説明

顧客サービス・セッションを管理する方法

【課題】顧客サービス媒体に関係なく所定の顧客に提供される顧客サービスを管理するための方法論およびアーキテクチャを提供すること。
【解決手段】本方法は、例えば、顧客によって使用される複数の通信媒体全体にわたって顧客サービス・セッションを追跡するためにデータベースを管理する。
本方法では、サービス記録情報記入項目がデータベース内に作成されることが可能である。記入項目内のサービス記録情報はサービスの識別子、少なくとも1つの顧客識別子、および少なくとも1つのサービス・エージェント識別子を含むことが可能である。
例えば、このサービス識別子は番号のような1つまたは複数の文字の列を含むことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2005年1月21日に中国国家知識産権局に提出され、その開示が全文で本願明細書に参照で組み入れられる中国特許出願第200510005625.8号の優先権を米国特許法119章の下で主張するものである。
本発明は顧客サービスを提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大部分の人々は企業によって使用される様々な顧客サービス、技術サービスなど(本願明細書ではまとめて「顧客サービス」と称する)の取り組み方をよく知っている。通常の店内での顧客サービス部門に加えて、殆どの企業は電話(無線および地上)およびeメールを介して顧客サービスを提供する。電話による顧客サービスはしばしば、サービス提供が始まる前に冗長な音声応答またはトーン応答(電話器のボタンを押す操作)の対話を含む。eメールでは応答が返ってくる時間がまちまちであり、ときには数日かかることもあり得る。
【0003】
インスタント・メッセージは顧客サービスを提供するための新たな伝達手段の選択肢となった。通常のeメールとは異なり、インスタント・メッセージはリアルタイムで対話文章のセッションを可能にする。eメールで経験される通信の間の時間差は取り除かれることが可能である。また、顧客は電話に基づく顧客サービス・システムの対話式電話メニューの障害に対応する必要がない。
しかしながら、顧客サービスを提供するためにeメール、電話、またはインスタント・メッセージのいずれが使用されるかに関係なく、顧客はそれでもなお不要な煩わしさを経験する。初期の顧客サービス・セッションの後に、顧客はしばしば追加の質問で企業の顧客サービス部門に再度接続し、付加的な問題を処理し、あるいは初期の顧客サービス・セッションの結果として解決されなかった問題に取り組み続けることを必要とする。これらの例では、顧客は必ずしも前回の顧客サービス・セッションと同じ顧客サービス・エージェントに再度接続されるわけではない。付け加えると、異なる顧客サービス・エージェントに接続されたとき、あるいはたとえ同じ顧客サービス・エージェントに接続されても前回の顧客サービス・セッションの記録または証拠がない。結果として、顧客は自分の基本的な顧客情報を繰り返し、その後、今までの顧客サービス・セッションの経緯を列挙しなければならない。その後にのみ、サービス・エージェントは顧客と共に行動を起こす立場になって必要とされるサービスを提供する。
【特許文献1】中国特許出願第200510005625.8号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は顧客サービス媒体(例えばeメール、電話通話、インスタント・メッセージなど)に関係なく所定の顧客に提供される顧客サービスを管理するための方法論およびアーキテクチャを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、顧客サービスを管理する方法は、顧客によって使用される複数の通信媒体上で顧客サービス・セッションを追跡するためにデータベースを管理する工程を含む。
【0006】
本方法では、サービス記録情報記入項目がデータベース内に作成されることが可能である。記入項目内のサービス記録情報はサービスの識別子、少なくとも1つの顧客識別子、および少なくとも1つのサービス・エージェント識別子を含むことが可能である。
【0007】
例えば、このサービス識別子は番号のような1つまたは複数の文字の列を含むことが可能である。
例を挙げると、顧客識別子は顧客に付随する電話番号、IPアドレス、eメール・アドレスなどであることが可能である。
【0008】
やはり例を挙げると、サービス・エージェント識別子はサービス・エージェントに付随する電話番号、IPアドレス、eメール・アドレスなどであることが可能である。
一実施形態では、サービス・セッションに関するセッション情報がサービス記録情報記入項目と関連付けて保存される。
【0009】
例えば、このセッション情報は顧客と共に記録された電話通話、顧客からのeメールの少なくとも一部分、顧客とサービス・エージェントとの間のインスタント・メッセージのチャット記録の少なくとも一部分などであることが可能である。
【0010】
