説明

顕微鏡画像処理システムおよび顕微鏡画像処理方法

【課題】ユーザが、取得した複数の画像とその観察点または観察エリアとを簡単に対応付けることのできる顕微鏡画像処理方法を提供する。
【解決手段】本方法は、全エリア画像処理部が、全エリア画像(405)中の限定領域である個別画像の取得位置(410a、410b、410c)を定め、前記全エリア画像中に前記個別画像の位置を表示した、前記全エリア画像を作成し、前記個別画像の位置を表示した、前記全エリア画像を前記画像データベースに格納し、前記全エリア画像処理部が、前記個別画像の位置を表示した、前記全エリア画像を前記画像データベースから読み出し表示することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡画像処理システムおよび顕微鏡画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡に取り付けたデジタルカメラによって撮影された観察標本画像は、顕微鏡と接続されたパーソナル・コンピュータなどで構成される画像処理システムに送られ、画像データとして処理される。画像処理システムは、表示装置を備え、顕微鏡の利用者(以下、ユーザと呼称する)は、表示装置によって撮影した画像を観察することができる。撮影した画像は、後で参照することができるように、画像データベースに格納される。
【0003】
上記のような画像処理システムを備えた、顕微鏡は、たとえば、特許文献1に記載されている。
【0004】
このような顕微鏡を使用した観察においては、標本の多数の観察点についての画像を撮影するマルチポイント観察が行われることが多い。マルチポイント観察においては、多数の観察点の画像のうちのいくつかを選択して参照することが必要になる。このような場合に、多数の観察点の画像の各画像ファイルに名称をつけて識別することが行われていた。
【0005】
【特許文献1】特開2002-277754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、画像ファイルの名称のみで画像を識別するのは困難であるため、ユーザが、実際に多数の画像を順次表示して確認する作業も必要であった。
【0007】
上記の背景の下に、ユーザが、取得した複数の画像とその観察点または観察エリアとを簡単に対応付けることのできる顕微鏡画像処理システム、および顕微鏡画像処理方法に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による顕微鏡画像処理方法においては、撮影装置で取得された顕微鏡での観察画像の全エリア画像に関する処理を行う全エリア画像処理部と前記全エリア画像を格納する画像データベースとが備わる。本方法は、前記全エリア画像中の限定領域である個別画像の取得位置を定め、前記全エリア画像中に前記個別画像の位置を表示した、前記全エリア画像を作成し、前記個別画像の位置を表示した、前記全エリア画像を前記画像データベースに格納し、前記全エリア画像処理部が、前記個別画像の位置を表示した、前記全エリア画像を前記画像データベースから読み出し表示することを含む。
【0009】
本発明による顕微鏡画像処理方法によれば、全エリア画像上に、個別画像の位置が表示される。したがって、ユーザは、全エリア画像によって、取得した複数の個別画像とその観察点または観察エリアとを簡単に対応付けることができる。
【0010】
本発明による顕微鏡画像処理システムは、撮影装置で取得された顕微鏡での観察画像の全エリア画像に関する処理を行う全エリア画像処理部と、前記全エリア画像を格納する画像データベースと、を備える。本発明による顕微鏡画像処理システムにおいては、前記全エリア画像処理部が、前記全エリア画像中の限定領域である個別画像の取得位置を定め、前記全エリア画像中に前記個別画像の位置を表示した、前記全エリア画像を作成し、前記個別画像の位置を表示した、前記全エリア画像を前記画像データベースに格納する。本発明による顕微鏡画像処理システムは、前記全エリア画像処理部が、前記個別画像の位置を表示した、前記全エリア画像を前記画像データベースから読み出し表示するように構成されたことを特徴とする。
【0011】
本発明による顕微鏡画像処理システムによれば、全エリア画像上に、個別画像の位置が表示される。したがって、ユーザは、全エリア画像によって、取得した複数の個別画像とその観察点または観察エリアとを簡単に対応付けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、取得した複数の画像とその観察点または観察エリアとを簡単に対応付けることのできる顕微鏡画像処理システム、および顕微鏡画像処理方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、顕微鏡と接続された、本発明の一実施形態による画像処理システムの構成を示す図である。
【0014】
本実施の形態では、隣接する複数の画像をつなぎ合わせた合成画像を全エリア画像とするが、全エリア画像は1枚の画像からなるものでもよい。
【0015】
