説明

飛行場船

【課題】騒音の回避、安全性の向上のため、構造簡単、安価に造船でき、維持費及び人件費等商業採算のとれる、陸上用航空機を離着船できる飛行場船を提供する。
【解決手段】滑走路甲板101と、待機路甲板102とを設けた飛行場甲板10とこれを支持する複数個の下部船体20とを備え、滑走路甲板101の一部又は全部を上り勾配甲板1011に形成する。各下部船体20にポッド推進器を設け、間隔をあけて複数個直列に配置した下部船体列を、間隔をあけて2列又は2列以上並列に配置し、1つの下部船体に設けた発電機から各下部船体のポッド推進器に送電するようにした、飛行場船。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行場を設けた船の構造に関し、更に詳しくは、従来の航空母艦と異なり、陸上飛行場に専ら使用される航空機を離着船できるようにした飛行場甲板と、前記飛行場甲板を支持する複数個の下部船体とからなる飛行場船に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の航空母艦は、武器弾薬のほか航空機昇降機や航空機格納庫等を設けるため、船体構造が複雑な上に、船体の長さが約350m程度以下でなければ、旋回性能や推進性能が期待できず、また、航空機は蒸気カタパルや制動索等がなければ離着艦できない欠点があった。
また、従来の双胴船は、滑走距離の長い大型航空機を搭載することは、船体構造、旋回能力、推進能力等の欠点が予想されるので採用することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−174389号公報
【特許文献2】登録実用新案第3162131号公報
【特許文献3】実開昭60−130195号公報
【特許文献4】特開昭60−174388号公報
【特許文献5】特開2002−264895号公報
【特許文献6】特開2003−200891号公報
【特許文献7】特開2003−237690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、離着陸距離が比較的長い陸上用航空機を離着船できるようにすると共に、速度、旋回、横移動等の運動性能に優れた飛行場船を提供するものである。
また、本発明は、航空機の騒音等による住民に対する環境公害を回避できるようにした飛行場船を提供するものである。
さらに、本発明は、構造簡単に、安価に造船でき、維持費及び人件費等の商業採算がとれる飛行場船を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明飛行場船の請求項1の発明は、上記課題を達成するため、図示するように、航空機が発着できる滑走路甲板と、前記滑走路甲板に連接して航空機が待機できる待機路甲板とからなる飛行場甲板を設け、前記飛行場甲板の一部又は全部を、上り勾配に形成して、航空機の離着船距離を小さくできるようにし、また、波よけできるようにし、前記飛行場甲板を支持する各下部船体を、1個では復元性のない狭幅の船体幅に形成して、間隔をあけて、複数個、直列に配置すると共に、間隔をあけて、前記直列に配置した前記各下部船体を、2列又は2列以上並列に配置し、前記各下部船体にポッド推進器を設けたものである。
本発明飛行場船の請求項2の発明は、上記課題を達成するため、図示するように、請求項1において、前記複数個の下部船体のうち、1個の前記下部船体内に発電機とこれを駆動する機関を設け、前記発電機から前記各下部船体のポッド推進器に、前記飛行場甲板を介して送電できるようにしたものである。
本発明において、航空機は、通常の陸上用飛行機のほか、小型機、折畳飛行機、ヘリコプター等が含まれる。
また、本発明において、滑走路甲板は、通常、陸上滑走路長さ約1800m〜約2500m、滑走路幅約30m〜約60mの範囲の基準に対し、本願発明船の風向きに対する進行速度及び上り勾配甲板の滑走路甲板を配慮して、滑走路甲板の長さを大巾に短縮して定めることができる。待機路甲板は、滑走路甲板の片側又は両側に設けられるが、その甲板の長さ又は幅は、適宜短縮することができる。
また、上り勾配の滑走路甲板(スキージャンプ甲板を含む)は、甲板の一部又は全部に形成され、上り勾配角度は、航空機の離着船距離の短縮及び波よけのため、通常、5°〜15°の上り勾配角度の範囲内に設けられる。
さらに、飛行場甲板には、艦橋等のいわゆるアイランドは設けない方が好ましく、航空管制は搭載したヘリコプター等の航空機によるのが好ましい。
また、本発明において、下部船体は、飛行場甲板を支持するもので、複数個を、間隔をあけて、直列に配置すると共に、直列に配置した複数個の下部船体を、2列又は2列以上に、間隔をあけて、並列配置し、また各下部船体を、速度向上のため、1個では復元性がないほど狭幅に船体幅が形成される。また、各下部船体には、ポッド推進器を備えて、一せい稼働による推進力の増加、旋回性の向上及び横移動による接岸の迅速化をはかるものとする。
また、本発明において、ポッド推進器は、電動モーターをポッド(POD)内に格納して電動モーターの伝達軸にプロペラを直結したものをいい、プロペラには二重反転プロペラ式のものが含まれる。船内に据付けられた電動モーターからの機械的な伝達によりプロペラを回転させる機械式ポッド推進器は含まない。さらに、ポッドは360度旋回可能なもので、非旋回式のものは含まない。
【発明の効果】
【0006】
