説明

顕微鏡及び合焦点方法

【課題】照明視野絞りのピント調整を自動的に実行可能な顕微鏡及び合焦点方法の提供。
【解決手段】本発明に係る顕微鏡は、照明視野絞りと光学素子とを有し、ステージに設けられたサンプルに対して照明光を投影する照明光学系と、サンプルを透過した透過光を撮像する第1の撮像素子と、第1の撮像素子に透過光を結像させる光学素子とを有する第1の結像光学系と、第1の結像光学系から透過光の一部を分岐する光線分岐部と、分岐された透過光の位相差像を撮像する第2の撮像素子と、第2の撮像素子に分岐された透過光の位相差像を結像させる光学素子とを有する第2の結像光学系と、照明視野絞りの結像位置を調整する照明視野絞りピント調整部と、第2の撮像素子からの出力信号により照明視野絞りのピントのズレ度合いを表す特徴量を算出する特徴量算出部とを備え、照明視野絞りピント調整部は、算出された特徴量に応じて、照明視野絞りの結像位置を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡及び合焦点方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対物レンズの切り換えに応じて、コンデンサレンズ、視野絞り、開口絞り、標本ステージの対物レンズ光軸方向駆動機構、フィルタ、光源に対する調光電源等の調整が自動的に行われる電動式顕微鏡が知られている(例えば、以下の特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−133311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、顕微鏡において複数の試料を観察する際、これら複数の試料は、厚さ方向にばらつきのあるカバーガラス及びスライドガラスを利用して作製される。そのため、照明光にてこれら試料を照射する場合に任意の位置に照明が配置されていると、スライドガラスの厚みが変化することで照明から対物レンズまでの光学距離が変化してしまう。その結果、照明光学系内に設けられた照明視野絞りが試料面の観察位置から光軸方向にずれた位置にて結像することとなり、画像のコントラストの低下等の問題が発生する。
【0005】
上記特許文献1に記載の顕微鏡を含む従来の顕微鏡では、視野絞り補正環を絞り、照明光学系のコンデンサレンズの光軸方向位置を調整し、補正環のエッジの結像具合を目視もしくは撮像素子にて観察して調整することで、照明視野絞りのピント調整を行うことが一般的である。
【0006】
しかしながら、複数の試料を自動で観察可能なシステムを構築する場合には、自動かつ迅速に照明視野絞りのピント調整を自動的に行うことが求められる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、照明視野絞りのピント調整を自動的に行うことが可能な、顕微鏡及び合焦点方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、照明視野絞りと、1又は複数の光学素子とを有し、ステージに設けられたサンプルに対して照明光を投影する照明光学系と、前記サンプルを透過した透過光を撮像する第1の撮像素子と、当該第1の撮像素子に前記透過光を結像させる1又は複数の光学素子と、を有する第1の結像光学系と、前記第1の結像光学系から前記透過光の一部を分岐する光線分岐部と、分岐された前記透過光の位相差像を撮像する第2の撮像素子と、当該第2の撮像素子に前記分岐された透過光の位相差像を結像させる1又は複数の光学素子と、を有する第2の結像光学系と、前記照明視野絞りの結像位置を調整する照明視野絞りピント調整部と、前記第2の撮像素子から出力される出力信号に基づいて、前記照明視野絞りのピントのズレ度合いを表す特徴量を算出する特徴量算出部と、を備え、前記照明視野絞りピント調整部は、前記特徴量算出部により算出された前記特徴量に応じて、前記照明視野絞りの結像位置を調整する顕微鏡が提供される。
【0009】
前記位相差像は、前記照明視野絞りの形状に対応する前記第2の撮像素子上に結像した第1の像及び第2の像からなり、前記特徴量算出部は、前記第2の撮像素子の各画素における第1の像の出力信号強度と第2の像の出力信号強度との差を利用して、前記特徴量を算出してもよい。
【0010】
前記特徴量算出部による特徴量の算出は、前記サンプルの透過光が前記第1の撮像素子上に合焦していない状態で行われることが好ましい。
【0011】
前記照明光の強度は、前記第2の撮像素子上に結像した位相差像の出力信号強度が飽和するように調整されることが好ましい。
【0012】
前記顕微鏡は、前記ステージの位置の制御を行う位置制御部と、前記サンプルが載置されているスライドガラスの厚みの変化量を算出する厚み変化量算出部と、を更に備え、前記位相差像は、前記照明視野絞りの形状に対応する前記第2の撮像素子上に結像した第1の像及び第2の像からなり、前記厚み変化量算出部は、前記第2の撮像素子の各画素における第1の像の出力信号強度と第2の像の出力信号強度との差を利用して、前記厚み変化量を算出し、前記位置制御部は、前記厚み変化量算出部が算出した前記厚み変化量に基づいて、前記ステージの位置を、前記照明光学系側へ移動させてもよい。
【0013】
前記顕微鏡は、前記ステージの位置の制御を行う位置制御部と、前記サンプルが載置されているスライドガラスの厚みの変化量を算出する厚み変化量算出部と、を更に備え、前記位相差像は、前記照明視野絞りの形状に対応する前記第2の撮像素子上に結像した第1の像及び第2の像からなり、前記厚み変化量算出部は、少なくとも合焦時における前記第1の像又は前記第2の像のエッジ位置と得られた第1の像又は前記第2の像のエッジ位置との差を利用して、前記厚み変化量を算出し、前記位置制御部は、前記厚み変化量算出部が算出した前記厚み変化量に基づいて、前記ステージの位置を、前記照明光学系側へ移動させてもよい。
【0014】
前記厚み変化量算出部は、前記第1の像又は前記第2の像において、前記照明視野絞りの形状のある一方の側のエッジ位置に基づいて、前記厚み変化量を算出してもよい。
【0015】
前記厚み変化量算出部は、前記第1の像及び前記第2の像それぞれにおいて、前記照明視野絞りの形状のある一方の側のエッジ位置に基づいて、前記厚み変化量を算出してもよい。
【0016】
前記厚み変化量算出部は、前記第1の像及び前記第2の像それぞれにおいて、前記照明視野絞りの形状の両側のエッジ位置の和に基づいて、前記厚み変化量を算出してもよい。
【0017】
前記特徴量算出部は、前記出力信号のエッジ位置を利用して、前記特徴量を算出してもよい。
【0018】
前記顕微鏡は、前記第1の撮像素子に結像した像の明度を補正する明度補正部を更に備え、前記明度補正部は、前記照明視野絞りピント調整部により前記照明視野絞りの像が合焦するように前記照明視野絞りが調整された後に撮像された像に対して、予め準備された、明度補正に利用される明度補正パターンを利用して、明度の補正を実施してもよい。
【0019】
前記顕微鏡は、前記第1の撮像素子に結像した像の明度を補正する明度補正部を更に備え、前記明度補正部は、算出された前記スライドガラスの厚みに基づいて、予め設定された複数の明度補正パターンの中から明度補正に利用する明度補正パターンを選択し、前記明度の補正を実施してもよい。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、照明視野絞りを有する照明光学系により投影された照明光のうちステージに設けられたサンプルを透過した透過光の一部を分岐して、分岐された前記透過光の位相差像を撮像素子により撮像するステップと、前記撮像素子から出力された出力信号に基づいて、前記照明視野絞りのピントのズレ度合いを表す特徴量を算出するステップと、算出された前記特徴量に応じて、前記照明視野絞りの結像位置を調整する照明視野絞りピント調整機構を駆動するステップと、を含む合焦点方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、照明視野絞りのピント調整を自動的に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る顕微鏡の構成を示した説明図である。
【図2】同実施形態に係る統括制御部の構成を示したブロック図である。
【図3】同実施形態に係る顕微鏡の光学系を概略的に示した説明図である。
【図4】同実施形態に係る顕微鏡の光学系を概略的に示した説明図である。
【図5A】スライドガラスの厚みと照明視野絞りの結像位置との関係を示した説明図である。
【図5B】スライドガラスの厚みと照明視野絞りの結像位置との関係を示した説明図である。
【図6】照明視野絞りのピントのズレ度合いを示す特徴量を定式化する際のパラメータについて説明するための説明図である。
【図7】照明視野絞りのピントのズレ度合いを示す特徴量を定式化する際のパラメータについて説明するための説明図である。
【図8】位相差像における照明位置の検出方法を示した説明図である。
【図9】同実施形態に係る合焦方法について説明するための説明図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る合焦方法について説明するための説明図である。
【図11】同実施形態に係る合焦方法について説明するための説明図である。
【図12】同実施形態に係る合焦方法について説明するための説明図である。
【図13】同実施形態に係る合焦方法について説明するための説明図である。
【図14】同実施形態に係る合焦方法について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
なお、説明は、以下の順序で行うものとする。
(1)第1の実施形態
(1−1)顕微鏡の構成について
(1−2)照明視野絞りのピント調整処理について
(1−3)ステージ位置の調整処理について
(1−4)明度ムラの補正処理について
(1−5)変形例
【0025】
(第1の実施形態)
<顕微鏡の構成について>
