説明

顔料分散剤、顔料組成物、顔料着色剤およびカラーフィルター用着色剤

【課題】顔料を含むインキおよび塗料などの流動性を著しく改善でき、従来のものと比較して、顔料粒子の凝集を防止し、異物の発生を防止し、優れた光沢と鮮明性を示す着色された物品の提供を可能にし得る顔料分散剤の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表わされる化合物であることを特徴とする顔料分散剤、および、これを用いた顔料組成物、顔料着色剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散剤、顔料組成物、顔料着色剤に関する。顔料着色剤の用途としては、画像表示用、画像記録用、印刷インキ用、筆記用インキ用、プラスチック用、顔料捺染用、塗料用などが挙げられ、特に、カラーフィルター用、インクジェットインク用或いは電子写真方式現像剤用として有用な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、顔料を、塗料、グラビアインキ、オフセットインキなどのビヒクルに混合分散させる際には、顔料を安定してビヒクル中に分散させることが難しく、ビヒクル中に一旦分散した微細な顔料粒子が、そのビヒクル中で凝集する傾向がある。そして、顔料粒子がビヒクル中で凝集すると、顔料が分散されたビヒクルの粘度が上昇したり、或いは該顔料が分散されたビヒクルを使用したインキや塗料の着色力が低下したり、塗膜のグロスが低下するなどの種々の問題が生ずることとなる。
【0003】
一方、ビヒクル中で液晶カラーディスプレイ、撮像素子などの製造に使用されるカラーフィルターは、顔料分散液を用いて以下のような方法で主に作製されている。まず、感光性樹脂液中に、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の三色の顔料をそれぞれ分散させたカラーフィルター用顔料分散液を用意し、これをカラーフィルター用基板にスピンコート法により塗布して着色皮膜を形成する。次いで、形成した着色皮膜を、フォトマスクを介して露光および現像して着色皮膜をパターン化し、カラーフィルター用基板に所望の画素を形成させている方法が採られている。
【0004】
上記したカラーフィルターの製造に使用される主な顔料としては、下記に挙げるような、緑色顔料、赤色顔料及び青色顔料が用いられる。緑色顔料としては、フタロシアニングリーン、例えば、C.I.ピグメントグリーン(以下、PGと称す)36、PG7、PG58など:赤色顔料としては、ジケトピロロピロール系レッド、例えば、C.I.ピグメントレッド(以下、PRと称す)254、アントラキノン系レッド、例えばPR177、アゾ系レッド、例えば、PR242など:青色顔料としては、フタロシアニンブルー、例えば、C.I.ピグメントブルー(以下、PBと称す)15:6などが一般的である。しかしながら、これらの顔料の色相と、例えば、液晶ディスプレイに要求される色特性には差があるため、下記に挙げるような顔料が補色用として使用されている。具体的には、緑色顔料および赤色顔料には黄色顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー(以下PYと称す)138、PY139、PY150などが補色として少量併用され、また、青色顔料には紫色顔料、例えばC.I.ピグメントバイオレット(以下PVと称す)23などが補色として少量併用されている。
【0005】
上記した顔料を、フォトレジストなどの分散媒体中に分散させる際、通常の分散機で分散させるだけでは、上記顔料を充分に分散させることは難しいため、塗布液が分散不良な場合がある。このような塗布液で、カラーフィルターの各色の画素を形成すると、該画素は光透過性に欠け、カラーフィルターの画素として光透過率が不充分なものとなる。したがって、通常の分散機で分散させただけの顔料からなる塗布液は、カラーフィルターの画素形成用塗布液としては不満足なものであった。
【0006】
一方、顔料の分散媒体であるフォトレジストに一般的に使用されている樹脂としては、露光後の着色塗布膜がアルカリ水溶液で現像可能であるように、主に、酸価が高いアクリル系ポリマーが採用されている。しかしながら、前記した顔料と、上記した高酸価アクリル系樹脂を含むフォトレジストからなる塗布液では、顔料の凝集が生じてしまい塗布液の粘度が高くなりやすい。また、経時で顔料の凝集が起こり、塗布液が増粘し、塗布液の貯蔵安定性が悪くなる場合が多い、といった問題もある。
【0007】
以上のような分散の困難さや、これに伴う課題を有する塗布液を用いて、カラーフィルターの各色の画素を作製すると、以下のような問題がある。カラーフィルターを製造する際には、先に述べたように、使用する塗布液はスピンコート法により基板に塗布され、その後に塗布膜が露光および現像によりパターン化される。この場合に、使用する塗布液の粘度が高かったり、顔料が凝集してチクソトロピックな粘性を示す場合には、塗布液からなる着色塗布膜(露光前)の中央部が盛り上がるため、大画面のカラーフィルターを作製する際には、基板の中央部の画素と周辺部での画素とは、色相に、むらや濃度差が発生するという問題が起こる。
【0008】
従って、カラーフィルター用塗布液は、通常、顔料濃度が5〜20質量%の高濃度範囲にあるにもかかわらず、その分散状態は、顔料粒子が凝集せず、かつ、一般的な常乾塗料や焼き付け塗料に比べて粘度が低く(例えば、5〜20mPa・s程度)、さらに、貯蔵安定性に優れたものでなければないことが要求される。
【0009】
上記の要求を満たすために、従来、使用する顔料の顔料誘導体を分散剤として添加することや、使用する顔料を、その顔料誘導体で処理して用いる方法などが提案されている。具体的には、顔料が、ジケトピロロピロール系レッド、例えば、PR254の場合には、ジケトピロロピロールの置換誘導体が用いられ、顔料が、アントラキノン系レッド、例えば、PR177の場合には、アントラキノンの置換誘導体が用いられ、顔料が、アゾ系レッド、例えば、PR242の場合には、アゾ系置換誘導体が用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−29886公報
【特許文献2】特開2001−174616公報
【特許文献3】特開2006−321979公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一方、近年におけるカラーフィルターのさらなる性能向上の要請から、着色画素の透明性の改善や、着色画素の透過光のコントラストのアップや、着色画素の顔料濃度を高める必要が生じてきた。しかしながら、上記した顔料の分散に、顔料誘導体を分散剤として使用する従来の方法では、近年における高い要求性能を満足できるまでの、顔料の分散性向上による着色画素の透明性の改良や、顔料濃度が高くなることによる粘度の増大および貯蔵安定性の低下を防止することは困難である。また、上記した従来技術では、カラーフィルター作製時に、塗膜中に異物が発生することがあり、これらの改善が要望されている。
【0012】
したがって、本発明の目的は、使用する顔料の顔料誘導体を分散剤として用いたり、使用する顔料を、その顔料誘導体で処理して用いるといった上記従来技術における課題を解決し、印刷インキ(オフセットインキ、グラビアインキなど)、各種塗料、顔料捺染剤、電子写真用乾式トナーまたは湿式トナー、インクジェット記録用インキ、熱転写記録用インキ、筆記具用インキなどの種々の用途において有用な、さらに、画像表示用、中でも特に、顔料濃度が高いカラーフィルター用の塗布液の調製に際しても有用な、顔料分散剤、顔料組成物および顔料着色剤を提供することにある。より具体的には、本発明の目的は、上記した種々の用途においては勿論、特に、カラーフィルター用塗布液の低粘度化を達成でき、かつ、貯蔵時の該塗布液の増粘やゲル化を防止するとともに、カラーフィルター作製時の塗膜中の異物発生を防止し、カラーフィルターとして最も重要な着色画素の透明性も向上させるカラーフィルター用着色剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表わされる化合物であることを特徴とする顔料分散剤を提供する。

