説明

顔撮影装置

【課題】顔の撮影において、顔全体の展開画像を得ることができる顔撮影装置を提供することである。
【解決手段】顔を所定位置に保持させる顔保持手段と、保持されている顔を撮影するラインセンサカメラ4と、撮影された顔画像のデータを記憶する顔画像データ保存部36と、を備え、前記撮影手段によって撮影された顔全体を展開画像として構成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の状態を診断する場合などに使用される顔撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる顔撮影装置は、美容皮膚科、美容外科、形成外科などにおいて使用されており、定期的に人の顔を撮影することで肌の状態の経時的な変化を観察し、化粧品や肌治療の効果を確認する目的で使用されている(例えば、下記特許文献1)。具体的には、得られた顔画像からシミ・シワ・毛穴・色ムラなどの評価を行なうものであり、さらには、紫外線を使用したポルフィリン・かくれジミなどの評価も行なわれている。
【0003】
そして、肌の診断にために、正面と左右の側面(例えば、正面を基準に45度)の計3枚の顔画像を撮影している。これは、正面位置だけでは、頬等の位置にある肌診断を正確に行なえないからである。さらに、肌状態の評価を行なうために、以前に撮影した顔画像と今回撮影した顔画像とを画像処理技術(ソフトウェア)を用いて比較することが行なわれている。従って、以前の顔画像(例えば、3枚)と現在の顔画像(例えば、3枚)とで、計6枚の顔画像を撮影する必要がある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−148540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記述したように、肌の診断を正確に行なうために、上記特許文献1の場合、以前の顔画像(例えば、3枚)と現在の顔画像(例えば、3枚)とで、計6枚の顔画像を撮影する必要があり、すなわち、撮影位置を変更(正面、側面)するという煩雑な操作が必要であり、撮影時間も長くなって撮影被験者の負担(疲れ)が大きくなる等の問題があり、さらに、正面位置と側面位置での3回の肌診断を行なう必要があり、改善が要望されていた。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、顔の撮影において、顔全体の展開画像を得ることができる顔撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る顔撮影装置は、
顔を撮影する撮影手段を備え、
前記撮影手段によって撮影された顔全体を展開画像として構成することを特徴とする。
【0008】
かかる構成による顔撮影装置の作用・効果について説明する。撮影手段により顔の撮影を行う。撮影された顔画像は、顔全体の展開画像として構成される。これによって、顔全体の展開画像が得られ、この展開画像を見ることで、顔全体を簡単に確認できるので、肌診断を正確に行なえる。なお、顔の撮影に際し、被験者が顔を動かさないように固定して撮影してもよく、例えば、顔保持手段(例えば、額押さえ部とあご載せ台)により顔を所定位置に保持して顔の撮影を行なうように構成してもよい。
【0009】
また、本発明の他の好適な一実施形態として、撮影手段は、顔の形状に沿って移動しながら顔全体を連続して撮影し、当該連続して撮影された顔画像を展開画像として構成することを特徴とする。
【0010】
これによって、撮影手段を顔の形状に沿って移動しながら顔全体を連続して撮影し、当該連続して撮影された顔画像を展開画像に構成できる。顔の形状に沿って移動するための移動機構は後述する。
【0011】
また、本発明の他の好適な一実施形態として、撮影手段は、顔の形状に沿って移動しながら顔全体を分割して撮影し、当該分割して撮影された顔画像を展開画像として構成することを特徴とする。
【0012】
これによって、撮影手段を顔の形状に沿って移動しながら顔全体を分割して撮影し、当該分割して撮影された顔画像を展開画像に構成できる。分割は、特に制限されないが、例えば、縦のストライプ状に分割してもよく、横のストライプ状に分割して撮影してもよい。また、顔部位の高低差(例えば、鼻、口の凸部と他の部位を分割)によって分割してもよい。
【0013】
また、本発明の他の好適な一実施形態として、撮影手段をラインセンサカメラで構成することが好ましい。これによって、顔全体をスキャンするかのように連続撮影が可能になる。
