説明

風向調整装置

【課題】配風性能を確保しつつ見栄えを向上した風向調整装置を提供する。
【解決手段】通路部11の吹出口32に臨んでセンターフィン12を軸支する。センターフィン12は、下方向への回動により下側の第2縁部32b側へと風向を調整し、上方向への回動により上側の第2縁部32b側へと風向を調整する。通路部11内の下側の第2縁部32b側に、通路部11内を通過する風の上流側に向けて傾斜した傾斜面41dを有するロワーフィン13を備える。ロワーフィン13は、センターフィン12の下方向への回動に対応して吹出口32の中央側へと傾斜面41dが接近するように進出し、センターフィン12の上方向への回動に対応して吹出口32の中央側に対して傾斜面41dが離間するように退避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風を吹き出す吹出口を備えた通路部を有する風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、風を吹き出す吹出口に備えられる風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンターコンソール部に設置された後席空調用のもの、あるいは、オーバーヘッドコンソール部、センターピラーやドアトリムなどに設置された、いわゆるミニバン車の第2列(中間列)及び第3列(最後列)の空調用のものなどが知られており、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
上記吹出口の開口寸法は、風向調整装置の性能に関連するものの、車両のデザインとの関係により、形状や寸法の自由度が制限される。
【0004】
例えば、インストルメントパネルの場合、オーディオ装置、あるいはカーナビゲーション装置などを設置するために、乗員の操作性及び視認性を考慮して乗員近く、視認しやすい位置に広い領域を確保する場合がある。空調から吹き出される風は乗員に対して適切な位置から吹き出すことが好ましいものの、このような場合、装置類との関係により、位置や大きさの選択範囲は限定的となることがある。
【0005】
風向調整装置は、風向の調整操作のためのある程度の操作性を確保できれば、必要な性能を得られる範囲において、寸法は小さくてもよく、むしろ、インストルメントパネルなどをデザインする上では、控えめな見栄えにできれば、他のイルミネーションやディスプレイ装置を引き立たせることにもなり、インストルメントパネルの見栄えを向上できるだけでなく、各種装置が見やすく操作しやすいものとなるので好ましい。
【0006】
また、例えばミニバン車の第2列以降の快適性を得るために、オーバーヘッドコンソール部に風向調整装置を設置する場合には、吹出口の高さ寸法、すなわち上下寸法が小さいほど、後席から前方を見た場合の視界が広くなり、開放感や爽快感を演出する上で好ましい。
【0007】
そして、このような風向調整装置として、吹出口の上下縁部に位置し下流側すなわち風下側へと拡開状に傾斜する一対の風下側傾斜面と、これら風下側傾斜面の上流側すなわち風上側に連続し風上側へと拡開状に傾斜する一対の風上側傾斜面と、吹出口の上下方向の中央近傍に可動的に配置された、例えば1枚などの少数枚の風向調整羽根とを備え、これら傾斜面と風向調整羽根とによって風向を調整する構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−6054号公報 (第5−10頁、図1、図10及び図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の風向調整装置は、風上側では風上側傾斜面によって上下に絞られているものの、特に吹出口の下縁部に風下側へと拡開状に位置する風下側傾斜面が乗員側に対向して乗員により常時直接目視され、実質的に外観上も吹出口を小さくすることが容易でない。また、外観上の吹出口の大きさを抑制するために、吹出口の下縁部に位置する風下側傾斜面の長さを抑制すると、下向きの空調風の指向性が低下し、風向調整装置の性能が低下するおそれがある。さらに、風上側傾斜面と風下側傾斜面とに対して風向調整羽根を平行とする場合や、風向調整羽根が中立位置、すなわちニュートラルの状態である場合と比較して、風向調整羽根をそれらの中間程度の位置とした場合、例えば風向調整羽根が風上側傾斜面あるいは風下側傾斜面に対して平行に満たない状態で傾斜している場合では、空調風の指向性が充分でない。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、配風性能を確保しつつ見栄えを向上した風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の風向調整装置は、風を受け入れる受け入れ部を備えるとともに、互いに対向する一対の縁部を有し前記受け入れ部に受け入れた風を吹き出す吹出口を備えた通路部と、前記一対の縁部に交差する方向に軸支されて前記吹出口に臨んで回動可能に配置され、一方向への回動により一方の前記縁部側へと風向を調整し、この一方向と反対方向である他方向への回動により他方の前記縁部側へと風向を調整する風向調整羽根と、前記通路部内の一方の前記縁部側に配置され、前記通路部内を通過する風の上流側に向けて傾斜した傾斜面を備え、前記風向調整羽根の一方向への回動に対応して前記吹出口の中央側へと前記傾斜面が接近し、前記風向調整羽根の他方向への回動に対応して前記吹出口の中央側に対して前記傾斜面が離間するように動作する偏向羽根とを具備したものである。
【0012】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、偏向羽根は、通路部内に移動可能に配置され、風向調整羽根の一方向への回動に対応して吹出口の中央側に進出するとともに、前記風向調整羽根の他方向への回動に対応して前記吹出口の中央側に対して退避し、風を案内する案内面を備え、一方の縁部と前記偏向羽根との間を覆い、この偏向羽根の進退に対応して前記案内面が風向調整羽根に沿うように移動する補助羽根を具備したものである。
【0013】
請求項3記載の風向調整装置は、請求項2記載の風向調整装置において、風向調整羽根と一体的に回動可能に設けられ、回動により偏向羽根を移動させるカムと、このカムによる前記偏向羽根の移動方向を吹出口の中央側に対して進退する方向にガイドするガイド部と、前記偏向羽根に設けられ、この偏向羽根の移動が前記ガイド部によりガイドされることで案内面が前記風向調整羽根に沿うように補助羽根を回動させる補助羽根回動部とを具備したものである。
【0014】
請求項4記載の風向調整装置は、請求項2または3記載の風向調整装置において、通路部内の他方の縁部側に移動可能に配置され、前記通路部内を通過する風の上流側に向けて傾斜した傾斜面部を備え、風向調整羽根の他方向への回動に対応して吹出口の中央側へと前記傾斜面部が接近するように進出し、前記風向調整羽根の一方向への回動に対応して前記吹出口の中央側に対して前記傾斜面部が離間するように退避する偏向羽根部を具備したものである。
【0015】
請求項5記載の風向調整装置は、請求項4記載の風向調整装置において、案内面部を備え、他方の縁部と偏向羽根部との間を覆い、この偏向羽根部の進退に対応して前記案内面部が風向調整羽根に沿うように移動する補助羽根部を具備したものである。
【0016】
請求項6記載の風向調整装置は、請求項5記載の風向調整装置において、風向調整羽根と一体的に回動可能に設けられ、回動により偏向羽根及び偏向羽根部を移動させるカムと、このカムによる前記偏向羽根及び前記偏向羽根部の移動方向をそれぞれ吹出口の中央側に対して進退する方向にガイドするガイド部と、前記偏向羽根に設けられ、この偏向羽根の移動が前記ガイド部によりガイドされることで案内面が前記風向調整羽根に沿うように補助羽根を回動させる補助羽根回動部と、前記偏向羽根部に設けられ、この偏向羽根部の移動が前記ガイド部によりガイドされることで案内面部が前記風向調整羽根に沿うように補助羽根部を回動させる補助羽根部回動部とを具備したものである。
【0017】
請求項7記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、偏向羽根は、通路部内に回動可能に配置され、風向調整羽根の一方向への回動に対応して吹出口の中央側へと傾斜面側が接近するように回動するとともに、前記風向調整羽根の他方向への回動に対応して前記吹出口の中央側に対して前記傾斜面側が離間するように回動するものである。
【0018】
請求項8記載の風向調整装置は、請求項7記載の風向調整装置において、通路部内の他方の縁部側に回動可能に配置され、前記通路部内を通過する風の上流側に向けて傾斜した傾斜面部を備え、風向調整羽根の他方向への回動に対応して吹出口の中央側へと前記傾斜面部が接近するように回動するとともに、前記風向調整羽根の一方向への回動に対応して前記吹出口の中央側に対して前記傾斜面部が離間するように回動する偏向羽根部を具備したものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の風向調整装置によれば、吹出口の一方の縁部側に配置された偏向羽根が、風向調整羽根の回動に対応して吹出口の中央側に対して傾斜面が接近あるいは離間するように動作することで、風向調整羽根を一方向及び他方向へと回動させても、偏向羽根の傾斜面の吹出口の中央側への接近あるいは離間によって配風性能を確保できるとともに、偏向羽根の傾斜面が吹出口の中央側に対して離間した位置では吹出口側から偏向羽根が目視されにくくなり、見栄えを向上できる。
【0020】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加え、偏向羽根が、風向調整羽根の回動に対応して吹出口の中央側に対して進退するとともに、偏向羽根と吹出口の一方の縁部との間を覆う補助羽根が、偏向羽根の進退に対応して風向調整羽根に案内面が沿うように移動することで、風向調整羽根を一方向及び他方向へと回動させても、偏向羽根の吹出口の中央側への進退及び補助羽根の移動によって配風性能をより向上できるとともに、偏向羽根と一方の縁部との間が補助羽根によって覆われているので、偏向羽根が風向調整羽根の一方向への回動に対応して吹出口の中央側に対して進出しても、偏向羽根の背面側が吹出口側に露出することがなく、見栄えをより向上できる。
【0021】
請求項3記載の風向調整装置によれば、請求項2記載の風向調整装置の効果に加え、風向調整羽根を回動させると、この風向調整羽根と一体的にカムが回動して偏向羽根を移動させ、この偏向羽根の移動方向がガイド部により吹出口の中央側に対して進退する方向にガイドされることで、補助羽根回動部が、補助羽根の案内面が風向調整羽根に沿うように補助羽根を回動させるため、偏向羽根の進退に対応して風向調整羽根に案内面が沿うように補助羽根が移動する構成を容易に形成できる。
【0022】
