顕微鏡システム
【課題】培養容器の結露を検出可能な顕微鏡システムを提供する。
【解決手段】試料を照明する透過照明装置7と、対物レンズ10を含み透過照明装置7で照明された培養容器12内の試料を観察するための観察光学系と、対物レンズ10の瞳面を観察するための瞳面観察光学系と、瞳面観察光学系によって集光した光を検出する光検出部9とを有する顕微鏡1と、光検出部9の検出結果に基づいて、培養容器12に結露が生じているか否かの判定を行う制御装置2とを有する。
【解決手段】試料を照明する透過照明装置7と、対物レンズ10を含み透過照明装置7で照明された培養容器12内の試料を観察するための観察光学系と、対物レンズ10の瞳面を観察するための瞳面観察光学系と、瞳面観察光学系によって集光した光を検出する光検出部9とを有する顕微鏡1と、光検出部9の検出結果に基づいて、培養容器12に結露が生じているか否かの判定を行う制御装置2とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオテクノロジーの著しい進展に伴い、細胞等の生体試料を生かしたままの状態で長時間にわたって観察したい、或いは画像を記録したいという要望が高まっている。細胞は、生存に必要な成分を含んだ培地と呼ばれる液体とともに培養容器に注入し、この培養容器を温度37℃、湿度90%以上、二酸化炭素濃度5%程度に維持されたインキュベータ内に保管することで長時間の生存が可能である。このため昨今では、インキュベータ内に顕微鏡を配置してなる観察装置や、インキュベータ内と同様の環境を維持可能な培養チャンバをステージ上に装着した顕微鏡が提案されており、長時間にわたる観察や画像の記録が可能になっている。
ここで、培養容器を保管するインキュベータ内や培養チャンバ内は高湿度に維持されているため、培養容器に結露が生じてしまう場合がある。このような場合、結露によって照明光が乱され、観察像を劣化させることになってしまう。そこで、培養容器に生じた結露を解消可能な顕微鏡が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−187206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述のような従来の顕微鏡では、培養容器に結露が生じているか否かを確認することは困難であった。具体的には、培養容器がインキュベータや培養チャンバに収納されるため、結露の有無を目視で確認することが困難であった。また、結露は観察像を劣化させるため、観察像の質が著しく悪い場合には培養容器に結露が生じていると推測できるものの、そうでない場合には観察像が結露の影響を受けているか否かを判断することが困難であった。
そこで本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、培養容器の結露を検出可能な顕微鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、
試料を照明する透過照明装置と、対物レンズを含み前記透過照明装置で照明された培養容器内の前記試料を観察するための観察光学系と、前記対物レンズの瞳面を観察するための瞳面観察光学系と、前記瞳面観察光学系によって集光した光を検出する光検出部とを有する顕微鏡と、
前記光検出部の検出結果に基づいて、前記培養容器に結露が生じているか否かの判定を行う制御装置と、
を有することを特徴とする顕微鏡システムを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、培養容器の結露を検出可能な顕微鏡システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態に係る顕微鏡システムの構成を示す図である。
【図2】(a)は本発明の第1実施形態における顕微鏡の培養チャンバの構成(蓋体を開いた様子)を示す図であり、(b)は培養容器の構成と結露が生じている様子を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態における顕微鏡の光学系の構成、及び輪帯絞りと位相膜の構成を示す図である。
【図4】(a)は培養容器に結露が生じていない場合の対物レンズの瞳面の状態(瞳面画像)を示す図、(b)は(a)と同様の場合に瞳面に形成される輪帯絞りの像を示す図、(c)は瞳面上に配置されている位相膜を示す図である。
【図5】(a)は培養容器に結露が生じている場合の対物レンズの瞳面画像を示す図、(b)は(a)と同様の場合に瞳面に形成される輪帯絞りの像を示す図である。
【図6】(a)は培養容器に結露が生じていない場合の重ね合わせ画像を示す図、(b)は培養容器に結露が生じている場合の重ね合わせ画像を示す図、(c)はマスク画像を示す図である。
【図7】重ね合わせ画像の輝度総和と位相差観察画像のコントラストとの相関を示すグラフである。
【図8】本発明の第1実施形態に係る顕微鏡システムで実行される結露検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1実施形態に係る顕微鏡システムで実行されるタイムラプス自動開始ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態における顕微鏡の光学系の構成、及び遮光板の構成を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る顕微鏡システムで実行される結露検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図12】本発明の第2実施形態に係る顕微鏡システムで実行されるタイムラプス自動開始ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の各実施形態に係る顕微鏡システムを添付図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
はじめに、本実施形態に係る顕微鏡システムの全体的な構成について説明する。
図1に示すように本実施形態に係る顕微鏡システムは、顕微鏡1、パーソナルコンピュータ(PC)2、及び後述する培養チャンバ3内の温度を調節するための温調コントローラ4を有し、これらは電気的に接続されている。
顕微鏡1は、試料の屈折力差や厚み等によって生じる位相差を光の強弱であるコントラストに変換して像の明暗として可視化することで、無色透明な試料の像を観察するための位相差顕微鏡である。この顕微鏡1は、顕微鏡本体5、顕微鏡本体5に備えられたステージ6、ステージ6上に設置された培養チャンバ3、ステージ6の上方に配置された透過照明装置7、ステージ6の下方に配置された対物切替装置8、及び顕微鏡本体5の側方に配置されたカメラ9を有する。
対物切替装置8は、複数の対物レンズ10を切り替え可能に保持している。なお、対物レンズ10は、顕微鏡本体5に内蔵されている不図示のフォーカシング機構によって対物切替装置8とともに上下動可能である。
顕微鏡本体5には、ステージ6、対物切替装置8、後述するベルトランレンズ11等をはじめとする各電動要素を制御するための顕微鏡制御部(不図示)が備えられている。
カメラ9は、撮像素子としてCCDを内蔵している。
【0009】
培養チャンバ3は、生細胞や微生物等の試料及び培地を注入した培養容器12を収納して当該試料を培養するものであり、図2(a)に示すように上面が開放された中空で箱形のチャンバ本体3aと、チャンバ本体3aの上面を気密に覆う方形の蓋体3bとを有する。なお、チャンバ本体3aの底面及び蓋体3bにおける培養容器12と対向する部分は、ガラス等の光透過部材で構成されている。
培養チャンバ3には、不図示の空調装置に接続された供給チューブ13a及び排出チューブ13bが接続されている。このため、温度、湿度、成分等を調整した調整空気(例えば、二酸化炭素濃度5%程度の加湿空気)を空調装置から培養チャンバ3内へ供給したり、培養チャンバ3内の空気を外部へ排出することができる。
【0010】
また、培養チャンバ3内には、培養チャンバ3内の温度を測定するための不図示の温度センサ、培養チャンバ3内を加温するためのヒータ14が備えられている。このため、温度センサで得られた情報に基づいて温調コントローラ4がヒータ14の駆動を制御し、培養チャンバ3内の温度を所定値(例えば、37℃)に維持することができる。
斯かる構成によって培養チャンバ3は、試料に好適な培養環境を当該培養チャンバ3内に実現し、これを維持することができる。なお、培養チャンバ3内には、培養チャンバ3内の空気を循環させるためのファン16も備えられている。
ここで、本実施形態における培養容器12は、図2(b)に示すように、ガラス等の光透過性材料からなり上面が開放された中空で略円柱状のシャーレ12aと、シャーレ12aの上面を覆う蓋12bとからなり、試料15及び培地15aを注入して用いられる。
【0011】
次に、本実施形態における顕微鏡1の光学系の構成について説明する。
図3に示すように、顕微鏡1の透過照明装置7は、ステージ6側から順に、コンデンサレンズ18、リング形状の開口を有する輪帯絞り19、拡散板20、コレクタレンズ21、及び光源22を備えている。なお、輪帯絞り19は、対物レンズ10の瞳面に対して共役な位置に配置されている。また輪帯絞り19は、開口の径が異なるものが複数用意されており、使用する対物レンズ10に応じて適宜変更することが可能である。
