説明

顔検出装置および顔検出方法

【課題】処理時間の増加を抑制しつつ高精度な顔検出を行う。
【解決手段】顔検出装置100は、画像データを取得する画像取得部110と、取得された画像データのコントラストを調整する画質調整部114と、取得された画像データから顔を検出する顔検出部116と、検出された顔の位置を示す顔情報を保持する顔保持部120と、新たに取得された画像データにおいて、顔保持部に保持された顔情報に対応する顔があるか否かを判定する漏れ判定部122と、漏れ判定部が顔情報に対応する顔がないと判定すると、新たに取得された画像データのコントラストを変更するよう画質調整部114を制御する画質調整制御部124と、コントラストを変更した画像データについて、顔の再検出を行うよう顔検出部116を制御する顔検出制御部126と、検出された顔単位でコントラスト変更前後の論理和を導出する結果出力部118とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データから顔を検出する顔検出装置および顔検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラやカムコーダ等において、ピント調整や露光調整、画質補正等を行うため、撮像した画像データから人物やペットの顔を検出する顔検出機能を備えるものが普及しており、この顔検出の精度の向上が望まれている。
【0003】
そこで、現像条件の特定の現像パラメータ(例えば、コントラスト)を所定の振り幅で振って顔検出用の画像データを複数生成し、それぞれの画像データから人物の顔を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。また、表示に適したコントラストのゲイン調整とは独立したかたちで、顔検出において任意にコントラストのゲイン調整を行う技術が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−45638号公報
【特許文献2】特開2008−108024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1の技術では、顔検出のために、1つの画像データに対して、毎回、コントラスト等を所定の振り幅で振った画像データを複数作成し、かつ作成した画像データそれぞれに対して顔検出処理を行わなければならない。したがって、顔検出のため、生成した画像データ分の処理時間を要する。特に、数フレーム毎に顔検出を繰り返す動画像の撮像ではフレーム間の時間が制限されるので、特許文献1の技術を適用するのは困難である。
【0006】
また、特許文献2の技術は、顔検出のためゲイン調整を行っているが、そのゲイン調整が顔検出に適したものかは、顔検出を実行してみないとわからないため、顔検出の精度が必ず向上するとはいえない。顔検出処理では、顔検出を行う機能部に予め一般的な顔の特徴量を学習させるが、ゲイン調整を行った画像データのコントラストが、学習した際の画像データとコントラストが大きく異なる等、学習した情報との相性が悪く顔の検出漏れが発生する可能性がある。
【0007】
さらに、特許文献1、2のいずれにおいても、必ず画質調整を行ってから顔検出を行うため、画質調整を行わないでも顔検出が可能な場合においても画質調整が実行され、無駄な処理時間を費やしてしまうことになる。
【0008】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、処理時間の増加を抑制しつつ高精度な顔検出を行うことが可能な顔検出装置および顔検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の顔検出装置は、画像データを取得する画像取得部と、取得された画像データのコントラストを調整する画質調整部と、取得された画像データから顔を検出する顔検出部と、検出された顔の位置を示す顔情報を保持する顔保持部と、新たに取得された画像データにおいて、顔保持部に保持された顔情報に対応する顔があるか否かを判定する漏れ判定部と、漏れ判定部が顔情報に対応する顔がないと判定すると、新たに取得された画像データのコントラストを変更するよう画質調整部を制御する画質調整制御部と、コントラストを変更した画像データについて、顔の再検出を行うよう顔検出部を制御する顔検出制御部と、検出された顔単位でコントラスト変更前後の論理和を導出する論理和導出部とを備えることを特徴とする。
【0010】
画質調整制御部は、漏れ判定部が顔情報に対応する顔がないと判定すると、新たに取得された画像データについて、顔情報に基づく範囲のコントラストを変更するように画質調整部を制御してもよい。
【0011】
画質調整制御部は、顔保持部に顔情報が保持されていない場合、新たに取得された画像データの全域について、コントラストを変更するように画質調整部を制御してもよい。
【0012】