図1において、顕微鏡200は、標本を載置する電動XYステージ215と、標本への透過光の集光状態を調節する電動コンデンサレンズ220と、複数の対物レンズ212を備えた電動レボルバ210と、顕微鏡画像を撮影するデジタルカメラ205と、を備える。さらに、顕微鏡200は、電動XYステージ215を制御するXYステージ制御部230と、電動コンデンサレンズ220、電動レボルバ210およびXYステージ制御部230を制御する電動装置制御部225と、外部装置との通信を制御する通信制御部235とを備える。
【0016】
図1において、画像処理ステム100は、顕微鏡200のデジタルカメラ205および通信制御部235に接続されている。画像処理システム100は、一例として、パーソナル・コンピュータによって構成されてもよい。画像処理システム100は、所望の画像が得られるように、通信制御部235を介して電動装置制御部225に指令を送り、電動XYステージ215、電動コンデンサレンズ220および電動レボルバ210を制御する。また、画像処理システム100は、顕微鏡200のデジタルカメラ205から撮影した画像を受け取る。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態による画像処理システム100の構成を示す図である。
【0018】
画像処理システム100は、画像データを取得する撮影制御部105と、後で説明する全エリア画像処理部110と、画像データを格納する画像データベース115と、画像を表示する画像表示部120と、ユーザの指示などを入力する入力部125と、を備える。
【0019】
撮影制御部105は、入力部125から入力されるユーザの指示などに基づいて、所望の撮影対象の画像が取得できるように、通信制御部235を介して電動装置制御部225に指令を送り、電動XYステージ215、電動コンデンサレンズ220および電動レボルバ210を制御する。また、撮影制御部105は、顕微鏡200のデジタルカメラ205から撮影した画像を受け取る。撮影制御部105は、取得した画像を、撮影条件やユーザによって入力部125から入力された画像ファイル名とともに、画像データベース115に格納する。また、撮影制御部105は、入力部125から入力されるユーザの指示などに基づいて、画像データベース115に格納された画像を画像表示部120に表示する。
【0020】
以下に、全エリア画像処理部110の処理について説明する。
【0021】
図3は、全エリア画像処理部110による処理を示す流れ図である。
【0022】
図3のステップS3010において、全エリア画像処理部110は、全エリア画像の対象エリアを定める。全エリア画像とは、後にユーザの指示によって取得される、複数の観察対象画像の全ての対象エリアを含むベースとなる画像である。全エリア画像の対象エリアとは、全エリア画像から選択されユーザの指示によって取得される、エリアである。全エリア画像処理部110は、入力部125から入力されるユーザの指示に基づいて、取得する全エリア画像の対象エリアを定めてもよい。又、全エリア画像の対象エリアを定める際に、ユーザは、たとえば、矩形である該対象エリアの頂点の座標を指定するようにしてもよい。
【0023】
図3のステップS3020において、全エリア画像処理部110は、全エリア画像の構成要素画像を取得する。
【0024】
図4は、全エリア画像の構成を示す図である。全エリア画像405は、9個の構成要素画像a、b、c、d、e、f、g、hおよびiから構成される。ここで、構成要素画像とは、全エリア画像を構成する画像であり、各構成要素画像は、デジタルカメラ205によって1フレームで取得できる視野範囲の画像である。そして、複数の隣接する構成要素画像をタイリングすることで、1枚の全エリア画像が合成される。
【0025】
図3のステップS3010において、ユーザによって指定された頂点の座標を、図4のAおよびBで示す。全エリア画像処理部110は、AおよびBの座標に基づいて、取得する全エリア画像の対象エリアの座標を定め、例えば20倍でデジタルカメラ205によって1フレームで取得できる視野範囲となるように各構成要素画像のエリアの座標を定める。全エリア画像処理部110は、撮影制御部105に各構成要素画像のエリアの座標を送り、各構成要素画像を取得するように指示する。撮影制御部105は、各構成要素画像を取得するように、通信制御部235を介して電動装置制御部225に指令を送り、電動XYステージ215、電動コンデンサレンズ220および電動レボルバ210を制御する。その後、撮影制御部105は、デジタルカメラ205から順次構成要素画像を取得する。全エリア画像処理部110は、撮影制御部105から構成要素画像を受け取り、全エリア画像を合成する為の複数の構成要素画像を画像データベース115に格納する。
【0026】
全エリア画像を作成する為に構成要素画像を取得するステップS3020の処理は、ユーザによって全エリア画像の対象エリアが指定された後、初期の段階で行ってもよい。
【0027】
図3のステップS3030において、全エリア画像処理部110は、全エリア画像の対象エリアにおいて、ユーザが選択した個別画像の位置を定める。個別画像のエリアは、全エリア画像の対象エリアに含まれるので、全エリア画像の対象エリアの座標として表現することができる。
【0028】
個別画像のエリアの選択は、例えば、ユーザによる全エリア画像が表示されたモニタ上、カーソルで選択される。
【0029】
図3のステップS3040において、全エリア画像処理部110は、ユーザが選択した個別画像の位置を表示した全エリア画像を作成する。具体的に、全エリア画像処理部110は、画像データベース115に格納された構成要素画像を取り出して、ユーザが選択した個別画像の位置を表示し、再び画像データベース115に格納する。
