説明

顕微鏡装置

【課題】特別な装置を設けることなく、簡易に観察位置を特定することができ、観察のための準備に要する時間を短縮する。
【解決手段】ステージ3と、該ステージ3上に位置決め状態に固定され、種類に応じて予め定められた位置に試料Aを支持する支持プレート2と、該支持プレート2に支持された試料Aに対して照明光を照射し、試料Aから戻る戻り光を撮影する観察光学系4と、該観察光学系4とステージ3とを相対的に移動させる駆動手段と、これらを制御する制御部5とを備え、該制御部5が、観察に先立って観察光学系4により支持プレート2の画像を取得させ、取得された画像に基づいて、支持プレート2の種類を特定する顕微鏡装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の観察位置を観察する顕微鏡装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−166983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この顕微鏡装置では、複数の観察位置の観察に先立って、各観察位置を特定する場合に、その都度観察位置を検索する必要があり、観察のための準備に要する時間がかかるという不都合がある。特に、顕微鏡装置全体を暗箱で覆う必要のあるレーザ顕微鏡の場合には、対物レンズおよび観察対象を外部から目視することができないため、観察位置の検索は手探りになり、対物レンズと観察対象とが接触して損傷する可能性がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、特別な装置を設けることなく、簡易に観察位置を特定することができ、観察のための準備に要する時間を短縮することができる顕微鏡装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、ステージと、該ステージ上に位置決め状態に固定され、種類に応じて予め定められた位置に試料を支持する支持プレートと、該支持プレートに支持された試料に対して照明光を照射し、試料から戻る戻り光を撮影する観察光学系と、該観察光学系と前記ステージとを相対的に移動させる駆動手段と、これらを制御する制御部とを備え、該制御部が、観察に先立って前記観察光学系により前記支持プレートの画像を取得させ、取得された画像に基づいて、支持プレートの種類を特定する顕微鏡装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、支持プレートに試料を支持させてステージ上に固定し、制御部によって駆動手段を作動させて観察光学系とステージとを相対的に移動させるとともに、観察光学系を作動させて、支持プレートに照明光を照射し戻り光を撮影することにより支持プレートの画像が取得される。支持プレートは、その種類に応じて予め定められた位置に試料を支持しているので、支持プレートの画像によりその種類を特定すれば、試料の位置を特定することができる。したがって、特別な装置を設けることなく、観察に使用する観察光学系および駆動手段を利用して、簡易に試料の位置を特定することができ、観察のための準備に要する時間を短縮することができる。
【0008】
上記発明においては、支持プレートの種類に応じて異なる位置に照明光を反射するミラーまたは照明光を透過する透孔が設けられ、前記制御部に、前記ミラーまたは透孔の位置と、支持プレートの種類とを対応づけて記憶する記憶部が設けられ、前記制御部は、取得された画像に含まれる前記ミラーまたは前記透孔の位置における輝度情報に基づいて、支持プレートの種類を特定することとしてもよい。
【0009】
このようにすることで、支持プレートに照明光を照射し戻り光を撮影することにより得られた支持プレートの画像においては、該支持プレートに設けられたミラーまたは透孔の位置において輝度が高くなっている。したがって、画像から検出された輝度の高い位置に基づいて記憶部を検索するだけで、簡易に支持プレートの種類を特定することができる。また、ミラーまたは透孔の位置はある程度制限されているので、支持プレート全体の画像を取得することなく、ミラーまたは透孔の存在する可能性のある位置の支持プレートの画像を取得するだけで支持プレートの種類を特定することができ、短時間に試料の位置を特定することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記透孔が、試料を保持するディッシュまたはスライドガラスに対応する位置において支持プレートに貫通形成されていてもよい。
このようにすることで、試料を保持するディッシュまたはスライドガラスに対応する位置に貫通形成されている透孔を検出して、支持プレートの種類を簡易に特定することができる。この場合には、支持プレートの種類を特定するための透孔についても特別に設ける必要がなく、既存の支持プレートを使用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特別な装置を設けることなく、簡易に観察位置を特定することができ、観察のための準備に要する時間を短縮することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る顕微鏡装置1について、図1〜図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡装置1は、図1に示されるように、試料Aを支持する支持プレート2を着脱可能に固定するとともに、水平2方向に移動させるXYステージ(ステージ、駆動手段)3と、該XYステージ3に固定された支持プレート2に対して照明光を照射し、戻り光を検出して画像を取得する観察光学系4と、XYステージ3および観察光学系4を制御する制御部5と、モニタ6とを備えている。
【0013】
