説明

飛行時間監視を用いるレーザショックピーニングシステム

【課題】レーザショックピーニングプロセスを監視するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】本システム(10)及び方法は、コントローラ(16)に接続されたセンサ(14)を含む。コントローラ(16)は、入力部(36、40)及びプロセッサ(38)を含む。入力部(36、40)は、センサ(14)に接続されて、ワークピース(20)におけるレーザショック事象を示す信号を受信する。プロセッサ(38)は、入力部(36、40)に接続され、レーザショック事象に関連した残存エネルギーのワークピース(20)からセンサ(14)までの飛行時間(48)を確定し、かつ残存エネルギーの飛行時間からピーン品質を判定するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的にはレーザショックピーニングに関し、より具体的には衝撃(ショック)波の飛行時間の監視によってショックピーニングプロセスを監視するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザショックピーニングすなわちレーザショック処理(LSP)は、それによって衝撃波を部品の表面上に衝突させ、部品の外部層内に圧縮残留応力の領域を形成する方法である。処理部品の外部層内の圧縮残留応力は、繰返し疲労破壊に対する処理部品の有効寿命を増大させることが良く知られている。当然のことながら、部品の耐疲労破壊能力は、部分的には衝撃波の部品との結合品質に依存する。すなわち、衝撃波が部品表面において適切に結合されない場合には、得られたピーニング処理のピーン品質に悪影響を及ぼす。
【0003】
レーザショックピーニング処理中には、レーザ発生器は、処理対象部品に向けて配向されるレーザビームを生成する。レーザビームエネルギーの被処理部品との結合を改善するためには、部品とレーザ発生器との間に吸収層及び閉込め層が配置されるのが好ましい。一般的に、吸収層及び閉込め層は、部品に隣接して配置される。レーザビームは、通常は水である閉込め層を通過して、吸収層上に衝突するようにされる。吸収層は一般的に、テープ、ペイント、インク又は箔の薄い皮膜で形成され、一般に被処理部品に直接施されるか又はそれに極めて近接して保持される。閉込め層は一般的に、吸収層とレーザ発生器との間で吸収層に隣接して設置される。レーザビームの吸収層との相互作用が、吸収層のアブレーションを生成し、この吸収層のアブレーションが、最終的には吸収層/閉込め層の接触面から拡大する衝撃波を発生させる。閉込め層は、初期衝撃波の大部分が被処理部品に向けて配向されるのを確実にして、それによってレーザのエネルギーによって発生した衝撃波の該部品との結合を強化する。
【0004】
現行のレーザショックピーニングの実施法では、被処理部品が所望の処理効果を達成したのを保証するために大規模な破壊試験を必要とする。すなわち、幾つかの部品を処理しようとする場合には、処理部品の全数のうちの選択した数個が、残りの部品の品質を保証するために破壊試験されることになる。このタイプの破壊試験は、多くの場合、時間がかかりかつ導入及び実行に費用がかかる。加えて、そのような試験では、被処理部品のリアルタイムの個々のピーン品質の指標が得られない。破壊試験する部品は、あらゆる試験に先立って完全に処理される。後続部品の処理はその後、部品を破壊試験する時間を可能にするために一時中断するか又は品質基準を満たさない部品を製造する可能性がある状態で継続しなければならない。処理作業を中断すること及び/又は品質基準を満たさない後続部品を製造することは、全体のプロセス効率に悪影響を及ぼす。
【0005】
別のシステム及びプロセスは、リアルタイムのサンプル部品処理によってプロセス効率を改善しようとする。すなわち、これらのシステムは、非常に小さい部品又は試験金属片を処理して、その試験金属片の試験によって結合の品質を判定する。これらの方法は、品質管理のリアルタイム性を改善するが、それらはまた、試験金属片の結合品質を実際の被処理部品の結合と関係付けなければならない。そのような試験は、収集したデータが実際の被処理部品と関連していない場合には、データ特性及びデータ関連性を誤ったものにする可能性がある。さらに別のシステムは、表面硬度値及びピーン深さ及び形状データのような処理部品の特性を計測することによって結合品質を非破壊検査する。そのような方法は、結合品質のリアルタイムの変動を考慮に入れることができず、多数のピーン部位の極めて少数を分析するだけである。さらに別のシステムは、部品の処理中に収集したパラメータ及びデータを監視し、選択したグループの部品を破壊試験し、処理中に収集した広範囲のデータを破壊試験した部品のデータと比較する。この方法は、処理部品のグループの各部品の品質比較を可能にするが、この方法では、管理品質データを得るために、選択したグループの部品の破壊試験が依然として必要である。