上記顔検出装置は、顔検出部が検出した顔の平均輝度、または、最大輝度および最小輝度を検出する顔輝度検出部をさらに備え、画質調整制御部は、顔輝度検出部が検出した平均輝度、または最大輝度および最小輝度の中間値である中間輝度を輝度の中心として、予め定められたゲインを輝度に乗算することで、新たに取得された画像データのコントラストを変更するように画質調整部を制御してもよい。
【0013】
上記顔検出装置は、顔検出部が検出した顔の最大輝度および最小輝度を検出する顔輝度検出部をさらに備え、画質調整制御部は、顔輝度検出部が検出した最大輝度と最小輝度の差分で輝度階調を除算した値をゲインとし、最大輝度および最小輝度の中間値である中間輝度を輝度の中心として、ゲインを輝度に乗算することで新たに取得された画像データのコントラストを変更するように画質調整部を制御してもよい。
【0014】
顔情報は、検出された顔の向きも示し、顔検出制御部は、漏れ判定部が顔情報に対応する顔がないと判定すると、新たに取得された画像データの顔情報に基づく範囲について、顔情報に示される顔の向きを含む予め定められた角度範囲を探索条件としてもよい。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の顔検出方法は、画像データを取得し、取得した画像データから顔を検出し、検出した顔の位置を示す顔情報を保持し、新たに取得した画像データにおいて、保持した顔情報に対応する顔があるか否かを判定し、顔情報に対応する顔がないと判定すると、新たに取得した画像データのコントラストを変更し、コントラストを変更した画像データについて、顔の再検出を行い、検出した顔単位でコントラスト変更前後の論理和を導出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明では、処理時間の増加を抑制しつつ高精度な顔検出を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態における顔検出装置の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
【図2】コントラストの変更の効果を説明するための説明図である。
【図3】第1の実施形態における顔検出方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態における顔検出装置の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
【図5】第2の実施形態における顔検出方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】第3の実施形態における顔検出装置の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
【図7】第3の実施形態における顔検出方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(顔検出装置100)
図1は、第1の実施形態における顔検出装置100の概略的な構成を示した機能ブロック図である。顔検出装置100は、画像取得部110と、画像保持部112と、画質調整部114と、顔検出部116と、結果出力部118と、顔保持部120と、漏れ判定部122と、画質調整制御部124と、顔検出制御部126と、を含んで構成される。なお、漏れ判定部122、画質調整制御部124、顔検出制御部126は、CPUを用いるソフトウェアで実現することもできる。また、顔検出装置100は、被写体を撮像して画像データを生成する撮像装置の一部として一体的に形成されるが、別体として形成し撮像装置に組み込み可能なオプションとなる装置であってもよい。
【0020】
画像取得部110は、例えば、図示しない撮像部から画像データを取得する。画像保持部112は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成され、画像取得部110が取得した画像データを一時的に保持する。
【0021】
画質調整部114は、後述する画質調整制御部124からの制御に従い、画像保持部112に保持された画像データ上の、画質調整制御部124から指定された領域に対して、画質調整制御部124から指定された中心輝度、ゲインに基づいてコントラストを調整する。具体的に、画質調整部114は、調整後輝度=(調整前輝度−中心輝度)×ゲイン+中心輝度となるようにコントラストを調整する。
【0022】
図2は、コントラストの変更の効果を説明するための説明図である。画像データに基づく画像150、152において、図2(a)に示すように、画像150の中の顔がぼやけて検出し難い場合がある。このとき、画像データのコントラストを上げると、図2(b)に示すように、画像152の中の顔の輪郭等が鮮明になり検出し易くなることが多い。
【0023】
