説明

顕微鏡

【課題】 正立顕微鏡としても倒立顕微鏡としても用いることができる顕微鏡を提供する。
【解決手段】 この顕微鏡1は、土台部10と、この土台部10に支持された回転台20とを備えている。また、顕微鏡1は、この回転台20に支持された鏡筒部30と、鏡筒部30の下方で回転台20に支持された試料台40と、試料台40の下方で試料台40を介して回転台20に支持された模様体照明50とを備えている。この顕微鏡1は、回転台20を土台部10に対し回転させることで、鏡筒部30が試料台40に対して上方に位置する正立位置と、鏡筒部30が試料台40に対して下方に位置する倒立位置とに配置することができるように構成されている。従って、この顕微鏡1は、正立顕微鏡としても倒立顕微鏡としても用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光学顕微鏡には、正立顕微鏡と倒立顕微鏡の2種類の顕微鏡がある。
このうち正立顕微鏡は、シャーレやプレパラート等の観察用具を載置する試料台の上方に、対物レンズが位置するものである。一方、倒立顕微鏡は、試料台の下方に対物レンズが位置するものである。
【0003】
これらの顕微鏡を用いて試料台に置かれた試料を観察する場合、それぞれ以下のような利点・欠点がある。
試料台に置かれた試料を観察中に操作する場合、正立顕微鏡では、対物レンズが試料台の上方にあるので、試料台に置かれたシャーレ内の試料を正面に見ながらピンセットなどで操作することができるという利点がある。
【0004】
一方、倒立顕微鏡の場合、対物レンズが試料台の下方にあるので、試料台に置かれた試料を裏面側から見ることとなり、正立顕微鏡に比べ試料を操作しにくいという欠点がある。
【0005】
また、複数のシャーレ内に入れられたそれぞれの試料を観察したい場合、正立顕微鏡では、試料台の上方に鏡筒が位置するので、シャーレ入れ替えるたびに、試料に近づけた対物レンズを一旦試料台から離し、試料台にシャーレを置いたら再び対物レンズを試料台に近づけるという作業を繰り返す必要がある。
【0006】
一方、倒立顕微鏡の場合、試料台の下方に対物レンズが位置するので、上記のような作業を行うことなく、試料台に置かれたシャーレを入れ替えるだけの作業で、複数の試料を素早く観察することができるという利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、顕微鏡を用いた研究・試験において、いずれの顕微鏡を用いて試料を観察するかは、試験・研究の進捗状況や種類によって様々である。
そのため、顕微鏡を用いた研究・試験を行う場合、これらの用途に合わせて、正立・倒立2種類の顕微鏡を常に用意しておく必要があった。
【0008】
そこで本発明では、正立顕微鏡としても倒立顕微鏡としても用いることができる顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した問題を解決するためになされた発明である請求項1に記載の顕微鏡は、対物レンズを備える鏡筒部と、前記対物レンズに向けて観察光を照射する照射手段と、観察用の試料を載せた観察用具を載置する部分に、前記観察光を通す通光部を有する試料台と、前記照射手段から照射された前記観察光が、前記通光部を通って前記対物レンズに至る位ように、前記鏡筒部、前記試料台、及び、前記照射手段を支持する支持手段と、前記試料台の上方に前記鏡筒部が位置する正立位置から、前記試料台の下方に前記鏡筒部が位置する倒立位置まで前記支持手段を回転可能に支持する土台と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この顕微鏡は、支持手段を回転することで、対物レンズを備えた鏡筒部を試料台の上方の正立位置や、試料台の下方の倒立位置に配置することができるので、正立顕微鏡としても倒立顕微鏡としても用いることができる。
【0011】
尚、照射手段としては、後述する模様体照明でもよいし、一般的な照明でもよいし、外部から取り込んだ光を対物レンズに向けて反射する鏡等でもよい。また、観察用具としては、主に透光性のシャーレやプレパラート等を用いることが考えられるが、これら以外のものを用いても良い。
【0012】
請求項2に記載の顕微鏡は、鏡筒部が試料台に対し正立位置及び倒立位置に位置するときに、支持手段を土台に固定する固定手段を備えることを特徴とする。
本発明の顕微鏡は、支持手段が回転可能に構成されているので、試料を観察中に鏡筒部等が不意に回転しまう可能性があるが、このようにすると、固定手段を用いて支持手段を固定することができるので、このような不意の回転を防止することができる。
