説明

顔認証装置

【課題】なりすましを防止した高セキュリティな顔認証を行う。
【解決手段】入力される顔画像中の顔とあらかじめ登録された顔との類似度を示す照合スコアを算出し、算出された照合スコアと閾値との比較によって認証を行う認証手段を有する顔認証装置であって、認証の失敗履歴に基づいて、認証手段のセキュリティ強度を上げる制御を行う制御手段を有することを特徴とする。ここで、セキュリティ強度は、閾値を大きくしたり、照明変動や顔向きに対応する処理を無効化したり、特徴空間における本人領域の範囲を狭くしたりすることによって実現することが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔認証技術に関し、特に、顔認証技術においてなりすましによる誤認証を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な場面で顔認証技術が利用されている。たとえば、高機能化によってセキュリティ対策が重視され始めている携帯電話機や、所定区域内への立ち入りを管理する入退室管理システム等において、顔認証技術が利用されている。このように、顔認証技術が普及し始めている一方で、写真等を用いたなりすましが問題となっている。
【0003】
なりすましを防止するために、認証者に対して、目を所定時間閉じて開くという動作を行わせたり、顔の向きや表情を指示する技術が知られている(たとえば、特許文献1,2)。
【特許文献1】特開2002−251614号公報
【特許文献2】特開2003−317100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術のように、顔認証とジェスチャの読み取りとを組み合わせることで、なりすましを検知することが可能であるが、ユーザはジェスチャを行う必要があり、負担が生じていた。
【0005】
また、なりすまし行為をしようとする人物が、認証を成功させようとして複数回認証処理を試行した場合でも、常に同一の処理を行っていた。したがって、なりすまし者のスキルが向上すると、なりすましが成功してしまう可能性もあった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの問題を解決して、なりすましを防止した高セキュリティな顔認証技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る顔認証装置は、なりすましに対する危険性を判断し、なりすましの危険性が高い場合には認証成功の判断基準を厳しくするものである。
【0008】
本発明に係る顔認証装置は、認証手段と、認証手段のセキュリティレベルを制御する制御手段とを有する。認証手段は、入力される顔画像中の顔とあらかじめ登録された顔との類似度を示す照合スコアを算出し、算出された照合スコアと閾値との比較によって、認証に成功したと判断する。
【0009】
認証手段は、より具体的には、入力された顔画像から顔を検出する顔検出手段、検出された顔から特徴量を取得する特徴量取得手段、取得された特徴量と登録された特徴量を照合して照合スコアを算出する照合手段などを含んで構成されることができる。顔検出するための技術としては、テンプレートマッチングやニューラルネットワークによる学習結果を用いる技術など、既存のどのような技術が用いられても良い。また、取得する特徴量は、顔の個人差を表現する特徴を表すものであれば、どのような特徴量が用いられても良い。
【0010】
本発明における制御手段は、認証の失敗履歴に基づいて、認証手段のセキュリティ強度
を上げる処理を行う。認証の失敗とは、入力された顔画像中の顔と、あらかじめ登録された顔とが一致しないと認証手段によって判断されることをいう。
【0011】
制御手段は、より具体的には、連続して認証に失敗した回数に応じて、認証手段のセキュリティ強度を上げるように構成されることができる。また、制御手段は、連続して失敗した認証に係る照合スコア(例えば、その合計など)に応じて、制御手段のセキュリティ強度を上げるように構成されることができる。また、制御手段は、直近の所定回数の認証(試行)における、失敗の回数または頻度に応じて、認証手段のセキュリティ強度を上げる構成とすることができる。また、制御手段は、直近の所定回数の認証における、失敗した認証に係る照合スコアに応じて、制御手段のセキュリティ強度を上げることができる。
【0012】
なお、セキュリティ強度を上げるというのは、認証手段において他人を誤って本人(登録者)と判断する確率を少なくする、すなわち、他人許容率を低くすることをいう。
【0013】