本実施形態においては、このようなコントラストの変更による高精度な顔検出を、低処理負荷で実現可能な顔検出装置100について説明する。
【0024】
顔検出部116は、後述する顔検出制御部126の制御に従って、画像保持部112に保持されたコントラスト調整前の画像データから顔を検出し、顔の中心位置、顔のサイズ、顔の向き(ロール角、ピッチ角、ヨー角)、顔であることの確からしさを示す検出信頼度等の顔情報を結果出力部118および漏れ判定部122へ出力する。このように、顔情報は、検出された顔の向きも示す。ここで、ロール角は、例えば、画像データの垂直方向と、顔の鼻梁の長手方向とが成す角度、ピッチ角は、例えば、水平面と顔の視線方向とが成す角度、ヨー角は、例えば、顔の鼻梁の長手方向の軸回りの回転角度をそれぞれ示す。
【0025】
また、顔検出部116は、顔検出制御部126の制御に従って、画像保持部112に保持されたコントラスト調整後の画像データから顔を検出し、顔情報を結果出力部118へ出力する。以下、コントラスト調整前の顔の検出を初回検出、コントラスト調整後の顔の検出を再検出と称する。再検出については後に詳述する。
【0026】
結果出力部118は、後述する漏れ判定部122から出力された判定結果が、顔の検出漏れがないという結果であった場合、顔検出部116から出力された初回検出の際の顔情報を外部へ出力する。また、結果出力部118は、判定結果が顔の検出漏れがあるという結果であった場合、顔検出部116から出力された初回検出の際の顔情報と再検出の際の顔情報とを合わせた情報を検出結果として顔保持部120および外部へ出力する。出力された顔情報は、例えば、顔にフォーカスする顔フォーカス機能等に用いられる。
【0027】
後者の場合、結果出力部118は、論理和導出部として機能し、検出された顔単位でコントラスト変更前後(初回検出のときと再検出のとき)の論理和を導出する。結果出力部118は、このように顔単位の論理和を取ることで、コントラスト変更前後のいずれか一方でしか検出されなかった顔についても補完することができる。
【0028】
ただし、結果出力部118は、論理和の導出に際し、重複顔があった場合、重複顔に関する初回検出の際の顔情報と再検出の際の顔情報のうち検出信頼度が高い方のみを残す。重複顔は、初回検出の際の顔情報と再検出の際の顔情報とが所定距離内にある、例えば、一方の顔の中心位置に対して、一方の顔のサイズの1/2の範囲以内に、他方の顔の中心位置がある顔とする。
【0029】
顔保持部120は、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、結果出力部118が出力した、検出された顔の位置を示す顔情報を、例えば1フレーム分保持する。
【0030】
漏れ判定部122は、新たに取得された画像データ(フレーム)において、顔保持部120に保持された顔情報に対応する顔があるか否かを判定する。具体的に、漏れ判定部122は、顔検出部116から、新たに取得されたフレームから検出された顔の顔情報を取得し、一つ前のフレームから検出され出力された顔の顔情報を顔保持部120から取得する。そして、漏れ判定部122は、前回(一つ前のフレームについて)検出された顔のうち、今回(新たに取得されたフレームについて)検出されなかった顔(未検出顔)があるか否かを判定する(検出漏れ判定)。
【0031】
漏れ判定部122は、検出漏れ判定として、顔保持部120に保持された(結果出力部118が前回出力した)すべての顔の中心位置と顔のサイズに基づく領域に対して、顔検出部116が今回検出した顔がなかった場合、顔の検出漏れがあったと判定する。また、漏れ判定部122は、結果出力部118が前回出力した顔の数よりも、顔検出部116が今回検出した顔の数の方が少ない場合に、顔の検出漏れがあったと判定してもよい。さらに、漏れ判定部122は、前者と後者の両方の手段を用い検出漏れを判定してもよい。
【0032】
そして、漏れ判定部122は、検出漏れ判定の判定結果を結果出力部118、画質調整制御部124および顔検出制御部126へ出力する。また、顔の検出漏れがあると判定した場合、漏れ判定部122は、顔保持部120に保持された未検出顔についての顔情報である未検出顔情報を画質調整制御部124へ出力する。
【0033】
画質調整制御部124は、結果出力部118が前回出力した顔情報に対応する顔がないと漏れ判定部122が判定すると、画像保持部112に保持された、新たに取得されたフレームについて、未検出顔情報に基づく範囲のコントラストを変更、本実施形態においてはコントラストを上げるよう画質調整部114を制御する。このとき、画質調整制御部124は、予め設定した中心輝度とゲインでコントラスト調整するよう画質調整部114を制御する。例えば、画像データのフォーマットが8ビットのグレースケールの場合、予め設定した中心輝度は、輝度の範囲0〜255の中央値である128、予め設定したゲインは、1.25とする。ゲインを1.25とすることで、ゲインの乗算において、ビットシフトと加算という簡易なビット演算処理で乗算を実現できるため、乗算の処理負荷を軽減できる。