【0014】
また、本発明は、顔料と上記顔料分散剤とを含有してなることを特徴とする顔料組成物を提供する。該顔料組成物においては、顔料分散剤の配合割合が、顔料100部に対して0.05〜40質量部であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、上記顔料組成物と皮膜形成材料とを含有してなることを特徴とする顔料着色剤を提供する。該顔料着色剤は、画像表示用、画像記録用、印刷インキ用、筆記用インキ用、プラスチック用、顔料捺染用或いは塗料用として有用である。さらに、上記画像表示用の着色剤は、特に、カラーフィルター用着色剤として有用である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、印刷インキ(オフセットインキ、グラビアインキなど)、各種塗料、プラスチック、顔料捺染剤、電子写真用乾式トナーまたは湿式トナー、インクジェット記録用インキ、熱転写記録用インキ、カラーフィルター用レジスト、筆記具用インキなどの種々の用途で用いられている全てのビヒクルに対して使用される、有機顔料、無機顔料を含めた全ての顔料において、上記各用途におけるインキおよび塗料などの流動性を著しく改善し、顔料粒子の凝集を防止し、異物の発生を防止することが可能な顔料分散剤の提供が可能になる。すなわち、使用する顔料の顔料誘導体を分散剤として用いたり、使用する顔料を、その顔料誘導体で処理して用いるといった従来の方法に比べて、使用する顔料の構造を問わず適用可能な顔料分散剤の提供が可能になる。また、本発明で提供する顔料分散剤を用いて作製した顔料着色剤によれば、優れた光沢と鮮明性を示す着色された物品を提供することが可能になる。特に、本発明によれば、顔料濃度が高いカラーフィルター用塗布液の低粘度化を達成でき、かつ、貯蔵時の該塗布液の増粘やゲル化を防止するとともに、カラーフィルター作製時の塗膜中の異物発生を防止し、カラーフィルターとして最も重要な着色画素の透明性も向上させるカラーフィルター用着色剤の提供が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、好ましい実施形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明者らは、上記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明に至った。特に、顔料濃度が高いカラーフィルター用着色剤(塗布液)の調製に際して生じる従来技術の課題を解決し、カラーフィルター用塗布液の色品位の向上および低粘度化を可能にする顔料分散剤を開発すべく鋭意研究した結果、本発明者らは、下記のことを見いだした。すなわち、本発明で規定する特定の構造を有する縮合アゾ化合物は、より少ない量で優れた顔料の分散剤として作用し、カラーフィルター用塗布液の低粘度化を達成でき、かつ、貯蔵時の該塗布液の増粘やゲル化を防止するとともに、カラーフィルター作製時の塗膜中の異物発生を防止し、カラーフィルターとして最も重要な着色画素の透明性も向上させることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0018】
より詳しくは、前記した一般式(1)で表わされる特定の構造を有する縮合アゾ化合物は、顔料分散剤に用いた場合にアゾ化合物でありながら、顔料の種類(構造)を問わず、また、その添加量を多くした場合であっても、分散液或いはその塗膜の色相に及ぼす影響が少なく、しかも、そのカラーフィルター用塗布液は、従来のものに比べて低粘度化を達成できる。これに加えて、上記顔料分散剤を利用することで、貯蔵時における上記塗布液の増粘やゲル化を防止でき、カラーフィルター作製時の塗膜中の異物発生を防止するとともに、カラーフィルターとして最も重要な特性の一つである着色画素の透明性も向上させることができることを見いだした。
【0019】
このような顔料分散剤を用いて各種有機顔料を分散させた本発明の顔料組成物は、上述したカラーフィルター用塗布液などの画像表示用着色剤のみならず、画像記録用着色剤、塗料、印刷インキなどの分散媒体中に高濃度かつ低粘度に安定に分散させることができる。
【0020】
さらに、上記顔料組成物は、特に、化学構造や物性の異なる複数の超微粒子顔料混合物の分散剤として使用した場合に有用であり、この場合に得られる分散液は、粘度が低く、例えば、長期保存安定性が要求されるカラーフィルター用塗布液の着色剤として優れたものとなる。例えば、赤色顔料であるPR254とPR242とPR177との混合顔料の分散に、本発明の顔料分散剤を使用した場合には、それぞれの顔料に対して優れた分散安定性を与える効果があることから、下記の効果が得られる。すなわち、優れた分光透過率特性を有し、鮮明で冴えた、透明感の高い、しかも、耐光性、耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性、耐水性などの諸堅牢性に優れた赤色画素を形成することができる。以下、本発明の、顔料分散剤、顔料組成物、顔料着色剤およびカラーフィルター用着色剤のそれぞれについて説明する。
【0021】
<顔料分散剤>
本発明の顔料分散剤は、下記一般式(1)で表される構造の縮合アゾ化合物であることに特徴がある。かかる特徴を有する本発明の顔料分散剤は、種々の顔料に対する優れた親和性を有しており、有機顔料、無機顔料を問わず広範囲の顔料に使用可能である。また、本発明の顔料分散剤は、優れた顔料分散効果を有していることより、種々の用途において使用される着色剤の製造に使用することができる。
【0022】