請求項4記載の風向調整装置によれば、請求項2または3記載の風向調整装置の効果に加え、吹出口の他方の縁部側に配置された偏向羽根部が、風向調整羽根の回動に対応して偏向羽根と逆方向に吹出口の中央側に対して傾斜面部が接近あるいは離間するように進退することで、風向調整羽根を一方向及び他方向へと回動させても、偏向羽根及び偏向羽根部の吹出口の中央側への互いに逆方向の進退によって配風性能をより向上できるとともに、偏向羽根部の傾斜面部が吹出口の中央側に対して離間するように退避した位置では吹出口側から偏向羽根部が目視されにくくなり、見栄えをより向上できる。
【0023】
請求項5記載の風向調整装置によれば、請求項4記載の風向調整装置の効果に加え、偏向羽根部と吹出口の他方の縁部との間を覆う補助羽根部が、偏向羽根部の進退に対応して風向調整羽根に案内面部が沿うように移動することで、風向調整羽根を一方向及び他方向へと回動させても、偏向羽根及び偏向羽根部の吹出口の中央側への互いに逆方向の進退、及び、補助羽根及び補助羽根部の移動によって配風性能をより向上できるとともに、偏向羽根部と他方の縁部との間が補助羽根部によって覆われているので、通路部を通過する風の上流側に向けて傾斜した傾斜面部を備える偏向羽根部が風向調整羽根の他方向への回動に対応して吹出口の中央側に対して進出しても、偏向羽根部の背面側が吹出口側に露出することがなく、見栄えをより向上できる。
【0024】
請求項6記載の風向調整装置によれば、請求項5記載の風向調整装置の効果に加え、風向調整羽根を回動させると、この風向調整羽根と一体的にカムが回動して偏向羽根及び偏向羽根部を移動させ、これら偏向羽根及び偏向羽根部の移動方向がガイド部により吹出口の中央側に対して進退する方向にガイドされることで、補助羽根回動部及び補助羽根部回動部が、補助羽根の案内面及び補助羽根部の案内面部が風向調整羽根に沿うように補助羽根及び補助羽根部を回動させるため、補助羽根及び補助羽根部の進退に対応して風向調整羽根に案内面及び案内面部が沿うように補助羽根及び補助羽根部が回動する構成を容易に形成できる。
【0025】
請求項7記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加え、偏向羽根が、風向調整羽根の回動に対応して吹出口の中央側に対して傾斜面側が接近あるいは離間するように回動することで、より簡単な構成で配風性能を確保しつつ、偏向羽根の傾斜面が吹出口の中央側に対して離間した位置に回動した状態では吹出口側から偏向羽根が目視されにくくなり、見栄えをより向上できる。
【0026】
請求項8記載の風向調整装置によれば、請求項7記載の風向調整装置の効果に加え、吹出口の他方の縁部側に配置された偏向羽根部が、風向調整羽根の回動に対応して偏向羽根と逆方向に吹出口の中央側に対して傾斜面部が接近あるいは離間するように回動することで、風向調整羽根を一方向及び他方向へと回動させても、偏向羽根及び偏向羽根部の吹出口の中央側への互いに逆方向の回動によって配風性能をより向上できるとともに、偏向羽根部の傾斜面部が吹出口の中央側に対して離間するように退避した位置では吹出口側から偏向羽根部が目視されにくくなり、見栄えをより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の風向調整装置の第1の実施の形態の風向調整羽根を中立位置とした状態を示す説明図である。
【図2】同上風向調整羽根を一方向へと最大回動させた状態を示す説明図である。
【図3】同上風向調整羽根を他方向へと最大回動させた状態を示す説明図である。
【図4】同上風向調整装置の一部の分解斜視図である。
【図5】同上風向調整装置の分解斜視図である。
【図6】同上風向調整装置による風向制御状態を示す説明図であり、(a)は風向調整羽根を中立位置とした状態を示し、(b)は風向調整羽根を一方向へと最大回動させた状態を示し、(c)は風向調整羽根を他方向へと最大回動させた状態を示す。
【図7】本発明の風向調整装置の第2の実施の形態の風向調整羽根を中立位置とした状態を示す説明図である。
【図8】同上風向調整羽根を一方向へと最大回動させた状態を示す説明図である。
【図9】同上風向調整羽根を他方向へと最大回動させた状態を示す説明図である。
【図10】同上風向調整装置の一部の分解斜視図である。
【図11】同上風向調整装置による風向制御状態を示す説明図であり、(a)は風向調整羽根を中立位置とした状態を示し、(b)は風向調整羽根を一方向へと最大回動させた状態を示し、(c)は風向調整羽根を他方向へと最大回動させた状態を示す。
【図12】本発明の風向調整装置の第3の実施の形態の風向調整羽根を中立位置とした状態を示す説明図である。
【図13】同上風向調整羽根を一方向へと最大回動させた状態を示す説明図である。
【図14】同上風向調整羽根を他方向へと最大回動させた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の風向調整装置の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0029】
図5において、10は風向調整装置を示し、この風向調整装置10は、例えば自動車などの車両に備えられた空調装置などからの風の向き、すなわち風向を調整する空調用のもので、図示しないが、自動車の内装部材、例えばインストルメントパネルやセンターコンソール、オーバーヘッドコンソール部、センターピラーあるいはドアトリムなどの被設置部に設置されている。
【0030】
そして、この風向調整装置10は、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、図4及び図5に示すように、通路部11と、風向調整羽根としてのセンターフィン12と、偏向羽根としてのロワーフィン13と、偏向羽根としての偏向羽根部であるアッパーフィン14と、補助羽根としてのブラインド15と、通路部11に取り付けられセンターフィン12を回動可能に軸支するガイド部としてのスペーサ16,16と、センターフィン12と一体的に取り付けられるカムとしてのプレート17,17と、通路部11の内部に配置される整流体としての複数のリアフィン18と、これらリアフィン18を接続する整流体連結部材としてのリアフィンリンク19と、センターフィン12に取り付けられる調整部としてのノブ20とを備えている。この風向調整装置10は、例えば合成樹脂などにより形成されている。
【0031】
図1ないし図5に示すように、通路部11は、例えば角筒状に一体形成されたケース体22と、このケース体22に取り付けられる板状のフィニッシャ23とを有している。そして、この通路部11内には、ケース体22側からフィニッシャ23側へと風が通過するエア通路24が区画されている。なお、以下、エア通路24を通過する風の流れに沿って、下流側(風下側)を乗員側である前側、上流側(風上側)を後側として説明する。
【0032】
ケース体22は、後端側に受け入れ部としての導入口25が開口形成され、前端側に開口部26が開口形成されている。また、このケース体22は、開口部26に向けて徐々に拡開状に傾斜した(一方及び他方の)ガイド面28,29を、下部と上部とに備えている。
【0033】
導入口25は、空調ボックス(HVAC)などからの風をエア通路24の内部に受け入れるように構成されている。
【0034】
開口部26は、フィニッシャ23が取り付けられる部分であり、例えば左右方向に長手状の長方形状に形成されている。また、この開口部26は、下側が上側よりも前方に突出している。
【0035】
また、フィニッシャ23は、例えば自動車のインストルメントパネルなどの被設置部に一体的に構成される板状の本体部31と、この本体部31に形成されエア通路24に連通する吹出口32と、本体部31の背面側(後側)に突設された接続部33とを備えている。
【0036】
本体部31は、ケース体22の開口部26との間でセンターフィン12を回動可能に挟持している。また、この本体部31は、開口部26の縁部の傾斜に沿って、前面側が上方に向けて傾斜するように構成されている。
【0037】
また、吹出口32は、エア通路24を通過した風を吹き出すものであり、本実施の形態では、例えば左右方向に長手状の長方形状に形成されている。したがって、吹出口32には、左右両側に互いに対向する第1縁部32a,32aが配置され、上下両端に互いに対向する縁部としての第2縁部32b,32bが配置されている。第1縁部32a,32aは、上下方向に沿ってそれぞれ直線状に形成されており、かつ、上側が下側よりも後方に傾斜している。また、第2縁部32b,32bは、第1縁部32a,32a間に亘って直線状に形成されている。さらに、吹出口32は、開口部26よりも小さい形状となっている。さらに、吹出口32の下側の第2縁部32bには、前方へと下方に傾斜する傾斜縁部32cが形成されている。
【0038】
また、接続部33は、開口部26の内縁に形成された段差状の嵌合部35に嵌合することで、フィニッシャ23をケース体22と一体的に接続するように構成されている。
【0039】
また、センターフィン12は、回動により吹出口32の第2縁部32b,32b側へと風向を調整するものであり、左右方向に沿って長尺板状に形成された風向調整羽根本体としてのセンターフィン本体37と、このセンターフィン本体37の両側に突設された接続軸38(一方のみ図示)とを備え、吹出口32の上下方向の中間位置、すなわち第2縁部32b,32b間に位置して、これら第2縁部32b,32bと交差(直交)する方向に軸支されて吹出口32に臨んでいる。センターフィン本体37は、一主面及び他主面がそれぞれ平面状の(一方及び他方の)整流面37a,37bとなっている。また、各接続軸38は、軸部38aと、この軸部38aから突設された接続凸部38bとを一体に備えている。各軸部38aは、円柱状に形成されており、第1縁部32a,32aに位置するスペーサ16,16間に回動可能に軸支されている。また、接続凸部38bは、角柱状に形成された角軸であり、ケース体22の側方に突出して各プレート17に挿入嵌合されている。したがって、センターフィン12と各プレート17とが図中の時計回り方向と反時計回り方向、すなわち上下方向に一体的に回動するように構成されている。本実施の形態において、センターフィン12及び各プレート17は、例えば上下方向にそれぞれ25°以上回動可能となっている。なお、本実施の形態において、センターフィン12は1枚のみ備えているが、複数枚備えていてもよい。
【0040】
また、ロワーフィン13は、左右方向に沿って長尺板状に形成された偏向羽根本体としてのロワーフィン本体41と、このロワーフィン本体41の両側に設けられた(一方の)スライド部としての下側スライド部42(一方のみ図示)とを一体に有しており、ケース体22内(エア通路24中)にて、吹出口32の下側の第2縁部32bの後方に離間された位置に配置されている。
【0041】
ロワーフィン本体41は、後側下方に向けて傾斜した(一方の)傾斜部としての下側傾斜部41aと、この下側傾斜部41aの後端側に連続する(一方の)屈曲部としての下側屈曲部41bと、下側傾斜部41aの後端部に連続する(一方の)被ガイド部としての下側被ガイド部41cとを一体に備えている。