【0034】
また、未検出顔情報に基づく範囲は、例えば、漏れ判定部122から取得した未検出顔情報に基づいて、顔の中心位置に対して顔のサイズの2倍の領域とする。
【0035】
新たに取得されたフレームにおける、顔保持部120に保持された前のフレームで検出された顔の顔情報に対応する領域、即ち、顔が元あった領域に、同じ人の顔が検出される可能性が高い。そのため、画質調整制御部124は、コントラストを上げる処理の対象を、未検出顔情報に対応する領域に限定することで、処理負荷を軽減できる。
【0036】
また、画質調整制御部124は、顔保持部120に顔情報が保持されていない場合、新たに取得されたフレームの全域について、コントラストを上げるように画質調整部114を制御する。
【0037】
例えば、撮像開始直後、まだ顔保持部120に顔情報が保持されていないと、漏れ判定部122は、顔情報に対応する顔の有無を判定できない。この場合、画質調整制御部124は、検出できていない顔がある可能性があるため、フレームの全域について、コントラストを上げる。かかる構成により、顔検出装置100は、撮像開始直後に生成されたフレームにおける顔を高精度に取得することができ、顔の検出漏れが1度発生してしまうことで、顔の検出漏れが連続して発生する事態を回避できる。
【0038】
顔検出制御部126は、画像保持部112によって保持されたフレームに対して顔の初回検出を行うよう顔検出部116を制御すると共に、漏れ判定部122から出力された判定結果に応じて、漏れ判定部122が顔情報に対応する顔がないと判定すると、画質調整部114がコントラストを上げた、画像保持部112に保持されたフレームについて、顔の再検出を行うよう顔検出部116を制御する。
【0039】
また、顔の再検出は1度に限らず、コントラストの変更を、例えば、初回検出より上げたり下げたりして、複数回行うとしてもよい。再検出の回数を増やすことで、より顔検出の精度を向上することが可能となる。
【0040】
上述したように、本実施形態の顔検出装置100は、顔の検出漏れが発生した可能性が高い場合、画像の所定領域のコントラストを上げてから顔の再検出を行い、初回検出と再検出でそれぞれ検出された顔について、論理和を取り、少なくともいずれかで検出された顔の顔情報を検出結果とする。そのため、顔の検出漏れを最小限に抑えた高精度な顔検出を行うことができる。また、顔検出装置100は、顔の検出漏れが発生した可能性が低い場合には、コントラストを上げたり、顔の再検出を行ったりしないため、入力されたフレームが顔検出に適した画質であるにもかかわらず、無駄な処理をしてしまう事態を回避できる。
【0041】
(顔検出方法)
さらに、上述した顔検出装置100を用いた顔検出方法も提供される。図3は、第1の実施形態における顔検出方法の処理の流れを示すフローチャートである。画像取得部110がフレーム(画像データ)を新たに取得し画像保持部112がそのフレームを保持する(S200)。そして、顔検出部116は、顔検出制御部126の制御に従って、画像保持部112に保持されたコントラスト調整前のフレームから顔を検出し(初回検出)、検出した顔について顔情報を結果出力部118および漏れ判定部122へ出力する(S202)。
【0042】
続いて、漏れ判定部122は、顔保持部120に顔情報が保持されているか否かを判定する(S204)。顔情報が保持されている場合(S204におけるYES)、漏れ判定部122は、検出漏れがあるか否かを判定する(S206)。検出漏れがない場合(S206におけるNO)、結果出力部118は、顔検出部116から出力された初回検出の際の顔情報を出力する(S208)。検出漏れがある場合(S206におけるYES)、画質調整部114は、画像保持部112が保持する新たに取得されたフレームについて、未検出顔情報に基づく範囲のコントラストを上げ(S210)、顔検出部116は、画質調整部114がコントラストを上げ、画像保持部112に保持されたフレームについて、顔の再検出を行い、検出した顔について顔情報を結果出力部118へ出力する(S214)。
【0043】
また、顔情報保持判定ステップS204において顔情報が保持されていなかった場合(S204におけるNO)、画質調整部114は、画像保持部112が保持する新たに取得されたフレームの全域のコントラストを上げ(S212)、上記同様、顔検出部116は、画質調整部114がコントラストを上げた、画像保持部112に保持されたフレームについて、顔の再検出を行い、検出した顔について顔情報を結果出力部118へ出力する(S214)。結果出力部118は、検出された顔単位でコントラスト変更前後の顔情報の論理和を導出し、顔検出の結果として出力する(S216)。
【0044】
