説明

顔料分散剤、顔料組成物およびカラーフィルター用着色剤

【課題】インキ中などに分散した顔料粒子の凝集を防止し、流動性に優れ、安定した上記インキなどの製造を可能にする顔料分散剤の提供。
【解決手段】下記の一般式(I)で表される化合物、またはその金属塩あるいはそのアンモニウム塩もしくはアミン塩からなることを特徴とする顔料分散剤およびそれを用いた顔料組成物。


(Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基、R1は水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基、R2はアラルキル基あって、これらは置換基を含んでいても良い。nは化合物へのスルホン酸基の平均導入個数であり、0.5〜2の数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散剤およびそれを用いた顔料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、顔料を、塗料、グラビアインキ、オフセットインキなどのビヒクルに混合分散させる際には、顔料を安定してビヒクル中に分散させることが難しく、ビヒクル中に一旦分散した微細な顔料粒子は、そのビヒクル中で凝集する傾向があり、その結果、顔料が分散されたビヒクルの粘度の上昇、あるいは該顔料が分散されたビヒクルを使用したインキや塗料の着色力の低下や塗膜のグロスの低下などを生ずることとなる。即ち、分散安定性や流動性に優れた顔料分散液、記録用インキなどの開発が求められている(特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−172522公報
【特許文献2】特開2001−271004公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、印刷インキ(オフセットインキ、グラビアインキなど)、各種塗料、顔料捺染剤、電子写真用乾式トナーまたは湿式トナー、インクジェット記録用インキ、熱転写記録用インキ、筆記用具用インキ、カラーフィルター用着色剤などの製造に際し、これらのインキ中などに分散した顔料粒子の凝集を防止し、流動性に優れ、安定した上記インキなどの製造を可能にする顔料分散剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、下記の一般式(I)で表される化合物、またはその金属塩あるいはそのアンモニウム塩もしくはアミン塩からなることを特徴とする顔料分散剤(以下単に「分散剤」という)およびそれを用いた顔料組成物を提供する。
【0006】

