記下顎枠体と接続する下顎支持体を有し、前記上顎支持体は、前記上顎枠体と脱着可能に接続する上枠固定部と、該上枠固定部と接続する上顎連結部と、人体の左右の口角の一方側から口腔内へ入り込ませ前記口腔内で前記上顎における一側列の奥歯と固着させるように前記上顎連結部と連接している上顎固着部とを有し、前記下顎支持体は、前記下顎枠体と着脱可能に接続する下枠固定部と、該下枠固定部と接続する下顎連結部と、左右の前記口角の他方側から前記口腔内へ入り込ませ前記口腔内で前記上顎の前記一側列とは異なる噛み合わせ位置にある前記下顎における他側列の奥歯と固着させるように前記下顎連結部と連接している下顎固着部とを有し、前記上顎連結部及び前記上顎固着部は、前記上顎枠体と前記上枠固定部とを接続し前記上顎固着部側を保持した際に前記上顎枠体の自重に対して曲げた後の変位状態を維持する材料によって作られており、前記下顎連結部及び前記下顎固着部は、前記下顎枠体と前記下枠固定部とを接続し前記下顎固着部側を保持した際に前記下顎枠体の自重に対して曲げた後の変位状態を維持する材料によって作られていることを特徴とする顎運動測定装置に用いる支持部品が得られる。
【0013】
前記上顎固着部は、複数本の前記奥歯の少なくとも側面と対向させて上顎固着部材によって固着させるように曲げられている形状であり、前記下顎固着部は、複数本の前記奥歯の少なくとも側面と対向させて下顎固着部材によって固着させるように曲げられている形状であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施の態様に係る顎運動測定装置に用いる支持部品によれば、顎運動測定装置によって顎運動を測定する際に、測定状況に応じた顎運動の測定が可能となり、人体の口唇の自由度を持たせたまま顎運動の測定を行うことができることから測定の範囲を広げることができるという利点がある。
【0015】
即ち、本発明の実施の態様に係る顎運動測定装置に用いる支持部品によれば、口裂の中央部分に自由に物体を咥えながら顎運動を測定することや、口裂の中央部分に自由に物体を挿入し顎運動を測定することや、さらに測定中に口裂を閉じることもできるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る支持部品を示す斜視図である。
【図2】図1に示した上顎支持体を上顎固着部材により上顎側の奥歯に固着した状態を口腔内から見た平面図である。
【図3】図1に示した下顎支持体を下顎固着部材により下顎側の奥歯に固着した状態を口腔内から見た平面図である
【図4】図2及び図3の上顎支持体及び下顎支持体を固着した状態を、人体の顔面の外側から見た正面図である。
【図5】図1に示した支持部品に上顎枠体を固定した第1組立部品を示す斜視図である。
【図6】図1に示した支持部品に下顎枠体を固定した第2組立部品を示す斜視図である。
【図7】図5に示した第1組立部品と図6に示した第2組立部品とからなる支持部品ユニットを備えた6自由度顎運動測定装置の具体例を示しており、自由度顎運動測定装置の概略構成を示す側面図である。
【図8】図7に示した6自由度顎運動測定装置の測定方向を説明するために下顎を口腔内から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態例における支持部品を説明する。図1は、上顎支持体と下顎支持体とからなる支持部品を示している。
【0018】
図1を参照して、支持部品11は、細長形状の上顎支持体21と、上顎支持体21と対で用いられる細長形状の下顎支持体41とを有する。
【0019】
上顎支持体21は、上枠固定部22と、上枠固定部22の一端部と接続されている上顎連結部23と、上顎連結部23と連接されて上枠固定部22とは逆方向へ延びている上顎固着部24とを有する。
【0020】
図1に示したように、上顎固着部24は、略U字状に曲げられている。図2は、図1に示した上顎支持体を上顎固着部材81により上顎側の奥歯57a,57bに固着した状態を口腔内から見た図である。