対物レンズ10は、該対物レンズ10の瞳面にリング形状の位相膜を備えている。
顕微鏡本体5は、ステージ6側から順に、ベルトランレンズ11、結像レンズ23、及び全反射ミラー24を備えている。なお、ベルトランレンズ11は、後述のように対物レンズ10の瞳面を観察する際に用いられるものであって、不図示の移動機構が備えられており、これによって光路内へ挿脱することが可能である。
【0012】
斯かる構成の下、光源22からの光は、コレクタレンズ21で略平行光束とされ、拡散板20を経た後、輪帯絞り19で制限される。輪帯絞り19を通過した光は、コンデンサレンズ18で集光され、ステージ6上の培養チャンバ3に収納されている培養容器12内の試料15に照射される。これにより、試料15を透過した直接光(0次の回折光)は、対物レンズ10に入射し、位相膜10aを透過することで位相が変換されるとともに減光される。一方、試料15によって回折された回折光(直接光に対して位相がずれた0次以外の回折光)は、対物レンズ10に入射し、位相膜10a以外の部分を透過する。斯かる直接光と回折光は、結像レンズ23及び全反射ミラー24を介して結像され、カメラ9の撮像面9a上で干渉して試料15の拡大像を形成する。これがカメラ9によって撮影され、PC2のモニタ2a上には試料15の画像(位相差観察画像)が表示されることとなる。このようにして使用者は、試料15を培養チャンバ3内で培養しながら位相差観察を行うことができる。なお、位相差観察についての原理は、例えば応用光学1(倍風館、1990、鶴田匡夫、P.256-259 位相差法)等に記載されている。
また、本実施形態における顕微鏡1では、顕微鏡本体5内のベルトランレンズ11を光路内へ挿入した場合、図3中に点線で示すように、対物レンズ10の瞳の像をカメラ9の撮像面9a上に形成することができ、これをカメラ9で撮像することができる。
【0013】
ここで、本実施形態に係る顕微鏡システムにおいて培養容器12に生じる結露、結露が位相差観察に与える影響、及び結露の検出方法について説明する。
通常、試料15及び培地15aを注入した培養容器12は、本顕微鏡システムとは別に用意された不図示のインキュベータに保管されており、このインキュベータの内部は、例えば温度37℃、湿度90%以上、二酸化炭素濃度5%程度に維持されている。このため、使用者は観察に際してインキュベータから培養容器12を取り出し、顕微鏡1の培養チャンバ3内に設置することとなる。したがって、培養容器12はインキュベータから取り出されたときに室温(25℃程度)の環境下にさらされるため、培養容器12内の高湿度の空気が冷却されて結露が生じてしまう。特に、図2(b)に示すように培養容器12の蓋12bの裏面に多量の結露が生じてしまう。なお、予め培養チャンバ3内をインキュベータ内と同等の環境に維持していても、培養チャンバ3の蓋体3bを開いた瞬間に室温の空気が培養チャンバ3内に流入してしまう。このため、培養チャンバ3内の温度が下がり、このような培養チャンバ3内に培養容器12を設置して蓋体3bを閉じても、結露の生じやすい状況がしばらく続くこととなる。
【0014】
本実施形態における顕微鏡1では、上述のように顕微鏡本体5内のベルトランレンズ11を光路内へ挿入することで対物レンズ10の瞳の像(以下、「瞳面画像」という)をカメラ9で撮影することができ、これによって対物レンズ10の瞳面の状態を観察することができる。
培養容器12に結露が生じていない場合、光源22より射出され、輪帯絞り19を介して培養容器12内の試料15を透過した直接光は、図4(b)に示すように対物レンズ10の瞳面上に輪郭の明瞭な輪帯絞り19の像(投影像)を形成することとなる。このとき、ベルトランレンズ11を光路内へ挿入して瞳面画像を撮影すれば、図4(a)に示すように直接光の全てが、対物レンズ10の瞳面上に配置された図4(c)に示す位相膜10aに適切に入射し、減光されていることがわかる。
【0015】
一方、培養容器12に結露が生じている場合には、光源22より射出され、輪帯絞り19を介して培養容器12へ入射した光は、培養容器12の蓋12bの結露によって散乱してしまう。このため、試料15を透過した直接光は、図5(b)に示すように対物レンズ10の瞳面上に輪郭の不明瞭な輪帯絞り19の像を形成することとなる。このとき、ベルトランレンズ11を光路内へ挿入して瞳面画像を撮影すれば、図5(a)に示すように瞳面が明るくなり、直接光の一部が位相膜10aに入射できずに迷光となっていることがわかる。そしてこの迷光は、位相差観察画像のコントラストの劣化を招くこととなってしまう。
【0016】
本顕微鏡システムは、対物レンズ10の瞳面上に生じる迷光を検出することによって、培養容器12の結露の有無を検出するものである。
上述のように迷光は、試料15からの直接光のうち、対物レンズ10の瞳面上の位相膜10aに入射しない光である。そこで、培養容器12に結露が生じていない場合に対物レンズ10の瞳面上に形成される輪帯絞り19の像を適切に覆う、黒塗りでリング形状のマスクを描いた図6(c)に示すような画像(以下、「マスク画像」という)をPC2で予め作成しておく。そして、PC2の画像処理により、ベルトランレンズ11を光路内へ挿入して撮影された瞳面画像に当該マスク画像を重ね合わせ、この重ね合わせ画像の各画素の輝度値の総和(以下、「重ね合わせ画像の輝度総和」という)を算出する。重ね合わせ画像の輝度総和は対物レンズ10の瞳面上に生じた迷光の合計を示すものであるため、PC2は当該輝度総和の大きさから迷光の有無を検出することができ、即ち培養容器12の結露の有無を検出することができる。
【0017】
具体的には、培養容器12に結露が生じていない場合、例えば図4(a)に示す瞳面画像に図6(c)のマスク画像を重ね合わせると、図6(a)に示すように対物レンズ10の瞳面上に形成される輪帯絞り19の像はマスクで略完全に覆われ、マスクから光が漏れることはない。このため、重ね合わせ画像の輝度総和は非常に小さな値となり、これによって対物レンズ10の瞳面上に迷光が生じていない、即ち培養容器12に結露が生じていないことがわかる。
一方、培養容器12に結露が生じている場合には、例えば図5(a)に示す瞳面画像に図6(c)のマスク画像を重ね合わせると、図6(b)に示すようにマスクから光が漏れてしまうことになる。このため、重ね合わせ画像の輝度総和は大きな値となり、これによって対物レンズ10の瞳面上に迷光が生じている、即ち培養容器12に結露が生じていることがわかる。
【0018】
なお、上述したマスク画像は、顕微鏡1の光学系を構成する各光学要素に基づいてPC2で予め作成されるものである。ただし、マスク画像におけるマスクの幅は、対物レンズ10の瞳面上に形成される輪帯絞り19の計算上の投影像よりも少し大きく設定されることが望ましい。これにより、マスクと輪帯絞り19の投影像の位置決め誤差による影響を防止することができる。本実施形態では、マスクの直径や幅は実質的に対物レンズ10の位相膜の直径や幅に相当している。また、本実施形態では、マスクの直径や幅の異なる複数のマスク画像がPC2の記憶部(不図示)に予め保存されており、使用する対物レンズ10や輪帯絞り19に合わせて適宜選択して使用される。
【0019】
ここで、上述の重ね合わせ画像の輝度総和は、次の手順によって得られる指標値に基づいて定量的に評価することができる。
試料15として所定のパターンを有する位相物体(評価用試料)を用い、培養容器12を結露させた状態で評価用試料の位相差観察画像を撮影し、撮影した位相差観察画像のコントラストを算出する。またこのとき、上述の方法によって重ね合わせ画像の輝度総和を算出する。そして、これらの作業を培養容器12の結露量を変化させながら繰り返し実施することで、図7に示すように重ね合わせ画像の輝度総和と位相差観察画像のコントラストとの相関を示すグラフを作成することができる。そしてこのグラフより、位相差観察画像が観察に好適なコントラストとなるような輝度総和の範囲を検討し、その範囲を規定する輝度総和の値を指標値として採用する。具体的に本実施形態では、図7に示すように位相差観察画像のコントラストが90〜100%となる輝度総和の範囲を位相差観察に好適な範囲とする、即ち培養容器12に結露が生じていないと判定できるように、コントラストが90%となる輝度総和の値を指標値として採用している。
【0020】
以上より、重ね合わせ画像の輝度総和と前述のようにして得られた指標値との大小関係を確認することで、当該輝度総和を評価し、培養容器12に結露が生じているか否かの判定を行うことができる。
なお、上述した位相差観察画像のコントラストは、位相差観察画像において隣り合う画素の輝度値の差を積分する等の公知の方法によって算出することが可能である。
また、上述した重ね合わせ画像の輝度総和として、重ね合わせ画像の輝度総和を透過照明装置7で使用する光源22の輝度で除した値を用いることが望ましい。これにより、使用する光源22の明るさに応じて指標値が変化することを防ぎ、明るさの異なる光源を使用する場合にも共通の指標値を採用することが可能となる。
【0021】
本実施形態に係る顕微鏡システムは、以上に述べた結露の検出方法を実現するための、図8に示し以下に詳述する結露検出ルーチンを実行可能に構成されている。
結露検出ルーチンは、使用者が結露検出ルーチンの開始の指示をPC2へ入力することによって開始される。なお、使用者は、結露検出ルーチンを実行するにあたり、予め培養容器12を培養チャンバ3に設置し、使用する対物レンズ10や透過照明装置7の輪帯絞り19の情報をPC2へ設定入力しておく。