(ただし、一般式(I)中のXは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基であり、R1は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、R2はアラルキル基であって、これらは置換基を含んでいてもよく、nは化合物へのスルホン酸基の平均導入個数であり、0.5〜2の数である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明の分散剤は、印刷インキ(オフセットインキ、グラビアインキなど)、各種塗料、プラスチック、顔料捺染剤、電子写真用乾式トナーまたは湿式トナー、インクジェット記録用インキ、熱転写記録用インキ、カラーフィルター用レジスト、筆記具用インキなどの各用途での全てのビヒクルに対し、有機顔料および無機顔料を含めた全ての顔料において、インキおよび塗料などの流動性を著しく改善し、顔料粒子の凝集を防止し、優れた光沢と鮮明性を示す着色された物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明の分散剤は、その構造中に、黄色〜赤紫色のアントラキノニルアミノトリアジン構造を有することに特徴があり、本発明の分散剤は種々の顔料に対する優れた親和性を有しており、広範囲の顔料の分散に使用可能である。また、本発明の分散剤は優れた顔料分散効果を有していることより、種々の用途において使用される着色剤の製造に使用することができる。
【0009】
本発明の分散剤は、例えば、特公昭46−33232号公報、特公昭46−33233号公報および特公昭46−34518号公報などに開示されている製造方法、あるいはそれに準ずる方法で製造することができる。例えば、前記一般式(I)で表される分散剤は、置換基を有していてもよい1−アミノアントラキノン2モルと、塩化シアヌル1モルとをo−ジクロルベンゼンなどの不活性な溶媒中、130℃〜170℃で2〜6時間反応させ、さらにスルホン酸基を持たない芳香族アミン1モルを添加して150℃〜170℃で3〜4時間反応させ、次いで生成物を発煙硫酸などのスルホン化剤でスルホン化させることによって得ることができる。
【0010】
前記一般式(I)の化合物の製造に使用される芳香族アミンとしては、例えば、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、フェネチルアミンなどが挙げられる。
【0011】
また、前記一般式(I)で示される化合物と金属塩を形成する金属としては、例えば、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、Ca、Ba、Al、Mn、Sr、Mg、Niなどの多価金属が挙げられる。また、前記一般式(I)で示される化合物とアミン塩を形成するアミンとしては、例えば、アンモニア、(モノ、ジまたはトリ)アルキルアミン類、置換または未置換のアルキレンジアミン類、アルカノールアミン類、アルキルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0012】
本発明の分散剤の顔料に対する配合割合は、顔料100質量部に対して、0.05〜40質量部の割合が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10質量部の割合である。分散剤の配合割合が少なすぎると、目的とする分散剤の効果が十分に得られにくくなる。また、分散剤の配合割合が多すぎると、多く用いただけの効果が得られず、逆にその結果、得られた顔料組成物を使用した塗料やインキのビヒクルの諸物性の低下をもたらし、さらには、分散剤自体の持つ色によって、分散されるべき顔料の色相が大きく変化してしまう。
【0013】
本発明の分散剤の使用によって分散効果が得られる顔料としては、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ジアントラキノニル系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリレン・ペリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、アンサンスロン系顔料、ピランスロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、建染染料系顔料、塩基性染料系顔料などの有機顔料、および酸化チタン、カーボンブラック、紺青、群青、弁柄、鉄黒、亜鉛華、黄鉛、複合酸化物顔料などの無機顔料が挙げられる。これらの中でも、特にC.I.Pigment Red 245、C.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Red 177、C.I.Pigment Green 36、C.I. Pigment Green 7およびC.I.Pigment Green 58から選ばれる顔料が好ましい。
【0014】
また、本発明の分散剤の使用方法は、特に制限されないが、例えば、次のような方法が挙げられる。
1.顔料と分散剤とを予め公知の方法で混合し、得られた顔料組成物をビヒクルなどに添加して顔料をビヒクル中に分散させる。
2.ビヒクルなどに顔料を分散させる際、ビヒクルなどに顔料と分散剤を所定の割合で別々に添加してビヒクル中に分散させる。
3.顔料と分散剤をそれぞれ別々にビヒクルなどに分散させた後、得られた各分散液を所定の割合で混合する。
4.ビヒクルなどに顔料を分散させて得られた分散液に、分散剤を所定の割合で添加して顔料を分散させる。などの方法があり、いずれの方法においても目的とする顔料分散効果が得られる。ただし、より効果的には、上記1または2の方法が望ましい。
【0015】
本発明の分散剤を含んだ顔料組成物は、顔料と分散剤とを従来公知の種々の方法により混合して製造することができ、製造方法は特に限定されない。例えば、顔料粉末と分散剤の粉末とを分散機を使用せずに混合する方法;顔料と分散剤とをニーダー、ロール、アトライターなどの各種分散機で機械的に混合する方法;水系または有機溶剤系などの顔料のサスペンションに、本発明の分散剤を溶解または微分散させた液を添加および混合し、顔料表面に分散剤を均一に沈着させる方法;硫酸などの強い溶解力を持つ溶媒に顔料および分散剤を溶解した後、水などの貧溶剤によって両者を共析出させる方法などがある。このように、顔料組成物を調製する場合、分散剤は、溶液、スラリー、ペーストおよび粉末のどの形態で使用してもよく、いずれの形態でも本発明の効果を発現させることができる。
【0016】
また、本発明の分散剤は、単独または2種以上を組み合わせて使用することができるだけでなく、従来公知の分散剤、例えば、ロジン、高分子分散剤、界面活性剤または極性基を導入した顔料誘導体などと併用することもできる。本発明の顔料組成物の用途は、特に限定されず、例えば、各種印刷インキ、塗料、プラスチック、顔料捺染剤、電子写真用乾式トナーまたは湿式トナー、インクジェット記録用インキ、熱転写記録用インキ、筆記具用インキ、カラーフィルターなどの種々の用途に着色剤として用いることができる。特に、本発明の顔料組成物は、顔料の高分散性が要求されるカラーフィルター用着色剤として有用である。
【0017】
一般に、カラーフィルター用着色剤は、顔料を、例えば、感光性ポリアクリレート系樹脂、感光性ポリアミド系樹脂、感光性ポリイミド系樹脂など、あるいは不飽和ポリエステル系樹脂などの感光性樹脂ワニス、またはこれらにさらに反応希釈剤としてのモノマーが加えられたワニスに高分散させて製造される。その際、本発明の分散剤を使用するか、または本発明の顔料組成物を使用することで、分散安定性が高く、高透過率のカラーフィルター用着色剤が得られる。例えば、特開平10−338832号公報には、顔料に、顔料誘導体およびカチオン性高分子分散剤を配合して、カラーフィルター用着色剤として使用することが記載されているが、上記顔料誘導体に代えて本発明の分散剤を使用することにより、顔料の分散安定性が高く、かつ高透過率のカラーフィルター用着色剤を製造することができる。
【0018】
以下に一般式(I)で表される化合物の具体例を示す。ただし、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
【0019】