【0023】
本発明を特徴づける上記一般式(1)で表わされる化合物である顔料分散剤(以下、単に「一般式(1)の顔料分散剤」または「本発明の顔料分散剤」という場合がある)は、例えば、以下のようにして合成することができる。まず、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の酸クロライド化物と、1,4−フェニレンジアミン類とを、ニトロベンゼンなどの不活性な溶媒中で、130〜135℃で反応させる。次いで、p−アセチルアミノスルホニルクロリドと、塩基性窒素原子を有するアミンとを、トルエンなどの溶媒中で75〜80℃で反応させ、その後、35%塩酸を加えて加水分解し、得られた反応物をジアゾ化し、カップリングすることで得ることができる。
【0024】
また、前記一般式(1)で表わされる顔料分散剤は、非対称型構造を取ることもでき得る。その場合には、例えば、以下のようにして合成することができる。まず、置換基を有していてもよいアミノ基を有する芳香族化合物または複素環化合物をジアゾ化しておき、その後、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸とカップリングさせた反応物の酸クロライド化物と、N−(4−アミノフェニル)−3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボアミドとをニトロベンゼンなどの不活性な溶媒中、130〜135℃で反応させる。次いで、p−アセチルアミノスルホニルクロリドと塩基性窒素原子を有するアミンをトルエンなどの溶媒中、75〜80℃で反応させ、35%塩酸を加えて加水分解し、得られた反応物をジアゾ化してカップリングさせることによって得ることができる。
【0025】
上記方法において使用することができる、塩基性窒素原子を有するアミンとしては、以下のものが挙げられる。例えば、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジエチルアミノメチルアミン、N,N−ジプロピルアミノメチルアミン、N,N−ジブチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジプロピルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジプロピルアミノプロピルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジメチルアミノラウリルアミン、N,N−ジエチルアミノラウリルアミン、N,N−ジブチルアミノラウリルアミン、N,N−ジメチルアミノステアリルアミン、N,N−ジエチルアミノステアリルアミン、N,N−ジエタノールアミノエチルアミン、N,N−ジエタノールアミノプロピルアミン、N−アミノプロピルモリホリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルピペリジン、N,N−ジエチルアミノエトキシプロピルアミン、N,N,N”,N”−テトラメチルジエチレントリアミン、N,N,N”,N”−テトラエチルジエチレントリアミン、N,N,N”,N”−テトラ(n−プロピル)ジエチレントリアミン、N,N,N”,N”−テトラ(i−プロピル)ジエチレントリアミン、N,N,N”,N”−テトラ(n−ブチル)ジエチレントリアミン、N,N,N”,N”−テトラ(i−ブチル)ジエチレントリアミン、N,N,N”,N”−テトラ(t−ブチル)ジエチレントリアミン、3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)、3,3’−イミノビス(N,N−ジエチルプロピルアミン)、3,3’−イミノビス(N,N−ジ(n−プロピル)プロピルアミン)、3,3’−イミノビス(N,N−ジ(n−ブチル)プロピルアミン)、3,3’−イミノビス(N,N−ジ(i−ブチル)プロピルアミン)、3,3’−イミノビス(N,N−ジ(t−ブチル)プロピルアミン)、3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)、2,9−ジメチル−2,5,9−トリアザデカン、2,10−ジメチル−2,10−トリアザデカン、2,12−ジメチル−2,6,12−トリアザトリデカン、2,12−ジメチル−2,5,12−トリアザトリデカン、2,16−ジメチル−2,9,16−トリアザヘプタデカン、3−エチル−10−メチル−3,6,10−トリアザウンデカン、5,13−ジ(n−ブチル)−5,9,13−トリアザヘプタデカン、ジ−(2−ピコリル)アミン、ジ−(3−ピコリル)アミンなどを使用することができる。これらのうちで特に好ましいものとしては、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジプロピルアミノプロピルアミン、3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)、3,3’−イミノビス(N,N−ジエチルプロピルアミン)などが挙げられる。
【0026】