【0014】
また、本発明の他の好適な一実施形態として、連続画像の顔画像のデータを記憶する顔画像データ記憶手段と、をさらに備え、同一の顔を再度撮影する場合に、顔画像データ記憶手段に記憶されている前回顔画像と同条件の撮影を行って、顔全体の展開画像を構成することを特徴とする。
【0015】
この構成によって、前回撮影と同様に今回撮影においても、展開画像を構成でき、前回の展開画像と今回の展開画像を用いて、適切な肌診断を行なうことができる。この時、顔画像は、1枚の展開画像であるため、前回の展開画像と今回の展開画像とを画像処理し、しみの面積比較(縮小度)等の肌診断を効率的に素早く行なえる。なお、撮影された顔画像を特定するために、識別ID、氏名、撮影日、顔画像ID等の情報を顔画像(展開画像)に関連付けて記憶しておくことが好ましい。そして、後日の、同一人物の顔画像を撮影する場合において、顔画像データ記憶手段に記憶されている顔画像をモニター等に読み出す際に、識別ID、氏名、撮影日、顔画像ID等の情報から同一人物の顔画像を特定することが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施形態1)
本発明に係る顔撮影装置の好適な実施形態1を図面を用いて説明する。図1は、顔撮影装置の内部構成を示す横断面図を示し、図2は、図1に示す顔撮影装置の縦断面図である。図3、4は、ラインセンサカメラの回転移動機構の詳細を示す図である。
【0017】
この顔撮影装置Aは、美容皮膚科、美容外科、形成外科などにおいて使用されている。定期的あるいは適度な期間を空けて人の顔を撮影することで肌の状態の経時的な変化を観察し、化粧品や肌治療の効果を確認する目的で使用される。この装置は、得られた顔画像からシミ・シワ・毛穴・色ムラなどの評価を行なう機能を有し、さらには、紫外線を使用したポルフィリン・かくれジミなどの評価を行なうこともできる。
【0018】
<顔撮影装置の構成>
図1において、顔撮影装置Aは、略立方体形状の筐体1を備えており、顔の撮影を行う時は筐体1内の所定箇所に顔を保持させた状態で行い、室内光などが筐体1内部に侵入しにくいような構造が採用されている。筐体1の正面には開口部1aが形成されており、ここから顔を挿入させる。人の顔を所定位置に保持するための顔保持手段として、あご載せ台2と額押さえ3が設けられている。あご載せ台2と額押さえ3は、人の顔の大きさや形状などに対応できるように手動で位置調整ができるように構成されている。開口部1aからの外光進入を防止するためにカーテン1bが設けられる。
【0019】
顔を撮影するための撮影手段としてラインセンサカメラ4が設けられており、カメラ支持体5に保持されている。図1に示すように、ラインセンサカメラ4は顔全体を撮影できるように、顔位置中心を基点に半円の軌道に沿って(顔位置中心での横断面に沿うように)移動できる構成になっている。かかるラインセンサカメラ4の移動機構については後述する。
【0020】
ラインセンサカメラ4は、公知のカラー、またはモノクロのラインセンサカメラで構成される。ラインセンサカメラ4は、顔の縦方向に配置され、例えば、顔中心位置を基点として、左右水平に回転移動するように構成できる。また、ラインセンサカメラ4を複数個のブロックに構成し、ブロック単位で顔の高低差に応じて、顔とブロックとの間の距離を一定に保つように移動するように構成してもよい。例えば、顔表面とラインセンサカメラ4との距離は、近接センサー、距離センサー等で測定し、距離を一定に保つように移動する公知の機構を備えるように構成できる。また、ラインセンサカメラ4に自動焦点機構を備え、顔の高低差に応じて、焦点合わせを自動に行なうように構成できる。また、ラインセンサカメラ4には、被撮影体の顔表面に焦点を合わせるために、結像用のレンズ(不図示)またはスリット(不図示)を設けるように構成できる。この結像用のレンズを移動することで上記高低差の焦点合わせを行なうように構成できる。ラインセンサカメラ4で撮影された顔画像は、モニター等に表示されるように構成されている。
【0021】
また、撮影手段としてエリアセンサカメラを用いてもよい。エリアセンサカメラを用いる場合、撮影されたエリア同士の境を繋ぎ合わせる処理を行なう合成手段を備える必要がある。
【0022】
このように、顔画像を撮影するために、ラインセンサカメラ4は顔位置を中心として回転移動できるように構成されている。ラインセンサカメラ4の回転中心Bは、あご載せ台2の位置に設定されている。ラインセンサカメラ4を顔の形状に沿って移動できるように移動機構が設けられている。