【0021】
上顎固着部24は、図2に示したように、上顎固着部材81によって奥歯57a,57bに固着させる部分である。上顎固着部24は、人体の口腔内で上顎57における一側列の複数本の奥歯57a,57bの側面に略U字状部分を対向させて、奥歯57a,57bに合わせて曲げ調整した後、上顎固着部材81によって奥歯57a,57bに固着させる。
【0022】
下顎支持体41は、下枠固定部42と、下枠固定部42の一端部と接続されている下顎連結部43と、下顎連結部43と連接されて一方向へ延びている下顎固着部44とを有する。
【0023】
図3は、図1に示した下顎支持体41を下顎固着部材82により下顎58側の奥歯58a,58bに固着した状態を口腔内から見た図である。
【0024】
図3に示したように、人体の口腔内においては、上顎支持体21の上顎57における一側列の複数本の奥歯57a,57bが、下顎58における一側列の複数の奥歯58a,58bと噛み合わされるように対向している。
【0025】
下顎固着部44は、略U字状に曲げられている。下顎固着部44は、奥歯58a,58bに下顎固着部材82によって固着させる部分である。下顎固着部44は、一側列とは異なる下顎58における他側列の複数本の奥歯58a,58bの側面に略U字状部分を対向させ奥歯58a,58bに合わせて曲げ調整した後、奥歯58a,58bに下顎固着部材82によって固着させる。
【0026】
上枠固定部22及び下枠固定部42は、これらの長手方向の寸法が同一か、若しくは互いに異なる寸法であってもよい。上顎連結部23及び上顎固着部24の長手方向の寸法は、上枠固定部22よりも長い。下顎連結部43及び下顎固着部44の長手方向の寸法は、下枠固定部42よりも長い。
【0027】
また、上顎連結部23及び上顎固着部24の長手方向の寸法は、下顎連結部43及び下顎固着部44の長手方向の寸法と同一か、若しくは異なる寸法であってもよい。なお、支持部品11は、上顎支持体21と下顎支持体41とを同一長さ、同一形状とすれば、部品を共通化することができる。
【0028】
上枠固定部22は、帯状又は棒状の金属材料によって作ることが望ましい。金属材料としては、例えば、コバルトクロム合金、アルミニウム、チタン、ジュラルミン、その他、歯科医療において医療として用いられている金属合金によって作ることが望ましい。上枠固定部22と上顎連結部23とは、上枠固定部22の一端部及び上顎連結部23の一端部同士を溶接により接続することによって作ることができる。上顎連結部23及び上顎固着部24は、1本の金属材料によって作ることが望ましいが、1本の上顎連結部23及び1本の上顎固着部24を溶接により接続することにより一体としてもよい。
【0029】
また、上顎連結部23及び上顎固着部24は、人手と曲げ工具とによって曲げることができ、曲げやすく、変位した後の状態を維持することができる曲げ変位可能な帯状又は棒状の金属材料によって作ることが望ましい。上顎連結部23及び上顎固着部24に用いる金属材料としては、例えば、コバルトクロム合金、アルミニウム、チタン、ジュラルミン、その他、歯科医療において医療用として用いられている金属合金によって作ることが望ましい。さらに、上顎連結部23及び上顎固着部24は、形状記憶合金であってもよい。
【0030】
下枠固定部42は、上枠固定部と同様な金属材料によって作ることが望ましい。下枠固定部42と下顎連結部43とは、下枠固定部42の一端部及び下顎連結部43の一端部同士を溶接して接続することによって作ることができる。下顎連結部43及び下顎固着部44は、1本の金属材料によって作ることが望ましいが、1本の下顎連結部43及び1本の下顎固着部44を溶接して接続することにより一体としてもよい。
【0031】
また、下顎連結部43及び下顎固着部44は、上顎連結部23及び上顎固定部24と同様な金属材料によって作ることが望ましい。
【0032】