まず、図1を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る顕微鏡1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る顕微鏡1の構成を示した説明図である。
【0026】
[全体構成]
本実施形態に係る顕微鏡1は、図1に例示したように、生体サンプルSPLが配設されるプレパラートPRT全体の像(以下、この像をサムネイル像とも称する。)を撮像するサムネイル像撮像部10と、生体サンプルSPLが所定倍率で拡大された像(以下、この像を拡大像とも称する。)を撮像する拡大像撮像部20と、を有する。また、拡大像撮像部20には、拡大像撮像部20中に存在する照明視野絞りのデフォーカス(defocus)量を検出するためのデフォーカス量検出部30が設けられている。
【0027】
プレパラートPRTは、血液等の結合組織、上皮組織又はそれらの双方の組織などの組織切片又は塗抹細胞からなる生体サンプルSPLを、所定の固定手法によりスライドガラスに固定したものである。これらの組織切片又は塗抹細胞には、必要に応じて各種の染色が施される。この染色には、HE(ヘマトキシリン・エオシン)染色、ギムザ染色又はパパニコロウ染色等に代表される一般染色のみならず、FISH(Fluorescence In−Situ Hybridization)や酵素抗体法等の蛍光染色が含まれる。
【0028】
また、プレパラートPRTには、対応する生体サンプルSPLを特定するための付帯情報(例えば、サンプルを採取した人の氏名、採取日時、染色の種類等)が記載されたラベルが貼付されていてもよい。
【0029】
本実施形態に係る顕微鏡1には、上述のようなプレパラートPRTが載置されるステージ40が設けられており、更に、ステージ40を様々な方向に移動させるためのステージ駆動機構41が設けられている。このステージ駆動機構41により、ステージ40を、ステージ面に対して平行となる方向(X軸−Y軸方向)と、直交する方向(Z軸方向)に自由に移動させることができる。
【0030】
また、拡大像撮像部20には、照明視野絞りピント調整部の一例であるコンデンサレンズ駆動機構42が設けられている。
【0031】
[サムネイル像撮像部]
サムネイル像撮像部10は、図1に示したように、光源11と、対物レンズ12と、撮像素子13と、を主に備える。
【0032】
光源11は、ステージ40のプレパラート配置面とは逆の面側に設けられる。光源11は、一般染色が施された生体サンプルSPLを照明する光(以下、明視野照明光、又は、単に照明光とも称する。)と、特殊染色が施された生体サンプルSPLを照明する光(以下、暗視野照明光とも称する。)とを切り換えて照射可能である。また、光源11は、明視野照明光又は暗視野照明光のいずれか一方だけを照射可能なものであってもよい。この場合、光源11として、明視野照明光を照射する光源と、暗視野照明光を照射する光源の2種類の光源が設けられることとなる。
【0033】
更に、サムネイル像撮像部10には、プレパラートPRTに貼付されたラベルに記載されている付帯情報を撮像するための光を照射するラベル光源(図示せず。)が別途設けられていてもよい。
【0034】
所定倍率の対物レンズ12は、プレパラート配置面におけるサムネイル像撮像部10の基準位置の法線を光軸SRAとして、ステージ40のプレパラート配置面側に配設される。ステージ40上に配設されたプレパラートPRTを透過した透過光は、この対物レンズ12によって集光されて、対物レンズ12の後方(すなわち、照明光の進行方向)に設けられた撮像素子13に結像する。
【0035】
撮像素子13には、ステージ40のプレパラート配置面に載置されたプレパラートPRT全体を包括する撮像範囲の光(換言すれば、プレパラートPRT全体を透過した透過光)が結像する。この撮像素子13上に結像した像が、プレパラートPRT全体を撮像した顕微鏡画像であるサムネイル像となる。
【0036】
[拡大像撮像部]
拡大像撮像部20は、図1に示したように、光源21と、コンデンサレンズ22と、対物レンズ23と、撮像素子24と、を主に備える。また、拡大像撮像部20には、更に、照明視野絞り(図示せず。)が設けられている。
【0037】
光源21は、明視野照明光を照射するものであり、ステージ40のプレパラート配置面とは逆の面側に設けられる。また、光源21とは異なる位置(例えばプレパラート配置面側)には、暗視野照明光を照射する光源(図示せず。)が設けられる。
【0038】
コンデンサレンズ22は、光源21から照射された明視野照明光や、暗視野照明用の光源から照射された暗視野照明光を集光して、ステージ40上のプレパラートPRTに導くレンズである。このコンデンサレンズ22は、プレパラート配置面における拡大像撮像部20の基準位置の法線を光軸ERAとして、光源21とステージ40との間に配設される。また、コンデンサレンズ駆動機構42は、このコンデンサレンズ22を光軸ERA方向に沿って駆動することが可能である。コンデンサレンズ22は、コンデンサレンズ駆動機構42によって、光軸ERA上の位置を変えることができる。
【0039】
所定倍率の対物レンズ23は、プレパラート配置面における拡大像撮像部20の基準位置の法線を光軸ERAとして、ステージ40のプレパラート配置面側に配設される。拡大像撮像部20では、この対物レンズ23を適宜交換することで、生体サンプルSPLを様々な倍率に拡大して撮像することが可能となる。ステージ40上に配設されたプレパラートPRTを透過した透過光は、この対物レンズ23によって集光されて、対物レンズ23の後方(すなわち、照明光の進行方向)に設けられた撮像素子24に結像する。
【0040】
なお、対物レンズ23と撮像素子24との間の光軸ERA上には、ビームスプリッター31が設けられており、対物レンズ23を透過した透過光の一部が、後述するデフォーカス量検出部30へと導かれる。
【0041】
撮像素子24には、撮像素子24の画素サイズ及び対物レンズ23の倍率に応じて、ステージ40のプレパラート配置面上における所定の横幅及び縦幅からなる撮像範囲の像が結像される。なお、対物レンズ23により生体サンプルSPLの一部が拡大されるため、上述の撮像範囲は、撮像素子13の撮像範囲に比べて十分に狭い範囲となる。
【0042】
ここで、サムネイル像撮像部10及び拡大像撮像部20は、図1に示したように、それぞれの基準位置の法線である光軸SRAと光軸ERAとがY軸方向に距離Dだけ離れるように配置される。この距離Dは、撮像素子13の撮像範囲に拡大像撮像部20の対物レンズ23を保持する鏡筒(図示せず)が写りこむことなく、かつ小型化のために近い距離に設定される。
【0043】
[デフォーカス量検出部]
デフォーカス量検出部30は、図1に示したように、ビームスプリッター31と、コンデンサレンズ32と、2眼レンズ33と、撮像素子34と、を主に備える。
【0044】
ビームスプリッター31は、先に説明したように、拡大像撮像部20の対物レンズ23と撮像素子24との間の光軸ERA上に設けられており、対物レンズ23を透過した透過光の一部を反射させる。換言すれば、ビームスプリッター31によって、対物レンズ23を透過した透過光は、撮像素子24へと向かう透過光と、後述するデフォーカス量検出部30内のコンデンサレンズ32へと向かう反射光とに分岐される。
【0045】
ビームスプリッター31によって分岐された反射光の進行方向側には、コンデンサレンズ32が設けられる。このコンデンサレンズ32は、ビームスプリッター31によって分岐された反射光を集光して、コンデンサレンズ32の後方(反射光の進行方向側)に設けられた2眼レンズ33へと導く。
【0046】
2眼レンズ33は、コンデンサレンズ32から導光された光束を2つの光束へと分割する。分割された光束は、2眼レンズ33の後方(反射光の進行方向側)に設けられた撮像素子34の結像面に対して、1組の被写体像を形成する。
【0047】
撮像素子34には、2眼レンズ33を透過した光がそれぞれ結像する。その結果、撮像素子34の撮像面には、1組の被写体像が形成されることとなる。2眼レンズ33には、コンデンサレンズ32を射出した様々な方向の光束が入射するため、形成される1組の被写体像間には、位相差が存在する。以下では、この1組の被写体像を、位相差像と称することとする。本実施形態に係るデフォーカス量検出部30は、この位相差を利用することで、拡大像撮像部20中に存在する照明視野絞りのデフォーカス量を検出する。
【0048】
以上の説明では、対物レンズ23と撮像素子24との間にビームスプリッター31が設けられる場合について説明したが、光線を分岐するための光線分岐手段はビームスプリッターに限定されるわけではなく、可動式ミラー等を利用することも可能である。
【0049】
また、サムネイル像撮像部10、拡大像撮像部20及びデフォーカス量検出部30それぞれに設けられる撮像素子は、1次元撮像素子であってもよく、2次元撮像素子であってもよい。
【0050】
なお、拡大像撮像部20及びデフォーカス量検出部30については、以下で改めて詳細に説明する。
【0051】
[制御部]
本実施形態に係る顕微鏡1には、図1に示したように、顕微鏡の様々な部位を制御するための制御部が接続されている。具体的には、本実施形態に係る顕微鏡1には、光源11及び光源21を含む、顕微鏡1が備える各種の光源を制御するための照明制御部51が接続されており、ステージ駆動機構41には、ステージ駆動機構41を制御するステージ駆動制御部52が接続されている。また、コンデンサレンズ22には、コンデンサレンズ22の位置制御を行うコンデンサレンズ駆動制御部53が接続されている。更に、位相差像を撮像するための撮像素子34には、位相差像撮像制御部54が接続されており、サムネイル像を撮像するための撮像素子13には、サムネイル像撮像制御部55が接続されている。また、生体サンプルSPLの拡大像を撮像するための撮像素子24には、拡大像撮像制御部56が接続されている。これらの制御部は、各種のデータ通信路を介して制御を行う部位に対して接続されている。
【0052】
また、本実施形態に係る顕微鏡1には、顕微鏡全体の制御を行う制御部(以下、統括制御部50と称する。)が別途設けられており、上述の各種の制御部に、各種のデータ通信路を介して接続されている。
