説明

食中毒検出用プライマー、及び食品媒介病原菌の迅速検出方法

本発明は、食品媒介病原菌の検出用プライマー及び食中毒検出方法に関するものである。特に、本発明はサルモネラ属菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌O-157、リステリア・モノサイトゲネス及び腸炎ビブリオそれぞれに対して特異的であって、これらを迅速かつ正確に検出するのに利用されるPCRプライマー、前記プライマーを利用した食中毒に対する検出方法及び検出キットに関する。本発明の検出方法を利用すれば、食品媒介病原菌を100〜10CFU/mlまで検出することができ、5時間以内に食中毒の迅速な調査を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品媒介病原菌(food-borne pathogen)検出用プライマー、及びこれを利用した食中毒(food poisoning)検出方法に関する。より詳しくは、PCRプライマーを利用して食中毒の原因になる病原菌を迅速且つ正確に検出する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食中毒は発熱、吐き気、嘔吐、下痢及び腹痛などの症状を伴う疾患で、細菌が原因となる細菌性食中毒が大部分である。細菌性食中毒はその発病形態に応じて感染型、毒素型に分類される。
【0003】
感染型食中毒は細菌に汚染された食品を摂取し、細菌が腸管内で増殖することによって引き起こされる。感染型食中毒の主な原因菌は、サルモネラ属菌(Salmonella spp.)、腸炎ビブリオ(ビブリオ・パラヘモリチカス:Vibrio parahaemolyticus)、大腸菌(エシェリキア・コリ:Escherichia coliO157:H7等である。
【0004】
毒素型食中毒は食品中で細菌が増殖しながら産生される毒素によって発生する食中毒である。したがって、この場合は、原因菌が食品内で既に死滅した後も、残存する毒素が食中毒を引き起こすことができる。黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス・アウレウス:Staphylococcus aureus)、ボツリヌス菌(Clostridiumbotulinum)等がこれに該当する。
【0005】
食中毒発生に必要な細菌の数は細菌の種類(タイプ)によって異なる。通常は、10〜10CFU/g以上の細菌が必要である。しかし、大腸菌O157:H7やリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)の場合には、10〜1000個の菌数のみでも食中毒を発病させることができる。食中毒を誘発する細菌の種類及び数は下記表1の通りである。
【0006】
【表1】

【0007】
食中毒は、団体給食及び外食機会の増加などの食生活パターン変化と、地球温暖化及び室内温度上昇などの環境的変化によって食中毒の発生が増加し、そして、集団発生として大規模に生ずる傾向がある。食中毒を早期に予防するための食中毒を引き起こす病原菌を検出する方法の開発が早急に要求されている。
【0008】
現在使用されるサルモネラ属菌の検出方法は、緩衝ペプトン水(BPW)で先行培養し、細菌を選択培地で培養する1次検証工程と、生化学的、血清学的分析の2次検証工程を有し、通常、病原菌の同定に約5日から6日かかる。また、迅速な検出のため利用されるPCR方法は、これも分析可能な病原菌量をサンプルの培養によって得なければならず、検出には一日以上かかる。
【0009】
病原菌の培養過程を必要としない、食中毒を引き起こす病原体の迅速な検出方法の開発が、早急に要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記従来技術の問題を解決するため、本発明の目的は、人において食中毒を起こす病原菌の特異的な遺伝子を選択的に増幅するプライマーを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、人において食中毒を起こす病原菌に対して、高い検出精度(detection accuracy)及び特異性をもつ2対のプライマーを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、人において食中毒を起こす病原性菌の特異的な遺伝子を選択的に増幅するプライマーでのPCR反応を利用することによって、病原菌を正確に検出し、診断時間を4日〜6日から約12時間に短縮することである。
【0013】
また、本発明の別の目的は、人において食中毒を起こす病原性微生物の特異遺伝子を選択的に増幅するプライマーでのPCR反応を利用することによって、短時間内に正確に病原菌を検出するキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的を達成するため、本発明は、下記1)〜5)のプライマー対からなる群より選択された1種以上の病原菌検出ためのプライマー対を提供する:
1)配列番号3及び4のプライマーを含むサルモネラ属菌検出用プライマー対;
2)配列番号7及び8のプライマーを含む黄色ブドウ球菌検出用プライマー対;
3)配列番号11又は13、及び配列番号12又は14のプライマーを含む大腸菌O157:H7検出用プライマー対;
4)配列番号17及び18のプライマーを含むリステリア・モノサイトゲネス検出用プライマー対;及び、
5)配列番号21又は23、及び配列番号22又は24のプライマーを含む腸炎ビブリオ検出用プライマー対。
【0015】
さらに、本発明は、5種類の病原菌の特異的な遺伝子を増幅できる前記1)〜5)のプライマー対からなる群より選択された1種以上の病原菌検出のためのプライマー対を利用したPCRでの病原菌検出のための方法に提供するものである。
【0016】
さらに、前記PCRで病原菌を検出する方法において、本発明は、下記6)〜10)のプライマー対からなる群より選択された1種以上の追加的なプライマー対を使用することができる:
6)配列番号1及び配列番号2のプライマーを含むサルモネラ属菌検出用プライマー対;
7)配列番号5及び配列番号6のプライマーを含む黄色ブドウ球菌検出用プライマー対;
8)配列番号9及び配列番号10のプライマーを含む大腸菌O157H7検出用プライマー対;
9)配列番号15及び配列番号16のプライマーを含むリステリア・モノサイトゲネス検出用プライマー対;及び
10)配列番号19及び配列番号20のプライマーを含む腸炎ビブリオ検出用プライマー対。