【0042】
下側傾斜部41aの上面は、ケース体22内のエア通路24を通過する風の上流側すなわち後方に向けて下方に傾斜した傾斜面41dとなっており、エア通路24を通過する風を前方上側へと案内するように構成されている。この傾斜面41dは、例えばケース体22のガイド面29とほぼ平行となっている。
【0043】
下側屈曲部41bは、下側傾斜部41aとの連続部が下方へと屈曲状に形成されている。このため、ロワーフィン本体41には、下側傾斜部41aと下側屈曲部41bとの間で段差が生じている。また、この下側屈曲部41bは、前端側がブラインド15の下方に位置しており、ブラインド15によって覆われている。
【0044】
下側被ガイド部41cは、下側傾斜部41aの後端部に対して前方へと折り返されるように屈曲しており、ガイド面28に対向する下面が、このガイド面28に摺接するように配置されている。
【0045】
また、各下側スライド部42は、ロワーフィン本体41に対して直交する方向である前後方向に沿って板状に形成されている。各下側スライド部42の外部、すなわちロワーフィン本体41に対して反対側には、ロワーフィン13をスペーサ16によりガイドするためのガイド凸部42a,42aが前側の上下に突設されているとともに、上側のガイド凸部42aの上方に、ロワーフィン13を、各スペーサ16を介して各プレート17に接続するための円柱状のスライド軸42bが突設されている。さらに、各下側スライド部42には、ロワーフィン13とブラインド15とを接続するための補助羽根回動部としてのカム溝42cが設けられている。このカム溝42cは、下側スライド部42の下側から上側前部へと波状に湾曲して形成されている。
【0046】
また、アッパーフィン14は、左右方向に沿って長尺板状に形成された偏向羽根部本体としてのアッパーフィン本体44と、このアッパーフィン本体44の両側に設けられた(他方の)スライド部としての上側スライド部45(一方のみ図示)とを一体に有しており、通路部11内(エア通路24中)にて、吹出口32の上側の第2縁部32bの後方に離間された位置に配置されている。
【0047】
アッパーフィン本体44は、後側上方に向けて傾斜した(他方の)傾斜部としての上側傾斜部44aと、この上側傾斜部44aの後端部に連続する(他方の)被ガイド部としての上側被ガイド部44bとを一体に備えている。
【0048】
上側傾斜部44aの下面は、通路部11内のエア通路24を通過する風の上流側に向けて傾斜した傾斜面部44cとなっており、エア通路24を通過する風を前方下側へと案内するように構成されている。この傾斜面部44cは、例えばケース体22のガイド面28とほぼ平行となっている。
【0049】
上側被ガイド部44bは、上側傾斜部44aの後端部に対して前方へと折り返されるように屈曲しており、ガイド面29に対向する上面が、このガイド面29に摺接するように配置されている。
【0050】
また、各上側スライド部45は、アッパーフィン本体44に対して直交する方向である前後方向に沿って板状に形成されている。各上側スライド部45の外部、すなわちアッパーフィン本体44に対して反対側には、ロワーフィン13をスペーサ16によりガイドするためのガイド突出部45a,45aが前側の上下に突設されているとともに、下側のガイド突出部45aの上方に、アッパーフィン14を、各スペーサ16を介して各プレート17に接続するための円柱状のスライド軸部45bが突設されている。
【0051】
また、ブラインド15は、左右方向に沿って長尺板状に形成されており、通路部11内(エア通路24中)にて、吹出口32の下側の第2縁部32bの後方からロワーフィン13の前端側に亘って配置されている。このブラインド15は、(一方の)主案内部としての(一方の)第1案内部である平板状の前側案内部15aと、この前側案内部15aの後端部に下方に向けて屈曲状に連続する(一方の)副案内部としての(一方の)第2案内部である後側案内部15bとを一体に備えている。さらに、このブラインド15の両側には、このブラインド15を各スペーサ16に対して回動可能に軸支するための円柱状の(一方の)回動軸15cが前側の位置に突設されているとともに、ロワーフィン13のカム溝42cに挿入される円柱状の(一方の)挿入スライド軸15dが後側の位置に突設されている。
【0052】
前側案内部15aの上面は、通路部11内のエア通路24を通過する風を案内する案内面としての主案内面15eとなっている。
【0053】
また、後側案内部15bの上面は、通路部11内のエア通路24を通過する風を案内する副案内面15fとなっている。
【0054】
また、スペーサ16,16は、互いに左右方向に線対称な構成となっている。このため、以下、説明をより明確にするため、一方のスペーサ16についてのみ説明し、他方のスペーサ16については説明を省略する。
【0055】
スペーサ16は、ケース体22の開口部26の側部に沿って、ガイド面28,29の位置に亘ってケース体22の内部に嵌合するように形成されている。すなわち、スペーサ16は、吹出口32の第1縁部32aよりも側方に位置している。このスペーサ16には、外側面、すなわちケース体22の開口部26の側部に切り欠き形成された挿入部としての挿入溝51,52に対して挿入される挿入ガイド53,54が突設されている。また、このスペーサ16には、内側面、すなわち開口部26の左右方向の中央側に、ロワーフィン13とアッパーフィン14とをそれぞれスライドさせるための(一方及び他方の)スライド凹部としてのスライドポケット56,57が凹設されている。さらに、このスペーサ16には、下側のスライドポケット56の前部に、ブラインド15を回動可能に軸支するための(一方の)軸穴58が凹設されている。そして、このスペーサ16には、前部の上下方向の中央部に、センターフィン12の接続軸38の軸部38aを回動可能に軸支するための円弧状の軸受凹部59が切り欠き形成されている。
【0056】
下側のスライドポケット56は、スペーサ16をケース体22に取り付けた状態で上部が上側のガイド面28に対して連通する部分であり、このガイド面28の傾斜に沿ってスライド可能にロワーフィン13の下側スライド部42が嵌合する。また、このスライドポケット56の内部には、下側スライド部42のガイド凸部42a,42aをガイドするためのガイドリブ56a,56aが形成されているとともに、これらガイドリブ56a,56aの間に、スライド軸42bが挿入されるスライド溝56bが形成されている。これらガイドリブ56a,56a及びスライド溝56bは、それぞれガイド面28の傾斜に沿ってほぼ平行となっている。また、スライド溝56bは、ケース体22の側部に形成された直線状の(一方の)溝部61と連通している。この溝部61は、後側へと徐々に上方に傾斜しており、スライド溝56b、すなわちガイド面28とほぼ平行に形成され、前端側が挿入溝51と連通している。
【0057】
また、上側のスライドポケット57は、スペーサ16をケース体22に取り付けた状態で上部が上側のガイド面29に対して連通する部分であり、このガイド面29の傾斜に沿ってスライド可能にアッパーフィン14の上側スライド部45が嵌合する。また、このスライドポケット57の内部には、上側スライド部45のガイド突出部45a,45aをガイドするためのガイドリブ部57a,57aが形成されているとともに、これらガイドリブ部57a,57aの下方に、スライド軸部45bが挿入されるスライド溝部57bが形成されている。これらガイドリブ部57a,57a及びスライド溝部57bは、それぞれガイド面29の傾斜に沿ってほぼ平行となっている。また、スライド溝部57bは、ケース体22の側部に形成された直線状の(他方の)溝部63と連通している。この溝部63は、後側へと徐々に下方に傾斜しており、スライド溝部57b、すなわちガイド面29とほぼ平行に形成され、前端側が挿入溝52と連通している。
【0058】
また、軸受凹部59は、ケース体22の開口部26の側部に円弧状(U字状)に切り欠き形成されたU字溝部65と連通している。
【0059】
また、プレート17,17は、ケース体22の開口部26の両側外方に配置されている。そして、これらプレート17,17は、互いに左右方向に線対称な構成となっている。このため、以下、説明をより明確にするため、一方のプレート17についてのみ説明し、他方のプレート17については説明を省略する。
【0060】
プレート17は、例えば扇形板状に形成されており、中心角の位置には、センターフィン12の接続軸38の接続凸部38bが嵌合挿入される角穴状の挿入穴67が凹設されている。また、このプレート17には、ロワーフィン13及びアッパーフィン14と接続される(一方及び他方の)作用溝68,69がそれぞれ設けられている。
【0061】
作用溝68は、ロワーフィン13のスライド軸42bが挿入係合される部分であり、プレート17の下部から上下方向の中央部近傍に亘って例えば円弧状に形成されており、ケース体22の溝部61の側方に位置している。また、この作用溝68は、下側から上側へと徐々に中心側、すなわち挿入穴67側に接近するように湾曲している。
【0062】
また、作用溝69は、アッパーフィン14のスライド軸部45bが挿入係合される部分であり、プレート17の上部から上下方向の中央部近傍に亘って例えば円弧状に形成されており、ケース体22の溝部63の側方に位置している。さらに、この作用溝69は、上側から下側へと徐々に中心側、すなわち挿入穴67側に接近するように湾曲している。
【0063】
また、各リアフィン18は、エア通路24内を通過する風の左右方向の風向を調整するもので、板状に形成されており、通路部11のエア通路24内に位置し、ケース体22のガイド面28,29よりも後方の位置で上下に軸支されて左右方向に回動可能となっている。また、各リアフィン18は、左右方向にほぼ等間隔に離間されて順次配置されており、全てのリアフィン18の後部上側に、リアフィンリンク19に挿入される角柱状の挿入突出部71が上方に向けて突設されている。さらに、各リアフィン18は、前部の上下部が(一方及び他方の)フィン傾斜部72,73となっている。これらフィン傾斜部72,73は、それぞれガイド面28,28とほぼ平行に形成されており、アッパーフィン14及びロワーフィン13と各リアフィン18とが互いに干渉しないように構成されている。
【0064】
リアフィンリンク19は、全てのリアフィン18を同時に、かつ、互いに平行な状態を保ったまま左右方向に回動させるものであり、左右方向に長尺状に形成され、各リアフィン18の挿入突出部71が挿入される挿入孔部75が長手方向に沿って形成されている。
【0065】
また、ノブ20は、センターフィン12を乗員が回動させる際に摘む部分であり、例えばセンターフィン12のセンターフィン本体37の左右方向の中央部などに一体的に取り付けられ、吹出口32から突出している。
【0066】
次に、風向調整装置10の組み立て方法を説明する。
【0067】