観察光学系4は、落射観察光学系7と、透過観察光学系8とを備えている。
落射観察光学系7は、レーザ光(照明光)を発生するレーザ光源9と、該レーザ光源9から発せられたレーザ光を2次元的に走査する走査ユニット10と、該走査ユニット10により走査されたレーザ光をXYステージ3上の支持プレート2上の試料Aに下方から集光する対物レンズ11と、試料Aにおいて発生し、対物レンズ11および走査ユニット10を介して戻る蛍光をレーザ光の光路から分岐するダイクロイックミラー12と、分岐された蛍光を集光する結像レンズ13と、対物レンズ11の焦点位置と共役な位置に配置されるピンホール14と、蛍光に含まれるレーザ光成分を遮断するバリアフィルタ15と、蛍光を検出する光検出器16とを備えている。
【0014】
対物レンズ11は、XYステージ3に対して上下動可能に設けられ、その焦点位置を上下方向に調節することができるようになっている。
ダイクロイックミラー12はハーフミラー17と交換可能に設けられ、バリアフィルタ15は光路に対して挿脱可能に設けられている。
【0015】
支持プレート2は、図2に示されるように、試料Aを収容したディッシュ18を搭載する位置に対応して設けられた複数の透孔19と、下面に貼り付けられたミラーテープ20とを備えている。ミラーテープ20は、支持プレート2の種類毎に異なる位置(図2では番号04の位置)のマスキングテープ(斜線で示す部分に存在している)が剥がされることにより、剥がされた位置に入射されたレーザ光のみを反射するようになっている。支持プレート2におけるミラーテープ20の貼り付け位置は支持プレート2の種類に関わらず特定の位置に定められている。
【0016】
透過観察光学系8は、前記落射観察光学系7のレーザ光源9から発せられ走査ユニット10により走査され、対物レンズ11により集光されたレーザ光の内、上方に透過したレーザ光を検出する光検出器21を備えている。図中、符号22はミラーである。
【0017】
制御部5は、図4に示されるように、落射観察光学系7および/または透過観察光学系8の光検出器16,21により検出された蛍光またはレーザ光の強度と、走査ユニット10によるレーザ光の走査位置とに基づいて2次元的な画像を生成する画像生成部23と、該画像生成部23により生成された画像を処理して、生成された画像内の高輝度領域の位置を抽出する画像処理部24と、該画像処理部24により抽出された高輝度領域の位置に基づいて試料Aの位置を特定する試料位置特定部25とを備えている。
【0018】
試料位置特定部25は、高輝度領域の位置と支持プレート2の種類(または当該支持プレート2に設けられた透孔19の位置)とを対応づけて記憶する記憶部26に接続されている。そして、画像処理部24により抽出された高輝度領域の位置に基づいて記憶部26内を検索し、支持プレート2の種類(または当該支持プレート2に設けられた透孔19の位置)を特定するようになっている。
【0019】
このように構成された本実施形態に係る顕微鏡装置1の作用について説明する。
本実施形態に係る顕微鏡装置1を用いて試料Aを観察するには、まず、観察に先立って、ミラーテープ20が貼り付けられた面を下向きにして透孔19に対応する位置に試料Aを収容したディッシュ18を固定した支持プレート2をXYステージ3上に固定する。この状態で、制御部5はXYステージ3を作動させて、対物レンズ11の鉛直上方にミラーテープ20の「01」の位置が概略配置されるように支持プレート2を移動させる。
【0020】
そして、光検出器16の前段に配置されているバリアフィルタ15を光路から抜き出しておき、ダイクロイックミラー12に代えてハーフミラー17を光路に配置した状態で、レーザ光源9からレーザ光を出射させる。レーザ光源9から出射されたレーザ光は、ハーフミラー17によって反射され、走査ユニット10によって2次元的に走査され、対物レンズ11によって支持プレート2に照射される。
【0021】
そして、支持プレート2の下面のミラーテープ20において反射されたレーザ光が、対物レンズ11により集光され、走査ユニット10を介して戻り、ハーフミラー17を透過して、結像レンズ13により集光され、ピンホール14を透過して光検出器16により検出される。光検出器16により検出された光は、走査ユニット10によるレーザ光の走査位置に基づいて、画像生成部23において2次元的な画像が生成され、画像処理部24において平均輝度値が算出される。
【0022】
上記の処理が、ミラーテープ20の番号「02」〜「07」の位置に対して繰り返され、それぞれの位置における平均輝度値が算出された後に、画像処理部24においては各位置における平均輝度値が比較される。そして、図3に示されるように、最も平均輝度値が高くなる高輝度領域の位置(番号「04」の位置)がマスキングテープの剥がされている位置として抽出され、試料位置特定部25により、記憶部26内から検索された支持プレート2の種類(または当該支持プレート2に設けられた透孔19の位置)が特定される。
【0023】
これにより、支持プレート2に支持されているディッシュ18の位置が特定されるので、ハーフミラー17がダイクロイックミラー12に交換され、バリアフィルタ15が光路上に配置されて、観察作業が行われる。
すなわち、試料位置特定部25により特定されたディッシュ18の位置が対物レンズ11の鉛直上方に配置されるようにXYステージ3が移動させられ、各ディッシュ18の位置において、対物レンズ11が上下方向に移動させられて、その焦点位置が上下方向に調節される。
【0024】
その後、対物レンズ11の焦点位置が試料A内に設定された状態で、レーザ光が試料A内において2次元的に走査されて、試料Aにおいて発生した蛍光が、対物レンズ11により集光され、走査ユニット10を介して戻る途中でダイクロイックミラー12によってレーザ光から分岐され、結像レンズ13により集光される。
【0025】