【特許文献1】米国特許第5,591,009号公報
【特許文献2】米国特許第5,620,307号公報
【特許文献3】米国特許第5,674,328号公報
【特許文献4】米国特許第5,674,329号公報
【特許文献5】米国特許第5,675,892号公報
【特許文献6】米国特許第5,948,293号公報
【特許文献7】米国特許第5,951,790号公報
【特許文献8】米国特許第5,974,889号公報
【特許文献9】米国特許第5,987,991号公報
【特許文献10】米国特許第6,075,593号公報
【特許文献11】米国特許第6,254,703号公報
【特許文献12】米国特許第6,483,578号公報
【特許文献13】米国特許第6,512,584号公報
【特許文献14】米国特許第6,539,773号公報
【特許文献15】米国特許第6,554,921号公報
【特許文献16】米国特許第6,629,464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、ピーニングプロセスをリアルタイムに非破壊方式で品質監視することができるレーザショックピーニングシステム及び方法を設計することが望ましいと言える。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、レーザショックピーニングプロセスをリアルタイムに監視することができ、上記の問題点を解決するシステム及び方法を提供する。本システムは、処理対象部品に向けてレーザビームを配向するように構成されたレーザ発生器を含む。コントローラは、レーザ発生器に接続され、その作動を制御する。センサは、コントローラに接続され、ワークピース直近のレーザショック事象の発生を検出するように構成される。コントローラは、レーザショック事象に起因する残存エネルギーのワークピースからセンサまでの飛行時間を確定し、残存エネルギーの飛行時間からピーン品質を判定する。
【0008】
従って、本発明の1つの様態によると、コントローラは、入力部及びプロセッサを含む。入力部は、ワークピースにおけるレーザショック事象を示す変換器からの信号を受信するように構成される。プロセッサは、入力部に接続され、レーザショック事象に関連したエネルギーのワークピースから変換器までの移動時間を確定しかつ移動時間からピーン品質の判定を出力するように構成される。
【0009】
本発明の別の様態によると、レーザショックピーニングシステムは、レーザ源と、センサと、コントローラとを含む。レーザ源は、ワークピースを狙ってレーザビームを放射するように構成され、またセンサは、ワークピースに向って配向されて、ワークピースにおけるショック事象の発生を検出する。コントローラは、レーザ源及びセンサに接続され、レーザ源からの第1の信号とセンサからの第2の信号とを受信し、第1の信号及び第2の信号から飛行時間値を確定し、かつ飛行時間値からピーン品質を判定するように構成される。
【0010】
本発明のさらに別の様態によると、レーザショックピーニングプロセスを監視する方法を開示し、本方法は、レーザ源からワークピースに向けてのピーン事象を開始させるためのレーザビームの放射を検出する段階と、吸収層上へのレーザビームの衝突によって発生した衝撃波の発生に関連した残存エネルギーを検出する段階と、残存エネルギーの発生と残存エネルギーの検出との間の時間を確定する段階とを含む。次に、ピーン品質が、確定した時間から導出される。
【0011】
本発明の様々な他の特徴、目的及び利点は、以下の詳細説明及び図面から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図面は、本発明を実施するために現在考えられる1つの好ましい実施形態を示す。
【0013】
図1は、本発明によるレーザショックピーニングシステム10を示す。システム10は、コントローラ16に接続されたレーザ源12と空中音響信号センサのようなセンサ14とを含む。レーザ源12は、高ピーク出力Qスイッチ型レーザ源であるのが好ましいが、本発明の要旨では他のレーザ源を使用することもできる。信号処理装置18が、センサ14とコントローラ16との間に配置され、センサ14から入力信号を受信し、かつ変更出力信号、好ましくは増幅出力信号をコントローラ16に送るように構成される。