【実施例】
【0020】
次に合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中の「部」または「%」とあるのは質量基準である。
【0021】
[合成例1]
o−ジクロロベンゼン1,100部に、73部の1−アミノアントラキノンと30部の塩化シアヌルとを加え、170℃で5時間攪拌する。冷却後、30部のベンジルアミンを添加して180℃で5時間攪拌する。冷却後濾過し、アルコール洗浄、次いで水で洗浄および乾燥して、2,4−ビス(1−アントラキノニルアミノ)−6−ベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン92部を得た。次いで、この化合物92部を5%発煙硫酸800部に10℃以下で添加し、その後30℃で5時間反応させる。冷却後、反応混合物を2,500部の氷水中に析出させ、濾過および水洗した。硫黄の元素分析の結果より1分子あたり平均0.9個のスルホン酸基が導入されている下記の分散剤(A)99部を得た。
【0022】

【0023】
[合成例2]
o−ジクロロベンゼン1,100部に、73部の1−アミノアントラキノンと30部の塩化シアヌルとを加え、170℃で5時間攪拌する。冷却後、25部のジベンジルアミンを添加して180℃で5時間攪拌する。冷却後濾過し、アルコール洗浄、次いで水で洗浄および乾燥して、2,4−ビス(1−アントラキノニルアミノ)−6−ジベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン94部を得た。次いで、この化合物94部を5%発煙硫酸800部に10℃以下で添加し、その後30℃で5時間反応させる。冷却後、反応混合物を2,500部の氷水中に析出させ、濾過および水洗した。硫黄の元素分析の結果より1分子あたり平均1.8個のスルホン酸基が導入されている下記の分散剤(B)105部を得た。
【0024】

【0025】
[実施例1および2]
本発明の分散剤の効果を評価するために、下記配合(1)のグラビアインキを作製した。
配合(1)
・顔料 9.5部
・分散剤(A)または(B) 0.5部
・硝化綿ワニス 16.0部
・ポリアミドワニス 20.0部
・シンナー 54.0部
顔料としてナフトールAS系モノアゾ顔料(C.I.Pigment Red 146)を用い、それぞれ合成例1および2で得られた分散剤(A)(実施例1)または(B)(実施例2)を使用して、上記の配合成分を容器に入れ、ガラスビーズを加えてペイントコンディショナーにて分散させ、2種のグラビア用ポリアミドインキを作製した。
【0026】
[比較例1]
分散剤を使用せずにC.I.Pigment Red 146を10.0部使用する以外は実施例1および2と同様の操作を行って、分散剤が未添加のグラビア用ポリアミドインキを作製した。
【0027】
実施例1および2のグラビア用ポリアミドインキの粘度および該インキを塗布した展色面のグロスを、比較例1のインキの場合と比較した。それぞれのインキの粘度および展色面のグロスは、下記の方法に従って測定し、比較例1のインキとの相対評価を行なった。
【0028】
粘度:B型粘度計を用いて、室温(25℃)、30rpmの条件で測定した。
グロス:バーコーター(巻線の太さ0.15mm)を使用して、ポリプロピレンフィルムに展色し、展色面のグロスを目視およびグロスメーターにて比較した。なお、グロスの高いものを良好とし、下記の指標で表示した。
○:良好
△:やや良好
×:不良
以上の結果を表2に示す。
【0029】
[実施例3(顔料組成物1の調製)]
水1,000部にC.I.Pigment Red 146を19.0部加えて分散させ、スラリー化する。そこに、水50部に合成例1で得られた分散剤(A)1.0部および苛性ソーダ0.1部を分散させてスラリー化したものを加える。その混合スラリーを70℃まで加熱し、pHを4〜5に補正する。20分間撹拌した後、濾過、乾燥、粉砕して、本発明の顔料組成物(1)19.9部を得た。実施例1および2の配合(1)における顔料および分散剤の全量を上記の顔料組成物(1)10.0部に代え、その他は実施例1と同様にしてグラビア用ポリアミドインキ(1)を作製した。
【0030】
[実施例4(顔料組成物2の調製)]
分散剤(A)の代わりに、合成例2で得られた分散剤(B)を用いる以外は、実施例3と同様の操作を繰り返し、顔料組成物(2)を得た。実施例1および2の配合(1)の顔料および分散剤の全量を、上記の顔料組成物(2)の10.0部に代え、他は同様にしてグラビア用ポリアミドインキ(2)を作製した。
【0031】
これらのインキ(1)および(2)について、実施例1と同様にしてインキの粘度および展色面のグロスを、比較例1のインキの場合と比較した。その結果を表2に示す。
【0032】