【0017】
前記追加的なプライマー対は、ネステッドPCRの第1ラウンドの増幅時に使用され、そして高いPCR効率で病原菌の検出限界を顕著に増進させる。前記追加的なプライマー対を利用したネステッドPCRの場合、PCRを2段階で実施することができるか、又は前記2段階で使用されるプライマー対2種を同時に使用して1段階で実施することができる。
【0018】
さらに、本発明は、病原菌検出用PCRプライマー、反応緩衝液及びTaq DNAポリメラーゼを含む、PCRによって病原菌を検出するためのキットを提供する。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の病原菌検出用プライマー対は、サルモネラ属菌、黄色ブドウ球菌 、大腸菌O157、リステリア・モノサイトゲネス及び腸炎ビブリオの特異的な遺伝子を短時間に、正確に増幅させ、100〜10CFU/mlの検出限界を有する。したがって、前記プライマー対を利用して、5時間以内に感染の発生の急速な疫学調査を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図面の簡単な説明
図1は、サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella Enteritidis)(KCCM12021)のネステッドPCRの電気泳動結果である。
図2は、黄色ブドウ球菌(KCCM1927)のネステッドPCRの電気泳動結果である。
図3は、大腸菌O157H7(ATCC12024)のネステッドPCRの電気泳動結果である。
図4は、リステリア・モノサイトゲネス(ATCC19112)のネステッドPCRの電気泳動結果である。
図5は、腸炎ビブリオ(KCCM11965)のネステッドPCRの電気泳動の結果である。
図6は、配列番号3及び4で示すサルモネラ属菌検出用プライマー対の反応特異性を示す電気泳動結果である。
図7は、配列番号7及び8で示す黄色ブドウ球菌検出用プライマー対の反応特異性を示す電気泳動結果である。
図8は、配列番号15〜18で示すリステリア・モノサイトゲネス検出用プライマー対の反応特異性を示す電気泳動結果である。
図9は、研究室で人為的に汚染させた多様な食品におけるサルモネラ菌(Salmonella)検出の電気泳動結果である。
図10は、配列番号1及び2で示すプライマー対を利用したPCRの結果と、配列番号1〜4で示す2種のプライマー対を利用したマイクロ−PCRの結果の比較である。
図11は、配列番号1〜4に示す2種のプライマー対を利用したサルモネラ・エンテリティディスのネステッドPCRの電気泳動結果である。
図12は、配列番号3〜4に示すプライマー対を利用したサルモネラ・エンテリティディスのマイクロ−PCRの電気泳動結果である。
図13は、配列番号7〜8に示すプライマー対を利用した黄色ブドウ球菌のマイクロ−PCRの電気泳動結果である。
図14は、配列番号11及び12に示すプライマー対を利用した大腸菌O157:H7のマイクロ−PCRの電気泳動結果である。
【0021】
以下、本発明をより具体的に説明する。
【0022】
本発明は、食中毒を誘発する病原菌の検出方法に関する。前記病原菌は、サルモネラ属菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌O157:H7、リステリア・モノサイトゲネス、及び、腸炎ビブリオからなる群から選択される1種とすることができる。
【0023】
本発明は、前記病原菌の特異的な遺伝子を検出するために病原菌の特異的な遺伝子を増幅するためのプライマー対を提供する。
【0024】
本発明のプライマー対は、5種の病原菌の特異的な遺伝子を、異なるヌクレオチドサイズで同時に検出することができる。具体的な例は次の通りであり、配列は表2に記載されている。本発明のプライマー対は、広く知られたPCR法、例えば、ネステッドPCR又はマイクロ−PCRにおいて使用可能である。
【0025】
【表2】

【0026】
サルモネラ属菌検出用プライマー対は、配列番号3及び4に示されたプライマー対からなり、そしてサルモネラ属菌に特異的な遺伝子産物の約200塩基対を増幅する。ネステッドPCRの場合、配列番号1及び2のプライマーを含むサルモネラ属菌に対する公知のプライマー対を、上記プライマー対と同時にPCR反応させることができ、又は増幅の第1ラウンドにおいて反応させ、そして第2ラウンドにおいて産物を上記サルモネラ属菌検出用プライマー対と反応させることができる。前記配列番号1及び2を含むプライマー対は、約678塩基対の特異的な遺伝子を増幅する。
【0027】
配列番号7及び8で示す黄色ブドウ球菌検出用プライマー対は、黄色ブドウ球菌に特異的な約136塩基対の遺伝子産物をする。ネステッドPCRに対して、配列番号5及び6のプライマーを含む黄色ブドウ球菌に対する公知のプライマー対を、上記プライマー対と同時に反応させることができ、又は増幅の第1ラウンドにおいて反応させ、そして第2ラウンドにおいて産物を上記黄色ブドウ球菌検出用プライマー対と反応させることができる。前記配列番号5及び6を含むプライマー対は、特異的な遺伝子の約678塩基対を増幅する。
【0028】
大腸菌O157検出用プライマー対は、配列番号11又は13に示すセンスプライマー、及び配列番号12又は14に示すアンチセンスプライマーからなる、例えば、大腸菌O157検出用プライマー対は、大腸菌O157に特異的な遺伝子の約108bpを増幅する配列番号11及び12に示すプライマーを含み、そして、大腸菌O157に特異的な遺伝子の約129bpを増幅する配列番号13及び14に示すプライマーを含む。
【0029】
ネステッドPCRに対して、配列番号9及び10を含む公知のプライマー対を、上記プライマー対と同時に反応させることができ、又は増幅の第1ラウンドにおいて反応させ、そして第2ラウンドにおいて産物を上記大腸菌O157検出用プライマー対と反応させることができる。配列番号9及び10に示すプライマー対は、特異的な遺伝子の約208塩基対を増幅する。
【0030】
配列番号17及び18に示すリステリア・モノサイトゲネス検出用プライマー対は、リステリア・モノサイトゲネスに特異的な遺伝子の約191塩基対を増幅する。
【0031】
ネステッドPCRに対して、配列番号15及び16を含むリステリア・モノサイトゲネス検出用の公知のプライマー対を、上記プライマー対と同時に反応させることができ、又は増幅の第1ラウンドにおいて反応させ、そして第2ラウンドにおいて産物を上記リステリア・モノサイトゲネス検出用プライマー対と反応させることができる。配列番号15及び16に示すプライマー対は、リステリア・モノサイトゲネスに特異的な遺伝子の約454塩基対を増幅する。