【0014】
レーザ源12及びセンサ14は、ファン、圧縮機又はタービン部品或いはレーザショック処理しようと意図したいずれかの部品のようなワークピース20に向けて配向される。閉込め層22及び吸収層24は、ワークピース20に対して比較的直近に保持される。閉込め層22は、矢印23で示すように、水の比較的薄い層がレーザ源12と吸収層24との間に保持されるようにノズル26によってワークピース20を狙って配向された水流であるのが好ましい。薄いペイント、テープ、インク又は箔の皮膜であるのが好ましい吸収層24は、閉込め層22とワークピース20との間に保持される。
【0015】
システム10の作動中、レーザ源12は、ワークピース20を狙って配向された矢印28で示すようなレーザビームを放射する。レーザビーム28は、約20ナノ秒のパルス持続時間において1〜50ジュールのエネルギー信号を有するのが好ましい。当然のことながら、他のレーザビームのエネルギー信号が、想定され、レーザショックプロセスにより望ましいピーンを得るために必要なものとして本発明で適用可能である。レーザ源12は、レーザ固定具30に取り付けられ、またワークピース20は、ワークピース固定具32に取り付けられる。一般的にロボット制御による固定具30、32の操作は、レーザ源12及びワークピース20の精密な移動を可能にし、それによってレーザビーム28は、吸収層24上に正確に衝突するようになる。
【0016】
ピーンを望む場合には、レーザビーム28は、閉込め層22を通過し、吸収層24上に衝突する。吸収層24上へのレーザビーム28の衝突により、衝撃(ショック)波(図示せず)が発生し、この衝撃波が、吸収層24上へのレーザビーム28の衝突の部位からほぼ半径方向外向きに伝播する。閉込め層22は、最初にワークピース20から離れる方向に配向された衝撃波の一部分をワークピース20に向って戻すように配向し直す。そのような閉込めは、レーザビーム28のエネルギーのワークピース20との結合を改善する。レーザビーム28のエネルギーのワークピース20との有効な結合は、レーザビーム28のエネルギーの大部分がワークピース20のピーン処理のために使用されるのを確実にする。
【0017】
レーザビーム28の衝突に関連した部位がピーン処理されると同時に、残存エネルギーの一部分は、矢印34で示すようにワークピース20から離れる方向に放射される。センサ14は、ワークピース20に対して残存エネルギー34を検出するように配置される。当然のことながら、センサ14は、多様なタイプの音波/衝撃波及び/又は光の信号を含む残存エネルギーのあらゆるものを検出するように構成することができる。センサ14は、残存エネルギー34に関連した空中音響信号を監視するように構成されるのが好ましい。センサ14は、残存エネルギー34の検出を示す電気信号を、矢印36で示すように信号処理装置18を介してコントローラ16の第1の入力部に伝える。
【0018】
コントローラ16は、センサ14からの第1の入力36と矢印40で示すようなレーザ源12からの第2の入力とを受けるプロセッサ38を含む。図2に示すように、システム10が初期化41されると、ワークピース及びレーザ源は、レーザ源によって生成したレーザビームが所望のピーン部位においてワークピースに衝突するように整列される42。レーザパルスが生成される44と、この生成したレーザパルスは、ワークピース上に衝突し、衝撃波及びそれに関連した残存エネルギーを発生させる。プロセッサは、特定のピーンに関連したショック事象データを収集し46、次に残存エネルギーがワークピースからセンサまで移動するのに要した飛行時間(T.O.F)を確定する。所定の飛行時間値は、レーザ源のワークピースからの距離値と、センサのワークピースからの距離値と、第1及び第2の信号から導出されるレーザ源によって生成したレーザビームのエネルギー値とから計算される。
【0019】
ここで、本発明の背後にある理論の簡単な説明を行う。残存エネルギーに関連した衝撃波の速度は、ワークピースのレーザ入射ポイントに比較的近接した空気の周囲音波速度よりも遥かに高い。さらに、レーザ源の初期エネルギー準位が高ければ高いほど、ピーン事象に起因する初期衝撃波速度と空気における周囲音波速度との間の差異はそれだけ大きくなる。従ってピーン事象に起因する衝撃波のワークピースから既知の位置におけるセンサまでの移動(飛行)時間は、ピーニング処理に与えられるエネルギーが増加するにつれて、減少することになる。ピーニング処理に与えられた、又は衝撃波を発生するピーンの形成に必要なプラズマの生成に使用されるエネルギーは、レーザショック処理が如何に良好に実行されたかの指標を示す。残存エネルギー衝撃波の飛行時間を確定することにより、レーザショック処理及びそれにより得られたピーン品質のリアルタイムな指標が得られる。図3に関してさらに説明するように、残存エネルギー波の飛行時間は、レーザエネルギーの部品との結合品質の指標を示し、部品のリアルタイムな処理の間に個々のピーン品質を判定するのに使用することができる。