【0023】
顔を照明するための光源8が筐体1内の複数個所に配置されている。光源8は、顔の位置を中心として円周方向に沿って顔に面するように配置されていると共に、図2に示すように、上方にも複数個所に配置される。光源8には、可視光を照射する光源と紫外線を照射するブラックライトがあり、目的に応じて使い分けもしくは両方が使用される。可視光を照射する光源8は、ハロゲンランプ、蛍光灯、LEDなど適宜のものを使用することができる。また、光源8は、ラインセンサカメラ4と共に移動する構成であってもよい。
【0024】
光源8から照射される光を均一に拡散するための拡散板9が光源8と顔の間に配置される。拡散板9は、図1に示す横断面形状において円弧形状(半円形状)に形成されている。図2に示すように、拡散板9は、顔の正面だけでなく天井部と底面部にも配置されており、従って、この拡散板9により顔が包囲されるような形態となる。なお、拡散板9は、半円形でなくてもよく、多角形、楕円形状を呈していてもよい。ラインセンサカメラ4は、拡散板9の背後側に移動することになるため、その移動範囲において撮影を可能にするため開口部9aが形成される。
【0025】
<カメラ移動機構>
次に、ラインセンサカメラ4の移動機構の詳細を図3、4により説明する。回転中心Bには駆動モータ10と駆動軸11が設けられており、この駆動軸11にアーム12が連結される。アーム12の先端部12aに2本の連結軸13が垂直方向に植設され、この連結軸13の上部先端にカメラ支持体5が結合される。カメラ支持体5は、側面視でL字形状を有しており、L字形状の内側にラインセンサカメラ4が配置されている。
【0026】
アーム12の先端側の裏面には、ローラ支持体14がアーム先端部12aに対して垂直方向を軸として回転自在に取り付けられており、ローラ支持体14にローラ15が回転自在に保持されている。このローラ15により、回転中心Bに対して撮影カメラ4をスムーズに回転移動させることができる。図1のP3は、撮影カメラ4の回転移動の軌跡を示している。ラインセンサカメラ4と顔保持手段との相対位置は、カメラ位置センサー33によって検出され、この検出信号が相対位置制御部32に送信されて、駆動モータ10を制御するように構成されている。相対位置は、回転中心Bを基点としたラインセンサカメラ4の相対的3次元座標である。すなわち、顔保持手段(あご載せ台2と額押さえ3)を回転中心としてラインセンサカメラ4を回転移動するように構成されている。相対位置は、撮影位置データを構成している。なお、ラインセンサカメラ4の回転移動機構については、本実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例が考えられる。
【0027】
図1に戻り、制御装置20は、顔撮影装置Aの動作を制御する機能と、ラインセンサカメラ4により撮影された顔画像に関する画像処理を行う機能を有する。オペレータ用のOPモニター21には、撮影された顔画像が表示される。装置のオペレータは、OPモニター21を視認しながら、被験者に撮影位置の微調整に関する指示を行える。また、オペレータは、顔保持手段であるあご載せ台2と額押さえ3を微調整することもできる。また、ラインセンサカメラ4の撮影位置(撮影姿勢、高さ調整等)を微調整することもできる。
【0028】
キーボード22は、顔撮影装置Aに対する種々の動作指令入力や画像処理を行なうための種々の動作指令やデータ入力などを行なう。制御装置20、OPモニター21、キーボード22は、汎用のコンピュータ(パソコン)により構成してもよい。
【0029】
<制御関係>
次に、顔撮影装置Aの主要な制御機能について図5の制御ブロック図により説明する。コントローラ30は、顔撮影装置Aを統括的に制御する機能を提供するものであり、CPU、メモリ、その他の必要なプログラム等により構成される。照明制御部31は、光源8の点灯・消灯制御を行なう。光源8は、顔画像の撮影を行う時に点灯される。可視光と紫外線を使い分ける場合に、そのいずれを点灯させるのか、あるいは両方を点灯させるのかについての制御も行われる。
【0030】
相対位置制御部32は、ラインセンサカメラ4を所定の撮影位置(例えば、顔正面位置、90度左側面位置、所定の角度の位置)に停止させるための移動制御を行うものであり、駆動モータ10に対する動作指令を行なう。ラインセンサカメラ4を所定の位置に停止させるために、カメラ位置センサー33が設けられている。カメラ位置センサー33としては、上記所定の撮影位置を検出するためのセンサーが設けられており、例えば、アーム12の位置を光センサーやマイクロスイッチなどにより検出するように構成できる。
