説明

顕微鏡装置

【課題】効率の良い偏光照明を実現した顕微鏡装置を提供する。
【解決手段】顕微鏡装置100は、対物レンズ12を含み、偏光用光源(レーザヘッド)1から放射された光を対物レンズ12に導き、この対物レンズ12を介して標本15に照射する偏光照明光学系13を有し、この偏光照明光学系13は、偏光用光源1からの光を対物レンズ12の瞳面上に集光する集光レンズ8と、対物レンズ12の近傍に配置され、集光レンズ8から出射した光を反射して対物レンズ12に導く照明用ミラー11と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の顕微鏡装置においては、照明光学系と観察光学系とが略同軸上に配置された同軸落射照明や全反射照明が行われていた。光源から放射された光を観察光学系の光路上に導く場合、顕微鏡装置のスペースの関係から、バリアフィルタや励起フィルタが配置されている近傍にダイクロイックミラーが配置されて、このダイクロイックミラーを介して光源からの光が観察光学系(対物レンズ)に導かれる。このとき、照明光学系は、集光レンズにより光源からの光を一旦対物レンズの瞳面上に集光した後、標本を照明するように構成されている。すなわち、対物レンズの瞳面から集光レンズまでの光軸上の距離は、この集光レンズの焦点距離と略一致している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−236258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、照明光が上述した励起フィルタなど蛍光フィルタを通過すると、偏光による全反射照明(TIRF照明)や落社照明の偏光度が低下してしまうという問題がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、効率の良い偏光照明を実現した顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る顕微鏡装置は、対物レンズ、及び、標本から放射され、対物レンズで集光された標本からの光を結像する結像レンズを有する観察光学系と、この観察光学系の光路中に配置されるダイクロイックミラーを有し、落射用光源から放射された光をダイクロイックミラーで反射して対物レンズに導き、対物レンズを介して標本を照明する落射照明光学系と、落射用光源と異なる偏光用光源からの偏光照明光を対物レンズの瞳面上に集光する集光レンズ、及び、対物レンズとダイクロイックミラーとの間の光路中に挿抜可能に配置され、集光レンズから出射した偏光照明光を反射して対物レンズに導く照明用ミラーを有し、対物レンズを介して標本に照射する偏光照明光学系と、照明用ミラーが観察光学系の光路中に挿入されていることを検出するセンサーと、このセンサーにより、照明用ミラーが観察光学系の光路中に挿入されていることを検出したときは、偏光照明光学系により標本を照明する偏光用光源を作動させ、また、このセンサーにより、照明用ミラーが挿入されていないことを検出したときは、落射照明光学系により標本を照明する落射用光源を作動させる制御装置と、を有することを特徴とする。
【0007】
このような顕微鏡装置において、照明用ミラーは、対物レンズの光軸方向の傾き角度と、光軸と略直交する面内での位置と、を変更可能に構成され、センサーは、照明用ミラーの傾き角度および面内の位置の変更により、全反射照明状態か、斜光照明状態か、落射照明状態かを検出することが好ましい。
【0008】
このとき、センサーにより照明用ミラーが全反射照明状態か、あるいは斜光照明状態かを検出すると、制御装置は、落射照明光学系の落射用光源及び偏光照明光学系の偏光用光源を強制的に同時作動可能とすることが好ましい。
【0009】
あるいは、このような顕微鏡装置は、透過照明光源から放射される光により標本に対して透過照明する透過照明光学系を更に有し、制御手段は、透過照明光学系の透過照明光源と落射照明光学系の落射用光源あるいは偏光照明光学系の偏光用光源とを同時に作動させることが好ましい。
【0010】
また、このような顕微鏡装置は、偏光用光源からの光を偏光照明光学系に導く光ファイバーを有し、この偏光照明光学系は、光ファイバーの射出端から出射された光を略平行光に変換し、集光レンズに入射させるコリメータレンズを有することが好ましい。
【0011】
このとき、光ファイバーの射出端を、コリメータレンズの光軸に略直交する方向に移動可能に構成することが好ましい。
【0012】
また、光ファイバーは、偏波面保持タイプのファイバーであることが好ましい。