一般に、なりすましを行おうとする者は、認証を繰り返して行い、なんとか認証を成功させようとする。そして、試行回数が増すにつれて、徐々になりすましのスキルが向上すると考えられる。これに対して、本発明に係る顔認証装置は、認証の失敗履歴に基づいてセキュリティ強度を上げているので、なりすまし者の試行回数が増すにつれて認証成功とみなす判断基準を厳しくできる。したがって、なりすまし者のスキルが向上した場合でも、それに伴ってセキュリティ強度も上がるので、なりすましを防止することが可能となる。
【0014】
本発明における制御手段は、具体的には、以下のようにして認証手段のセキュリティ強度を上げる制御を行う。たとえば、制御手段は、認証が成功したと判断する照合スコアの閾値を高くするように認証手段を制御することができる。閾値を上げることで、セキュリティ強度が上がる。
【0015】
あるいは、入力される顔画像の撮影状態に応じて補正を行う補正手段を認証手段が有する場合には、制御手段は、認証手段がこれらの補正を無効とするように制御することができる。ここでいう補正処理には、顔画像の照明条件に応じて顔画像を補正する処理や取得される特徴量にバイアスをかける処理、顔画像における顔の向きに応じて取得される特徴量にバイアスをかける処理や照合アルゴリズムを変更する処理などが含まれる。言い換えると、ここでいう補正処理とは、顔画像に応じて本人拒否率を下げるような処理と表現できる。このような補正処理を無効とすることで、本人拒否率が上がってしまう可能性があるものの、他人許容率も下がるため、セキュリティ強度を上げることができる。
【0016】
また、認証手段が学習型の認証アルゴリズムを用いるものである場合、制御手段は登録された顔の特徴空間の範囲を狭めるように認証手段を制御することができる。登録された顔と一致するとみなされる特徴空間の範囲が狭まるため、セキュリティ強度が上がる。
【0017】
なお、本発明は、上記手段の少なくとも一部を有する顔認証装置として捉えることができる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む顔認証方法、または、かかる方法を実現するためのプログラムとして捉えることもできる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【0018】
たとえば、本発明の一態様としての顔認証方法は、情報処理装置が、認証対象者の顔画像の入力を受け付ける画像入力ステップと、あらかじめ登録された顔との類似度を示す照合スコアを算出する照合スコア算出ステップと、算出された照合スコアが所定の閾値以上である場合に、認証に成功したと判断する認証ステップと、認証の失敗履歴に基づいて、前記認証ステップにおけるセキュリティ強度を上げる制御ステップと、を実行することを
特徴とする。
【0019】
また、本発明の一態様としての顔認証プログラムは、情報処理装置に対して、認証対象者の顔画像の入力を受け付ける画像入力ステップと、あらかじめ登録された顔との類似度を示す照合スコアを算出する照合スコア算出ステップと、算出された照合スコアが所定の閾値以上である場合に、認証に成功したと判断する認証ステップと、認証の失敗履歴に基づいて、前記認証ステップにおけるセキュリティ強度を上げる制御ステップと、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、なりすましを防止した高セキュリティな顔認証が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
<構成>
本実施形態に係る顔認証装置1は、ハードウェア的には、バスを介して接続されたCPU(中央演算処理装置)、主記憶装置(RAM)、補助記憶装置などを備えるように構成される。この場合、プログラムがCPUに実行されることによって、顔認証装置1が実現される。
【0023】
図1は、顔認証装置1の機能ブロック例を示す図である。顔認証装置1は、補助記憶装置に記憶された各種のプログラム(OS,アプリケーション等)が主記憶装置にロードされCPUにより実行されることによって、画像入力部2、顔認証部3、顔検出部4、特徴量取得部5、照合部6、登録者DB7、制御部8、条件DB9として機能する。また、顔認証装置1の全部または一部は、専用のチップとして構成されても良い。
【0024】
次に、顔認証装置1が含む各機能部について説明する。
【0025】
画像入力部2は、顔画像のデータを顔認証装置1へ入力するためのインタフェースとして機能する。画像入力部2によって、顔画像のデータが顔認証装置1へ入力される。画像入力部2は、顔認証装置1へ顔画像のデータを入力するためのどのような既存の技術を用いて構成されても良い。
【0026】
たとえば、ネットワーク(LANやインターネットなど)を介して顔画像のデータが顔認証装置1へ入力されても良い。また、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ等から顔画像が顔認証装置1へ入力されても良い。また、顔認証装置1がデジタルカメラ等の撮像装置またはデジタルカメラ等の撮像装置を備える各種装置(携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)等)の内部に含まれ、撮像された画像が顔認証装置1へと入力されても良い。