ステップS1:PC2内のCPU(不図示)が、顕微鏡本体5内の顕微鏡制御部を介してベルトランレンズ11を光路内へ挿入し、カメラ9に瞳面画像を撮影させる。
ステップS2:CPUが、上述のように予め使用者が設定入力した対物レンズ10及び輪帯絞り19の情報に基づいてマスク画像を選択する。
【0022】
ステップS3:CPUが、マスク画像を瞳面画像に重ね合わせる画像処理を行い、重ね合わせ画像の輝度総和を算出する。
ステップS4:CPUが、重ね合わせ画像の輝度総和が上述の指標値以下であるか否かを判定する。重ね合わせ画像の輝度総和が指標値以下である場合はステップS6へ進み、そうでない場合はステップS5へ進む。
ステップS5:CPUがPC2のモニタ2aに文字情報「結露あり・観察NG」を表示させ、ステップS3へ戻る。
ステップS6:CPUがPC2のモニタ2aに文字情報「結露なし・観察OK」を表示させる。
ステップS7:CPUが顕微鏡制御部を介してベルトランレンズ11を光路外へ退避させ、結露検出ルーチンが終了する。
【0023】
以上、本実施形態に係る顕微鏡システムは、結露検出ルーチンを実行することにより、培養容器12に結露が生じているか否かを容易に判定することができ、さらに結露が生じていた場合には、結露が解消されるまでの間、継続して結露が解消されたか否かを判定することができる。詳細には、培養容器12に結露が生じていた場合には、PC2のモニタ2aに文字情報「結露あり・観察NG」を表示し続け、結露が解消し次第、モニタ2aに文字情報「結露なし・観察OK」を表示して結露検出が完了することとなる。
なお、培養容器12に結露が生じていた場合、培養チャンバ3内の環境が安定すれば、培養容器12のシャーレ12aと蓋12bの隙間から空気が流通することによって結露は解消される。このとき、本実施形態では培養チャンバ3内のファン16を駆動し、培養チャンバ3内の空気を循環させて培養容器12内へ積極的に流通させることにより、結露を解消することが望ましい。また、ヒータ14を高温作動(通常よりも高い設定温度で作動)させ、培養チャンバ3内の空気を暖めることにより、結露を解消することが望ましい。このように、ファン16やヒータ14を、結露を解消するための結露解消部として使用することにより、結露の解消時間を効果的に短縮化することができる。このことは、後述する第2実施形態の結露検出ルーチンにおいても同様である。
【0024】
また、上記結露検出ルーチンは、使用者が所望のタイミングで実行することができるという利点を備えている。なお、結露検出ルーチンにおけるステップS1及びステップS7のベルトランレンズ11の光路内への挿脱は、使用者が手動で実施する構成としてもよい。
また、結露検出ルーチンは、ステップS5を実行後、ステップS3へ戻る構成であるが、ステップS5を実行後、ステップS7へ進む構成としてもよい。このような構成にすれば、培養容器12に結露が生じていた場合でも、結露が解消したか否かに関わらず、結露検出ルーチンが完了することとなり、単に培養容器12の結露の有無の判定のみを行う結露検出ルーチンを実現することができる。このことは、後述する第2実施形態の結露検出ルーチンにおいても同様である。そして、斯かる培養容器12の結露の有無の判定のみを行う結露検出ルーチンは、タイムラプス撮影と組み合わせることも可能である。具体的には、タイムラプス撮影において所定時間毎に実施される撮影の度に先んじて結露の有無の判定を実施し、培養容器12に結露が生じていない場合の撮影画像のみを記録する構成のタイムラプス撮影ルーチンを実現することも可能である。
【0025】
また、本実施形態に係る顕微鏡システムは、上記結露検出ルーチンを応用した、図9に示し以下に詳述するタイムラプス自動開始ルーチンを実行可能に構成されている。
タイムラプス自動開始ルーチンは、使用者がタイムラプス自動開始ルーチンの開始の指示をPC2へ入力することによって開始される。なお、使用者は、タイムラプス自動開始ルーチンを実行するにあたり、予め培養容器12を培養チャンバ3に設置しておき、使用する対物レンズ10や輪帯絞り19の情報に加えて、タイムラプス撮影の撮影条件(露光、シャッタスピード、インターバルタイム、撮影回数、総時間等)、試料15の撮影ポイントをPC2へ設定入力しておく。
ステップP1:上記結露検出ルーチンのステップS1と同様。
ステップP2:上記結露検出ルーチンのステップS2と同様。
ステップP3:上記結露検出ルーチンのステップS3と同様。
ステップP4:上記結露検出ルーチンのステップS4と同様。
【0026】
ステップP5:CPUが顕微鏡制御部を介して培養チャンバ3内のファン16を駆動し、ステップP3へ戻る。
ステップP6:CPUが、ファン16が駆動中であるか否かを確認する。ファン16が駆動中である場合はステップP7へ進み、ファン16が駆動中でない場合にはステップP8へ進む。
ステップP7:CPUが顕微鏡制御部を介してファン16の駆動を終了させる。
ステップP8:上記結露検出ルーチンのステップS7と同様。
ステップP9:CPUが、上述のように予め使用者が設定入力した撮影条件等に基づいてタイムラプス撮影を実行し、タイムラプス撮影の完了により本タイムラプス自動開始ルーチンが終了する。
【0027】
以上、本実施形態に係る顕微鏡システムは、タイムラプス自動開始ルーチンを実行することにより、培養容器12に結露が生じているか否かを容易に判定し、タイムラプス撮影を自動的に実行することができる。特に、培養容器12に結露が生じていた場合には、ファン16を駆動して短時間で結露を解消し、遅滞なくタイムラプス撮影を自動的に実行することができる。なお、ファン16の駆動は、タイムラプス撮影の開始前に終了するため、ファン16で発生する振動がタイムラプス撮影に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
上記タイムラプス自動開始ルーチンは、結露解消部としてファン16を駆動する構成であるが、これに限られず、ヒータ14を高温作動して結露を解消する構成、或いはファン16の駆動とヒータ14の高温作動の両方によって結露を解消する構成とすることもできる。また、タイムラプス自動開始ルーチンは、ステップP5においてファン16を一定時間だけ駆動するようにし、ステップP6とステップP7を省略する構成としてもよい。これらのことは、後述する第2実施形態のタイムラプス自動開始ルーチンにおいても同様である。
【0028】
なお、本実施形態に係る顕微鏡システムは、上述のようにベルトランレンズ11を用いて対物レンズ10の瞳面画像を撮影し、PC2の画像処理によって瞳面画像にマスク画像を重ね合わせ、重ね合わせ画像の輝度総和に基づいて結露の有無の判定を行っている。しかしながらこれに限られず、対物レンズ10の瞳面画像のみを用いて結露の有無の判定を行う構成とすることも可能である。具体的には、対物レンズ10の瞳面画像について、中心の画素を含むように横一列分の画素の輝度分布データを求める。そして輝度分布データをPC2で微分処理及び積分処理して得られるデータを、所定の閾値データと比較することで結露の有無の判定を行うことが可能である。
【0029】
(第2実施形態)
本実施形態に係る顕微鏡システムについて、上記第1実施形態と同様の部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡システムは、第1実施形態におけるベルトランレンズ11の代わりに、後述する迷光検出光学系30を顕微鏡31に備えており、これによって対物レンズ10の瞳面の迷光を直接検出するものである。
本実施形態に係る顕微鏡システムは、上記第1実施形態と同様に、顕微鏡31、PC2、及び温調コントローラ4を有する。
図10に示すように、顕微鏡31における迷光検出光学系30は、ハーフミラー32、結像レンズ33aと再結像レンズ33bからなるリレー光学系33、遮光板35、及び光量センサ36を有する。なお、ハーフミラー32は、対物レンズ10と結像レンズ23の間に配置されている。
【0030】
遮光板35は、ガラス等の光透過性材料からなる板状部材であって、リング形状の遮光部を備えている。なお、遮光板35は対物レンズ10の瞳面と共役な位置である、リレー光学系33の一次結像面に配置されている。また、遮光板35の遮光部は、培養容器12に結露が生じていない場合に一次結像面に形成される輪帯絞り19の像を適切に覆うように、顕微鏡31の各光学要素に基づいて設計されている。ただし、遮光部の幅は、一次結像面に形成される輪帯絞り19の計算上の投影像よりも少し大きく設定されることが望ましい。これにより、遮光部と輪帯絞り19の投影像の位置決め誤差による影響を防止することができる。なお、本実施形態では、遮光部の直径や幅の異なる複数の遮光板35が用意されており、使用する対物レンズ10や輪帯絞り19に合わせて適宜切り替えて使用される。
【0031】
斯かる構成の迷光検出光学系30を有する顕微鏡31において、培養容器12に結露が生じていない場合、光源22より射出され、輪帯絞り19を介して培養容器12内の試料15を透過した直接光は、上記第1実施形態の図4(b)に示すような輪郭の明瞭な輪帯絞り19の像を対物レンズ10の瞳面上に形成して位相膜10aに入射する。位相膜10aを透過した直接光は、その一部がハーフミラー32で反射され、結像レンズ33aを介して一次結像面上に輪郭の明瞭な輪帯絞り19の像を再度形成し、一次結像面上の遮光板35の遮光部に入射して遮光される。このため、光量センサ36で検出される光量は非常に小さな値となり、これによって対物レンズ10の瞳面上に迷光が生じていない、即ち培養容器12に結露が生じていないことがわかる。