【0033】
表2に示したように、本発明の分散剤(A)および(B)を添加したインキ(1)および(2)において優れた顔料の分散効果が認められた。これらのインキ(1)および(2)は1週間放置後に粘度を測定しても、比較例1のインキの場合に比べて、粘度の上昇は殆ど認められなかった。また、顔料組成物としてではなく、ビヒクルに顔料と分散剤を別々に添加したものを混合して分散させた場合にも、上記同様に充分な分散剤の効果が得られた。
【0034】
[実施例5および6(顔料組成物3および4の調製)]
C.I.Pigment Red 146の代わりにジケトピロロピロール顔料(C.I.Pigment Red254)を用い、それぞれ分散剤(A)および(B)を用いた他は、実施例3と同様の操作を繰り返し、顔料組成物(3)および(4)を得た。
【0035】
[実施例7および8(顔料組成物5および6の調製)]
C.I.Pigment Red 146の代わりに銅フタロシアニングリーン顔料(C.I.PigmentGreen 36)を用い、それぞれ分散剤(A)および(B)を用いた他は、実施例3と同様の操作を繰り返し、顔料組成物(5)および(6)を得た。
【0036】
以上の顔料組成物(3)〜(6)をそれぞれ用い、分散剤の効果を評価するために、下記配合(2)のグラビア用ウレタンインキを作製した。
配合(2)
・顔料組成物(3)〜(6) 10.0部
・硝化綿ワニス 5.0部
・ポリウレタンワニス 35.0部
・シンナー 50.0部
上記の配合成分を容器に入れ、スチールボールを加えてペイントコンディショナーにて分散させ、グラビア用ウレタンインキ(3)〜(6)を作製した。
【0037】
[比較例2および3]
顔料組成物(3)および(5)に代えて、それぞれC.I.Pigment Red 254(比較例2)およびC.I.Pigment Green 36(比較例3)を用いる以外は、実施例5および7と同様にして分散剤が未添加の2種のグラビア用ウレタンインキを作製した。
【0038】
実施例5〜8のインキをインキの粘度および展色面のグロスを、比較例2および3のインキの場合と比較した。展色面のグロスおよびインキの粘度は、前記グラビア用ポリアミドインキの場合と同様に測定し、比較例2および3のインキの場合と相対評価を行った。その結果を表3に示す。
【0039】

【0040】
表3に示したように、グラビア用ポリアミドインキの場合と同様に、本発明の分散剤(A)および(B)のいずれを添加した場合においても、若干差はあるが分散効果が認められた。実施例のインキを1週間放置後に粘度を測定しても、比較例のインキの場合に比べて、粘度の上昇は殆ど認められなかった。
【0041】
[実施例9および10(顔料組成物7〜8の調製)]
C.I.Pigment Red 146の代わりにC.I.Pigment Red 177を用い、分散剤としてそれぞれ分散剤(A)および(B)を用いた他は、実施例3と同様の操作を繰り返し、顔料組成物(7)および(8)を得た。
【0042】
これらの顔料組成物(7)および(8)を用い、分散剤の効果を評価するために、下記配合(3)の塗料を作製した。
配合(3)
・顔料組成物(7)および(8) 6.0部
・アクリルワニス 46.6部
・メラミンワニス 20.0部
・シンナー 30.0部
上記の配合成分を容器に入れて、ガラスビーズを加えてペイントコンディショナーにて分散させ、塗料を作製した。
【0043】
[比較例4]
顔料組成物(7)10.0部の代わりに、C.I.Pigment Red 177を10.0部用いる以外は、実施例9と同様の操作を行って、分散剤が未添加の塗料を作製した。
【0044】
これらの塗料の粘度、および展色および焼き付けた後の塗面のグロスを、比較例の塗料の場合と比較した。塗料の粘度および展色面のグロスは、下記の方法に従って測定し、比較例の塗料との相対評価を行なった。
【0045】
粘度:B型粘度計を用い、室温(25℃)、30rpmの条件で測定した。
グロス:アプリケーター(6ミル)を使用して、アート紙上に展色し、焼き付けた後の塗面のグロスを目視およびグロスメーターにて比較した。なお、グロスの高いものを良好とし、下記の指標で表示した。
○:良好
△:やや良好
×:不良
以上の結果を表4に示す。
【0046】