【0031】
また、上記所定の撮影位置の検出として、例えば、駆動モータ10に連動して回転するエンコーダからの信号や、駆動モータ10(パルスモータ)へ供給する駆動パルスのカウント値などに基づいて、細かいステップでラインセンサカメラ4の位置を検出することができる。従って、ラインセンサカメラ4が移動可能な全範囲について位置検出を行なうことができる。
【0032】
実施形態1においては、相対位置制御部32によるラインセンサカメラ4の移動制御は、左90度側面位置P1から出発して右90度側面位置P2まで移動して停止させるように行なわれる。撮影姿勢(顔の角度等)の微調整は、被験者自身またはオペレータによって行なわれる。また、オペレータがラインセンサカメラ4の撮影位置の微調整を行なってもよい。
【0033】
カメラ制御部34は、ラインセンサカメラ4の動作を制御するものであり、具体的には動作のON/OFF制御である。また、ラインセンサカメラ4が複数個のブロックに分割され、そのそれぞれに自動焦点機構が備えられている場合、自動焦点機構によって、撮影時、自動的に焦点合わせが行なえるように構成される。顔表面は、その部位によって高低差があるため、微妙な焦点合わせをこの自動焦点機構に行なわせることで、ピントの合った高精度の顔画像を得ることができる。
【0034】
顔画像データ保存部36(顔画像データ記憶手段に相当する)は、ラインセンサカメラ4により撮影された顔画像データ(1枚の展開画像)が保存される。顔画像データは、デジタルのカラー画像データであり、JPEG等の適宜のファイル形式で保存される。顔画像データは、展開画像であり顔画像ID、人物を特定する人物ID(識別情報)・撮影年月日と共に保存される。
【0035】
コントローラ30は、撮影位置設定手段30a、表示制御部30bの機能を有する。
【0036】
撮影位置設定手段30aは、撮影開始の場合に、ラインセンサカメラ4を左90度側面位置P1に移動させ、右90度側面位置P2に移動しながら撮影を行なう指令を相対位置制御部32に行う。また、撮影位置設定手段30aは、オペレータの操作指示により、途中で撮影を停止する指示、または撮影範囲を変更する指示を受けた場合に、撮影停止指令、または撮影範囲変更指令を相対位置制御部32に行う。撮影範囲の変更内容としては、例えば、左45度側面位置から右45度側面位置までの撮影とする内容である。
【0037】
表示制御部30bは、OPモニター21にラインセンサカメラ4で連続撮影された顔画像(展開画像)を表示するように制御する。例えば、表示制御部30bは、初回撮影時に、ラインセンサカメラ4で連続撮影された顔画像(展開画像)をOPモニター21に表示させるように制御する。また、同一の顔を再度撮影する際に、前回撮影の顔画像(展開画像)を単独で、または今回の顔画像とともにOPモニター21に表示させるように制御できる。
【0038】
画像処理部38は、顔画像データに基づいて、肌治療などの効果を確認するために必要なソフトウェアにより構成される。具体的には、前回撮影した顔画像と今回撮影した顔画像との比較を画像処理技術を用いて行い、例えば、顔の特定部位におけるシミやシワなどの大きさ形状の比較、面積の算出、変色の度合いの解析などを行なう機能を有する。これらの解析結果についてはデータ化されて記憶部(不図示)に記憶される。
<作動フローチャート>
【0039】
次に、実施形態1の顔画像の撮影を行う時の手順を図6、7のフローチャートにより説明する。まず、初めての撮影か否かが判断される(S1)。例えば、顔撮影装置を起動し、操作画面上で、初回撮影モードか、再度撮影モードかを選択する。次いで、初回撮影の場合、ステップS2に移行し、被験者の顔をあご載せ台2と額押さえ3により保持させる(S2)。この際に、顔位置やラインセンサカメラ4の位置を微調整できる。次に、ラインセンサカメラ4を撮影開始位置(左90度側面位置P1)に移動すべく、駆動モータ10により駆動させる(S3)。ラインセンサカメラ4が撮影開始位置にセットされると、撮影状態にはいり、OPモニター21に、リアルタイムに顔画像が表示される。
【0040】
