説明

飛翔害虫捕獲具

【課題】湿潤性に富んだ薬液保持体を使用した場合に、飛翔害虫、特にコバエ類に対して長期間にわたり高い誘引効果と捕獲効率を示し、しかも構造が簡単で、使い易い飛翔害虫捕獲具の提供。
【課題の解決手段】液状の薬剤組成物を不織布製担体に湿潤状態で保持させた薬液保持体をトレイ部に収納し、開口部を有する蓋部を前記トレイ部の中空天面に嵌着してなる飛翔害虫捕獲具において、前記薬剤組成物が殺虫成分と誘引成分と保湿成分を含有し、前記不織布製担体はそのかさ密度が0.02〜0.1で、かつその側部端面の厚さが5〜30mmである飛翔害虫捕獲具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハエ類、蚊類、コバエ類等の飛翔害虫、特に、ショウジョウバエ、ノミバエ、クロバネキノコバエ、キノコバエ、チョウバエ等のコバエ類を誘引して捕獲する飛翔害虫捕獲具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飛翔昆虫を捕獲するものとしていくつかの捕獲器が提案されている。例えば、特許文献1(特開2002−272344号公報)には、昆虫の侵入口を設けた容器であって、水溶性の誘引剤及び油脂である捕獲剤が入っている飛翔昆虫用捕獲器が記載されているが、液がこぼれたり、容器内で幼虫が発生し使用者に不快感を与えるなどの問題を有していた。この特許文献1の対象はイエバエ等の各種飛翔害虫を含み、実施例では、直径0.8cm(50mm2)の侵入口が記載されているが、特にコバエ類に対する捕獲性の点で効果が十分とはいえなかった。
また、特許文献2(特開2009−112197号公報)は、飛翔性害虫が進入可能な開口部を備えた本体と、害虫誘引成分を含むとともに当該本体に収容される薬剤とを備え、当該薬剤は、所定の粘性を有する泡状に形成されてなる脱出抑制材を構成している害虫捕獲器等を開示する。しかしながら、これらの害虫捕獲器は特定の脱出抑制材の使用を必須とし、構成が複雑であるうえ、例えば、開口部の仕様等について十分な検討がなされているわけではない。
【0003】
更に、特許文献3(特許第4430121号公報)には、開口部を有する容器に害虫誘引剤を含有した多数のゲル粒を層状に収容してなる害虫捕獲器が記載され、ゲル粒の間隙にコバエ類を進入させることによる捕獲作用を明らかにしている。ゲル粒を用いる害虫捕獲器は、飛翔害虫が薬剤を舐めやすい液状タイプのものに比べて捕獲性能は幾分劣るが、液がこぼれないという利点や外観上の見た目が重宝されている。
一方、容器の形状を改良して誘引性能を高める工夫もいくつか提案されている。例えば、特許文献4(特許第4463325号公報)によれば、容器の内面に薬剤に向かって突出して線状突起部を設置すると、飛翔性害虫が上を伝いながら薬剤へと誘引されるので効果的であるとされる。しかしながら、特許文献4の実施例は全て薬剤担持体としてゲル粒を用いたものであり、かかる手段が湿潤性に富んだ薬剤担持体の場合にも妥当するかは不明である。このように、ゲル粒以外の、例えば、湿潤性に富んだ薬剤担持体を使用するタイプについては、捕獲性能の点で有利であるにも拘らず、飛翔害虫、特にコバエ類の生態・習性に基づいた検討が十分進んでいないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−272344号公報
【特許文献2】特開2009−112197号公報
【特許文献3】特許第4430121号公報
【特許文献4】特許第4463325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、湿潤性に富んだ薬液保持体を使用した場合に、飛翔害虫、特にコバエ類に対して長期間にわたり高い誘引効果と捕獲効率を示し、しかも構造が簡単で、使い易い飛翔害虫捕獲具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成が上記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出したものである。
(1)液状の薬剤組成物を不織布製担体に湿潤状態で保持させた薬液保持体をトレイ部に収納し、開口部を有する蓋部を前記トレイ部の中空天面に嵌着してなる飛翔害虫捕獲具において、前記薬剤組成物が殺虫成分と誘引成分と保湿成分を含有し、前記不織布製担体はそのかさ密度が0.02〜0.1で、かつその側部端面の厚さが5〜30mmである飛翔害虫捕獲具。