一実施形態では、現在の顧客サービス・セッションは前回のサービス・セッションに参加した者と同じ顧客エージェントへと向けられる。
これは顧客情報および前回顧客が接続されたサービス・エージェントの識別子を有するデータベースにアクセスすることによって達成されることが可能である。その後、現在の顧客の通信はサービス・エージェント識別子によって識別されたサービス・エージェントへの経路に向けられる。
【0011】
本発明は下記で与えられる詳細な説明、および単なる具体例として与えられ、かつ様々な図面の中で類似した参照番号が相当する部品を指定する添付の図面からさらに完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は顧客サービス・アーキテクチャの全体的概観を例示している。図1に描かれるように、顧客はサーバ・システムを通じて企業のサービス・エージェント(サービス担当者)と接続することが可能である。さらに特定して示されるように、顧客は無線電話、地上回線電話、PDAなどといった音声電話通話によって接続することが可能である。場合によっては、顧客は例えばコンピュータ、無線電話、PDAなどを使用してeメールによって接続することが可能である。またさらに、顧客は例えばコンピュータ、無線電話、PDAなどを使用してインスタント・メッセージ(IM)によって接続することが可能である。
【0013】
図2は本発明の実施形態による顧客サービス・アーキテクチャの詳細なブロック図を例示している。図示されるように、顧客は電話通話(無線、地上など)、eメールまたはインスタント・メッセージを介して企業のサーバ・システム10と接続する。新しい通信用の伝達手段が確立されるとき、本発明がそれら新しい通信用伝達手段を含むように容易に構成され得ることは理解されるであろう。
【0014】
サーバ・システム10は顧客からの多様なタイプの通信を取り扱うための通信用サーバ20を有する。例えば、通信用サーバは顧客との電話通話を取り扱うための電話用サーバ22、顧客とのeメール通信を取り扱うためのeメール・サーバ24、および顧客とのインスタント・メッセージ通信を取り扱うためのインスタント・メッセージ・サーバ26を含むことが可能である。電話用サーバ22が例えば対話式の音声識別またはトーン識別のメニュー・システムを使用し得ることは理解されるであろう。電話用サーバ22が代わりに人間のオペレータを伴なったコールセンターであること、あるいは電話用サーバ22とコールセンターの組合せであることが可能であることもやはり理解されるであろう。
【0015】
顧客の通信が受信されると、通信用サーバ20はディスパッチャ30と通信する。ディスパッチャ30はサービス記録情報データベース50を管理するデータベース・サーバ40と通信する。この通信回線を基にして、ディスパッチャ30は顧客の通信をサービス・エージェント60への経路に向け、データベース・サーバ40と一体になってサービス記録情報データベース50を更新する。
【0016】
本発明の実施形態による顧客サービス・セッションを管理する方法が図3を参照してここで述べられるであろう。図3は本発明の一実施形態による顧客サービス・セッションを管理する方法のフロー・チャートを例示している。この方法の様々な機能要素がシステムの要素(例えば通信用サーバ20、ディスパッチャ30、およびデータベース・サーバ40)の周囲に配分されること、あるいはシステム設計者によって開発される個々のシステム設計に基づいてシステムの要素によって協力して遂行されることが可能であることは理解されるであろう。したがって、以下の説明では特定の機能が1つまたは複数のシステム要素に起因することが可能であるが、本発明が必ずしも所定の機能をそのシステム要素で達成することに限定されないことは理解されるべきである。
【0017】
図3に示されるように、工程S10で顧客は例えば電話通話、eメール、またはインスタント・メッセージによってセッションを開始する。工程S12では、適切な通信用サーバ20、またはディスパッチャ30が通信用サーバ20との通信を通じて顧客からの通信がサービス識別子(SID)を含んでいるかどうか判定する。
【0018】
下記で詳細に検討されるであろうが、本発明のこの実施形態による顧客サービスの管理の方法はサービス識別子を顧客サービス提供に結び付け、顧客サービス・セッションを管理するためにこの識別子を使用する。これが1回目または初期のセッションであれば、顧客はまだSIDを割り当てられてはいないであろうから、したがってSIDを知ることはない。しかしながら、その後のセッションでは顧客はSIDを知ること、および提供することが可能である。
【0019】
一実施形態では、SIDは番号(例えばint32のタイプ)のような文字列である。別の実施形態では、SIDはキーワードであることが可能である。さらに別の実施形態では、SIDはログイン名とパスワードの組合せであることが可能である。理解されるであろうが、SIDは多くの異なった形式を有するように設計されることが可能である。
【0020】
