説明

食事管理システム及び食事管理方法

【課題】ユーザが食事内容を忘れる前に正確な食事内容を記入できる食事管理システムを提供する。
【解決手段】呼気中のガス成分を検出する呼気成分検出手段と、前記呼気成分検出手段で検出された呼気中の酸素ガス量、二酸化炭素ガス量により、ユーザの食事摂取を判定する食事摂取判定手段と、前記判定手段によりユーザが食事摂取したと判定した場合に、ユーザに食事内容を照会する食事内容照会手段と、ユーザが食事内容を入力する食事内容入力手段と、ユーザの食事内容の入力を記憶する記憶手段と、を備えることを特徴とする食事管理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末を用いて、ユーザの食事を管理する食事管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖尿病や高血圧等の生活習慣病に起因する心血管疾患に罹患する人々が増加している。生活習慣病は、遺伝的要因によることもあるが、多くは不適正な食事や運動不足等の不健全な日常生活によって発病している。不健全な日常生活よる生活習慣病は、食生活の改善や適度な運動の実施等、日常生活の改善によって予防可能であり、このためには、ユーザの日常生活(食生活、運動)を確実に把握・管理して、生活改善を促すことのできる管理システムが求められる。
【0003】
運動管理については、従来、歩数計が広く使用されており、歩数計は、簡便に運動を管理することができるので、利便性が高い。
【0004】
他方、食生活の管理については、食事摂取時間帯、メニュー、食事量等の食事内容を管理する必要があるが、これは容易ではない。例えば入院患者であれば、病院側(食事提供者)が正確に食事内容を管理・把握することができる。しかし、非入院患者の場合、自らで食事時間、食事内容を管理する必要があるが、食事は極めて日常的な事項であるため、つい記録するのを忘れたり、何食分もまとめて不確かな内容を記録したりしがちである。このようなことから、食事管理を必要とする者が自ら食事内容の全てを管理することは難しく、記録が不正確なものとなる。
【0005】
記録し忘れに関しては、所定の時刻ごとにユーザに食事内容の記録を促す方法も考えられる。しかし、ユーザの生活リズムは多様であるので、この方法では、例えば会議中や睡眠中に食事内容の記録を促すといった現象が生じ得る。よって、ユーザの実際の生活リズムに適合させられないという問題がある。
【0006】
食事管理に関する技術として特許文献1がある。特許文献1では、食事に関連するシグナルを検知し、検知から所定時間経過後にユーザに食事記録を問い合わせる生活管理システムを開示している。この技術では、食事に関連するシグナルとして、脈拍、皮膚導電率、皮膚温度、GSR(皮膚電気反射)、咀嚼回数、咀嚼間隔、光電脈波等を用いている。このため、ユーザにこれらのシグナルを検知するための検出装置を装着してもらう必要がある。種々な装置を装着する必要があるこの技術は、ユーザに過大な負担を強いるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】:特開2003−173375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、簡便な手法でユーザの食行動を監視し、食事が摂取されたと判定されたときに速やかに食事記録を促して、ユーザに食事内容を記録させる食事管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための食事管理システムに係る第1の本発明は、呼気中のガス成分を検出する呼気成分検出手段と、前記呼気成分検出手段で検出された呼気中の酸素ガス量、二酸化炭素ガス量により、ユーザの食事摂取を判定する食事摂取判定手段と、前記判定手段によりユーザが食事摂取したと判定した場合に、ユーザに食事内容を照会する食事内容照会手段と、ユーザが食事内容を入力する食事内容入力手段と、ユーザの食事内容の入力を記憶する記憶手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この構成の食事管理システムによると、ユーザが食事をしたとき(食物を摂取したとき)、呼気成分検出手段および食事摂取判定手段が食事したことを検知し、食事内容照会手段がユーザに速やかに食事内容(食物摂取内容)の照会を行う。よって、ユーザは、食事内容を忘れる前に食事内容入力手段を介して正確な食事内容を記入できる。この内容は記憶手段に記録されているので、この情報を活用することにより、ユーザの食生活を適正に管理することが可能になる。
【0011】