【0027】
顔認証部3は、顔認証装置1へ入力された顔画像が登録者DB7に登録されている顔と一致するか否かの判定を行う。顔認証部3は、顔検出部4、特徴量取得部5および照合部6を含む。
【0028】
顔検出部4は、画像入力部2を介して入力された顔画像から、人の顔を検出する。顔検出部4は、たとえば、顔全体の輪郭に対応した基準テンプレートを用いたテンプレートマッチングによって顔を検出するように構成されても良い。また、顔検出部4は、顔の構成要素(目、鼻、耳など)に基づくテンプレートマッチングによって顔を検出するように構
成されても良い。また、顔検出部4は、肌の色に近い領域を検出し、その領域を顔として検出するように構成されても良い。また、顔検出部4は、ニューラルネットワークを使って教師信号による学習を行い、顔らしい領域を顔として検出するように構成されても良い。また、顔検出部4は、その他既存のどのような技術が適用されることによって実現されても良い。
【0029】
顔検出部4は、検出された顔の位置を特定し、その位置を特徴量取得部5へ渡す。このとき、顔検出部4は、顔の傾きや顔の大きさを取得し、その値を特徴量取得部5にさらに渡すように構成されても良い。
【0030】
特徴量取得部5は、顔検出部4によって検出された顔から特徴点を検出し、その特徴点付近での特徴量を取得する。特徴量取得部5が取得する特徴量としては、画像の輝度値、Sobelフィルタ特徴量、HaarWavelet特徴量、GaborWavelet特徴量、Haar特徴量、これらを複合した値を用いることができる。また、特徴量取得部5が取得する特徴量は、その他の既存のどのような特徴量であっても構わない。
【0031】
照合部6は、入力された顔画像の特徴量と、登録者DB7に格納されている登録者の顔の特徴量とを照合し、類似度を示す照合スコアを算出する。ここでは、照合部6は、照合スコアを1000点満点として算出し、スコアが高いほど類似度が高いものとする。そして、照合部6は、算出した照合スコアが所定の判定閾値以上である場合には、入力された顔画像中の顔と、登録者DB7に格納されている顔が一致すると判定し、判定結果を出力する。
【0032】
登録者DB7には、登録者の顔の特徴量が格納される。
【0033】
制御部8は、過去の認証の失敗履歴に基づいて、顔認証部3のセキュリティ強度を制御する。制御部8は、なりすましが行われている危険性を表す値として、なりすまし度を以下のように算出する。すなわち、制御部は、直近の連続して失敗した認証について、照合スコアとスコアの最大値(例えば、1000)との差(1000−照合スコア)の合計を、なりすまし度として算出する。このようにして算出されるなりすまし度は、登録者との不一致度を表すものであり、値が大きいほど入力された顔が登録者の顔と似ていないことを示す。したがって、この値が大きいほど他人による認証が行われている可能性が高い、すなわち、なりすましが行われている可能性が高いといえる。なお、制御部8は、一旦認証が成功した場合には、なりすまし度をリセットする。
【0034】
制御部8は、なりすまし度の値に応じて、顔認証部3の認証が成功したと判断する判定閾値の値を大きくする制御を行う。なりすまし度の値と判定閾値との値の関係は、条件DB9に格納されている。このように、判定閾値を高くすることによって、登録者とは異なる他人が誤って登録者であると判定される確率(他人許容率)を低くすることができる。したがって、なりすまし者による認証が成功する可能性を低くすることができ、なりすましを防止することができる。
【0035】
条件DB9には、なりすまし度の値と判定閾値の関係とが格納される。図2は、なりすまし度と判定閾値の関係を示すテーブルの一例である。なお、判定閾値をいくつにするかは照合部6の設計に依存し、また判定閾値をなりすまし度に応じてどのように高くしていくのかも適宜設計することができる。
【0036】
<動作例>
以下に、顔認証装置1の動作例について説明する。図3は、顔認証装置1の動作例を示すフローチャートである。
【0037】
まず、顔認証装置1は、画像入力部2を介して被認証者の顔画像の入力を受け付ける(S101)。そして、顔認証部3が、入力された被認証者の顔と、登録者DB7に格納されている顔が一致するか否かの認証を行う(S102)。より具体的には、顔検出部4が入力画像から顔を検出し、特徴量取得部5が顔の特徴量を取得し、照合部6が取得した特徴量と登録者の特徴量の比較をして、照合スコアが判定閾値以上であるか否かによって認証結果を判定する。
【0038】