上述したように、顔検出装置100を用いた顔検出方法によれば、処理時間の増加を抑制しつつ高精度な顔検出を行うことが可能となる。
【0045】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、予め定められた中心輝度とゲインでコントラスト調整が行われた。第2の実施形態では、顔検出の対象となる画像データに適した中心輝度とゲインでコントラスト調整する顔検出装置300について説明する。
【0046】
(顔検出装置300)
図4は、第2の実施形態における顔検出装置300の概略的な構成を示した機能ブロック図である。顔検出装置300は、画像取得部110と、画像保持部112と、画質調整部114と、顔検出部316と、結果出力部118と、顔保持部120と、漏れ判定部122と、画質調整制御部324と、顔検出制御部126と、顔輝度検出部328と、を含んで構成される。
【0047】
第1の実施形態における構成要素として既に述べた、画像取得部110、画像保持部112、画質調整部114、結果出力部118、顔保持部120、漏れ判定部122、顔検出制御部126は、実質的に機能が等しいので重複説明を省略し、ここでは構成が相違する顔検出部316、画質調整制御部324、顔輝度検出部328を主に説明する。
【0048】
顔検出部316は、顔の初回検出の際、検出した顔の顔情報を、第1の実施形態と同様の結果出力部118と漏れ判定部122に加えて、顔輝度検出部328へも出力する。
【0049】
顔輝度検出部328は、顔検出部116が検出した顔の平均輝度、または、最大輝度および最小輝度を検出する。具体的に、顔輝度検出部328は、顔検出部116が出力した顔情報に基づき、検出した顔が1つ以上ある場合、それらの顔の中心位置と顔のサイズから求まる領域の平均輝度、または、最大輝度および最小輝度を画像保持部112に保持されたフレームから検出し、それを顔輝度情報として保持する。ここで、平均輝度は、検出したすべての顔の領域の輝度の平均値とし、最大輝度は、検出したすべての顔の領域の輝度の最大値とし、最小輝度は、検出したすべての顔の領域の輝度の最小値とする。なお、顔検出部116が検出した顔が1つもない場合、顔輝度検出部328は、顔輝度情報の保持は行わず前回保持した顔輝度情報を消去する。
【0050】
画質調整制御部324は、漏れ判定部122が出力した判定結果に応じて、漏れ判定部122が顔情報に対応する顔がないと判定し、かつ顔輝度検出部328から有効な顔輝度情報が取得できた場合、顔輝度検出部328が検出した平均輝度、または最大輝度および最小輝度の中間値である中間輝度を輝度の中心として、予め設定したゲイン(例えば、1.25)を輝度に乗算することで、新たに取得されたフレームについて、未検出顔情報に基づく範囲のコントラストを上げるように画質調整部114を制御する。
【0051】
かかる構成により、検出された顔に基づいて決定された平均輝度や中間輝度を輝度の中心としてゲインを乗算できるため、画質調整部114は、コントラストを十分大きく変化させて顔を再検出することが可能となる。
【0052】
さらに、画質調整制御部324は、漏れ判定部122が顔情報に対応する顔がないと判定し、かつ顔輝度検出部328から有効な顔輝度情報が取得できた場合、顔輝度検出部328が検出した最大輝度と最小輝度の差分で輝度階調(輝度階調数、例えば、8ビットのグレースケールの場合は256)を除算した値をゲインとし、最大輝度と最小輝度の中間値である中間輝度を輝度の中心として、ゲインを輝度に乗算することで新たに取得されたフレームについて、未検出顔情報に基づく範囲のコントラストを上げるように画質調整部114を制御してもよい。
【0053】
かかる構成により、検出された顔に基づいて決定された中間輝度を輝度の中心とし、さらに、検出された顔のコントラストを最大限高くできるゲインを乗算できるため、画質調整部114は、コントラスト幅を最大限利用してコントラストを変化させ、顔を再検出することが可能となる。
【0054】
また、画質調整制御部324は、漏れ判定部122が顔情報に対応する顔がないと判定し、かつ顔輝度検出部328から有効な顔輝度情報が取得できなかった場合、画像保持部112に保持されたフレームの全域を、予め設定した中心輝度とゲインでコントラスト調整するよう画質調整部114を制御する。例えば、画像データのフォーマットが8ビットのグレースケールの場合、上述したように予め設定した中心輝度とゲインはそれぞれ128、1.25とする。
【0055】
さらに、画質調整制御部324は、顔保持部120に顔情報が保持されていない場合で、かつ顔輝度検出部328から有効な顔輝度情報が取得できた場合、顔輝度検出部328が検出した平均輝度、または最大輝度および最小輝度の中間値である中間輝度を輝度の中心として、予め設定したゲイン(例えば、1.25)を輝度に乗算することで、新たに取得されたフレームについて、未検出顔情報に基づく範囲のコントラストを上げるように画質調整部114を制御する。