また、サービス・セッションを開始する顧客は多くの異なる方式でSIDを提供することが可能である。電話通話するときには音声識別またはトーン識別システムが顧客にSIDを問い合わせることが可能である。eメールが使用されるときには、SIDはeメールのタイトルまたは本文中で与えられることが可能である。インスタント・メッセージが使用されるときには顧客が冒頭の文章でSIDを提供するか、またはSIDを尋ねられることが可能である。
【0021】
工程S12に戻って、もしもSIDが与えられなければ、その後に工程S14で顧客識別子(CID)が顧客から聞き出される。例えば電話通話では、顧客識別子は発呼者の電話番号、IPアドレス、あるいは電話がソフトフォン(例えばIP電話)であればソフトフォンのURI(Universal Resource Identifier)などであることが可能である。eメールについては、顧客識別子は顧客のeメール・アドレスであることが可能である。同様に、インスタント・メッセージについては顧客識別子は顧客のインスタント・メッセージ・ユーザID(いくつかのインスタント・メッセージ・システムでは、これはeメール・アドレスであってもよい)であることが可能である。
【0022】
聞き出されたCIDに基づいて、工程S16でディスパッチャ30および/またはデータベース・サーバ40が、サービス記録情報データベース50内にサービス記録情報(SRI)の記入事項が存在するかどうかを判定する。下記でさらに詳細に検討されるように、SRI記入事項はとりわけSIDとそれに付随する(複数の)CIDを含むであろう。
【0023】
もしもSRI記入事項が存在しない場合、その後に工程S18でディスパッチャ30および/またはデータベース・サーバ40が、確立されたプロトコルに従ってSIDを作成する。例えば上記で検討したように、SIDは、データベース50内のSIDとして存在していないタイプint32の番号として作り出されることが可能である。その後、SIDをインデックスとして使用してサービス記録情報の記入事項がデータベース50内に作成される。作成されるSRI記入事項はサービス記録情報一覧表とセッション一覧表を含むであろう。
【0024】
SRI一覧表はSID、CIDもしくは複数のCID、およびまだ割り当てられていないサービス・エージェント識別子(SAID)を含む。理解されるであろうが、顧客は各々のセッションに関して異なる通信媒体を使用する可能性が高いので、SRI一覧表はその顧客に関して複数のCIDを含む可能性が高い。同様に、下記のSAIDの検討で明らかになるであろうが、SRI一覧表はサービス・エージェントに関して複数のSAIDを含む可能性が高い。
セッション一覧表はSRI一覧表に付随し、今回のセッションに適用可能である。セッション一覧表は今回のセッションのためのセッション情報を含むであろう。例えば、セッション一覧表は、顧客が例えば電話によって通信するときに記録されるセッションの音声ファイル、顧客がeメールによって通信する場合のeメールの記録、および顧客がインスタント・メッセージによって通信する場合のチャット記録を含むことが可能である。
【0025】
その後、工程S20でディスパッチャ30が顧客の通信を利用可能なサービス・エージェントへの経路に向け、そのサービス・エージェントのSAIDをSRI記入事項のSRI一覧表に記録する。例えば、SAIDはサービス・エージェントのソフトフォンの内線電話番号、サービス・エージェントのIPアドレス、サービス・エージェントのeメール・アドレスなどであることが可能である。その後、顧客とサービス・エージェントが通信すると、上記で検討されたセッション情報が工程S22でセッション一覧表に記録される。
【0026】
工程S12に戻って、もしも顧客がSIDを提供しなければ、その後に工程S24で、SIDがデータベース50内に存在するかどうかが判定される。もしも無ければ、処理は上記で検討された工程S14へと進む。しかしながら、もしもSIDがデータベース50内に存在すれば、それから処理は工程S26へと進む。同様に、聞き出されたCIDに基づいてもしも工程S16でSRI記入事項がデータベース50内に存在することが判定されれば、それから処理は工程S26へと進む。
【0027】
工程S26では、SIDまたはCIDに付随するSRI記入事項がアクセスされる。さらに特定すると、SRI記入事項のSRI一覧表がアクセスされ、SRI一覧表内のSAIDが入手される。その後、SRI記入事項と関連付けて新たなセッション一覧表が作成される。工程S28では、ディスパッチャ30が顧客をSAIDによって工程S28で識別されるサービス・エージェントへの経路に向ける。
【0028】
工程S28に引き続いて、新たなセッションに関するセッション情報が工程S22で新たなセッション一覧表内に記録される。概して、サービス・エージェントが顧客との前回の取り引きを覚えており、サービス提供を開始するであろうと予期される。たとえサービス・エージェントが顧客または懸案の問題をすぐに思い出さなくても、サービス・エージェントはSRIデータベース50内の情報へのアクセス権を有し、サービス記録情報を使用して即座にそれらの記憶を甦らせることが可能である。例えば、サービス・エージェントはその顧客に関してSRI記入事項にある1つまたは複数のセッション一覧表の中のセッション一覧表情報を再調査することが可能である。
