説明

顔料組成物

本発明は、オリゴマーもしくはポリマーのアミンで処理されたか、またはポリマー中に封入された顔料(A)を含む顔料組成物、その製造方法、ならびに着色プラスチックまたは着色ポリマー粒子製造におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な顔料組成物、その製造方法、および着色プラスチックまたは着色ポリマー粒子、特にポリアミドを主成分とするものの製造におけるその使用に関する。
【0002】
ポリアミドを主成分とするプラスチックの原液着色は、通常、高い加工温度でポリアミド素材に溶解し、そして不可欠な高い耐熱性を有することのほかに、ポリアミド溶融物の高還元性媒体に対する十分な化学安定性も有する、いわゆる油溶性染料を用いて行う。
【0003】
顔料の使用は、ほぼ例外なく、そのほとんどが重金属を含有する無機顔料と、主にフタロシアニンまたはキナクリドン類からの特定の有機顔料の極めてわずかな選択とに限られている。しかし、それらの有機顔料の多くは、特定の欠点、たとえばそれらの溶解性、ポリマーとの相互作用、または分解する傾向を有し、そして完成した着色ポリアミド材料は多くの場合蛍光を発する傾向を有する。
【0004】
したがって、たとえば、米国特許第4,031,060号には、ポリアミドの着色にTiO2を用いることが開示されている。
【0005】
このために、原液着色されたポリアミド材料において、耐光堅牢性であり高温耐光堅牢度を有する、強く着色された非蛍光の色合いをもたらし、そして全面的に良好な堅牢性を示す、新規な顔料または顔料組成物が必要とされている。
【0006】
驚くべきことには、本発明による顔料組成物が上述の基準を大幅に満たすことが今や見出された。
【0007】
したがって、本発明は、顔料(A)を含む顔料組成物であって、顔料(A)が、オリゴマーもしくはポリマーのアミンで処理されたか、またはポリマー中に封入されている顔料組成物に関する。
【0008】
本発明による組成物に用いる顔料(A)として、ジケトピロロピロール、アゾ顔料、キナクリドン、キノフタロン、フタロシアニン、インダントロン、フラバントロン、ピラントロン、アントラキノン、ペリレン、ジオキサジン、ペリノン、チオインジゴ、イソインドリン、プテリジン、イソインドリノンおよび金属錯体類から選択される任意の顔料が適切である。
【0009】
フタロシアニン、イソインドリノン、アゾおよびジケトピロロピロール顔料の使用が好ましい。
【0010】
重要なのは、式:
【0011】
【化1】



【0012】
の顔料である。
【0013】
顔料の比表面積は、10〜150m2/gであるのが好ましい。
【0014】
比表面積が12〜50m2/gである不透明な顔料、および比表面積が50〜100m2/gである透明な顔料が特に好ましい。
【0015】
本発明による顔料組成物の製造には、オリゴマーもしくはポリマーのアミンとして、末端アミン官能基を有し、場合により変わりうる数の第二級アミノ基で中断された飽和炭化水素鎖から作られた化合物を用いる。
【0016】
このような化合物の例は、ポリエチレンイミン、アルキルジエチレントリアミン、アルキルトリエチレンテトラミン、アルキルジプロピレントリアミン、アルキルトリプロピレンテトラミン、アルコキシトリアミン、アルコキシテトラミンおよびビニルアミンポリマーを含む。
【0017】
オリゴマーもしくはポリマーのアミンの中で、次の化合物が特に重要である:N−タロウアルキルジプロピレントリアミン、N−タロウアルキルジプロピレンテトラミン、N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン、ココジプロピレントリアミン、オレイルジプロピレントリアミン、ドデシルジプロピレントリアミンおよびオレイルトリプロピレンテトラミン。
【0018】
本発明による顔料組成物を製造するために、顔料粒子を、オリゴマーもしくはポリマーのアミンそれ自体と共に、またはそのアミンを含有する溶液と共にスプレーし、そして乾燥するか、あるいは顔料粒子をオリゴマーもしくはポリマーのアミンまたはオリゴマーもしくはポリマーのアミンを含有する液体に浸漬し、処理した顔料粒子をろ別し乾燥するか、またはスプレー乾燥する。
【0019】
処理する顔料に対するオリゴマーもしくはポリマーのアミン(中性または第4級)の量は、顔料の重量に基づいて、オリゴマーアミン2〜500重量%、好ましくは10〜100重量%、およびポリマーアミン10〜200重量%の広い範囲内で変えることができる。
【0020】