まず、予め形成したケース体22に対して、各リアフィン18をそれぞれ回動可能に軸支し、これらリアフィン18の挿入突出部71をリアフィンリンク19の挿入孔部75に挿入することで、リアフィン18を左右方向に互いに連結する。
【0068】
次いで、下側のスライドポケット56において、スライド溝56bにロワーフィン13の一方の下側スライド部42のスライド軸42bを内方から挿入係合するとともに、一方のスペーサ16の上側のスライドポケット57において、スライド溝部57bにアッパーフィン14の一方の上側スライド部45のスライド軸部45bを内方から挿入係合する。この状態で、スライド軸42bの先端側はスライド溝56bからスペーサ16の外方へと突出し、スライド軸部45bの先端側はスライド溝部57bからスペーサ16の外方へと突出する。さらに、ロワーフィン13の一方の下側スライド部42のカム溝42cに対して、ブラインド15の挿入スライド軸15dを内方から、一方のスペーサ16とブラインド15の一側との間に下側スライド部42を挟み込むように挿入係合して、このブラインド15の回動軸15cを、一方のスペーサ16の軸穴58に挿入接続する。
【0069】
さらに、他方のスペーサ16についても上記一方のスペーサ16と同様にロワーフィン13、アッパーフィン14及びブラインド15を接続する。
【0070】
そして、これら一体的となったスペーサ16,16、ロワーフィン13、アッパーフィン14及びブラインド15を、上記リアフィン18を取り付けたケース体22の開口部26から、スライド軸42b及び挿入ガイド53を挿入溝51に対して位置合わせし、スライド軸部45b及び挿入ガイド54を挿入溝52に対して位置合わせした状態で、後方へと挿入して組み付ける。この状態で、各スペーサ16のスライド溝56b、スライド溝部57b及び軸受凹部59が、ケース体22の溝部61、溝部63及びU字溝部65とそれぞれ位置合わせされ、スライド溝56b及びスライド溝部57bから外方へと突出するスライド軸42b及びスライド軸部45bは、それぞれ溝部61及び溝部63からケース体22の外側方へと突出する。
【0071】
また、予めノブ20を取り付けたセンターフィン12の各接続軸38の軸部38aを、軸受凹部59及びU字溝部65に仮置きし、ケース体22の外側方から各プレート17を、各挿入穴67を各接続凸部38bに対して嵌合させるように取り付ける。このとき、ケース体22の側方に突出するロワーフィン13の各スライド軸42b及びアッパーフィン14の各スライド軸部45bを、各プレート17の作用溝68及び作用溝69に挿入係合する。
【0072】
そして、フィニッシャ23の接続部33をケース体22の嵌合部35に対して前側から挿入嵌合させてフィニッシャ23をケース体22に組み付けて通路部11を構成することで、センターフィン12の各接続軸38をケース体22及びスペーサ16,16とフィニッシャ23の本体部31との間で挟持し、風向調整装置10が完成する。
【0073】
次に、風向調整装置10の動作を説明する。
【0074】
センターフィン12が中立位置、すなわちニュートラルの状態では、図1に示すように、センターフィン12のセンターフィン本体37がほぼ水平(例えば前方下側に4°程度傾斜した状態)となっている。このとき、ロワーフィン13は、ガイド面28の前後方向の中間位置に位置している。また、ブラインド15は、ロワーフィン13の下側屈曲部41bの前端側の上部を覆い、主案内面15eがセンターフィン本体37の一方の整流面37aとほぼ平行となっており、副案内面15fがロワーフィン13の傾斜面41dに沿っている。また、アッパーフィン14は、ガイド面29の前後方向の中間位置に位置している。
【0075】
そして、導入口25からエア通路24へと流入した風は、リアフィン18により整流されつつ、センターフィン12よりも下側では、センターフィン12の一方の整流面37aとロワーフィン13の傾斜面41d及びブラインド15の副案内面15fとの間で流量が絞られて流速が増した状態で一方の整流面37aとブラインド15の主案内面15eとに沿い、センターフィン12よりも上側では、センターフィン12の他方の整流面37bとアッパーフィン14の傾斜面部44cとの間で流量が絞られて流速が増した状態でこれら他方の整流面37bと傾斜面部44cとに沿い、吹出口32から前方へとほぼ水平な方向(例えば前方下側に4°程度傾斜した方向)へと吹き出すように風向調整される(図6(a))。なお、図6においては、風を矢印で示しており、濃い色調の箇所ほど風速が大きい位置となっている。
【0076】
また、例えばノブ20を用いてセンターフィン12を下流側である前部が相対的に下方(一方向)に向くように回動させると、このセンターフィン12と連結されたプレート17,17がセンターフィン12と同方向に同角度回動する。このため、これらプレート17,17の作用溝68にスライド軸42bが挿入されたロワーフィン13が、作用溝68の形状にしたがって徐々に後方へと移動され、スライド溝56bの形状、スライドポケット56と下側スライド部42との形状、ガイドリブ56aと下側被ガイド部41cとの形状、及びガイド面28の形状などにより、ロワーフィン13はガイド面28に沿うように後方上側へと、すなわち吹出口32の中心側へと進出して傾斜面41dが吹出口32の中心側に接近するようにガイドされて傾斜状にスライドする。また、ブラインド15は、ロワーフィン13の下側スライド部42のスライドにより、この下側スライド部42のカム溝42cの形状にしたがって後端側、すなわちロワーフィン13側が徐々に前方上側へと上昇するように、センターフィン本体37とほぼ平行な状態を保ちつつ回動する。さらに、プレート17,17の作用溝69にスライド軸部45bが挿入されたアッパーフィン14は、作用溝69の形状にしたがって徐々に前方へと移動され、スライド溝部57bの形状、スライドポケット57と上側スライド部45との形状、ガイドリブ部57aと上側被ガイド部44bとの形状、及びガイド面29の形状などにより、アッパーフィン14はガイド面29に沿うように前方上側へと、すなわち吹出口32の中心側に対して退避して傾斜面部44cが吹出口32の中心側に対して離間するように、換言すれば吹出口32の上側の第2縁部32b側へとガイドされて傾斜状にスライドする。
【0077】
この結果、センターフィン12を下方へと最大回動させた状態、すなわち最大下振り状態では、図2に示すように、センターフィン12のセンターフィン本体37が前方下側に例えば33°程度傾斜しており、ロワーフィン13は、吹出口32の中心側へと最大に進出した位置、すなわちガイド面28の後端に位置しており、ブラインド15は、前方下側へと若干傾斜してロワーフィン13の下側屈曲部41bの前端側の上部を覆い、主案内面15eが吹出口32の傾斜縁部32cに沿い、副案内面15fがロワーフィン13の傾斜面41dとほぼ平行で、かつ、この傾斜面41dとほぼ同一面上に位置し、アッパーフィン14は、吹出口32の中心側に対して最大に退避した位置、すなわちガイド面29の前端でかつ吹出口32の上側の第2縁部32b近傍の本体部31の背面側に隠れた位置となり、傾斜面部44cがセンターフィン本体37の他方の整流面37bとほぼ平行となっている。
【0078】
そして、導入口25からエア通路24へと流入した風は、リアフィン18により整流されつつ、センターフィン12よりも下側では、ロワーフィン13の傾斜面41d及びブラインド15の副案内面15fに沿ってセンターフィン12の一方の整流面37aへと整流され、この一方の整流面37aとブラインド15の主案内面15eとの間で流量が絞られて流速が増した状態でこれら一方の整流面37aと主案内面15eとに沿い、センターフィン12よりも上側では、センターフィン12の他方の整流面37bとアッパーフィン14の傾斜面部44cとの間で流量が絞られて流速が増した状態でこれら他方の整流面37bと傾斜面部44cとに沿い、吹出口32から前方下側に例えば33°程度傾斜した方向へと吹き出すように風向調整される(図6(b))。
【0079】
さらに、例えばノブ20を用いてセンターフィン12を下流側である前部が相対的に上方(他方向)に向くように回動させると、このセンターフィン12と連結されたプレート17,17がセンターフィン12と同方向に同角度回動する。このため、これらプレート17,17の作用溝68にスライド軸42bが挿入されたロワーフィン13が、作用溝68の形状にしたがって徐々に前方へと移動され、スライド溝56bの形状、スライドポケット56と下側スライド部42との形状、ガイドリブ56aと下側被ガイド部41cとの形状、及びガイド面28の形状などにより、ロワーフィン13はガイド面28に沿うように前方下側へと、すなわち吹出口32の中心側に対して退避して傾斜面41dが吹出口32の中心側に対して離間するように、換言すれば吹出口32の下側の第2縁部32b側へとガイドされて傾斜状にスライドする。また、ブラインド15は、ロワーフィン13の下側スライド部42のスライドにより、この下側スライド部42のカム溝42cの形状にしたがって後端側、すなわちロワーフィン13側が徐々に後方下側へと下降するように、センターフィン本体37とほぼ平行な状態を保ちつつ回動する。さらに、プレート17,17の作用溝69にスライド軸部45bが挿入されたアッパーフィン14は、作用溝69の形状にしたがって徐々に後方へと移動され、スライド溝部57bの形状、スライドポケット57と上側スライド部45との形状、ガイドリブ部57aと上側被ガイド部44bとの形状、及びガイド面29の形状などにより、アッパーフィン14はガイド面29に沿うように後方下側へと、すなわち吹出口32の中心側に進出して傾斜面部44cが吹出口32の中心側に接近するようにガイドされて傾斜状にスライドする。
【0080】
この結果、センターフィン12を上方へと最大回動させた状態、すなわち最大上振り状態では、図3に示すように、センターフィン12のセンターフィン本体37が前方上側に例えば27°程度傾斜しており、ロワーフィン13は、吹出口32の中心側に対して最大に退避した位置、すなわちガイド面28の前端でかつ吹出口32の下側の第2縁部32b近傍の本体部31の背面側に隠れた位置となり、ブラインド15は、後方上側へとセンターフィン12のセンターフィン本体37とほぼ平行となるように傾斜してロワーフィン13の下側屈曲部41bの前端側の上部を覆い、後側案内部15bがロワーフィン13の下側屈曲部41bと下側傾斜部41aとの段差に位置し、主案内面15eがセンターフィン本体37の一方の整流面37a及びロワーフィン13の傾斜面41dとほぼ平行で、かつ、この傾斜面41dとほぼ同一面上に位置し、アッパーフィン14は、吹出口32の中心側へと最大に突出した位置、すなわちガイド面29の後端に位置する。
【0081】
そして、導入口25からエア通路24へと流入した風は、リアフィン18により整流されつつ、センターフィン12よりも下側では、センターフィン12の一方の整流面37aとロワーフィン13の傾斜面41d及びブラインド15の主案内面15eとの間で流量が絞られて流速が増した状態でこれら一方の整流面37aと傾斜面41d及び主案内面15eとに沿い、センターフィン12よりも上側では、アッパーフィン14の傾斜面部44cに沿ってセンターフィン12の他方の整流面37bへと整流され、これら他方の整流面37bと傾斜面部44cとの間で流量が絞られて流速が増した状態でこれら他方の整流面37bと傾斜面部44cとに沿い、吹出口32から後方上側に例えば27°程度傾斜した方向へと吹き出すように風向調整される(図6(c))。