【0013】
ところで、生物細胞など、無染色の細胞や微生物を観察する場合、これらの試料はほぼ透明であるためコントラストがほとんどなく、顕微鏡では観察が困難な場合が多い。そのため、このような無染色の試料を観察する場合、位相差顕微鏡を用いることが多いが、試料に当てる光に位相差を付けようとすると、位相差コンデンサを設ける必要があるなど、装置が大型化複雑化する。このように装置が大型化複雑化した顕微鏡を、本発明のように回転可能に構成すると、大型化した分だけ、装置に大きなトルクがかかり、このトルクによって生じるひずみにより各部品が本来配置される位置からズレたり精度が悪くなるなど様々な問題が生じる。
【0014】
そこで、本発明の顕微鏡は、請求項3に記載したように、照射手段として、模様を有する透過体と、光源とを有し、光源から発せられ透過体を通した光を、観察光として照射する模様体照明を用いてもよい。
【0015】
この模様体照明を用いれば、位相差コンデンサ等の構成を設ける必要がないなど、装置を小型化コンパクト化できるので、本発明の顕微鏡は、装置が大型化複雑化することによって生じる問題を引き起こすことなく、正立顕微鏡としても倒立顕微鏡としても用いることができる。
【0016】
次に、請求項4に記載した顕微鏡は、試料台が、照射手段側及び対物レンズ側の両側に、観察用具を置く位置を位置決めする位置決凹部を有することを特徴とする。
本発明の試料台には、照射手段側及び対物レンズ側の両側に、位置決凹部が形成されているので、正立顕微鏡として用いたときも倒立顕微鏡として用いたときも、この位置決凹部に観察用具の底面を嵌め込めば、観察用具を試料台上に固定することができる。
【0017】
そのため、この顕微鏡では、正立顕微鏡として用いた場合も、倒立顕微鏡として用いた場合も、試料台を回転させた場合に、観察用具が位置ズレしないので、観察中に、試料台を傾けて試料を観察用具内で移動させても、観察用具が試料台から落ちることを防止することができる。
【0018】
次に、請求項5に記載した顕微鏡のように、試料台の対物レンズに対向する側を照らす位置から、試料台の照射手段に対向する側を照らす位置まで移動可能に支持手段に支持された照明手段を備えていることが好ましい。
【0019】
この顕微鏡を用いれば、照明手段を用いて試料に光を照射して観察することもできる。
次に、請求項6に記載した顕微鏡のように、試料台及び鏡筒部はいずれも、観察光の光路に沿って移動可能に支持手段に支持されていることが好ましい。
【0020】
このようにすると、焦点の調整などを行う場合、いずれか焦点を合わせやすい方を動かして焦点を合わせることができる。
次に、請求項7に記載した顕微鏡のように、鏡筒部は、対物レンズを介して試料を撮像する撮像手段を備え、この撮像手段は、撮影した画像をそのまま出力する第1モードと、撮影した画像の鏡像を出力する第2モードとを切替える切替手段を備えるものであることが好ましい。
【0021】
この撮像手段を備えていると、本発明の顕微鏡は、正立顕微鏡として用いる場合は、第1モードで撮影された画像を見た方が、試料を観察しやすく、倒立顕微鏡として用いる場合は、第2モードで撮影された画像を見た方が、試料を観察しやすいからである。
【0022】
尚、請求項8に記載した顕微鏡のように、鏡筒部は、支持手段に対し着脱可能に支持されていてもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態の正立時の顕微鏡で、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図2】本実施形態の倒立時の顕微鏡で、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図3】本実施形態の顕微鏡を構成する回転台が土台に対して回転する様子を示した斜視図である。
【図4】本実施形態の顕微鏡が備える試料台の説明図で、(a)は鏡筒部に対向する側の面の平面図、(b)は模様体照明に対向する側の面の平面図、(c)は(a)のA−A’断面図である。
【図5】本実施形態の顕微鏡が備える模様体照明の説明図で、(a)は模様体照明の平面図、(b)は、(a)のB−B’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。
本実施形態の顕微鏡1は、図1に示すように、土台10と、水平面に対し垂直な平面に沿って回転可能に土台10に支持された回転台20とを備えている。
【0025】