また、上記方法において使用する置換基を有していてもよいアミノ基を有する芳香族化合物または複素環化合物としては、以下のものが挙げられる。例えば、アニリン、トルイジン(o−、m−またはp−)、2,4−キシリジン、3,4−キシリジン、p−クレシジン、アニシジン(o−、m−またはp−)、アミノフェノール(o−、m−またはp−)、アントラニル酸、p−アミノ安息香酸、ニトロアニリン(o−、m−またはp−)、クロロアニリン(o−、m−またはp−)、2,5−ジクロロアニリン、3,4−ジクロロアニリン、3,5−ジクロロアニリン、2,4,5−トリクロロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、5−クロロ−2−ニトロアニリン、2,6−ジクロロ−4−ニトロアニリン、o−フルオロアニリン、2,4−ジフルオロアニリン、m−トリフルオロメチルアニリン、2−クロロ−5−トリフルオロメチルアニリン、2−アミノチオフェノール、2−アミノ−5−ニトロベンゾニトリル、2−アミノ−3−ブロモ−5−ニトロベンゾニトリル、ジフェニルアミン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、3−アミノ−9−エチルカルバゾール、2−アミノチアゾール、2−アミノ−5−ニトロチアゾール、2−アミノベンゾチアゾール、2−アミノ−6−メトキシベンゾチアゾール、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、o−(フェニルスルホニル)アニリン、2−エチルスルホニル−5−トリフルオロメチルアニリン、4−ベンジルスルホニル−o−アニシジン、o−アニシジン−4−スルホンジエチルアマイド、o−アニシジン−4−スルホンエチル、6−ベンズアミド−m−4−キシリジン、4,4−ジクロロ−2−アミノジフェニルエーテル、4−ベンズアミド−2,5−ジメトキシアニリン、9−アミノアクリジン、6−アミノインダゾールなどを使用することができる。これらのうちで特に好ましいものとしては、2,5−ジクロロアニリンおよび2−クロロ−5−トリフルオロメチルアニリンを挙げることができる。
【0027】
<顔料組成物>
本発明の顔料組成物は、上述した顔料分散剤を含有してなることを特徴とするが、該顔料分散剤により顔料を分散させることで得られる。
本発明の顔料組成物は、顔料100質量部に対して、顔料分散剤を0.05〜40質量部の割合で配合するのが好ましい。さらに好ましい顔料分散剤の配合割合としては、0.1〜10質量部程度である。顔料分散剤の配合割合が少なすぎると、目的とする分散剤の効果が充分に得られにくくなる場合があるので好ましくない。一方、顔料分散剤の配合割合が多すぎると、多く用いただけの効果が得られず経済性に劣るばかりか、逆に、その結果、得られた顔料組成物を使用した塗料やインキのビヒクルの諸物性の低下をもたらす場合や、さらには、顔料分散剤自体の持つ色によって分散させるべき顔料の色相が大きく変化してしまう場合もあるので好ましくない。
【0028】
前記したように、本発明の顔料分散剤の使用によって分散効果が得られる顔料としては、広範囲な顔料に対して使用が可能であるが、具体的には、例えば、溶性・不溶性アゾ顔料、高分子量アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、アントラキノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノフタロン顔料、メチン・アゾメチン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、金属錯体顔料などが挙げられる。これらの中でも特に、色相が赤である顔料に使用した場合により顕著な効果が得られるので好ましく、特にPR177、PR242、PR254から選ばれる顔料が好ましい。
【0029】
本発明の顔料分散剤を使用し、顔料を分散する方法は特に制限されないが、例えば、次のような方法が挙げられる。
(1)顔料と顔料分散剤とを予め公知の方法で混合し、得られた顔料組成物をビヒクルなどに添加してビヒクル中に分散させる、
(2)ビヒクルなどに顔料を分散させる際、ビヒクルなどに顔料と顔料分散剤を所定の割合で別々に添加しビヒクル中に分散させる、
(3)顔料と顔料分散剤をそれぞれビヒクルなどに別々に分散させた後、得られた各分散液を所定の割合で混合し、分散する、
(4)ビヒクルなどに顔料を分散させて得られた分散液に、顔料分散剤を所定の割合で添加して顔料を分散させる、
などの方法があり、いずれの方法においても目的とする顔料分散効果が得られる。
【0030】
本発明の顔料分散剤を含んだ顔料組成物は、顔料と顔料分散剤とを従来公知の方法により混合して製造することができ、製造方法は特に限定されない。例えば、顔料粉末と顔料分散剤の粉末とを分散機を使用せずに混合する方法:顔料と顔料分散剤とを、ニーダー、ロール、アトライター、横型ビーズミルなどの各種分散機で機械的に混合する方法:水系または有機溶剤系などの顔料のサスペンションに、本発明の顔料分散剤を溶解または微分散させた液を添加および混合し、顔料表面に顔料分散剤を均一に沈着させる方法:硫酸などの強い溶解力をもつ溶媒に顔料および顔料分散剤を溶解した後、水などの貧溶媒によって共析出させる方法などがある。このように、顔料組成物を調製する場合、顔料分散剤は、溶液、スラリー、ペーストおよび粉末のどの形態で使用してもよく、いずれの形態でも本発明の効果を発揮させることができる。
【0031】
<顔料着色剤>
本発明の顔料着色剤は、上記のようにして得た顔料組成物と、樹脂などの皮膜形成材料とを含有してなることを特徴とする。以下、本発明の顔料着色剤の製造方法および用途について説明する。本発明の顔料着色剤は、例えば、上記の微細化した本発明の顔料組成物と、(共)重合体、オリゴマーおよび/またはモノマーなどの皮膜形成材料を含有させることで得られる。このような本発明の顔料着色剤は、画像表示用、画像記録用、印刷インキ用、筆記用インキ用、プラスチック用、顔料捺染用、塗料用などの着色剤として広範に使用することができる。特に、着色画素の透明性が問題となる画像表示材料としてのカラーフィルター用着色剤にも使用できる。勿論、画像記録剤、例えば、インクジェットインク或いは電着記録液、電子写真方式現像剤の形成材料としても有用であり、これらは、それぞれインクジェット記録方法或いは電着記録方式、電子写真方式などの画像記録方法に使用され、高品位な画像の提供を可能にする。