【0056】
また、画質調整制御部324は、顔保持部120に顔情報が保持されていない場合で、かつ顔輝度検出部328から有効な顔輝度情報が取得できた場合、顔輝度検出部328が検出した最大輝度と最小輝度の差分で輝度階調(輝度階調数、例えば、8ビットのグレースケールの場合は256)を除算した値をゲインとし、最大輝度と最小輝度の中間値である中間輝度を輝度の中心として、ゲインを輝度に乗算することで新たに取得されたフレームについて、未検出顔情報に基づく範囲のコントラストを上げるように画質調整部114を制御してもよい。
【0057】
さらに、画質調整制御部324は、顔保持部120に顔情報が保持されていない場合で、かつ顔輝度検出部328から有効な顔輝度情報が取得できなかった場合、画像保持部112に保持されたフレームの全域を、予め設定した中心輝度とゲインでコントラスト調整するよう画質調整部114を制御する。例えば、画像データのフォーマットが8ビットのグレースケールの場合、予め設定した中心輝度とゲインはそれぞれ128、1.25とする。
【0058】
上記のように、本実施形態の顔検出装置300によれば、処理時間の増加を抑制しつつ高精度な顔検出を行うことが可能となる。
【0059】
(顔検出方法)
さらに、上述した顔検出装置300を用いた顔検出方法も提供される。図5は、第2の実施形態における顔検出方法の処理の流れを示すフローチャートである。フレーム取得ステップS200および顔初回検出ステップS202は、第1の実施形態と実質的に等しいため重複説明を省略する。続いて、顔輝度検出部328は、顔検出部116が出力した顔情報に基づき、検出した顔が1つ以上あるか否かを判定する(S400)。
【0060】
1つ以上ある場合(S400におけるYES)、それらの顔の中心位置と顔のサイズから求まる領域の平均輝度、または、最大輝度および最小輝度を画像保持部112に保持されたフレームから検出し、それを顔輝度情報として保持する(S402)。顔が1つも検出されなかった場合(S400におけるNO)、および顔輝度情報検出ステップS402の後、顔情報保持ステップS204を行う。
【0061】
顔情報保持判定ステップS204において、顔情報が保持されており(S204におけるYES)、検出漏れ判定ステップS206において検出漏れがなかった場合(S206におけるNO)、結果出力部118は、顔検出部316から出力された初回検出の際の顔情報を出力する(S208)。
【0062】
また、検出漏れ判定ステップS206において検出漏れがあった場合(S206におけるYES)、画質調整制御部324は、顔輝度情報検出ステップS402において、顔輝度情報が保持されたか否かを判定する(S404)。保持されていた場合(S404におけるYES)、画質調整制御部324は、その顔輝度情報に基づいて、コントラストを上げるためのパラメータ(中心輝度とゲイン)を設定する(S406)。顔輝度情報が保持されていない場合(S404におけるNO)、画質調整制御部324は、コントラストを上げるためのパラメータを予め設定した値とする(S408)。画質調整部114は、画像保持部112が保持する新たに取得されたフレームについて、未検出顔情報に基づく範囲のコントラストを設定されたパラメータに基づいて上げる(S410)。
【0063】
また、前回出力結果判定ステップS204において、顔情報が保持されていなかった場合(S204におけるNO)、画質調整制御部324は、顔輝度情報検出ステップS402において、顔輝度情報が保持されたか否かを判定する(S412)。保持されていた場合(S412におけるYES)、画質調整制御部324は、その顔輝度情報に基づいて、コントラストを上げるためのパラメータ(中心輝度とゲイン)を設定する(S414)。
【0064】
顔輝度情報が保持されていない場合(S412におけるNO)、画質調整制御部324は、コントラストを上げるためのパラメータを予め設定した値とする(S416)。画質調整部114は、画像保持部112が保持する新たに取得されたフレームの全域のコントラストを設定されたパラメータに基づいて上げる(S418)。以下、顔再検出ステップS214から論理和出力ステップS216までの処理は、第1の実施形態と実質的に等しいため重複説明を省略する。
【0065】
上述したように、顔検出装置300を用いた顔検出方法によれば、処理時間の増加を抑制しつつ高精度な顔検出を行うことが可能となる。
【0066】
(第3の実施形態)
上述した第1、第2の実施形態では、顔の再検出の際、検出領域をフレーム全域とし、かつすべての顔の向きを検出の対象としていた。第3の実施形態では、検出領域と顔の向きを絞って顔検出を行う顔検出装置500について説明する。
【0067】
(顔検出装置500)