【0032】
腸炎ビブリオ検出用プライマー対は、配列番号21又は23に示すセンスプライマー、及び配列番号22又は24に示すアンチセンスプライマーからなる。例えば、腸炎ビブリオ検出用プライマー対は、腸炎ビブリオに特異的な遺伝子の約219bpを増幅する配列番号21及び22に示すプライマーを含み、そして、腸炎ビブリオに特異的な遺伝子の約153bpを増幅する配列番号23及び24に示すプライマーを含む。
【0033】
ネステッドPCRに対して、配列番号19及び20を含む腸炎ビブリオ検出用の公知のプライマー対を、上記プライマー対と同時に反応させることができ、又は増幅の第1ラウンドにおいて反応させ、そして第2ラウンドにおいて産物を上記腸炎ビブリオ検出用プライマー対と反応させることができる。配列番号19及び20に示すプライマー対は、腸炎ビブリオに特異的な遺伝子の約678塩基対を増幅する。
【0034】
本発明の検出方法は、前記1種の病原菌に対するPCRプライマー対を利用して、それぞれの病原菌を検出するのみでなく、前記2種以上の病原菌を2種以上のPCRプライマー対を利用してマルチプレックスPCRを通して検出することができ、前記5種の病原菌を1度に迅速且つ正確に検出することができる。
【0035】
本発明の検出方法のPCR反応条件は、PCRの様々な種類(例えば、ネステッドPCR、マルチプレックスPCR、マイクロ−PCR、シングルPCR)における一般的なPCR反応条件、又はその一部変形とすることでき、これは本願発明が属する技術分野における当業者であれば、容易に予測できる範疇に該当する。
【0036】
前記ネステッドPCRは、PCRの感度を高めるために一次PCR内にインナープライマー(internal primer)を利用する2段階のPCR反応である。最初に、一次プライマーと、サンプルからの鋳型DNAを利用して1次PCR反応を行う。前記反応産物と内部プライマー(inner primer)での2次PCR反応が、検出感度を増加させる遺伝子増幅法を提供し、そして、PCR Primer,A Laboratory Manual,2ndedition、p65に詳しく記載されている。
【0037】
小型PCR用チップを利用する前記マイクロ−PCRは、チップ上に、鋳型DNAとインナープライマーのみ含む20μl反応組成物を作製することができ、ここで、1μlを取ってシリコンチップに注入したものである。少量の反応組成物を使用するという点及びモニタリングが容易である点の長所がある。前記チップを、TMC−1000モジュールにマウントさせ、そして、DNA増幅を、PCR反応中にリアルタイムでモニターする。マイクロ−PCR TMC-1000(登録商標)(三星テクウィンによって製造されたPCR装置)が市販の装置の例である。
【0038】
PCRは、通常のサーマルブロックPCR(thermal block PCR)又はマイクロ−PCR装置を利用して実施できるが、これに限定されるものではない。
【0039】
本発明の検出方法は、前述の病原菌が発見される全ての物質を対象として実施することができ、好ましくは食品または飼料に対して実施できる。例えば、病原菌の汚染が疑われる試料を、滅菌水又は0.85%の生理食塩水に懸濁した後、プロテイナーゼKで処理する。ペレットを回収した後、熱抽出(heat extract)してPCR試料を調製し、PCRを実施する。得られたPCR結果は、一般的なPCR検出方法、例えば、電気泳動等によって、分析される。前記熱抽出は、一般的なDNA分離方法、例えば、前記ペレットを滅菌水に懸濁させ、そしてフェノール/クロロホルム(1:1容積混合物)混合液を処理した後、上層を収得しエタノールと混合した後、遠心分離してDNAペレットを収得するものである。具体的な反応条件及び時間は通常の通りである。
【0040】
本発明による検出方法は、病原菌を特異的且つ効率的に検出することができ、そしてネステッドPCRは病原菌の検出限界を顕著に向上させる。特に、検出限界10CFU/mlを100〜10CFU/mlに増進させる。
【0041】
また、本発明は、1種以上の病原菌を検出するためのプライマー対を含む病原菌検出キットを提供する。病原菌検出キットは、PCR微生物検出キットの通常の構成成分(反応緩衝液、Taq DNAポリメラーゼ、標識物質等)含み、そしてプライマー7対(配列番号3〜4、7〜8、11〜14、17〜18、21〜24)を含む。
【0042】
本発明の好ましい一実施例において、検出キットは以下を含む;
(1)配列番号3〜4、配列番号7〜8、配列番号11〜14、配列番号17〜18、及び配列番号21〜24に示すプラマーから構成される群から選択される1種以上のプライマー対を含むプライマーセット
(2)反応緩衝液
(3)Taq DNAポリメラーゼ。
【0043】
また、前記検出キットは、配列番号1〜2、配列番号5〜6、配列番号9〜10、配列番号15〜16及び配列番号19〜20に示すプライマーからなる群から選択される1種以上のプライマー対を更に含む。
【0044】
本発明の好ましい一実施例において、検出キットは以下を含む;
(1)配列番号3〜4、配列番号7〜8、配列番号11〜14、配列番号17〜18、及び配列番号21〜24に示すプライマーからなる群から選択される1種以上のプライマー対を含むプライマーセット;
(2)(Taq DNAポリメラーゼ、SYBRグリーンを含む、4XグリーンスターPCRマスターミックス(4X Greenstar PCR Master Mix)
(3)コントロールDNA、及び
(4)10mMのMgCl
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例を記載する。下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるわけではない。
【0046】
実施例1:5種の病原菌の特異的DNAを増幅するためのPCRプライマーの設計及び調製
サルモネラ属菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌O157、リステリア・モノサイトゲネス及び腸炎ビブリオを同時に検出するため、前記表2にリストされたプライマーを設計及び合成した。
【0047】
実施例2:ネステッドPCR
2−1.サルモネラ属菌