【0013】
また、このような顕微鏡装置において、照明用ミラーは、対物レンズを保持する鏡筒に設けられた対物レンズ側微分干渉プリズムを取り付けるスライダー用のスロット内に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る顕微鏡装置を以上のように構成すると、偏光全反射照明、偏光落射蛍光(斜光を含み)を効率良く実現でき、通常の落射照明観察や偏光全反射照明、偏光落射蛍光(斜光を含み)を切換えて所望の観察が容易に選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態に係る顕微鏡装置の構成を示す説明図である。
【図2】照明用ミラーを支持するミラーユニットを示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図3】上記ミラーユニットを構成する支持アームを示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図4】上記顕微鏡装置を構成する制御装置における照明系の切換えフローを説明するためのフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態に係る顕微鏡装置の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、図1を用いて、第1の実施の形態に係る顕微鏡装置100の構成について説明する。この顕微鏡装置100は、対物レンズ12を含み、偏光用光源となるレーザヘッド1から放射された光を、対物レンズ12を介して標本15の所定の位置に照射する偏光照明光学系13と、この偏光照明光学系13と対物レンズ12を共用し、標本15から放射された光を集光してこの標本15の像を結像する観察光学系22と、を有して構成される。
【0017】
偏光照明光学系13は、レーザヘッド1側から順に、シャッター2と、第1のミラー3と、第2のミラー4と、エクスパンダーレンズ5と、1/2波長板6と、ポラライザ7と、集光レンズ8と、第1のハービンググラス9と、第2のハービンググラス10と、照明用ミラー11と、対物レンズ12と、を有している。また、観察光学系22は、標本15側から順に、対物レンズ12と、アナライザ16と、ダイクロイックミラー17と、バリアフィルタ18と、第2対物レンズ(結像レンズ)19と、ミラー20と、を有している。
【0018】
レーザヘッド1から放射された光は、シャッター2を通過して、第1のミラー3及び第2のミラー4で反射されて光路が折り曲げられ、エクスパンダーレンズ5に入射する。ここで、第1のミラー3及び第2のミラー4は、顕微鏡に対する光軸の調整(高さ及び水平方向の位置及び傾きの調整)を行うものである。エクスパンダーレンズ5に入射した光は、そのビーム直径が拡大される。一般にレーザーのビーム直径は0.3mm程度であり、エクスパンダーレンズ5で5〜10倍に拡大される。なお、このエクスパンダ-レンズ5は、図示しない機構により、光軸に対する傾きや光軸に略直交する面内での位置調整が可能に構成されている。
【0019】
レーザヘッド1から放射された光自体は偏光しているが、その方向を揃えるために、エクスパンダーレンズ5から出射した光を、1/2波長板6を通過させ、さらに、この光を所定の偏光度に高めるために、ポラライザ7を通過させる。なお、1/2波長板6及びポラライザ7は、各々、光軸に略直交する面内で回転可能に構成されており、通過した光の偏光方向を調整可能である。
【0020】
このようにして偏光度が高められた光は、集光レンズ8により、対物レンズ12の瞳面14上に集光される。なお、この集光レンズ8は、図示しない機構により、光軸に対する傾きや光軸に略直交する面内での位置調整が可能に構成されている。ここで、集光レンズ8を出射した光は、第1のハービンググラス9及び第2のハービンググラス10により、その位置が平行移動可能である。この位置調整により、対物レンズ12の瞳面14における位置調整が行え、落射照明、斜光照明、全反射照明の各照明状態に切り替えることが可能となっている。なお、第1及び第2ハービンググラス9,10の代わりに、2つのミラーを組み合わせることで同様の作用を得ることができる。
【0021】