顔認証部3は、算出された照合スコアが判定閾値以上であるか否かを判定することによって、認証が成功したか否か判定する(S103)。照合スコアが判定閾値以上である場合(S103−YES)は、認証に成功したと判断して処理を終了する(S104)。
【0039】
照合スコアが判定閾値未満である場合(S103−NO)は、連続して失敗した回数が所定の回数以下であるか判定する(S105)。所定回数より多く続けて認証に失敗した場合(S105−NO)は、認証の失敗を確定させて処理を終了させる(S106)。ここで、たとえば、顔認証機能をロックさせて、パスワード入力や音声認識など他の手段による認証を受けなければ、顔画像による認証を行えないようにしても良い。
【0040】
連続して認証に失敗した回数が所定回数以下である場合(S105−YES)は、制御部8が、なりすまし度を算出する(S107)。具体的には、制御部8は、連続して失敗した照合に係る照合スコアの最大値からの差(例えば、1000−照合スコア)の累積をなりすまし度として算出する。そして、制御部8は、条件DB9を参照して、算出したなりすまし度に応じて、顔認証部3の判定閾値の値を変更する(S108)。
【0041】
この後、ステップS101へ戻り、再び、顔画像の入力そして顔認証を行う。この際、なりすまし度に応じて、判定閾値が大きくなっているので、セキュリティが厳しくなっている。したがって、なりすましが成功してしまう可能性を低くすることができる。
【0042】
<実施形態の作用・効果>
本実施形態では、認証の失敗履歴に基づいて、失敗した認証の照合スコアの累積値をなりすまし度として算出している。そして、このなりすまし度に応じて判定閾値を上げて顔認証のセキュリティ強度を強くする制御を行っている。
【0043】
このような構成によって、なりすまし者によるなりすまし行為を検知し、なりすましの試行回数が増えるとともに、なりすましが成功しにくくするようにできる。特に、なりすまし者が何回も試行回数を重ねて、なりすましのスキルが向上した場合であっても、顔認証装置も判定閾値を上げるので、セキュリティレベルを維持することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る顔認証装置1の機能ブロック例を示す図である。本実施形態が第1の実施形態と異なるのは、顔認証部3に照明対応部10および顔向き対応部11が設けられている点と、制御部8の制御内容である。
【0045】
まず、照明対応部10および顔向き対応部11について説明する。照明対応部10および顔向き対応部11は、いずれも、入力された顔画像の照明条件や顔向きの条件に応じて、顔認証処理に補正処理を施す機能部である。一般に照明条件が悪い場合(逆光や横からの照明、全体的に明るい・暗いなど)や、顔向きが正面ではない場合などには、登録者本人の画像が入力された場合も他人の画像が入力された場合も、照合スコアが低くなってしまう。そこで、入力された画像に対して補正(ヒストグラム平坦化やガンマ補正など)を行ったり、取得する特徴量を変化させたり、取得する特徴量にバイアスをかけたり、ある
いは、判定閾値の値を下げたりといった補正処理を行うことが、従来から採用されている。
【0046】
照明対応部10は、顔画像のコントラストを判定することによって、照明条件を取得する。そして、照明対応部10は、照明条件に応じて、入力された顔画像に対してヒストグラムの平坦化処理を施す。また、照明対応部10は、特徴量取得部5が取得する特徴量に対してバイアスをかける処理を行っても良い。
【0047】
顔向き対応部11は、顔検出部4が検出する顔の特徴点の位置関係により、顔の向きを取得する。そして、顔が横向きや上向きや下向きなど正面向きではない場合には、顔認証部3の判定閾値を下げる処理を行う。また、顔向き対応部11は、特徴量取得部5が取得する特徴量に対してバイアスをかける処理を行っても良い。また、顔向き対応部11は、顔の向きに応じて、顔認証部3が用いる認証アルゴリズムを変更しても良い。
【0048】
次に、本実施形態における制御部8が行う、なりすまし度に応じたセキュリティ強度を上げる処理について説明する。
【0049】
制御部8は、第1の実施形態と同様の方法によって算出したなりすまし度に応じて、照明対応部10や顔向き対応部11が行う補正処理を無効にする。なりすまし度と、無効にする補正機能の関係は、条件DB9に格納されている。図5は、本実施形態に係る条件DBの例を示す図であり、なりすまし度と補正機能の有効・無効の関係を示す図である。本実施形態では、なりすまし度が0でなければ照明対応部10の機能は無効にし、なりすまし度がさらに大きくなれば顔向き対応部11の機能も無効にしている。もっとも、なりすまし度と補正機能の有効・無効の関係は適宜設計することができる。
【0050】