そして、ラインセンサカメラ4を左90度側面位置P1から右90度側面位置P2に所定の速度で移動させながら、撮影が行なわれる(S4)。これによって、顔左側面から正面を経て右側面までの顔全体の範囲を連続して撮影でき、よって顔の表面に沿った展開画像(平面画像)をうることができる。右90度側面位置P2まで移動すると、撮影を終了し、展開画像は、各種ID情報(人物ID、撮影日時等)と関連付けられて顔画像データ保存部36に保存される(S5)。
【0041】
初めての撮影ではなく、再度の撮影である場合、再度の撮影処理に移行する。被験者の人物IDを選択して、同じ被験者の前回の顔画像(第1展開画像と称する)を顔画像データ保存部36から読み出し、OPモニター21に表示させ、オペレータが確認する。
【0042】
被験者の顔をあご載せ台2と額押さえ3により保持させる(S11)。次に、ラインセンサカメラ4を左90度側面位置P1に移動すべく、駆動モータ10により駆動させる(S12)。ラインセンサカメラ4が撮影開始位置にセットされると、リアルタイムの撮影状態にはいる。モニターに表示されている第1展開画像を確認しながら、顔位置またはラインセンサカメラ4を微調整する(S13)。この際に、不図示のビデオカメラを顔正面に設置し、リアルタイムにOPモニター21に表示させ、第1展開顔画像を比較しながら微調整するように構成できる。
【0043】
微調整後、連続撮影を開始する(S14)。ラインセンサカメラ4が左90度側面位置P1から右90度側面位置P2に移動して展開画像(第2展開画像を称する)が作成され、OPモニター21に表示される。ここで、OPモニター21には、第1展開画像を半透明表示させ、それに重ねるように(レイヤー表示)第2展開画像を表示させて、撮影位置を確認するように構成することが好ましい。レイヤー表示は、第2表示制御部30bの機能による。撮影位置がずれている等して、第2展開画像を肌診断に使用できない場合、ステップS12に戻り、顔位置やラインセンサカメラ4の撮影姿勢等を微調整(S13)して撮影をやり直す。第2展開画像を肌診断に使用できる場合、第2展開画像を第1展開画像に関連づけて、撮影日等と共に顔画像データ保存部36に保存する(S15)。
【0044】
以上の動作において、撮影開始位置を左90度側面位置P1としていたが、右90度側面位置P2を撮影開始位置としてもよい。また、撮影開始位置は、所定の角度に設定でき、撮影終了位置も所定の角度に設定できる。これら撮影開始位置および撮影終了位置は、予め設定された初期値として、コントローラ30のメモリ(不図示)に格納されていてもよく、撮影開始の際に、オペレータが操作画面から入力、または選択できるように構成されていてもよい。
【0045】
また、連続撮影手段として、ラインセンサカメラ4を用いていたが、特にこれに制限されず、エリアセンサカメラを用いて、所定範囲のエリアで撮影し、撮影画像を合成するように構成してもよい。また、ラインセンサカメラ4を顔縦方向に配置するように構成したが、顔の横方向に配置するように構成し、ラインセンサカメラの移動も垂直に移動するように構成することもできる。垂直移動機構は、公知の移動機構を用いることができる。また、ラインセンサカメラのイメージセンサ素子を直線に配置するのではなく、顔の曲面に沿って湾曲に形成してもよい。また、顔全体を撮影可能な、エリアセンサであって、顔の曲面に沿って、イメージセンサ素子を配置することもできる。
【0046】
以上の実施形態1において、顔全体を1枚の展開画像として得ることができ、1枚の画像で肌診断を効率的に行なえる。また、前回撮影の顔画像と再度撮影の顔画像を肌診断において比較する場合に、2枚の展開画像を比較すればよく、よって、肌診断を効率的に素早く行なえる。また、保存する顔画像(展開画像)を最小限に抑えることができるので、ファイル管理(データ管理)を簡単に行なえる。
【0047】
(実施形態2)
実施形態2では、顔全体を分割して撮影し、画像処理によって分割画像を合成し、展開画像を作成することができる顔撮影装置について以下に説明を行なう。
【0048】
実施形態2の機能構成において、実施形態1の機能構成と同様のものは、同じ符号を付している。以下では、実施形態2に特有の機能、作用について詳細に説明し、実施形態1と同様の機能についてはその説明を省略または簡略する。
【0049】
図8に示す、分割範囲設定部30cは、顔全体を連続して撮影する場合に、所定の範囲単位に分割して撮影するための、ラインセンサカメラ4の分割移動範囲を設定する。分割移動範囲は、例えば、左90度側面位置P1から正面位置までを第1分割範囲とし、正面位置から右90度側面位置P2までを第2分割範囲とする2分割、または顔全体(180度範囲)を4分割等に設定できる。この分割範囲は、予め設定された初期値として、コントローラ30のメモリ(不図示)に格納されていてもよく、撮影開始の際に、オペレータが操作画面から入力、または選択できるように構成されていてもよい。