また、顕微鏡1は、この回転台20(本発明の支持手段に相当する)に支持された鏡筒部30と、鏡筒部30の下方で回転台20に支持された試料台40と、試料台40の下方で試料台40を介して回転台20に支持された模様体照明50(本発明の照射手段に相当する)とを備えている。
【0026】
さらに、顕微鏡1は、試料台40を介して回転台20に支持され、試料台40上を照らす位置に配置された照明60(本発明の照明手段に相当する)とを備えている。
この顕微鏡1は、図3に示すように、回転台20を土台10に対し回転させることで、図1に示すように、鏡筒部30が試料台40に対して上方に位置する正立位置と、図2に示すように、鏡筒部30が試料台40に対して下方に位置する倒立位置とに配置することができるものである。
【0027】
以下、この顕微鏡1について、詳細に説明する。
尚、以下の説明では、鏡筒部30が試料台40の上方に位置する正立位置に配置されているものとして説明する。
【0028】
土台10は、水平に配置された平板11と、この平板11に対して垂直に配置され、この平板11の上面から上方に向かって延設された支柱12と、平板11の上面に載置された機械収納部13とを有する。
【0029】
機械収納部13は、直方体形状に形成され、平板11の上面の1辺a1と、機械収納部13の長尺な一辺a2とが重なるように、平板11の上面上に載置される。尚、平板11の一辺a1側を、以下背面側、この平板11の一辺a1と平行な他の一辺a3側を、以下正面側、正面側から背面側を見たときの右手を右側、左手を左側と以下呼ぶ。
【0030】
支柱12は、平板11の背面側の一辺a1に比べて幅が狭く、上下方向に長尺な平板状に形成されており、厚み方向(正面側から背面側を見る方向(以下前後方向という)に沿った方向)に垂直な面のうち背面側の面が、機械収納部11の正面側の側面に接し、かつ、平板11の左右方向に沿った幅の中央で、平板11の上面110から上方に向かって垂直に延設されている。
【0031】
また、この支柱12の背面側の側面には、回転台20を支柱12に対し回転可能に支持する回転支持具120と、回転台20を固定する固定ピン121(本発明の固定手段に相当する)とを備えている。
【0032】
このうち回転支持具120は、回転台20の回転軸となる図示しない軸部と、人が握って操作可能な大きさに形成された頭部を有する略ネジ状に形成されており、軸部を、支柱12の背面側から正面側に貫通し、その先端を回転台20に螺合することにより、回転台20を支柱12に対し回転可能に支持している。
【0033】
また固定ピン121は、背面側に引いた開放位置と、正面側に押し込んだ固定位置との間を移動可能に構成されている。そして、この固定ピン121は、鏡筒部30等が正立位置に位置するとき、又は、倒立位置に位置するときに押し込むと、固定ピン121の図示しない軸部の先端が、回転台20の背面側の側面に設けられた嵌合孔29(図1(c)、図2(c)参照)に嵌合されることで、回転台20を支柱12に固定することができる。
【0034】
次に、回転台20は、支柱12に比べ左右方向の幅がやや狭く、上下方向に長尺に形成され、厚み方向(前後方向)の厚みは支柱21の厚みとほぼ同じ厚みで形成された回転土台部21を備えている。
【0035】
また、回転台20は、回転土台部21の正面側の面上であって、回転土台部21の長手方向の上方側の端部に、鏡筒部30を上下方向に移動可能に支持するカメラ移動用Z軸ステージ22を備えている。また、回転台20は、回転土台部21の正面側の面上であって、回転土台部21の長手方向の下方側の端部に、試料台40を上下方向に移動可能に支持する試料台移動用Z軸ステージ23とを備えている。
【0036】
カメラ移動用Z軸ステージ22は、正面側の面上から正面側に向かって延設された鏡筒支持支柱24と、左右側の側面上で回転可能に取り付けられたつまみ25を備えている。
このカメラ移動用Z軸ステージ22は、詳細な説明については省略するが、つまみ25を回転させると、鏡筒支持支柱24、すなわち、この鏡筒支持支柱24に支持された鏡筒部30を上下方向に平行移動させることができる。
【0037】
この鏡筒支持支柱24は、左右方向に幅広に形成されており(図3参照)、先端部240が、背面部241に対して、前後方向に移動可能に構成されている。また、鏡筒支持支柱24の正面側の先端には、先端部240を背面部241に止めるためのつまみ242が設けられている。このつまみ242を締めると先端部240を背面部241に固定することができ、このつまみ242を緩めると先端部240を背面部241から離すことができる。
【0038】