【0047】
表4に示したように、前記の結果と同様に、本発明の分散剤の効果が認められた。上記実施例の塗料を、酸化チタンにより作製した白塗料で濃度を1/10に希釈した淡彩色塗料を作製し、顔料の凝集状態を観察したが、顔料の色分かれや沈降などは認められなかった。
【0048】
[実施例11および12]
それぞれ顔料組成物(7)および(8)を用い、分散剤の効果を評価するために、下記配合(4)のカラーフィルター用着色剤を作製した。
配合(4)
・顔料組成物(7)または(8) 20.0部
・ポリアクリル酸樹脂 30.0部
・シンナー 50.0部
上記の配合成分を容器に入れ、ジルコニアビーズを加えてペイントコンディショナーにて分散させ、カラーフィルター用着色剤を作製した。
【0049】
[比較例5]
顔料組成物(7)10.0部の代わりに、C.I.Pigment Red 177を10.0部用いること以外は、実施例11と同様の操作を行なって、分散剤が未添加のカラーフィルター用着色剤を作製した。
【0050】
前記実施例および比較例のカラーフィルター用着色剤の流動性と展色面のグロスを比較例の場合と比較した。着色剤の流動性および展色面のグロスは、下記の方法に従って測定し、比較例の場合と相対評価を行った。
【0051】
流動性:B型粘度計を用い、室温(25℃)、30rpmの条件で測定した。
グロス:バーコーター(巻線の太さ0.45mm)を使用して、ポリプロピレンフィルムに展色し、展色面のグロスを目視およびグロスメーターにて比較した。なお、グロスの高いものを良好とし、下記の指標で表示した。
○:良好
△:やや良好
×:不良
以上の結果を表5に示す。
【0052】

【0053】
表5に示したように、本発明の分散剤を用いた着色剤は、比較例の場合と比較して、高流動特性を示し、本発明の分散剤の効果が認められた。
【0054】
さらに、本発明の分散剤を添加した顔料を、オフセットインキなどの印刷インキ、ニトロセルロースラッカー、メラミンアルキッド塗料などの各種塗料、塩化ビニール樹脂などの合成樹脂の着色などに使用したが、いずれの場合も顔料は凝集を起こさず、良好な分散性を示した。また、最近、高分散性が特に要求されている電子写真用乾式トナーまたは湿式トナー、インクジェット記録用インキ、熱転写記録用インキ、筆記具用インキなどの製造に本発明の分散剤を用いたが、これらの場合にも本発明の分散剤による優れた分散性の効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の分散剤は、印刷インキ(オフセットインキ、グラビアインキなど)、各種塗料、プラスチック、顔料捺染剤、電子写真用乾式トナーまたは湿式トナー、インクジェット記録用インキ、熱転写記録用インキ、カラーフィルター用レジスト、筆記具用インキなどの各用途での全てのビヒクルに対し、有機顔料および無機顔料を含めた全ての顔料において、インキおよび塗料などの流動性を著しく改善し、顔料粒子の凝集を防止し、優れた光沢と鮮明性を示す着色された物品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)で表される化合物、またはその金属塩あるいはそのアンモニウム塩もしくはアミン塩からなることを特徴とする顔料分散剤。

(ただし、一般式(I)中のXは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基であり、R1は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、R2はアラルキル基であって、これらは置換基を含んでいてもよく、nは化合物へのスルホン酸基の平均導入個数であり、0.5〜2の数である。)
【請求項2】
顔料と分散剤とからなる顔料組成物において、分散剤が請求項1に記載の顔料分散剤であることを特徴とする顔料組成物。
【請求項3】
分散剤の配合割合が、顔料100質量部に対して0.05〜40質量部である請求項2に記載の顔料組成物。
【請求項4】
顔料が、C.I.Pigment Red 245、C.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Red 177、C.I.Pigment Green 36、C.I.Pigment Green 7およびC.I.Pigment Green 58から選ばれる顔料である請求項2に記載の顔料組成物。
【請求項5】
グラビア印刷インキ用着色剤である請求項2に記載の顔料組成物。
【請求項6】
塗料用着色剤である請求項2に記載の顔料組成物。
【請求項7】
カラーフィルター用着色剤である請求項2に記載の顔料組成物。
【請求項8】
感光性樹脂ワニス中に請求項2に記載の顔料組成物が含有されている請求項7に記載のカラーフィルター用着色剤。

【公開番号】特開2011−32438(P2011−32438A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182713(P2009−182713)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】