説明

風車ヨー・システムおよび風車ヨー・システムを制御する方法

【課題】ヨー・システム内の駆動ユニットにわたってより均一に負荷を分散すること可能にする風車ヨー・システムを提供する。
【解決手段】ヨー・ギヤ(11)と、少なくとも2つのピニオンギヤ(13)と、少なくとも2つの駆動ユニット(23)と、制御システムとが設けられている風車ヨー・システムにおいて、制御システムが、各駆動ユニット(23)のための少なくとも1つのフィードバックループを有しており、該フィードバックループが、少なくともそれぞれの駆動ユニット(23)の1つの運転パラメータの実際値を含む少なくとも1つの駆動ユニットフィードバック信号を制御器(25)にフィードバックし、制御器(25)が、基準信号と、フィードバック信号とに基づいて駆動ユニット制御信号を発生させるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車ヨー・システムであって、ヨー・ギヤと、少なくとも2つのピニオンギヤと、少なくとも2つの駆動ユニットとが設けられており、各駆動ユニットが、それぞれのピニオンギヤを駆動するために、ピニオンギヤの1つに関連しており、さらに、制御システムが設けられており、該制御システムが、それぞれの駆動ユニットのための少なくとも1つの所望の運転パラメータ値を含む駆動ユニット基準信号に従ってそれぞれの駆動ユニットを制御するために、駆動ユニット制御信号を各駆動ユニットのために発生させる制御器を有しており、これにより、それぞれの駆動ユニットにおいて少なくとも1つの所望の運転パラメータ値が実現されるようになっている形式のものに関する。さらに本発明は、このような風車ヨー・システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風車ヨー・システムは、ナセルと、風車のタワーとの間に配置されており、風車のロータを、タワー軸線を中心として回転させるために役立つ。風車ヨー・システムは、典型的には、タワーに固定されたリングギヤと、ナセルに固定された、モータ駆動式の少なくとも2つのピニオンギヤとを備えたギヤ・アッセンブリを有している。通常、モータ駆動式の少なくとも2つのピニオンギヤは、リングギヤにわたるより均一な負荷分散を実現するために存在している。風車ヨー・システムのための一例は、国際公開第2008/053017号に記載されている。風車のロータ軸線が風向と整合していない場合、ヨー・システムは、リングギヤに噛み合うピニオンギヤの駆動によってロータ軸線を風向に整合させるようにナセルを回転させる。
【0003】
既に述べたように、典型的には、少なくとも2つの駆動ユニットと、リングギヤに噛み合うピニオンギヤとが使用される。しかしながら、このような構成は、機械的に接続されるモータを意味する。機械的に接続されたモータは、それぞれ異なるサイズのモータが使用された場合だけではなく、僅かに異なる特性を有する同じサイズのモータが使用された場合にも、複数のロータが受けるそれぞれ異なる負荷のような、負荷分担の問題につながり得る。低負荷時の小さな負担は通常問題ではないが、高負荷または全負荷時には、より小さな滑りを有する駆動モータが、より大きな滑りを有する駆動モータよりも負荷の負担が大きい。このことは、駆動モータおよび伝動装置に設けられた機械的な構成要素の不均一な裂傷および摩耗を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/053017号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、ヨー・システム内の駆動ユニットにわたってより均一に負荷を分散すること可能にする風車ヨー・システムを提供することである。別の課題は、有利な風車を提供することである。本発明のさらに別の課題は、ヨー・システム内の駆動ユニットにわたってより均一な負荷分散を可能にする風車ヨー・システムにおいて駆動ユニットを制御する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の請求項1に記載の構成では、風車ヨー・システムであって、ヨー・ギヤと、少なくとも2つのピニオンギヤと、少なくとも2つの駆動ユニットとが設けられており、各駆動ユニットが、それぞれのピニオンギヤを駆動するために、ピニオンギヤの1つに関連しており、さらに、制御システムが設けられており、該制御システムが、それぞれの駆動ユニットのための少なくとも1つの所望の運転パラメータ値を含む駆動ユニット基準信号に従ってそれぞれの駆動ユニットを制御するために、駆動ユニット制御信号を各駆動ユニットのために発生させる制御器を有しており、これにより、それぞれの駆動ユニットにおいて少なくとも1つの所望の運転パラメータ値が実現されるようになっている形式のものにおいて、前記制御システムが、各駆動ユニットのために少なくとも1つのフィードバックループを有しており、該フィードバックループが、少なくともそれぞれの駆動ユニットの1つの運転パラメータの実際の値を含む少なくとも1つの駆動ユニットフィードバック信号を制御器にフィードバックし、制御器が、基準信号と、フィードバック信号とに基づいて駆動ユニット制御信号を発生させるようになっているようにした。