【0050】
この分割範囲設定部30cによって設定された分割移動範囲に応じて、撮影位置設定手段30aは、撮影開始の場合に、ラインセンサカメラ4を例えば、左90度側面位置P1に移動させ、所定の分割範囲単位に移動しながら、撮影を行なうように相対位置制御部32に指令する。
【0051】
画像合成部30dは、分割して連続撮影された画像を合成する処理を行なう。例えば、分割して撮影された分割顔画像を繋ぎ合わせ、1枚の展開画像を作成する。分割撮影された画像の撮影範囲の一部が重複する場合は、いずれか一方の部分を削除する処理を行う。合成処理は、公知の画像処理方法を適用できる。
<作動フローチャート>
【0052】
次に、実施形態2の画像処理の手順を図9,10のフローチャートにより説明する。まず、初めての撮影か否かが判断される(S21)。例えば、顔撮影装置を起動し、操作画面上で、初回撮影モードか、再度撮影モードかを選択する。次いで、初回撮影の場合、被験者の顔をあご載せ台2と額押さえ3により保持させる(S22)。この際に、顔位置やラインセンサカメラ4の位置を微調整できる。次に、ラインセンサカメラ4を撮影開始位置(左90度側面位置P1)に移動すべく、駆動モータ10により駆動させる(S23)。ラインセンサカメラ4が撮影開始位置にセットされると、撮影状態にはいり、OPモニター21に、リアルタイムに顔画像が表示される。
【0053】
そして、ラインセンサカメラ4を左90度側面位置P1から、所定の分割範囲の角度位置(例えば、左45度側面位置)まで移動させながら、撮影が行なわれる(S24)。次いで、順次、所定の分割範囲(左45度側面位置から正面位置、正面位置から右45度側面位置、右45度側面位置から右90度側面位置P2)で撮影が行なわれ、顔全体の撮影が終了するまで行なわれる。
【0054】
次いで、分割して撮影された分割顔画像を繋ぎ合わせ、1枚の展開画像を作成する(S25)。展開画像はOPモニター21に表示され、オペレータによって確認される。次いで、展開画像は、各種ID情報(人物ID、撮影日時等)と関連付けられて顔画像データ保存部36に保存される(S26)。
【0055】
初めての撮影ではなく、再度の撮影である場合、再度の撮影処理に移行する。被験者の人物IDを選択して、同じ被験者の前回の顔画像(第1展開画像と称する)を顔画像データ保存部36から読み出し、OPモニター21に表示させ、オペレータが確認する。
【0056】
被験者の顔をあご載せ台2と額押さえ3により保持させる(S31)。次に、ラインセンサカメラ4を左90度側面位置P1に移動すべく、駆動モータ10により駆動させる(S32)。ラインセンサカメラ4が撮影位置にセットされると、リアルタイムの撮影状態にはいる。モニターに表示されている第1展開画像を確認しながら、顔位置またはラインセンサカメラ4を微調整する(S33)。
【0057】
微調整後、顔画像を分割するように撮影を開始する(S34)。分割画像を撮影する方法は、ステップ24と同じである。次いで、分割して撮影された分割顔画像を繋ぎ合わせ、1枚の第2展開画像を作成する(S35)。第2展開画像はOPモニター21に表示される。ここで、OPモニター21には、第1展開画像を半透明表示させ、それに重ねるように(レイヤー表示)第2展開画像を表示させて、撮影位置を確認するように構成することが好ましい。レイヤー表示は、第2表示制御部30bの機能による。撮影位置がずれている等して、第2展開画像を肌診断に使用できない場合、ステップS32に戻り、顔位置やラインセンサカメラ4の撮影姿勢等を微調整(S33)して撮影をやり直す。第2展開画像を肌診断に使用できる場合、第2展開画像を第1展開画像に関連づけて、撮影日等と共に顔画像データ保存部36に保存する(S36)。
【0058】
以上の実施形態2によれば、顔画像の全体を分割して撮影し、それを画像合成して1枚の展開画像を作成することができる。
【0059】
以上の実施形態2によれば、顔全体を分割して撮影する場合に、顔全体を4分割し、この4分割の範囲を順番に連続して撮影するように動作するものであったが、特にこれに制限されず、4分割のうちのいずれからでも撮影を開始し、順不同に(例えば、正面から右側面を撮影後に左側面を)撮影してもよい。また、分割数は制限されず、例えば、6分割、8分割等にしてもよい。
【0060】