そして、ピンホール14およびバリアフィルタ15を透過したもののみが光検出器16により検出される。ピンホール14は、対物レンズ11の焦点位置と共役な位置に配置されているので、対物レンズ11の焦点面に沿って広がる断面における試料Aの蛍光画像を取得することができ、取得された蛍光画像はモニタ6に表示される。
【0026】
このように、本実施形態においては、観察に先立って、ミラーテープ20におけるマスキングテープの剥がされた位置を検索するだけで、XYステージ3に搭載されている試料Aの位置を確認することができる。したがって、焦点位置の調節作業において対物レンズ11をディッシュ18以外の位置に接触させて、損傷してしまう不都合の発生を未然に防止することができる。特に、顕微鏡装置1が暗箱内に配置されている場合において、対物レンズ11およびディッシュ18を直接目視することなく対物レンズ11の焦点位置を調節する場合においても、試料Aの位置を予め特定するので、対物レンズ11を支持プレート2に接触させてしまうことを防止することができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、支持プレート2に貼り付けたミラーテープ20のマスキングテープが剥がされた位置における反射光によって画像中に生成される高輝度領域の位置により、試料Aの位置を特定することとしたが、これに代えて、さらに小さいサイズのミラーテープを支持ステージ2の種類毎に異なる位置に貼り付けることにしてもよい。
【0028】
また、ミラーテープ20における反射光の検出に代えて、支持プレート2に設けられた透孔19を透過したレーザ光を支持プレート2の上方に配置された光検出器21によって検出し、検出されたレーザ光の強度とXYステージ3の位置とに基づいて、支持プレート2の画像を生成し、その画像中における高輝度領域の位置をディッシュ18の位置として特定することにしてもよい。この場合には、走査ユニット10によるレーザ光の走査は不要である。
【0029】
また、この場合には、図5に示されるように、支持プレート2の種類毎に異なる位置、すなわち、異なる種類の支持プレート2間では透孔19が少なくとも部分的に重複しない領域を有するように透孔19を設けることが好ましい。このようにすることで、例えば、位置P1,P2,P3において透過したレーザ光が検出された場合には、それぞれ支持プレート2が載置されていると判定することができる。したがって、支持プレート2の全体にわたってレーザ光を照射する必要がなく、位置P1,P2,P3のみにレーザ光を照射して支持プレート2の種類を判別することができ、さらに短時間で観察準備を終えることができる。
【0030】
また、XYステージ3によって試料Aを水平2方向に移動させ、対物レンズ11の上下動により焦点位置を調節することとしたが、これに代えて、対物レンズ11を固定し、試料AをXYZ3方向に移動させるXYZステージ(図示略)を採用することにしてもよい。
また、ディッシュ18に代えてスライドガラスに試料Aを支持させたものを観察することにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る顕微鏡装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の顕微鏡装置のステージに搭載される支持プレートの一例を示す下面図である。
【図3】図1の顕微鏡装置において、観察に先立って取得された画像の平均輝度と、ミラーテープの位置との関係を示す図である。
【図4】図1の顕微鏡装置の制御部を示すブロック図である。
【図5】図1の顕微鏡装置において、支持プレートを透過するレーザ光により支持プレートの種類を判別する場合の支持プレートの例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0032】
A 試料
1 顕微鏡装置
2 支持プレート
3 XYステージ(ステージ、駆動手段)
4 観察光学系
5 制御部
7 落射観察光学系(観察光学系)
8 透過観察光学系(観察光学系)
18 ディッシュ
19 透孔
20 ミラーテープ(ミラー)
26 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージと、
該ステージ上に位置決め状態に固定され、種類に応じて予め定められた位置に試料を支持する支持プレートと、
該支持プレートに支持された試料に対して照明光を照射し、試料から戻る戻り光を撮影する観察光学系と、
該観察光学系と前記ステージとを相対的に移動させる駆動手段と、
これらを制御する制御部とを備え、
該制御部が、観察に先立って前記観察光学系により前記支持プレートの画像を取得させ、取得された画像に基づいて、支持プレートの種類を特定する顕微鏡装置。
【請求項2】
支持プレートの種類に応じて異なる位置に照明光を反射するミラーまたは照明光を透過する透孔が設けられ、
前記制御部に、前記ミラーまたは透孔の位置と、支持プレートの種類とを対応づけて記憶する記憶部が設けられ、
前記制御部は、取得された画像に含まれる前記ミラーまたは前記透孔の位置における輝度情報に基づいて、支持プレートの種類を特定する請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記透孔が、試料を保持するディッシュまたはスライドガラスに対応する位置において支持プレートに貫通形成されている請求項2に記載の顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−44121(P2010−44121A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206399(P2008−206399)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】