(2)前記薬液保持体の側部端面の少なくとも一部が露出した状態で収納されている(1)に記載の飛翔害虫捕獲具。
(3)前記薬液保持体が前記トレイ部の内部側面と間隙を設けて収納されている(1)に記載の飛翔害虫捕獲具
(4)前記保湿成分が脂肪族多価アルコール、糖アルコール、及び増粘多糖類から選ばれる1種又は2種以上である(1)ないし(3)のいずれかに記載の飛翔害虫捕獲具。
(5)前記脂肪族多価アルコールがグリセリンである(4)に記載の飛翔害虫捕獲具。
(6)前記殺虫成分がジノテフランである(1)ないし(5)のいずれかに記載の飛翔害虫捕獲具。
(7)コバエ防除用である(1)ないし(6)のいずれかに記載の飛翔害虫捕獲具。
【発明の効果】
【0007】
本発明の飛翔害虫捕獲具は、飛翔害虫、特にコバエ類に対して長期間にわたり高い誘引効果と捕獲効率を示し、しかも構造が簡単で、使い易いのでその実用性は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態による飛翔害虫捕獲具の斜視図を示す。
【図2】本発明の実施形態による飛翔害虫捕獲具の分解斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の飛翔害虫捕獲具は、薬液保持体を収納したトレイ部の中空天面に、開口部を設けた蓋部を嵌着して構成される。
トレイ部の材質としては、ポリエステル(PET)、ポリエステル/ポリエチレン(PET/PE)、ポリプロピレン(PP)等のプラスチックや金属、ガラス等があげられるが、経済性をも考慮してプラスチックを素材とする成形品が好ましい。その形状や大きさは任意であるが、例えば、直径4〜10cmで高さが2〜5cm程度のカップ状のものが使い易く、通常中空天面の周囲に、蓋部との嵌着を容易にし、かつ後記するシール用に数mm幅のフランジ部が設けられる。また、トレイ部の底部には、薬液保持体を収納するための固定片が設置されており、薬液保持体はトレイ部の内部側面と間隙を設けて収納されるのが好ましい。かかる構成を採用することによって、湿潤状態で露出した薬液保持体の側部端面にも飛翔害虫、特にコバエ類が滞留して舐めやすい状況を提供し、捕獲性能の向上に寄与するものである。なお、プラスチック製トレイ部の側面や底部表面は平坦であってよいが、例えば凹凸模様など、任意な断面形状に形成させても構わない。
【0010】
本発明の飛翔害虫捕獲具は、その使用前にトレイ部中の薬液保持体から揮散性の誘引成分が蒸散するのを防止するため、中空天面がバリアフィルムで被覆されているのが好ましく、前記フランジ部はそのシール用に供される。ここでバリアフィルムとしては、アルミニウムフィルム層にPETやPPをラミネートしたものを例示できるが、バリア性を付与でき、かつピール性に優れる限り限定されない。
【0011】
一方、前記蓋部は通常誘引部とベース部からなる逆カップ状を呈し、PPのようなプラスチックを用いたインジェクション成形品が本発明に適している。上方に位置する誘引部は平坦ないし凹状であっても、あるいは誘引部とベース部が境目なく連続してドーム状を形成していてもよい。更に、動物や葉っぱの形状を模してデザイン性を付与することも可能である。
また、誘引部はベース部の中空下端面に対して平行状に設置するのが一般的であるが、本発明を進める過程で、誘引部と当該中空下端面との間に角度を設ける方が、誘引性能の点でより効率的であることが認められた。
害虫進入口としての開口部の設置方法、個数、形状や大きさは特に限定されず、適宜決定すればよい。もちろん、誘引部に直径2〜20mm程度の円形開口部を複数個設置する通常タイプであっても何ら差し支えないが、例えば、誘引部をベース部の中空下端面に対して傾斜して設置するとともに、この誘引部を内部側に窪んだ凹状領域として形成し、当該凹状領域の中央から周辺に向けてエッジ部と幅2〜8mm程度の同心円状の開口部とを交互に配置するような構成を採用することができる。そして、開口部を互いに接続する接続部に、外部光を反射することによって飛翔害虫を誘引する光反射部を設置し、誘引性能を高めることも可能である。更に、ベース部にも開口部を併置し、外気を導入する通気口としても作用するようにすれば、揮散性の誘引成分が効率よく拡散し、誘引性能を向上させうるので好ましい形態である。
なお、エッジ部とは、外部に向けて突出する突状断面を有する部材をさし、飛来した飛翔害虫、特にコバエ類がここに止まりやすいという生態・習性に基づき、本発明で新たに導入されたものである。