10〜1CFU/mlのサルモネラ・エンテリティディス(KCCM12021)1mlにプロテイナーゼK(20mg/mL)20μlを添加し、60℃で10分間反応させた。反応完了後、反応産物を10,000g rpmで5分間遠心分離してペレットを取得し、200μlの滅菌水中で懸濁させた。これを、105℃で20分間加熱し、同一体積のフェノール/クロロホルムで混合し、そして、10,000g rpmで5分間遠心分離して上澄液を取得した。上澄液に同一体積のエタノールと混合し、10,000g rpmで5分間遠心分離してペレットを回収した後、ペレットに20uLの滅菌水を加えてPCR試料を調製した。
【0048】
PCRを2群で実施した。つまり、1つの群は、配列番号1及び2に示すプライマー対を利用したPCRを実施し、一方、他の群は、配列番号1及び2に示すプライマ対でのPCRからの反応産物が、配列番号3及び4に示す追加のプライマー対での第2ラウンドのPCRを実施するのに使われた。2つの群のPCR反応条件は、その他の面では同一であり、次の通りである。
【0049】
<PCR条件>
94℃、5分−>(94℃、30秒−>60℃、30秒−>72℃、30秒)、35サイクル−>72℃、5分。
【0050】
【表3】

【0051】
図1は、サルモネラ・エンテリティディスのPCR結果を示す。レーン1〜10は、配列番号1及び2に示すプライマーセットに相当し、及び、レーン11〜20は、配列番号1〜4に示すプライマー2対を利用するネステッドPCRに相当する。各レーンにおけるサルモネラ・エンテリティディス濃度は以下の通りである;
レーン1及び11:10CFU/ml レーン2及び12:10CFU/ml
レーン3及び13:10CFU/ml レーン4及び14:10CFU/ml
レーン5及び15:10CFU/ml レーン6及び16:10CFU/ml
レーン7及び17:10CFU/ml レーン8及び18:10CFU/ml
レーン9及び19:1 CFU/ml レーン10及び20:サルモネラ菌DNA10ng
【0052】
図1のネステッドPCRは678bp及び200bpの増幅産物を示し、そして、配列番号1及び2に示すプライマーセットを利用するPCR結果を比較した改善された検出限界が分かる。つまり、サルモネラ・エンテリティディスに対する配列番号1及び2に示すプライマー対を利用したPCRの結果では、10CFU/mlでのみ678bpの増幅産物を確認できるが、配列番号1及び2に示すプライマー対での反応からのPCR産物の更なる増幅をすべく、配列番号3及び4のプライマー対を利用したネステッドPCR結果では、10CFU/mlにおいて200bpの増幅産物を検出することができる。
【0053】
2−2.黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌(KCCM1927)の10〜1CFU/mlを調製し、前記2−1と同様な方法でDNAを抽出した。
【0054】
PCRは、2群で実施した。つまり、1つの群は、配列番号5及び6に示すプライマー対でPCRを実施した。他の群について、反応は、配列番号5〜8に示す全てのプライマーをPCR反応組成物に混合して実施した。2群のPCRのPCR条件は、その他は同じであり、そして、PCR反応条件及び組成物は前記2-1のようにした。
【0055】
図2は、黄色ブドウ球菌に対するPCR結果を示す。レーン1〜8は、配列番号5及び6に示すプライマーセットに相当し、レーン9〜16は、配列番号5〜8に示す2対のプライマーを利用するネステッドPCRに相当する。各レーンにおける、黄色ブドウ球菌の濃度は次の通りであった;
レーン1及び9:10CFU/ml
レーン2及び10:10CFU/ml
レーン3及び11:10CFU/ml
レーン4及び12:10CFU/ml
レーン5及び13:10CFU/ml
レーン6及び14:10CFU/ml
レーン7及び15:10CFU/ml
レーン8及び16:1CFU/ml
【0056】
図2に、配列番号5〜6に示すプライマー対でのPCRの検出限界が約10CFU/mlであるが、一方、配列番号7及び8に示す更なるプライマー対がネステッドPCRにおいて使用された時、検出限界が10CFU/mlに顕著に向上することを示す。レーン15と16において、RNAバンドのみが検出された。
【0057】
2−3.大腸菌O157
大腸菌O157:H7 ATCC12024の4×10〜1CFU/mlを調製し、そして前記2−1.と同様な方法でDNAを抽出した。
【0058】
PCR反応は、2群で実施した。つまり、1つの群は、配列番号9及び10で示すプライマー対を使用するPCRを実施した。他の群について、配列番号9〜12、又は配列番号9〜10及び13〜14に示すプライマー対を利用したネステッドPCRを実施した。2群のPCRの反応条件は、その他は同じであった。PCR反応条件及び反応組成物は前記2−1のようにした。
【0059】
大腸菌O157:H7に対するPCR結果を図3に示す。
【0060】
配列番号9及び10に示すプライマーセットのPCR結果をレーン1〜9に示す、そして、配列番号9〜12に示すプライマー2対を利用するネステッドPCRの結果をレーン9〜18に示し、そして、配列番号9〜10及び13〜14に示すプライマー2対を利用するネステッドPCRの結果をレーン19〜27に示す。大腸菌O157:H7濃度は以下の通りである;
レーン1、10及び19:4x10CFU/ml
レーン2、11及び20:4x10CFU/ml
レーン3、12及び21:4x10CFU/ml
レーン4、13及び22:4x10CFU/ml
レーン5、14及び23:4x10CFU/ml
レーン6、15及び24:4x10CFU/ml
レーン7、16及び25:4x100CFU/ml
レーン8、17及び26:4x10CFU/mL
レーン9、18及び27:4x1CFU/ml
【0061】
図3は、配列番号9及び10に示すプライマー対を利用してPCRを実施した場合(レーン1〜9)の、レーン1の208bpのDNAバンドが、検出限界が約10CFU/mlであることを確認することを示す。これに反し、配列番号11及び12に示すプライマー対を利用するネステッドPCR(レーン10〜18)が、レーン10〜17における129bpのDNAバンドを検出する。したがって、検出限界が顕著に向上する。配列番号13及び14に示すプライマー対を利用するネステッドPCR(レーン19〜27)は、レーン19〜25において108bpのDNAバンドを検出し、そして検出限界が10CFU/mlであることを示す。
【0062】
2−4.リステリア・モノサイトゲネス
リステリア・モノサイトゲネス ATCC19112の1.1x10〜1CFU/mlを調製した後、前記2−1と同様な方法でDNAを抽出した。