【0053】
これらの制御部は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ストレージ装置、通信装置及び演算回路等により実現されるものである。
【0054】
以下では、上記制御部について、その機能を簡単に説明するものとする。
【0055】
○照明制御部
照明制御部51は、本実施形態に係る顕微鏡1が備える各種の光源を制御する処理部である。照明制御部51は、統括制御部50から生体サンプルSPLの照明方法を示す情報が出力されると、取得した照明方法を示す情報に基づいて、対応する光源の照射制御を行う。
【0056】
例えば、照明制御部51が、サムネイル像撮像部10に設けられた光源11の制御を行う場合について着目する。かかる場合、照明制御部51は、照明方法を示す情報を参照して、明視野像を取得すべきモード(以下、明視野モードとも称する。)又は暗視野像を取得すべきモード(以下、暗視野モードとも称する。)のどちらを実行するかを判断する。その後、照明制御部51は、各モードに応じたパラメータを光源11に対して設定し、光源11から、各モードに適した照明光を照射させる。これにより、光源11から照射された照明光が、ステージ40の開口部を介して、生体サンプルSPL全体に照射されることとなる。なお、照明制御部51が設定するパラメータとしては、例えば、照明光の強度や光源種類の選択等を挙げることができる。
【0057】
また、照明制御部51が、拡大像撮像部20に設けられた光源21の制御を行う場合について着目する。かかる場合、照明制御部51は、照明方法を示す情報を参照して、明視野モード又は暗視野モードのどちらを実行するかを判断する。その後、照明制御部51は、各モードに応じたパラメータを光源21に対して設定し、光源21から、各モードに適した照明光を照射させる。これにより、光源21から照射された照明光が、ステージ40の開口部を介して、生体サンプルSPL全体に照射されることとなる。なお、照明制御部51が設定するパラメータとしては、例えば、照明光の強度や光源種類の選択等を挙げることができる。
【0058】
なお、明視野モードにおける照射光は、可視光とすることが好ましい。また、暗視野モードにおける照射光は、特殊染色で用いられる蛍光マーカを励起可能な波長を含む光とすることが好ましい。また、暗視野モードでは、蛍光マーカに対する背景部分はカットアウトされることとなる。
【0059】
○ステージ駆動制御部
ステージ駆動制御部52は、本実施形態に係る顕微鏡1に設けられたステージを駆動するためのステージ駆動機構41を制御する処理部である。ステージ駆動制御部52は、統括制御部50から生体サンプルSPLの撮像方法を示す情報が出力されると、取得した撮像方法を示す情報に基づいて、ステージ駆動機構41の制御を行う。
【0060】
例えば、本実施形態に係る顕微鏡1により、サムネイル像を撮像する場合に着目する。ステージ駆動制御部52は、統括制御部50から、生体サンプルSPLのサムネイル像を撮像する旨の情報が出力されると、プレパラートPRT全体が撮像素子13の撮像範囲に入るように、ステージ面方向(X―Y軸方向)にステージ40を移動させる。また、ステージ駆動制御部52は、プレパラートPRT全体に対物レンズ12の焦点が合うように、ステージ40をZ軸方向に移動させる。
【0061】
また、本実施形態に係る顕微鏡1により、拡大像を撮像する場合について着目する。ステージ駆動制御部52は、統括制御部50から、生体サンプルSPLの拡大像を撮像する旨の情報が出力されると、ステージ駆動制御部52は、ステージ駆動機構41を駆動制御し、光源11と対物レンズ12との間からコンデンサレンズ22と対物レンズ23との間に生体サンプルSPLが位置するよう、ステージ面方向にステージ40を移動させる。
【0062】
また、ステージ駆動制御部52は、撮像素子24に撮像される撮像範囲に生体サンプルの所定の部位が位置するように、ステージ面方向(X−Y軸方向)にステージ40を移動させる。
【0063】
更に、ステージ駆動制御部52は、ステージ駆動機構41を駆動制御して、所定の撮影範囲内に位置する生体サンプルSPLの部位が対物レンズ23の焦点に合うように、ステージ面に直交する方向(Z軸方向、組織切片の奥行方向)にステージ40を移動させる。
【0064】
○コンデンサレンズ駆動制御部
コンデンサレンズ駆動制御部53は、本実施形態に係る顕微鏡1の拡大像撮像部20に設けられたコンデンサレンズ22を駆動するためのコンデンサレンズ駆動機構42を制御する処理部である。コンデンサレンズ駆動制御部53は、統括制御部50から、照明視野絞りのデフォーカス量に関する情報が出力されると、取得したデフォーカス量に関する情報に基づいて、コンデンサレンズ駆動機構42の制御を行う。
【0065】
後述するように、拡大像撮像部20内に設けられた照明視野絞りが適切に合焦していない場合には、生成される拡大像のコントラストが低下してしまう。かかるコントラストの低下を防止するために、本実施形態に係る顕微鏡1では、後述する統括制御部50において、デフォーカス量検出部30により生成される位相差像に基づく照明視野絞りのデフォーカス量の特定処理が行われる。統括制御部50は、特定した照明視野絞りのデフォーカス量を表す情報をコンデンサレンズ駆動制御部53に出力して、照明視野絞りが合焦するようにコンデンサレンズ22の位置を変更させる。
【0066】
コンデンサレンズ駆動制御部53は、コンデンサレンズ駆動機構42の駆動制御を行って、照明視野絞りが合焦するように、コンデンサレンズ22の位置(光軸ERA上の位置)を修正する。
【0067】
○位相差像撮像制御部
位相差像撮像制御部54は、デフォーカス量検出部30に設けられた撮像素子34の制御を行う処理部である。位相差像撮像制御部54は、明視野モード又は暗視野モードに応じたパラメータを、撮像素子34に設定する。また、位相差像撮像制御部54は、撮像素子34から出力される、撮像素子34の結像面に結像した像に対応する出力信号を取得すると、取得した出力信号を、位相差像に対応する出力信号とする。位相差像撮像制御部54は、位相差像に対応する出力信号を取得すると、取得した信号に対応するデータを統括制御部50に出力する。なお、位相差像撮像制御部54が設定するパラメータとして、例えば、露光の開始タイミング及び終了タイミング(換言すれば、露光時間)等を挙げることができる。
【0068】
○サムネイル像撮像制御部
サムネイル像撮像制御部55は、サムネイル像撮像部10に設けられた撮像素子13の制御を行う処理部である。サムネイル像撮像制御部55は、明視野モード又は暗視野モードに応じたパラメータを、撮像素子13に設定する。また、サムネイル像撮像制御部55は、撮像素子13から出力される、撮像素子13の結像面に結像した像に対応する出力信号を取得すると、取得した出力信号を、サムネイル像に対応する出力信号とする。サムネイル像撮像制御部55は、サムネイル像に対応する出力信号を取得すると、取得した信号に対応するデータを統括制御部50に出力する。なお、サムネイル像撮像制御部55が設定するパラメータとして、例えば、露光の開始タイミング及び終了タイミング等を挙げることができる。
【0069】
○拡大像撮像制御部
拡大像撮像制御部56は、拡大像撮像部20に設けられた撮像素子24の制御を行う処理部である。拡大像撮像制御部56は、明視野モード又は暗視野モードに応じたパラメータを、撮像素子24に設定する。また、拡大像撮像制御部56は、撮像素子24から出力される、撮像素子24の結像面に結像した像に対応する出力信号を取得すると、取得した出力信号を、拡大像に対応する出力信号とする。拡大像撮像制御部56は、拡大像に対応する出力信号を取得すると、取得した信号に対応するデータを統括制御部50に出力する。なお、拡大像撮像制御部56が設定するパラメータとして、例えば、露光の開始タイミング及び終了タイミング等を挙げることができる。
【0070】
○統括制御部
統括制御部50は、上述の各種制御部を含む顕微鏡全体の制御を行う処理部である。以下では、図2を参照しながら、本実施形態に係る統括制御部50の構成について、詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る統括制御部50の構成を示したブロック図である。
【0071】
統括制御部50は、図2に示したように、サムネイル像取得部501、位相差像取得部503、拡大像取得部505、特徴量算出部507、エッジ位置検出部509、厚み変化量算出部511、明度補正部513、通信部515及び記憶部517を主に備える。
【0072】
サムネイル像取得部501は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。顕微鏡1に対して所定のユーザ操作がなされた場合や、ステージ40にプレパラートPRTが載置された場合等に、サムネイル像取得部501は、サムネイル像撮像制御部55に対して、各種設定条件とともにサムネイル像を撮像するように要請する。
【0073】
また、サムネイル像取得部501は、サムネイル像撮像制御部55から出力される、サムネイル像に対応するデータ(以下、サムネイル像データとも称する。)を取得する。サムネイル像取得部501は、取得したサムネイル像データを、後述する記憶部517に格納してもよい。また、サムネイル像取得部501は、取得したサムネイル像データを、後述する通信部515を介して、外部に設けられた画像データ格納サーバ等に出力してもよい。
【0074】
位相差像取得部503は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。位相差像取得部503は、所定のタイミングにおいて、位相差像撮像制御部54に対して、各種設定条件とともに位相差像を撮像するように要請する。ここで、位相差像の撮像を要請するタイミングとしては、例えば、照明視野絞りのピント調整を実施するようユーザ操作等により要請された場合、前回照明視野絞りのピント調整を実施してから所定の期間が経過した場合、拡大像の撮像を開始する場合、その他予め決定されたタイミングが到達した場合等がある。