この鏡筒支持支柱24に鏡筒部30を固定する場合、つまみ242を緩めて先端部240を正面側に移動させ、この移動によって形成された先端部240と背面部241との間の隙間に鏡筒部30を通し、つまみ242を締めれば、先端部240と背面部241との間に挟んだ状態で鏡筒部30を鏡筒支持支柱24に固定することができる。
【0039】
この鏡筒支持支柱24に鏡筒部30を固定すると、鏡筒部30が試料台40に対し垂直に配置されるとともに、鏡筒部30の先端に設けられた図示しない対物レンズが、試料台40に設けられた円状の通光部400(図4参照)の中心部分を向いて配置される。
【0040】
試料台移動用Z軸ステージ23は、正面側の面上に試料台40が水平に配置されるように取り付けられ、左右側の側面上で回転可能に取り付けられたつまみ26を備えている。
この試料台移動用Z軸ステージ23は、詳細な説明については省略するが、つまみ26を回転させると、試料台40を上下方向に平行移動させることができる。
【0041】
次に、鏡筒部30は、長尺な筒状に形成された本体30aを備えており、この本体30aの長手方向の一端側(図1では下端側)の側面には図示しない対物レンズが配置されている。一方、この本体30aの長手方向の他端側(図1では上端側)には、CCDカメラ31(本発明の撮像手段に相当する)が取り付けられている。本体30a内には、図示しないズームレンズが配置されており、対物レンズを試料台40の上に置かれた試料に近づけると、対物レンズとズームレンズによって拡大された試料の画像をCCDカメラ31に取り込むことができる。
【0042】
試料台40は、図4に示すように、中央部分に略円状の通光孔41(本発明の通光部に相当する)が形成されている。またこの試料台40は、鏡筒部30と対向する側の面42、及び、その反対側の面43のいずれにも、シャーレの底面部分を嵌め込むことができる、通光孔41と同心円状の凹部420、430(本発明の位置決凹部に相当する)が設けられている。また、この試料台40には、通光孔41から正面側に向かって切り込まれた切込孔42が設けられている。この切込孔44は、凹部420又は430に円盤状のシャーレを置いたときに、このシャーレを指で上下からつまむことができるように、切込孔44は指を通すことができる大きさに形成されている。
【0043】
模様体照明50は、図1に示すように、試料台40を介して、回転台20に支持されている。具体的には、試料台40の下面(模様体照明50に対向する面)には、この下面の左背面側の隅から下方に向かって支柱51が鉛直に延設され、この支柱51から試料台40に設けられた通光孔の中心部分の下方位置まで、アーム52が水平に延設されている。模様体照明50は、このアーム52の遊端の上方側に取り付けられる。このとき、模様体照明50は、円筒形状に形成されているので(図3参照)、この円筒の中心軸と通光孔41の中心とが同じ直線上に位置し、かつ、この円筒の中心軸が水平面に対し垂直になるように、アーム52の遊端の上方側に取り付けられる。
【0044】
アーム52は、支柱51に対して上下方向に平行移動可能に取り付けられており、支柱51に挿通され、アーム52の上下に配置されたつまみ53,53を絞ることで、上下方向の任意の位置で支柱51に固定することができる。すなわち、模様体照明50は、試料台40に対して、上下方向の任意の位置で固定することができる。
【0045】
また、模様体照明50は、図5(b)に示すように、ランプ55(本発明の光源に相当する)と、透明な材料で構成され、その表面に模様が描かれた模様体56(本発明の透過体に相当する)とを、内部に備えている。このうちランプ55は、筐体50a内部の下部側側面上であって、筐体50aが形成する円筒の中心軸上で上方側側面を向いて配置されている。また、筐体50aの上部側側面には、筐体50aの中心軸に垂直で、この中心軸を中心とする円状の通光孔57が形成されている。模様体56は、円板状に構成されており、筐体50aと同軸状に筐体50aの内部に配置されるとともに、ランプ55と通光孔57との間の位置に配置されている。このため、この模様体照明50では、ランプ55を点灯すると、模様体56を介した観察光が通光孔57から照射される。
【0046】
照明60は、図1に示すように、円筒状に形成されており、軸方向の一端側の側面から光を照射し、他端側の側面には後述するつまみ60aが設けられている。