【0063】
PCRは2群で実施した。つまり、1つの群は、配列番号15及び16に示すプライマー対を利用したPCRを実施した。他の群について、配列番号17及び18に示すプライマー対を利用したネステッドPCRを実施した。2群の反応条件は、その他は同じであった。PCR反応条件及び反応組成物は前記2−1のようにした。
【0064】
リステリア・モノサイトゲネスに対するPCR結果を図4に示す。
【0065】
配列番号15及び16に示すプライマーセットでのPCR結果を、レーン1〜10に示し、そして、配列番号17及び18に示すプライマー対のネステッドPCRをレーン11〜20に示す。リステリア・モノサイトゲネス濃度は以下の通りである;
レーン1及び11:リステリア・モノサイトゲネス1.1x10CFU/ml
レーン2及び12:1.1x10CFU/ml
レーン3及び13:1.1x10CFU/ml
レーン4及び14:1.1x10CFU/ml
レーン5及び15:1.1x10CFU/ml
レーン6及び16:1.1x10CFU/ml
レーン7及び17:1.1x10CFU/ml
レーン8及び18:1.1x100CFU/ml
レーン9及び19:1.1x10CFU/mL
レーン10及び20:1.1x1CFU/ml。
【0066】
図4において、配列番号15及び16に示すプライマー対を利用したPCR(レーン1〜10)は、454bpの増幅産物を検出し、配列番号17及び18に示すプライマー対をさらに利用したネステッドPCR(レーン11〜20)では、454bp及び191bpの増幅産物を検出した。しかしながら、ネステッドPCRが低濃度のリステリア・モノサイトゲネス検出により有用であった。
【0067】
2−5.腸炎ビブリオ
2.1x1010〜1CFU/mlの腸炎ビブリオKCCM11965を調製した後、前記2−1と同様にDNAを抽出した。
【0068】
PCRは、2群で実施した。つまり、1つの群は、配列番号19及び20で示すプライマー対を使用するPCRを実施した。他の群について、配列番号19〜22、又は配列番号19〜20及び23〜24に示すプライマー対を利用したネステッドPCRを実施した。2群の反応条件は、その他は同じであった。PCR反応条件及び反応組成物は前記2−1のようにした。
【0069】
腸炎ビブリオに対するPCR結果を図5に示す。
【0070】
配列番号19及び20に示すプライマーセットを使用するPCR結果を、レーン1〜11に示し、そして、配列番号19〜22の2対のプライマーを使用するネステッドPCRをレーン12〜22に示し、配列番号19〜20及び23〜24に示す2対のプライマーを使用するネステッドPCRをレーン23〜33に示す。腸炎ビブリオの濃度は以下の通りである;
レーン1、12及び23:腸炎ビブリオ2.1x1010CFU/ml
レーン2、13及び24:2.1x10CFU/ml
レーン3、14及び25:2.1x10CFU/ml
レーン4、15及び26:2.1x10CFU/ml
レーン5、16及び27:2.1x10CFU/ml
レーン6、17及び28:2.1x10CFU/ml
レーン7、18及び29:2.1x10CFU/ml
レーン8、19及び30:2.1x10CFU/ml
レーン9、20及び31:2.1x100CFU/ml
レーン10、21及び32:2.1x10CFU/mL
レーン11、22及び33:2.1x1CFU/ml。
【0071】
図5において、腸炎ビブリオ KCCM11965に対する配列番号19及び20に示すプライマー対を利用したPCRは、レーン1〜3のみにおいて375bpの増幅産物を示す。配列番号19及び20に示すプライマー対を利用するPCRの場合には、検出限界が約10CFU/mlであることを示す。また、配列番号19及び20に示すプライマー対を使用したものからの増幅産物を、さらに配列番号21及び22に示すプライマー対を利用するネステッドPCRの結果は、レーン12〜22において219bpの増幅産物が示された。また、配列番号23及び24のプライマー対を更に利用したネステッドPCRは、レーン23〜33において153bpの増幅産物を検出した。
【0072】
したがって、本発明のプライマー対を利用したネステッドPCRは、10〜1CFU/mlの濃度で病原菌を検出でき、検出限界が非常に優れていた。
【0073】
実施例3:プライマーの検証
実施例1におけるプライマー対の病原菌特異性を検証するために、病原菌に類似する微生物DNAに対してPCRを実施した。
【0074】
3−1.配列番号3及び4に示すプライマー対
図6は、サルモネラ属菌検出用の配列番号3及び4に示すプライマでネステッドPCRを実行して得られた結果であり、レーンについては下記で説明するが、ここで、レーンMはサイズマーカーである。
【0075】
図6において、レーン1〜8、13〜14、30及び34において約200bpのPCR産物が確認された。したがって、配列番号3及び4に示すプライマー対はサルモネラ属菌株を特異的に検出できることが理解された。
【0076】
【表4−1】

【表4−2】

【0077】
3−2.配列番号7及び8のプライマー対
図7は、黄色ブドウ球菌検出用のための配列番号7及び8に示すプライマーでのネステッドPCRを実施して得られた結果であり、そして、レーンについては下記に説明するが、ここで、レーンMはサイズマーカーである。
【0078】
【表5−1】

【表5−2】

【0079】
図7において、レーン12〜15において黄色ブドウ球菌のみが検出され、これは、配列番号7及び8に示すプライマー対は黄色ブドウ球菌を特異的に検出できることを意味する。
【0080】
3−3.配列番号17及び18に示すプライマー対
図8は、リステリア・モノサイトゲネス検出用の配列番号17及び18に示すプライマーでのネステッドPCRを実行することによって得られた結果であり、レーンについては下記で説明するが、レーンMはサイズマーカーである。
【0081】
図8は、レーン17〜26において、配列番号17及び18のプライマー対によって増幅された454bp及び/又は191bpを示す。
【0082】
【表6】

【0083】
実施例4:PCR検出キット
【0084】
【表7】

【0085】
実施例5:食品における食品媒介細菌の検出
人為的に汚染された食品の培養液を対象として前記実施例4−1における検出キットを使用してPCRを実施した。
【0086】