【0012】
本発明は、飛翔害虫捕獲具のトレイ部ならびに蓋部の構成を工夫するとともに、後記するように、液状の薬剤組成物を湿潤状態で保持させ得る不織布製担体を特定し、かつ薬剤組成物として、殺虫成分と誘引成分に加えて保湿成分を配合したことに特徴を有する。
【0013】
本発明で用いる薬剤組成物を構成する殺虫成分としては、ジノテフラン、イミダクロプリド、クロチアニジン等のネオニコチノイド系殺虫成分、天然ピレトリン、アレスリン、フラメトリン、プラレトリン、レスメトリン、フタルスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、シフルトリン、エトフェンプロックス等のピレスロイド系殺虫成分、シラフルオフェン等の有機ケイ素系殺虫成分、フェニトロチオン、ダイアジノン、マラソン、プロチオホス等の有機リン系殺虫成分、メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系殺虫成分、フィプロニル等のピラゾール系殺虫成分、ピリプロキシフェン、ハイドロプレン等の昆虫成長制御剤等があげられ、なかでも、ジノテフラン、イミダクロプリド、クロチアニジン等のネオニコチノイド系殺虫成分が好ましい。なかんずく、ジノテフランが好適であり、薬剤組成物中に、0.01〜1.0質量%程度配合される。
なお、上記殺虫成分のなかには元来忌避性を有するものもあるが、誘引成分の誘引性能に影響を及ぼさない範囲において使用しても構わない。
【0014】
誘引成分としては、バルサミコ酢、ワインビネガー、黒酢等の醸造酢類、ビール、ワイン、紹興酒等の醸造酒類、カツオブシフレーバー、ローストシュガーフレーバー、ゴマ油フレーバー、海老フレーバー、オニオンフレーバー、キャベツフレーバー、ヌカフレーバー、ミソフレーバー、ローストショウユフレーバー、メープルエッセンス等のフレーバー類、各種果実エキス、野菜や果実の発酵物等があげられ、対象とする飛翔害虫の種類に応じて適宜選択すればよい。
かかる揮散性の誘引成分の配合量は、1.0〜30質量%の範囲が適当であり、この配合比率で高い誘引効果を得ることができる。
また、三温糖、黒糖等の糖類、酵母、蜂蜜、卵粉、サナギ粉等の摂食誘引物質を配合してもよいことはもちろんである。
【0015】
本発明で用いる薬剤組成物は、前記成分の外、保湿成分を含有する。保湿成分としては、脂肪族多価アルコール、ソルビトール等の糖アルコール、キサンタンガム等の増粘多糖類、沸点が200℃以上の水溶性溶剤、界面活性剤等があげられるが、なかんずく、脂肪族多価アルコール、糖アルコール、及び増粘多糖類が好ましい。かかる脂肪族多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等があげられ、なかでもグリセリンが好適である。例えば、エタノール等の揮散性の高い溶剤のみ使用すると、薬液保持体を長期にわたり湿潤に保つことができないので好ましくない。
通常、更に水を配合し、液状の薬剤組成物を調製するが、誘引性に支障を来たさない限りにおいて、その他の成分を適宜添加することができる。このような成分としては、例えば、安定剤、防腐剤、分散剤、ビトレックス等の苦味剤、色素等の各種補助成分があげられる。
なお、ゲル状形態の飛翔害虫捕獲器も多数提案されているが、本発明の構成では、液状の方が捕獲性の点で有利であることが試験で認められた。
【0016】
本発明では、こうして得られた液状の薬剤組成物を液漏れを招かず湿潤状態で長期間にわたり保持させうる担体として、かさ密度が0.02〜0.1で、かつその側部端面が5〜30mmの厚さを有する不織布製担体を採用する。具体的には、かさ密度が0.02〜0.1、好ましくは0.03〜0.08の範囲のパルプ不織布やフェルトなどがあげられ、滞留した飛翔害虫が薬液を舐めやすいというメリットを有している。通常、よりかさ密度の小さい内層を幾分密な外層で挟む構成が一般的であるが、もちろん一層構成でも構わない。
従来、湿潤性に富んだ薬液保持体が捕獲性能の点でゲル粒に較べて有利であることは知られていたが、製品化には課題が多かった。しかるに、本発明者らは、特定の保湿成分を配合した薬剤組成物と、特定のかさ密度と側部端面の厚さを有する不織布製担体を組合わせることによって、揮散性の誘引成分を効率よく揮散させ、かつ飛翔害虫に対する高い捕獲性能を達成したものである。
即ち、不織布製担体のかさ密度が0.02未満の場合液漏れの恐れが生じ、一方、0.1を超えると、薬剤組成物の保持性能が劣り湿潤状態を十分保つことができない。