図6は、第3の実施形態における顔検出装置500の概略的な構成を示した機能ブロック図である。顔検出装置500は、画像取得部110と、画像保持部112と、画質調整部114と、顔検出部516と、結果出力部118と、顔保持部120と、漏れ判定部122と、画質調整制御部124と、顔検出制御部526と、を含んで構成される。
【0068】
第1の実施形態における構成要素として既に述べた、画像取得部110、画像保持部112、画質調整部114、結果出力部118、顔保持部120、漏れ判定部122、画質調整制御部124は、実質的に機能が等しいので重複説明を省略し、ここでは構成が相違する顔検出部516、顔検出制御部526を主に説明する。
【0069】
顔検出部516は、顔検出制御部526の制御に従って、第1の実施形態と同様、初回検出の際、画像保持部112に保持されたコントラスト調整前のフレームから顔を検出し、検出した顔について、顔情報を結果出力部118および漏れ判定部122へ出力する。顔の再検出の際、画像保持部112に保持されたコントラスト調整後のフレームから顔を検出し、顔情報を結果出力部118へ出力する。
【0070】
このとき、顔検出部516は、顔検出制御部526によって指定された、新たに取得されたフレームの未検出顔情報に基づく範囲について、顔検出制御部526によって指定された、未検出顔情報に示される顔の向きを含む予め定められた角度範囲のみを対象として顔検出を行う。そして、顔検出部516は、顔が検出できたら、検出した顔情報を結果出力部118へ出力する。
【0071】
顔検出制御部526は、第1の実施形態と同様、画像保持部112によって保持されたフレームに対して顔の初回検出を行うよう顔検出部516を制御すると共に、漏れ判定部122が顔情報に対応する顔がないと判定すると、画質調整部114がコントラストを上げた、画像保持部112に保持されたフレームについて、顔の再検出を行うよう顔検出部516を制御する。
【0072】
このとき、顔検出制御部526は、漏れ判定部122が顔情報に対応する顔がないと判定すると、漏れ判定部122から出力された、新たに取得されたフレームの未検出顔情報に基づく範囲について、未検出顔情報に示される顔の向きを含む予め定められた角度範囲を探索条件とする。ここで、探索条件とする顔の向きは、ロール角の角度とする。また、顔検出制御部526は、探索条件の角度範囲として、例えば、−45°<X≦45°、45°<X≦135°、135°<X≦225°、225°<X≦315°(−45°)のうち、未検出顔情報のロール角を含む角度範囲に設定する。
【0073】
また、未検出顔情報が複数ある場合、顔検出制御部526は、未検出顔情報の数分、未検出顔情報に応じて探索領域と探索するロール角の角度範囲を変えながら再検出を繰り返し行うよう顔検出部516を制御する。
【0074】
上述したように、顔検出制御部526は、未検出顔情報に基づいて、これから顔検出部516に顔検出処理を遂行させる際の探索領域と顔の向きの探索範囲を絞る。かかる構成により、顔検出処理の処理負荷を低減できる。
【0075】
(顔検出方法)
さらに、上述した顔検出装置500を用いた顔検出方法も提供される。図7は、第3の実施形態における顔検出方法の処理の流れを示すフローチャートである。上述した第1の実施形態の顔検出方法と実質的に等しい処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
フレーム取得ステップS200からコントラスト変更ステップS210までの処理は、第1の実施形態と実質的に等しいため重複説明を省略する。コントラスト変更ステップS210の後、顔検出制御部526は、漏れ判定部122から出力された未検出顔情報から探索条件の設定に利用していない未検出情報を1つ選択し(S600)、新たに取得されたフレームの選択した未検出顔情報に基づく範囲について、選択した未検出顔情報に示される顔の向きを含む予め定められた角度範囲、例えば、−45°<X≦45°、45°<X≦135°、135°<X≦225°、225°<X≦315°(−45°)のうち、未検出顔情報のロール角を含む角度範囲を探索条件とする(S602)。
【0077】
そして、顔検出部516は、画質調整部114がコントラストを上げた、画像保持部112に保持されたフレームについて、設定された探索条件で顔の再検出を行う(S604)。続いて、顔検出制御部526は、探索条件としてまだ用いていない未検出顔情報があるか否かを判定する(S606)。まだ用いていない未検出顔情報がある場合(S606におけるYES)、未検出顔情報選択ステップS600に戻る。すべての未検出顔情報を用いた後(S606におけるNO)、論路和出力ステップS216を行う。
【0078】
コントラスト変更ステップS212から論理和出力ステップS216までの処理は、第1の実施形態と実質的に等しいため重複説明を省略する。
【0079】
上述したように、顔検出装置500を用いた顔検出方法によれば、処理時間の増加を抑制しつつ高精度な顔検出を行うことが可能となる。