4種類の食品(サンドイッチ、ハンバーガー、酢豚、飛子)の各25gの検体を、LB(Luria Burtani)培地225mlに接種し、37℃、80rpmで16時間培養した。培養液1mlに対して、配列番号1及び2に示すプライマー対を利用してPCRを行い、サルモネラ菌の存在しないことを確認した後、残余の培養液を滅菌した。滅菌された培養液9mlに約10CFU/mlのネズミチフス菌 ATCC14023を添加した後、連続希釈して1〜10CFU/mlの検体を製造した。
【0087】
検体1mlに、プロテイナーゼK(20mg/ml)20μlを添加した後、60℃で10分間培養した。反応産物を10,000g rpmで5分間遠心分離することによって、ペレットを得て、そして、200μlの滅菌水中で懸濁した。これを、105℃で20分間加熱し、同一体積のフェノール/クロロホルム混合液と混合し、その後、10,000g rpmで5分間遠心分離して上澄液を得た。前記上澄液を、同一体積のエタノールと混合し、そして、10,000g rpmで5分間遠心分離をしてペレットを回収した後、前記ペレットに20μlの滅菌水を添加してPCR試料DNAを調製した。
【0088】
PCRは、バイオメトラ T−パーソナル サーマル PCR装置(Biometra T-personal Thermal PCR Machine)で実施した。
【0089】
<PCR条件>
94℃、5分−>1次(94℃、30秒−>60℃、150秒−>72℃、30秒)、5タイムサイクル−>2次(88℃、30秒−>60℃、30秒−>72℃、30秒)、15タイムサイクル)−>3次(88℃、30秒−>54℃、30秒−>72℃、30秒)、10タイムサイクル)−>4次(86℃、30秒−>54℃、30秒−>72℃、30秒)、25タイム−>72℃、10分
【0090】
図9は、ネズミチフス菌 ATCC14023に汚染された食品に対する配列番号1〜4に示す2対のプライマー対でのネステッドPCRを実施することにより得られた結果であり、そしてレーンは下記に説明するが、レーンMはサイズマーカーである。
【0091】
1:サルモネラ属菌のDNA10ng、配列番号1及び2に示すプライマー対を利用するPCR
2:陰性コントロール群(DNA含まない)
3:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-飛子
4:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-飛子
5:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-飛子
6:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-飛子
7:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-飛子
8:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-酢豚
9:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-酢豚
10:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-酢豚
11:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-酢豚
12:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-酢豚
13:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-ハンバーガー
14:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-ハンバーガー
15:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-ハンバーガー
16:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-ハンバーガー
17:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-サンドイッチ
18:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-サンドイッチ
19:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-サンドイッチ
20:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-サンドイッチ
21:ネズミチフス菌 ATCC14023、10CFU/ml-サンドイッチ
【0092】
図9において、レーン3〜21は、配列番号3及び4に示すプライマー対を使用して200bpのDNAの増幅による10CFU/mlまでの検出を示す。
【0093】
実施例6:マイクロ−PCR
6−1.配列番号3〜4のプライマー対を利用したマイクロ−PCR
10CFU/mLのサルモネラ・エンテリティディス KCCM12021を対象としてTMC-1000(登録商標)(三星テクウィン)を利用してマイクロ−PCRを実施した。PCRは2群で実施した。1つの群は配列番号1及び2に示すプライマー対を利用したPCRを実施した。他の群は、配列番号1〜4の2対のプライマーを利用した。
【0094】
マイクロ−PCR条件は以下の通りである。
94℃、10分−>(94℃、5秒−>60℃、5秒−>72℃、5秒)100タイムサイクル−>72℃、5分
【0095】
図10は、サルモネラ・エンテリティディスKCCM12021に対してマイクロ−PCRを実施することにより得られた結果である。1は配列番号1〜4に示す2対のプライマーを利用したものであり、2は配列番号1及び2に示すプライマー対を利用したものである。右側のグラフは、融解曲線(melting curve)であり、Tm値を算出することができる。Tm値は、2本鎖及び一本鎖DNAがそれぞれ50%存在する温度である。この時点でのシグナルを平均して標準定量曲線を作成できる。
【0096】
図10において、1のCT(Cycle Time)値がライン2のそれより早いが、それは、配列番号3及び4に示すプライマー対を利用するPCRが効率的であることが理解できる。
【0097】
実施例7:マイクロ−PCR検出キット
7−1.2種のプライマー対を含む検出キット
4Xグリーンスター------------------------5μl
10mMのMgCl-----------------------1μl