【0020】
元に戻って図2に参照すると、確定した飛行時間48は、ステップ50において、その飛行時間が容認可能であるか否かを判定するために所定のシステムに特有な所望の飛行時間値と比較される。すなわち、容認可能な飛行時間値は、レーザ源によって与えられた出力、レーザ源とワークピースとの間の距離、及びワークピースとセンサとの間の距離を含むピーニングシステムの物理的構成に基づいて確定されることになる。よって所定のシステムの場合には、ステップ50において行われる比較は、固定値に対するもの、又は最低限でも飛行時間値の範囲に対するものである。
【0021】
容認不能な飛行時間52が確定された場合には、任意選択的なカウンタ54が、容認不能な飛行時間データの発生回数を数え始める。容認不能な飛行時間事象の発生回数を数えることに加えて、任意選択的警報56を発して容認不能な飛行時間事象の修正可能な原因に対処する機会を与えるのを可能にすることができる。部品が容認不能な飛行時間事象の最大数を超過した場合58、60には、それは該部品が容認不能なピーン事象に対する許容基準を既に越えたことを示し、該部品は廃棄される62。部品を廃棄した後に、オペレータは、その後の不合格な処理を回避するために、廃棄の原因が部品の欠陥のようにピーニングプロセスに無関係であることを確認するか、又は部品/構成要素の固定のようなハードウエアの構成/作動を修正することが可能になる64。一旦部品が廃棄されてしまうと62、部品はまた完全なもの66として分類され、それによって既に容認不能となった部品の更なる処理が回避される。
【0022】
容認不能な飛行時間が導出され52、かつカウンタが最大カウントを超過していない58、68場合には、システム調整70を行って容認不能な飛行時間事象の反復を回避することを試みる。システム調整には、例えばレーザ放射エネルギーの調整、部品のレーザ源との整列の調整及び/又は閉込め層の方向及び厚さの調整を含むことができる。調整したレーザエネルギーパラメータ又はピーン事象パラメータに関係なく、パラメータの自動調整は、容認不能なピーン事象の起こり得る原因の自動修正に基づいてピーニング処理を継続するのを可能にする。
【0023】
システム調整70が完了すると、部品及びレーザ源は、後続のピーン部位の処理のために整列し直される42。導出された飛行時間が容認可能である50、72場合には、部品が所望の数のピーン事象を受け終わったことを確認するために、部品の完全さがチェックされる74。部品が所望の数のピーン事象を受け終え74、66、かつカウント58が超過しなかった68場合には、部品の品質は容認可能であり、部品の処理は完了する76。部品が所望の数のピーン事象を受け終わらなかった74、78場合には、部品及びレーザ源は、部品の処理が完了する66まで、後続のピーン事象のために整列し直される。そのようなシステムにより、それぞれレーザピーニングプロセスの再現可能な、多面的なかつリアルタイムな監視、調整及び処理並びにそれらに関連した部品が得られる。加えて、レーザショック事象の残存エネルギーの飛行時間を監視することによって、センサ及びその制御装置は、レーザショック事象の部位から幾分離れた位置に設置することができる。センサ14は、レーザショック部位から約50mmの位置に配置され、好ましくはレーザショック部位から少なくとも30mmの位置に配置される。そのように配置することにより、センサがレーザショック事象に近接していることに起因してセンサが受けるストレスが軽減される。加えて、飛行時間値は、ワークピースに対するセンサのセットオフ距離及びレーザショック部位に対するセンサの配向とは本質的に独立して確定することができるので、残存エネルギーの飛行時間の関数としてピーン品質を判定することは、迅速かつ有効に特定の製造環境に適合させることができる。
【0024】