【0032】
以下、画像表示用の顔料着色剤として、カラーフィルター用分散液(顔料着色剤)を例に挙げて説明する。
カラーフィルター用分散液(着色剤)を調製する場合、まず、本発明の顔料組成物を、皮膜形成材料として機能し得る適当な樹脂を含む有機溶剤などの溶液に添加してプレミキシングし、分散処理する。具体的には、下記の方法などが挙げられる。例えば、上記顔料組成物を、縦型媒体分散機、横型媒体分散機、ボールミルなどの分散機械で均一に混合磨砕した後、皮膜形成性能を有する(皮膜形成性)重合体を含む液中に添加混合する方法や、硫酸などに、顔料、本発明の顔料分散剤を溶解した後に、該硫酸溶液を水中に析出させ、顔料と顔料分散剤とを固溶体ないし共析体として分離し、得られた顔料組成物を上記と同様に、皮膜形成性重合体、カチオン系の高分子分散剤などを含む液中に添加混合し、ダイノミルなどの横型湿式媒体分散機(ビーズミル)にて磨砕分散する方法などである。
【0033】
上記した方法において用いる、顔料分散液にするための皮膜形成材料を含む液としては、従来公知のカラーフィルター用顔料分散液に使用されている皮膜形成性重合体を用いることができる。また、液媒体としては、有機溶剤、水、有機溶剤と水との混合物を用いることができる。また、顔料分散液には、必要に応じて従来公知の添加剤、例えば、分散助剤、平滑化剤、密着化剤などの添加剤を添加することができる。
【0034】
上記顔料組成物と皮膜形成材料とを含む顔料着色剤において、顔料組成物の添加割合は、皮膜形成材料100質量部に対し、顔料組成物を5〜500質量部の範囲で用いることが好ましい。また、皮膜形成材料を含む液としては、感光性の皮膜形成材料を含む液、または、非感光性の皮膜形成材料を含む液を使用することができる。感光性の皮膜形成材料を含む液としては、例えば、紫外線硬化性インキ、電子線硬化インキなどに用いられる感光性の皮膜形成材料を含む液が挙げられる。非感光性の皮膜形成材料を含む液としては、例えば、凸版インキ、平版インキ、グラビアインキ、スクリーンインキなどの印刷インキに使用するワニス、常温乾燥および焼き付け塗料に使用するワニス、電着塗装に使用するワニス、熱転写リボンに使用するワニスなどが挙げられる。
【0035】
上記感光性の皮膜形成材料の具体的なものとしては、例えば、感光性環化ゴム系樹脂、感光性フェノール系樹脂、感光性ポリアクリレート系樹脂、感光性ポリアミド系樹脂、感光性ポリイミド系樹脂など、および不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂などが挙げられる。さらに、これらに、反応性希釈剤として各種のモノマーを加えることができる。
【0036】
また、感光性樹脂を含む顔料分散液に、ベンゾインエーテル、ベンゾフェノンなどの光重合開始剤を加え、従来公知の方法により練肉することにより、光硬化性の感光性顔料分散液とすることができる。また、上記の光重合開始剤に代えて熱重合開始剤を使用して熱硬化性顔料分散液とすることもできる。
【0037】
一方、非感光性の皮膜形成材料の具体的なものとしては、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体の水溶性塩、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸系共重合体の水溶性塩、水溶性アミノポリエステル系樹脂などが挙げられる。
【実施例】
【0038】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中、「部」または「%」とあるのは特に断らない限り質量基準である。
【0039】
[顔料分散剤の作製]
<実施例1>
顔料分散剤(A)を合成した。まず、常法により、ニトロベンゼン400部中で、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸56.5部を、塩化チオニル40部を用いて酸クロライド化した後、1,4−フェニレンジアミン16.2部、ピリジン2部を加え、130〜135℃で5時間加熱した。これを冷却後、メタノール200部を加え、ろ過し、メタノール、次いで水で洗浄した後、乾燥し、反応物64部を得た。得られた反応物に、メタノール2,400部、水酸化ナトリウムを46部加えて下漬液とした。次に、p−アセチルアミノスルホニルクロリドを70.1部と、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン39.1部とを、常法により、トルエン250部中、75〜80℃で2時間反応させた。その後、35%塩酸125部を加えて加水分解した反応物をジアゾ化した後、これを、上記で得た下漬液にカップリングさせた。その後、ろ過し、メタノール、次いで水で洗浄、乾燥し、顔料分散剤(A)134部を得た。得られた顔料分散剤(A)について元素分析を行って、C、H、N及びSをそれぞれ測定し、顔料分散剤(A)を構成する各元素の組成を求めた。使用した原材料及び元素分析の結果から、上記で得られた顔料分散剤(A)は、以下の構造であると推定された。元素分析の結果と、以下の構造とした場合の理論値を表1に示した。表1の記載から明らかなように、よい一致を示していた。
【0040】