この照明60は、試料台40を介して回転台20に支持されている。具体的には、試料台40の背面側側面であって、この側面の左右の端部から、前後方向に対して垂直な面に沿って直線上に延設され、この面上で回転可能に試料台40に軸支された照明用支柱61を備え、また、この照明用支柱61には、この面に対して垂直に、正面側に向かって延設された照明用アーム62が取り付けられているので、照明60は、この照明用アーム62につまみ60aを介して取り付けられている。
【0047】
照明用支柱61は、つまみ61aの図示しない軸部を貫通させ、試料台40に螺入させることにより、試料台40に対し回転可能に取り付けられており、つまみ61aを締めれば照明用支柱61を試料台40に固定することができ、緩めれば照明用支柱61を試料台40に対し回転させることができる。
【0048】
また、照明用支柱61には、照明用アーム62が取り付けられる部分に、照明用支柱61の長手方向に沿って長尺な移動用長孔61bが形成されている。そして、照明用アーム62は、この移動用長孔61bにつまみ62aの軸部を水平に通し、この軸部を照明用アーム62に螺入させることで、照明用支柱61に取り付けられる。このとき、つまみ62aは、つまみ62aの中心軸と、照明用アーム62の中心軸とが同一直線上に配置されるように、照明用アーム62に螺入される。そして、このつまみ62aが螺入された照明用アーム62は、つまみ62aを締めれば照明用支柱61に固定することができ、緩めればつまみ62aの中心軸まわりに軸回転させることができる。
【0049】
また、照明用アーム62にも、その長手方向に沿って形成された移動用長孔62bが形成されている。そして、照明60のつまみ60aの軸部は、この移動用長孔62bに通されているので、このつまみ60aを締めれば照明用アーム62の長手方向の任意の位置で照明60を固定でき、緩めれば、照明用アーム62の長手方向に沿って照明60を移動させることができる。
【0050】
次に、上述した顕微鏡1の作用について説明する。
この顕微鏡1は、固定ピン121を引くと、回転台20が支柱12に対して回転可能となる。そのためこの回転台20を回転させると、鏡筒部30が試料台40の上方に位置する正立位置や(図1参照)、試料台40の下方に鏡筒部30が位置する倒立位置に(図2参照)、鏡筒部30や試料台40等を配置することができる。
【0051】
一方、この顕微鏡1は、鏡筒部30や試料台40が正立位置や倒立位置にあるときに固定ピン121を押し込むと回転台20が固定されるので、鏡筒部30や試料台40等を正立位置や倒立位置に固定することができる。
【0052】
この顕微鏡1は、つまみ25やつまみ26を回転させると、鏡筒部30や試料台40をそれぞれ上下方向に移動させることができる。このとき、模様体照明50は、試料台40に固定されているので、つまみ26を回転させると、試料台40とともに移動させることができる。一方、つまみ53を緩めれば、模様体照明50を試料台40に対して上下方向に移動することができ、つまみ53を締めれば、模様体照明50を試料台40に対して固定することができる。
【0053】
この顕微鏡1は、つまみ61aを緩めると、照明用支柱61が回転して、試料台40の上面側または下面側に照明60を移動させることができ、つまみ61aを締めると、移動した場所に照明60を固定することができる。また、つまみ62aを緩めると、照明用アーム62の中心軸まわりに照明60を回転させることができるので、試料台40の上面又は下面に移動した照明60の照射面を、試料を照らす方向に向けることができる。また、つまみ62aを緩めると、移動用長孔61bに沿って照明用アーム62を平行移動できるので、例えば、照明用支柱61を外側に傾け、照明用アーム62を移動用長孔61bの遊端まで移動させれば、照明60を試料から遠い位置に配置することができ、照明用アーム62を移動用長孔61bのつまみ61aに固定される側に移動させれば、照明60を試料から近い位置に配置することができる。また、つまみ60aを緩めると、照明60を前後方向に沿って移動させることができるので、前後方向に対しても照明60を自在に移動させることができる。
【0054】
また、この顕微鏡1は、正立顕微鏡として用いる場合でも(図1参照)、倒立顕微鏡として用いる場合でも(図2参照)、試料台40の上下両面に凹部420、430が設けられているので、シャーレを凹部420,430に嵌め込めば、シャーレを試料台40に固定して載置することができる。
【0055】