第1及び第2ハービンググラス9,10を通過して、観察光学系22の側方から入射した光は、照明用ミラー11により対物レンズ12側に反射され、その光路が曲げられる。この照明用ミラー11は、対物レンズ12の照明、結像に関係する全光束の半分以下の範囲を覆うサイズとなっており、例えば、幅4mm、長さ6mm程度の大きさを有している。この照明用ミラー11の表面は、クロム若しくは銀の蒸着が施され、高い反射率を有している。この照明用ミラー11に関する位置調整等の詳細な説明は後述する。そして、対物レンズ12の瞳面14に結像した光は、平行光となってこの対物レンズ12から出射して標本15に照射されこの標本15を照明する。
【0022】
上述のように照明された標本15からの光(蛍光、又は、反射光)は、再び対物レンズ12を通過して略平行光束に変換され、アナライザ16を通過する。このアナライザ16は、光路から挿抜可能に構成されている。さらに、このアナライザ16を、光軸に略直交する面内での回転と方位読み取りを可能とすることで標本15からの光の状態(具体的には偏光の楕円状態)を知ることができる。アナライザ16を通過した光は、さらに、ダイクロイックミラー17及びバリアフィルタ18を通過することで、蛍光が選択されて透過される。そしてこの光を第2対物レンズ19で集光し、ミラー20で側方に反射させて光路を折り曲げ、像面21に標本15の像が結像する。この像面21には、例えば高感度のCCDカメラを配置することにより、標本面像を捉えることができる。
【0023】
なお、ダイクロイックミラー17の側方には、落射照明光学系25が設けられており、励起フィルタ23により選択された所定の波長範囲の光をこのダイクロイックミラー17で対物レンズ12側に反射させて標本15を照明することができる。ここでは、落射照明光学系25は、落射用光源26、リレーレンズ24(その一部を図示している)及び励起フィルタ23から構成されている。一般に、ダイクロイックミラー17、バリアフィルタ18及び励起フィルタ23は、一つのカセットホルダに収められ、光路から挿抜可能に構成されている。
【0024】
それでは、このような構成の顕微鏡装置100において、偏光照明光学系13を構成する照明用ミラー11の位置について説明する。先に述べたように、レーザーのビーム直径は0.3mm程度であり、また、エクスパンダーレンズ5の拡大は10倍程度となっている。そのため、集光レンズ8に入射する光のビーム直径は3mm程度となることがわかる。
【0025】
ここで、集光レンズ8で集光した光を、上述の落射照明光学系25と同様にダイクロイックミラー17で反射させて対物レンズ12の瞳面14に結像するように、これらの光学系を配置したとき、一般の製品の場合、対物レンズ12の瞳面14からダイクロイックミラー17で反射して顕微鏡装置100の側面(鏡筒の側面)までの光軸上の距離は約300mmとなる。具体的には、瞳面14から対物レンズ12の取り付け面までが約10mm、対物レンズ12を支持しているレボルバの厚さが約40mm、その下の空間が約10mm、ダイクロイックミラー17までが約40mm、鏡筒の側面までが約100mmであり、さらに、ハービンググラスや集光レンズを配置する空間として約100mm必要となり、合計で約300mmとなる。
【0026】
一方、図1に示すように、対物レンズ12の直下に照明用ミラー11を配置すると、対物レンズ12の瞳面14から集光レンズ8までの光軸上の距離は約150mmとなる。具体的には、瞳面14から対物レンズ12の取り付け面までが約10mm、この取り付け面から照明用ミラー11までが約10mmであり、この照明用ミラー11から顕微鏡装置100の側面(鏡筒の側面)までの約100mmの空間に第1及び第2ハービンググラス9,10を配置することで、瞳面14から鏡筒の側面までの距離が120mmとなり、集光レンズ8を配置する空間を考慮すると、全体で、約150mmとなる。なお、照明用ミラー11への偏光照明光学系13の配置を工夫することで、150mmよりさらに短くすることも可能である。
【0027】
上述のように、集光レンズ8で集光された光は、対物レンズ12の瞳面14に結像させることが必要であるため、上述の距離(300mm及び150mm)は、この集光レンズ8の焦点距離となり、さらに、この距離は、対物レンズ12の焦点距離が組み合わされて、標本15上の照明範囲に関係する。すなわち、標本15上の照明範囲の径(照明サイズ)φは、集光レンズ8に入射する光のビーム直径をφ0とし、対物レンズ12の焦点距離をfoとし、集光レンズ8の焦点距離をfcとしたとき、次式(1)で表される。
【0028】
φ = φ0×(fo/fc) (1)
【0029】