また、実施形態1の顔全体を連続撮影するモードと、実施形態2の顔全体を分割して撮影するモードを、オペレータが操作画面から選択できるように構成できる。
【0061】
<別実施形態>
本実施形態においては、被験者の顔正面を固定し、撮影カメラ4が顔正面を中心に左右に回転移動する構成であったが、これに制限されない。例えば、撮影カメラ4を固定し、あご載せ台2と額押さえ3を、それら各々の中心軸周りに回転できるように構成し、撮影カメラ4で被験者の顔の正面、側面等を適宜撮影できるように構成できる。
【0062】
また、本実施形態においては、顔保持手段としてあご載せ台2と額押さえ3を用いていたが、これに制限されず、例えば、あご載せ台2または額押さえ3のみで顔を保持させてもよく、あるいは、顔保持手段を設けずに、被験者が顔を固定するように構成できる。
【0063】
また、本実施形態においては、ラインセンサカメラ4の撮影位置への設定は自動的に行なっているが、これらを手動で行うようにしてもよい。この場合、正しい位置にラインセンサカメラ4が設定されたか否かを確認するために外部表示させることが好ましい。例えば、最後の微調整をするに際してラインセンサカメラ4を移動させた時に、正しい位置に来たときに外部表示をさせるようにする。表示のさせ方としては、LEDなどのランプで表示させたり、ブザーで警告音を発生させるなどの方法がある。また、モニター21に表示させるようにしてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、ラインセンサカメラ4はカメラ支持体5に固定されているが、カメラ支持体5に対して相対移動できるようにラインセンサカメラ4を取り付けてもよい。これにより、ラインセンサカメラ4の微調整を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】顔撮影装置の内部構成を示す横断面図
【図2】顔撮影装置の内部構成を示す縦断面図
【図3】ラインセンサカメラの回転移動機構の詳細構成を示す斜視図
【図4】ラインセンサカメラの回転移動機構の詳細構成を示す側面図
【図5】実施形態1の顔撮影装置の制御機能を示すブロック図
【図6】実施形態1の作動フローチャート
【図7】実施形態1の作動フローチャート
【図8】実施形態2の顔撮影装置の制御機能を示すブロック図
【図9】実施形態2の作動フローチャート
【図10】実施形態2の作動フローチャート
【符号の説明】
【0066】
2 あご載せ台
3 額押さえ
4 ラインセンサカメラ
5 カメラ支持体
20 制御装置
30 コントローラ
30a 撮影位置設定手段
30b 表示制御部
30c 分割範囲設定部
30d 画像合成部
32 相対位置制御部
33 カメラ位置センサー
34 カメラ制御部
36 顔画像データ保存部
38 画像処理部
A 顔撮影装置
P1 左90度側面位置
P2 右90度側面位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔を撮影する撮影手段を備え、
前記撮影手段によって撮影された顔全体を展開画像として構成することを特徴とする顔撮影装置。
【請求項2】
前記撮影手段は、顔の形状に沿って移動しながら顔全体を連続して撮影し、当該連続して撮影された顔画像を展開画像として構成することを特徴とする請求項1に記載の顔撮影装置。
【請求項3】
前記撮影手段は、顔の形状に沿って移動しながら顔全体を分割して撮影し、当該分割して撮影された顔画像を展開画像として構成することを特徴とする請求項1に記載の顔撮影装置。
【請求項4】
前記撮影手段をラインセンサカメラで構成する請求項1から3のいずれか1項に記載の顔撮影装置。
【請求項5】
前記展開画像の顔画像のデータを記憶する顔画像データ記憶手段と、をさらに備え、
同一の顔を再度撮影する場合に、前記顔画像データ記憶手段に記憶されている前回顔画像と同条件の撮影を行って、顔全体の展開画像を構成することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の顔撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−167987(P2008−167987A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4734(P2007−4734)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】