ここで、呼気中のCO2ガス量、O2ガス量は、その時点でのエネルギー代謝状態によって変化し、Zuntz Schmburg-Luskの式(下記数式2)を用いてその時点でのエネルギー消費量を求めることができることが知られている。そして、このエネルギー消費量と、基礎代謝量(下記数式1により算出可能)とから、動作強度(生活活動強度)Afを算出できる(下記数式3参照)。また、食行動の動作強度はおよそ1.4であることが知られており、1.4に近いか否か(例えば1.3〜1.5であるか否か)を判定することにより、ユーザの食事摂取の有無を判定できる。
【0012】
なお、Zuntz Schmburg-Luskの式については特許文献2、Harris-Benedictの式については非特許文献1、動作強度を求めることについては非特許文献2、生活活動と動作強度の関係については非特許文献3に、それぞれ開示されている。
【0013】
特許文献2 特開2006−16330号公報
非特許文献1 Harris JA, Benedict FJ; A biometric study of Basal metabolism in man Carnegie Institution of Washington, Washington D.C. Lippincott Company, Philadelphia, U.S.A., 1919
非特許文献2 化学同人 新 食品栄養科学シリーズ 新ガイドライン準拠 基礎栄養学 西川善之 灘本知憲 編
非特許文献3 第6次改定 日本人の栄養所要量ー食事摂取基準、健康・栄養情報研究会 編 第一出版(1999)
【0014】
(数式1:Harris-Benedictの式)
男性の基礎代謝量(kcal/日)=66.47+13.75×体重(kg)+5.0×身長(cm)−6.76×年齢
女性の基礎代謝量(kcal/日)=655.1+9.56×体重(kg)+1.85×身長(cm)−4.68×年齢
【0015】
(数式2:エネルギー消費量(Zuntz Schmburg-Luskの式))
単位時間あたりの消費熱量(kcal/分)=VO2(ml/分)×(30817+1.23×VCO2/VO2)/1000
【0016】
(数式3:動作強度の算出式)
Af=ある動作によるエネルギー消費量(kcal/日)÷基礎代謝量(kcal/日)
【0017】
なお、病気やケガなどの生理的ストレスによって、エネルギー消費が加速することが知られており、このような場合は、Afの算出において、さらにユーザの症状に応じたストレス係数を除する必要がある。
【0018】
上記課題を解決するための食事管理システムに係る第2の本発明は、ユーザの下腕部に取り付けられる加速度センサと、前記加速度センサで検知された加速度情報により、ユーザの食事摂取を判定する加速度食事摂取判定手段と、前記加速度食事摂取判定手段により、ユーザが食事摂取したと判定した場合に、ユーザに食事内容を照会する食事内容照会手段と、ユーザが食事内容を入力する食事内容入力手段と、ユーザの食事内容の入力を記憶する記憶手段と、を備えることを特徴とする。
【0019】
この構成の食事管理システムによると、ユーザが食事をしたとき(食物を摂取したとき)、加速度センサおよび加速度食事摂取判定手段が食事したことを検知し、食事内容照会手段がユーザに速やかに食事内容(食物摂取内容)の照会を行う。よって、上記食事管理システムにかかる第1の本発明と同様の効果が得られる。
【0020】
なお、加速度センサとしては、少なくとも3軸の加速度を検出可能な加速度センサを用いる。さらに当該3軸の角速度も検出可能な加速度センサであってもよい。
【0021】
ここで、加速度センサは、動きによる加速度とともに、重力加速度を常に検出する。人間の食行動においては、おおむね、素手で、又は箸やフォーク等の食器具を用いて食品を口に運ぶ動作が行われる。例えば右手で箸を持って食事を行う場合、ユーザの下腕部は、次のように動く。
【0022】
(1)ユーザの左前方に右手を向けた状態で、食品をつかむ。
(2)ユーザの左上方向に右手を向けた状態となるように、ひじを支点に回転し、食品を口元に運ぶ。
(3)食品を口に入れる(短時間のほぼ静止状態)
【0023】
この動きにおいて、食品を落とさないようにするために、重力加速度の3倍を超えるような大きい加速度は検出されない。また、上記(1)の食品をつかむ状態と、上記(3)の食品を口に入れる状態とでは、加速度センサの各軸の重力加速度方向に対する向きが異なっている。したがって、上記のような動き及び動きによる重力加速度方向の変化は、食行動の特有のものであるので、加速度センシング情報から食事摂取か否かを判定できる。また、加速度センサは、少なくともユーザの利き腕側に取り付けることが好ましく、より好ましくは両腕に取り付ける。
【0024】