図6は、本実施形態に係る顔認証装置1の動作例を示すフローチャートである。以下、図6を参照して、本実施形態に係る顔認証装置1の動作例について説明する。
【0051】
まず、顔認証装置1は、顔画像の入力を受け付ける(S201)。そして、顔画像に応じた補正処理を行う(S202)。具体的には、顔画像の照明条件に応じて、照明対応部10が入力画像に対してヒストグラム平坦化処理を施す。また、顔画像中の顔の向きに応じて、顔向き対応部11は、特徴量取得部5が取得する特徴量に対してバイアスをかける処理を施す。そして、顔認証部3は、入力された顔と登録されている顔を照合して認証を行う(S203)。照合スコアが判定閾値以上である場合(S204−YES)は、認証が成功したとして処理を終了する(S205)。
【0052】
照合スコアが判定閾値未満である場合(S204−NO)は、連続して認証に失敗した回数が所定の回数以下であるか判定する(S206)。連続して認証に失敗した回数が所定の回数よりも多い場合(S206−NO)は、認証の失敗を確定させて処理を終了させる(S207)。連続して認証に失敗した回数が所定の回数以下であれば(S206−YES)、制御部8が、なりすまし度を算出する(S208)。そして、制御部8がなりすまし度に応じて、照明対応部10および顔向き対応部11の機能の有効・無効を制御し(S209)、ステップS201へ戻る。
【0053】
そして、再び、画像入力・補正処理・認証処理が行われる。ただし、ステップS202において実行される補正処理は、S209で有効と設定された補正処理のみとなる。
【0054】
このような構成によって、第1の実施形態と同様に、なりすましを検知し、なりすましの試行回数が増えるとともに、セキュリティ強度を上げ、なりすましを防止することができる。
【0055】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る顔認証装置1の機能ブロックは、図1で示した第1の実施形態と同様である。
【0056】
本実施形態における顔認証部3は、学習型の認証アルゴリズムを用いており、登録者本人の登録データの特徴空間における領域と、入力画像中の顔の特徴量との距離に基づいて照合スコアを算出する。
【0057】
本実施形態では、制御部8が、なりすまし度に応じて、本人データの特徴空間内での領域を狭くする制御を行うことで、セキュリティ強度を上げる。図7は、特徴空間において本人領域を狭くする制御を説明する概念図である。図7において、黒丸が本人データ、白丸が他人データを表す。このようなデータ分布の場合、通常であれば、実線で示す領域が本人領域になる。しかしながら、制御部8は、なりすまし度に応じて、本人領域を点線で示すような範囲に狭くする。
【0058】
制御部8が、どの程度本人領域の範囲を狭くするかについては、あらかじめ定められていても良く、本人データの分布に応じて決定されても良い。本実施形態では、標準の本人領域の範囲の他に、これよりも狭い2段階(「狭い」「非常に狭い」)の範囲をあらかじめ設定している。
【0059】
図8は、条件DB9に格納される、なりすまし度と採用する特徴空間の対応例を示す図である。図に示すように、なりすまし度が大きくなるにつれて、特徴空間における本人領域の範囲を徐々に狭くする。
【0060】
このように、なりすまし度に応じて、制御部8が本人領域の範囲を狭くすることで、入力された顔画像と登録者の類似度が低く算出され、したがって、セキュリティが厳しくなるのでなりすましが成功してしまうことを防ぐことが可能となる。
【0061】
図9は、本実施形態に係る顔認証装置1の動作例を示すフローチャートである。本実施形態における動作例は第1の実施形態とほぼ同様であるが、ステップS308における、制御部8の制御が、特徴空間における本人領域の範囲をなりすまし度に応じて狭くする処理である点が異なる。
【0062】
このような処理によっても、上記実施形態と同様に、なりすましを検知して、なりすましの試行回数が増えるとともに、セキュリティ強度を上げ、なりすましを防止することができる。
【0063】
(その他)
上記の実施形態では、なりすまし度として、連続して失敗した認証に係る照合スコアの照合スコア最大値からの差(例えば、1000−照合スコア)の合計を用いた。しかしながら、なりすまし度としては、他の方法によって算出した値を用いることができる。
【0064】
たとえば、なりすまし度として、連続して失敗した認証に係る照合スコアと判定閾値との差の合計を用いることもできる。また、なりすまし度として、連続して失敗した認証の回数を用いることができる。また、なりすまし度として、直近の所定回数の認証における、照合スコアと最大スコアの差の合計を用いることもできる。また、なりすまし度として、直近の所定回数の認証における、失敗認証の回数を用いることもできる。また、なりすまし度として、全期間における失敗認証の割合を用いることもできる。