【0030】
図3のステップS3050において、全エリア画像処理部110は、個別画像の位置を表示した全エリア画像を表示する。具体的に、全エリア画像処理部110は、画像データベース115に格納された、個別画像の位置を表示した構成要素画像を取り出して、全エリア画像として表示する。
【0031】
図4に示した全エリア画像は、個別画像の位置410a、410bおよび410cを表示している。ユーザは、全エリア画像において、個別画像の位置を容易に識別することができる。
【0032】
図3のステップS3060において、全エリア画像処理部110は、全エリア画像における入力に基づいて、個別画像を表示する。たとえば、ユーザが、全エリア画像における個別画像の位置をクリックすると、クリックされた位置の個別画像を表示するように構成してもよい。ユーザは、全エリア画像において、確実に所望の個別画像を指定して表示させることができる。
【0033】
他の実施形態として、ユーザが、全エリア画像において、個別画像の対象エリアを指定することができるように画像処理システムを構成してもよい。全エリア画像上で個別画像の対象エリアを指定するには、四角形や円などの表示を画像表示部120の画面上に設け、ユーザが、その表示をクリックやドラッグして所望の位置に所望の大きさで配置できるようにしてもよい。
【0034】
このように、本発明によれば、全エリア画像において、個別画像を識別し、表示させることができるので、ユーザは、取得した複数の画像とその観察点または観察エリアとを簡単に対応付けることができる。さらに、ユーザが、全エリア画像において、個別画像の対象エリアを指定することができるようにすることもできる。
【0035】
また、本発明は、観察点の画像を所定の時間が経過するごとに取得するタイムラプス観察にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】顕微鏡と接続された、本発明の一実施形態による画像処理システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による画像処理システムの構成を示す図である。
【図3】全エリア画像処理部による処理を示す流れ図である。
【図4】全エリア画像の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
105…撮影制御部、110…全エリア画像処理部、115…画像データベース、120…画像表示部、125…入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影装置で取得された顕微鏡での観察画像の全エリア画像に関する処理を行う全エリア画像処理部と前記全エリア画像を格納する画像データベースとを有し、
前記全エリア画像中の限定領域である個別画像の取得位置を定め、
前記全エリア画像中に前記個別画像の位置を表示した、前記全エリア画像を作成し、
前記個別画像の位置を表示した、前記全エリア画像を前記画像データベースに格納し、
前記全エリア画像処理部が、前記個別画像の位置を表示した、前記全エリア画像を前記画像データベースから読み出し表示することを含む、顕微鏡画像処理方法。
【請求項2】
前記全エリア画像処理部が、個別画像を取得するための対象エリアを定める場合に、ユーザ入力に基づいて、前記対象エリアを定める請求項1に記載の顕微鏡画像処理方法。
【請求項3】
前記全エリア画像処理部が、前記全エリア画像から、前記個別画像を表示することをさらに含む、請求項1または2に記載の顕微鏡画像処理方法。
【請求項4】
前記全エリア画像処理部が、前記全エリア画像において指定された位置から、個別画像を取得するための対象エリアを定めることをさらに含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の顕微鏡画像処理方法。
【請求項5】
個別画像のタイムラプス観察が行われる、請求項1から4のいずれか1項に記載の顕微鏡画像処理方法。
【請求項6】
撮影装置で取得された顕微鏡での観察画像の全エリア画像に関する処理を行う全エリア画像処理部と、
前記全エリア画像を格納する画像データベースと、を備え、
前記全エリア画像処理部が、前記全エリア画像中の限定領域である個別画像の取得位置を定め、前記全エリア画像中に前記個別画像の位置を表示した、前記全エリア画像を作成し、前記個別画像の位置を表示した、前記全エリア画像を前記画像データベースに格納し、前記全エリア画像処理部が、前記個別画像の位置を表示した、前記全エリア画像を前記画像データベースから読み出し表示するように構成されたことを特徴とする、顕微鏡画像処理システム。
【請求項7】
前記全エリア画像処理部が、ユーザ入力に基づいて、個別画像を取得するための対象エリアを定める、請求項6に記載の顕微鏡画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−197992(P2008−197992A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33619(P2007−33619)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】