以下、上顎支持体21及び下顎支持体41を上顎57側の奥歯57a,57b、及び下顎58側の奥歯58a,58bのそれぞれに固定する作業について説明する。なお、以下の説明では、図2によって説明した上顎57側の奥歯57a,57bを、2本の小臼歯57a及び3本の大臼歯57bとして説明する。また、図2によって説明した下顎58側の奥歯58a,58bを2本の小臼歯58a及び3本の大臼歯58bとして説明する。
【0033】
始めに、図1に示したように、上顎支持体21の上顎固着部24は、上顎57側の一側列における2本の小臼歯57a及び3本の大臼歯57bの外側面と大臼歯57bの内側面を囲うように略U字状に曲げておく。この際、上顎固着部24は、曲げ形状を人手と医療用工具としてのニッパー、プライヤーなどの曲げ工具とによって調整して略U字状に曲げておく。
【0034】
その後、小臼歯57a及び大臼歯57bには、図2に示したように、上顎固着部材81を設けて上顎固着部24を固着する。この際、上顎支持体21の上顎連結部23は、図4に示す左右の口角95a,95bの一方側の口角95aの外へ延びている。また、上顎連結部23と連設されている上枠固定部22は前歯57cの前方に位置する。
【0035】
なお、口角95a,95bは、人体の上唇91及び下唇92間である口裂93の外側隅であり、上唇91及び下唇92の左右両方の繋ぎ目部分を指す。口角95a,95bは、顔の表情や発音に係わる重要な部分である。
【0036】
上顎支持体21の上顎連結部23は、図4に示した左右の口角95a,95bのうちの一方側の口角95aから上顎連結部23の中間部分の一端側が突き出している状態で、上顎固着部材81によって小臼歯57a及び大臼歯57bに固着される。したがって、上顎連結部23は、上唇91及び下唇92の口裂93の中央部分から突き出ているものではない。
【0037】
同様に、図1に示したように、下顎固着部44は、略U字状に曲げておく。下顎支持体41の下顎固着部44は、下顎58における他側列における2本の小臼歯58a及び3本の大臼歯58bの外側面と大臼歯58bの内側面を囲うように曲げ形状を人手と曲げ工具によって調整し略U字状に曲げておく。
【0038】
その後、小臼歯58a及び大臼歯58bには、図3に示したように、下顎固着部材82によって下顎固着部44を固着する。この際、下顎支持体41の下顎連結部43は、図4に示す左右の口角95a,95bの他方側の口角95bの外へ延びている。また、下顎連結部43と連設されている下枠固定部42は前歯58cの前方に位置する。
【0039】
下顎支持体41の下顎連結部43は、図4に示した左右の口角95a,95bのうちの他方側の口角95bから下顎連結部43の中間部分の一端側が突き出している状態で、下顎固着部材82によって小臼歯58a及び大臼歯58bに固着される。したがって、下顎連結部43は、上唇91及び下唇92の口裂93の中央部分から突き出ているものではない。
【0040】
上顎固着部材81及び下顎固着部材82としては、瞬間接着剤や、レジン系接着材、リン酸塩系の歯科用セメントのいずれか1種により固着することが望ましい。瞬間接着剤の具体例としては有機化合物であるシアノアクリレートを主成分とする接着剤、例えば、アロンアルファ(東亞合成化学株式会社の商標)を採用する。
【0041】
なお、上顎固着部24及び下顎固着部44は、上顎57側及び下顎58側それぞれの2本の小臼歯57a,58aと3本の大臼歯57b、58bに上顎固着部材81及び下顎固着部材82によって固着することに限定されるものではない。ようするに、上顎固着部24及び下顎固着部44が確実に固着できればよいことから、例えば、上顎57及び下顎58のそれぞれ2本の大臼歯57b,58bのみと固着させるものであってもよい。
【0042】
次に、上顎支持体21及び下顎支持体41からなる支持部品11を用いた6顎運動測定装置により顎運動を測定する具体例を説明する。
【0043】
ます、図4に示したように、一方側の口角95aから上顎連結部23の中間部分及び一端側が突き出すように小臼歯57a及び大臼歯57bに上顎固着部24を上顎固着部材81によって固着する。
【0044】