プライマー混合液(各0.2uM/μl)------8μl
試料DNA(<500ng)----------------6μl
全体積------------------------------------20μl
【0098】
7−2.1種のプライマー対を含む検出キット
4Xグリーンスター-------------------------5μl
10mMのMgCl------------------------1μl
プライマー混合液(0.2uM/μl)---------4μl
試料DNA(<500ng)
ヌクレアーゼ未含有水-----------------------20μlに(up to 20μl)
前記プライマー混合液は、場合によって表8及び9からなる。
【0099】
【表8】

【0100】
【表9】

【0101】
実施例8:マイクロ−PCR検出キットを利用した食中毒を引き起こす病原菌の検出
8−1.試料の調製
サルモネラ菌に汚染されたことが疑われる食品25gを測定し、そして、100mlの滅菌水を添加して紛砕機で微粉砕した。微粉砕物を濾紙を通して濾過し濾液を得て、1mlの濾液(20mg/ml)に20μlのプロテイナーゼKを添加し、60℃で10分間インキュベートした。反応産物を10,000g rpmで5分間遠心分離することによってペレットを取得した後、200μlの滅菌水に懸濁した。これを、105℃で20分間熱処理した後、同一体積のフェノール/クロロホルムと混合し、そして10,000g rpmで5分間遠心分離して上澄液を回収した。上澄液を同一体積のエタノールと混合し、そして10,000g rpmで5分間遠心分離してペレットを回収した後、ペレットに20μlの滅菌水を添加してPCRサンプルDNAを調製した。
【0102】
8−2.マイクロ−PCR条件
実施例7に記載された検出キット組成物を利用してPCR反応混合物を製造した後、混合物の1μlを三星総合技術院(SAMSUNG ADVANCED INSTITUTE OF TECHNOLOGY)にて製造されたゲンスペクターマイクロチップ(Genespector Micro chip)に気泡が形成されないように注入して密封した。
【0103】
PCRを前記チップ上でゲンスペクターマイクロ−PCR機器を使用して以下のように実行した。
【0104】
(1)1種の病原菌に対して2種のプライマーセットを使用したネステッドPCR
【0105】
【表10】

【0106】
(2)1種の病原菌に対して1種のプライマーセットを使用したPCR
− 初期変性(94℃で10分間)−>変性(94℃で5秒)、アニーリング(60℃で5秒)、伸長(72℃で5秒)を全100タイム
【0107】
前記PCR反応終了後、溶融曲線分析を下記条件で行う。
− 初期温度:60℃
− 最終温度:90℃
− ランプ レート(Ramp Rate)速度:℃/sec
− 出口温度:40℃
【0108】
実施例9:マイクロ−PCRの検出限界の検証
9−1.サルモネラ属菌
【0109】
実施例7−1の2種のプライマー対を利用したマイクロ−PCR組成物を調製し、実施例8(1)の条件でマイクロ−PCRを実施した。利用したプライマーは、配列番号1〜4であり、そして、検体はサルモネラ・エンテリティディス KCCM12021であった。
【0110】
図11は、サルモネラ・エンテリティディスの配列番号1〜4に示す2種プライマー対を利用したネステッドPCRの場合において、サルモネラ菌の様々な濃度に応じた検出限界の分析を示す。図11において、1はサルモネラ・エンテリティディスの10CFU/mlに対する結果である。2は10CFU/mlに対する結果、そして3は陰性コントロール群である。
【0111】
9−2.サルモネラ属菌
実施例7-2の1種のプライマー対を利用したマイクロ−PCR組成物を調製し、そして実施例8(2)の条件でマイクロ−PCRを実施した。使用したプライマーは、配列番号3及び4であり、そして検体はサルモネラ・エンテリティディス KCCM12021であった。
【0112】
図12は、サルモネラ・エンテリティディスの配列番号3及び4に示す1種プライマー対を利用したマイクロ−PCRの場合における、サルモネラ菌の様々な濃度に応じた検出限界の分析を示す。図12において、4はサルモネラ・エンテリティディスの10CFU/mlの結果であり、3は10CFU/mlの結果であり、2は10CFU/mlの結果であり、1は配列番号1〜4の2種プライマー対を使用した結果である。図12における2、3及び4は、同一な起始点(start point)を有し、2種のプライマー対は互いにダイマー(dimer)を形成したことが理解できる。同一な起始点はコピー数が同様であることを意味することから、同一の検出限界を有することが理解できた。上記マイクロ−PCRによる検出限界は10CFU/mlである。
【0113】
9−3.黄色ブドウ球菌
実施例7-2における1種のプライマー対を利用したマイクロ−PCR組成物を調製し、実施例8(2)の条件でマイクロ−PCRを実施した。使用したプライマーは配列番号7及び8であり、検体は黄色ブドウ球菌KCCM1927であった。
【0114】
図13は、黄色ブドウ球菌の配列番号7及び8に示す1種のプライマー対を利用したマイクロ−PCRの場合における、サルモネラ菌の様々な濃度に応じた検出限界の分析を示す。図13において、1は陽性コントロール群であり、2は配列番号5及び6に示す1種プライマー対を利用したものの結果であり、3は黄色ブドウ球菌10CFU/mlに対する結果であり、4は10CFU/mlに対する結果であり、5は10CFU/mlに対する結果であり、6は10CFU/mlに対する結果である。上記の検出限界は10CFU/mlである。
【0115】
9−4.大腸菌O157
実施例7−2の1種のプライマー対を利用したマイクロ−PCR組成物を調製し、実施例8(2)の条件でマイクロ−PCRを実施した。利用したプライマーは、配列番号11及び12であり、検体は大腸菌O157:H7 ATCC12024であった。
【0116】
図14は、大腸菌O157:H7の配列番号:_及び_に示す1種のプライマー対を利用したマイクロ−PCRの場合における、サルモネラ菌の様々な濃度に応じた検出限界の分析である。図14において、1は陽性コントロール群であり、2は陰性コントロール群であり、3は大腸菌O157:H710CFU/mlに対する結果であり、4は10CFU/mlに対する結果であり、5は10CFU/mlに対する結果であり、6は10CFU/mlに対する結果である。上記の検出限界は10CFU/mlである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】サルモネラ・エンテリティディス(KCCM12021)のネステッドPCRの電気泳動結果を示す図。