【0032】
一方、培養容器12に結露が生じている場合には、光源22より射出され、輪帯絞り19を介して培養容器12へ入射した光は、培養容器12の蓋12bの結露によって散乱する。このため、試料15を透過した直接光は、上記第1実施形態の図5(b)に示すような輪郭の不明瞭な輪帯絞り19の像を対物レンズ10の瞳面上に形成し、当該直接光の一部は位相膜10aに入射できずに迷光となってしまう。したがって、この迷光と位相膜10aを透過した直接光とは、ハーフミラー32でそれぞれの一部が反射され、結像レンズ33aを介して一次結像面上に輪郭の不明瞭な輪帯絞り19の像を再度形成し、位相膜10aを透過した直接光のみが一次結像面上の遮光板35の遮光部に入射して遮光される。したがって、迷光は遮光板35を通過し、再結像レンズ33bを介して光量センサ36で検出されることとなる。このため、光量センサ36で検出される光量は非常に大きな値となり、これによって対物レンズ10の瞳面上に迷光が生じている、即ち培養容器12に結露が生じていることがわかる。
なお、培養容器12の結露の有無に関わらず、試料15からの回折光はその一部がハーフミラー32で反射され、光量センサ36まで達して検出されるものの、光量が小さいため迷光の検出に影響を及ぼすことがない。
【0033】
ここで、以上のように光量センサ36で検出された光量は、上記第1実施形態で述べた重ね合わせ画像の輝度総和の指標値を得るための手順を準用して得られる光量の指標値に基づいて定量的に評価することが可能であり、これによって培養容器12に結露が生じているか否かの判定を行うことができる。
【0034】
上記構成の下、本実施形態に係る顕微鏡システムは、図11に示し以下に詳述する結露検出ルーチンを実行可能に構成されている。
結露検出ルーチンは、使用者が結露検出ルーチンの開始の指示をPC2へ入力することによって開始される。なお、使用者は、結露検出ルーチンを実行するにあたり、予め培養容器12を培養チャンバ3に設置し、使用する対物レンズ10や透過照明装置7の輪帯絞り19に応じて遮光板35を選択して光路内へ挿入しておく。
ステップT1:CPUが顕微鏡制御部を介して光量センサ36に光量を検出させる。
ステップT2:CPUが、光量センサ36で検出された光量の値が上述の指標値以下であるか否かを判定する。前記光量の値が指標値以下である場合はステップT4へ進み、そうでない場合はステップT3へ進む。
【0035】
ステップT3:CPUがPC2のモニタ2aに文字情報「結露あり・観察NG」を表示させ、ステップT1へ戻る。
ステップT4:CPUがPC2のモニタ2aに文字情報「結露なし・観察OK」を表示させる。
ステップT5:CPUが使用者によって結露検出ルーチンの終了の指示がPC2へ入力されているか否かを確認する。使用者によって結露検出ルーチンの終了の指示がPC2へ入力されている場合は結露検出ルーチンを終了し、そうでない場合はステップT1へ戻る。
【0036】
以上より、本実施形態に係る顕微鏡システムは、上記結露検出ルーチンを実行することにより、上記第1実施形態の結露検出ルーチンと同様の効果を奏することができる。
また、上記結露検出ルーチンは、結露の検出を常時行うことができるという利点を備えている。このため使用者は、観察中に結露が生じた際に迅速に観察を中断したり、結露が解消した際に迅速に観察を開始することが可能となる。
なお、本実施形態における顕微鏡31は、ハーフミラー32の代わりに、光路内へ挿脱可能な全反射ミラーを備える構成とすることもできる。この構成により、上記第1実施形態と同様に使用者の所望のタイミングで結露検出を行うことが可能な顕微鏡システムを実現することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る顕微鏡システムは、上記結露検出ルーチンを応用した、図12に示し以下に詳述するタイムラプス自動開始ルーチンを実行可能に構成されている。
タイムラプス自動開始ルーチンは、使用者がタイムラプス自動開始ルーチンの開始の指示をPC2へ入力することによって開始される。なお、使用者は、タイムラプス自動開始ルーチンを実行するにあたり、予め培養容器12を培養チャンバ3に設置し、使用する対物レンズ10や輪帯絞り19に応じて遮光板35を選択して光路内へ挿入しておき、タイムラプス撮影の撮影条件(露光、シャッタスピード、インターバルタイム、撮影回数、総時間等)、試料15の撮影ポイントをPC2へ設定入力しておく。
【0038】
ステップQ1:上記結露検出ルーチンのステップT1と同様。
ステップQ2:上記結露検出ルーチンのステップT2と同様。
ステップQ3:CPUが顕微鏡制御部を介して培養チャンバ3内のファン16を駆動し、ステップQ1へ戻る。
ステップQ4:CPUが、ファン16が駆動中であるか否かを確認する。ファン16が駆動中である場合はステップQ5へ進み、ファン16が駆動中でない場合にはステップQ6へ進む。
ステップQ5:CPUが顕微鏡制御部を介してファン16の駆動を終了させる。
ステップQ6:CPUが、上述のように予め使用者が設定入力した撮影条件等に基づいてタイムラプス撮影を実行し、タイムラプス撮影の完了により本タイムラプス自動開始ルーチンが終了する。
【0039】
以上、本実施形態に係る顕微鏡システムは、タイムラプス自動開始ルーチンを実行することにより、上記第1実施形態のタイムラプス自動開始ルーチンと同様の効果を奏することができる。
【0040】
以上に述べた各実施形態によれば、位相差観察画像の像質に直接関与する対物レンズ10の瞳面の明るさの情報(瞳面の迷光の輝度値又は光量値)に基づいて、培養容器12の結露を正確に検出することが可能な顕微鏡システムを提供することができる。
なお、上記各実施形態における顕微鏡1,31は、培養チャンバ3をステージ6上に設置したものを例示しているが、本発明はこれに限られずインキュベータ内に顕微鏡を配置してなる観察装置に適用することも勿論可能である。
また、本発明は上記各実施形態のように位相差観察法を行う顕微鏡に限られず、対物レンズの瞳面に配置した光学素子と、照明光学系におけるその共役位置に配置した絞り等を利用し、光の位相差をコントラストに変換する観察法(例えば、ホフマンモジュレーションコントラスト法)を行う顕微鏡等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1,31 顕微鏡
2 PC
3 培養チャンバ
4 温調コントローラ
5 顕微鏡本体
7 透過照明装置
9 カメラ
10 対物レンズ
10a 位相膜
11 ベルトランレンズ
12 培養容器
14 ヒータ
15 試料
16 ファン
19 輪帯絞り
30 迷光検出光学系
36 光量センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオテクノロジーの著しい進展に伴い、細胞等の生体試料を生かしたままの状態で長時間にわたって観察したい、或いは画像を記録したいという要望が高まっている。細胞は、生存に必要な成分を含んだ培地と呼ばれる液体とともに培養容器に注入し、この培養容器を温度37℃、湿度90%以上、二酸化炭素濃度5%程度に維持されたインキュベータ内に保管することで長時間の生存が可能である。このため昨今では、インキュベータ内に顕微鏡を配置してなる観察装置や、インキュベータ内と同様の環境を維持可能な培養チャンバをステージ上に装着した顕微鏡が提案されており、長時間にわたる観察や画像の記録が可能になっている。
ここで、培養容器を保管するインキュベータ内や培養チャンバ内は高湿度に維持されているため、培養容器に結露が生じてしまう場合がある。このような場合、結露によって照明光が乱され、観察像を劣化させることになってしまう。そこで、培養容器に生じた結露を解消可能な顕微鏡が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−187206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述のような従来の顕微鏡では、培養容器に結露が生じているか否かを確認することは困難であった。具体的には、培養容器がインキュベータや培養チャンバに収納されるため、結露の有無を目視で確認することが困難であった。また、結露は観察像を劣化させるため、観察像の質が著しく悪い場合には培養容器に結露が生じていると推測できるものの、そうでない場合には観察像が結露の影響を受けているか否かを判断することが困難であった。
そこで本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、培養容器の結露を検出可能な顕微鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、
試料を照明する透過照明装置と、対物レンズを含み前記透過照明装置で照明された培養容器内の前記試料を観察するための観察光学系と、前記対物レンズの瞳面を観察するための瞳面観察光学系と、前記瞳面観察光学系によって集光した光を検出する光検出部とを有する顕微鏡と、
前記光検出部の検出結果に基づいて、前記培養容器に結露が生じているか否かの判定を行う制御装置と、