式(1)より、集光レンズ8に入射する光のビーム直径φ0が3mmであって、100倍の対物レンズ12の焦点距離foが2mmのとき、瞳面14から300mmの位置に集光レンズ8を配置したときの照明サイズは、(ビーム直径3mm×(2mm/300mm)=)0.02mmとなり、150mmの位置に集光レンズ8を配置値したときの照明サイズは、(ビーム直径3mm×(2mm/150mm)=)0.04mmとなる。このような顕微鏡装置100で細胞を観察する場合、この細胞の大きさは約0.01mmであるため、0.02mmの照明サイズは観察としては狭すぎる。
【0030】
もちろん、照明側のビーム直径を大きくすることで、標本15上の照明サイズを拡大することはできるが、そうすると、対物レンズ12を通過するビーム直径が大きくなり、この光の偏光状態を変化させる作用が働いてしまい、標本15に照射される光(照明光)の偏光度を低下させてしまう。具体的には、対物レンズ12を含む偏光照明光学系13を構成するレンズを偏光が通過することで、これらのレンズの影響により(特に、コーティングにより)位相変化(楕円化)と偏光方向の回転が発生する。この位相変化及び回転は、対物レンズ12の瞳面14において特定の分布を持つため面内で均一ではない。そのため、照明光の偏光度が低下し、ひいては、偏光画像のコントラストの低下を引き起こしてしまう。したがって、偏光度を考慮しながら、適当な照明範囲を得るためには、図1に示すように、対物レンズ12の直下から照明することが望ましいということが判る。実際に、対物レンズ12の瞳面14の全体を透過して偏光照明した場合、偏光度は100:1程度となるが、上述のように細いビーム直径とすることにより、数1000:1以上の偏光度を達成することができる。また、上述のようにレーザーを偏光用光源1とする場合、そのビーム直径を大きくすることは困難であり、エクスパンダーレンズ5によるビーム径の拡大を考慮しても、ダイクロイックミラー17を用いた照明光学系の構成では、標本15上での十分な照明範囲を確保することは困難である。
【0031】
また、アナライザ16の位置は、一般の製品では、取り付け部位の関係から、バリアフィルタ18の下方となっている。このような構成の場合、ダイクロイックミラー17及びバリアフィルタ18による偏光度の影響が避けられない。そのため、上述のように対物レンズ12の直下に照明用ミラー11を配置して照明光を入射させる構成が望ましい。
【0032】
このように、レーザヘッド1から放射された光を偏光照明光学系13により標本15に照射するときに、照明用ミラー11を用いて対物レンズ12の直下(対物レンズ12のネジ部から20mm以内の空間、若しくは、対物レンズ12と図示しないレボルバとの間の空間)に配置することで、従来のものよりも細いビーム径で、且つ、十分な照明領域を確保した照明を容易に実現することができる。
【0033】
次に、図2及び図3を用いて、照明用ミラー11を支持して顕微鏡装置100に対して着脱自在に構成されたミラーユニット30の構造を説明する。このミラーユニット30は、顕微鏡装置100の鏡筒に取り付けられるホルダ31と、このホルダ31に取り付けられ、照明用ミラー11を支持する支持アーム33とを有して構成される。顕微鏡装置100の鏡筒の対物レンズ12の直下には、微分干渉観察のときに用いられる対物レンズ用微分干渉プリズムを観察光学系22の光路上に挿入するための取付孔(対物レンズ用微分干渉プリズム用スライダーを取り付けるためのスロットであるが、図1には図示していない)が形成されており、ホルダ31はこのスロットに挿入可能な形状となっている。
【0034】
支持アーム33の先端部40の下面には、この先端部40から支持アーム33の長手方向外方に突出するように支持板32が接着固定されており、さらに突出した支持板32の上面に、照明用ミラー11が接着固定されている。また、支持アーム33の先端部40の上面には、この先端部40から後端部39側に向かって延びる板バネ34が取り付けられており、この板バネ34の先端側34aがビス35により支持アーム33に固定されている。また、この板バネ34は、その後端側34bが斜め上方に延びるように折り曲げられ、支持アーム33の上面と間隔を空けて位置するように取り付けられている。
【0035】
ホルダ31が顕微鏡装置100の鏡筒に設けられた対物レンズ用微分干渉プリズム用スライダーを取り付けるためのスロットに挿入されて取り付けられたときに、このホルダ31と観察光学系22を通る光束とが干渉しないように、ホルダ31には上下に貫通する開口部31aが形成されている。そして、支持アーム33は、照明用ミラー11がこの開口部31a内に位置するように、板バネ34の後端側34bを、ビス36を用いてホルダ31の下面に固定することにより取り付けられている。このとき、支持アーム33は、板バネ34により、ホルダ31に対して、ビス35,36により弾性的に、且つ、ビス35を中心に回転可能に支持されている。