【0075】
また、位相差像取得部503は、位相差像撮像制御部54から出力される、位相差像に対応するデータ(以下、位相差像データとも称する。)を取得する。位相差像取得部503は、取得した位相差像データを、後述する特徴量算出部507に出力する。また、位相差像取得部503は、取得した位相差像データを、後述する記憶部517に格納してもよい。
【0076】
拡大像取得部505は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。顕微鏡1に対して所定のユーザ操作がなされた場合や、あるプレパラートPRTのサムネイル像の撮像が終了した場合等に、拡大像取得部505は、拡大像撮像制御部56に対して、各種設定条件とともに拡大像を撮像するように要請する。
【0077】
また、拡大像取得部505は、拡大像撮像制御部56から出力される、拡大像に対応するデータ(以下、拡大像データとも称する。)を取得する。拡大像取得部505は、取得した拡大像データを、後述する記憶部517に格納してもよい。また、拡大像取得部505は、取得した拡大像データを、後述する通信部515を介して、外部に設けられた画像データ格納サーバ等に出力してもよい。
【0078】
特徴量算出部507は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。特徴量算出部507は、位相差像取得部503が取得した位相差像データに基づいて、拡大像撮像部20内に設けられた照明視野絞りのピントのズレ度合いを表す特徴量を算出する。特徴量算出部507が算出する特徴量及び特徴量の算出方法については、以下で改めて詳細に説明する。特徴量算出部507は、照明視野絞りのピントのズレ度合いを表す特徴量を算出すると、算出した特徴量を、コンデンサレンズ駆動制御部53に出力する。コンデンサレンズ駆動制御部53は、出力された特徴量に応じてコンデンサレンズ駆動機構42を駆動することで、照明視野絞りのピンボケを解消する。
【0079】
なお、特徴量算出部507は、照明視野絞りのピントのズレ度合いを表す特徴量を算出する際に、照明制御部51に対して照明光の光量に関する要請をしたり、ステージ駆動制御部52に対してサンプルの合焦度合いに関する要請をしたりすることが可能である。
【0080】
また、以下で説明するように、特徴量の算出方法には各種の方法があるが、特徴量算出部507は、後述するエッジ位置検出部509と連携しながら、特徴量を算出することも可能である。
【0081】
なお、特徴量算出部507が算出する特徴量や、特徴量の算出の途中経過で得られる各種数値は、厚み変化量算出部511や明度補正部513が、それぞれの処理部で実施する処理に利用される。
【0082】
エッジ位置検出部509は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。エッジ位置検出部509は、特徴量算出部507や、後述する厚み変化量算出部511等から、位相差像取得部503が取得した位相差像のエッジ検出を要請された場合に、位相差像のエッジ位置を検出する。エッジ位置検出部509がエッジ位置の検出に利用する方法は、特に限定されるわけではなく、公知の方法を利用することが可能である。また、本実施形態に係るエッジ位置検出部509が行うエッジ位置検出処理の一例については、以下で改めて詳細に説明する。
【0083】
本実施形態に係る位相差像は、後述するように、拡大像撮像部20内に設けられた照明視野絞りの形状に関する像となっている。エッジ位置検出部509は、例えば以下で説明するようなエッジ位置検出処理を行うことで、照明視野絞りの形状(換言すれば、照明視野絞りによって遮られた視野の形状)におけるエッジ位置を検出する。ここで、エッジ位置検出部509によって検出されるエッジ位置は、例えば、撮像素子34における画素の座標として表される。
【0084】
エッジ位置検出部509は、検出したエッジ位置に関する情報を、エッジ位置検出処理の要請のあった処理部(例えば、特徴量算出部507や厚み変化量算出部511)に出力する。
【0085】
なお、エッジ位置検出部509は、平面画像(すなわち、2次元画像)から1次元のみを抽出してエッジ位置の検出を行ってもよく、2次元画像そのものに対してエッジ位置検出を行ってもよい。
【0086】
厚み変化量算出部511は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。前述のように、プレパラートPRTは、厚み方向にばらつきを持ったカバーガラス及びスライドガラスを用いて作製される。カバーガラス及びスライドガラスの厚みのばらつき度合いを考慮すると、カバーガラスの厚みの変化よりも、スライドガラスの厚みの変化の方が、得られる拡大像のコントラスト変化に大きな影響を与える要因となる。そこで、厚み変化量算出部511は、生体サンプルSPLが載置されているスライドガラスの厚みの変化量を、位相差像取得部503が取得した位相差像データを利用して算出する。
【0087】
なお、スライドガラスの厚み変化量を算出する際に利用するデータや、算出に利用される数値は、特徴量算出部507が特徴量を算出する際に利用したり途中経過として算出されたりするものと重複しているものがある。そこで、厚み変化量算出部511は、特徴量算出部507と連携しながら、効率よく厚み変化量の算出を行うようにしてもよい。
【0088】
厚み変化量算出部511が実施する厚み変化量の算出方法の詳細については、以下で改めて詳細に説明する。
【0089】
明度補正部513は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。明度補正部513は、拡大像撮像部20に設けられた撮像素子24から出力された拡大像の明度を補正する。明度補正部513は、明度補正を行うに当たって、後述する記憶部517等に格納されている、厚み変化量と明度補正パターンとが互いに関連付けられたデータベースを参照する。明度補正部513は、厚み変化量算出部511が算出した厚み変化量に基づいて、かかるデータベースの検索を行い、算出された厚み変化量に適した明度補正パターンを選択する。その後、明度補正部513は、選択した明度補正パターンを利用して、拡大像の明度補正処理を実施する。
【0090】
また、明度補正部513は、上記明度補正パターンを利用する方法以外にも、照明視野絞りが合焦するように、光源21の後段に位置する光学素子(例えば、コンデンサレンズ22)の位置を制御してもよい。かかる場合には、明度補正部513は、照明視野絞りが合焦するようにコンデンサレンズ22を駆動するよう、コンデンサレンズ駆動制御部53にコンデンサレンズの駆動制御処理を要請する。
【0091】
通信部515は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。通信部515は、本実施形態に係る顕微鏡1(より詳細には、統括制御部50)と、顕微鏡1の外部に設けられた各種の情報処理装置との間で実施される通信を制御する。かかる通信部515により、本実施形態に係る顕微鏡1は、インターネット等の公共のネットワークやローカルエリアネットワーク等のプライベートネットワークに接続されている各種の情報処理装置(例えば、生体サンプルの顕微鏡画像が格納される画像データ格納サーバ等)と相互に通信を行うことが可能となる。
【0092】
記憶部517は、本実施形態に係る統括制御部50が備えるストレージ装置の一例である。この記憶部517には、本実施形態に係る顕微鏡1の各種の設計パラメータや、明度補正パターンに関するデータベース等が格納されている。また、記憶部517には、各種の撮像データや履歴情報等が記録されていてもよい。さらに、記憶部517には、本実施形態に係る統括制御部50が何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベースやプログラム等が、適宜記録される。
【0093】
この記憶部517は、統括制御部50が備える各処理部が自由に読み書きを行うことが可能である。
【0094】
以上、本実施形態に係る統括制御部50の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
【0095】
なお、上述のような本実施形態に係る統括制御部やその他の制御部の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0096】
以上、図1及び図2を参照しながら、本実施形態に係る顕微鏡1の全体的な構成について、詳細に説明した。
【0097】
なお、前述の説明では、デフォーカス量検出部30内の位相差AF光学系としてコンデンサレンズ、2眼レンズ及び撮像素子を有する構成を示した。しかしながら、かかる例に限定されるわけではなく、例えば2眼レンズを1枚のレンズとして、エッジ検出を行いスライドガラスの厚み変化量を検出する等、同等の機能を実現可能なものであれば、他の光学系であってもよい。
【0098】
また、本実施形態に係る顕微鏡1で用いられる透過照明光学系は、ケーラー照明であってもよく、他の照明光学系であってもよい。
【0099】
更に、前述の例では、ビームスプリッター31にて反射した光が進行する方向にデフォーカス量検出部30が設置される場合について示したが、ビームスプリッター31を透過した光が進行する方向にデフォーカス量検出部30を設置してもよい。
【0100】
<照明視野絞りのピント調整処理について>
続いて、図3〜図9を参照しながら、本実施形態に係る顕微鏡1で実施される照明視野絞りのピント調整処理について、詳細に説明する。
【0101】
[拡大像撮像部及び位相差AF光学部の構成の一例について]
まず、図3を参照しながら、本実施形態に係る拡大像撮像部20及びデフォーカス量検出部30の構成の一例について説明する。図3は、本実施形態に係る顕微鏡(より詳細には、拡大像撮像部20及びデフォーカス量検出部30)の光学系を概略的に示した説明図である。
【0102】