【0080】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0081】
なお、本明細書の顔検出方法における各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、画像データから顔を検出する顔検出装置および顔検出方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
100、300、500 …顔検出装置
110 …画像取得部
114 …画質調整部
116、316、516 …顔検出部
118 …結果出力部(顔保持部、論理和導出部)
120 …顔保持部
122 …漏れ判定部
124、324 …画質調整制御部
126、526 …顔検出制御部
328 …顔輝度検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを取得する画像取得部と、
取得された前記画像データのコントラストを調整する画質調整部と、
前記取得された画像データから顔を検出する顔検出部と、
検出された前記顔の位置を示す顔情報を保持する顔保持部と、
新たに取得された画像データにおいて、前記顔保持部に保持された顔情報に対応する顔があるか否かを判定する漏れ判定部と、
前記漏れ判定部が前記顔情報に対応する顔がないと判定すると、前記新たに取得された画像データのコントラストを変更するよう前記画質調整部を制御する画質調整制御部と、
コントラストを変更した前記画像データについて、顔の再検出を行うよう前記顔検出部を制御する顔検出制御部と、
検出された顔単位でコントラスト変更前後の論理和を導出する論理和導出部と、
を備えることを特徴とする顔検出装置。
【請求項2】
前記画質調整制御部は、前記漏れ判定部が前記顔情報に対応する顔がないと判定すると、前記新たに取得された画像データについて、顔情報に基づく範囲のコントラストを変更するように前記画質調整部を制御することを特徴とする請求項1に記載の顔検出装置。
【請求項3】
前記画質調整制御部は、前記顔保持部に前記顔情報が保持されていない場合、前記新たに取得された画像データの全域について、コントラストを変更するように前記画質調整部を制御することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の顔検出装置。
【請求項4】
前記顔検出部が検出した顔の平均輝度、または、最大輝度および最小輝度を検出する顔輝度検出部をさらに備え、
前記画質調整制御部は、前記顔輝度検出部が検出した前記平均輝度、または前記最大輝度および前記最小輝度の中間値である中間輝度を輝度の中心として、予め定められたゲインを輝度に乗算することで、前記新たに取得された画像データのコントラストを変更するように前記画質調整部を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の顔検出装置。
【請求項5】
前記顔検出部が検出した顔の最大輝度および最小輝度を検出する顔輝度検出部をさらに備え、
前記画質調整制御部は、前記顔輝度検出部が検出した前記最大輝度と最小輝度の差分で輝度階調を除算した値をゲインとし、前記最大輝度と前記最小輝度の中間値である中間輝度を輝度の中心として、前記ゲインを輝度に乗算することで前記新たに取得された画像データのコントラストを変更するように前記画質調整部を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の顔検出装置。
【請求項6】
前記顔情報は、検出された顔の向きも示し、
前記顔検出制御部は、前記漏れ判定部が前記顔情報に対応する顔がないと判定すると、前記新たに取得された画像データの前記顔情報に基づく範囲について、前記顔情報に示される顔の向きを含む予め定められた角度範囲を探索条件とすることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の顔検出装置。
【請求項7】
画像データを取得し、
取得した前記画像データから顔を検出し、
検出した前記顔の位置を示す顔情報を保持し、
新たに取得した画像データにおいて、保持した前記顔情報に対応する顔があるか否かを判定し、
前記顔情報に対応する顔がないと判定すると、前記新たに取得した画像データのコントラストを変更し、
コントラストを変更した前記画像データについて、顔の再検出を行い、
検出した顔単位でコントラスト変更前後の論理和を導出することを特徴とする顔検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−156609(P2012−156609A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11517(P2011−11517)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】