また、この顕微鏡1は、正立顕微鏡として用いられるとき、図1に示すように、模様体照明50が、試料台40の通光孔41の中心に向かって垂直に観察光を照射し、鏡筒部30の対物レンズが、試料台40の通光孔41を上方から垂直に見下ろす位置に配置される。そのため、模様体照明50から照射された観察光は、試料台40の通光孔41の中心を通り、対物レンズに達するので、試料台40の上にシャーレ等をおいて、通光孔41を通る観察光に、シャーレ内に置かれた試料を当てると、鏡筒部30が備えるカメラ31から出力された画像により、試料を拡大した画像をみることができる。
【0056】
以上説明した顕微鏡は、以下のような特徴的な技術的な効果がある。
本実施形態の顕微鏡1は、回転台20を回転することで、鏡筒部30を試料台40の上方の正立位置や、試料台40の下方の倒立位置に配置することができるので、正立顕微鏡としても倒立顕微鏡としても用いることができる。
【0057】
また、本実施形態の顕微鏡1は、回転台20が回転可能に構成されているので、試料を観察中に鏡筒部30等が不意に回転しまう可能性があるが、固定ピン121を用いて回転台20を固定することができるので、このような不意の回転を防止することができる。
【0058】
ところで、生物細胞など、無染色の細胞や微生物を観察する場合、これらの試料はほぼ透明であるためコントラストがほとんどなく、顕微鏡では観察が困難な場合が多い。そのため、このような無染色の試料を観察する場合、位相差顕微鏡を用いることが多いが、試料に当てる光に位相差を付けようとすると、位相差を付けるための位相差コンデンサを設ける必要があるなど、装置が大型化複雑化する。このように装置が大型化複雑化した顕微鏡を、本実施形態のように回転可能に構成すると、大型化した分だけ、装置に大きなトルクがかかり、このトルクによって生じるひずみにより各部品が本来配置される位置からズレたり精度が悪くなるなど様々な問題が生じる。
【0059】
そこで、本実施形態の顕微鏡1は、このような大型化複雑化を防止するため、無染色の細胞や微生物にコントラストを与えることができる模様体照明50を用いて観察光を照射している。
【0060】
この模様体照明50を用いれば、位相差コンデンサ等の構成を設ける必要がないなど、装置を小型化コンパクト化できるので、装置が大型化複雑化することによって生じる精度の悪化や、操作性の悪化などの問題を引き起こすことなく、正立顕微鏡としても倒立顕微鏡としても用いることができる。
【0061】
次に、本実施形態の顕微鏡1の試料台40には、鏡筒部30側及び模様体照明40側の両側に、凹部420、430が形成されているので、正立顕微鏡として用いたときも倒立顕微鏡として用いたときも、この凹部420、430にシャーレの底面を嵌め込めば、シャーレを試料台40上に固定することができる。
【0062】
そのため、この顕微鏡1では、正立顕微鏡として用いた場合も、倒立顕微鏡として用いた場合も、試料台40を回転させた場合に、シャーレが位置ズレしないので、観察中に、試料台40を傾けて試料をシャーレ内で移動させても、シャーレが試料台40から落ちることを防止することができる。
【0063】
次に、本実施形態の顕微鏡1は、試料台40の対物レンズに対向する側を照らす位置から、試料台40の模様体照明50に対向する側を照らす位置まで移動可能に、試料台40を介して回転台20に支持された照明60を備えている。そのため不透明な試料を観察する場合、この照明60を用いれば、この照明60を用いて試料に光を照射することで、試料を観察することもできる。
【0064】
次に、本実施形態の顕微鏡1は、試料台40及び鏡筒部30のいずれも、つまみ25,26を回転させれば、観察光の光路に沿って移動可能に回転台20に支持されているので、焦点の調整などを行う場合、いずれが焦点を合わせやすい方を動かして焦点を合わせることができる。
【0065】
尚、鏡筒部30に備えられるカメラとしては、撮影した画像をそのまま出力する第1モードと、撮影した画像の鏡像を出力する第2モードとを切替えることができるものであることが好ましい。本実施形態1の顕微鏡は、正立顕微鏡として用いる場合は、第1モードで撮影された画像を見た方が、試料を観察しやすく、倒立顕微鏡として用いる場合は、第2モードで撮影された画像を見た方が、試料を観察しやすいからである。
(対応関係)
本実施形態の固定ピン121は、本発明の固定手段に相当する。
【0066】
本実施形態の回転台20は、本発明の支持手段に相当する。
本実施形態のCCDカメラ31は、本発明の撮像手段に相当する。
本実施形態の通光孔41は、本発明の通光部に相当する。
【0067】
本実施形態の凹部420、430は、本発明の位置決凹部に相当する。
本実施形態の模様体照明50は、本発明の照射手段に相当する。
本実施形態のランプ55は、本発明の光源に相当する。
【0068】
本実施形態の模様体56は、本発明の透過体に相当する。