本実施形態に係る拡大像撮像部20は、図3に示したように、ステージ40(より詳細には、プレパラートPRT)の前段に位置し、プレパラートPRTに照明光を投影する照明光学系と、プレパラートPRTの後段に位置する結像光学系211と、からなる。また、照明光学系は、照明視野絞り205の前段(光源21側)に位置する透過照明前段光学系201と、照明視野絞り205の後段に位置する透過照明後段光学系203と、からなる。また、結像光学系211の内部には、ビームスプリッター31が設けられており、ビームスプリッター31により分岐された光束は、デフォーカス量検出部30へと導かれる。このデフォーカス量検出部30は、位相差オートフォーカス(AF)光学系301からなる。
【0103】
なお、以下の説明では、第1の結像光学系の一例である結像光学系211の倍率をMIと表すこととし、第2の結像光学系の一例である位相差AF光学系301の倍率をMAと表すこととする。
【0104】
光源21から照射された光線(照明光)は、図示されていない固定機構にて機械的に固定された透過照明前段光学系201を透過する。その後、透過照明前段光学系201を透過した光線は、透過正面後段光学系203内の照明視野絞り205へと入射する。ここで照明視野絞り205のエッジ(照明視野絞りの絞り形状のエッジ)の結像を考えるため、照明視野絞り205のエッジからの回折光束Aを考える。
【0105】
光束Aは、透過照明後段光学系203内のコンデンサレンズ207,209を透過し、ステージ40上に保持された屈折率nのスライドガラスA表面上の試料面へと結像される。結像面にて結像された光束Aは、結像光学系211に入射した光束Aは、コンデンサレンズ(対物レンズ)213及びコンデンサレンズ215を透過し、拡大像撮像部20の撮像素子24の撮像面217に結像する。これにより、ユーザは、照明視野絞り205及び試料面が撮像素子24で共に結像した状態で、これらの像Aを観察することができる。
【0106】
また、光束Aの一部は、結像光学系211内に位置するビームスプリッター(以下、BSと略記する。)によって反射され、分岐された光束Aの一部(以下、光束Bとも称する。)は、位相差AF光学系301に入射する。光束Bは、相差AF光学系301内に設けられたコンデンサレンズ32を透過した後、2眼レンズ33へと導かれる。これら2眼レンズ33により導かれた光束Bは、デフォーカス量検出部30内の撮像素子34の撮像面305で結像し、2つの視野絞り像B,C(すなわち、位相差像)が生成されることとなる。これにより、ユーザは、1組の位相差像である視野絞り像B,Cを観察することができる。
【0107】
[厚みが異なるスライドガラスが載置された場合について]
次に、図4〜図6を参照しながら、スライドガラスAと厚みがΔt異なる屈折率nのスライドガラスBを、図3に示した光学系に設置した場合について考える。図4は、本実施形態に係る顕微鏡の光学系を概略的に示した説明図である。図5A及び図5Bは、スライドガラスの厚みと照明視野絞りの結像位置との関係を示した説明図である。図6は、照明視野絞りのピントのズレ度合いを示す特徴量を定式化する際のパラメータについて説明するための説明図である。
【0108】
照明視野絞り205からの光束A’は、透過照明後段光学系203内のコンデンサレンズ207,209を透過して、スライドガラスBへと入射する。ここで、ステージ40が図3と同様の位置に設置された場合を考えると、スライドガラスの厚みがΔt増加したことで、照明視野絞り205はスライドガラスB内に結像された状態となる。
【0109】
図5Aに示したように、図3に示した状態における結像光学系211から試料面までの距離をd1とし、スライドガラス厚をtとし、透過照明後段光学系203からスライドガラスまでの距離をd2とする。かかる場合において、スライドガラスの厚みがtから(t+Δt)に変化すると、結像光学系211から試料面までの距離と、透過照明後段光学系203からスライドガラスまでの距離は、それぞれd1−Δt、d2となる。
【0110】
また、図3及び図5Aに示した光学系において、結像光学系211から試料面までの間の空間は空気で満たされており、結像光学系211からスライドガラスまでの光学距離は、(空気の屈折率=1)×(結像光学系211から試料面までの距離)=d1となる。
【0111】
他方、図4及び図5Bに示した光学系では、屈折率nの空間(すなわち、スライドガラス内の空間)をΔtだけ進むこととなるため、結像光学系211からスライドガラスまでの光学距離は、1×(d1−Δt)+n×Δt=d1+(n−1)Δtとなる。
【0112】
ここで、図6から明らかなように、スネル(Snell)の法則より、以下の式101がsin(θ)=n×sin(θ’)が成立する。また、集光点シフト量をDとすると、図6に示した幾何学的関係から、以下の式102が成立することがわかる。Δt×sin(θ’)=(Δt−D)×sin(θ)となる。
【0113】
sin(θ)=n×sin(θ’) ・・・(式101)
Δt×sin(θ’)=(Δt−D)×sin(θ) ・・・(式102)
【0114】
従って、式101及び式102から、集光点シフト量Dは、以下の式103のように表されることとなる。
【0115】
【数1】

【0116】
従って、図5Bに示した状態では、集光点シフト量Dだけ結像光学系211から集光点がずれることとなり、撮像素子24の撮像面217上でのデフォーカス量は、結像光学系211の倍率がMIであることから、D×(MI)となる。その結果、撮像面217上では、照明視野絞り205のピントずれが発生した状態となる。
【0117】
本実施形態に係る顕微鏡1では、このピントズレ量D×(MI)を検出するために、位相差AF光学系301から得られる情報を利用する。
【0118】
[ピントズレ量の検出原理]
ビームスプリッター31により光束A’から分岐された光束B’は、光束Bと比較してD×(MI)だけデフォーカスした状態で、位相差AF光学系301へ入射することとなる。位相差AF光学系301は、図3に示したように、コンデンサレンズ32及び2眼レンズ33を有しており、以下で詳細に説明するように、デフォーカス量を撮像面305の平面方向での移動量Δxとして検出可能である。
【0119】
以下では、図7を参照しながら、ピントズレ量の検出原理について説明する。図7は、照明視野絞りのピントのズレ度合いを示す特徴量を定式化する際のパラメータについて説明するための説明図である。
【0120】
図7に示したような、結像面(すなわち、撮像面305)近傍に配置されたコンデンサレンズ32により、複数の像高(image height)の光束が2眼レンズ33へ入射し、2眼レンズ33により撮像面305へ2つの画像が結像する光学系を考える。ここで、図7に示したように、中心軸から各2眼レンズ33までの平面方向シフト量をaとし、コンデンサレンズ32から2眼レンズ33までの距離をs1とし、2眼レンズ33から撮像面305までの距離をs2とする。
【0121】
ここで、撮像面305の平面方向の移動量Δxは、図7における幾何学的関係から、以下の式104のように表すことができる。ここで、スライドガラスの厚みの変化量のオーダーと、コンデンサレンズ32から2眼レンズ33までの距離のオーダーとを考慮した場合、s1>>D・(MI)が成立すると考えられる。すると、以下の式104は、倍率MAに関するMA=(s2/s1)という関係式を用いて、以下の式105の左側の等式のように表すことができる。ここで、上記式103より集光点シフト量Dとスライドガラスの厚みの変化量Δtとは比例関係にあるため、結局、撮像面305の平面方向の移動量Δxは、スライドガラスの厚みの変化量Δtと比例関係にあることがわかる。
【0122】
【数2】

【0123】
よって、照明視野絞りのピンボケ量を表す特徴量である集光点シフト量Dは、撮像素子34での像B又は像Cの平面移動量Δxで検出することが可能となる。
【0124】
[照明視野絞りのピント位置について]
特徴量算出部507による集光点シフト量Dの算出処理について説明するに先立ち、まず、図8を参照しながら、照明視野絞りの適切な位置について説明する。
【0125】
本実施形態に係る位相差AF光学系301では、位相差像として2つの被写体像が撮像素子34上に結像される。ここで、照明視野絞り205とコンデンサレンズとが適切な位置関係にあって、照明が適切にスライドガラスに照射されている場合には、位相差像において、視野領域を表す窓は、2眼レンズ33の左目に対応する画像と右目に対応する画像とで同じ位置となる。しかし、コンデンサレンズが適切な位置に存在せず、照明位置が適正位置よりも下側(光源21側)になると、視野領域を表す窓は、撮像素子34の中央寄り(図7に示したx軸方向に沿って撮像素子34の中央寄り)に移動する。逆に、照明位置が適正位置よりも上側になると、視野領域を表す窓は、撮像素子34のx軸方向に沿った端部方向へと移動する。従って、撮像素子34に結像する窓の位置関係に着目することで、照明位置を特定することができる。
【0126】
ここで、予め照明位置(例えば、照明視野絞りとコンデンサレンズとの間の距離)を様々に変化させながら、位相差像における左右の窓位置の間隔を測定しておき、窓位置の間隔と照明位置との相関関係を把握しておく。この相関関係において、照明位置を適正位置からの差として表すことで、窓位置の間隔から、適正照明位置からの差を算出することが可能となる。
【0127】
この際、位相差像における左右の窓位置の間隔は、図8に示したようにして特定することができる。すなわち、撮像素子34の中央を通過する、撮像素子34の幅方向に対応する軸をx軸とした場合に、x軸上の撮像素子34の出力信号値(すなわち、輝度値)の分布に着目する。撮像素子34には、左目に対応する画像と右目に対応する画像の2つの像が結像しているため、図8(a)に示したように、左目の画像に対応する輝度値の分布と、右目に対応する輝度値の分布とが検出される。
【0128】