を有することを特徴とする顕微鏡システムを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、培養容器の結露を検出可能な顕微鏡システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態に係る顕微鏡システムの構成を示す図である。
【図2】(a)は本発明の第1実施形態における顕微鏡の培養チャンバの構成(蓋体を開いた様子)を示す図であり、(b)は培養容器の構成と結露が生じている様子を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態における顕微鏡の光学系の構成、及び輪帯絞りと位相膜の構成を示す図である。
【図4】(a)は培養容器に結露が生じていない場合の対物レンズの瞳面の状態(瞳面画像)を示す図、(b)は(a)と同様の場合に瞳面に形成される輪帯絞りの像を示す図、(c)は瞳面上に配置されている位相膜を示す図である。
【図5】(a)は培養容器に結露が生じている場合の対物レンズの瞳面画像を示す図、(b)は(a)と同様の場合に瞳面に形成される輪帯絞りの像を示す図である。
【図6】(a)は培養容器に結露が生じていない場合の重ね合わせ画像を示す図、(b)は培養容器に結露が生じている場合の重ね合わせ画像を示す図、(c)はマスク画像を示す図である。
【図7】重ね合わせ画像の輝度総和と位相差観察画像のコントラストとの相関を示すグラフである。
【図8】本発明の第1実施形態に係る顕微鏡システムで実行される結露検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1実施形態に係る顕微鏡システムで実行されるタイムラプス自動開始ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態における顕微鏡の光学系の構成、及び遮光板の構成を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る顕微鏡システムで実行される結露検出ルーチンを示すフローチャートである。
【図12】本発明の第2実施形態に係る顕微鏡システムで実行されるタイムラプス自動開始ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の各実施形態に係る顕微鏡システムを添付図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
はじめに、本実施形態に係る顕微鏡システムの全体的な構成について説明する。
図1に示すように本実施形態に係る顕微鏡システムは、顕微鏡1、パーソナルコンピュータ(PC)2、及び後述する培養チャンバ3内の温度を調節するための温調コントローラ4を有し、これらは電気的に接続されている。
顕微鏡1は、試料の屈折力差や厚み等によって生じる位相差を光の強弱であるコントラストに変換して像の明暗として可視化することで、無色透明な試料の像を観察するための位相差顕微鏡である。この顕微鏡1は、顕微鏡本体5、顕微鏡本体5に備えられたステージ6、ステージ6上に設置された培養チャンバ3、ステージ6の上方に配置された透過照明装置7、ステージ6の下方に配置された対物切替装置8、及び顕微鏡本体5の側方に配置されたカメラ9を有する。
対物切替装置8は、複数の対物レンズ10を切り替え可能に保持している。なお、対物レンズ10は、顕微鏡本体5に内蔵されている不図示のフォーカシング機構によって対物切替装置8とともに上下動可能である。
顕微鏡本体5には、ステージ6、対物切替装置8、後述するベルトランレンズ11等をはじめとする各電動要素を制御するための顕微鏡制御部(不図示)が備えられている。
カメラ9は、撮像素子としてCCDを内蔵している。
【0009】
培養チャンバ3は、生細胞や微生物等の試料及び培地を注入した培養容器12を収納して当該試料を培養するものであり、図2(a)に示すように上面が開放された中空で箱形のチャンバ本体3aと、チャンバ本体3aの上面を気密に覆う方形の蓋体3bとを有する。なお、チャンバ本体3aの底面及び蓋体3bにおける培養容器12と対向する部分は、ガラス等の光透過部材で構成されている。
培養チャンバ3には、不図示の空調装置に接続された供給チューブ13a及び排出チューブ13bが接続されている。このため、温度、湿度、成分等を調整した調整空気(例えば、二酸化炭素濃度5%程度の加湿空気)を空調装置から培養チャンバ3内へ供給したり、培養チャンバ3内の空気を外部へ排出することができる。
【0010】
また、培養チャンバ3内には、培養チャンバ3内の温度を測定するための不図示の温度センサ、培養チャンバ3内を加温するためのヒータ14が備えられている。このため、温度センサで得られた情報に基づいて温調コントローラ4がヒータ14の駆動を制御し、培養チャンバ3内の温度を所定値(例えば、37℃)に維持することができる。
斯かる構成によって培養チャンバ3は、試料に好適な培養環境を当該培養チャンバ3内に実現し、これを維持することができる。なお、培養チャンバ3内には、培養チャンバ3内の空気を循環させるためのファン16も備えられている。
ここで、本実施形態における培養容器12は、図2(b)に示すように、ガラス等の光透過性材料からなり上面が開放された中空で略円柱状のシャーレ12aと、シャーレ12aの上面を覆う蓋12bとからなり、試料15及び培地15aを注入して用いられる。
【0011】
次に、本実施形態における顕微鏡1の光学系の構成について説明する。
図3に示すように、顕微鏡1の透過照明装置7は、ステージ6側から順に、コンデンサレンズ18、リング形状の開口を有する輪帯絞り19、拡散板20、コレクタレンズ21、及び光源22を備えている。なお、輪帯絞り19は、対物レンズ10の瞳面に対して共役な位置に配置されている。また輪帯絞り19は、開口の径が異なるものが複数用意されており、使用する対物レンズ10に応じて適宜変更することが可能である。
対物レンズ10は、該対物レンズ10の瞳面にリング形状の位相膜を備えている。
顕微鏡本体5は、ステージ6側から順に、ベルトランレンズ11、結像レンズ23、及び全反射ミラー24を備えている。なお、ベルトランレンズ11は、後述のように対物レンズ10の瞳面を観察する際に用いられるものであって、不図示の移動機構が備えられており、これによって光路内へ挿脱することが可能である。
【0012】
斯かる構成の下、光源22からの光は、コレクタレンズ21で略平行光束とされ、拡散板20を経た後、輪帯絞り19で制限される。輪帯絞り19を通過した光は、コンデンサレンズ18で集光され、ステージ6上の培養チャンバ3に収納されている培養容器12内の試料15に照射される。これにより、試料15を透過した直接光(0次の回折光)は、対物レンズ10に入射し、位相膜10aを透過することで位相が変換されるとともに減光される。一方、試料15によって回折された回折光(直接光に対して位相がずれた0次以外の回折光)は、対物レンズ10に入射し、位相膜10a以外の部分を透過する。斯かる直接光と回折光は、結像レンズ23及び全反射ミラー24を介して結像され、カメラ9の撮像面9a上で干渉して試料15の拡大像を形成する。これがカメラ9によって撮影され、PC2のモニタ2a上には試料15の画像(位相差観察画像)が表示されることとなる。このようにして使用者は、試料15を培養チャンバ3内で培養しながら位相差観察を行うことができる。なお、位相差観察についての原理は、例えば応用光学1(倍風館、1990、鶴田匡夫、P.256-259 位相差法)等に記載されている。
また、本実施形態における顕微鏡1では、顕微鏡本体5内のベルトランレンズ11を光路内へ挿入した場合、図3中に点線で示すように、対物レンズ10の瞳の像をカメラ9の撮像面9a上に形成することができ、これをカメラ9で撮像することができる。
【0013】
ここで、本実施形態に係る顕微鏡システムにおいて培養容器12に生じる結露、結露が位相差観察に与える影響、及び結露の検出方法について説明する。
通常、試料15及び培地15aを注入した培養容器12は、本顕微鏡システムとは別に用意された不図示のインキュベータに保管されており、このインキュベータの内部は、例えば温度37℃、湿度90%以上、二酸化炭素濃度5%程度に維持されている。このため、使用者は観察に際してインキュベータから培養容器12を取り出し、顕微鏡1の培養チャンバ3内に設置することとなる。したがって、培養容器12はインキュベータから取り出されたときに室温(25℃程度)の環境下にさらされるため、培養容器12内の高湿度の空気が冷却されて結露が生じてしまう。特に、図2(b)に示すように培養容器12の蓋12bの裏面に多量の結露が生じてしまう。なお、予め培養チャンバ3内をインキュベータ内と同等の環境に維持していても、培養チャンバ3の蓋体3bを開いた瞬間に室温の空気が培養チャンバ3内に流入してしまう。このため、培養チャンバ3内の温度が下がり、このような培養チャンバ3内に培養容器12を設置して蓋体3bを閉じても、結露の生じやすい状況がしばらく続くこととなる。
【0014】
本実施形態における顕微鏡1では、上述のように顕微鏡本体5内のベルトランレンズ11を光路内へ挿入することで対物レンズ10の瞳の像(以下、「瞳面画像」という)をカメラ9で撮影することができ、これによって対物レンズ10の瞳面の状態を観察することができる。
培養容器12に結露が生じていない場合、光源22より射出され、輪帯絞り19を介して培養容器12内の試料15を透過した直接光は、図4(b)に示すように対物レンズ10の瞳面上に輪郭の明瞭な輪帯絞り19の像(投影像)を形成することとなる。このとき、ベルトランレンズ11を光路内へ挿入して瞳面画像を撮影すれば、図4(a)に示すように直接光の全てが、対物レンズ10の瞳面上に配置された図4(c)に示す位相膜10aに適切に入射し、減光されていることがわかる。