【0007】
上記課題を解決するための本発明による風車では、本発明による風車ヨー・システムを有しているようにした。
【0008】
記課題を解決するための本発明による風車ヨー・システムを制御する方法では、ヨー・ギヤと、少なくとも2つのピニオンギヤと、少なくとも2つの駆動ユニットとを備えた風車ヨー・システムであって、各駆動ユニットが、それぞれピニオンギヤを駆動するために、ピニオンギヤの1つに関連している形式の風車ヨー・システムを制御する方法であって、各駆動ユニットを、それぞれの駆動ユニットのための少なくとも1つの所望の運転パラメータ値を含む駆動ユニット基準信号に従って制御し、これにより、それぞれの駆動ユニットの少なくとも1つの所望の運転パラメータ値を実現するようになっている方法において、少なくとも各駆動ユニットの1つの運転パラメータの実際の値を、フィードバック信号を用いて制御器にフィードバックし、制御器が、各基準信号とフィードバック信号とに基づいて、駆動ユニットのための駆動ユニット制御信号を発生させるようにした。
【0009】
本発明の有利な変化形は請求項2以下に記載されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明による風車ヨー・システムは、ヨー・ギヤと、少なくとも2つのピニオンギヤと、少なくとも2つの駆動ユニットと、制御器を備える制御システムとを有しており、各駆動ユニットが、それぞれのピニオンギヤを駆動するために、ピニオンギヤの1つと関連している。制御器は、それぞれの駆動ユニットのための少なくとも1つの所望の運転パラメータ値を含む駆動ユニット基準信号に従ってそれぞれの駆動ユニットを制御するために、各駆動ユニットのために駆動ユニット制御信号を発生させるために構成されており、これによって、それぞれの駆動ユニットで少なくとも1つの所望の運転パラメータを実現するようになっている。さらに、制御システムは、各駆動ユニットのために少なくとも1つのフィードバックループを有しており、フィードバックループは、少なくともそれぞれの駆動ユニットの1つの運転パラメータの実際の値を含む少なくとも1つの駆動ユニットフィードバック信号を制御器にフィードバックする。制御器は、基準信号と、フィードバック信号とに基づいた駆動ユニット制御信号を発生させるようになっている。
【0011】
フィードバックループを使用することによって、個別の駆動ユニットが受ける負荷の差を最小にするように、駆動ユニットを制御することが可能となる。この手段によって、機械的な裂傷及び摩耗は、駆動ユニットの機械的かつ/または電気的な構成要素の間で均等に割り当てられて、このことは、延長された構成要素寿命と、延長された使用期間とを保証する。
【0012】
特に、各駆動ユニットは、それぞれの駆動ユニットが形成するトルクを検出する少なくとも1つのトルクセンサを有していてよい。トルクセンサは、機械的または電磁的なトルクセンサであってよい。この場合、各フィードバック信号は、少なくともそれぞれのトルクセンサの出力を表すことができる。
【0013】
各駆動ユニットが、電動モータを有していると有利である。したがって、各フィードバック信号は、特に、それぞれの電動モータの少なくとも1つの運転パラメータを表すことができる。たとえば、電動モータが受ける負荷は、フィードバック信号の運転パラメータとして使用され得る。さらに、電動モータが受ける負荷は、それぞれのモータにより消費される電流によって表されてよい。この電流は、モータが受ける負荷を示しており、したがって、モータが受ける負荷を表す運転パラメータとしてフィードバック信号で使用することができる。
【0014】
さらに、各駆動ユニットは、電動モータとピニオンギヤとの間に伝動装置(gear)を有している。この場合、各フィードバック信号は、伝動装置の少なくとも1つの運転パラメータを表すことができる。たとえば、既に言及されたトルクセンサのようなトルクセンサは、上記伝動装置の高速側および/または伝動装置の低速側に配置されていてよい。したがって、この伝動装置の運転パラメータは、それぞれ、伝動装置が受けるトルクまたは伝動装置が形成したトルクであってよい。さらに択一的には、トルクセンサは伝動装置自体に配置されていてよい。