まず、左目及び右目に対応する画像の輝度値を移動平均で平滑化し、左右それぞれの輝度の最大値(Lmax及びRmax)と最小値(Lmin及びRmin)とを検出する。その後、左右それぞれの輝度値を、左右独立に正規化する。その結果、図8(b)に示したような輝度分布を得ることができる。この正規化輝度分布において、所定の閾値を超える輝度値となる画素位置を、左目に対応する画像は輝度分布の左側端部から、右目に対応する画像は輝度分布の右側端部から、それぞれ探索していく。ここで、図8(b)に示したように、左目に対応する画像は、座標Lposにて所定の輝度値となり、右目に対応する画像は、座標Rposにて所定の輝度値となったとする。この場合、座標LposとRposとの差を、位相差像における左右の窓位置の間隔とする。
【0129】
このようにして窓位置の間隔と照明位置との相関関係を特定しておくことで、実際に計測される窓位置の間隔と、この相関関係とに基づいて、照明位置を特定することが可能となる。また、照明位置とスライドガラスの厚みとの相関関係を予め測定しておくことで、特定した照明位置に基づいて、スライドガラスの厚みtを算出することも可能である。
【0130】
以上のような方法で算出した適正照明位置との差を用いて、適切な照明位置を実現するための照明視野絞りのピント調節を行うことが可能であるが、本実施形態に係る特徴量算出部507は、以下のような方法を用いて照明視野絞りのピント調節を実施する。
【0131】
[特徴量算出部における特徴量算出処理]
次に、統括制御部50の特徴量算出部507が実施する特徴量の算出処理(すなわち、集光点シフト量Dの算出処理)について、具体的に説明する。以下で説明する本実施形態に係る特徴量算出部507による特徴量算出処理は、位相差像データに記載されている光強度信号に対して行われる信号処理である。この光強度信号は、撮像素子34を構成する各画素が検知した光束の強度(すなわち、受光した光の強度)を表すものであり、撮像素子34を構成する各画素が検知した光の輝度値を表すものであるともいえる。
【0132】
上記式105に示したように、集光点シフト量Dと比例関係にある平面移動量Δxを検出することで、スライドガラスの厚みの変化量Δtを検知することが可能である。ここで、厚みtのスライドガラスに対して照明視野絞り205とコンデンサレンズとが適切な位置関係にあり、照明視野絞りの位相差像が合焦点状態にある場合には、左右の位相差像は、左右(x軸方向)に均等に分布していると考えられる。そこで、特徴量算出部507は、以下のような信号処理を行うことで、照明視野絞りのピントのズレ度合いを表す特徴量である集光点シフト量Dを算出する。
【0133】
特徴量算出部507は、位相差像取得部503が取得した位相差像データを参照して、位相差像(すなわち、図9における像B及び像C)の撮像面305での光強度信号を特定する。その後、特徴量算出部507は、図9に示したようにデフォーカス時の撮像面での位相差像の移動方向が逆であることを利用して、以下のような値を算出する。
【0134】
すなわち、特徴量算出部507は、撮像素子34の各画素xから得られる像Bの信号強度f(x)と、像Cの信号強度g(x)を利用して、以下の式106で表される2つの信号強度の差Aを算出する。また、特徴量算出部507は、算出した信号強度の差Aを利用して、以下の式107で表される値Aを算出する。
【0135】
【数3】

【0136】
ここで、照明視野絞り205が合焦点状態にある場合には、f(x)=g(x)となるため、算出されるA=0となる。しかしながら、スライドガラスの厚みの変化により、合焦点状態からΔtずれた状態にある場合には、撮像素子34の画素数をk(すなわち、i=1,・・・,k)とすると、値Aは、以下の式108のように表される。
【0137】
【数4】

【0138】
ここで、上記式108におけるk,a,s1,MA及びMIは、本実施形態に係る顕微鏡1に固有の値(設計値)であるため、特徴量算出部507は、算出した値Aに基づいて、集光点シフト量Dを算出することができる。
【0139】
なお、以上のような特徴量算出部507による特徴量の算出処理は、ステージ40上に載置された生体サンプルにピントが合っている状態にて行っても良いが、生体サンプルにピントが合っていない状態にて行うことが好ましい。換言すれば、特徴量算出部507による特徴量の算出処理は、生体サンプルの透過光が、結像光学系211内に設けられた撮像素子24上に合焦していない状態で行われることが好ましい。生体サンプルにピントが合っている状態では、像B及び像Cに対応する出力信号に、生体サンプルに対応する信号が含まれることとなり、算出される特徴量の誤差要因となる可能性があるからである。
【0140】
算出される特徴量に含まれる誤差を低減するために、統括制御部50は、照明光の強度を、撮像素子34上に結像した位相差像の出力信号強度が飽和するように調整してもよい。また、照明視野絞りの枠が撮像素子34に結像した際に、かかる照明視野絞りの枠が撮像素子34の枠内に収まるようになっていることが好ましい。換言すれば、照明視野絞りの枠(照明視野絞りの形状)での光束が、光学系内に存在する各種の絞りによりケラれることなく、撮像素子34に結像することが好ましい。これにより、特徴量算出部507は、より正確に特徴量を算出することが可能となる。
【0141】
本実施形態に係る統括制御部50は、特徴量算出部507が算出した特徴量(すなわち、集光点シフト量D)に基づいて、照明視野絞りのピント調整を実施する。
透過照明後段光学系203内に位置するコンデンサレンズ209の倍率が0である場合、コンデンサレンズシフト量ΔZ=コンデンサレンズAの集光点シフト量となる。そのため、特徴量算出部507は、算出した集光点シフト量Dを表す情報を、コンデンサレンズ駆動制御部53に出力する。コンデンサレンズ駆動制御部53は、取得した集光点シフト量Dに応じてコンデンサレンズ駆動機構42の駆動制御を行い、コンデンサレンズ209をレンズの光軸方向に駆動する。これにより、照明視野絞り205を撮像素子の撮像面上へ結像させることが可能となる。
【0142】
なお、透過照明後段光学系203内に位置するコンデンサレンズ209の倍率は、任意の値とすることができる。なお、コンデンサレンズ209の倍率が0以外である場合には、集光点シフト量Dとレンズシフト量ΔZとの関係がレンズ固有の関係で決定される。そのため、集光点シフト量Dとレンズシフト量ΔZとの相関関数を予め統括制御部50(例えば、記憶部517等)に格納しておき、特徴量算出部507は、格納されている相関関数を用いて、集光点シフト量Dに基づいてレンズシフト量ΔZを決定する。特徴量算出部507は、算出したレンズシフト量ΔZをコンデンサレンズ駆動制御部53に出力することで、照明視野絞りのピント調整を実施することができる。
【0143】
かかる処理を行うことで、透過照明後段光学系203内の任意のレンズにとりつけられたコンデンサレンズ駆動機構42により、スライドガラスの厚みズレΔtに起因する照明視野絞りのピントズレを、自動的に補正することが可能となる。かかる処理をスライドガラスを交換するたびに行うことで、本実施形態に係る顕微鏡1は、観察スライドガラスの厚みによらず照明視野絞りのピントを合わせることが可能となる。
【0144】
このように、本実施形態に係る特徴量算出部507では、位相差AF光学系301により得られた位相差像の出力信号と、顕微鏡1に固有の値(設計パラメータ等)とを用いて演算を行うことで、照明視野絞りのピントズレ量を算出する。照明視野絞りピント調整部の一例であるコンデンサレンズ駆動制御部53は、特徴量算出部507から出力されたピントズレ量に応じてコンデンサレンズ駆動機構42を制御し、照明視野絞りのピントを調整する。
【0145】
かかる照明視野絞りのピント調整処理により、本実施形態に係る顕微鏡1では、照明視野絞りのピント調整を自動化することができ、従来目視にて調整されていた内容を、定量的に実施することが可能となる。また、位相差AF光学系にて照明視野絞りのピント調整が可能となるため、同一の顕微鏡を用いて、従来の位相差AFを試料面にて実施することが可能となる。
【0146】
<ステージ位置の調整処理について>
顕微鏡において複数の試料を観察する際、その試料は厚さ方向にばらつきをもったカバーガラスおよびスライドガラスにて作製される。薄い試料を観察する際、スライドガラスの厚みは1.1mm程度と、カバーガラス厚や試料厚と比較して1桁以上厚く、また厚みも数百μm程度ばらつくことがある。そのため、従来の顕微鏡のようにスライドガラス駆動ステージの上面にスライドガラスを保持し、スライドガラス上方に配置された顕微鏡光学系にて試料を観察した場合、スライドガラスの厚み変化量に応じて試料面から顕微鏡光学系までの距離が変化する。その結果、試料面を観察した画像が、デフォーカスによりボケてしまうという問題があった。
【0147】
そこで、本実施形態に係る統括制御部50の厚み変化量算出部511は、生体サンプルが載置されているスライドガラスの厚みの変化量を、位相差像取得部503が取得した位相差像データに基づいて算出し、算出結果に応じてステージ位置の調整を行う。
【0148】
上記式103を式105に代入することで、以下の式121を得ることができる。従って、撮像素子34での位相差像B又はCの平行移動量Δxに基づいて、スライドガラスの厚み変化量Δtを算出することができる。
【0149】
【数5】

【0150】
[厚み変化量Δtの算出方法−その1]
厚み変化量算出部511は、例えば以下のようにして、スライドガラスの厚み変化量Δtを算出することが可能である。
厚み変化量算出部511は、上記式106及び式107に基づいて、位相差像における光強度信号の差の合計Aを算出する。なお、この値Aは、特徴量算出部507が算出する値Aと同一のものであるため、厚み変化量算出部511は、独自にこの値を算出してもよく、特徴量算出部507が算出した値Aを取得して、厚み変化量の算出処理に利用してもよい。
【0151】
ここで、スライドガラスの厚みの変化により、合焦点状態からΔtずれた状態にある場合には、撮像素子34の画素数をk(すなわち、i=1,・・・,k)とすると、値Aは、以下の式122のように表される。
【0152】
【数6】

【0153】