【0015】
一方、培養容器12に結露が生じている場合には、光源22より射出され、輪帯絞り19を介して培養容器12へ入射した光は、培養容器12の蓋12bの結露によって散乱してしまう。このため、試料15を透過した直接光は、図5(b)に示すように対物レンズ10の瞳面上に輪郭の不明瞭な輪帯絞り19の像を形成することとなる。このとき、ベルトランレンズ11を光路内へ挿入して瞳面画像を撮影すれば、図5(a)に示すように瞳面が明るくなり、直接光の一部が位相膜10aに入射できずに迷光となっていることがわかる。そしてこの迷光は、位相差観察画像のコントラストの劣化を招くこととなってしまう。
【0016】
本顕微鏡システムは、対物レンズ10の瞳面上に生じる迷光を検出することによって、培養容器12の結露の有無を検出するものである。
上述のように迷光は、試料15からの直接光のうち、対物レンズ10の瞳面上の位相膜10aに入射しない光である。そこで、培養容器12に結露が生じていない場合に対物レンズ10の瞳面上に形成される輪帯絞り19の像を適切に覆う、黒塗りでリング形状のマスクを描いた図6(c)に示すような画像(以下、「マスク画像」という)をPC2で予め作成しておく。そして、PC2の画像処理により、ベルトランレンズ11を光路内へ挿入して撮影された瞳面画像に当該マスク画像を重ね合わせ、この重ね合わせ画像の各画素の輝度値の総和(以下、「重ね合わせ画像の輝度総和」という)を算出する。重ね合わせ画像の輝度総和は対物レンズ10の瞳面上に生じた迷光の合計を示すものであるため、PC2は当該輝度総和の大きさから迷光の有無を検出することができ、即ち培養容器12の結露の有無を検出することができる。
【0017】
具体的には、培養容器12に結露が生じていない場合、例えば図4(a)に示す瞳面画像に図6(c)のマスク画像を重ね合わせると、図6(a)に示すように対物レンズ10の瞳面上に形成される輪帯絞り19の像はマスクで略完全に覆われ、マスクから光が漏れることはない。このため、重ね合わせ画像の輝度総和は非常に小さな値となり、これによって対物レンズ10の瞳面上に迷光が生じていない、即ち培養容器12に結露が生じていないことがわかる。
一方、培養容器12に結露が生じている場合には、例えば図5(a)に示す瞳面画像に図6(c)のマスク画像を重ね合わせると、図6(b)に示すようにマスクから光が漏れてしまうことになる。このため、重ね合わせ画像の輝度総和は大きな値となり、これによって対物レンズ10の瞳面上に迷光が生じている、即ち培養容器12に結露が生じていることがわかる。
【0018】
なお、上述したマスク画像は、顕微鏡1の光学系を構成する各光学要素に基づいてPC2で予め作成されるものである。ただし、マスク画像におけるマスクの幅は、対物レンズ10の瞳面上に形成される輪帯絞り19の計算上の投影像よりも少し大きく設定されることが望ましい。これにより、マスクと輪帯絞り19の投影像の位置決め誤差による影響を防止することができる。本実施形態では、マスクの直径や幅は実質的に対物レンズ10の位相膜の直径や幅に相当している。また、本実施形態では、マスクの直径や幅の異なる複数のマスク画像がPC2の記憶部(不図示)に予め保存されており、使用する対物レンズ10や輪帯絞り19に合わせて適宜選択して使用される。
【0019】
ここで、上述の重ね合わせ画像の輝度総和は、次の手順によって得られる指標値に基づいて定量的に評価することができる。
試料15として所定のパターンを有する位相物体(評価用試料)を用い、培養容器12を結露させた状態で評価用試料の位相差観察画像を撮影し、撮影した位相差観察画像のコントラストを算出する。またこのとき、上述の方法によって重ね合わせ画像の輝度総和を算出する。そして、これらの作業を培養容器12の結露量を変化させながら繰り返し実施することで、図7に示すように重ね合わせ画像の輝度総和と位相差観察画像のコントラストとの相関を示すグラフを作成することができる。そしてこのグラフより、位相差観察画像が観察に好適なコントラストとなるような輝度総和の範囲を検討し、その範囲を規定する輝度総和の値を指標値として採用する。具体的に本実施形態では、図7に示すように位相差観察画像のコントラストが90〜100%となる輝度総和の範囲を位相差観察に好適な範囲とする、即ち培養容器12に結露が生じていないと判定できるように、コントラストが90%となる輝度総和の値を指標値として採用している。
【0020】
以上より、重ね合わせ画像の輝度総和と前述のようにして得られた指標値との大小関係を確認することで、当該輝度総和を評価し、培養容器12に結露が生じているか否かの判定を行うことができる。
なお、上述した位相差観察画像のコントラストは、位相差観察画像において隣り合う画素の輝度値の差を積分する等の公知の方法によって算出することが可能である。
また、上述した重ね合わせ画像の輝度総和として、重ね合わせ画像の輝度総和を透過照明装置7で使用する光源22の輝度で除した値を用いることが望ましい。これにより、使用する光源22の明るさに応じて指標値が変化することを防ぎ、明るさの異なる光源を使用する場合にも共通の指標値を採用することが可能となる。
【0021】
本実施形態に係る顕微鏡システムは、以上に述べた結露の検出方法を実現するための、図8に示し以下に詳述する結露検出ルーチンを実行可能に構成されている。
結露検出ルーチンは、使用者が結露検出ルーチンの開始の指示をPC2へ入力することによって開始される。なお、使用者は、結露検出ルーチンを実行するにあたり、予め培養容器12を培養チャンバ3に設置し、使用する対物レンズ10や透過照明装置7の輪帯絞り19の情報をPC2へ設定入力しておく。
ステップS1:PC2内のCPU(不図示)が、顕微鏡本体5内の顕微鏡制御部を介してベルトランレンズ11を光路内へ挿入し、カメラ9に瞳面画像を撮影させる。
ステップS2:CPUが、上述のように予め使用者が設定入力した対物レンズ10及び輪帯絞り19の情報に基づいてマスク画像を選択する。
【0022】
ステップS3:CPUが、マスク画像を瞳面画像に重ね合わせる画像処理を行い、重ね合わせ画像の輝度総和を算出する。
ステップS4:CPUが、重ね合わせ画像の輝度総和が上述の指標値以下であるか否かを判定する。重ね合わせ画像の輝度総和が指標値以下である場合はステップS6へ進み、そうでない場合はステップS5へ進む。
ステップS5:CPUがPC2のモニタ2aに文字情報「結露あり・観察NG」を表示させ、ステップS3へ戻る。
ステップS6:CPUがPC2のモニタ2aに文字情報「結露なし・観察OK」を表示させる。
ステップS7:CPUが顕微鏡制御部を介してベルトランレンズ11を光路外へ退避させ、結露検出ルーチンが終了する。
【0023】
以上、本実施形態に係る顕微鏡システムは、結露検出ルーチンを実行することにより、培養容器12に結露が生じているか否かを容易に判定することができ、さらに結露が生じていた場合には、結露が解消されるまでの間、継続して結露が解消されたか否かを判定することができる。詳細には、培養容器12に結露が生じていた場合には、PC2のモニタ2aに文字情報「結露あり・観察NG」を表示し続け、結露が解消し次第、モニタ2aに文字情報「結露なし・観察OK」を表示して結露検出が完了することとなる。
なお、培養容器12に結露が生じていた場合、培養チャンバ3内の環境が安定すれば、培養容器12のシャーレ12aと蓋12bの隙間から空気が流通することによって結露は解消される。このとき、本実施形態では培養チャンバ3内のファン16を駆動し、培養チャンバ3内の空気を循環させて培養容器12内へ積極的に流通させることにより、結露を解消することが望ましい。また、ヒータ14を高温作動(通常よりも高い設定温度で作動)させ、培養チャンバ3内の空気を暖めることにより、結露を解消することが望ましい。このように、ファン16やヒータ14を、結露を解消するための結露解消部として使用することにより、結露の解消時間を効果的に短縮化することができる。このことは、後述する第2実施形態の結露検出ルーチンにおいても同様である。
【0024】
また、上記結露検出ルーチンは、使用者が所望のタイミングで実行することができるという利点を備えている。なお、結露検出ルーチンにおけるステップS1及びステップS7のベルトランレンズ11の光路内への挿脱は、使用者が手動で実施する構成としてもよい。
また、結露検出ルーチンは、ステップS5を実行後、ステップS3へ戻る構成であるが、ステップS5を実行後、ステップS7へ進む構成としてもよい。このような構成にすれば、培養容器12に結露が生じていた場合でも、結露が解消したか否かに関わらず、結露検出ルーチンが完了することとなり、単に培養容器12の結露の有無の判定のみを行う結露検出ルーチンを実現することができる。このことは、後述する第2実施形態の結露検出ルーチンにおいても同様である。そして、斯かる培養容器12の結露の有無の判定のみを行う結露検出ルーチンは、タイムラプス撮影と組み合わせることも可能である。具体的には、タイムラプス撮影において所定時間毎に実施される撮影の度に先んじて結露の有無の判定を実施し、培養容器12に結露が生じていない場合の撮影画像のみを記録する構成のタイムラプス撮影ルーチンを実現することも可能である。
【0025】