【0017】
また、薬剤組成物が薬液保持体の表面ならびに側部端面から徐々に揮散するに伴い、これを補うために薬剤組成物は薬液保持体の内部から表面ならびに側部端面に移行するが、よりポーラスな側部端面からの揮散寄与も大きい。従って、不織布製担体の側部端面の厚さを5〜30mm、好ましくは10〜20mmに設定することによって、所定期間中常に薬液保持体を湿潤状態に保ち、かつ揮散性能を保持することが可能となる。なお、縦横が約50mmの方形で、側部端面の厚さが10〜20mmの不織布製担体の場合、薬剤組成物の含浸量は20〜50g程度が適当である。
【0018】
薬液保持体を調製するにあたっては、公知の従来方法を適宜採用できるが、トレイ部の底部に設けた固定片で不織布製担体を固定後、薬剤組成物を充填する方式がやり易い。また、薬液保持体を、例えば大きな開口部を有する格子状プラスチック片でカバーすれば、薬液保持体の固定に役立つだけでなく、飛翔害虫、特にコバエ類がここに止まって薬液を舐めやすい状況を提供するのでより効果的である。
【0019】
本発明は、薬液保持体をその側部端面の少なくとも一部が露出した状態、もしくはトレイ部の内部側面と間隙を設けて収納するのが好ましい。これは、飛翔害虫、特にコバエ類がトレイ部の内部側面を伝って下降後、湿潤状態で露出したポーラスな薬液保持体の側部端面に滞留しやすいという習性を利用したものであり、このような露出状態、もしくは間隙に基づくメリットは、トレイ部内部側面に密着させてゲル粒を充填するタイプの製剤では得られない。
なお、特許文献4によれば、トレイ部の内面に薬剤に向かって突出して線状突起部を設置すると、飛翔性害虫がその上を伝いながら薬剤へと誘引されるので効果的であるとされているが、本発明では他の要因による作用効果が大きく、線状突起部を設置する必要性を認めなかった。
前記したように、本発明飛翔害虫捕獲具の包装形態としては、トレイ部の中空天面をバリアフィルムでシールし、使用時にこのバリアフィルムを剥がした後蓋部を嵌着させる方法が好ましい。一方、予めトレイ部と蓋部を嵌着させておき、全体をバリアフィルムでシールする構成を採用しても構わないが、この場合、嵌着が完全でないと、流通保存中にトレイ部から薬剤組成物が液漏れしたり、開口部に薬剤組成物が付着して誘引性能や捕獲性能に影響を及ぼしかねないのでより留意が必要となる。
【0020】
本発明の飛翔害虫捕獲具の使用に際しては、台所、食器棚、ゴミ箱の近辺や植木鉢の土の上などに置くだけで良い。対象害虫としては、ハエ類、蚊類、コバエ類等の飛翔害虫があげられ、特に、ショウジョウバエ、ノミバエ、クロバネキノコバエ、キノコバエ、チョウバエ等のコバエ類に効果的である。なお、本発明品の誘引性能と捕獲性能は、薬剤組成物の種類や量にもよるが、通常1ケ月程度持続する。
【0021】
次に、本発明を実施例ならびに試験例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
図1は本発明による一実施形態の飛翔害虫捕獲具の斜視図を、また図2はその分解斜視図を示し、トレイ部10と蓋部20は使用に際して嵌着される。
トレイ部10は、直径70mm×高さ28mmのPP製成形品であり、中空天面の周囲にはバリアフィルム(図示せず)をシールするために幅4mmのフランジ部11が設けられている。
トレイ部10には、薬剤組成物35gをパルプ不織布製担体(50mm角×厚み15mm、かさ密度:0.045)に保持させた薬液保持体30が固定片12によって収納され、この薬液保持体30の側部端面は露出し、これとトレイ部の内部側面との間には間隙が設けられている。なお、薬剤組成物の処方は下記のとおりである。
・殺虫成分:ジノテフラン(0.1質量%)、
・揮散性の誘引成分:バルサミコ酢(10質量%)、
カツオブシフレーバー(0.8質量%)、
・保湿成分:グリセリン(13質量%)、
・他成分:黒糖、糖蜜、苦味剤・ビトレックス、防腐剤、精製水。
通常、トレイ部10の中空天面に予めバリアフィルムがシールされているので、これを剥がして使用に供する。
【0023】
図2に示す蓋部20は、上方の誘引部21とベース部22から構成されている。誘引部21は、ベース部22の中空下端面23に対して傾斜して設置されるとともに、内部側に窪んだ凹状領域として形成され、当該凹状領域の中央から周辺に向けてエッジ部24と幅4mmの同心円状の開口部25とが交互に配置されている。また、これら複数の開口部25は複数の接続部26で互いに接続され、接続部26の上には光反射部27が備えられている。中心部28は、前述の内部側に窪んだ凹状領域の中央部分である。