【0041】

【0042】
<実施例2>
実施例1で使用した1,4−フェニレンジアミン16.2部の代わりに、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン26.6部を使用した以外は、実施例1と同様にして、顔料分散剤(B)143部を得た。そして、顔料分散剤(A)と同様にして、顔料分散剤(B)の同定を行った。表2に、元素分析の結果及び下記の構造とした場合の理論値を示した。顔料分散剤(B)は、以下の構造であると推定された。
【0043】

【0044】

【0045】
<実施例3>
実施例1で使用したN,N−ジエチルアミノプロピルアミン39.1部の代わりに、ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アミン56.2部を使用した以外は、実施例1と同様にして、顔料分散剤(C)156部を得た。そして、顔料分散剤(A)と同様にして、顔料分散剤(C)の同定を行った。表3に、元素分析の結果及び下記の構造とした場合の理論値を示した。顔料分散剤(C)は、以下の構造であると推定された。
【0046】

【0047】

【0048】
<実施例4>
実施例1で使用した1,4−フェニレンジアミン16.2部の代わりに、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン26.6部を用い、さらに、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン39.1部の代わりに、3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)56.2部を使用した以外は、実施例1と同様にして、顔料分散剤(D)158部を得た。そして、顔料分散剤(A)と同様にして、顔料分散剤(D)の同定を行った。表3に、元素分析の結果及び下記の構造とした場合の理論値を示した。顔料分散剤(D)は、以下の構造であると推定された。
【0049】