顔料のいわゆる封入には、原則的に、天然物、または好ましくは様々な種類の、重合、重付加もしくは重縮合の合成生成物、たとえばポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリスルフィド、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリアルコール、ポリグリコール、ポリグリコールエステル、ポリカルボン酸、ポリスチレン、ならびに上述したポリマーを含有する混合ポリマー、ならびにコポリマーおよびターポリマーを用いることができ、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレンまたはウレタンを主成分とするホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーを用いるのが有利である。
【0021】
封入には、ポリアクリル酸アンモニウム、ナトリウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛もしくはジルコニウム、アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸/スチレンコポリマーの使用が好ましい。
【0022】
アンモニウムは、基+NR1234(式中、R1〜R4は、互いに独立に、水素またはC1〜C18アルキルである)であることが理解される。
【0023】
用いるポリマーは、平均分子量が2000〜50000g/mol、特に2000〜12000g/molであるのが好ましい。
【0024】
本発明による顔料組成物を封入によって製造する場合、顔料粒子をポリマーと共にまたはポリマーを含有する溶液と共にスプレーし、乾燥するか、あるいは顔料粒子を、ポリマーまたはポリマーを含有する液体に浸漬し、処理した顔料粒子を場合により、たとえばpHの変更または溶剤の添加によって沈殿させ、ろ別し乾燥するか、またはスプレー乾燥する。
【0025】
たとえば、後に続く重合反応の前に、顔料を重合性のモノマーまたはモノマー混合物に添加することにより、エマルション重合中または懸濁液重合中に「その場で」顔料粒子をポリマー中に封入することもできる。
【0026】
処理する顔料に対するポリマーの量を、顔料の重量に基づいて、3〜500重量%、好ましくは50〜300重量%の広い範囲内で変えることができる。
【0027】
本発明は、高分子量の有機材料と、少なくとも1種の本発明による顔料組成物の着色有効量とを互いに混合する、着色プラスチックまたは着色ポリマー粒子の製造方法にも関する。
【0028】
本発明による顔料組成物を用いる高分子量の有機物質の着色は、たとえば、ロールミルまたは混合もしくは粉砕装置を用いて、このような顔料組成物を基材に混合することにより実施され、この結果、顔料組成物は高分子量の材料中に細かく分布する。混合した顔料組成物を含む高分子量の有機材料を、次いでそれ自体公知の方法、たとえばカレンダリング、圧縮成形、押出、塗布、スピニング、キャスティングによりまたは射出成形により加工し、これにより着色材料がその最終形状をもたらす。たとえば、固体、たとえば粉体の顔料組成物と、同時に粒状または粉末状の高分子量の有機材料とを、場合によりさらなる成分、たとえば添加剤も、加工直前に混合を行う押出機の取り入れ域に、直接に連続的に供給することにより、顔料組成物の混和を、実際の加工工程の直前に行うこともできる。しかし、通常、より均一な着色生成物を実現することができるので、顔料組成物を高分子量の有機材料に前もって混合するのが好ましい。
【0029】
軟質の成形品を得るため、またはその脆性を減らすために、成形に先立っていわゆる可塑剤を高分子量の化合物に添加することが多くの場合望ましい。可塑剤として、たとえば、リン酸、フタル酸またはセバシン酸のエステルを用いることができる。本発明による方法では、着色剤の添加の前または後に、可塑剤をポリマーに添加することができる。異なる色合いを実現するために、高分子量の有機材料に、本発明による顔料組成物のほかに、場合により別のさらなる成分、たとえば充填剤またはドライヤー(乾燥剤)と共に、別の顔料または他の着色剤を所望の量で添加することも可能である。
【0030】
本発明による着色に適切な好ましい高分子量の有機材料は、ごく一般的に、誘電率が2.5以上であるポリマー、特にポリエステル(たとえばPET)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン/アクリロニトリル(SAN)およびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)である。
【0031】
ポリエステルが特に好ましく、ポリアミド、たとえばポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド12およびアラミドが、さらに特に好ましい。