上記課題を解決するための食事管理システムに係る第3の本発明は、ユーザの腕に取り付けられる加速度センサと、呼気採取手段と、前記加速度センサで検知された加速度情報により、ユーザの食事摂取を判定する加速度食事摂取判定手段と、前記加速度食事摂取判定手段により、ユーザが食事摂取したと判定した場合に、ユーザに呼気採取を促す呼気採取要請手段と、前記呼気採取手段で採取された呼気中の酸素ガス量、二酸化ガス量により、ユーザの食事摂取を判定する食事摂取判定手段と、前記食事摂取判定手段により、ユーザが食事摂取したと判定した場合に、ユーザに食事内容を照会する食事内容照会手段と、ユーザが食事内容を入力する食事内容入力手段と、ユーザの食事内容の入力を記憶する記憶手段と、を備えることを特徴とする。
【0025】
また、上記第3の本発明では、呼気ガス分析と加速度分析とを併用しているので、より高い精度でユーザの食事摂取の有無を判定できる。
【0026】
上記課題を解決するための食事管理方法に係る第1の本発明は、ユーザの呼気ガスに含まれる酸素ガス量、二酸化ガス量を検出する呼気ガス検出ステップと、呼気ガス中の酸素ガス量、二酸化ガス量により、ユーザの食事摂取の有無を判定する呼気ガス判定ステップと、前記呼気ガス判定ステップにおいて食事摂取と判定した場合に、ユーザに食事内容を照会する食事内容照会ステップと、ユーザが食事内容を入力するユーザ入力ステップと、ユーザの食事内容の入力を記憶する記憶ステップと、を備えることを特徴とする。
【0027】
上記課題を解決するための食事管理方法に係る第2の本発明は、ユーザの腕部の動きを加速度センサで検出する加速度検出ステップと、加速度センサによる信号により、ユーザの食事摂取の有無を判定する加速度判定ステップと、前記加速度判定ステップにおいて食事摂取と判定した場合に、ユーザに食事内容を照会する食事内容照会ステップと、ユーザが食事内容を入力するユーザ入力ステップと、ユーザの食事内容の入力を記憶する記憶ステップと、を備えることを特徴とする。
【0028】
上記課題を解決するための食事管理方法に係る第3の本発明は、ユーザの腕部の動きを加速度センサで検出する加速度検出ステップと、加速度センサによる信号により、ユーザの食事摂取の有無を判定する加速度判定ステップと、前記加速度判定ステップにおいて食事摂取と判定した場合に、ユーザに呼気採取を促す呼気採取照会ステップと、ユーザの呼気ガスに含まれる酸素ガス量、二酸化ガス量を検出する呼気ガス検出ステップと、呼気ガス中の酸素ガス量、二酸化ガス量により、ユーザの食事摂取の有無を判定する呼気ガス判定ステップと、前記呼気ガス判定ステップにおいて食事摂取と判定した場合に、ユーザに食事内容を照会する食事内容照会ステップと、ユーザが食事内容を入力するユーザ入力ステップと、ユーザの食事内容の入力を記憶する記憶ステップと、を備えることを特徴とする。
【0029】
上記食事管理方法に係る第1〜3の本発明によると、それぞれ上記食事管理システムに係る第1〜3の本発明と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0030】
上記本発明によると、ユーザが食事をしたことを検知し、食事内容照会手段がユーザに速やかに食事内容の照会を行うので、ユーザは、食事内容を忘れる前に食事内容入力手段を介して正確な食事内容を記入できる。この食事内容情報を活用することにより、ユーザの食生活を適正に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、実施の形態1に係る食事管理システムのブロック図である。
【図2】図2は、実施の形態1に係る食事管理システムの携帯端末を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態1に係る食事管理システムの動作フローを示す図である。
【図4】図4は、実施の形態2に係る食事管理システムの動作フローを示す図である。
【図5】図5は、実施の形態3に係る食事管理システムの動作フローを示す図である。
【図6】図6は、実施の形態4に係る食事管理システムの動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施の形態1)
本実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る食事管理システムのブロック図であり、図2は、本実施の形態に係る食事管理システムを適用した携帯端末を示す図である。
【0033】
図1に示すように、本実施の形態に係る食事管理システムは、呼気に含まれるガスを検出する呼気成分検出手段101と、呼気成分検出手段101で検出された呼気中の酸素ガス量、二酸化炭素ガス量により、ユーザの食事摂取を判定する食事摂取判定手段102と、食事摂取判定手段102により、ユーザが食事摂取したと判定した場合に、ユーザに食事内容を照会する食事内容照会手段103と、ユーザが食事内容を入力する食事内容入力手段104と、ユーザの食事内容入力を記憶する記憶手段105と、を備えている。