本実施形態の照明60は、本発明の照明手段に相当する。
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、鏡筒部30にカメラを備えるものについて説明したが、このカメラに代えて接眼レンズを取り付けてもよいことはもちろんである。
【0069】
本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0070】
1…顕微鏡、10…土台、11…機械収納部、11…平板、12…支柱、13…機械収納部、20…回転台、21…回転土台部、21…支柱、22…カメラ移動用Z軸ステージ、23…試料台移動用Z軸ステージ、24…鏡筒支持支柱、29…嵌合孔、30…鏡筒部、30a…本体、31…CCDカメラ、31…カメラ、40…試料台、41…通光孔、42…切込孔、44…切込孔、50…模様体照明、50a…筐体、51…支柱、52…アーム、55…ランプ、56…模様体、57…通光孔、60…照明、61…照明用支柱、61b…移動用長孔、62…照明用アーム、62b…移動用長孔、110…上面、120…回転支持具、121…固定ピン、240…先端部、241…背面部、400…通光部、420…凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズを備える鏡筒部と、
前記対物レンズに向けて観察光を照射する照射手段と、
観察用の試料を載せた観察用具を載置する部分に、前記観察光を通す通光部を有する試料台と、
前記照射手段から照射された前記観察光が、前記通光部を通って前記対物レンズに至るように、前記鏡筒部、前記試料台、及び、前記照射手段を支持する支持手段と、
前記試料台の上方に前記鏡筒部が位置する正立位置から、前記試料台の下方に前記鏡筒部が位置する倒立位置まで前記支持手段を回転可能に支持する土台と、
を備えることを特徴とする顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載の顕微鏡において、
前記鏡筒部が前記試料台に対し前記正立位置及び前記倒立位置に位置するときに、前記支持手段を前記土台に固定する固定手段を備えることを特徴とする顕微鏡。
【請求項3】
請求項1,2のいずれかに記載の顕微鏡において、
前記照射手段は、
模様を有する透過体と、
光源とを有し、
前記光源から発せられ前記透過体を通した光を、前記観察光として照射することを特徴とする顕微鏡。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の顕微鏡において、
前記試料台は、
前記照射手段側及び前記対物レンズ側の両側に、前記観察用具を置く位置を位置決めする位置決凹部を有することを特徴とする顕微鏡。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の顕微鏡において、
前記試料台の前記対物レンズに対向する側を照らす位置から、前記試料台の前記照射手段に対向する側を照らす位置まで移動可能に前記支持手段に支持された照明手段を備えることを特徴とする顕微鏡。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の顕微鏡において、
前記試料台及び前記鏡筒部はいずれも、前記観察光の光路に沿って移動可能に前記支持手段に支持されてていることを特徴とする顕微鏡。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の顕微鏡において、
前記鏡筒部は、
前記対物レンズを介して前記試料を撮像する撮像手段を備え、
前記撮像手段は、
撮影した画像をそのまま出力する第1モードと、撮影した画像の鏡像を出力する第2モードとを切替える切替手段を備えることを特徴とする顕微鏡。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の顕微鏡において、
前記鏡筒部は、
前記支持手段に対し着脱可能に支持されていることを特徴とする顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−27906(P2011−27906A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172115(P2009−172115)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(505073004)アルテア技研株式会社 (7)
【Fターム(参考)】