更に、ベース部22にも開口部29が併置され、外気を導入する通気口としての役割も果たしている。
【0024】
トレイ部10に予めシールされているバリアフィルムを剥がした後、蓋部20を嵌着させ、台所の床の上に置いて使用した。その結果、本発明品は、約1ケ月にわたり、ショウジョウバエ、ノミバエ等のコバエ類に対して優れた誘引性と捕獲性を保持した。
【実施例2】
【0025】
実施例1に準じて、表1に示す飛翔害虫捕獲具を調製した。なお、薬剤組成物の他成分として、黒糖、糖蜜、苦味剤、防腐剤、精製水を配合し、得られた薬剤組成物30gをフェルト製担体(大きさは薬剤組成物の含浸量が適量になるように調整)に含浸させた。
【0026】
【表1】

【0027】
表1に示す各種飛翔害虫捕獲具につき、ショウジョウバエを用いて、以下の試験を行った。
[試験方法]
直径20cm、高さ20cmのアクリル円筒内床面中央に供試捕獲具を置き、蓋をした。経時的にショウジョウバエ50匹を放ち、捕獲具内で致死したショウジョウバエを数え、捕獲性能を調べた。結果を表2に示す。なお、捕獲性能評価は、以下の基準によった。
◎; 31匹以上、 ○;11〜30匹、 △;6〜10匹、 ×;0〜5匹

【0028】
【表2】

【0029】
試験の結果、本発明の飛翔害虫捕獲具は、ショウジョウバエに対して高い誘引効果と優れた捕獲性能を示した。即ち、薬剤組成物中の保湿成分としてグリセリンのような脂肪族多価アルコールを含有し、薬液保持体の担体のかさ密度が0.02〜0.1で、かつその側部端面の厚さが5〜30mmに特定した本発明品の有用性は明らかである。なお、薬液保持体の側部端面をできるだけ露出させて収納することによって捕獲性能が向上することも認められた。
これに対し、比較例1や比較例2のように、不織布製担体のかさ密度が0.02〜0.1の範囲を外れるものや、また比較例3や比較例4のように、その側部端面の厚さが5〜30mmの範囲にないものは捕獲性能が悪かった。また、保湿成分としてエタノールを用いた場合(比較例5)は、効果の持続性が劣り、更に比較例6の試験結果から、本発明の構成では、薬剤組成物としてゲル状よりも液状の方が好ましいことが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の飛翔害虫捕獲具は、飛翔害虫防除に極めて有用であり、これ以外の害虫防除にも応用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0031】
10 :トレイ部
11 :フランジ部
12 :固定片
20 :蓋部
21 :誘引部
22 :ベース部
23 :中空下端面
24 :エッジ部
25 :開口部
26 :接続部
27 :光反射部
28 :中心部
29 :開口部
30 :薬液保持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の薬剤組成物を不織布製担体に湿潤状態で保持させた薬液保持体をトレイ部に収納し、開口部を有する蓋部を前記トレイ部の中空天面に嵌着してなる飛翔害虫捕獲具において、前記薬剤組成物が殺虫成分と誘引成分と保湿成分を含有し、前記不織布製担体はそのかさ密度が0.02〜0.1で、かつその側部端面の厚さが5〜30mmである飛翔害虫捕獲具。
【請求項2】
前記薬液保持体の側部端面の少なくとも一部が露出した状態で収納されている請求項1に記載の飛翔害虫捕獲具。
【請求項3】
前記薬液保持体が前記トレイ部の内部側面と間隙を設けて収納されている請求項1に記載の飛翔害虫捕獲具。
【請求項4】
前記保湿成分が脂肪族多価アルコール、糖アルコール、及び増粘多糖類から選ばれる1種又は2種以上である請求項1ないし3のいずれかに記載の飛翔害虫捕獲具。
【請求項5】
前記脂肪族多価アルコールがグリセリンである請求項4に記載の飛翔害虫捕獲具。
【請求項6】
前記殺虫成分がジノテフランである請求項1ないし5のいずれかに記載の飛翔害虫捕獲具。
【請求項7】
コバエ防除用である請求項1ないし6のいずれかに記載の飛翔害虫捕獲具。

【図1】
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【図2】
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