また、本実施形態に係る顕微鏡システムは、上記結露検出ルーチンを応用した、図9に示し以下に詳述するタイムラプス自動開始ルーチンを実行可能に構成されている。
タイムラプス自動開始ルーチンは、使用者がタイムラプス自動開始ルーチンの開始の指示をPC2へ入力することによって開始される。なお、使用者は、タイムラプス自動開始ルーチンを実行するにあたり、予め培養容器12を培養チャンバ3に設置しておき、使用する対物レンズ10や輪帯絞り19の情報に加えて、タイムラプス撮影の撮影条件(露光、シャッタスピード、インターバルタイム、撮影回数、総時間等)、試料15の撮影ポイントをPC2へ設定入力しておく。
ステップP1:上記結露検出ルーチンのステップS1と同様。
ステップP2:上記結露検出ルーチンのステップS2と同様。
ステップP3:上記結露検出ルーチンのステップS3と同様。
ステップP4:上記結露検出ルーチンのステップS4と同様。
【0026】
ステップP5:CPUが顕微鏡制御部を介して培養チャンバ3内のファン16を駆動し、ステップP3へ戻る。
ステップP6:CPUが、ファン16が駆動中であるか否かを確認する。ファン16が駆動中である場合はステップP7へ進み、ファン16が駆動中でない場合にはステップP8へ進む。
ステップP7:CPUが顕微鏡制御部を介してファン16の駆動を終了させる。
ステップP8:上記結露検出ルーチンのステップS7と同様。
ステップP9:CPUが、上述のように予め使用者が設定入力した撮影条件等に基づいてタイムラプス撮影を実行し、タイムラプス撮影の完了により本タイムラプス自動開始ルーチンが終了する。
【0027】
以上、本実施形態に係る顕微鏡システムは、タイムラプス自動開始ルーチンを実行することにより、培養容器12に結露が生じているか否かを容易に判定し、タイムラプス撮影を自動的に実行することができる。特に、培養容器12に結露が生じていた場合には、ファン16を駆動して短時間で結露を解消し、遅滞なくタイムラプス撮影を自動的に実行することができる。なお、ファン16の駆動は、タイムラプス撮影の開始前に終了するため、ファン16で発生する振動がタイムラプス撮影に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
上記タイムラプス自動開始ルーチンは、結露解消部としてファン16を駆動する構成であるが、これに限られず、ヒータ14を高温作動して結露を解消する構成、或いはファン16の駆動とヒータ14の高温作動の両方によって結露を解消する構成とすることもできる。また、タイムラプス自動開始ルーチンは、ステップP5においてファン16を一定時間だけ駆動するようにし、ステップP6とステップP7を省略する構成としてもよい。これらのことは、後述する第2実施形態のタイムラプス自動開始ルーチンにおいても同様である。
【0028】
なお、本実施形態に係る顕微鏡システムは、上述のようにベルトランレンズ11を用いて対物レンズ10の瞳面画像を撮影し、PC2の画像処理によって瞳面画像にマスク画像を重ね合わせ、重ね合わせ画像の輝度総和に基づいて結露の有無の判定を行っている。しかしながらこれに限られず、対物レンズ10の瞳面画像のみを用いて結露の有無の判定を行う構成とすることも可能である。具体的には、対物レンズ10の瞳面画像について、中心の画素を含むように横一列分の画素の輝度分布データを求める。そして輝度分布データをPC2で微分処理及び積分処理して得られるデータを、所定の閾値データと比較することで結露の有無の判定を行うことが可能である。
【0029】
(第2実施形態)
本実施形態に係る顕微鏡システムについて、上記第1実施形態と同様の部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡システムは、第1実施形態におけるベルトランレンズ11の代わりに、後述する迷光検出光学系30を顕微鏡31に備えており、これによって対物レンズ10の瞳面の迷光を直接検出するものである。
本実施形態に係る顕微鏡システムは、上記第1実施形態と同様に、顕微鏡31、PC2、及び温調コントローラ4を有する。
図10に示すように、顕微鏡31における迷光検出光学系30は、ハーフミラー32、結像レンズ33aと再結像レンズ33bからなるリレー光学系33、遮光板35、及び光量センサ36を有する。なお、ハーフミラー32は、対物レンズ10と結像レンズ23の間に配置されている。
【0030】
遮光板35は、ガラス等の光透過性材料からなる板状部材であって、リング形状の遮光部を備えている。なお、遮光板35は対物レンズ10の瞳面と共役な位置である、リレー光学系33の一次結像面に配置されている。また、遮光板35の遮光部は、培養容器12に結露が生じていない場合に一次結像面に形成される輪帯絞り19の像を適切に覆うように、顕微鏡31の各光学要素に基づいて設計されている。ただし、遮光部の幅は、一次結像面に形成される輪帯絞り19の計算上の投影像よりも少し大きく設定されることが望ましい。これにより、遮光部と輪帯絞り19の投影像の位置決め誤差による影響を防止することができる。なお、本実施形態では、遮光部の直径や幅の異なる複数の遮光板35が用意されており、使用する対物レンズ10や輪帯絞り19に合わせて適宜切り替えて使用される。
【0031】
斯かる構成の迷光検出光学系30を有する顕微鏡31において、培養容器12に結露が生じていない場合、光源22より射出され、輪帯絞り19を介して培養容器12内の試料15を透過した直接光は、上記第1実施形態の図4(b)に示すような輪郭の明瞭な輪帯絞り19の像を対物レンズ10の瞳面上に形成して位相膜10aに入射する。位相膜10aを透過した直接光は、その一部がハーフミラー32で反射され、結像レンズ33aを介して一次結像面上に輪郭の明瞭な輪帯絞り19の像を再度形成し、一次結像面上の遮光板35の遮光部に入射して遮光される。このため、光量センサ36で検出される光量は非常に小さな値となり、これによって対物レンズ10の瞳面上に迷光が生じていない、即ち培養容器12に結露が生じていないことがわかる。
【0032】
一方、培養容器12に結露が生じている場合には、光源22より射出され、輪帯絞り19を介して培養容器12へ入射した光は、培養容器12の蓋12bの結露によって散乱する。このため、試料15を透過した直接光は、上記第1実施形態の図5(b)に示すような輪郭の不明瞭な輪帯絞り19の像を対物レンズ10の瞳面上に形成し、当該直接光の一部は位相膜10aに入射できずに迷光となってしまう。したがって、この迷光と位相膜10aを透過した直接光とは、ハーフミラー32でそれぞれの一部が反射され、結像レンズ33aを介して一次結像面上に輪郭の不明瞭な輪帯絞り19の像を再度形成し、位相膜10aを透過した直接光のみが一次結像面上の遮光板35の遮光部に入射して遮光される。したがって、迷光は遮光板35を通過し、再結像レンズ33bを介して光量センサ36で検出されることとなる。このため、光量センサ36で検出される光量は非常に大きな値となり、これによって対物レンズ10の瞳面上に迷光が生じている、即ち培養容器12に結露が生じていることがわかる。
なお、培養容器12の結露の有無に関わらず、試料15からの回折光はその一部がハーフミラー32で反射され、光量センサ36まで達して検出されるものの、光量が小さいため迷光の検出に影響を及ぼすことがない。
【0033】
ここで、以上のように光量センサ36で検出された光量は、上記第1実施形態で述べた重ね合わせ画像の輝度総和の指標値を得るための手順を準用して得られる光量の指標値に基づいて定量的に評価することが可能であり、これによって培養容器12に結露が生じているか否かの判定を行うことができる。
【0034】
上記構成の下、本実施形態に係る顕微鏡システムは、図11に示し以下に詳述する結露検出ルーチンを実行可能に構成されている。
結露検出ルーチンは、使用者が結露検出ルーチンの開始の指示をPC2へ入力することによって開始される。なお、使用者は、結露検出ルーチンを実行するにあたり、予め培養容器12を培養チャンバ3に設置し、使用する対物レンズ10や透過照明装置7の輪帯絞り19に応じて遮光板35を選択して光路内へ挿入しておく。
ステップT1:CPUが顕微鏡制御部を介して光量センサ36に光量を検出させる。
ステップT2:CPUが、光量センサ36で検出された光量の値が上述の指標値以下であるか否かを判定する。前記光量の値が指標値以下である場合はステップT4へ進み、そうでない場合はステップT3へ進む。
【0035】
ステップT3:CPUがPC2のモニタ2aに文字情報「結露あり・観察NG」を表示させ、ステップT1へ戻る。
ステップT4:CPUがPC2のモニタ2aに文字情報「結露なし・観察OK」を表示させる。
ステップT5:CPUが使用者によって結露検出ルーチンの終了の指示がPC2へ入力されているか否かを確認する。使用者によって結露検出ルーチンの終了の指示がPC2へ入力されている場合は結露検出ルーチンを終了し、そうでない場合はステップT1へ戻る。
【0036】
以上より、本実施形態に係る顕微鏡システムは、上記結露検出ルーチンを実行することにより、上記第1実施形態の結露検出ルーチンと同様の効果を奏することができる。
また、上記結露検出ルーチンは、結露の検出を常時行うことができるという利点を備えている。このため使用者は、観察中に結露が生じた際に迅速に観察を中断したり、結露が解消した際に迅速に観察を開始することが可能となる。