【0029】
したがって、本発明は所定の顧客サービス・セッションのために顧客が選択する媒体に関係なく顧客サービスを管理する方法を提供する。すなわち、継続中の課題に関して顧客は異なるセッションについて異なる媒体(例えば電話通話の代わりにIM)を選択することが可能である。しかしながら本発明の方法は、選択される顧客サービス媒体の選択肢に関係なく顧客サービスの履歴を追跡する処理を提供する。それ自体で、本発明は有力かつ効率的な顧客サービス用ツールを企業に提供する。
【0030】
このようにして本発明が述べられてきたが、これが多くの方法で変更され得ることは明らかであろう。例えば、顧客は前回のセッションと同じ顧客エージェントへの経路に向けられるのではなく異なる顧客エージェントを選ぶ選択肢を与えられることが可能である。そのような変更は本発明の精神と範囲からの逸脱とは見なされず、そのような変更のすべては本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】顧客サービス・アーキテクチャの全体的概観を例示する図である。
【図2】本発明の実施形態による顧客サービス・アーキテクチャを例示する詳細なブロック図である。
【図3】本発明の実施形態による顧客サービス・セッションを管理する方法を例示するフロー・チャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客サービスを管理する方法であって、
顧客によって使用される複数の通信媒体全体にわたって顧客サービス・セッションを追跡するためにデータベース(50)を管理する工程を含む方法。
【請求項2】
前記管理工程が、
サービス識別子、少なくとも1つの顧客識別子、および少なくとも1つのサービス・エージェント識別子を含む前記データベース内でサービス記録情報記入事項を作成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記顧客識別子が前記顧客の電話番号、IPアドレス、またはソフトフォンのURIである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記顧客識別子が前記顧客のeメール・アドレスまたはインスタント・メッセージ・ユーザIDである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記サービス・エージェント識別子が前記サービス・エージェントの電話番号、IPアドレス、またはソフトフォンのURIである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記サービス・エージェント識別子が前記サービス・エージェントのeメール・アドレスまたはインスタント・メッセージ・ユーザIDである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記管理工程が、
前記サービス記録情報記入事項と関連付けてサービス・セッションに関するセッション情報を保存する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記セッション情報が、記録された電話通話、前記顧客からのeメールの少なくとも一部分、および前記顧客とサービス・エージェントとの間のインスタント・メッセージのチャット記録の少なくとも一部分のうちの1つである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記管理工程が、
前記顧客との各々のサービス・セッションについて新たなセッション情報を含むように前記サービス記録情報記入事項を更新する工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
顧客サービスを管理する方法であって、
現在の顧客サービス・セッションを前回のサービス・セッションに参加した者と同じ顧客エージェントへ方向付ける工程と、
顧客情報、および前記顧客が前回通信したサービス・エージェントの識別子を含むデータベース(50)にアクセスする工程とを含み、
前記方向付ける工程が現在の顧客の通信を前記サービス・エージェント識別子によって識別された前記サービス・エージェントへの経路に向ける方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−202294(P2006−202294A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11815(P2006−11815)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(596092698)ルーセント テクノロジーズ インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】