【図2】黄色ブドウ球菌(KCCM1927)のネステッドPCRの電気泳動結果を示す図。
【図3】大腸菌O157H7(ATCC12024)のネステッドPCRの電気泳動結果を示す図。
【図4】リステリア・モノサイトゲネス(ATCC19112)のネステッドPCRの電気泳動結果を示す図。
【図5】腸炎ビブリオ(KCCM11965)のネステッドPCRの電気泳動結果を示す図。
【図6】配列番号3及び4で示すサルモネラ属菌検出用プライマー対の反応特異性を示す電気泳動結果を示す図。
【図7】配列番号7及び8で示す黄色ブドウ球菌検出用プライマー対の反応特異性を示す電気泳動結果を示す図。
【図8】配列番号15〜18で示すリステリア・モノサイトゲネス検出用プライマー対の反応特異性を示す電気泳動結果を示す図。
【図9】研究室で人為的に汚染させた多様な食品におけるサルモネラ菌検出の電気泳動結果を示す図。
【図10】配列番号1及び2で示すプライマー対を利用したPCRの結果と、配列番号1〜4で示す2種のプライマー対を利用したマイクロ−PCRの結果の比較を示すグラフ。
【図11】配列番号1〜4に示す2種のプライマー対を利用したサルモネラ・エンテリティディスのネステッドPCRの電気泳動結果を示すグラフ。
【図12】配列番号3〜4に示すプライマー対を利用したサルモネラ・エンテリティディスのマイクロ−PCRの電気泳動結果を示すグラフ。
【図13】配列番号7〜8に示すプライマー対を利用した黄色ブドウ球菌のマイクロ−PCRの電気泳動結果を示すグラフ。
【図14】配列番号11及び12に示すプライマー対を利用した大腸菌O157:H7のマイクロ−PCRの電気泳動結果を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3に示すヌクレオチド配列を含むプライマー、及び配列番号4に示すヌクレオチド配列を含むプライマーを含むサルモネラ属菌(Salmonella spp.)検出用プライマー対;
配列番号7に示すヌクレオチド配列を含むプライマー、及び配列番号8に示すヌクレオチド配列を含むプライマーを含む黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)検出用プライマー対;
配列番号11に示すヌクレオチド配列を含むプライマー、及び配列番号12に示すヌクレオチド配列を含むプライマーを含む大腸菌(Escherichia coliO157:H7検出用プライマー対;
配列番号13に示すヌクレオチド配列を含むプライマー、及び配列番号14に示すヌクレオチド配列を含むプライマーを含む大腸菌O157:H7検出用プライマー対;
配列番号17に示すヌクレオチド配列を含むプライマー、及び配列番号18に示すヌクレオチド配列を含むプライマーを含むリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)検出用プライマー対;
配列番号21に示すヌクレオチド配列を含むプライマー、及び配列番号22に示すヌクレオチド配列を含むプライマーを含む腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)検出用プライマー対;及び
配列番号23に示すヌクレオチド配列を含むプライマー、及び配列番号24に示すヌクレオチド配列を含むプライマーを含む腸炎ビブリオ検出用プライマー対;
からなる群より選択される1以上のプライマー対を含む病原菌検出用プライマー。
【請求項2】
前記プライマーが、
配列番号1に示すヌクレオチド配列を含むプライマー、及び配列番号2に示すヌクレオチド配列を含むプライマーを含むサルモネラ属菌検出用プライマー対;
配列番号5に示すヌクレオチド配列を含むプライマー、及び配列番号6に示すヌクレオチド配列を含むプライマーを含む黄色ブドウ球菌検出用プライマー対;
配列番号9に示すヌクレオチド配列を含むプライマー、及び配列番号10に示すヌクレオチド配列を含むプライマーを含む大腸菌O157:H7検出用プライマー対;
配列番号15に示すヌクレオチド配列を含むプライマー、及び配列番号16に示すヌクレオチド配列を含むプライマーを含むリステリア・モノサイトゲネス検出用プライマー対;
配列番号19に示すヌクレオチド配列を含むプライマー、及び配列番号20に示すヌクレオチド配列を含むプライマーを含む腸炎ビブリオ検出用プライマー対;
からなる群より選択される1のプライマー対をさらに含む、請求項1に記載の病原菌検出用プライマー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプライマーでのPCRを利用する病原菌検出方法。
【請求項4】
前記PCRが、サーマルブロックPCR又はマイクロ−PCRである請求項3に記載の病原菌検出方法。
【請求項5】
請求項1に記載のプライマーを利用するPCRに続いて、請求項2に記載のプライマーを使用してPCRの第2ラウンドが実施される請求項3に記載の病原菌検出方法。
【請求項6】
前記PCRが、請求項1及び2に記載のプライマーを同時に利用して実施される請求項3に記載の病原性菌検出方法。
【請求項7】
前記検出方法が、2種以上の異なる病原菌の検出用プライマー対を利用するマルチプレックスPCRを通して2種以上の病原菌を同時に検出することによって実施される請求項3に記載の病原菌検出方法。
【請求項8】
PCRを通した病原菌検出のためのPCRプライマー、反応緩衝液、及びTaq DNAポリメラーゼを含む病原菌検出用キットであって、前記PCRプライマーが、請求項1又は2に記載のプライマーセットである病原菌検出用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2008−538075(P2008−538075A)
【公表日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557923(P2007−557923)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000727
【国際公開番号】WO2006/090945
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507289564)サムスン・エヴァーランド・インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】