図3に示すように、レーザビームのエネルギー準位を調整した時に、残存エネルギー衝撃波の飛行時間値は、レーザ発生衝撃波エネルギーのワークピースとの所望の結合に関連した統計値と比較することができる。そのような関連性により、残存エネルギー信号の飛行時間値によって確定したものとして、容認可能なピーンが形成されたことを示す指標が得られる。図3のプロットAは、ワークピース上に衝突したパルス当たり1.27ジュールのレーザビームを示す。レーザビームのワークピース上への衝突の後に、約658.5マイクロ秒の飛行時間が、約−112ミリボルトの識別特性振幅を用いて確定される。プロットBに示すように、レーザ源のエネルギー準位がパルス当たり2.03ジュールまで上昇した場合には、より高速かつより高い振幅信号が、レーザショック事象から認められる。すなわち、約641マイクロ秒のレーザショック事象の飛行時間が、約−180ミリボルトの振幅と関係付けられる。プロットCに示すように、レーザビームのエネルギーがパルス当たり3.51ジュールまで上昇した場合には、623.1マイクロ秒の飛行時間値が、−280ミリボルトの振幅で認識される。当然のことながら、これらのエネルギー準位は、単なる例示であって、ピーン事象を生成するためにレーザ源の他のエネルギー準位を使用することができる。
【0025】
図2に関して前に説明したように、レーザビームエネルギーの部品との結合品質が向上するにつれて、残存エネルギー又は衝撃波がショック位置からセンサ14まで移動するのに要する時間は、減少する。すなわち、レーザパルスの一層多くのエネルギーが、衝撃波内に結合されて部品内にピーンを形成するのに使用されたことになる。パルスエネルギーを変化させずにレーザパルスエネルギーの衝撃波内への結合効率を低下させるおそれがある幾つかの事象が存在する。これらの事象には、例えば故障したビーム送出光学系、ビーム送出経路の障害物及び/又は閉込め層の中断/分裂が含まれる可能性がある。元に戻って図3を参照すると、プロットA〜Cによって示した比較可能な出力レーザパルスと比較した時に右側にシフトした検知振幅を有する特定のピーンパルスは、その特定のピーンパルスが該特定のパルスの残存エネルギーがセンサに到達するのに好ましい時間よりも多くの時間を要したことを示す。すなわち、残存エネルギーが所望の飛行時間よりもさらに遅く移動したことになり、このことは、不十分な結合が発生し、従って不満足なピーンが形成されたことを示す。当然のことながら、それぞれのレーザ出力レベルにおいてそれぞれの被処理部品に関連した飛行時間許容範囲が存在し、この制御範囲内のあらゆる飛行時間値は、容認可能なピーンの形成を示すことになる。同様に、多数のピーンを含む部品の場合には、容認可能な数の不満足なピーン事象を定める管理限界を設けることができる。そのような管理限界により、多数の容認不能なピーンが形成されるがその時点では部品を廃棄することができる時点までは部品を処理することが可能になることになる。そのようなシステムでは、複数の部品の反復処理、ピーニングシステムのオンザフライ制御及び調整、リアルタイムな個別のピーン品質監視、並びに被処理部品の非破壊品質管理が可能になる。
【0026】
従って、本発明の1つの実施形態によると、コントローラは、入力部及びプロセッサを含む。入力部は、ワークピースにおけるレーザショック事象を示す、変換器からの信号を受信するように構成される。プロセッサは、入力部に接続され、レーザショック事象に関連したエネルギーのワークピースから変換器までの移動時間を確定しかつ移動時間からピーン品質の判定を出力するように構成される。
【0027】
本発明の別の実施形態は、レーザ源とセンサとコントローラとを有するレーザショックピーニングシステムを含む。レーザ源は、ワークピースを狙ってレーザビームを放射するように構成され、またセンサは、ワークピースに向って配向されて、ワークピースにおけるショック事象の発生を検出する。コントローラは、レーザ源及びセンサに接続され、レーザ源からの第1の信号とセンサからの第2の信号とを受信するように構成される。コントローラはさらに、第1の信号及び第2の信号から飛行時間値を確定し、飛行時間値からピーン品質を判定するように構成される。
【0028】
本発明のさらに別の実施形態は、レーザショックピーニングプロセスを監視する方法を含み、本方法は、レーザ源からワークピースに向けてのピーン事象を開始させるためのレーザビームの放射を検出し、吸収層上へのレーザビームの衝突によって発生した衝撃波の発生に関連した残存エネルギーを検出し、残存エネルギーの発生と残存エネルギーの検出との間の時間を確定し、かつ確定した時間からピーン品質を導出する。
【0029】
本発明を好ましい実施形態に関して説明してきたが、明確に述べたものに加えて均等形態、変更形態及び修正形態が可能でありかつそれらは提出した特許請求の範囲の技術的範囲に属することを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明によるレーザピーニングシステムを示す図。
【図2】図1のレーザピーニングシステムの制御プロセスを示す図。