【0036】
また、支持アーム33は、ホルダ31に取り付けられたときにその後端部39がホルダ31の後端から外方に突出するように取り付けられている。そして、ホルダ31の後部には、平面視において支持アーム33と位置整合するように、あおりネジ37が取り付けられている。このあおりネジ37は、ホルダ31の後部に上下に貫通したネジ孔に螺挿されており、下端部37aがホルダ31の下面から下方に突出させることができる。そのため、このあおりネジ37を平面視において時計回りに回転させて下方に移動させると、下端部37aに支持アーム33の後端部39が当接する。そして、さらにあおりネジ37を下方に移動させると、板バネ34の付勢力によりあおりネジ37の下端部37aに支持アーム33の後端部39が付勢する。支持アーム33の後端部39があおりネジ37により下方に押し出されると、板バネ34を中心に先端部40が上方に揺動する。このため、あおりネジ37の位置を調整して支持アーム33の後端部39の押し出し量を調整することにより、照明用ミラー11のあおり調整(対物レンズ12の光軸方向の傾き角度の調整)が可能である。また、ホルダ31の後端から外方に突出した支持アーム33の後端部39を平面視において左右に移動させると、ビス35を中心にこの支持アーム33が回転するため、平面視における開口部31a内での照明用ミラー11の位置(対物レンズ12の光軸に略直交する面内での回転方位)を、調整することが可能である。
【0037】
さらに、ホルダ31の側部には、このホルダ31が対物レンズ用微分干渉プリズム用スライダーを取り付けるためのスロットに取り付けられたときに、このスロットの壁(微分干渉プリズム取り付け側の壁)に対向するスライド用ネジ38が設けられており、このスライド用ネジ38の押し引きにより、照明用ミラー11を対物レンズ12の光軸に対して近づけたり引き離したりすることができるため、照明用ミラー11の平面視における開口部31a内の位置を調整することが可能である。
【0038】
照明用ミラー11を、以上のようなミラーユニット30で支持することにより、顕微鏡装置100の光路上において、この照明用ミラー11の傾き角度の調整(あおり調整)と方位の回転を高精度に行うことができる。そのため、標本15に照射される光(偏光照明光)の位置を高精度に調整することができる。また、ホルダ31を微分観察用のプリズムを取り付けるスロットに装着可能に構成することにより、対物レンズ12の直下にこの照明用ミラー11を配置することができ、対物レンズ12の瞳面14と集光レンズ8との光軸上の距離を短くすることができる。そのため、上述のように、従来のものよりも細いビーム径で、且つ、十分な照明領域を確保した照明を容易に実現することができる。さらに、この照明用ミラー11を取り付けるための特別のスライダーを顕微鏡装置100の鏡筒に設ける必要がなく、安価に実現することができる。
【0039】
ところで、この顕微鏡装置100には、照明用ミラー11を支持するミラーユニット30(図1には図示せず)が鏡筒の対物レンズ用微分干渉プリズム用スライダーを取り付けるためのスロットに装着されたことを検出するセンサー301が設けられており、このセンサー301からの信号は、制御装置300に入力される。また同様に、照明用ミラー11の傾き角度および面内の位置を検出するセンサー302が設けられている。制御装置300は、マイクロコンピュータから構成され、センサー301によりミラーユニット30の装着が検出されていないときは、落射照明光学系25の落射用光源26を作動させて落射照明光学系25により標本15を照明する。一方、制御装置300は、センサー301によりミラーユニット30の装着が検出されているときは、落射用照明光源26とは異なる光源、すなわち、落射照明光学系25とは別の偏光照明光学系13の偏光用光源(レーザヘッド)1を作動させてこの偏光照明光学系13により標本15を照明する。また制御装置300は、センサー302により全反射照明状態か、斜光照明状態か、落射照明状態かを検出し、それに応じた照明系の切換えを行うことができる。なお、偏光照明光学系13と落射照明光学系25の切換えは、照明制御スイッチ303を操作することにより手動でも行うことができる。以下に、制御装置300の照明系の切換えフローについて図4を用いて説明する。
【0040】