そして、上顎支持体21は、図5に示すように、上顎枠体113と着脱可能に接続される。上顎支持体21と上顎枠体113とは、これらを組み立てることにより第1組立部品111とする。
【0045】
また、図4に示したように、他方側の口角95bから下顎連結部43の中間部分及び一端側が突き出すように小臼歯58a及び大臼歯58bに下顎固着部44を下顎固着部材82によって固着する。
【0046】
そして、下顎支持体41は、図6に示すように、下顎枠体133と着脱可能に固定あれる。下顎支持体41と下顎枠体133とは、これらを組み立てることにより第2組立部品131とする。
【0047】
図7に示すように、第1組立部品111と第2組立部品131とは、これらで6自由度顎運動測定装置に用いられる支持部品ユニット101となる。
【0048】
上顎枠体113は、複数個の第1発光素子112が設けられている。上顎枠体113は、図7に示した人体の鼻153と対向し、鼻153から顔面の左右へ向かって延び、かつ顔面と対向するように形成されている形状である。上顎枠体113を図5の紙面により平面から見た場合には、略逆「く」の字形状となっている。
【0049】
なお、上顎枠体113は、略逆「く」の字形状に限定されるものではなく、半円形状、半楕円形状であってもよい。なお、上顎枠体113は、樹脂材料又は軽量な金属材料によって作ることが望ましい。
【0050】
上顎枠体113の側面には、少なくとも3個の第1発光素子112が設けられている。ここで、上顎枠体113の側面は、人体の顔面と対向する側面と反対の外側面である。
【0051】
第1発光素子112が3個である場合には、上顎枠体113の長手方向の中央部分の側面に1個と、上顎枠体113の長手方向の両側面にそれぞれ1個が設けられる。
【0052】
さらに、上顎枠体113の側面と直交する一面の長手方向における中央部分には、第1の孔116aが形成されている第1保持部116と、第1保持部116に設けられているネジ部品のような第1固定部材117とを有する。
【0053】
以下に、第1固定部材117による上顎枠体113と上顎支持体21の上枠固定部22との固定について説明する。
【0054】
先ず、第1保持部116の第2の孔116aには、上顎支持体21の上枠固定部22の先端部を挿入する。そして、第1保持部116に形成されているネジ孔(図示せず)に第1固定部材117のネジ部(図示せず)を螺合してネジ締めすることによって、第1固定部材117のネジ部の先端面で上枠固定部22を固定する。
【0055】
下顎枠体133は、複数個の第2発光素子132が設けられている。下顎枠体133は、図4に示した人体の唇55と対向し、唇55の中央部から唇55の左右の口角95a,95bを越えるように、かつ左右方向へ顔面と対向するように形成されている形状である。
【0056】
下顎枠体133を図6の紙面によって平面から見た場合には、略逆「く」の字形状となっている。下顎枠体133は、略逆「く」の字形状に限定されるものではなく、半円形状、半楕円形状であってもよい。なお、下顎枠体133は、樹脂材料又は軽量な金属材料によって作ることが望ましい。
【0057】
下顎枠体133の側面には、少なくとも3個の第2発光素子132が設けられている。ここで、下顎枠体133の側面は、人体の顔面と対向する側面と反対となる外側面である。なお、第2発光素子132が3個である場合には、下顎枠体133の長手方向の中央部分の側面に1個と、下顎枠体133の長手方向の両側面にそれぞれ1個が設けられる。
【0058】
下顎枠体133の側面と直交する一面の長手方向における中央部分には、第2の孔136aが形成されている第2保持部136と、第2保持部136に設けられているネジ部品のような第2固定部材137とを有する。
【0059】
以下に、第2固定部材137による下顎枠体133と下顎支持体41の上枠固定部42との固定を説明する。
【0060】
