説明

顕微鏡装置

【課題】ウェルの裏面の傷、ゴミ、汚れなどの標本像とは異なる像を除去し、良好な標本画像を取得する顕微鏡装置を提供すること。
【解決手段】ステージ3に載置された複数のウェルを有するウェルプレート10の当該ウェル中の細胞を照明する照明光学系4と、照明された前記細胞の像を所定位置に結像する結像光学系5と、前記所定位置に配置される撮像手段14と、前記撮像手段を介して、前もって前記ウェルの裏面像を含む第1画像を取得し、後に前記第1画像を取得した前記ウェルと同一ウェル中の細胞画像である第2画像を取得し、前記第2画像から前記第1画像に含まれる前記ウェルの裏面像を除去した新たな細胞画像を形成する画像処理手段40と、前記第1画像、前記第2画像、および前記新たな細胞画像を保存する保存手段44と、を有することを特徴とする顕微鏡装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のウェルが配置されたウェルプレートの各ウェルの細胞標本などを観察するための顕微鏡では、培養液の表面張力などに起因する表面形状の変化によるレンズ作用を低減し細胞標本の観察を可能にする顕微鏡が提案されている(例えば、特許文献1参照)。そして、細胞観察を行う実験では、細胞を拡大して観察する以外に細胞の分布等を取得するために細胞を培養するウェルの広い視野範囲の画像(例えば、ウェル底面全域画像)を一度に取得することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3437257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような顕微鏡装置は、細胞を培養するウェルの広い視野範囲の画像を一度に取得するために照明光学系から結像光学系を含む光学系の実効的なNAは小さくなり、高倍観察時の焦点深度に比べて焦点深度が極めて深くなっている。このため、通常の顕微鏡観察では焦点ボケして問題とならないような離れた位置にあるウェルの裏面の傷、ゴミ、汚れなどがあまりボケずに標本(細胞)像に重なって観察されるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて行われたものであり、ウェルの裏面の傷、ゴミ、汚れなどの標本(細胞)像とは異なる像を除去し、良好な細胞画像を取得する顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、ステージに載置された複数のウェルを有するウェルプレートの当該ウェル中の細胞を照明する照明光学系と、照明された前記細胞の像を所定位置に結像する結像光学系と、前記所定位置に配置される撮像手段と、前記撮像手段を介して、前もって前記ウェルの裏面像を含む第1画像を取得し、後に前記第1画像を取得した前記ウェルと同一ウェル中の細胞画像である第2画像を取得し、前記第2画像から前記第1画像に含まれる前記ウェルの裏面像を除去した新たな細胞画像を形成する画像処理手段と、前記第1画像、前記第2画像、および前記新たな細胞画像を保存する保存手段と、を有することを特徴とする顕微鏡装置。
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ウェルの裏面の傷、ゴミ、汚れなどの標本像とは異なる像を除去し、良好な標本画像を取得する顕微鏡装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態に係る顕微鏡装置の概略構成図。
【図2】細胞標本に合焦した時の画像。
【図3】細胞培養中のウェルの部分断面。
【図4】新たな細胞画像の取得処理を示すフローチャート。
【図5】細胞標本がない時のウェル裏面画像(キズ画像)。
【図6】図2の画像成分から図5の画像成分を除去して形成した新たな細胞画像。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の実施の形態にかかる顕微鏡装置について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、発明の理解を容易にするためのものに過ぎず、本願発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加・置換等を施すことを排除することは意図していない。
【0010】
本実施形態にかかる顕微鏡装置は、シャーレやウェルプレート等の培養容器に配した試料を培養液で浸した状態で低倍率、広視野で観察することに適した明視野顕微鏡と取得した画像を処理する画像処理装置などから構成されている。
【0011】
図1に示すように、本実施形態にかかる顕微鏡装置1は、ウェルプレート10を載置するためのステージ3、ステージ3の上方に配置された低倍用照明光学系4、ステージ3の下方に配置された結像光学系5、および取得した画像を処理する画像処理装置40を有している。なお、ステージ3、照明光学系4、および結像光学系5は、下方に不図示のベース部を備えた不図示の顕微鏡支柱に対して、不図示の支持部材を介して上下方向の位置を変更可能に支持されている。
【0012】
本実施形態において、ウェルプレート10の各ウェル10a中には、図3に示すように細胞等の位相物体である試料2が培養液11と共に注入されている。なお、ウェルプレート10は、細胞培養後に破棄することを考慮して安価なプラスチック等の高分子材料で形成されたものが使用されが、これに限定されるわけではない。
【0013】
結像光学系5は、低倍用照明光学系4で照明された任意のウェル10a内の試料(細胞)2を観察するためのものであり、図1に示すように、ステージ3側から順に、高開口数の低倍対物レンズ12、およびCCDやCMOSなどで構成されるカメラ14を有する。
【0014】
低倍用対物レンズ12は、ウェル10aの底面から射出された光を略漏れなく集光するための高い開口数(NA)を有する対物レンズであり、本実施形態においてはΦ6.4mm程度の実視野を実現するために、倍率が1.25倍、開口数が0.25以上のものが用いられている。このため、一般的な顕微鏡の低倍対物レンズに比べて焦点深度がより深い対物レンズとなっている。
【0015】
カメラ14には、2/3インチCCDカメラが用いられている。
また、カメラ14には、画像処理装置40が接続されている。画像処理装置40は、例えばパーソナルコンピュタ(以後、単にPCと記す)41とモニタ42とキーボードやマウスなどの入出力デバイス43とから構成されている。また、PC41は、取得した画像を保存するメモリ44を内蔵し、画像処理に必要なソフトが搭載されている。なお、メモリ44は、外付けハードディスクのような外部保存装置を使用することも可能である。
【0016】
照明光学系4は、ウェル10a内の試料2を透過照明するためのものであり、ステージ3側から順に、不図示の、コンデンサレンズ、開口絞り、可動絞り、コレクタレンズ、および光源を有する。
【0017】
不図示の可動絞りは、ウェル10aの底面を略均一に照明するための低NAの照明光を生成するための絞り部材である。本実施形態において不図示の可動絞りには、照明光学系4から射出される照明光のNA(以下、「照明NA」という。)が0.1以下となるように、絞り径や光軸上の位置等が予め設計された絞り部材が用いられている。なお、可動絞りは、照明光がウェル10aの壁面で反射または透過することを防止するために、照明光の光束がウェル10aの内径よりも小さくなるように照明光の照射領域を絞る役割も果たしている。
【0018】
また、可動絞りには、可動絞りを光軸方向および光軸に垂直な方向へ移動させるための不図示の移動機構と、絞り径を変更するための不図示の絞り径調整機構が備えられている。これにより、前記移動機構によって可動絞りを光軸方向へ移動させることで、試料2への照明光の主光線の角度を変更することができる。また、前記絞り径調整機構によって可動絞りの絞り径を変更し、照明光の実効的なNAを変更することができる。さらには、前記移動機構によって可動絞りを光軸に垂直な方向へ移動させることで、照明光学系4から射出される照明光の試料2に対する照射位置を光軸に垂直な方向へ変更することができる。
【0019】
不図示のコンデンサレンズには、コンデンサレンズを光軸方向へ移動させるための不図示の移動機構が備えられている。これにより、当該移動機構によってコンデンサレンズを光軸方向へ移動させることで、照明光の集光位置を光軸方向へ変更することができ、これによって視野内のシェーディングなどを除去することができる。
【0020】
不図示の光源には、LED(発光ダイオード)が用いられている。これにより、照明の均一性と長寿命性を確保することができる。また、培養液11内のフェノールレッド等の栄養素が培養液11の劣化に伴って変色し、これが可視域の光を吸収してしまうため、培養状態によって観察像の明るさが変化してしまうという影響を解消することができる。
【0021】
本実施形態にかかる顕微鏡装置1において、照明光学系4の光源から発せられた照明光は、コレクタレンズを経た後、可動絞りを通過する。可動絞りは、光軸上の位置によって、主光線の方向を変えることができ、開口の大きさや開口部の位置を光軸から離れた位置に変化させることにより、照明光の実効的なNAを変えることができる。そして照明光は、開口絞りを通過し、コンデンサレンズで集光されることにより、必要な照明光の実効的なNAや主光線の方向を形成することとなる。このようにして形成された照明光は、ステージ3上の96ウェルプレート10における任意のウェル10a内の試料2に培養液11を介して照射される(図3参照)。このように、照明光学系4は、試料2に対して一点に集光する光束の収束角とその主光線の方向が制御された照明を実現することができる。
【0022】
ここで、当該ウェル10a内の培養液11の液面は、図3に示すようにウェル10aの壁面近傍が凹面となってレンズ効果が生じている。本顕微鏡装置1では、対物レンズ12の開口数を十分に大きくし、結像光学系5を構成する対物レンズ12の開口数よりも小さい実効的なNAを持つ照明光を培養液11の凹面に照射することで、培養液11の凹面によって照明光の方向が対物レンズ12の外側に向かって屈折しても、培養液11の液面によるレンズ効果の影響を受けにくくしている。また、このときに、照明光の主光線の方向を培養液11の液面により屈折される方向を考慮して、屈折される方向とは逆方向に光軸に対して主光線の方向を向けることで、屈折した照明光がウェル10aの壁面で反射又は透過することを防止することができ、即ち照明光束がウェル10a内のみを進行することととなり、これによってウェル10aのウェルの底面をムラなく略均一に照明することができる。
【0023】
そして、結像光学系5を構成する対物レンズ12の開口数よりも小さいNAの照明光で照明された試料2からの光は、結像光学系5の対物レンズ12に入射する。ここで、第1対物レンズ12は上述のように高開口数の対物レンズであるため、ウェル10aの底面から射出された光(前述の屈折した照明光で照明された試料2からの光を含む)を略漏れなく集光することができる。このようにして対物レンズ12によって集光された光は、不図示の結像レンズを介して、カメラ14の撮像面上に試料2の像を形成する。なお、詳細には、上述のような主光線の方向と照明光の実効的なNAを持つ照明光によってウェル10aの壁面での反射光、即ちノイズ光の発生を抑えながらウェル10aの底面を略均一に照明することで、試料2の背景(バックグラウンド)からの光(直接光)のNAが小さくなるため、直接光と試料2で回折された回折光とが干渉してコントラストの良好な試料2の観察像が形成されることとなる。このようにして形成された試料2の像は、カメラ14で撮影されてモニタ42に表示され、使用者に観察されることとなる。
【0024】
ここで、上述のように再生医療の研究等において培養した細胞を観察する際には、低倍率で視野の全域を観察することが求められており、培養液のレンズ効果の影響を考慮しながら視野の全域で観察を行うためには、対物レンズ12に0.25相当の開口数と1.25倍程度の倍率が必要となる。
【0025】
これに対して本実施形態にかかる顕微鏡装置1は、上述のように照明光の実効的なNAが0.1以下、対物レンズ12の倍率が1.25倍で開口数が0.25以上であり、これによって視野の全域(Φ6.4mm程度の実視野)で観察を行うことができる。また、上述のように96ウェルプレート10におけるウェル10aの内径はΦ6.4mm程度であるため、本実施形態にかかる顕微鏡装置1は、2/3インチCCDカメラであるカメラ14によって、96ウェルプレート10のウェル10aの底面全域を1枚の画像として一度に撮影することができる。即ち、最大限のスループットで培養液11の凹面によるレンズ効果の影響を解消した試料2の像を取得することができる。
【0026】
また、上述のように培養液11のレンズ効果の大きさは、培養容器の種類、培養液11の組成、培養容器の材質、及び培養液11の量等によって様々に変化する。特に、培養容器の種類によって培養液11の凹面の直径は異なり、これによって凹面の曲率半径は大きく変化し、レンズ効果も大きく変化することとなる。
【0027】
そこで、本実施形態にかかる顕微鏡装置1は、培養液11のレンズ効果の変化に応じて、上述のように可動絞りを光軸方向に移動させたり、可動絞りの絞り径を変更させたりすることで、照明光の実効的なNAや照明光の主光線の方向を変更することができる。これにより、培養液11のレンズ効果が変化した場合でも、これに対応した低NAの照明光によって培養容器の底面を略均一に照明することができ、レンズ効果の影響を解消した試料2の像を取得することができる。
【0028】
このように、本実施形態に係る7顕微鏡装置1は、Φ6.4mm程度のウェル10aの底面10b全域を一つの画像として取得することを可能にしているため、低倍結像光学系5の対物レンズ12の焦点深度がより深くなっている。このため、図3に示すようにウェル10a部の裏面10cにキズ20、へこみ21、ゴミ23等が存在すると、カメラ14で取得される細胞画像30には、図2に示すように試料(細胞)2(黒い楕円形状の像)と共に、キズ20、へこみ21、あるいはゴミ23等のボケ像(淡い線状、点状の像)が写りこんでしまう。これらボケ像が含まれる画像を用いて、後処理で細胞2の数や面積を計量した場合、ボケ像を誤差として取込んでしまうという問題がある。
【0029】
本実施形態にかかる顕微鏡装置1は、図2に示す細胞画像30からボケ像(20〜23)を除去した新たな細胞画像を形成する画像処理装置40を有している。
【0030】
以下、図4に示すフローチャートを参照しつつボケ像を除去して新たな細胞画像を取得する手順についてステップ毎に説明する。
【0031】
(ステップS1)
作業者は、細胞培養に使用するウェルプレート10(例えば、96ウェルプレート)における各ウェル10aの底面10bと裏面10cとの間隔Lをマイクロメータ等を用いて計測する。そして、作業者は、計測した結果をウェルプレート10の名称、および各ウェル10aの位置指標(例えば、番号等)と共に、PC41中のメモリ44に保存する。
【0032】
(ステップS2)
作業者は、各ウェル10aの裏面10cのボケ像を取得するために、各ウェル10aに細胞培養で使用する培養液11を培養時とほぼ同じ量注入する。作業者は、培養液11を注入後、顕微鏡装置1のステージ3に載置して、低倍照明光学系4により細胞培養に使用するウェル10aを低倍照明光学系4の下に位置付する。なお、このときの照明は、培養後に行う細胞画像30取得時とほぼ同じ照明条件に調整されている。
【0033】
(ステップS3)
作業者は、照明されたウェル10aの裏面10cに結像光学系5を合焦させた後、メモリ44に保存された各ウェル10aの指標に基きステップS1で取得した間隔Lだけステージ3を光軸に沿って図1の下方(結像光学系5方向)に移動する。この結果、結像光学系5の合焦位置は、ウェル10aの底面10cにほぼ一致することになる。この状態で、作業者は、PC41を介してカメラ14でウェル10aの底面10bの画像を取得する(取得したボケ画像31の一例を図5に示す)。これによりウェル10aの裏面10cにあるキズ20、へこみ21、ゴミ23等のボケ像が取得される(以後、ボケ画像31という)。取得したボケ画像31は、ウェルプレート10の名称、およびウェル10aの指標と共に、PC41のメモリ44に保存する。
なお、上記ボケ画像31は、ウェル10aの裏面10cに結像光学系5を合焦させた画像に画像処理装置40でウェル10aに対応する間隔Lによる画像ぼかし処理を公知の処理ソフトなどで行い取得することも可能である。この場合、作業者は、上記のように間隔Lだけステージ3を移動させる処理を行わなくて済み、ボケ画像31の取得時間を短縮することができる。
【0034】
(ステップS4)
作業者は、ウェルプレート10の全ウェル10a(例えば、96個)あるいは細胞培養に使用するウェル10aの全てのボケ画像31を取得したか否かを判定し、終わっていない場合は1ウェル分の距離ステージ3を面内で移動して、ステップS3を実行する。全てのウェル10aのボケ画像31の取得・保存が終了した場合は、次のステップS5以降を実行する。
【0035】
(ステップS5)
作業者は、ウェルプレート10をステージ3から外し、観察対象の細胞を含む培養液を所定のウェル10aに注入する。
【0036】
(ステップS6)
作業者は、所定のウェル10aに細胞と培養液が注入されたウェルプレート10を不図示の培養装置に投入して所定の温度、湿度、炭酸ガス濃度で所定時間培養する。
【0037】
(ステップS7、S8)
作業者は、所定の培養時間が経過後(S7)、ウェルプレート10をステージ3に載置して、各ウェル10aの培養後の細胞画像30を取得する。図2は、取得した細胞画像30の一例である。
ここで取得された各ウェル10aの細胞画像30には、細胞12と共にボケ像(20〜23)が含まれている。作業者は、取得した細胞画像30と共にウェルプレート10の名称およびウェル10aの指標をPC40のメモリ44に保存する。
【0038】
(ステップS9)
作業者は、次ウェルの10aの細胞画像30を取得するために、1ウェル分の距離ステージ3を面内で移動して全てのウェル10aの細胞画像30を取得し終わるまでステップS8、9を繰り返す。
【0039】
(ステップS10)
作業者は、ステップS3からステップS9により取得してメモリ44に保存した細胞画像30とボケ画像31とを用いて、画像処理装置40を介して、ボケ画像31を除去した新たな細胞画像32を形成する処理を行う。この際、画像処理装置40は、細胞画像30とボケ画像31とが同じ輝度、位置となるように輝度補正、位置補正を行う。図6は、画像処理装置40を介して形成した新たな細胞画像32の一例を示す。作業氏は、形成した各ウェル10aの新たな細胞画像32をウェルプレート10の名称、ウェル10aの指標と共にメモリ44に保存する。
この新たな細胞画像32は、細胞画像30とボケ画像31とから公知の画像処理手法により形成する。例えば、画像処理装置40は、細胞画像30とボケ画像31と同じ輝度、同じ位置に補正した後、細胞画像30とボケ画像31との輝度差分を取ることで新たな細胞画像32を形成する。あるいは、細胞画像30とボケ画像31にそれぞれ3次元デコンボリュウション処理を行い、両者の差分を取った後の3次元デコンボリュウション情報から、新たな細胞画像32を形成する処理を行う。
【0040】
(ステップS11)
作業者は、画像処理装置40を介して、保存している細胞画像30とこれに対応するボケ画像31とから新たな細胞画像32を形成し保存し終わるまでステップS10、S11を繰り返す。新たな細胞画像32を全て形成し終わったら本フローによる処理を終了する。
【0041】
以降、画像処理装置40は、作業者の指示に基き、形成した新たな細胞画像32を用いて細胞数や面積等の計量を行う処理を行う。
【0042】
以上述べたように、本実施形態にかかる顕微鏡装置は、画像処理装置においてウェルプレートの裏面に存在するキズ、へこみ、ゴミ等のボケ像を含む細胞画像から、これらキズ、へこみ、ゴミ等のボケ像を除去した細胞のみを含む新たな細胞画像を形成することができる。この結果、本顕微鏡装置は、画像処理装置を用いて細胞数や細胞面積の計量をより正確に行うことができる。
【0043】
なお、上記説明では、ウェル底面全領域の細胞画像を一括して取得する顕微鏡について説明したが、他の顕微鏡にも利用することができることは言うまでもない。例えば、標本画像にカバーガラスにあるキズやゴミなどのボケ像が含まれる場合にも適用可能である。倍率が低く、焦点深度が深い対物レンズを用いてキズやゴミなどのボケ像が含まれる部分的な画像画像からキズやゴミなどのボケ像を良好に除去した画像を形成することができる。
【0044】
また、上記フローチャートに示す処理は、画像処理装置において自動的に処理するように構成することができる。ステップS3からS11を全自動で行うように顕微鏡装置を構成することで、ステップS1,S2を除き作業者の介入を不用にする顕微鏡装置を構成することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 顕微鏡装置
2 試料(細胞)
3 ステージ
4 低倍用照明装置
5 結像光学系
10 ウェルプレート
12 対物レンズ
14 カメラ
20 キズ
21 へこみ
23 ゴミ
30 細胞画像
31 ボケ画像
32 新たな細胞画像
40 画像処理装置
41 PC
42 モニタ
43 入出力デバイス
44 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージに載置された複数のウェルを有するウェルプレートの当該ウェル中の細胞を照明する照明光学系と、
照明された前記細胞の像を所定位置に結像する結像光学系と、
前記所定位置に配置される撮像手段と、
前記撮像手段を介して、前もって前記ウェルの裏面像を含む第1画像を取得し、後に前記第1画像を取得した前記ウェルと同一ウェル中の細胞画像である第2画像を取得し、前記第2画像から前記第1画像に含まれる前記ウェルの裏面像を除去した新たな細胞画像を形成する画像処理手段と、
前記第1画像、前記第2画像、および前記新たな細胞画像を保存する保存手段と、
を有することを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項2】
前記第1画像と、前記第2画像は、前記ウェルの底面全域にわたる画像であることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記ウェルプレートは、プラスチック製であることを特徴とする請求項1または2に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記第1画像は、前記ウェルの裏面に前記結像光学系の前側焦点位置を位置付けしたのち、前もって測定された前記ウェルの底面と前記ウェルの裏面との距離情報に基き前記ステージを光軸に沿って移動して前記ウェルの底面に前記結像光学系の前側焦点位置を位置付けして前記画像取得手段を介して取得した画像であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項5】
前記第1画像は、前記結像光学系の前側焦点位置を前記ウェルの裏面に位置付けして前記画像手段を介して取得した裏面画像に、前もって測定された前記ウェルの底面と前記ウェルの裏面との距離情報に基て前記画像処理手段が焦点ボケ処理を行った画像であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
前記ウェルプレートの全ウェルの前記距離情報は、前もって測定されて前記保存手段に保存されていることを特徴とする請求項4または5に記載の顕微鏡装置。
【請求項7】
前記照明光学系から射出される照明光の実効的なNAは、前記結像光学系の対物レンズの開口数より小さいことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項8】
前記照明光の実効的なNAは0.1以下であり、前記対物レンズの開口数は0.25以上であることを特徴とする請求項7に記載の顕微鏡装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−159794(P2012−159794A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20902(P2011−20902)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】