制御装置300は、まず、照明用ミラー11が対物レンズ12とダイクロイックミラー17との照明光路中に挿入されているか否かをセンサー301の検出信号により検知し(ステップS1)、照明用ミラー11が照明光路中に挿入されているときはステップS2に進む。照明用ミラー11は、上述のように、対物レンズ12の光軸方向の傾き角度と、その光軸と略直交する面内での位置と、を変更可能に構成されており、センサー302により照明用ミラー11の傾き角度および面内の位置の変更を検出することにより、全反射照明状態か、斜光照明状態か、落射照明状態かを検出することができる。そのため、制御装置300は、センサー302により、照明用ミラー11が全反射照明状態あるいは斜光照明状態にあることを検知すると(ステップS2)、ステップS3へ進む。
【0041】
制御装置300は、ユーザ操作可能な照明制御スイッチ303により、偏光用光源1及び落射用光源26が強制的にオンされているか否かを判定し(ステップS3)、強制的にオンされていなければ、落射用光源26をオフし、全反射あるいは斜光照明のための偏光用光源1をオン可能な状態にする(ステップS4)。この状態において、ユーザが照明制御スイッチ303を操作することで、偏光用光源1をオンして全反射照明あるいは斜光照明を実行することができる。すなわち、この顕微鏡装置100における全反射照明あるいは斜光照明での観察により、実験目的の細胞・組織の蛍光ラベルを観察、記録できる(偏光TIRFも含む)。
【0042】
一方、ステップS1において、照明用ミラー11が照明光路中に挿入されていないと検知されると、制御装置300は、落射用光源26をオン可能な状態にし、全反射あるいは斜光照明のための偏光用光源1をオフする(ステップS5)。これにより、ユーザが照明制御スイッチ303を操作することで、落射用光源26をオンして落射照明が実行できる。また、ステップS2において、照明用ミラー11の照明光路内での位置が全反射照明あるいは斜光照明状態にないことが検知されると、制御装置300は、落射用光源26をオン可能な状態にし、また、照明用ミラー11が落射照明状態に設定されていれば、偏光用光源1をオン可能な状態にする。これにより、ユーザが照明制御スイッチ303を操作することで、落射用光源26あるいは偏光用光源1をオンして落射照明が実行できる。さらに、ステップS3において、照明制御スイッチ303により偏光用光源1及び落射用光源26を強制的にオンする状態にあることが検知されると、偏光用光源1がオンされて全反射照明あるいは斜光照明が実行され、かつ同時に落射用光源26がオンされて落射照明が実行される。このように同時照明が行われると、落射照明の特に蛍光観察と全反射照明(TIRF)の蛍光観察により、別々の蛍光ラベルをつけた細胞や組織、目的物質の蛍光観察が可能であり、その蛍光画像の記録が行われ細胞、組織の分析に寄与できる。例えば、上記目的の例として、細胞内部の微小管を落射照明の蛍光観察で、そして、微小管上を移動するモータータンパクを全反射照明による蛍光観察で確認することができる。
【0043】
なお、上述した照明光源の切換えは、光源の電源のオンあるいはオフで制御する場合や、また照明光路中に遮光シャッターを配置し、その遮光シャッターの開閉で制御する場合など、照明光源により最適な制御形態が選択できることは言うまでもない。
【0044】
(第2の実施形態)
第1の実施形態に係る顕微鏡装置100においては、偏光用光源としてレーザヘッド1から放射された光を照明光学系13により標本15に照射するように構成した場合について説明したが、第2の実施形態として、シングルモードファイバー(偏波面保存タイプのファイバー)を用いて照明するように構成した場合について図5を用いて説明する。なお、第1の実施例と同じ構成部材については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。この図5に示す顕微鏡装置200は、偏光用光源110から放射された光をシングルモードファイバー(光ファイバー)101に入射させ、このシングルモードファイバー101から放射された光を、対物レンズ12を介して標本15に照射する偏光照明光学系106と、第1の実施形態と同様の構成の観察光学系22及び落射照明光学系25と、を有している。偏光照明光学系106は、シングルモードファイバー101側から順に、コリメータレンズ102と、1/2波長板104と、ポラライザ105と、集光レンズ103と、照明用ミラー11と、対物レンズ12と、を有している。
【0045】