先ず、第2保持部136の第2の孔136aには、下顎支持体41の下枠固定部42の先端部を挿入する。そして、第2保持部136に形成されているネジ孔(図示せず)に第2固定部材137のネジ部(図示せず)を螺合してネジ締めすることによって、第2固定部材137のネジ部の先端面で下枠固定部42を固定する。
【0061】
また、6自由度顎運動測定装置は、図7に示したように、第1発光素子112の光を受光する第1受光素子171と、第2発光素子132の光を受光する第2受光素子172とを備えたセンサ部175を有する。
【0062】
さらに、6自由度顎運動測定装置は、センサ部175の信号により、人体の上顎57に対する下顎58の上下運動を図8の計測座標によって示した±X軸,±Y軸,±Z軸とロール、ピッチ、ヨーの3種の傾きからなる6種類のパラメーターにより数値化して測定する測定・記録装置176を有する。
【0063】
なお、具体的な顎運動測定装置としては、特開2004−195151号公報に開示されている顎運動測定装置、特開2002−355264号公報に開示されている3次元運動測定装置およびその方法並びに3次元位置検出装置、特開2001−112743号公報に開示されている三次元顎運動表示装置、方法及び三次元顎運動表示プログラムを記憶した記憶媒体等がある。
【0064】
顎運動を測定する技法としては、開口量のみを測定する1自由度測定装置、ゴシックアーチ描記法のように平面内の一点の運動を測定する2自由度測定装置、生体に取り付けた1個の評点の3次元位置を測定する3自由度測定装置、2個の評点の3次元位置を測定する5自由度測定装置や6自由度顎運動測定装置がある。
【0065】
上顎枠体113の第1保持部116における第1の孔116aには、上顎支持体21の上枠固定部22の先端部を挿入する。そして、第1の孔116aに挿入した上枠固定部22を第1固定部材117によって固定する。同様に、下顎枠体133の第2保持部136の第2の孔136aには、下顎支持体41の下枠固定部42の先端部を挿入する。そして、第2の孔136aに挿入した下枠固定部42を第2固定部材137によって固定する。
【0066】
上顎固着部材81によって小臼歯57a及び大臼歯57bと固着された上顎固着部24と上顎枠体113との間の距離は、上枠固定部22を、上顎枠体113における第1保持部116の第1の孔116aで軸方向へスライドさせることによって調整することができる。同様に、下顎固着部材82によって小臼歯58a及び大臼歯58bと固着された下顎固着部44と下顎枠体133との距離は、下枠固定部42を下顎枠体133における第2保持部136の第2の孔136aで軸方向へスライドさせることによって調整することができる。
【0067】
上顎枠体113は顔面に対して上側、下顎枠体133は上顎枠体113の下側で、互いに略平行に位置するように、上顎連結部23及び下顎連結部43を人手と曲げ工具とによって曲げ調整した後、所定の変位状態を維持させることにより、上顎枠体113と下顎枠体133との位置を定める。また、第1発光素子112及び第2発光素子132が第1受光素子171,172と対向するように上顎連結部23及び下顎連結部43を曲げるようにして調整した後の変位状態を維持させる。
【0068】
即ち、上顎連結部及び上顎固着部は、曲げ変位可能かつ上顎枠体の自重に対して曲げた後の変位状態を維持することができる加工された帯状又は棒状の金属材料を用いる。同様に、下顎連結部及び下顎固着部は、曲げ変位可能かつ下顎枠体の自重に対して曲げた後の変位状態を維持することができるように加工された帯状又は棒状の金属材料を用いる。
【0069】
したがって、支持部品ユニット101の第1組立部品111及び第2組立部品131を上顎57側及び下顎58側のそれぞれに固定した状態では、上唇91及び下唇92の口裂93の中央部分を開放することができる。それ故に、口裂93の中央部は障害物がないことから、上顎連結部23及び下顎連結部43によって邪魔されるようなことがない。よって、上顎支持体21及び下顎支持体41を用いて顎運動を測定する際には、測定状況に応じた測定が可能となる。
【0070】