【図3】異なるエネルギー準位を有する各種のレーザビームについての幾つかの残存エネルギー振幅及び飛行時間のグラフ比較を示す図。
【符号の説明】
【0031】
10 レーザショックピーニングシステム
12 レーザ源
14 センサ
16 コントローラ
18 信号処理装置
20 ワークピース
22 閉込め層
23 閉込め層流
24 吸収層
26 ノズル
28 レーザビーム
30 レーザ固定具
32 ワークピース固定具
34 矢印で示す残存エネルギーの一部分
36 矢印で示す第1の入力
38 プロセッサ
40 矢印で示す第2の入力
41 初期化
42 ワークピース及びレーザ源を整列させる
44 レーザパルスを生成する
46 プロセッサがショック事象データを収集する
48 確定した飛行時間
50 そこで比較を行う
51 レーザビームのエネルギーを増大させる
52 容認不能な飛行時間
54 任意選択的なカウンタ
56 任意選択的な警報
58 容認不能な飛行時間事象の最大数
60 容認不能な飛行時間事象58の数
62 部品を廃棄する
64 その後の不合格な処理を回避する
66 部品を廃棄し、完全なものとして分類する
68 最大カウント58
70 システム調整
72 導出した飛行時間が容認可能である50
74 部品の完全さのチェック
76 部品の処理が完了する
78 所望のピーン事象の数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショック事象を検出するようにワークピース(20)に向って配向されたセンサ(14)と、
レーザ源(12)及び前記センサ(14)に接続されたコントローラ(16)と、
を含み、前記コントローラ(16)が、
(A)前記レーザ源(12)からの第1の信号(40)と前記センサ(14)からの第2の信号(36)とを受信し、
(B)前記第1の信号(40)及び第2の信号(36)から飛行時間値(48)を確定し、
(C)前記飛行時間値からピーン品質(72)を判定する、ように構成される、
レーザショックピーニングシステム(10)。
【請求項2】
前記センサ(14)と前記コントローラ(16)との間に配置され、前記センサ(14)から受信した信号を処理するように構成された増幅器(18)をさらに含む、請求項1記載のレーザショックピーニングシステム(10)。
【請求項3】
前記センサ(14)と前記コントローラ(16)との間に配置され、前記センサ(14)から受信した信号を処理するように構成されたフィルタをさらに含む、請求項1記載のレーザショックピーニングシステム(10)。
【請求項4】
前記ピーン品質が、該システム(10)のリアルタイムな作動中に判定される、請求項1記載のレーザショックピーニングシステム(10)。
【請求項5】
前記ピーン品質を多数のピーンの平均的ピーンと多数の部品のうちの部品とに関係付けるように構成された電子データベースをさらに含む、請求項1記載のレーザショックピーニングシステム(10)。
【請求項6】
前記コントローラ(16)が、前記判定したピーン品質が閾値を越えた時に警報(56)を発するように構成される、請求項1記載のレーザショックピーニングシステム(10)。
【請求項7】
前記コントローラ(16)が、前記警報(56)が発せられた時に、レーザビーム(28)の後続放射のための前記レーザ源(12)の作動を一時中断するように構成される、請求項6記載のレーザショックピーニングシステム(10)。
【請求項8】
前記コントローラ(16)が、位置決めシステム(30、32)の作動を制御するように構成され、前記位置決めシステム(30、32)が、レーザビーム(28)が所望の位置にかつ所望の傾斜角で前記ワークピース(20)に衝突するように前記レーザ源(12)及びワークピース(20)を配向するように構成される、請求項1記載のレーザショックピーニングシステム(10)。
【請求項9】
前記センサ(14)が、前記ワークピース(20)から少なくとも30mmの位置に配置される、請求項1記載のレーザショックピーニングシステム(10)。
【請求項10】
容認不能なピーン事象の数を監視するように構成されたカウンタ(54)をさらに含む、請求項1記載のレーザショックピーニングシステム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−152434(P2007−152434A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−324328(P2006−324328)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】