ここで、上記式122におけるk,a,s1,MA及びMIは、本実施形態に係る顕微鏡1に固有の値(設計値)であるため、厚み変化量算出部511は、スライドガラスの屈折率nと、算出した値Aとに基づいて、厚み変化量Δtを算出することができる。
【0154】
[厚み変化量Δtの算出方法−その2]
また、厚み変化量算出部511は、例えば以下のようにして、スライドガラスの厚み変化量Δtを算出してもよい。なお、以下で説明する処理では、合焦点状態における位相差像B及び位相差像Cの少なくともいずれか一方のエッジ位置を表す情報(例えば、エッジ位置の座標等)が、記憶部517等に格納されているものとする。
【0155】
厚み変化量算出部511は、位相差像取得部503が取得した位相差像データについて、エッジ位置検出部509に対して、エッジ位置の検出処理を要請する。エッジ位置検出部509は、像B及び像Cの少なくともいずれか一方について、そのエッジ位置を検出する処理を実施し、対応する画像のエッジ位置を表すX座標xを検出する。このエッジ位置は、着目した像のX軸方向に沿った一方の端部を表す位置である。エッジ位置検出部509は、検出されたエッジ位置に関する情報を、厚み変化量算出部511に出力する。
【0156】
厚み変化量算出部511は、エッジ位置検出部509から出力されたエッジ位置座標xiと、合焦時のエッジのX座標(以下、Xと表記する。)とを利用して、エッジ位置の相対X座標であるx−Xを算出する。
【0157】
ここで、算出されるエッジ位置の相対X座標x−Xは、以下の式123のように表すことができる。
【0158】
【数7】

【0159】
ここで、上記式123におけるa,s1,MIは、本実施形態に係る顕微鏡1に固有の値(設計値)であるため、厚み変化量算出部511は、スライドガラスの屈折率nと、算出したエッジ位置の相対X座標とに基づいて、厚み変化量Δtを算出することができる。なお、本方法は、照明視野絞りのエッジ位置に基づいて、スライドガラスの厚み変化量を算出する方法であるため、照明視野絞り205のエッジが撮像素子34にて検出されるように、位相差AF光学系301の倍率MIを設定することが望ましい。以上説明したような本方式では、照明光のシェーディングの影響を避けることが可能となる。
【0160】
なお、以上のような厚み変化量算出部511による厚み変化量の算出処理は、ステージ40上に載置された生体サンプルにピントが合っている状態にて行ってもよいし、生体サンプルにピントが合っていない状態にて行ってもよい。
【0161】
本実施形態に係る統括制御部50は、厚み変化量算出部511が算出した厚み変化量Δtに基づいて、ステージ位置の調整を実施する。
図3等に示したように、スライドガラスの取り付け面がステージ40の結像光学系211側である場合、試料面のデフォーカス量は、スライドガラスの厚み変化量Δtと同一である。従って、厚み変化量算出部511は、算出した厚み変化量Δtを表す情報を、ステージ駆動制御部52に出力する。ステージ駆動制御部52は、取得した厚み変化量Δtに応じてステージ駆動機構41の駆動制御を行い、ステージ40をΔtだけ結像光学系211側へと移動させる。これにより、本実施形態に係る顕微鏡1では、スライドガラスの厚み変化に起因して生じた試料面のピントズレを補正することが可能となる。
【0162】
そのため、厚み変化量算出部511は、合焦点状態(例えば、図3に示した状態)での撮像面305のエッジ位置座標及びステージの位置を表す位置座標を保持しておき、厚み変化量を算出する際の基準値とする。その上で、図4に示したように、厚みの異なるスライドガラスを用いた試料がステージ40上に設置されると、格納されている基準値と、観察された撮像面305でのエッジ位置座標に基づいて、エッジ位置座標の変化量を算出する。統括制御部50は、算出した厚み変化量Δtに応じてステージを駆動することで、試料面を撮像素子24に結像した状態で観察することが可能となる。
【0163】
なお、前述の説明では、厚み変化量算出部511は、像B又は像Cにおいて、照明視野絞りの形状のある一方の側のエッジ位置に基づいて、厚み変化量を算出する場合について説明したが、かかる場合に限定されるわけではない。厚み変化量算出部511は、像B及び像Cそれぞれにおいて、照明視野絞りのある一方の側のエッジ位置座標に基づいて、厚み変化量Δtを算出してもよい。また、厚み変化量算出部511は、像B及び像Cそれぞれにおいて、照明視野絞りの形状の両側のエッジ位置の和に基づいて、厚み変化量Δtを算出してもよい。このようにすることで、厚み変化量算出部511は、結像面ずれによる誤差の発生や、ディストーション(歪曲収差)による誤差の発生を、除去することが可能となる。
【0164】
このように、本実施形態に係る厚み変化量算出部511では、位相差AF光学系301により得られた位相差像の出力信号と、顕微鏡1に固有の値(設計パラメータ等)とを用いて演算を行うことで、スライドガラス厚やスライドガラスの厚み変化量を算出できる。また、本実施形態に係る統括制御部50は、算出したスライドガラスの厚み変化量に応じてステージ位置を駆動させることで、厚み方向の変化量が最も大きなスライドガラス厚の変化分をキャンセルし、試料を正確に観察することが可能となる。
【0165】
また、かかる厚み変化量を算出することで、試料面の位置(生体サンプルの光軸方向に沿った位置)によらず、スライドガラスの厚み変化量をもとに、試料面のピント調整が可能となる。そのため、スライドガラスの厚み変化に起因して大きなデフォーカスが発生し、試料面がほぼなんら信号を有さない状態となったとしても、試料面のピント調整を行うことが可能となる。このように、本方式によれば、試料面からの情報を用いずに、試料面のピント調整を行うことができる。
【0166】
また、従来の試料面ピント調整に利用可能な光学系を利用することで、照明視野絞り及び試料面双方のピント調整を、一台の装置にて実施することが可能となる。また、スライドガラスの厚み変化検出をもとにステージを駆動した後、試料面を位相差AF光学系にて観察して従来の位相差AFを行うことで、同一光学系にてピント微調整を実施することも可能となる。
【0167】
<明度ムラの補正処理について>
前述のように、スライドガラスの厚みは、その変動幅が大きく、かかる厚みの変化に起因して、ある厚みのスライドガラスでは合焦点状態にあった光学系が、ある厚みのスライドガラスでは合焦点状態ではなくなる、といった事態が生じうる。その結果、スライドガラスの厚みの変化に応じて、撮像素子24により撮像される被写体像(拡大像)の明度にもムラが生じる可能性がある。
【0168】
そこで、本実施形態に係る顕微鏡1では、前述のように、スライドガラスの厚みが変化して、照明視野絞りが合焦点状態ではなくなった場合、照明視野絞りが合焦点状態となるように、照明光学系の位置を調整する。
【0169】
照明光学系の位置が調整され、照明視野絞りが合焦点状態にある場合には、撮像された画像における明度のムラは、一定とみなすことが可能である。そこで、本実施形態に係る統括制御部50では、光学系が合焦点状態にある場合における明度ムラ補正用の明度ムラ補正パターンを予め準備しておき、記憶部517等に格納しておく。その後、本実施形態に係る明度補正部513は、照明視野絞りが合焦点状態となるように調整された後に撮像された被写体像に対して、予め格納されている共通の明度ムラ補正パターンを利用して、被写体像に含まれる明度ムラを補正する。
【0170】
また、照明視野絞りの合焦調整を行わない場合であっても、明度補正部513は、以下のような方法を用いることで、撮像された被写体像に存在しうる明度ムラを補正することが可能である。すなわち、スライドガラスの厚みごとに、予め複数種類の明度補正パターンを準備しておき、記憶部517等に格納しておく。その後、明度補正部513は、算出されたスライドガラスの厚みに応じて、複数の明度補正パターンの中から、明度補正処理に利用する明度補正パターンを選択する。明度補正部513は、選択した明度補正パターンを利用して明度ムラ補正を行うことが可能である。
【0171】
明度補正部513が、このような明度補正処理を実施することで、適切な被写体像を得ることが可能となる。
【0172】
以上、本実施形態に係る顕微鏡1で実施される各種処理について、詳細に説明した。
なお、前述の説明では、コンデンサレンズ駆動機構42により透過照明後段光学系203のコンデンサレンズを駆動する場合について説明したが、照明視野絞り205のピント位置を調整可能であるならば、他のレンズや照明光学系全体を駆動しても良い。
【0173】
また、前述の説明では、照明視野絞り205のピントズレがスライドガラスの厚み変化に起因するものとして説明したが、本実施形態に係る合焦方法によれば、他の原因による照明視野絞り205のピントズレを検出して調整することも可能である。
【0174】
更に、前述の説明では、位相差AF光学系301にて照明視野絞り205のピントズレを検出しているが、位相差AF光学系301にて試料面のピントズレを検出し、試料面のピント調整を実施してもよい。
【0175】
<変形例>
前述の説明では、特徴量算出部507が、位相差像データに記載されている信号強度を利用して特徴量(集光点シフト量D)を算出する場合について説明したが、特徴量算出部507は、以下で説明するような方法を用いて、特徴量を算出してもよい。
【0176】
前述のように、集光点シフト量Dは、式105を利用して、平面移動量Δxから算出することができる。ここで、平面移動量Δxを位相差像から決定するために、例えば図10に示したような撮像素子34に結像した位相差像(像B及び像C)のエッジ検出を利用する。ここで、図10に示したx軸は、撮像素子34の撮像面305の中心を通り、撮像素子の幅方向に対応する軸であり、図10に示したy軸は、撮像素子34の撮像面305の中心を通り、撮像素子の高さ方向に対応する軸である。
【0177】