【0032】
本発明による顔料組成物は、使用中の堅牢性が極めて良好である強く着色されたむらのない色相を持ち、特に、良好な耐光堅牢度および良好な熱安定性を持ち、機械的特性の低下が全くない上述の材料、特にポリアミド材料を提供する。
【0033】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。特記しない限り、部は重量部であり、%は重量%である。温度は℃で示す。重量部と容量部の関係はgとcm3の関係と同じである。
【0034】
実施例1:
式:
【0035】
【化2】

【0036】
の顔料の湿った54%プレスケーク9.25gを、水95mLに分散させ、次いでTriameen(登録商標)OV[オレイルジプロピレントリアミン(AKZO Nobel)]1.5mLを加えた。懸濁液をさらに2時間攪拌し、次いでろ過した。吸引フィルター中の材料を水で洗浄し、100mbarの真空下60℃で乾燥した。
【0037】
実施例2:
式(3)の顔料の湿った54%プレスケーク9.25gを、水95mLに分散させ、次いでTetrameen(登録商標)OV[オレイルトリプロピレンテトラミン(AKZO Nobel)]1.5mLを加えた。懸濁液をさらに2時間攪拌し、次いでろ過した。吸引フィルター中の材料を水で洗浄し、100mbarの真空下60℃で乾燥した。
【0038】
実施例3:
式(3)の顔料の湿った46%プレスケーク20.7gおよびポリアクリルアミド(ALDRICH CAS 9003-05-8)の50%水溶液10.7gを、水150mLに分散させた。懸濁液をBUCHI Mini Spray Dryer(Ti130〜132℃、Ta80〜90℃)中で乾燥した。(Ti=入口温度、Ta=出口温度)。
【0039】
実施例4:
式(3)の顔料の湿った46%プレスケーク20.7gおよびポリアクリルアミド(ALDRICH CAS 9003-05-8)の50%水溶液42.8gを、水150mLに分散させた。懸濁液をBUCHI Mini Spray Dryer中で乾燥した。
【0040】
実施例5:
式(3)の顔料の湿った46%プレスケーク20.0gおよびNH4−ポリアクリレートの40%水溶液(Dispex(登録商標)A40、CIBA SC)23.0gを、水200mLに分散させた。次いで懸濁液を60℃で1時間加熱し、続いてBUCHI Mini Spray Dryer中で乾燥した。
【0041】
実施例6:
式(3)の顔料の湿った35%プレスケーク151.2gおよびスチレン/ポリアクリレートコポリマー(Narlex(登録商標)ex. National Starch)の35%水溶液285.7gを水2Lに分散させた。懸濁液をBUCHI Mini Spray Dryer(Ti150℃、Ta80〜78℃)中で乾燥した。
【0042】
実施例7:
式(3)の顔料の湿った48%プレスケーク11.2gおよびスチレン/ポリアクリレートコポリマー(Narlex(登録商標)ex. National Starch)35%水溶液29.1gを、水400mLに分散させた。塩酸溶液10mLを用いて、ポリマーを沈殿させた。懸濁液をろ過し、乾燥した。
【0043】
実施例8:
式(3)の顔料の湿った43%プレスケーク25.5gおよび酢酸ブチル/s−ブタノール中の変性ポリアクリレート40%溶液(EFKA(登録商標)4400)50.4gを、水400mLに分散させた。懸濁液を真空キャビネット中、100℃で乾燥した。
【0044】
実施例9:
押出機中、実施例1〜8の生成物0.2gを、いずれの場合もポリアミド6(Grillon(登録商標)F47、EMS Chemie)99.8gで分散させた。チルロールによって、ペーストをフィルムに形成した。
【0045】
式(3)の未処理の顔料を含有する対照の着色フィルムが強く蛍光を発したのに対して、本発明の着色フィルムは全て蛍光を伴わない赤色のままであった。
【0046】
実施例10:
式(3)の顔料10.0gをアセトン中のポリスチレンの1%溶液1000mLに分散させ、水2000mLに滴下した。次いで懸濁液をろ過し、乾燥した。
【0047】
実施例11:
式(7)の顔料の湿った62%プレスケーク47.0gおよびNH4−ポリアクリレートコポリマーの40%水溶液(Dispex(登録商標)GA40、CIBA SC製)15.0gを、水600mLに分散させた。懸濁液をBUCHI Mini Spray Dryer中で乾燥した。
【0048】
実施例12:
プテリジン顔料CI PY 215の湿った42%プレスケーク23.7gおよびポリアクリル酸ナトリウムの40%水溶液(Dispex(登録商標)GA40、CIBA SC製)51.0gを、水200mLに分散させた。次いで、ジココジメチルアンモニウムクロリドのイソプロパノール/水75%溶液(Arquad(登録商標)2C-75、AKZO NOBEL製)25mLを添加することにより、ポリマーを沈殿させ、続いてろ別し、乾燥した。
【0049】
実施例13:
式(3)の顔料10.0gおよびトルエン−2,4−ジイソシアネート7.5gを、アセトン300mLに55℃で分散させ、次いでこのジイソシアネートを1,2−ブタンジオール3.0gと55℃で2時間重合した。次いでこの懸濁液をろ過し、乾燥した。
【0050】
実施例14:
プテリジン顔料CI PY 215の湿った45.1%プレスケーク44.3gおよびポリアクリレートの50%水溶液(Dispex(登録商標)R50、CIBA SC製)21.0gを、水200mLに分散させた。次いでこの懸濁液を、水酸化カルシウムの10%水溶液1000mLに滴下し、続いてろ過し、乾燥した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料(A)を含む顔料組成物であって、顔料(A)が、オリゴマーもしくはポリマーのアミンで処理されたか、またはポリマー中に封入されている、顔料組成物。
【請求項2】
顔料(A)が、ジケトピロロピロール、アゾ、キナクリドン、キノフタロン、フタロシアニン、インダントロン、フラバントロン、ピラントロン、アントラキノン、ペリレン、ジオキサジン、ペリノン、チオインジゴ、イソインドリン、プテリジン、イソインドリノンまたは金属錯体顔料である、請求項1記載の顔料組成物。
【請求項3】
オリゴマーもしくはポリマーのアミンとして、ポリエチレンイミン、アルキルジエチレントリアミン、アルキルトリエチレンテトラミン、アルキルジプロピレントリアミン、アルキルトリプロピレンテトラミン、アルコキシトリアミン、アルコキシテトラミンまたはビニルアミンポリマー類の化合物を用いる、請求項1および2記載の顔料組成物。
【請求項4】
封入用ポリマーとして、天然産物、または重合、重付加もしくは重縮合の合成生成物、たとえばポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリスルフィド、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリアルコール、ポリグリコール、ポリグリコールエステル、ポリカルボン酸、ポリスチレン、または上述したポリマーを含有する混合ポリマー、またはコポリマーもしくはターポリマーを用いる、請求項1および2記載の顔料組成物。
【請求項5】
封入用ポリマーとして、ポリアクリル酸アンモニウム、ナトリウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛もしくはジルコニウム、アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸/スチレンコポリマーを用いる、請求項4記載の顔料組成物。
【請求項6】
顔料粒子を、オリゴマーもしくはポリマーのアミンそれ自体と共に、またはそのアミンを含有する溶液と共にスプレーし、乾燥するか、あるいは顔料粒子をオリゴマーもしくはポリマーのアミンまたはオリゴマーもしくはポリマーのアミンを含有する液体に浸漬し、処理した顔料粒子をろ別し乾燥するか、またはスプレー乾燥する、請求項1記載の顔料組成物の製造。
【請求項7】
顔料粒子をポリマー単独またはそのポリマーを含有する溶液と共にスプレーし、次いで乾燥するか、あるいは顔料粒子をポリマーまたはポリマーを含有する液体に浸漬し、処理した顔料粒子を場合により、たとえばpHの変更または溶剤の添加によって沈殿させ、ろ別し乾燥するか、またはスプレー乾燥する、請求項1記載の顔料組成物の製造。
【請求項8】
高分子量の有機材料と、少なくとも1種の請求項1記載の顔料組成物の着色有効量とを互いに混合する、着色プラスチックまたは着色ポリマー粒子の製造方法。
【請求項9】
着色プラスチックまたは着色ポリマー粒子の製造における、請求項1記載の顔料組成物の使用。
【請求項10】
請求項1記載の顔料組成物を用いて着色した、プラスチックおよび着色ポリマー粒子。

【公表番号】特表2008−536992(P2008−536992A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507054(P2008−507054)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061532
【国際公開番号】WO2006/111493
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】