【0050】

【0051】
<実施例5>
下記のようにして顔料分散剤(E)を合成した。まず、常法により、2,5−ジクロロアニリン48.6部をジアゾ化し、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸56.5部とカップリングさせた後、洗浄、乾燥した。そして、得られた反応物をニトロベンゼン2,000部中、塩化チオニル40部を用いて酸クロライド化した後、N−(4−アミノフェニル)−3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボアミド83.5部、ピリジン4部を加え130〜135℃で5時間加熱した。これを冷却後、メタノール200部を加え、ろ過し、メタノール、次いで水で洗浄、乾燥して、反応物177部を得た。得られた反応物に、メタノール2,400部と、水酸化ナトリウム46部とを加えて下漬液とした。次に、p−アセチルアミノスルホニルクロリド70.1部と、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン39.1部を常法により、トルエン250部中、75〜80℃で2時間反応させ、35%塩酸125部を加えて加水分解した反応物をジアゾ化し、上記下漬液にカップリングさせた。その後、ろ過し、メタノール、次いで水で洗浄、乾燥し、顔料分散剤(E)235部を得た。得られた顔料分散剤(E)について元素分析を行って、C、H、N、S及びClをそれぞれ測定し、顔料分散剤(E)を構成する各元素の組成を求めた。使用した原材料及び元素分析の結果から、上記で得た顔料分散剤(E)は、以下の構造であると推定された。元素分析の結果と、以下の構造とした場合の理論値を表5に示した。表5の記載から明らかなように、よい一致を示していた。
【0052】

【0053】

【0054】
<実施例6>
実施例5で使用したN,N−ジエチルアミノプロピルアミン39.1部の代わりに、3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)56.2部を使用した以外は、実施例5と同様にして、顔料分散剤(F)250部を得た。そして、顔料分散剤(E)と同様にして、顔料分散剤(F)の同定を行った。表6に、元素分析の結果及び下記の構造とした場合の理論値を示した。顔料分散剤(F)は、以下の構造であると推定された。
【0055】

【0056】

【0057】
<実施例7>
実施例5で使用した2,5−ジクロロアニリン48.6部の代わりに、2−クロロ−5−トリフルオロメチルアニリン58.7部を使用した以外は、実施例5と同様にして、顔料分散剤(G)244部を得た。そして、顔料分散剤(E)と同様にして、顔料分散剤(G)の同定を行った。表7に、元素分析の結果及び下記の構造とした場合の理論値を示した。顔料分散剤(G)は、以下の構造であると推定された。
【0058】

【0059】

【0060】
<実施例8>
実施例5で使用した2,5−ジクロロアニリン48.6部の代わりに、2−クロロ−5−トリフルオロメチルアニリン58.7部を用い、さらに、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン39.1部の代わりに、3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)56.2部を使用した以外は、実施例5と同様にして、顔料分散剤(H)259部を得た。そして、顔料分散剤(E)と同様にして、顔料分散剤(H)の同定を行った。表8に、元素分析の結果及び下記の構造とした場合の理論値を示した。顔料分散剤(H)は、以下の構造であると推定された。
【0061】

【0062】

【0063】
[顔料組成物の調製]
<実施例9>(顔料組成物(1)の調製)
まず、PR254のプレスケーキ(固形分26%)を顔料分が100部になるように秤量し、水2,000部を加えて充分にリスラリー化した。得られたスラリーに、実施例1で作製した顔料分散剤(A)の5%希酢酸溶液100部を加え、1時間攪拌した。さらに該撹拌物に、5%炭酸ナトリウム水溶液をpHが9〜10になるまで徐々に滴下し、その後ろ過し、充分に水洗し、80℃で乾燥した。これによって、105部のPR254の顔料組成物(1)を得た。
【0064】
<実施例10〜16>(顔料組成物(2)〜(8)の調製)
実施例9で使用した顔料分散剤(A)の代わりに、実施例2〜8で得られた顔料分散剤(B)〜(H)をそれぞれに用いた以外は、実施例9と同様の操作を行なって、顔料組成物(2)〜(8)をそれぞれ得た。
【0065】
<実施例17〜24>(顔料組成物(9)〜(16)の調製)
実施例9で顔料として使用したPR254のプレスケーキの代わりに、PR242のプレスケーキ(固形分24%)を用いた以外は同様の操作を行ない、PR242の顔料組成物(9)を得た。また、先に得た顔料分散剤(B)〜(H)をそれぞれに使用した以外は上記と同様にして、PR242の顔料組成物(10)〜(16)を得た。
【0066】
<実施例25〜32>(顔料組成物(17)〜(24)の調製)
実施例9で顔料として使用したPR254のプレスケーキの代わりに、PR177のプレスケーキ(固形分23%)を用いた以外は同様の操作を行ない、PR177の顔料組成物(17)を得た。また、先に得た顔料分散剤(B)〜(H)をそれぞれに使用した以外は上記と同様にして、PR177の顔料組成物(17)〜(24)を得た。
【0067】
表9に、上記した各顔料組成物を製造する際に用いた、顔料と顔料分散剤との組み合わせをまとめて示した。