【0082】
このように、本実施の形態によれば、吹出口32の下側の第2縁部32b側に配置されたロワーフィン13が、センターフィン12の回動に対応して吹出口32の中央側に対して傾斜面41dが接近、あるいは離間するように進退することで、センターフィン12を下方向及び上方向のいずれの方向に回動させても、ロワーフィン13の吹出口32の中央側への進退に伴う傾斜面41dの接近あるいは離間によって、配風性能を確保でき、センターフィン12の回動角(振り角)と同等の風軸角に指向させることができる。
【0083】
また、ロワーフィン13の傾斜面41dが吹出口32の中央側に対して離間した位置では、吹出口32側からロワーフィン13が目視されにくくなり、見栄えを向上できる。
【0084】
さらに、ロワーフィン13が、センターフィン12の回動に対応して吹出口32の中央側に対して進退するとともに、ロワーフィン13と吹出口32の下側の第2縁部32bとの間を覆うブラインド15が、センターフィン12の回動に伴うロワーフィン13の進退に対応してセンターフィン12に主案内面15eが沿うように回動(移動)することで、センターフィン12を下方向及び上方向のいずれの方向に回動させても、ロワーフィン13の吹出口32の中央側への進退及びブラインド15の回動(移動)によって、配風性能をより向上できる。特に、ロワーフィン13が吹出口32の中央側に進出した際、ブラインド15の副案内面15fがロワーフィン13の傾斜面41dに沿い、この副案内面15fに連続する主案内面15eがセンターフィン12の一方の整流面37aに沿うので、ロワーフィン13の傾斜面41dから吹出口32へと円滑に風を案内して、傾斜面41dの前端部に気流の渦が発生することを抑制でき、配風性能をより向上できる(図6(a)ないし図6(c))。
【0085】
また、ロワーフィン13は、吹出口32側がブラインド15によって覆われているので、通路部11を通過する風の上流側に向けて傾斜した傾斜面41dを備えるロワーフィン13がセンターフィン12の下方向への回動に対応して吹出口32の中央側に対して進出しても、ロワーフィン13の背面側が吹出口32側に露出することがなく、見栄えを向上できる。特に、一般的な乗員は、風向調整装置10に対して上方の位置に視点を有するため、吹出口32の内部の下側が見えやすくなるので、吹出口32の下側に位置するロワーフィン13をブラインド15により覆ってこのロワーフィン13の背面側を吹出口32側に露出させないため、見栄えを確保できる。なお、風向調整装置10を例えばオーバーヘッドコンソールなどの乗員に対して相対的に上方の(高い)位置に取り付ける場合には、乗員が風向調整装置10に対して下方の位置に視点を有するため、吹出口32の内部の上側が見えやすくなるので、ブラインド15をアッパーフィン14側に配置することで、同様の作用効果を奏することができることは言うまでもない。すなわち、ブラインド15は、乗員と風向調整装置10との上下の位置関係に応じて、ロワーフィン13側に配置するかアッパーフィン14側に配置するかを任意に設定できる。
【0086】
さらに、吹出口32の上側の第2縁部32b、すなわちセンターフィン12(及び吹出口32の中央部)に対してロワーフィン13と反対側に位置するアッパーフィン14が、通路部11を通過する風の上流側に向けて傾斜した傾斜面部44cを備えるとともに、このアッパーフィン14が、センターフィン12の回動に連動して、吹出口32の中央側に対してロワーフィン13と逆方向に傾斜面部44cが離間あるいは接近するように進退する、換言すれば、ロワーフィン13の傾斜面41dとアッパーフィン14の傾斜面部44cとは、一方が吹出口32の中央側に対して接近した状態で他方が吹出口32の中央側に対して離間するので、これらロワーフィン13、アッパーフィン14及びブラインド15によって、センターフィン12の回動方向に拘らずセンターフィン12の回動角と同等の風軸角に指向させることができ、配風性能をより向上できる。
【0087】
したがって、センターフィン12の回動角(振り角)に対応してロワーフィン13及びアッパーフィン14が最適な位置に移動し、センターフィン12の任意の回動角(振り角)に対応して指向可能な風向調整装置10を提供できる。
【0088】
そして、センターフィン12を回動させると、このセンターフィン12と一体的にプレート17,17が回動してロワーフィン13を移動させ、このロワーフィン13の移動方向がスペーサ16,16により吹出口32の中央側に対して進退する方向にガイドされることで、ロワーフィン13に設けたカム溝42cが、ブラインド15の主案内面15eがセンターフィン12での風向に沿うようにブラインド15を回動させるため、センターフィン12の回動に連動するロワーフィン13の進退に対応してこのセンターフィン12に主案内面15eが沿うようにブラインド15が回動(移動)する構成を容易に形成できる。
【0089】
次に、第2の実施の形態を図7ないし図11を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用効果については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0090】
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態のアッパーフィン14に代えて、図7ないし図10に示すように、偏向羽根部としてのアッパーフィン81が配置されているとともに、このアッパーフィン81と吹出口32の上側の第2縁部32bとの間に、補助羽根部としてのアッパーブラインド82が配置されているものである。なお、図7ないし図9においては、発明をより明確に示すために構成の一部を省略する。
【0091】
アッパーフィン81は、左右方向に沿って長尺板状に形成された偏向羽根部本体としてのアッパーフィン本体84と、このアッパーフィン本体84の両側に設けられた(他方の)スライド部としての上側スライド部85(一方のみ図示)とを一体に有しており、ケース体22内(エア通路24中)にて、吹出口32の上側の第2縁部32bの後方に離間された位置に配置されている。
【0092】
アッパーフィン本体84は、後側下方に向けて傾斜した(他方の)傾斜部としての上側傾斜部84aと、この上側傾斜部84aの後端部に連続する(他方の)被ガイド部としての上側被ガイド部84bとを一体に備えている。
【0093】
上側傾斜部84aの下面は、ケース体22内のエア通路24を通過する風の上流側に向けて傾斜した傾斜面部84cとなっており、エア通路24を通過する風を後方下側へと案内するように構成されている。この傾斜面部84cは、例えばケース体22のガイド面28とほぼ平行となっている。
【0094】
上側被ガイド部84bは、上側傾斜部84aの後端部に対して後方へと湾曲しており、ガイド面29に対向する上面が、このガイド面29に摺接するように配置されている。
【0095】
また、各上側スライド部85は、アッパーフィン本体84に対して直交する方向である前後方向に沿って板状に形成されている。各上側スライド部85の外部、すなわちアッパーフィン本体84に対して反対側には、アッパーフィン81をスペーサ16によりガイドするためのガイド突出部85a,85aが前側の上下に突設されているとともに、下側のガイド突出部85aの下方に、アッパーフィン81を、各スペーサ16を介して各プレート17に接続するための円柱状のスライド軸部85bが突設されている。さらに、各上側スライド部85には、アッパーフィン81とアッパーブラインド82とを接続するための補助羽根部回動部としてのカム溝85cが設けられている。このカム溝85cは、上側スライド部85の上側から下側後部へと湾曲して形成されている。
【0096】
また、アッパーブラインド82は、左右方向に沿って長尺板状に形成されており、ケース体22内(エア通路24中)にて、吹出口32の上側の第2縁部32bの後方からアッパーフィン81の前端側に亘って配置されている。このアッパーブラインド82は、(他方の)主案内部としての(他方の)第1案内部である平板状の前側案内部82aと、この前側案内部82aの後端部に下方に向けて屈曲状に連続する(他方の)副案内部としての(他方の)第2案内部である後側案内部82bとを一体に備えている。さらに、このアッパーブラインド82の両側には、このアッパーブラインド82を各スペーサ16に対して回動可能に軸支するための円柱状の(他方の)回動軸82cが前側の位置に突設されているとともに、アッパーフィン81のカム溝85cに挿入される円柱状の(他方の)挿入スライド軸82dが後側の位置に突設されている。
【0097】
前側案内部82aの上面は、ケース体22内のエア通路24を通過する風を案内する案内面部としての主案内面部82eとなっている。
【0098】
また、後側案内部82bの上面は、ケース体22内のエア通路24を通過する風を案内する副案内面部82fとなっている。
【0099】
さらに、回動軸82cは、各スペーサ16の上側のスライドポケット57の前部に凹設された(他方の)軸穴87に挿入接続されることで、アッパーブラインド82がスペーサ16,16に対して回動可能に軸支される。
【0100】
この第2の実施の形態において、風向調整装置10を組み立てる際には、上記第1の実施の形態と同様に、一方のスペーサ16の上側のスライドポケット57において、スライド溝部57bにアッパーフィン81の一方の上側スライド部85のスライド軸部85bを内方から挿入係合し、アッパーフィン81の一方の上側スライド部85のカム溝85cに対して、アッパーブラインド82の挿入スライド軸82dを内方から、一方のスペーサ16とアッパーブラインド82の一側との間に上側スライド部85を挟み込むように挿入係合して、このアッパーブラインド82の回動軸82cを、一方のスペーサ16の軸穴87に挿入接続する。ロワーフィン13及びブラインド15については、上記第1の実施の形態と同様に一方のスペーサ16に対して接続する。
【0101】
さらに、他方のスペーサ16についても上記一方のスペーサ16と同様にロワーフィン13、アッパーフィン81、ブラインド15及びアッパーブラインド82を接続する。
【0102】
そして、これら一体的となったスペーサ16,16、ロワーフィン13、アッパーフィン81、ブラインド15及びアッパーブラインド82を、リアフィン18を取り付けたケース体22の開口部26から、スライド軸42b及び挿入ガイド53を挿入溝51に対して位置合わせし、スライド軸部85b及び挿入ガイド54を挿入溝52に対して位置合わせした状態で、後方へと挿入して組み付ける。この状態で、各スペーサ16のスライド溝56b、スライド溝部57b及び軸受凹部59が、ケース体22の溝部61、溝部63及びU字溝部65とそれぞれ位置合わせされ、スライド溝56b及びスライド溝部57bから外方へと突出するスライド軸42b及びスライド軸部85bは、それぞれ溝部61及び溝部63からケース体22の外側方へと突出する。
【0103】
この後、上記第1の実施の形態と同様に、予めノブ20を取り付けたセンターフィン12の各接続軸38の軸部38aを、軸受凹部59及びU字溝部65に仮置きし、ケース体22の外側方から各プレート17を、各挿入穴67を各接続凸部38bに対して嵌合させるように取り付け、フィニッシャ23をケース体22に組み付けて、風向調整装置10が完成する。
【0104】
そして、センターフィン12が中立位置、すなわちニュートラルの状態では、図7に示すように、センターフィン12のセンターフィン本体37がほぼ水平(例えば後方下側に3°程度傾斜した状態)となっている。このとき、ロワーフィン13は、ガイド面28の前後方向の中間位置に位置している。また、ブラインド15は、ロワーフィン13の下側屈曲部41bの後端側の上部を覆い、主案内面15eがセンターフィン本体37の一方の整流面37aとほぼ平行となっており、副案内面15fがロワーフィン13の傾斜面41dに沿っている。また、アッパーフィン81は、ガイド面29の前後方向の中間位置に位置している。また、アッパーブラインド82は、アッパーフィン81の上側傾斜部84aの下部を覆い、主案内面部82eがセンターフィン本体37の他方の整流面37bとほぼ平行となっている。
【0105】
そして、導入口25からエア通路24へと流入した風は、リアフィン18により整流されつつ、センターフィン12よりも下側では、センターフィン12の一方の整流面37aとロワーフィン13の傾斜面41d及びブラインド15の副案内面15fとの間で流量が絞られて流速が増した状態で一方の整流面37aとブラインド15の主案内面15eとに沿い、センターフィン12よりも上側では、センターフィン12の他方の整流面37bとアッパーブラインド82の主案内面部82eとの間で流量が絞られて流速が増した状態でこれら他方の整流面37bと主案内面部82eとに沿い、吹出口32から後方へとほぼ水平な方向(例えば後方下側に3°程度傾斜した方向)へと吹き出すように風向調整される(図11(a))。なお、図11においては、風を矢印で示しており、濃い色調の箇所ほど風速が大きい位置となっている。
【0106】
また、例えばノブ20を用いてセンターフィン12を下流側である後部が相対的に下方(一方向)に向くように回動させると、このセンターフィン12と連結されたプレート17,17がセンターフィン12と同方向に同角度回動する。このため、これらプレート17,17の作用溝68にスライド軸42bが挿入されたロワーフィン13が、作用溝68の形状にしたがって徐々に後方へと移動され、スライド溝56bの形状、スライドポケット56と下側スライド部42との形状、ガイドリブ56aと下側被ガイド部41cとの形状、及びガイド面28の形状などにより、ロワーフィン13はガイド面28に沿うように後方上側へと、すなわち吹出口32の中心側へと進出するようにガイドされて傾斜状にスライドする。また、ブラインド15は、ロワーフィン13の下側スライド部42のスライドにより、この下側スライド部42のカム溝42cの形状にしたがって後端側、すなわちロワーフィン13側が徐々に前方上側へと上昇するように、センターフィン本体37とほぼ平行な状態を保ちつつ回動する。さらに、プレート17,17の作用溝69にスライド軸部85bが挿入されたアッパーフィン81は、作用溝69の形状にしたがって徐々に前方へと移動され、スライド溝部57bの形状、スライドポケット57と上側スライド部85との形状、ガイドリブ部57aと上側被ガイド部84bとの形状、及びガイド面29の形状などにより、アッパーフィン81はガイド面29に沿うように前方上側へと、すなわち吹出口32の中心側に対して退避するように、換言すれば吹出口32の上側の第2縁部32b側へとガイドされて傾斜状にスライドする。また、アッパーブラインド82は、アッパーフィン81の上側スライド部85のスライドにより、この上側スライド部85のカム溝85cの形状にしたがって後端側、すなわちアッパーフィン81側が徐々に前方上側へと上昇するように、センターフィン本体37とほぼ平行な状態を保ちつつ回動する。
【0107】
この結果、センターフィン12を下方へと最大回動させた状態、すなわち最大下振り状態では、図8に示すように、センターフィン12のセンターフィン本体37が前方下側に例えば31°程度傾斜しており、ロワーフィン13は、吹出口32の中心側へと最大に進出した位置、すなわちガイド面28の後端に位置しており、ブラインド15は、前方下側へと若干傾斜してロワーフィン13の下側屈曲部41bの前端側の上部を覆い、主案内面15eが吹出口32の傾斜縁部32cに沿い、副案内面15fがロワーフィン13の傾斜面41dとほぼ平行で、かつ、この傾斜面41dとほぼ同一面上に位置し、アッパーフィン81は、吹出口32の中心側に対して最大に退避した位置、すなわちガイド面29の前端でかつ吹出口32の上側の第2縁部32b近傍の本体部31の背面側に隠れた位置となり、アッパーブラインド82は、前方下側へと傾斜してアッパーフィン81の上側傾斜部84aの下部を覆い、主案内面部82eがセンターフィン本体37の他方の整流面37bとほぼ平行となっている。
【0108】
そして、導入口25からエア通路24へと流入した風は、リアフィン18により整流されつつ、センターフィン12よりも下側では、ロワーフィン13の傾斜面41d及びブラインド15の副案内面15fに沿ってセンターフィン12の一方の整流面37aへと整流され、この一方の整流面37aとブラインド15の主案内面15eとの間で流量が絞られて流速が増した状態でこれら一方の整流面37aと主案内面15eとに沿い、センターフィン12よりも上側では、センターフィン12の他方の整流面37bとアッパーブラインド82の主案内面部82eとの間で流量が絞られて流速が増した状態でこれら他方の整流面37bと主案内面部82eとに沿い、吹出口32から前方下側に例えば31°程度傾斜した方向へと吹き出すように風向調整される(図11(b))。
【0109】
さらに、例えばノブ20を用いてセンターフィン12を下流側である前部が相対的に上方(他方向)に向くように回動させると、このセンターフィン12と連結されたプレート17,17がセンターフィン12と同方向に同角度回動する。このため、これらプレート17,17の作用溝68にスライド軸42bが挿入されたロワーフィン13が、作用溝68の形状にしたがって徐々に前方へと移動され、スライド溝56bの形状、スライドポケット56と下側スライド部42との形状、ガイドリブ56aと下側被ガイド部41cとの形状、及びガイド面28の形状などにより、ロワーフィン13はガイド面28に沿うように前方下側へと、すなわち吹出口32の中心側に対して退避するように、換言すれば吹出口32の下側の第2縁部32b側へとガイドされて傾斜状にスライドする。また、ブラインド15は、ロワーフィン13の下側スライド部42のスライドにより、この下側スライド部42のカム溝42cの形状にしたがって後端側、すなわちロワーフィン13側が徐々に後方下側へと下降するように、センターフィン本体37とほぼ平行な状態を保ちつつ回動する。さらに、プレート17,17の作用溝69にスライド軸部45bが挿入されたアッパーフィン81は、作用溝69の形状にしたがって徐々に後方へと移動され、スライド溝部57bの形状、スライドポケット57と上側スライド部85との形状、ガイドリブ部57aと上側被ガイド部84bとの形状、及びガイド面29の形状などにより、アッパーフィン81はガイド面29に沿うように後方下側へと、すなわち吹出口32の中心側に進出するようにガイドされて傾斜状にスライドする。また、アッパーブラインド82は、アッパーフィン81の上側スライド部85のスライドにより、この上側スライド部85のカム溝85cの形状にしたがって後端側、すなわちアッパーフィン81側が徐々に後方下側へと下降するように、センターフィン本体37とほぼ平行な状態を保ちつつ回動する。
【0110】
この結果、センターフィン12を上方へと最大回動させた状態、すなわち最大上振り状態では、図9に示すように、センターフィン12のセンターフィン本体37が前方上側に例えば26°程度傾斜しており、ロワーフィン13は、吹出口32の中心側に対して最大に退避した位置、すなわちガイド面28の前端でかつ吹出口32の下側の第2縁部32b近傍の本体部31の背面側に隠れた位置となり、ブラインド15は、前方上側へとセンターフィン12のセンターフィン本体37とほぼ平行となるように傾斜してロワーフィン13の下側屈曲部41bの前端側の上部を覆い、後側案内部15bがロワーフィン13の下側屈曲部41bと下側傾斜部41aとの段差に位置し、主案内面15eがロワーフィン13の傾斜面41dとほぼ平行で、かつ、この傾斜面41dとほぼ同一面上に位置し、アッパーフィン81は、吹出口32の中心側へと最大に突出した位置、すなわちガイド面29の後端に位置し、アッパーブラインド82は、前方上側へとセンターフィン12のセンターフィン本体37とほぼ平行となるように傾斜してアッパーフィン81の上側傾斜部84aの前端側の下部を覆い、主案内面部82eがセンターフィン本体37の他方の整流面37bと平行となり、副案内面部82fがアッパーフィン81の傾斜面部84cの下方にて、この傾斜面部84cに沿っている。
【0111】
そして、導入口25からエア通路24へと流入した風は、リアフィン18により整流されつつ、センターフィン12よりも下側では、センターフィン12の一方の整流面37aとロワーフィン13の傾斜面41d及びブラインド15の主案内面15eとの間で流量が絞られて流速が増した状態でこれら一方の整流面37aと傾斜面41d及び主案内面15eとに沿い、センターフィン12よりも上側では、アッパーフィン81の傾斜面部84c及びアッパーブラインド82の副案内面部82fに沿ってセンターフィン12の他方の整流面37bへと整流され、この他方の整流面37bとアッパーブラインド82の主案内面部82eとの間で流量が絞られて流速が増した状態でこれら他方の整流面37bと主案内面部82eとに沿い、吹出口32から前方上側に例えば26°程度傾斜した方向へと吹き出すように風向調整される(図11(c))。
【0112】
このように、第2の実施の形態によれば、吹出口32の上側の第2縁部32b側に配置されたアッパーフィン81が、センターフィン12の回動に対応してロワーフィン13と逆方向に吹出口32の中央側に対して傾斜面部84cが離間あるいは接近するように進退するとともに、アッパーフィン81と吹出口32の上側の第2縁部32bとの間を覆うアッパーブラインド82が、センターフィン12の回動に連動するアッパーフィン81の進退に対応して、センターフィン12に主案内面部82eが沿うように回動(移動)することで、センターフィン12を下方向及び上方向のいずれの方向に回動させても、ロワーフィン13及びアッパーフィン81の吹出口32の中央側への互いに逆方向の進退、及び、ブラインド15及びアッパーブラインド82の回動(移動)によって配風性能を確保でき、センターフィン12の回動角(振り角)と同等の風軸角に指向させることができる。特に、ロワーフィン13が吹出口32の中央側に進出した際、ブラインド15の副案内面15fがロワーフィン13の傾斜面41dに沿い、この副案内面15fに連続する主案内面15eがセンターフィン12の一方の整流面37aに沿うので、ロワーフィン13の傾斜面41dから吹出口32へと円滑に風を案内して、傾斜面41dの前端部に気流の渦が発生することを抑制できるとともに、アッパーフィン81が吹出口32の中央側に進出した際、アッパーブラインド82の副案内面部82fがアッパーフィン81の傾斜面部84cに沿い、この副案内面部82fに連続する主案内面部82eがセンターフィン12の他方の整流面37bに沿うので、アッパーフィン81の傾斜面部84cから吹出口32へと円滑に風を案内して、傾斜面部84cの前端部に気流の渦が発生することを抑制でき、配風性能をより向上できる(図11(a)ないし図11(c))。
【0113】
また、アッパーフィン81と吹出口32の上側の第2縁部32bとの間がアッパーブラインド82によって覆われているので、通路部11を通過する風の上流側に向けて傾斜した傾斜面部84cを備えるアッパーフィン81がセンターフィン12の上方向への回動に対応して吹出口32の中央側に対して進出しても、アッパーフィン81の背面側が吹出口32側に露出することがない。したがって、ブラインド15及びアッパーブラインド82により、センターフィン12の回動角に拘らず見栄えをより向上できる。
【0114】
さらに、センターフィン12を回動させると、このセンターフィン12と一体的にプレート17,17が回動してロワーフィン13及びアッパーフィン81を移動させ、これらロワーフィン13及びアッパーフィン81の移動方向がスペーサ16,16により吹出口32の中央側に対して進退する方向にガイドされることで、ロワーフィン13に設けたカム溝42c及びアッパーフィン81に設けたカム溝85cが、ブラインド15の主案内面15e及びアッパーブラインド82の主案内面部82eがセンターフィン12での風向に沿うようにブラインド15及びアッパーブラインド82を回動させるため、センターフィン12の回動に連動するロワーフィン13及びアッパーフィン81の進退に対応してこのセンターフィン12に主案内面15e及び主案内面部82eが沿うようにブラインド15及びアッパーブラインド82が回動(移動)する構成を容易に形成できる。
【0115】
次に、第3の実施の形態を図12ないし図14を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0116】
この第3の実施の形態は、上記第1及び第2の実施の形態のロワーフィン13に代えて、図12ないし図14に示すように、偏向羽根としてのロワーフィン91が回動可能に配置されているとともに、上記第1及び第2の実施の形態のアッパーフィン14,81に代えて、偏向羽根部としてのアッパーフィン92が回動可能に配置されているものである。
【0117】
ロワーフィン91は、左右方向に沿って長尺板状に形成されており、ケース体22内(エア通路24中)にて、吹出口32の下側の第2縁部32bの後方に離間された位置で、かつ、リアフィン18の前方に配置されている。
【0118】
そして、このロワーフィン91は、後側下方に向けて傾斜した(一方の)傾斜部としての下側傾斜部91aと、この下側傾斜部91aの後端部に連続する(一方の)平板部としての下側平板部91bとを一体に備えている。
【0119】
下側傾斜部91aの上面は、ケース体22内のエア通路24を通過する風の上流側すなわち後方に向けて下方に傾斜した傾斜面91cとなっており、エア通路24を通過する風を前方上側へと案内するように構成されている。
【0120】
下側平板部91bは、平板状に形成されているとともに、下側傾斜部91aに対して屈曲状に連続している。また、この下側平板部91bは、左右両側がケース体22の両側に軸支されている。このため、ロワーフィン91は、回動に伴って下側傾斜部91a(傾斜面91c)側が上下方向に移動し、吹出口32の中心側に対して接近あるいは離間(進退)するようになっている。
【0121】
同様に、アッパーフィン92は、左右方向に沿って長尺板状に形成されており、ケース体22内(エア通路24中)にて、吹出口32の上側の第2縁部32bの後方に離間された位置で、かつ、リアフィン18の前方に配置されている。
【0122】
そして、このアッパーフィン92は、後側上方に向けて傾斜した(他方の)傾斜部としての上側傾斜部92aと、この上側傾斜部92aの後端部に連続する(他方の)平板部としての上側平板部92bとを一体に備えている。
【0123】
上側傾斜部92aの下面は、通路部11内のエア通路24を通過する風の上流側に向けて傾斜した傾斜面部92cとなっており、エア通路24を通過する風を前方下側へと案内するように構成されている。
【0124】
上側平板部92bは、平板状に形成されているとともに、上側傾斜部92aに対して屈曲状に連続している。また、この上側平板部92bは、左右両側がケース体22の両側に軸支されている。このため、アッパーフィン92は、回動に伴って上側傾斜部92a(傾斜面部92c)側が上下方向に移動し、吹出口32の中心側に対して接近あるいは離間(進退)するようになっている。
【0125】
そして、これらロワーフィン91とアッパーフィン92とは、センターフィン12と一体的に回動する図示しないカムとしてのプレートなどを介してそれぞれセンターフィン12と連結されており、このセンターフィン12の回動に連動してそれぞれ回動するように構成されている。
【0126】
また、ケース体22の内部には、開口部26に臨んで、すなわちフィニッシャ23の後部に隣接して、スペーサ94が配置されている。このスペーサ94は、前端部がフィニッシャ23の本体部31の背面側に密着した状態でケース体22に取り付けられている。また、このスペーサ94は、吹出口32の下側の第2縁部32bの後部に連続して、後側下方に向けて傾斜した(一方の)整流部としての下側整流部94aを複数備えているとともに、吹出口32の上側の第2縁部32bの後部に連続して、後側上方に向けて傾斜した(他方の)整流部としての上側整流部94bを複数備えている。
【0127】
下側整流部94aは、吹出口32の左右方向に略等間隔に離間されて配置されており、吹出口32の傾斜縁部32cに対して屈曲状に連続している。また、各下側整流部94aの後部の上部には、ロワーフィン91の下側傾斜部91aの先端側である前端側が嵌合する(一方の)切欠嵌合部としての下側切欠嵌合部94cが切り欠き形成されている。
【0128】
上側整流部94bは、吹出口32の左右方向に略等間隔に離間されて配置されており、吹出口32の上側の第2縁部32bに対して屈曲状に連続している。また、各上側整流部94bの後部の下部には、アッパーフィン92の上側傾斜部92aの先端側である前端側が嵌合する(他方の)切欠嵌合部としての上側切欠嵌合部94dが切り欠き形成されている。
【0129】
そして、センターフィン12が中立位置、すなわちニュートラルの状態では、センターフィン12のセンターフィン本体37がほぼ水平となっている。このとき、ロワーフィン91は、下側平板部91bがケース体22内の下面から上方へと若干離間され、下側傾斜部91aの先端部が吹出口32の下側の第2縁部32bとほぼ同一面上に位置する。同様に、アッパーフィン92は、上側平板部92bがケース体22内の上面から下方へと若干離間され、上側傾斜部92aの先端部が吹出口32の上側の第2縁部32bとほぼ同一面上に位置する(図12)。したがって、ロワーフィン91及びアッパーフィン92は、センターフィン12の正面方向、すなわち整流面37a,37bに平行な方向から目視しにくくなっている。
【0130】
そして、導入口25からエア通路24へと流入した風は、リアフィン18により整流されつつ、センターフィン12よりも下側では、ロワーフィン91の下側傾斜部91aの先端側がセンターフィン12の一方の整流面37aに対向し、この一方の整流面37aとロワーフィン91の傾斜面91cとの間で流量が絞られて流速が増した状態で一方の整流面37aに沿い、センターフィン12よりも上側では、センターフィン12の他方の整流面37bとアッパーフィン92の傾斜面部92cとの間で流量が絞られて流速が増した状態で他方の整流面37bに沿い、吹出口32から前方へとほぼ水平な方向へと吹き出すように風向調整される。
【0131】
また、例えばノブ20を用いてセンターフィン12を下流側である前部が相対的に下方(一方向)に向くように回動させると、リンク機構によって、ロワーフィン91が徐々に上方へと回動し、傾斜面91cが吹出口32の中心側へと接近し、かつ、アッパーフィン92が徐々に上方へと回動し、傾斜面部92cが吹出口32の中心側に対して離間されて上側傾斜部92aが上側切欠嵌合部94dに嵌合するとともに、上側平板部92bがケース体22の上面に当接する(図13)。
【0132】
この結果、センターフィン12を下方へと最大回動させた状態、すなわち最大下振り状態では、センターフィン12のセンターフィン本体37が前方下側に傾斜しており、ロワーフィン91は、吹出口32の中心側へと傾斜面91cが最大に接近した位置となり、アッパーフィン92は、吹出口32の中心側に対して傾斜面部92cが最大に離間した位置となり、傾斜面部92cが上側整流部94bに対して略面一に連続する。この状態で、ロワーフィン91の下側傾斜部91aの先端側は、吹出口32の下側の第2縁部32bよりも若干上方に位置するものの、センターフィン12の正面方向、すなわちこのセンターフィン12の整流面37a,37bに対して平行な方向から見たときには、ロワーフィン91の下側傾斜部91aの先端側は傾斜縁部32cとほぼ同一面上となっており、アッパーフィン92は吹出口32の上側の第2縁部32bよりも上方のフィニッシャ23の本体部31の背面側に隠れている。したがって、ロワーフィン91及びアッパーフィン92は、センターフィン12の正面方向から目視しにくくなっている。
【0133】
そして、導入口25からエア通路24へと流入した風は、リアフィン18により整流されつつ、センターフィン12よりも下側では、ロワーフィン91の傾斜面91cに沿ってセンターフィン12の一方の整流面37aに向けて集められて整流され、この一方の整流面37aとロワーフィン91の傾斜面91cとの間で流量が絞られて流速が増した状態で一方の整流面37aに沿い、センターフィン12よりも上側では、アッパーフィン92の上側傾斜部92aの先端側がセンターフィン12の他方の整流面37bに対向し、この他方の整流面37bとアッパーフィン92の傾斜面部92c及び上側整流部94bとの間で流量が絞られて流速が増した状態でこれら他方の整流面37b、傾斜面部92c及び上側整流部94bに沿い、吹出口32から前方下側に傾斜した方向へと吹き出すように風向調整される。
【0134】
さらに、例えばノブ20を用いてセンターフィン12を下流側である前部が相対的に上方(他方向)に向くように回動させると、リンク機構によって、ロワーフィン91が徐々に下方へと回動し、傾斜面91cが吹出口32の中心側に対して離間されて下側傾斜部91aが下側切欠嵌合部94cに嵌合するとともに、下側平板部91bがケース体22の下面に当接し、かつ、アッパーフィン92が徐々に下方へと回動し、傾斜面部92cが吹出口32の中心側へと接近する(図14)。
【0135】
この結果、センターフィン12を上方へと最大回動させた状態、すなわち最大上振り状態では、センターフィン12のセンターフィン本体37が前方上側に傾斜しており、ロワーフィン91は、吹出口32の中心側に対して傾斜面91cが最大に離間した位置となり、傾斜面91cが下側整流部94aに対して略面一に連続するとともに、アッパーフィン92は、吹出口32の中心側へと最大に突出した位置となる。この状態で、ロワーフィン91は吹出口32の下側の第2縁部32bよりも下方のフィニッシャ23の本体部31の背面側に隠れており、アッパーフィン92の上側傾斜部92aの先端側は、吹出口32の上側の第2縁部32bよりも若干下方に位置するものの、センターフィン12の正面方向、すなわちこのセンターフィン12の整流面37a,37bに対して平行な方向から見たときには、アッパーフィン92の上側傾斜部92aの先端側は上側の第2縁部32bとほぼ同一面上となっている。したがって、ロワーフィン91及びアッパーフィン92は、センターフィン12の正面方向、すなわち整流面37a,37bに平行な方向から目視しにくくなっている。
【0136】
そして、導入口25からエア通路24へと流入した風は、リアフィン18により整流されつつ、センターフィン12よりも下側では、センターフィン12の一方の整流面37aとロワーフィン91の傾斜面91c及び下側整流部94aとの間で流量が絞られて流速が増した状態でこれら一方の整流面37aと傾斜面91c及び下側整流部94aとに沿い、センターフィン12よりも上側では、アッパーフィン92の傾斜面部92cに沿ってセンターフィン12の他方の整流面37bに向けて集められて整流され、これら他方の整流面37bと傾斜面部92cとの間で流量が絞られて流速が増した状態でこれら他方の整流面37bと傾斜面部92cとに沿い、吹出口32から後方上側に傾斜した方向へと吹き出すように風向調整される。
【0137】
このように、第3の実施の形態によれば、吹出口32の下側の第2縁部32b側に配置されたロワーフィン91が、センターフィン12の回動に対応して吹出口32の中央側に対して傾斜面91cが接近、あるいは離間するように回動することで、センターフィン12を下方向及び上方向のいずれの方向に回動させても、ロワーフィン91の吹出口32の中央側への進退に伴う傾斜面91cの接近あるいは離間によって、配風性能を確保でき、センターフィン12の回動角(振り角)と同等の風軸角に指向させることができるなど、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を、より簡単な構成で奏することができる。
【0138】
また、ロワーフィン91の傾斜面91cが吹出口32の中央側に対して離間した位置に回動した状態では吹出口32側からロワーフィン91が目視されにくくなり、見栄えをより向上できる。
【0139】
さらに、吹出口32の上側の第2縁部32b側に配置されたアッパーフィン92が、センターフィン12の回動に対応してロワーフィン91と逆方向に吹出口32の中央側に対して傾斜面部92cが接近あるいは離間するように回動することで、センターフィン12を上方向及び下方向へと回動させても、ロワーフィン91及びアッパーフィン92の吹出口32の中央側への互いに逆方向の回動によって配風性能をより向上できるとともに、アッパーフィン92の傾斜面部92cが吹出口32の中央側に対して離間するように退避した位置では吹出口32側からアッパーフィン92が目視されにくくなり、見栄えをより向上できる。
【0140】
しかも、センターフィン12をどの位置とした場合でも、センターフィン12の正面方向からはほぼセンターフィン12のみしか見えない状態となるので、見栄えが極めて良好である。
【0141】
そして、センターフィン12の任意の回動角(振り角)に対応して指向可能な風向調整装置10を、ロワーフィン91及びアッパーフィン92のみで簡単に構成できるため、通路部11(ケース体22の内部など)のスペースを必要以上に取らずに済み、吹出口32の上下方向と左右方向との長さ比、すなわちアスペクト比を大きく取った、換言すれば、左右方向の長さに対して上下方向を短く設定したスリムな形状としつつ、充分な指向性を備えた風向調整装置10を提供できる。したがって、この風向調整装置10を配置する自動車などのレイアウトの選択幅を広げることができる。
【0142】
なお、上記の各実施の形態において、センターフィン12はノブ20を用いて手動で回動させる構成としたが、例えばプレート17にギヤ部を設けてモータなどの駆動手段に歯合させることにより、プレート17を介してセンターフィン12の回動を自動制御するように構成してもよい。
【0143】
また、吹出口32は、例えば楕円形状など、互いに対向する第2縁部を備える任意の形状とすることができる。
【0144】
さらに、風向調整装置10は、車両用に限らず、任意の空調装置などの風向の調整に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0146】
10 風向調整装置
11 通路部
12 風向調整羽根としてのセンターフィン
13,91 偏向羽根としてのロワーフィン
15 補助羽根としてのブラインド
15e 案内面としての主案内面
16 ガイド部としてのスペーサ
17 カムとしてのプレート
25 受け入れ部としての導入口
32 吹出口
32b 縁部としての第2縁部
41d,91c 傾斜面
42c 補助羽根回動部としてのカム溝
81,92 偏向羽根部としてのアッパーフィン
82 補助羽根部としてのアッパーブラインド
82e 案内面部としての主案内面部
84c,92c 傾斜面部
85c 補助羽根部回動部としてのカム溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風を受け入れる受け入れ部を備えるとともに、互いに対向する一対の縁部を有し前記受け入れ部に受け入れた風を吹き出す吹出口を備えた通路部と、
前記一対の縁部に交差する方向に軸支されて前記吹出口に臨んで回動可能に配置され、一方向への回動により一方の前記縁部側へと風向を調整し、この一方向と反対方向である他方向への回動により他方の前記縁部側へと風向を調整する風向調整羽根と、
前記通路部内の一方の前記縁部側に配置され、前記通路部内を通過する風の上流側に向けて傾斜した傾斜面を備え、前記風向調整羽根の一方向への回動に対応して前記吹出口の中央側へと前記傾斜面が接近し、前記風向調整羽根の他方向への回動に対応して前記吹出口の中央側に対して前記傾斜面が離間するように動作する偏向羽根と
を具備したことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
偏向羽根は、通路部内に移動可能に配置され、風向調整羽根の一方向への回動に対応して吹出口の中央側に進出するとともに、前記風向調整羽根の他方向への回動に対応して前記吹出口の中央側に対して退避し、
風を案内する案内面を備え、一方の縁部と前記偏向羽根との間を覆い、この偏向羽根の進退に対応して前記案内面が風向調整羽根に沿うように移動する補助羽根を具備した
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
風向調整羽根と一体的に回動可能に設けられ、回動により偏向羽根を移動させるカムと、
このカムによる前記偏向羽根の移動方向を吹出口の中央側に対して進退する方向にガイドするガイド部と、
前記偏向羽根に設けられ、この偏向羽根の移動が前記ガイド部によりガイドされることで案内面が前記風向調整羽根に沿うように補助羽根を回動させる補助羽根回動部と
を具備したことを特徴とする請求項2記載の風向調整装置。
【請求項4】
通路部内の他方の縁部側に移動可能に配置され、前記通路部内を通過する風の上流側に向けて傾斜した傾斜面部を備え、風向調整羽根の他方向への回動に対応して吹出口の中央側へと前記傾斜面部が接近するように進出し、前記風向調整羽根の一方向への回動に対応して前記吹出口の中央側に対して前記傾斜面部が離間するように退避する偏向羽根部
を具備したことを特徴とする請求項2または3記載の風向調整装置。
【請求項5】
案内面部を備え、他方の縁部と偏向羽根部との間を覆い、この偏向羽根部の進退に対応して前記案内面部が風向調整羽根に沿うように移動する補助羽根部
を具備したことを特徴とする請求項4記載の風向調整装置。
【請求項6】
風向調整羽根と一体的に回動可能に設けられ、回動により偏向羽根及び偏向羽根部を移動させるカムと、
このカムによる前記偏向羽根及び前記偏向羽根部の移動方向をそれぞれ吹出口の中央側に対して進退する方向にガイドするガイド部と、
前記偏向羽根に設けられ、この偏向羽根の移動が前記ガイド部によりガイドされることで案内面が前記風向調整羽根に沿うように補助羽根を回動させる補助羽根回動部と、
前記偏向羽根部に設けられ、この偏向羽根部の移動が前記ガイド部によりガイドされることで案内面部が前記風向調整羽根に沿うように補助羽根部を回動させる補助羽根部回動部と
を具備したことを特徴とする請求項5記載の風向調整装置。
【請求項7】
偏向羽根は、通路部内に回動可能に配置され、風向調整羽根の一方向への回動に対応して吹出口の中央側へと傾斜面側が接近するように回動するとともに、前記風向調整羽根の他方向への回動に対応して前記吹出口の中央側に対して前記傾斜面側が離間するように回動する
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項8】
通路部内の他方の縁部側に回動可能に配置され、前記通路部内を通過する風の上流側に向けて傾斜した傾斜面部を備え、風向調整羽根の他方向への回動に対応して吹出口の中央側へと前記傾斜面部が接近するように回動するとともに、前記風向調整羽根の一方向への回動に対応して前記吹出口の中央側に対して前記傾斜面部が離間するように回動する偏向羽根部
を具備したことを特徴とする請求項7記載の風向調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図6】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−6587(P2013−6587A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−99001(P2012−99001)
【出願日】平成24年4月24日(2012.4.24)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】