なお、本実施形態における顕微鏡31は、ハーフミラー32の代わりに、光路内へ挿脱可能な全反射ミラーを備える構成とすることもできる。この構成により、上記第1実施形態と同様に使用者の所望のタイミングで結露検出を行うことが可能な顕微鏡システムを実現することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る顕微鏡システムは、上記結露検出ルーチンを応用した、図12に示し以下に詳述するタイムラプス自動開始ルーチンを実行可能に構成されている。
タイムラプス自動開始ルーチンは、使用者がタイムラプス自動開始ルーチンの開始の指示をPC2へ入力することによって開始される。なお、使用者は、タイムラプス自動開始ルーチンを実行するにあたり、予め培養容器12を培養チャンバ3に設置し、使用する対物レンズ10や輪帯絞り19に応じて遮光板35を選択して光路内へ挿入しておき、タイムラプス撮影の撮影条件(露光、シャッタスピード、インターバルタイム、撮影回数、総時間等)、試料15の撮影ポイントをPC2へ設定入力しておく。
【0038】
ステップQ1:上記結露検出ルーチンのステップT1と同様。
ステップQ2:上記結露検出ルーチンのステップT2と同様。
ステップQ3:CPUが顕微鏡制御部を介して培養チャンバ3内のファン16を駆動し、ステップQ1へ戻る。
ステップQ4:CPUが、ファン16が駆動中であるか否かを確認する。ファン16が駆動中である場合はステップQ5へ進み、ファン16が駆動中でない場合にはステップQ6へ進む。
ステップQ5:CPUが顕微鏡制御部を介してファン16の駆動を終了させる。
ステップQ6:CPUが、上述のように予め使用者が設定入力した撮影条件等に基づいてタイムラプス撮影を実行し、タイムラプス撮影の完了により本タイムラプス自動開始ルーチンが終了する。
【0039】
以上、本実施形態に係る顕微鏡システムは、タイムラプス自動開始ルーチンを実行することにより、上記第1実施形態のタイムラプス自動開始ルーチンと同様の効果を奏することができる。
【0040】
以上に述べた各実施形態によれば、位相差観察画像の像質に直接関与する対物レンズ10の瞳面の明るさの情報(瞳面の迷光の輝度値又は光量値)に基づいて、培養容器12の結露を正確に検出することが可能な顕微鏡システムを提供することができる。
なお、上記各実施形態における顕微鏡1,31は、培養チャンバ3をステージ6上に設置したものを例示しているが、本発明はこれに限られずインキュベータ内に顕微鏡を配置してなる観察装置に適用することも勿論可能である。
また、本発明は上記各実施形態のように位相差観察法を行う顕微鏡に限られず、対物レンズの瞳面に配置した光学素子と、照明光学系におけるその共役位置に配置した絞り等を利用し、光の位相差をコントラストに変換する観察法(例えば、ホフマンモジュレーションコントラスト法)を行う顕微鏡等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1,31 顕微鏡
2 PC
3 培養チャンバ
4 温調コントローラ
5 顕微鏡本体
7 透過照明装置
9 カメラ
10 対物レンズ
10a 位相膜
11 ベルトランレンズ
12 培養容器
14 ヒータ
15 試料
16 ファン
19 輪帯絞り
30 迷光検出光学系
36 光量センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を照明する透過照明装置と、対物レンズを含み前記透過照明装置で照明された培養容器内の前記試料を観察するための観察光学系と、前記対物レンズの瞳面を観察するための瞳面観察光学系と、前記瞳面観察光学系によって集光した光を検出する光検出部とを有する顕微鏡と、
前記光検出部の検出結果に基づいて、前記培養容器に結露が生じているか否かの判定を行う制御装置と、
を有することを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項2】
前記透過照明装置は、前記対物レンズの瞳面と共役な位置に輪帯絞りを有し、
前記観察光学系は、前記対物レンズの瞳面上にリング形状の位相膜を有し、位相差観察できることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項3】
前記瞳面観察光学系は、光路内へ挿脱可能なベルトランレンズからなり、
前記光検出部は、前記対物レンズの瞳面の画像を撮影する撮像素子からなり、
前記制御装置は、前記ベルトランレンズを光路内へ挿入することによって前記撮像素子で撮影された前記瞳面の画像の輝度情報に基づいて、前記培養容器に結露が生じているか否かの判定を行うことを特徴とする請求項2に記載の顕微鏡システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記撮像素子で撮影された前記瞳面の画像にリング形状のマスク画像を重ね合わせることにより、前記瞳面上の迷光のみの輝度情報を取得し、前記迷光の輝度情報に基づいて前記培養容器に結露が生じているか否かの判定を行うことを特徴とする請求項3に記載の顕微鏡システム。
【請求項5】
前記瞳面観察光学系は、前記観察光学系中に配置されたハーフミラーと、前記ハーフミラーの反射光路上であって前記瞳面と共役な位置に配置されたリング形状の遮光部を備えた遮光部材とを含み、
前記光検出部は、光量センサからなり、
前記制御装置は、前記光量センサで検出された光量の値に基づいて、前記培養容器に結露が生じているか否かの判定を行うことを特徴とする請求項2に記載の顕微鏡システム。
【請求項6】
前記顕微鏡は、前記培養容器の結露を解消するための結露解消部を有し、
前記制御装置は、前記判定によって前記培養容器に結露が生じていることが確認された場合に、前記結露解消部を作動させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の顕微鏡システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記判定によって前記培養容器に結露が生じていないことが確認された場合に、前記試料のタイムラプス撮影を実行することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の顕微鏡システム。
【請求項1】
試料を照明する透過照明装置と、対物レンズを含み前記透過照明装置で照明された培養容器内の前記試料を観察するための観察光学系と、前記対物レンズの瞳面を観察するための瞳面観察光学系と、前記瞳面観察光学系によって集光した光を検出する光検出部とを有する顕微鏡と、
前記光検出部の検出結果に基づいて、前記培養容器に結露が生じているか否かの判定を行う制御装置と、
を有することを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項2】
前記透過照明装置は、前記対物レンズの瞳面と共役な位置に輪帯絞りを有し、
前記観察光学系は、前記対物レンズの瞳面上にリング形状の位相膜を有し、位相差観察できることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項3】
前記瞳面観察光学系は、光路内へ挿脱可能なベルトランレンズからなり、
前記光検出部は、前記対物レンズの瞳面の画像を撮影する撮像素子からなり、
前記制御装置は、前記ベルトランレンズを光路内へ挿入することによって前記撮像素子で撮影された前記瞳面の画像の輝度情報に基づいて、前記培養容器に結露が生じているか否かの判定を行うことを特徴とする請求項2に記載の顕微鏡システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記撮像素子で撮影された前記瞳面の画像にリング形状のマスク画像を重ね合わせることにより、前記瞳面上の迷光のみの輝度情報を取得し、前記迷光の輝度情報に基づいて前記培養容器に結露が生じているか否かの判定を行うことを特徴とする請求項3に記載の顕微鏡システム。
【請求項5】
前記瞳面観察光学系は、前記観察光学系中に配置されたハーフミラーと、前記ハーフミラーの反射光路上であって前記瞳面と共役な位置に配置されたリング形状の遮光部を備えた遮光部材とを含み、
前記光検出部は、光量センサからなり、
前記制御装置は、前記光量センサで検出された光量の値に基づいて、前記培養容器に結露が生じているか否かの判定を行うことを特徴とする請求項2に記載の顕微鏡システム。
【請求項6】
前記顕微鏡は、前記培養容器の結露を解消するための結露解消部を有し、
前記制御装置は、前記判定によって前記培養容器に結露が生じていることが確認された場合に、前記結露解消部を作動させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の顕微鏡システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記判定によって前記培養容器に結露が生じていないことが確認された場合に、前記試料のタイムラプス撮影を実行することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の顕微鏡システム。
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2011−141444(P2011−141444A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2246(P2010−2246)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]