具体的には、口裂93の中央部分から自由に物体を挿入して測定したり、楽器の吹き口のような物体を咥えながら演奏した際の下顎58の上下運動を測定したり、測定中に口裂93を自由に開閉することも可能となるため、測定の自由度を上げることができる。
【0071】
また、上顎支持体21は上顎枠体113を支える強度があればよく、下顎支持体41は下顎枠体133を支える強度があればよい。さらに、上顎固着部材81及び下顎固着部材82は、上顎支持体21及び下顎支持体41を取り外す際に取り外しがしやすい材料であればよい。
【0072】
また、上顎支持体21と上顎枠体113とを分離するには、第1固定部材117を固定する操作と逆の操作することにより、第1保持部116における第1の孔116aから上顎支持体21の上枠固定部22の先端部を外すことができる。よって、上顎支持体21と上顎枠体113は着脱可能なものとなる。
【0073】
同様に、下顎支持体41と下顎枠体133とを分離するには、第2固定部材137を固定する操作と逆の操作することにより第2保持部136における第2の孔136aから下顎支持体41の下枠固定部42の先端部を外すことができる。よって、下顎支持体41と下顎枠体133とは、着脱可能なものとなる。
【0074】
以上の特徴を踏まえた本実施の形態例の支持部品11を利用することにより、自由度顎運動測定装置において顎運動測定を行う際に、測定状況に応じた顎運動測定のバリエーションが増える。
【符号の説明】
【0075】
11 支持部品
21 上顎支持体
22 上枠固定部
23 上顎連結部
24 上顎固着部
41 下顎支持体
42 下枠固定部
43 下顎連結部
44 下顎固着部
55 唇
57 上顎
57a、58a 奥歯(小臼歯)
58 下顎
57b、58b 奥歯(大臼歯)
81 上顎固着部材
82 下顎固着部材
91 上唇
92 下唇
93 口裂
95a,95b 口角
101 支持部品ユニット
111 第1組立部品
112 第1発光素子
113 上顎枠体
116 第1保持部
117 第1固定部材
131 第2組立部品
132 第2発光素子
133 下顎枠体
136 第2保持部
137 第2固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上顎枠体及び下顎枠体を有する顎運動測定装置に用いる支持部品において、前記上顎枠体と接続する上顎支持体及び前記下顎枠体と接続する下顎支持体を有し、
前記上顎支持体は、前記上顎枠体と脱着可能に接続する上枠固定部と、該上枠固定部と接続する上顎連結部と、人体の左右の口角の一方側から口腔内へ入り込ませ前記口腔内で前記上顎における一側列の奥歯と固着させるように前記上顎連結部と連接している上顎固着部とを有し、
前記下顎支持体は、前記下顎枠体と着脱可能に接続する下枠固定部と、該下枠固定部と接続する下顎連結部と、左右の前記口角の他方側から前記口腔内へ入り込ませ前記口腔内で前記上顎の前記一側列とは異なる噛み合わせ位置にある前記下顎における他側列の奥歯と固着させるように前記下顎連結部と連接している下顎固着部とを有し、
前記上顎連結部及び前記上顎固着部は、前記上顎枠体と前記上枠固定部とを接続し前記上顎固着部側を保持した際に前記上顎枠体の自重に対して曲げた後の変位状態を維持する材料によって作られており、
前記下顎連結部及び前記下顎固着部は、前記下顎枠体と前記下枠固定部とを接続し前記下顎固着部側を保持した際に前記下顎枠体の自重に対して曲げた後の変位状態を維持する材料によって作られていることを特徴とする顎運動測定装置に用いる支持部品。
【請求項2】
請求項1記載の顎運動測定装置に用いる支持部品において、前記上顎固着部は、複数本の前記奥歯の少なくとも側面と対向させて上顎固着部材によって固着させるように曲げられている形状であり、前記下顎固着部は、複数本の前記奥歯の少なくとも側面と対向させて下顎固着部材によって固着させるように曲げられている形状であることを特徴とする顎運動測定装置に用いる支持部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate