説明

顕微鏡鏡筒

【課題】レチクル回転止め機構の付け外しを容易に行うことができ、かつ光学系の調整を行う事態を防止することができる顕微鏡鏡筒を提供する。
【解決手段】鏡筒本体1に固定筒2を固定し、当該固定筒2の固定中心軸線2aに平行かつ固定筒2の固定中心軸線2aからそれぞれ同じ距離に設けた2つの保持筒6,7を中心軸線2aからの距離を変えずに移動可能に設け、さらに分岐した2つの光路がそれぞれ保持筒6,7の中心軸線に常に合致する光学系を配設した鏡筒部と、保持筒7の回転中心軸線7aに対してレチクルを設けた面が垂直となるように当該回転中心軸線7a上にレチクル板を配置し、保持筒7の移動に際して回転中心軸線7a周りのレチクル板の向きを顕微鏡本体に対して保持する保持機構を一体化した形態で固定筒2および保持筒7に着脱可能に取り付けられるレチクル回転止めユニット20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双眼鏡筒を構成してジーデントップ型の眼幅調整機構を有した顕微鏡鏡筒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡鏡筒は、観察対象としての試料を載置するステージを有した顕微鏡本体に取り付けてあり、当該顕微鏡本体に設けた対物レンズから入射された観察光を、鏡筒自身に保持した接眼レンズに入射させ当該接眼レンズを介して人の眼に結像させる。顕微鏡鏡筒には、対物レンズから入射された光路を光学系によって2つに分岐させ、分岐した光路をそれぞれ接眼レンズに入射させて同じ像を両目で観察できるようにした双眼鏡筒がある。また、双眼鏡筒を構成する顕微鏡鏡筒においては、使用者の両目の間隔(眼幅)に合わせて接眼レンズの相互間の間隔を調整する眼幅調整機構を有している。眼幅調整機構には、ジーデントップ型のものがある。ジーデントップ型の眼幅調整機構は、光学系の光軸方向を維持することで2つの接眼レンズの光軸に分岐した光路を常に合致させつつ、接眼レンズをそれぞれ保持している保持筒を同一の中心からの距離を変えず公転移動させるものである。
【0003】
一方、顕微鏡鏡筒において、接眼レンズ内の像面に、十字線や長方形などレチクルと称するラインが刻印されたガラス板からなるレチクル板が固定されているものがある。レチクルは、接眼レンズを通した視野内で観察対象と共に観察されるものであり、観察範囲の確認や観察対象の中心出しなどに用いられる。しかし、上記ジーデントップ型の眼幅調整機構によって接眼レンズの間隔を調整した場合、接眼レンズを通した視野内において観察対象に対してレチクルの向きが変わることになる。このため、例えば銀鉛カメラを用いて観察対象を撮影する場合には、接眼レンズを通したレチクルによって撮影範囲を確認しているが、観察対象に対してレチクルの向きが変わることでカメラの撮影範囲を確認することが困難になる。
【0004】
そこで、従来では、双眼鏡筒を構成してジーデントップ型の眼幅調整機構を用いた顕微鏡鏡筒において、レチクル回転止め機構を設けたものがある。このレチクル回転止め機構では、接眼レンズが自身の光軸の周りに回転可能となるように保持筒に保持してある。そして、接眼レンズの回転中心から所定距離をおいて接眼レンズ側に配置した回転支承体と、接眼レンズの公転移動の中心から上記所定間隔をおいて配置した固定の回転支承体とをレバーによって連結することで、各回転支承体、接眼レンズの公転移動の中心、および接眼レンズの回転中心を繋ぐ平行リンクを構成している。この構成により、眼幅調整機構によって接眼レンズの眼幅調整を行った場合に、接眼レンズを通した視野内において観察対象に対するレチクルの向きを一定に保つ(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、従来、他のレチクル回転止め機構では、接眼レンズが自身の光軸の周りに回転可能に保持してある。さらに、接眼レンズの公転移動の中心に固定した固定軸と、当該固定軸と同径とした接眼レンズの外周部とにベルトを掛け、このベルトを固定軸および接眼レンズの外周部にそれぞれ固定して構成してある。この構成により、眼幅調整機構によって接眼レンズの眼幅調整を行った場合に、接眼レンズを通した視野内において観察対象に対するレチクルの向きを一定に保つ(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】実開昭60−36618号公報
【特許文献2】実開昭54−114948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、銀鉛カメラに代わってデジタルカメラが多く普及している。デジタルカメラでは、その撮影範囲をモニタに写して観察することができる。そして、モニタで撮影範囲を確認する場合には、レチクルによる撮影範囲の確認を行わないことからレチクル回転止め機構が不要となる。このように、レチクル回転止め機構が不要な場合では、レチクル回転止め機構が眼幅調整での接眼レンズの移動に関わって作用することから、接眼レンズの公転移動の負荷となるため、レチクル回転止め機構を取り外す要望がある。しかし、従来の顕微鏡鏡筒では、レチクル回転止め機構が顕微鏡鏡筒に予め組み込まれて構成してあることから、レチクル回転止め機構を取り外すには顕微鏡鏡筒を分解する必要があるためレチクル回転止め機構を容易に取り外すことはできない。また、レチクル回転止め機構を取り外すために顕微鏡鏡筒を分解した場合には、光学系の調整を伴うことになる。
【0008】
ところで、レチクルおよびレチクル回転止め機構は、銀鉛カメラを用いて観察対象を撮影する以外に偏光観察において必要である。偏光観察で使用するポラライザは、顕微鏡本体におけるステージ下で光源からの光路上に回転可能に配置してあり、自身に設けてある目盛りが0°のときにポラライザを通過する光の波の振動方向を所定の方向に初期化する必要がある。通常では、接眼レンズを通した視野内におけるレチクルを顕微鏡本体の水平方向に合わせてポラライザの振動方向を初期化している。もし、偏光観察を行う際にレチクル回転止め機構がない場合には、眼幅調整によって観察対象を載置するステージに対するレチクルの向きが変わってしまうため、ポラライザの初期化した角度が動いてしまいポラライザの振動方向の基準が取れなくなってしまう。しかしながら、上述したようにレチクル回転止め機構が不要になったことで、顕微鏡鏡筒を分解してレチクル回転止め機構を取り外してしまった場合では、レチクル回転止め機構を元に戻すために顕微鏡鏡筒を再度分解する必要があるので容易にレチクル回転止め機構を取り付けることはできない。また、レチクル回転止め機構を取り付けるために顕微鏡鏡筒を分解した場合には、光学系の調整を伴うことになる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、レチクル回転止め機構の付け外しを容易に行うことができ、かつ光学系の調整を行う事態を防止することができる顕微鏡鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る顕微鏡鏡筒は、鏡筒本体に固定筒を固定し、当該固定筒の中心軸線に平行かつ固定筒の中心軸線からそれぞれ同じ距離に設けた2つの保持筒の少なくとも一方を前記中心軸線からの距離を変えずに移動可能に設け、さらに前記固定筒の中心軸線に合致して入射させた光路を透過および反射させて分岐した2つの光路がそれぞれ保持筒の中心軸線に常に合致するように光軸の向きが維持された光学系を配設した鏡筒部と、前記移動可能な保持筒の中心軸線に対してレチクルを設けた面が垂直となるように当該中心軸線上にレチクル板を配置し、保持筒の移動に際して前記中心軸線周りのレチクル板の向きを顕微鏡本体に対して保持する保持機構を一体化した形態で前記固定筒および移動可能な保持筒に着脱可能に取り付けられるレチクル回転止めユニットとを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に係る顕微鏡鏡筒は、上記請求項1において、前記レチクル回転止めユニットは、固定筒の中心軸線に対して平行かつ所定間隔をおいて固定筒に配置される固定の第一軸と、レチクル板を保持しつつ移動可能な保持筒の中心軸線周りに回転するように移動可能な保持筒に配置される回転部材と、前記回転部材に設けてあって移動可能な保持筒の中心軸線に対して平行かつ前記所定間隔をおいて配置した第二軸と、前記第一軸および第二軸を連結して前記第一軸と第二軸と固定筒の中心軸線と移動可能な保持筒の中心軸線とを結ぶ平行リンクをなす杆状の連結部材とを有したことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に係る顕微鏡鏡筒は、上記請求項1において、前記レチクル回転止めユニットは、固定筒の中心軸線を中心として所定半径の円周に沿って固定筒に固定される第一周壁部と、レチクル板を保持しつつ移動可能な保持筒の中心軸線周りに回転するように移動可能な保持筒に配置される回転部材と、前記回転部材に設けてあって移動可能な保持筒の中心軸線を中心として前記所定半径の円周に沿って配置された第二周壁部と、前記第一周壁部および第二周壁部を連結する連結部材とを有したことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に係る顕微鏡鏡筒は、上記請求項1において、前記レチクル回転止めユニットは、固定筒の中心軸線を中心として所定半径の円周に沿って固定筒に固定される第一周壁部と、レチクル板を保持しつつ移動可能な保持筒の中心軸線に垂直な面に沿って移動可能に設けてあり、移動可能な保持筒の中心軸線周りに回転するように移動可能な保持筒に配置された取付部に対して着脱可能に取り付けられる回転部材と、前記回転部材に設けてあって移動可能な保持筒の中心軸線を中心として前記所定半径の円周に沿って配置された第二周壁部と、前記第一周壁部および第二周壁部に巻き掛ける無端状の連結部材と、前記連結部材に張力を付与する張力付与手段とを有したことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5に係る顕微鏡鏡筒は、上記請求項2〜4のいずれか一つにおいて、前記鏡筒部は、移動可能な保持筒の中心軸線周りに回転可能に配設されて前記回転部材が着脱可能に設けられた取付部を有し、前記レチクル回転止めユニットを外した形態で前記取付部に対して取り付けられて移動可能な保持筒の中心軸線上で一方の接眼レンズを保持することで、分岐された他方の光路の光軸上で保持された他方の接眼レンズの光軸方向の位置に対して一方の接眼レンズの光軸方向の位置を揃えるアダプタを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る顕微鏡鏡筒は、この結果、保持機構を一体化した形態で固定筒および移動可能な保持筒に着脱可能に設けたレチクル回転止めユニットを備えたことにより、鏡筒部に対してレチクル回転止め機構の付け外しを容易に行うことができる。さらに、レチクル回転止めユニットが保持機構を一体化してあるため、レチクル回転止めユニットの着脱の際に光学系の調整を行う事態を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
図1は本発明に係る顕微鏡鏡筒を示す斜視図、図2は図1に示す顕微鏡鏡筒の概略断面図である。本実施の形態における顕微鏡鏡筒は、観察対象としての試料を載置するステージを有した顕微鏡本体に取り付けてあり、当該顕微鏡本体に設けた対物レンズから入射された観察光を光学系によって2分割し、分割した観察光を2つの接眼レンズに入射させて同じ像を両目で観察できるようにした双眼鏡筒として構成してあり、さらに両眼の間隔である眼幅を調整可能に構成したジーデントップ型の眼幅調整機構を有したものである。
【0018】
図1〜図3に示すように顕微鏡鏡筒は、箱状に形成した鏡筒本体1を有している。鏡筒本体1は、顕微鏡本体(図示せず)に取り付けられるものであって、その正面1aに鏡筒部をなす固定筒2が固定してある。固定筒2は、一端が開口し他端が閉塞した筒状体を構成するもので、鏡筒本体1の正面1aに一端が固定されて、他端が鏡筒本体1の正面1aから延在するように設けてある。
【0019】
固定筒2の筒内の一端側には、分割プリズム3が配置してある。分割プリズム3は、直角プリズム3Aと平行プリズム3Bとを半透過膜3Cを介して接合したもので、対物レンズ(図示せず)から入射された観察光の光路を50:50に分岐するためのものである。この分割プリズム3は、図2に示すように正面方向に45°傾いて設けた半透過膜3Cに対して正面方向に透過する第一光軸3aと、当該半透過膜3Cにより第一光軸3aから直角(図2における右方向)に反射しつつ、平行プリズム3Bによって第一光軸3aと平行に正面方向に反射する第二光軸3bとを有している。また、固定筒2の筒内の他端側には、平行プリズム4が配置してある。この平行プリズム4は、第一光軸3aに合致して正面方向から直角(図2における左方向)に反射しつつ、第一光軸3aと平行に正面方向に反射する光軸4aを有している。上記分割プリズム3および平行プリズム4は、分割プリズム3(平行プリズム3B)の右側正面方向に反射する第二光軸3bと、平行プリズム4の左側正面方向に反射する光軸4aとが、第一光軸3aに対して平行かつ第一光軸3aに対してそれぞれ同じ距離に位置する光学系を構成している。
【0020】
固定筒2の他端には、固定部5が設けてある。固定部5は、固定筒2の他端から正面方向に突出した円柱状に形成してあって、当該円柱状の中心となる固定筒2の固定中心軸線2aを上記第一光軸3aに合致するようにして固定筒2に設けてある。また、固定部5の周面には、ネジ穴5aが設けてある。
【0021】
また、上記固定筒2には、鏡筒部をなす2つの保持筒6,7が取り付けてある。各保持筒6,7は、接眼レンズ8,12をそれぞれ保持するためのものであって、固定筒2の左右側部に配置してあり正面方向に延在する筒状に形成してある。
【0022】
図2に示す左側の保持筒6の筒内には、上記平行プリズム4が固定してある。また、保持筒6の正面方向先端には、接眼レンズ8が着脱可能に保持してある。接眼レンズ8は、その光軸が平行プリズム4の左側正面方向に反射する光軸4aに合致するように保持筒6に保持される。
【0023】
また、保持筒6は、分割プリズム3の第一光軸3aを中心とし、左側正面方向に反射する平行プリズム4の光軸4aと第一光軸3aとの間の距離を半径として、平行プリズム4および接眼レンズ8を伴って固定筒2に対して移動可能に設けてある。すなわち、保持筒6は、分割プリズム3、平行プリズム4および接眼レンズ8の各光軸を合致させた光学系の光軸方向が維持された形態で移動する。
【0024】
図2に示す右側の保持筒7の筒内には、上記分割プリズム3が固定してある。保持筒7の筒内には、光路長補正レンズ9が、その光軸9aを分割プリズム3(平行プリズム3B)の右側正面方向に反射する第二光軸3bに合致するように設けてある。この光路長補正レンズ9は、保持筒6側と保持筒7側との光路長(光学距離)を等しくするためのものである。
【0025】
保持筒7の正面方向先端には、取付部10が設けてある。取付部10は、正面方向に延在する円筒状に形成してあって、当該円筒状の中心となる保持筒7の回転中心軸線7aを上記第二光軸3bおよび光軸9aに合致するように保持筒7に設けてある。さらに、取付部10は、保持筒7に対して回転中心軸線7aの周りに回転可能に設けてある。また、取付部10の周面には、ネジ穴10aが貫通して設けてある。そして、ネジ穴10aに外側からネジ(図示せず)を螺合することによって取付部10に対してアダプタ11および接眼レンズ12が取り付けられる。アダプタ11は、図1〜図5に示すように取付部10の周囲を覆うようにして取付部10に対して着脱可能に取り付けられる。アダプタ11は、取付部10に取り付けられた状態で、その正面方向の端面が取付部10の正面方向の先端位置を規定する。接眼レンズ12は、その光軸が分割プリズム3(平行プリズム3B)の右側正面方向に反射する第二光軸3bおよび光路長補正レンズ9の光軸9aに合致するように取付部10に保持される。接眼レンズ12は、図1および図2に示すようにアダプタ11の正面方向の端面によって正面方向(光軸方向)での取り付け位置が規定された状態で保持されて取付部10に取り付けられる。この接眼レンズ12の取り付け位置は、保持筒6に取り付けた接眼レンズ8の正面方向(光軸方向)での取り付け位置に合致する。このように、アダプタ11は、取付部10と接眼レンズ12との間に介在して接眼レンズ12の正面方向(光軸方向)の取り付け位置を接眼レンズ8の取り付け位置に合わせるためのものである。
【0026】
また、保持筒7は、分割プリズム3の第一光軸3aを中心とし、右側正面方向に反射する第二光軸3bと第一光軸3aとの間の距離を半径として、分割プリズム3、光路長補正レンズ9および接眼レンズ12を伴って移動可能に設けてある。すなわち、保持筒7は、分割プリズム3、光路長補正レンズ9および接眼レンズ12の各光軸を合致させた光学系の光軸方向が維持された形態で移動する。
【0027】
このように、上記顕微鏡鏡筒は、分割プリズム3、平行プリズム4および光路長補正レンズ9によって、固定筒2の一端の開口を通して対物レンズ(図示せず)から入射した観察光の光路を当該光路に対して平行かつ当該光路に対してそれぞれ同じ距離となる2つの光路に分岐し、この分岐した光路を保持筒6,7にそれぞれ保持した接眼レンズ8,12に対して同じ光路長で入射させる光学系を有した双眼鏡筒として構成してある。さらに、顕微鏡鏡筒は、上記光学系の光軸方向を維持しつつ、各保持筒6,7を固定中心軸線2aとの距離を変えずに公転移動させることで、分岐した光路を観察光の光路の光軸を中心として公転移動させて、接眼レンズ8,12の相互間の間隔を調整するジーデントップ型の眼幅調整機構を有している。
【0028】
上述した構成の顕微鏡鏡筒には、本発明に係るレチクル回転止めユニットが着脱可能に取り付けられる。図6は本発明に係るレチクル回転止めユニットを正面側から視た斜視図、図7は本発明に係るレチクル回転止めユニットを背面側から視た斜視図、図8は本発明に係るレチクル回転止めユニットを上側から視た斜視図である。
【0029】
図6〜図8に示すようにレチクル回転止めユニット20は、一体化された保持機構として固定部材21、回転部材22および連結部材23を有してなる。
【0030】
固定部材21は、上述した顕微鏡鏡筒の固定部5に着脱可能に固定されるものである。固定部材21は、円柱状の固定部5の外周に嵌合する円環状部21aを有している。円環状部21aは、固定部5に嵌合することによって、円環状の中心軸線21bが固定筒2における固定中心軸線2aに合致する。また、円環状部21aの周壁には、固定部5のネジ穴5aに合致して、当該ネジ穴5aに螺合するネジ(図示せず)を挿通するための挿通穴21cが設けてある。すなわち、固定部材21は、挿通穴21cに挿通したネジをネジ穴5aに螺合することによって固定部5に固定される一方、ネジを外すことによって固定部5から取り外すことが可能になる。また、固定部材21は、円環状部21aの径外方向に延在したフランジ部21dを有している。このフランジ部21dには、中心軸線21bに平行かつ所定距離をおいた第一軸を構成する取付ピン21eが取り付けられる。
【0031】
回転部材22は、上述した顕微鏡鏡筒の取付部10に着脱可能に取り付けられるものである。回転部材22は、筒状の取付部10の外周に嵌合する円環状部22aを有している。円環状部22aは、取付部10に嵌合することによって、円環状の中心軸線22bが保持筒7における回転中心軸線7aに合致する。また、円環状部22aの周壁には、取付部10のネジ穴10aに合致して、当該ネジ穴10aに螺合するネジ(図示せず)を挿通するための挿通穴22cが設けてある。すなわち、回転部材22は、挿通穴22cに挿通したネジをネジ穴10aに螺合することによって取付部10に固定される。取付部10に固定された回転部材22は、取付部10とともに回転中心軸線7a(および中心軸線22b)を中心にして回転することが可能になる。そして、回転部材22は、ネジを外すことによって取付部10から取り外すことが可能になる。また、回転部材22は、円環状部22aの径外方向に延在したフランジ部22dを有している。このフランジ部22dには、中心軸線22bに平行かつ所定距離をおいた第二軸を構成する取付ピン22eが取り付けられる。
【0032】
連結部材23は、固定部材21と回転部材22とを連結するためのものである。連結部材23は、杆状に形成してあり、その一端が取付ピン21e(第一軸)を介して固定部材21に回転可能に取り付けてあり、他端が取付ピン22e(第二軸)を介して回転部材22に回転可能に取り付けてある。この連結部材23は、杆状の長さによって第一軸と第二軸との間の距離を、固定中心軸線2aと回転中心軸線7aとの間の距離に等しくなるように固定部材21と回転部材22とを連結している。
【0033】
また、レチクル回転止めユニット20は、固定部材21の円環状部21aの正面側、および連結部材23の正面側を覆うカバー部材24を有している。このカバー部材24は、回転部材22とは別体であり、かつ取付ピン22eが挿通することなく構成してある。
【0034】
上述したレチクル回転止めユニット20を鏡筒本体1に取り付ける手順を説明する。図9は本発明に係る顕微鏡鏡筒においてレチクル回転止めユニットを取り付けた状態を示す斜視図、図10は図9に示す顕微鏡鏡筒の概略断面図、図11は図9に示した顕微鏡鏡筒に接眼レンズを取り付けた状態を示す斜視図、図12は図9に示す顕微鏡鏡筒を軸方向から視た図である。
【0035】
まず、各保持筒6,7が互いに最も近づいた位置となるように、固定中心軸線2aを中心に各保持筒6,7を移動させる。次いで、取付部10のネジ穴10aからネジを外すことで接眼レンズ12を保持筒7から外して図3に示す形態とし、さらにアダプタ11を保持筒7から外して図4および図5に示す形態とする。このとき、接眼レンズ8も保持筒6から外してもよい。
【0036】
次いで、図9および図10に示すようにレチクル回転止めユニット20における固定部材21の円環状部21aを固定筒2の固定部5に嵌合し、挿通穴21cに挿通したネジを固定部5のネジ穴5aに螺合することで固定部材21を固定筒2に固定する。さらに、レチクル回転止めユニット20における回転部材22の円環状部22aを、保持筒7の取付部10に嵌合し、挿通穴22cに挿通したネジを取付部10のネジ穴10aに螺合することで回転部材22を保持筒7に取り付ける。このとき、ネジ穴10aには、ネジを完全に締めずに回転部材22を仮止めにしておく。その後、レチクルが刻印されたガラス板からなるレチクル板(図示せず)を接眼レンズ12に取り付ける。レチクル板は、接眼レンズ12の光軸に対して垂直となるように当該光軸上に配置される。そして、この接眼レンズ12を図11に示すように取付部10に挿入する。
【0037】
ここで、図には明示しないが顕微鏡本体における回転機構付きステージに対し、光学軸が基準面に平行な結晶標本である定方位板をセットする。次いで、ステージを回転させ、当該ステージの回転目盛りをゼロに合わせる。これにより、接眼レンズ8,12を通した視野内で定方位板の基準面がほぼ水平になる。そして、接眼レンズ12を取付部10に対して回転させ、レチクルの向きを定方位板の基準面に対して平行に合わせる。次いで、ネジ穴10aに螺合したネジを完全締めて取付部10および円環状部22aに対して接眼レンズ12を固定する。その後、定方位板をステージから取り外す。これにより、レチクルの向きを顕微鏡本体に合わせることができる。
【0038】
そして、偏光観察をする場合には、図には明示しないが顕微鏡本体におけるステージ下で光源からの光路上にセットし、その目盛りを0°に合わせる。さらに、顕微鏡本体における対物レンズと鏡筒本体1との間にアナライザをセットし、視野が真暗となるようにアナライザを回転させる。ここで、接眼レンズ8,12を通した視野内におけるレチクルを基準とした顕微鏡本体の水平方向に合わせてポラライザの振動方向を初期化する。その後、例えば結晶などの観察対象をステージにセットして、その結晶方向がほぼ45°になるようにレチクルを基準としてステージを回転させる。このとき、結晶方向の45°と135°とで色が反転(黄−青)するので注意する。次いで、基準としている色が出るようにステージを回転させて微調整を行う。最後に、ステージの目盛りを読み取ってデータとする。
【0039】
上記のごとく顕微鏡鏡筒に取り付けられたレチクル回転止めユニット20は、固定部材21を固定部5に固定することで、図12に示すように固定部材21における円環状部21aの中心軸線21bが、固定筒2における固定中心軸線2aに合致する。また、回転部材22を取付部10に取り付けることで、回転部材22における円環状部22aの中心軸線22bが、保持筒7における回転中心軸線7aに合致する。そして、上述したように連結部材23は、中心軸線21b(固定中心軸線2a)から所定距離の位置にある取付ピン21e(第一軸)と、中心軸線22b(回転中心軸線7a)から同じ所定距離の位置にある取付ピン22e(第二軸)との間の距離を、中心軸線21b(固定中心軸線2a)と中心軸線22b(回転中心軸線7a)との間の距離に等しくなるように固定部材21と回転部材22とを連結している。このため、図12に示すように各軸に直交する同一平面上において、中心軸線21b(固定中心軸線2a)、中心軸線22b(回転中心軸線7a)、第二軸(22e)、および第一軸(21e)を直線で結んだ平行四辺形のリンクが画成されることになる。この結果、レチクル回転止めユニット20を取り付けた顕微鏡鏡筒では、固定部材21と回転部材22とを連結部材23によって上記平行四辺形の関係にして連結し、かつ回転部材22が接眼レンズ12を伴って中心軸線22b(回転中心軸線7a)を中心にして回転するように構成してあるため、眼幅を調整するために固定中心軸線2aを中心に保持筒6,7を移動させても、接眼レンズ8,12を通した視野内において鏡筒本体1に対してレチクルの向きを一定に保つことが可能になる。
【0040】
なお、上述したようにレチクル回転止めユニット20を顕微鏡鏡筒に取り付ける際には、各保持筒6,7が互いに最も近づいた位置となるように、当該保持筒6,7を移動させている。その理由としては、図12で示す水平線に対して平行四辺形のリンクの角度rが、設計値から30°以上外れてレチクル回転止めユニット20が取り付けられた場合にリンクが作動しなくなるおそれがあるので、この事態を防ぐためである。
【0041】
このように、上述した顕微鏡鏡筒は、保持機構(固定部材21、回転部材22および連結部材23)を一体化した形態で固定筒2および保持筒7に着脱可能に設けたレチクル回転止めユニット20を備えたことにより、鏡筒部に対してレチクル回転止め機構の付け外しを容易に行うことが可能になる。さらに、レチクル回転止めユニット20が保持機構を一体化してあるため、レチクル回転止めユニット20の着脱の際に光学系の調整を行う事態を防止することができる。
【0042】
また、レチクルを用いずに観察を行う使用者には、レチクル回転止めユニット20を付加しない顕微鏡鏡筒を提供すればよく、その一方で偏光観察などレチクルを用いた観察を行う使用者には、同じ顕微鏡鏡筒にレチクル回転止めユニット20を付加して提供すればよい。
【0043】
以下、レチクル回転止めユニットの別の実施の形態を説明する。図13は本発明に係る別の実施の形態におけるレチクル回転止めユニットを正面側から視た斜視図、図14は本発明に係る別の実施の形態におけるレチクル回転止めユニットを背面側から視た斜視図、図15は別の実施の形態におけるレチクル回転止めユニットを鏡筒本体に取り付けた状態を示す斜視図である。
【0044】
図13および図14に示すようにレチクル回転止めユニット30は、一体化された保持機構として固定部材31、回転部材32および連結部材33を有してなる。
【0045】
固定部材31は、上述した顕微鏡鏡筒の固定部5に着脱可能に固定されるものである。固定部材31は、円柱状の固定部5の外周に嵌合する円環状部31aを有している。円環状部31aは、固定部5に嵌合することによって、円環状の中心軸線31bが固定筒2における固定中心軸線2aに合致する。また、円環状部31aの周壁には、固定部5のネジ穴5aに合致して、当該ネジ穴5aに螺合するネジ(図示せず)を挿通するための挿通穴31cが設けてある。すなわち、固定部材31は、挿通穴31cに挿通したネジをネジ穴5aに螺合することによって固定部5に固定される一方、ネジを外すことによって固定部5から取り外すことが可能になる。また、固定部材31の外周には、中心軸線31bを中心とした所定半径の円周に沿う周壁を有した第一周壁部31dが設けてある。この固定部材31は、背面側に開放するケース部材34の収容凹部内に固定してある。
【0046】
回転部材32は、上述した顕微鏡鏡筒の取付部10に着脱可能に取り付けられるものである。回転部材32は、筒状の取付部10の外周に嵌合する円環状部32aを有している。円環状部32aは、取付部10に嵌合することによって、円環状の中心軸線32bが保持筒7における回転中心軸線7aに合致する。また、円環状部32aは、ケース部材34を貫通してその正面側および背面側に表出して設けてあり、ケース部材34に対して中心軸線32bを中心として回転可能に支承してある。そして、ケース部材34の正面側に表出した円環状部32aの周壁には、ネジ穴32cが設けてある。このネジ穴32cには、ネジ32dが円環状部32aの周壁に貫通して螺合される。さらに、円環状部32aの内周には、接眼レンズ12を当接させる当接面部32eが設けてある。そして、当接面部32eに接眼レンズ12を当接させつつ、ネジ穴32cにネジ32dを螺合することで、円環状部32aの内周に突出したネジ32dによって接眼レンズ12が固定される一方、ネジ32dを緩めることで接眼レンズ12を円環状部32aから外すことが可能になる。また、ケース部材34の背面側において回転部材32の外周には、中心軸線32bを中心として前記第一周壁部31dと同じ所定半径の円周に沿う周壁を有した第二周壁部32fが設けてある。
【0047】
連結部材33は、固定部材31と回転部材32とを連結するためのものである。連結部材33は、金属ベルト、ワイヤなどを無端状に形成し、固定部材31の第一周壁部31dと回転部材32の第二周壁部32fとに巻き掛けて設けてあり、各周壁部31d、32fに対してそれぞれネジなどで固定してある。
【0048】
上述したレチクル回転止めユニット30を鏡筒本体1に取り付ける手順を説明する。まず、各保持筒6,7が互いに最も近づいた位置となるように、固定中心軸線2aを中心に各保持筒6,7を移動させる。次いで、取付部10のネジ穴10aからネジを外すことで接眼レンズ12を保持筒7から外して図3に示す形態とし、さらにアダプタ11を保持筒7から外して図4および図5に示す形態とする。なお、接眼レンズ8も保持筒6から外してもよい。
【0049】
次いで、図15に示すようにレチクル回転止めユニット30における固定部材31の円環状部31aを固定筒2の固定部5に嵌合し、挿通穴31cに挿通したネジを固定部5のネジ穴5aに螺合することで固定部材31を固定筒2に固定する。さらに、レチクル回転止めユニット30における回転部材32の円環状部32aを、保持筒7の取付部10に嵌合することによって回転部材32を保持筒7に取り付ける。その後、レチクルが刻印されたガラス板からなるレチクル板(図示せず)を接眼レンズ12に取り付ける。レチクル板は、接眼レンズ12の光軸に対して垂直となるように当該光軸上に配置される。そして、この接眼レンズ12を図15に示すように回転部材32に挿入する。このとき、ネジ穴32cは完全に締めず接眼レンズ12を仮止めにしておく。
【0050】
ここで、図には明示しないが顕微鏡本体における回転機構付きステージに対し、光学軸が基準面に平行な結晶標本である定方位板をセットする。次いで、ステージを回転させ、当該ステージの回転目盛りをゼロに合わせる。これにより、接眼レンズ8,12を通した視野内で定方位板の基準面がほぼ水平になる。そして、接眼レンズ12を回転部材32に対して回転させ、レチクルの向きを定方位板の基準面に対して平行に合わせる。次いで、ネジ穴32cに螺合したネジ32dを完全に締めて回転部材32に対して接眼レンズ12を固定する。その後、定方位板をステージから取り外す。これにより、レチクルの向きを基準位置に合わせることができる。
【0051】
そして、偏光観察をする場合には、図には明示しないが顕微鏡本体におけるステージ下で光源からの光路上にセットし、その目盛りを0°に合わせる。さらに、顕微鏡本体における対物レンズと鏡筒本体1との間にアナライザをセットし、視野が真暗となるようにアナライザを回転させる。ここで、接眼レンズ8,12を通した視野内におけるレチクルを基準とした顕微鏡本体の水平方向に合わせてポラライザの振動方向を初期化する。その後、例えば結晶などの観察対象をステージにセットして、その結晶方向がほぼ45°になるようにレチクルを基準としてステージを回転させる。このとき、結晶方向の45°と135°とで色が反転(黄−青)するので注意する。次いで、基準としている色が出るようにステージを回転させて微調整を行う。最後に、ステージの目盛りを読み取ってデータとする。
【0052】
上記のごとく顕微鏡鏡筒に取り付けられたレチクル回転止めユニット30は、固定部材31を固定部5に固定することで、図16に示すように固定部材31における円環状部31aの中心軸線31bが、固定筒2の固定中心軸線2aに合致する。また、回転部材32を取付部10に嵌合することで、回転部材32における円環状部32aの中心軸線32bが、保持筒7の回転中心軸線7aに合致する。そして、連結部材33は、固定部材31の第一周壁部31dと回転部材32の第二周壁部32fとに巻き掛けて各周壁部31d,32fに対して固定してある。このため、保持筒7が固定中心軸線2aを中心に移動すると、これに伴って回転部材32が中心軸線32b(回転中心軸線7a)を中心に回転することで、保持筒7と回転部材32のとの回転角度が等しくなる。この結果、レチクル回転止めユニット30を取り付けた顕微鏡鏡筒では、眼幅を調整するために固定中心軸線2aを中心に保持筒6,7を移動させても、接眼レンズ8,12を通した視野内において鏡筒本体1に対してレチクルの向きを一定に保つことが可能になる。
【0053】
このように、上述した顕微鏡鏡筒は、保持機構(固定部材31、回転部材32および連結部材33)を一体化した形態で固定筒2および保持筒7に着脱可能に設けたレチクル回転止めユニット30を備えたことにより、鏡筒部に対してレチクル回転止め機構の付け外しを容易に行うことが可能になる。さらに、レチクル回転止めユニット30が保持機構を一体化してあるため、レチクル回転止めユニット30の着脱の際に光学系の調整を行う事態を防止することができる。
【0054】
また、レチクルを用いずに観察を行う使用者には、レチクル回転止めユニット30を付加しない顕微鏡鏡筒を提供すればよく、その一方で偏光観察などレチクルを用いた観察を行う使用者には、同じ顕微鏡鏡筒にレチクル回転止めユニット30を付加して提供すればよい。
【0055】
ところで、ジーデントップ型の眼幅調整機構を有した顕微鏡鏡筒では、その組み立て時において、保持筒7における回転中心軸線7aと、接眼レンズ12の光軸とを合致させるために、接眼レンズ12を取り付ける取付部10を回転中心軸線7aに垂直な面に沿って移動させる微調整を行っている。保持筒7における回転中心軸線7aと、接眼レンズ12の光軸とが合致していないと、固定中心軸線2aを中心に保持筒7を移動させた場合に接眼レンズ12を通して視る観察像の芯が動くことになる。すなわち、上記調整を行うことによって、固定中心軸線2aを中心に保持筒7を移動させ場合に接眼レンズ12を通して視る観察像の芯が動く事態を防ぐことができる。しかし、上記のごとく取付部10を移動させると、固定中心軸線2aと回転中心軸線7aとの間の距離が変わるため、顕微鏡鏡筒ごとに固定中心軸線2aと回転中心軸線7aとの間の距離が異なることになる。この場合には、レチクル回転止めユニット30の固定部材31(円環状部31a)の中心軸線31bと、回転部材32(円環状部32a)の中心軸線32bとが、固定中心軸線2aと回転中心軸線7aとに合致しなくなって、レチクル回転止めユニット30を顕微鏡鏡筒に取り付けることができない、あるいはレチクル回転止めユニット30の動作に支障をきたすおそれがある。
【0056】
そこで上記別の実施の形態におけるレチクル回転止めユニット30では、固定中心軸線2aと回転中心軸線7aとの間の距離の異なりに対応した構成を有している。ここでは、回転部材32を中心軸線32bに垂直な面に沿って移動できるように、ケース部材34に対して例えば1mm程度移動可能に設けてある。そして、固定部材31に回転部材32が近接するように連結部材33に対して張力を付与する張力付与手段を設けてある。
【0057】
張力付与手段は、図14に示すように固定部材31と回転部材32との間であって連結部材33の近傍に設けてあり、偏心カム41および弾性体42を有している。偏心カム41は、円柱状に形成してあって、その偏心した位置が回転軸となるようにケース部材34に螺合された段付ネジ43によって支承してある。段付ネジ43は、中心軸線31b、32bに平行な回転軸を構成している。すなわち、偏心カム41は、段付ネジ43を中心にして回転することで、その外周壁が連結部材33に対して近接あるいは離間する方向に移動する。また、弾性体42は、例えば圧縮バネからなり、ケース部材34に固定したバネケース44に収容してある。弾性体42は、偏心カム41の外周壁に当接しつつ弾性力によって当該偏心カム41を連結部材33側に押圧する。また、ケース部材34において、偏心カム41の対向位置には、連結部材33を押圧する支持部45が固定してある。この支持部45は、連結部材33を内方に押圧して位置させることで、連結部材33の外方への張り出しを抑えてレチクル回転止めユニット30全体の小型化を図るためのものである。
【0058】
この張力付与手段によれば、弾性体42による弾性力を伴って押圧された偏心カム41によって連結部材33に張力が付与される。このため、ケース部材34に対して移動可能に設けられた回転部材32には、固定部材31に近接する方向に弾性付勢力が付与されることになる。この結果、レチクル回転止めユニット30の固定部材31(円環状部31a)の中心軸線31bと、回転部材32(円環状部32a)の中心軸線32bとの間の距離を微調整することができるため、顕微鏡鏡筒ごとに固定中心軸線2aと回転中心軸線7aとの間の距離が異なっていても、レチクル回転止めユニット30における中心軸線31bと中心軸線22bとの距離を、固定中心軸線2aと回転中心軸線7aの距離に合わせることができる。このため、レチクル回転止めユニット30の動作に支障をきたすことなく、レチクル回転止めユニット30を顕微鏡鏡筒に取り付けることが可能になる。なお、張力付与手段としては、上述した構成に限らず、例えば連結部材33をゴムベルトなどの弾性体で構成してもよい。連結部材33をゴムベルトで構成した場合には、偏心カム41や弾性体42などの構成が不要になる。
【0059】
なお、上述した別の実施の形態において、連結部材33は、固定部材31の第一周壁部31dと回転部材32の第二周壁部32fとに巻き掛ける無端状の構成に限らない。例えば、図には明示しないが第一周壁部31dおよび第二周壁部32fに噛合歯を設け、各噛合歯に噛み合う歯車である連結部材を設けることで、保持筒7と回転部材32のとの回転角度が等しくなる。
【0060】
なお、上述した全ての実施の形態において、レチクル回転止めユニット20,30は、右側の保持筒7側に係り取り付ける構成で説明したが、レチクル回転止めユニット20,30を左右対称の構成にすることにより、左側の保持筒6側に係り取り付けることも可能である。この場合、左側の保持筒6に取付部10およびアダプタ11を設け、左側の接眼レンズ8にレチクル板(図示せず)を取り付けるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る顕微鏡鏡筒を示す斜視図である。
【図2】図1に示す顕微鏡鏡筒の概略断面図である。
【図3】接眼レンズを外した状態の顕微鏡鏡筒を示す斜視図である。
【図4】接眼レンズおよびアダプタを外した状態の顕微鏡鏡筒を示す斜視図である。
【図5】図4に示す顕微鏡鏡筒の概略断面図である。
【図6】本発明に係るレチクル回転止めユニットを正面側から視た斜視図である。
【図7】本発明に係るレチクル回転止めユニットを背面側から視た斜視図である。
【図8】本発明に係るレチクル回転止めユニットを上側から視た斜視図である。
【図9】本発明に係る顕微鏡鏡筒においてレチクル回転止めユニットを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図10】図9に示す顕微鏡鏡筒の概略断面図である。
【図11】図9に示した顕微鏡鏡筒に接眼レンズを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図12】図9に示す顕微鏡鏡筒を軸方向から視た図である。
【図13】本発明に係る別の実施の形態におけるレチクル回転止めユニットを正面側から視た斜視図である。
【図14】本発明に係る別の実施の形態におけるレチクル回転止めユニットを背面側から視た斜視図である。
【図15】別の実施の形態におけるレチクル回転止めユニットを鏡筒本体に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図16】図15に示す顕微鏡鏡筒を軸方向から視た図である。
【符号の説明】
【0062】
1 鏡筒本体
1a 正面
2 固定筒
2a 固定中心軸線
3 分割プリズム
3A 直角プリズム
3B 平行プリズム
3C 半透過膜
3a 第一光軸
3b 第二光軸
4 平行プリズム
4a 光軸
5 固定部
5a ネジ穴
6 保持筒
7 保持筒
7a 回転中心軸線
8 接眼レンズ
9 光路長補正レンズ
9a 光軸
10 取付部
10a ネジ穴
11 アダプタ
12 接眼レンズ
20 レチクル回転止めユニット
21 固定部材
21a 円環状部
21b 中心軸線
21c 挿通穴
21d フランジ部
21e 取付ピン
22 回転部材
22a 円環状部
22b 中心軸線
22c 挿通穴
22d フランジ部
22e 取付ピン
23 連結部材
24 カバー部材
30 レチクル回転止めユニット
31 固定部材
31a 円環状部
31b 中心軸線
31c 挿通穴
31d 第一周壁部
32 回転部材
32a 円環状部
32b 中心軸線
32c ネジ穴
32d ネジ
32e 当接面部
32f 第二周壁部
33 連結部材
34 ケース部材
41 偏心カム
42 弾性体
43 段付ネジ
44 バネケース
45 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒本体に固定筒を固定し、当該固定筒の中心軸線に平行かつ固定筒の中心軸線からそれぞれ同じ距離に設けた2つの保持筒の少なくとも一方を前記中心軸線からの距離を変えずに移動可能に設け、さらに前記固定筒の中心軸線に合致して入射させた光路を透過および反射させて分岐した2つの光路がそれぞれ保持筒の中心軸線に常に合致するように光軸の向きが維持された光学系を配設した鏡筒部と、
前記移動可能な保持筒の中心軸線に対してレチクルを設けた面が垂直となるように当該中心軸線上にレチクル板を配置し、保持筒の移動に際して前記中心軸線周りのレチクル板の向きを顕微鏡本体に対して保持する保持機構を一体化した形態で前記固定筒および移動可能な保持筒に着脱可能に取り付けられるレチクル回転止めユニットと
を備えたことを特徴とする顕微鏡鏡筒。
【請求項2】
前記レチクル回転止めユニットは、
固定筒の中心軸線に対して平行かつ所定間隔をおいて固定筒に配置される固定の第一軸と、
レチクル板を保持しつつ移動可能な保持筒の中心軸線周りに回転するように移動可能な保持筒に配置される回転部材と、
前記回転部材に設けてあって移動可能な保持筒の中心軸線に対して平行かつ前記所定間隔をおいて配置した第二軸と、
前記第一軸および第二軸を連結して前記第一軸と第二軸と固定筒の中心軸線と移動可能な保持筒の中心軸線とを結ぶ平行リンクをなす杆状の連結部材と
を有したことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡鏡筒。
【請求項3】
前記レチクル回転止めユニットは、
固定筒の中心軸線を中心として所定半径の円周に沿って固定筒に固定される第一周壁部と、
レチクル板を保持しつつ移動可能な保持筒の中心軸線周りに回転するように移動可能な保持筒に配置される回転部材と、
前記回転部材に設けてあって移動可能な保持筒の中心軸線を中心として前記所定半径の円周に沿って配置された第二周壁部と、
前記第一周壁部および第二周壁部を連結する連結部材と
を有したことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡鏡筒。
【請求項4】
前記レチクル回転止めユニットは、
固定筒の中心軸線を中心として所定半径の円周に沿って固定筒に固定される第一周壁部と、
レチクル板を保持しつつ移動可能な保持筒の中心軸線に垂直な面に沿って移動可能に設けてあり、移動可能な保持筒の中心軸線周りに回転するように移動可能な保持筒に配置された取付部に対して着脱可能に取り付けられる回転部材と、
前記回転部材に設けてあって移動可能な保持筒の中心軸線を中心として前記所定半径の円周に沿って配置された第二周壁部と、
前記第一周壁部および第二周壁部に巻き掛ける無端状の連結部材と、
前記連結部材に張力を付与する張力付与手段と
を有したことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡鏡筒。
【請求項5】
前記鏡筒部は、移動可能な保持筒の中心軸線周りに回転可能に配設されて前記回転部材が着脱可能に設けられた取付部を有し、
前記レチクル回転止めユニットを外した形態で前記取付部に対して取り付けられて移動可能な保持筒の中心軸線上で一方の接眼レンズを保持することで、分岐された他方の光路の光軸上で保持された他方の接眼レンズの光軸方向の位置に対して一方の接眼レンズの光軸方向の位置を揃えるアダプタを備えたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一つに記載の顕微鏡鏡筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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