【0015】
さらに、各駆動ユニットが、モータとピニオンギヤとを接続するシャフトの回転位置、またはモータとピニオンギヤとの間に伝動装置が存在する場合には、モータと伝動装置を接続するシャフトまたは伝動装置とピニオンギヤとを接続するシャフトの回転位置をエンコーディングする位置エンコーダを有していてよい。さらに択一的には、位置エンコーダは、ギヤのギヤホイールに配置されていてよい。このような位置エンコーダが存在している場合、フィードバック信号は、少なくともそれぞれの位置エンコーダの出力を表すことができ、位置エンコーダの出力は、適当に計算された場合、ピニオンギヤに作用する負荷を表すことができる。
【0016】
さらに、各駆動ユニットは、モータの速度を制御するために、制御器とモータとの間に周波数変換器を有していてよい。この場合、各フィードバック信号は、それぞれの周波数変換器の少なくとも1つの運転パラメータを表すことができる。
【0017】
本発明による風車は、本発明による風車ヨー・システムを有している。このような風車では、ヨー・システムの寿命を延長することができ、本発明によるヨー・システムの使用により使用期間を延長することもできる。
【0018】
本発明の別の観点によれば、風車ヨー・システムであって、ヨー・ギヤと、少なくとも2つのピニオンギヤと、少なくとも2つの駆動ユニットを備えた風車ヨー・システムであって、各駆動ユニットが、それぞれのピニオンギヤを駆動するためにピニオンギヤの1つに関連している形式の風車ヨー・システムを制御する方法が提供される。本発明による方法では、各駆動ユニットを、それぞれの駆動ユニットのための少なくとも1つの運転パラメータ値を含む駆動ユニット基準信号により制御し、これにより、それぞれの駆動ユニットの少なくとも1つの所望の運転パラメータ値を実現するようにする。少なくとも各駆動ユニットの1つの運転パラメータの実際の値を、フィードバック信号により制御器にフィードバックする。制御器は、基準信号と各フィードバック信号とに基づいて、駆動ユニットのための駆動ユニット制御信号を発生させる。
【0019】
駆動ユニットからのフィードバック信号を使用することにより、個別の駆動ユニット間の負荷の差を最小にするように駆動ユニットを制御することが可能となる。この手段により、個別の駆動ユニットの裂傷および摩耗の差を減じることができ、このことは、ヨー・システムの寿命を延長し、使用期間を延長することを可能にする。
【0020】
特に、駆動ユニット制御信号を、基準信号と、それぞれのフィードバック信号に含まれる運転パラメータ値の間の差とに基づいて発生させることができる。しかし、基準信号の少なくとも1つの運転パラメータ値と、それぞれの駆動ユニット制御信号により制御されるべき駆動ユニットのフィードバック信号の少なくとも1つの運転パラメータ値との差に基づいて、各駆動ユニット制御信号を発生させることも可能である。
【0021】
各駆動ユニットが、電動モータを有している場合、駆動ユニットのフィードバック信号は、各電動モータの少なくとも1つの運転パラメータ、たとえばモータが受ける負荷を示す、モータによって消費される電流を表すことができる。
【0022】
さらに、各駆動ユニットが、電動モータの速度および/または電動モータとピニオンギヤとの間の伝動装置の速度を制御するための周波数変換器を有している場合、駆動ユニットのフィードバック信号は、それぞれの周波数変換器および/またはそれぞれの伝動装置の少なくとも1つの運転パラメータを表すことができる。たとえば、上述の運転パラメータは、伝動装置に結合されたシャフトが形成するトルクまたは受けるトルク、周波数変換器の出力、伝動装置の回転位置等であってよい。
【0023】
本発明の別の特徴、詳細および利点は、添付の図面に関連する以下の実施形態の説明において明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】風車の概略図である。
【図2】図1に示した風車のヨー・システムのリングビアおよびピニオンギヤの概略図である。
【図3】電動モータの典型的なモータ特性図である。
【図4】風車ヨー・システム制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1には典型的な風車が示されている。風車1は、地面3内の基礎に設置されたタワー1を有している。タワー1の頂部には、ナセル5が配置されている。ナセル5は、風によって駆動されるロータ7を支持している。典型的には、ロータは3つのロータブレード9を有している。これらのロータブレード9は、120°の角度を置いて配置されている。3つより多いまたは少ない数のロータブレードを有する別のロータ設計も可能であり、たとえば、2つのブレードを有するロータ、または1つのブレードしか有しないロータが可能である。しかしながら、2つのブレードを有するロータ、特に3つのブレードを有するロータが最も一般的に使用されている。
【0026】
ヨー駆動装置10は、ナセル5がタワー軸線Aを中心として回転されて、これによりロータ軸線Bを風向Dに整合させ、かつこのロータ軸線Bを風向Dに整合させたままにするために、ナセル5とタワー1との間に配置されている。典型的なヨー駆動装置10が、図2に平面図で概略的に示されている。このヨー駆動装置10は、典型的にはタワー頂部に配置されたリングギヤ11と、ナセル5に配置された複数のピニオンギヤ13とを有しており、このピニオンギヤ13はリングギヤ11に噛み合う。ピニオンギヤ13は、電動モータにより駆動されてよく、これにより、ピニオンギヤ13の回転によって、タワー軸線Aを中心としたナセル5の回転が実施され得る。リングギヤは典型的にはタワー1に配置されていて、ピニオンギヤ13は典型的にはナセル5に配置されているが、ピニオンギヤ13をタワー1に配置し、リングギヤ11をナセル5に配置することも可能であることに留意されたい。
【0027】
風車ヨー駆動装置で使用されるギヤ・アッセンブリの概略的な平面図が図2に示されている。図2は、リングギヤ11と、2つのピニオンギヤ13とを示している。2つのピニオンギヤ13を使用することは必須ではない。実際には、ピニオンギヤ13の個数は、2つよりも多くてよく、たとえば3つ、4つまたはさらに多くのピニオンギヤがあってもよい。ピニオンギヤの個数が多いと、リングギヤにおけるより均等な負荷分担がもたらされる。
【0028】
既に述べたように、ピニオンギヤ13は、典型的には電動モータ、すなわち誘導モータにより駆動されている。誘導モータは、典型的には基本的な2つの電気的アッセンブリ、つまり巻線固定子および回転子アッセンブリから成っている。交流電流、特に2相電流または3相電流を固定子の巻線に供給すると、固定子は、回転子に作用する回転磁界を形成する。回転子は、当該回転子の導体中に電流を誘導する回転磁界によって、回転する。
【0029】
回転子に負荷がかけられていない場合、回転子は、磁界と同じ回転数で回転する、すなわち、回転子は、モータのいわゆる同期速度で回転する。この同期速度は、固定子の極の数と、電源の周波数とによって以下の式により規定されている。すなわち、
Ns=120・f/P
ここで、Nsは同期速度であり、fは電源の周波数であり、Pは極数である。
【0030】
同期速度、すなわちロータ速度と回転する磁界の速度と間で差がない速度は、可能なモータ速度の上限である。モータが同期速度で回転している場合、回転子には電圧が誘導されず、その結果、トルクは生じない。他方で、回転子に負荷がかけられると、モータ速度が減速するので、磁界の速度と回転子の速度との間で差が生じる。回転子の速度と磁界の速度との差は、滑りもしくはスリップと呼ばれ、以下のように計算される。すなわち、
s=100・(Ns−Na)/Ns
ここで、sは滑りであり、Nsは同期速度であり、Naはモータの実速度である。
【0031】
滑りが発生すると、電圧がロータ内に誘導され、したがってトルクが生じる。
【0032】
誘導モータの設計に応じて、実速度と、形成されたトルクとの関係は、図3に概略的に示されているように種々異なる特性をもつ。図3は、互いに異なる種類の3つのモータA,BおよびCにより形成されたトルクをモータ速度の関数として示している。いわゆるロー・スリップ(low-slip)型モータと見なされ得るモータAおよびBは、回転子速度の広い範囲にわたって一定のまたは増大するトルクを示している。他方で、いわゆるハイ・スリップ(high-slip)型モータは、速度範囲の全範囲または少なくとも主要な部分にわたって、モータ速度が増速するとともに減少するトルクを示している。
【0033】
ピニオンギヤを駆動するために使用されるモータが、たとえば製造工程中の公差による僅かに異なる特性を有している場合にも、負荷分担の問題は起こり得る。
【0034】
誘導モータの速度は、しばしば、周波数制御器の使用によってモータに供給される電流の周波数を制御することによって制御される。さらに、モータの回転数を減じて所望の低いレベルにするために、電動モータとピニオンギヤとの間に伝動装置(gear)が存在していてよい。
【0035】
本発明による風車ヨー・システムは、駆動ユニットにより形成されるトルクを制御するための制御システムを有している。駆動ユニットはそれぞれ、本実施形態において、上述のように電動モータと、適当な周波数を有する電流をモータに供給することによりモータ速度を制御するための周波数制御器と、モータの回転速度を減じてピニオンギヤの低い回転速度を形成する伝動装置とを有している。
【0036】
制御システムを備えるヨー・システムの概略図が、図4に示されている。図4は、図2に示したIV−IV線に沿った断面図を示していて、リングギヤ11と、2つのピニオンギヤ13と、2つの駆動ユニット23とを示している。各駆動ユニット23は、ピニオンギヤ13の1つを駆動し、かつ共通の制御器25によって制御されている。
【0037】
各駆動ユニット23は、駆動ユニットの駆動トルクを形成するための電動モータ27を有している。電動モータ27は、第1のシャフト29を介して、回転子の回転速度を減じるための伝動装置31の高速側に連結されている。伝動装置31の低速側は、第2のシャフト33を介してピニオンギヤ13に接続されている。さらに、各駆動ユニット23は、位置エンコーダ35を有している。この位置エンコーダ35は、本実施形態では、駆動ユニット23の第2のシャフト33に配置されている、すなわち伝動装置31の低速側に配置されている。しかし、位置エンコーダ35は、同じように第1のシャフトに、すなわち伝動装置31の高速側に配置されているか、または伝動装置31のギヤホイールに配置されてもよい。位置エンコーダは、電気的、磁気的または光学的に働くことができる。付加的に、各駆動ユニット23は、トルクセンサ37を有している。このトルクセンサ37は、本実施形態では、駆動ユニット23の第1のシャフト29に配置されている、つまり、伝動装置31の高速側に配置されている。エンコーダ35の位置と同様に、トルクセンサも択一的な位置に配置されてもよく、つまり第2のシャフト33、すなわち伝動装置31の低速側、または伝動装置31自体に配置されてよい。トルクセンサ37は、機械的なトルクセンサであっても磁気的なトルクセンサであってもよい。
【0038】
各駆動ユニット23は、制御器25により、この制御器25から制御信号を受け取る周波数変換器39を用いて回転子の回転速度を制御することによって制御されている。制御信号は、電動モータ27に特定の周波数を有する交流電流を供給することを可能にし、これによって、ピニオンギヤ13の所望の回転速度を達成する。周波数変換器39に作用するための制御信号は、制御器25によって、基準信号入力部41を介した基準信号入力に基づいて規定されている。この基準信号は、モータ27のための所望の回転速度値および/またはモータまたはピニオンギヤ13のための所望のトルク値を有している。制御器25による、駆動ユニット23の周波数変換器39への制御信号出力は、基準信号に基づくことに対して付加的に、駆動ユニット23から得られるフィードバック信号にも基づいている。このフィードバック信号は、それぞれの駆動ユニット23の少なくとも1つの運転パラメータの実際の値を表している。
【0039】
たとえば、制御器25により生ぜしめられた制御信号および周波数変換器39への出力は、それぞれの駆動ユニット23のフィードバック信号に含まれる運転パラメータ値と、基準信号に含まれる所望の運転パラメータ値との差から導かれ得る。この手段により、各モータ27および/またはピニオンギヤ13の所望の運転パラメータ値が達成され、かつ維持され得ることが確実にされ得る。たとえば、各ピニオンギヤ13により形成されたトルクを、それぞれのピニオンギヤ13のために所望されるトルクレベルで一定に維持することが可能となる。
【0040】
択一的には、互いに異なる駆動ユニット23から生じたフィードバック信号に含まれる運転パラメータ値の間の差を求めることも可能である。したがって、周波数変換器39に伝達される制御信号は、2つの駆動ユニット23のフィードバック信号に含まれる運転パラメータ値の差が有利にはゼロにまで減じられ得るように選択されてよい。運転パラメータが、たとえば、リングギヤ11に作用するピニオンギヤ13によるトルクである場合、2つのピニオンギヤ13により提供されるトルクの差をゼロにまで減じることは、各ピニオンギヤ13が同じトルクでリングギヤ11に作用することを意味する。
【0041】
各ピニオンギヤ13の実際の負荷を示す運転パラメータとして、フィードバック信号に含まれるトルクが例示的に言及されているが、別の運転パラメータがフィードバック信号の運転パラメータとして使用されてもよい。
【0042】
図4は、ヨー駆動装置を制御するため、特に駆動ユニット23を制御するために使用され得るそれぞれ異なる種類のフィードバック信号を示している。既に述べたように、各駆動ユニット23は、位置エンコーダ35を有している。位置エンコーダ35は、伝動装置の高速側、低速側、または伝動装置自体に装備されている。初期キャリブレーション後に、位置エンコーダは、それぞれのシャフトまたはギヤホイールの正確な角度位置を規定することができる。このことは、ギヤリング11へのピニオンギヤ13の固定のレベルを示し、ピニオンギヤ13とリングギヤ11との間で作用する負荷荷重を示す。
【0043】
さらに、伝動装置の高速側、伝動装置の低速側、または伝動装置自体に装備され得るトルクセンサも、それぞれのピニオンギヤ13とギヤリング11との間で作用する負荷の測定を提供する。
【0044】
さらに、駆動ユニットの、それぞれのピニオンギヤとリングギヤ11との間で作用する実際の負荷の指標として使用され得る運転パラメータは、モータ27により消費される電流である。したがって、モータにより消費される電流も、フィードバック信号のための適当なパラメータでもある。
【0045】
さらに、適当な運転パラメータは、モータ27の回転子の回転周波数であってよい。
【0046】
要約すると、適当なフィードバック信号は、伝動装置31またはシャフト29,33の一つから生じた運転パラメータ、電動モータ27から生じた運転パラメータおよび周波数変換器39から生じた運転パラメータを含んでいてよい。さらに、1つのフィードバック信号を使用するだけではなく、それぞれ異なる運転パラメータの値を含む複数のフィードバック信号を使用することも可能である。付加的にまたは択一的に、運転パラメータの複数の値は、1つのフィードバック信号内で組み合わせることができる。
【0047】
例示的な実施形態と併せて説明された本発明では、ヨー・システムの駆動ユニットの負荷分担が確実にされる。このことは、基準信号だけではなく、各駆動ユニットからの少なくとも1つのフィードバック信号に関する閉ループ制御システムを使用することにより達成される。このような制御システムでは、要求されたヨー・タスクを実施するために必要とされる機械的な作業が、各駆動ユニットに、実質的に等しい負荷で均等に分散されることが保証される。このことは、機械的な裂傷および摩耗が、駆動ユニットの機械的かつ/または電気的な構成要素の間で均等に分担されるという利点を提供する。
【符号の説明】
【0048】
11 ヨー・ギヤ
13 ピニオンギヤ
23 駆動ユニット
25 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車ヨー・システムであって、ヨー・ギヤ(11)と、少なくとも2つのピニオンギヤ(13)と、少なくとも2つの駆動ユニット(23)とが設けられており、各駆動ユニット(23)が、それぞれのピニオンギヤ(13)を駆動するために、ピニオンギヤ(13)の1つに関連しており、さらに、制御システムが設けられており、該制御システムが、それぞれの駆動ユニット(23)のための少なくとも1つの所望の運転パラメータ値を含む駆動ユニット基準信号に従ってそれぞれの駆動ユニット(23)を制御するために、駆動ユニット制御信号を各駆動ユニット(23)のために発生させる制御器(25)を有しており、これにより、それぞれの駆動ユニット(23)において少なくとも1つの所望の運転パラメータ値が実現されるようになっている形式のものにおいて、
前記制御システムが、各駆動ユニット(23)のために少なくとも1つのフィードバックループを有しており、該フィードバックループが、少なくともそれぞれの駆動ユニット(23)の1つの運転パラメータの実際の値を含む少なくとも1つの駆動ユニットフィードバック信号を制御器(25)にフィードバックし、
制御器(25)が、基準信号と、フィードバック信号とに基づいて駆動ユニット制御信号を発生させるようになっていることを特徴とする、風車ヨー・システム。
【請求項2】
各駆動ユニット(23)が、それぞれの駆動ユニット(23)が形成するトルクを検出する少なくとも1つのトルクセンサ(37)を有していて、
各フィードバック信号が、少なくともそれぞれのトルクセンサ(37)の出力を表している、請求項1記載の風車ヨー・システム。
【請求項3】
各駆動ユニット(23)が、電動モータ(27)を有していて、
各フィードバック信号が、それぞれの電動モータ(27)の少なくとも1つの運転パラメータを表している、請求項1または2記載の風車ヨー・システム。
【請求項4】
各フィードバック信号は、少なくともそれぞれの電動モータ(27)が受けた負荷を、電動モータ(27)の運転パラメータとして表す、請求項3記載の風車ヨー・システム。
【請求項5】
各フィードバック信号が、少なくともそれぞれの電動モータ(27)により消費された電流を表す、請求項3または4記載の風車ヨー・システム。
【請求項6】
各駆動ユニット(23)が、電動モータ(27)とピニオンギヤ(13)との間に伝動装置(31)を有しており、
各フィードバック信号が、伝動装置(31)の少なくとも1つの運転パラメータを表す、請求項3から5までのいずれか1項記載の風車ヨー・システム。
【請求項7】
前記トルクセンサ(37)が、伝動装置(31)の高速側に配置されている、請求項2および6記載の風車ヨー・システム。
【請求項8】
前記トルクセンサ(37)が、伝動装置(31)の低速側に配置されている、請求項2および6記載の風車ヨー・システム。
【請求項9】
各駆動ユニット(23)が、モータとピニオンギヤとを接続するシャフトの回転位置、またはモータ(27)とピニオンギヤ(13)との間に伝動装置が存在する場合には、モータ(27)と伝動装置(31)との間のシャフト(29)の回転位置、伝動装置(31)とピニオンギヤ(13)との間のシャフト(33)の回転位置、または伝動装置(31)のギヤホイールの回転位置をエンコーディングする位置エンコーダ(35)を有していて、
フィードバック信号が少なくともそれぞれの位置エンコーダ(35)の出力を表している、請求項3から8までのいずれか1項記載の風車ヨー・システム。
【請求項10】
各駆動ユニット(23)が、制御器(25)と、モータ(27)との間に、モータ(27)の速度を制御するために周波数変換器(39)を有していて、
各フィードバック信号が、それぞれの周波数変換器(39)の少なくとも1つの運転パラメータを表す、請求項3から9までのいずれか1項記載の風車ヨー・システム。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の風車ヨー・システムを有することを特徴とする風車。
【請求項12】
ヨー・ギヤ(11)と、少なくとも2つのピニオンギヤ(13)と、少なくとも2つの駆動ユニット(23)とを備えた風車ヨー・システムであって、各駆動ユニット(23)が、それぞれピニオンギヤ(13)を駆動するために、ピニオンギヤ(13)の1つに関連している形式の風車ヨー・システムを制御する方法であって、
各駆動ユニット(23)を、それぞれの駆動ユニット(23)のための少なくとも1つの所望の運転パラメータ値を含む駆動ユニット基準信号に従って制御し、これにより、それぞれの駆動ユニット(23)の少なくとも1つの所望の運転パラメータ値を実現するようになっている方法において、
少なくとも各駆動ユニット(23)の1つの運転パラメータの実際の値を、フィードバック信号を用いて制御器(25)にフィードバックし、制御器(25)が、各基準信号とフィードバック信号とに基づいて、駆動ユニット(23)のための駆動ユニット制御信号を発生させることを特徴とする、風車ヨー・システムを制御する方法。
【請求項13】
駆動ユニット制御信号を、それぞれの基準信号と、それぞれのフィードバック信号の運転パラメータ値間の差とに基づいて発生させる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
駆動ユニット(23)のための各駆動ユニット制御信号を、基準信号の少なくとも1つの所望の運転パラメータ値と、それぞれの駆動ユニット制御信号によって制御されるべき駆動ユニットから得られたフィードバック信号の少なくとも1つの運転パラメータ値との差に基づいて発生させる、請求項12記載の方法。
【請求項15】
各駆動ユニット(23)が、電動モータ(27)を有していて、駆動ユニット(23)のフィードバック信号が、それぞれの電動モータ(27)の少なくとも1つの運転パラメータを表しかつ/または
各駆動ユニット(23)が、電動モータ(27)の速度および/または電動モータとピニオンギヤ(13)との間に設けられた伝動装置(31)の速度を制御するための周波数変換器(39)を有しており、駆動ユニット(23)のフィードバック信号が、それぞれの周波数変換器(39)および/またはそれぞれの伝動装置(31)の少なくとも1つの運転パラメータを表している、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−13085(P2012−13085A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−143057(P2011−143057)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】