図10のy=0におけるx座標方向での強度分布を示したものが、図11である。図11に示したように、撮像素子34にて観察される照明視野絞り像が一様な強度分布をしている場合、像のエッジ部分でのみ急激に信号量が変化する。そのため、例えば像B信号及び像C信号を微分すると、図12のように微分信号のピーク値をエッジとして検出することが可能となる。なお、一様な強度分布をしている照明視野絞り像を得るために、統括制御部50は、照明光の強度を、撮像素子34上に結像した位相差像の出力信号強度が飽和するように調整することが好ましい。本実施形態では、位相差像として生成される画像が2種類存在し、かつ、各画像についてx軸方向のエッジが左右2つ存在するため、位相差像に対してエッジ位置検出部509がエッジ位置の検出処理を行うことで、計4つのエッジ位置座標が求まることとなる。
【0178】
ここで、図11に示したように、エッジ位置座標をεと表すこととし、各々のエッジ位置座標を、εc1,εc2,εb1,εb2と表すこととする。これらのエッジ位置座標は、照明視野絞り205がデフォーカスすることで、像Cについては、−Δxだけ移動し、像Bについては、+Δxだけ移動することとなる。
【0179】
エッジ位置検出部509は、このようにして検出された4種類のエッジ位置座標のうち、少なくとも1つに関する検出結果を、特徴量算出部507に出力する。特徴量算出部507は、得られたエッジ位置座標の検出結果のうち、少なくとも1つのエッジ位置(例えば、εb1で表されるエッジ位置)のみに注目することで、平面移動量Δxを検出することが可能となる。この場合には、位相差AF光学系301は、2眼レンズを用いた光学系ではなく、単眼レンズを用いた光学系であってもよい。
【0180】
また、単一エッジ位置座標にて平面移動量Δxを検出する場合、結像面ずれΔxが存在すると、検出される平面移動量ΔxがΔx+Δxとなり、結像面ずれの影響を受けることとなる。そのため、特徴量算出部507は、Δx=(εb1−εc2)/2、又は、Δx=(εb2−εc1)/2として、結像面ずれΔxの影響を除去するようにしてもよい。
【0181】
また2眼レンズを用いた位相差AF光学系301が設けられており、かつ、図13に示したようなディストーション(歪曲収差)が存在する場合、図13に示したように、ディストーションにより同一像内の左右のエッジ結像位置にズレが生ずることとなる。
【0182】
図7に示したように中心軸を中心として2眼レンズが対称位置に存在する場合、図14に示した像Cのエッジ左側と像Bのエッジ右側のシフト量は、|Δdx1|と同一となる。同様に、図14に示した像Bのエッジ左側と像Cのエッジ右側のシフト量についても、|Δdx2|と同一となる。そのため、特徴量算出部507は、Δx={(εc1+εc2)−(εb1+εb2)}/4とすることで、ディストーションの影響を除去することが可能となる。
【0183】
特徴量算出部507は、以上のようにして算出した平面移動量Δxを利用して、式105により集光点シフト量Dを算出することが可能である。
【0184】
以上説明したように、本変形例に係る特徴量算出部507は、位相差AF光学系301にて得られた位相差像から結像画像内での照明視野絞りエッジ位置を検出し、検出したエッジ位置座標に基づいて照明視野絞りのピントズレ量を算出する。照明視野絞りピント調整部の一例であるコンデンサレンズ駆動制御部53は、特徴量算出部507から出力されたピントズレ量に応じてコンデンサレンズ駆動機構42を制御し、照明視野絞りのピントを調整する。
【0185】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0186】
1 顕微鏡
10 サムネイル像撮像部
11,21 光源
12,23 対物レンズ
13,24,34 撮像素子
20 拡大像撮像部
22,32 コンデンサレンズ
30 デフォーカス量検出部
31 ビームスプリッター
33 2眼レンズ
40 ステージ
41 ステージ移動機構
42 コンデンサレンズ駆動機構
50 統括制御部
51 照明制御部
52 ステージ駆動制御部
53 コンデンサレンズ駆動制御部
54 位相差像撮像制御部
55 サムネイル像撮像制御部
56 拡大像撮像制御部
201 透過照明前段光学系
203 透過照明後段光学系
205 照明視野絞り
207,209,215 コンデンサレンズ
211 結像光学系
213 コンデンサレンズ(対物レンズ)
217,305 撮像面
301 位相差オートフォーカス光学系
501 サムネイル像取得部
503 位相差像取得部
505 拡大像取得部
507 特徴量算出部
509 エッジ位置検出部
511 厚み変化量算出部
513 明度補正部
515 通信部
517 記憶部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明視野絞りと、1又は複数の光学素子とを有し、ステージに設けられたサンプルに対して照明光を投影する照明光学系と、
前記サンプルを透過した透過光を撮像する第1の撮像素子と、当該第1の撮像素子に前記透過光を結像させる1又は複数の光学素子と、を有する第1の結像光学系と、
前記第1の結像光学系から前記透過光の一部を分岐する光線分岐部と、分岐された前記透過光の位相差像を撮像する第2の撮像素子と、当該第2の撮像素子に前記分岐された透過光の位相差像を結像させる1又は複数の光学素子と、を有する第2の結像光学系と、
前記照明視野絞りの結像位置を調整する照明視野絞りピント調整部と、
前記第2の撮像素子から出力される出力信号に基づいて、前記照明視野絞りのピントのズレ度合いを表す特徴量を算出する特徴量算出部と、
を備え、
前記照明視野絞りピント調整部は、前記特徴量算出部により算出された前記特徴量に応じて、前記照明視野絞りの結像位置を調整する、顕微鏡。
【請求項2】
前記位相差像は、前記照明視野絞りの形状に対応する前記第2の撮像素子上に結像した第1の像及び第2の像からなり、
前記特徴量算出部は、前記第2の撮像素子の各画素における第1の像の出力信号強度と第2の像の出力信号強度との差を利用して、前記特徴量を算出する、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記特徴量算出部による特徴量の算出は、前記サンプルの透過光が前記第1の撮像素子上に合焦していない状態で行われる、請求項2に記載の顕微鏡。
【請求項4】
前記照明光の強度は、前記第2の撮像素子上に結像した位相差像の出力信号強度が飽和するように調整される、請求項2に記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記顕微鏡は、
前記ステージの位置の制御を行う位置制御部と、
前記サンプルが載置されているスライドガラスの厚みの変化量を算出する厚み変化量算出部と、
を更に備え、
前記位相差像は、前記照明視野絞りの形状に対応する前記第2の撮像素子上に結像した第1の像及び第2の像からなり、
前記厚み変化量算出部は、前記第2の撮像素子の各画素における第1の像の出力信号強度と第2の像の出力信号強度との差を利用して、前記厚み変化量を算出し、
前記位置制御部は、前記厚み変化量算出部が算出した前記厚み変化量に基づいて、前記ステージの位置を、前記照明光学系側へ移動させる、請求項2に記載の顕微鏡。
【請求項6】
前記顕微鏡は、
前記ステージの位置の制御を行う位置制御部と、
前記サンプルが載置されているスライドガラスの厚みの変化量を算出する厚み変化量算出部と、
を更に備え、
前記位相差像は、前記照明視野絞りの形状に対応する前記第2の撮像素子上に結像した第1の像及び第2の像からなり、
前記厚み変化量算出部は、少なくとも合焦時における前記第1の像又は前記第2の像のエッジ位置と得られた第1の像又は前記第2の像のエッジ位置との差を利用して、前記厚み変化量を算出し、
前記位置制御部は、前記厚み変化量算出部が算出した前記厚み変化量に基づいて、前記ステージの位置を、前記照明光学系側へ移動させる、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項7】
前記厚み変化量算出部は、前記第1の像又は前記第2の像において、前記照明視野絞りの形状のある一方の側のエッジ位置に基づいて、前記厚み変化量を算出する、請求項6に記載の顕微鏡。
【請求項8】
前記厚み変化量算出部は、前記第1の像及び前記第2の像それぞれにおいて、前記照明視野絞りの形状のある一方の側のエッジ位置に基づいて、前記厚み変化量を算出する、請求項6に記載の顕微鏡。
【請求項9】
前記厚み変化量算出部は、前記第1の像及び前記第2の像それぞれにおいて、前記照明視野絞りの形状の両側のエッジ位置の和に基づいて、前記厚み変化量を算出する、請求項6に記載の顕微鏡。
【請求項10】
前記特徴量算出部は、前記出力信号のエッジ位置を利用して、前記特徴量を算出する、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項11】
前記顕微鏡は、前記第1の撮像素子に結像した像の明度を補正する明度補正部を更に備え、
前記明度補正部は、前記照明視野絞りピント調整部により前記照明視野絞りの像が合焦するように前記照明視野絞りが調整された後に撮像された像に対して、予め準備された、明度補正に利用される明度補正パターンを利用して、明度の補正を実施する、請求項5又は6に記載の顕微鏡。
【請求項12】
前記顕微鏡は、前記第1の撮像素子に結像した像の明度を補正する明度補正部を更に備え、
前記明度補正部は、算出された前記スライドガラスの厚みに基づいて、予め設定された複数の明度補正パターンの中から明度補正に利用する明度補正パターンを選択し、前記明度の補正を実施する、請求項5又は6に記載の顕微鏡。
【請求項13】
照明視野絞りを有する照明光学系により投影された照明光のうちステージに設けられたサンプルを透過した透過光の一部を分岐して、分岐された前記透過光の位相差像を撮像素子により撮像するステップと、
前記撮像素子から出力された出力信号に基づいて、前記照明視野絞りのピントのズレ度合いを表す特徴量を算出するステップと、
算出された前記特徴量に応じて、前記照明視野絞りの結像位置を調整する照明視野絞りピント調整機構を駆動するステップと、
を含む、合焦点方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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