【0065】
また、上記の各実施形態における、判定閾値の変更、補正機能の無効化、特徴空間の制御は、これらの全部または一部を組み合わせて実行することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1および第3の実施形態に係る顔認証装置の機能ブロック例を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る条件DBの例を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る顔認証装置の動作例を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る顔認証装置の機能ブロック例を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る条件DBの例を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る顔認証装置の動作例を示すフローチャートである。
【図7】第3の実施形態における特徴空間制御を説明する概念図である。
【図8】第3の実施形態に係る条件DBの例を示す図である。
【図9】第3の実施形態に係る顔認証装置の動作例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 顔認証装置
2 画像入力部
3 顔認証部
4 顔検出部
5 特徴量取得部
6 照合部
7 登録者DB
8 制御部
9 条件DB
10 照明対応部
11 顔向き対応部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される顔画像中の顔とあらかじめ登録された顔との類似度を示す照合スコアを算出し、算出された照合スコアと閾値との比較によって認証を行う認証手段を有する顔認証装置であって、
認証の失敗履歴に基づいて、前記認証手段のセキュリティ強度を上げる制御を行う制御手段を有することを特徴とする顔認証装置。
【請求項2】
前記制御手段は、連続して認証に失敗した回数に応じて、前記認証手段のセキュリティ強度を上げる
ことを特徴とする請求項1に記載の顔認証装置。
【請求項3】
前記制御手段は、連続して失敗した認証に係る照合スコアに応じて、前記認証手段のセキュリティ強度を上げる
ことを特徴とする請求項1に記載の顔認証装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記認証手段の前記閾値を高くすることによって、前記認証手段のセキュリティ強度を上げる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の顔認証装置。
【請求項5】
前記認証手段は、入力される顔画像の撮影状態に応じた補正を行う補正手段を有し、
前記制御手段は、前記補正手段の機能を無効とすることで、前記認証手段のセキュリティ強度を上げる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の顔認証装置。
【請求項6】
前記認証手段は、学習型の認証アルゴリズムを用いるものであり、
前記制御手段は、登録された顔の特徴空間の範囲を狭めることで、前記認証手段のセキュリティ強度を上げる
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の顔認証装置。
【請求項7】
情報処理装置が、
認証対象者の顔画像の入力を受け付ける画像入力ステップと、
あらかじめ登録された顔との類似度を示す照合スコアを算出する照合スコア算出ステップと、
算出された照合スコアが所定の閾値以上である場合に、認証に成功したと判断する認証ステップと、
認証の失敗履歴に基づいて、前記認証ステップにおけるセキュリティ強度を上げる制御ステップと、
を実行することを特徴とする顔認証方法。
【請求項8】
情報処理装置に対して、
認証対象者の顔画像の入力を受け付ける画像入力ステップと、
あらかじめ登録された顔との類似度を示す照合スコアを算出する照合スコア算出ステップと、
算出された照合スコアが所定の閾値以上である場合に、認証に成功したと判断する認証ステップと、
認証の失敗履歴に基づいて、前記認証ステップにおけるセキュリティ強度を上げる制御ステップと、
を実行させることを特徴とする顔認証プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−191743(P2008−191743A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22791(P2007−22791)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】