シングルモードファイバー101から放射された光は、コリメータレンズ102により平行光に変換され、集光レンズ103により、対物レンズ12の瞳面14上に集光される。この偏光照明光学系106において、コリメータレンズ102と集光レンズ103との間に配置される1/2波長板104及びポラライザ105は、第1の実施形態と同様に、標本15を偏光照明するために、レーザー光の偏光方向を変えるものであり、各々が光路から挿抜可能に構成されている。また、この1/2波長板104及びポラライザ105は、それぞれ独立に、回転及び角度の読み取りが可能に構成されている。
【0046】
一般に、シングルモードファイバー101の射出の開口数(NA)は0.11程度である。そのため、コリメータレンズ102の焦点距離を15mmとし、集光レンズ103の焦点距離を50mmとし、100倍の対物レンズ12の焦点距離を2mmとすると、標本15上の照明範囲は、0.11×2×15mm×(2mm/50mm)=0.132mmとなる。これは、第1の実施形態で説明したように、標本観察に十分な値である。
【0047】
このように光源としてシングルモードファイバー101を用いることにより、この第2の実施形態に係る顕微鏡装置200の偏光照明光学系106の全長は、第1の実施形態に係る顕微鏡装置100の偏光照明光学系13の全長よりも短い光学系とすることができるので、この顕微鏡装置200を小型化することができる。また、上述のようにその照明範囲も第1の実施形態の構成よりも広くすることができるため、好ましい。
【0048】
なお、この顕微鏡装置200には、標本15を挟んで対物レンズ12と反対側に、透過照明光学系400が設けられている。この透過照明光学系400は、透過照明光源401と、コリメータレンズ402と、集光レンズ403とから構成されている。そのため、この透過照明光学系400により標本15を透過照明し、標本15を透過した光を観察光学系22で集光して、この標本15の像を観察することもできる。
【0049】
この第2の実施形態に係る顕微鏡装置200も、第1の実施形態に係る顕微鏡装置100と同様に、観察光学系22の光路上に照明用ミラー11を挿入して偏光照明光学系106(13)により標本15に照明光を照射して観察を行う方法と、落射照明光学系25により標本15に照明光を照射して観察を行う方法とを利用可能である。そのため、この第2の実施形態に係る顕微鏡装置200においても、図5に示すように制御装置300が設けられ、これらの照明方法を切り替え可能に構成されている。
【0050】
この顕微鏡装置200には、上述の照明用ミラー11を支持するミラーユニット30(図5には図示せず)が鏡筒の対物レンズ用微分干渉プリズム用スライダーを取り付けるためのスロットに装着されたことを検出するセンサー301が設けられており、このセンサー301からの信号は、制御装置300に入力される。制御装置300は、センサー301によりミラーユニット30の装着が検出されていないときは、落射照明光学系25の光源26を作動させて落射照明光学系25により標本15を照明する。一方、制御装置300は、センサー301によりミラーユニット30の装着が検出されているときは、落射用照明光源26とは異なる光源、すなわち、落射照明光学系25とは別の偏光照明光学系106の偏光用光源110を作動させて偏光照明光学系106により標本15を照明する。また、偏光照明光学系106と落射照明光学系25の切換えは、照明制御スイッチ303を操作することにより手動でも行うことができる。さらに制御装置300は、センサー302により全反射照明状態か、斜光照明状態か、落射照明状態かを検出し、それに応じた照明系の切換えを行うことができる。ここで、制御装置300による照明系の切換えフローは、第1の実施形態において図4を用いて説明したものと同様である。なお、図5に示すように、顕微鏡装置200に透過照明光学系400が設けられている場合には、上述のステップS7においては、透過照明光学系400の透過照明光源401と落射照明光学系25の落射用光源26あるいは照明ミラー11により落射照明状態にある偏光用光源1とを同時に作動させることになる。
【0051】
このように、ミラーユニット30の装着状態をセンサー301で検出して、制御装置300により光源110,26の作動を制御することにより、2つの照明光学系13(106),25の干渉を防止するとともに、観察者の利便性を向上させることができる。なお、ミラーユニット30(照明用ミラー11)を光路に対して挿抜するアクチュエータ304を設け、制御装置300に設けられたスイッチ等(例えば、上述の照明制御スイッチ303)によりこのアクチュエータ304の作動を制御させるように構成することにより、さらに観察者の利便性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1,110 レーザヘッド(偏光用光源) 8,103 集光レンズ