本発明飛行場船は、下部船体毎にポッド推進器を設けているので、各下部船体のポッド推進器の一せい稼働によって、前進又は後進、旋回、横移動等の各能力が格段に優れ、向かい風に直ちに追尾して滑走路甲板の大型航空機の離着船距離の大幅な短縮、飛行場甲板の接岸が迅速にできるほか、前述のポッド推進器を使用するので、多数個の下部船体のうち、1個の下部船体に発電機を装備して、各下部船体のポッド推進器に飛行場甲板を介して配線送電するだけでよく、各下部船体の船体構造の簡略化による造船費の低減、少数乗員による操船が可能となり、維持費及び人件費等の大幅節減により充分な商業採算が可能となる。
また、本発明飛行場船は、陸上飛行場と異なり、航空機の騒音等による環境公害を地域住民から完全に隔離できる。
さらに、本発明飛行場船は、漸次、各地の陸上飛行場に代るものとして造船できるので、各造船所、関連産業に経済上の大きな乗数効果を与え、景気振興策として大いに期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明飛行場船の実施例の全体概略を正面図的に示した説明図である。
【図2】図1を平面図的に示した説明図である。
【図3−1】ポッド推進器の概略説明図である。
【図3−2】別の実施例のポッド推進器の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の飛行場船が実施例1に示されている。
【実施例1】
【0009】
本発明飛行場船の実施例1が図1乃至図3−2に示されている。本発明実施例1の飛行場船は、飛行場甲板10と、6個の下部船体20と、6個のポッド推進器30を備えている。
飛行場甲板10は、全長1100m、幅60mの滑走路甲板101と、その両側に連接した全長1100m、幅60mの待機路甲板102及び102とを備えている。
各下部船体20は、全長300m、幅20mで、船尾に、ポッド推進器30を設けている。
ポッド推進器30は、いずれも1個の下部船体20(1)の船内に設けたディーゼル機関又はガスタービン機関等の駆動機関により駆動される発電機(図示しない)が設けられて、図3−1に示すように、各下部船体20のポッド推進器30のポッド31に送電されてポッド31内の電動モーター(図示しない)の回転軸と直結して推進プロペラ32を回転させることになる。各ポッド推進器30は、下部船体20に対し360°回転可能で、これにより各ポッド推進器30の推進プロペラ32は前進、後進、横移動等の全方位に推力を出せることになる。
なお、ポッド推進器30には、図3−2に示すポッド31の前後に推進プロペラ32(1)及び32(2)を設けて、それぞれ電動モーター33(1)及び33(2)の各回転軸に直結して下部船体20(1)から送電してもよく、この場合は、機構複雑な二重反転プロペラ(CRP)を使用することなく、推進プロペラ32(1)及び32(2)の互に反対方向の回転により、いわゆる回転流によるエネルギー損失を防止できる。
各下部船体20は、約100mの間隔に3個が直列配置されると共に、約120mの間隔で2列配置される。
従って、今、本発明飛行場船を、向かい風に対し追尾して30ノットで推進し、滑走路甲板101が5°の上り勾配甲板1011の場合、離着陸滑走距離約1500m前後のM社やB社の双発ジェット旅客機程度ならば、全長1100mの滑走路があれば充分離着船できることになる。また、横向き推進による接岸も迅速にできる。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明飛行場船は、構造簡単で造船費安く量産できる。
【符号の説明】
【0011】
10 飛行場甲板
101 滑走路甲板
1011 上り勾配甲板
102 待機路甲板
20、20(1) 下部船体
30 ポッド推進器
31 ポッド
32 推進プロペラ
33 電動モーター



【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機が発着できる滑走路甲板と、前記滑走路甲板に連接して航空機が待機できる待機路甲板とからなる飛行場甲板を設け、前記飛行場甲板の一部又は全部を、上り勾配に形成して、航空機の離着船距離を小さくできるようにし、また、波よけできるようにし、前記飛行場甲板を支持する各下部船体を、1個では復元性のない狭幅の船体幅に形成して、間隔をあけて、複数個、直列に配置すると共に、間隔をあけて、前記直列に配置した前記各下部船体を、2列又は2列以上並列に配置し、前記各下部船体にポッド推進器を設けたことを特徴とした飛行場船。
【請求項2】
前記複数個の下部船体のうち、1個の前記下部船体内に発電機とこれを駆動する機関を設け、前記発電機から前記各下部船体のポッド推進器に、前記飛行場甲板を介して送電できるようにしたことを特徴とした請求項1記載の飛行場船。



【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【公開番号】特開2013−107523(P2013−107523A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254820(P2011−254820)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【特許番号】特許第5097946号(P5097946)
【特許公報発行日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【出願人】(391042232)ワタナベ株式会社 (41)