【0068】
[顔料分散液(ベースカラー)の作製]
<実施例33>(顔料分散液の実施例)
メタクリル酸/ベンジルアクリレート/スチレン/ヒドロキシエルアクリレートを、25/50/15/10のモル比で共重合させて得た、分子量が12,000、固形分が40%のアクリル樹脂ワニスを用い、以下の方法で顔料分散液を調製した。上記で得たアクリル樹脂ワニスを50部、実施例9の顔料組成物(1)20部、溶剤としてプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(以下、PGMAcと略す)を20部配合し、プレミキシングの後、横型ビーズミルで分散処理して、赤色顔料分散液を得た。
【0069】
<実施例34〜56>
実施例33で用いた顔料組成物(1)の代わりに、先に得た顔料組成物(2)〜(24)をそれぞれに使用した以外は、実施例33と同様にして、実施例34〜56の赤色顔料分散液をそれぞれ得た。
【0070】
<比較例1>
実施例33で用いた顔料組成物(1)20部の代わりに、顔料分散剤で処理していないPR254を20部使用した以外は、実施例33と同様の操作を行なって、顔料分散剤を用いていないPR254を含むカラーフィルター用着色剤を作製した。
【0071】
<比較例2>
実施例33で用いた顔料組成物(1)20部の代わりに、顔料分散剤で処理していないPR242を20部使用した以外は、実施例33と同様の操作を行なって、顔料分散剤を用いていないPR242を含むカラーフィルター用着色剤を作製した。
【0072】
<比較例3>
実施例33で用いた顔料組成物(1)20部の代わりに、顔料分散剤で処理していないPR177を20部使用した以外は、実施例33と同様の操作を行なって、顔料分散剤を用いていないPR177を含むカラーフィルター用着色剤を作製した。
【0073】
[評価]
上記で得た実施例33〜56および比較例1〜3のカラーフィルター用着色剤について、その流動性、展色面のグロスおよび塗膜中の異物の有無を比較した。着色剤の流動性、展色面のグロスおよび塗膜中の異物の有無は下記の方法に従って測定し、比較例のものとの相対評価を行なった。結果は、表10にまとめて示した。
【0074】
(1)流動性(粘度変化)
実施例及び比較例のそれぞれの着色剤をそれぞれ、E型粘度計を用いて、室温(25℃)/ローターの回転数6rpmの測定条件で、作製直後と、25℃で1ヶ月間放置した後の粘度(mPa・s)を測定した。そして、得られた測定値を用いて、各着色剤の流動性を評価した。
【0075】
(2)グロス
実施例及び比較例のそれぞれの着色剤をそれぞれ、バーコーター(巻線の太さ0.45mm)を使用して、ポリプロピレンフィルムに展色し、得られた展色面のグロスを、目視およびグロスメーターにて比較して評価した。なお、グロスの高いものを良好とし、結果は、○:良好、×:不良、の指標でそれぞれ表記した。
【0076】
(3)異物観察
実施例及び比較例のそれぞれの着色剤をそれぞれ、スピンナーでガラス基板に塗布し、90℃で2分間乾燥後、さらに270℃で30分間加熱した。得られた塗布面について、顕微鏡を用いて200倍で異物の有無を観察し、評価した。なお、○:異物なし、×:異物あり、の指標で表示した。
【0077】

【0078】
表10に示したように、本発明の実施例の顔料分散剤を用いた各カラーフィルター用着色剤は、いずれも、比較例のものと比べて異物の発生がなく、高流動特性を示し、グロスも良好であり、本発明の顔料分散剤の効果が認められた。
【0079】
さらに、本発明の実施例の分散剤を添加して得られる顔料組成物を、オフセットインキなどの印刷インキ、ニトロセルロースラッカー、メラミンアルキッド塗料などの各種塗料、塩化ビニール樹脂などの合成樹脂の着色などに使用したが、いずれの場合も顔料は凝集を起こさず、良好な分散性を示した。また、最近、高分散性が特に要求されている電子写真用乾式トナーまたは湿式トナー、インクジェット記録用インキ、熱転写記録用インキ、筆記具用インキなどの製造に本発明の実施例の分散剤を用いたところ、これらの場合にも本発明の分散剤による優れた分散性の効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の分散剤は、印刷インキ(オフセットインキ、グラビアインキなど)、各種塗料、プラスチック、顔料捺染剤、電子写真用乾式トナーまたは湿式トナー、インクジェット記録用インキ、熱転写記録用インキ、カラーフィルター用レジスト、筆記具用インキなどの各用途でのすべてのビヒクルに対し、有機顔料、無機顔料を含めた広範囲の顔料において、インキおよび塗料などの流動性を著しく改善し、顔料粒子の凝集を防止し、異物の発生を防止し、優れた光沢と鮮明性を示す着色された物品を提供することができ、その広範な利用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされる化合物であることを特徴とする顔料分散剤。

【請求項2】
顔料と、請求項1に記載の顔料分散剤とを含有してなることを特徴とする顔料組成物。
【請求項3】
前記顔料分散剤の配合割合が、前記顔料100質量部に対して0.05〜40質量部である請求項2に記載の顔料組成物。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の顔料組成物と、皮膜形成材料とを含有してなることを特徴とする顔料着色剤。
【請求項5】
その用途が、画像表示用、画像記録用、印刷インキ用、筆記用インキ用、プラスチック用、顔料捺染用或いは塗料用のいずれかである請求項4に記載の顔料着色剤。
【請求項6】
前記画像表示用のうちの用途が、カラーフィルター用である請求項5に記載の顔料着色剤。

【公開番号】特開2012−121983(P2012−121983A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273472(P2010−273472)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】