11 照明用ミラー 12 対物レンズ
13 偏光照明光学系 15 標本
17 ダイクロイックミラー 19 第2対物レンズ(結像レンズ)
22 観察光学系 25 落射照明光学系 26 落射用光源
100,200 顕微鏡装置
101 光ファイバー(シングルモードファイバー)
102 コリメータレンズ 300 制御装置
301,302 センサー 400 透過照明光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズ、及び、標本から放射され、前記対物レンズで集光された前記標本からの光を結像する結像レンズを有する観察光学系と、
前記観察光学系の光路中に配置されるダイクロイックミラーを有し、落射用光源から放射された光を前記ダイクロイックミラーで反射して前記対物レンズに導き、前記対物レンズを介して前記標本を照明する落射照明光学系と、
前記落射用光源と異なる偏光用光源からの光を前記対物レンズの瞳面上に集光する集光レンズ、及び、前記対物レンズと前記ダイクロイックミラーとの間の光路中に挿抜可能に配置され、前記集光レンズから出射した前記光を反射して前記対物レンズに導く照明用ミラーを有し、前記対物レンズを介して前記標本に照射する偏光照明光学系と、
前記照明用ミラーが前記観察光学系の前記光路中に挿入されていることを検出するセンサーと、
前記センサーにより、前記照明用ミラーが前記観察光学系の前記光路中に挿入されていることを検出したときは、前記偏光照明光学系により前記標本を照明する前記偏光用光源を作動させ、また、前記センサーにより、前記照明用ミラーが挿入されていないことを検出したときは、前記落射照明光学系により前記標本を照明する前記落射用光源を作動させる制御装置と、を有することを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項2】
前記照明用ミラーは、前記対物レンズの光軸方向の傾き角度と、前記光軸と略直交する面内での位置と、を変更可能に構成され、
前記センサーは、前記照明用ミラーの傾き角度および面内の位置の変更により、全反射照明状態か、斜光照明状態か、落射照明状態かを検出することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記センサーにより前記照明用ミラーが全反射照明状態か、あるいは斜光照明状態かを検出すると、前記制御装置は、前記落射照明光学系の前記落射用光源及び前記偏光照明光学系の前記偏光用光源を強制的に同時作動可能とすることを特徴とする請求項2に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
透過照明光源から放射される光により前記標本に対して透過照明する透過照明光学系を更に有し、
前記制御手段は、前記透過照明光学系の前記透過照明光源と前記落射照明光学系の前記落射用光源あるいは前記偏光照明光学系の前記偏光用光源とを同時に作動させることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項5】
前記偏光用光源からの光を前記偏光照明光学系に導く光ファイバーを有し、
前記偏光照明光学系は、前記光ファイバーの射出端から出射された前記光を略平行光に変換し、前記集光レンズに入射させるコリメータレンズを有する請求項1〜4いずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
前記光ファイバーの前記射出端を、前記コリメータレンズの光軸に略直交する方向に移動可能に構成された請求項5に記載の顕微鏡装置。
【請求項7】
前記光ファイバーは、偏波面保持タイプのファイバーである請求項5または6に記載の顕微鏡装置。
【請求項8】
前記照明用ミラーは、前記対物レンズを保持する鏡筒に設けられた対物レンズ側微分干渉プリズムを取り付けるスライダー用のスロット内に配置される請求項1に記載の顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−181440(P2010−181440A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22281(P2009−22281)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】