【0034】
呼気成分検出手段101は、呼気ガスに含まれるガス成分を検出するものであり、公知のガスセンサを用いて検出することができる。
【0035】
食事摂取判定手段102は、呼気成分検出手段101で検出されたCO2ガス量、O2ガス量から、Zuntz Schmburg-Luskの式より消費カロリーを算出し、ユーザの基礎代謝量と比較して動作強度を算出し、動作強度を食事の動作強度(1.4)と比較して、食事摂取か否かを判定する。Zuntz Schmburg-Luskの式や動作強度の算出式は、記憶手段105に記憶されている。
【0036】
食事内容照会手段103は、食事摂取と判定された場合に、音、振動、メッセージ提示等によってユーザに食事内容照会シグナルを伝達する。また、本実施の形態に係る食事管理システムを携帯電話に適用する場合、メール(ショートメール、電子メール)や電話により食事内容照会シグナルを伝達する構成とすることができる。
【0037】
食事内容入力手段104は、これを用いてユーザが食事内容の入力を行うものである。例えば、液晶画面等の表示部と、キーボード、タッチパネル等の入力部と、を備え、表示部にメニュー記入画面を表示して、入力部で食事内容を入力する構成を採用できる。
【0038】
記憶手段105には、例えばユーザの年齢、身長、体重、診断記録、既往歴等のユーザデータや、上記の各種計算式等が記憶されている。記憶手段105としては、ハードディスク、半導体メモリ、ホログラフィックメモリ等を用いることができる。
【0039】
図2に示すように、本実施の形態に係る食事管理システムを適用した携帯電話(スマートフォン)は、呼気ガス成分検出部と、中央処理装置(CPU)等の処理部と、半導体メモリやハードディスク等の記憶部と、液晶画面等の表示部と、キーボード等の入力部と、通信部と、スピーカと、バイブレータと、を備えている。呼気ガス成分検出部の各部は、携帯電話に本来的に備わっている各部を兼用する構成とすることができる。
【0040】
呼気ガス成分検出部は、呼気ガスを検出するものであり、公知のガスセンサを用いることができる。また、呼気ガス成分検出部は通話用のマイク近傍に設けることが好ましい。
【0041】
また、呼気ガス成分検出部と、通信部とを備える小型の検出用端末と、呼気ガス成分検出部以外の各部を備える携帯電話と、からなる構成とすることもできる。この場合、呼気検出のために携帯電話を取り出す必要がなくなるので、呼気の検出漏れを防止できる。検出用端末は、例えばユーザの衣服の襟部分、ヘッドセットやハンズフリー端末のマイク近傍に付ける構成とすることができる。この場合、検出用端末をユーザの口の近くに配置することができるので、呼気検出漏れを防止できる。
【0042】
図3に、上記携帯電話を用いた食事管理システムの動作フローを示す。
【0043】
ユーザの呼気が採取されると(S11)、呼気ガス中の酸素ガス量、二酸化炭素ガス量を、呼気ガス成分検出部が測定する(S12)。この呼気採取は、所定の時間となったとき(例えば、朝食6−8時、昼食11−13時、夕食18−20時)にユーザに呼気採取シグナル(音、振動等)を送り(処理開始)、ユーザの呼気採取を促す構成とすることができる。また、携帯電話の着信ないしは発信を処理開始とし、ユーザの通話時に採取するものであってもよい。
【0044】
この酸素ガス検出量、二酸化炭素ガス検出量と、記憶部に記憶されたZuntz Schmburg-Luskの式を用いて、処理部が消費カロリーを算出し、消費カロリーから動作強度を算出する(S13)。
【0045】
食事摂取非摂取を判定する(S14)。ここで、食事を行った場合の動作強度(Af)は、およそ1.4であることが知られており、例えば動作強度が1.3〜1.5である場合を食事摂取、その他である場合を食事摂取ではないと判定する食事摂取と判定される場合にはS15に移行し、食事摂取ではないと判定される場合には、終了に移行する。
【0046】
ユーザに食事内容を照会するメッセージを提示する(S15)。このメッセージ提示は、スピーカを通じて音を発生させたり、バイブレータを通じて振動を発生させたり、メッセージを表示部に表示したり、メールや電話を着信させるように、処理部が各部を動作させる。
【0047】
処理部が表示部に食事入力画面を提示する(S16)。
ここで、食事と近い動作強度の場合、呼気判定において誤って食事摂取と判定されるおそれがある。このため、食事回答において、食事非摂取という回答項目を設けることが好ましい。
【0048】
ユーザが食事内容を入力し、入力内容を記憶する(S17)。
【0049】
ユーザが食事内容を入力したか否かを判定する(S18)。入力していない場合には、再度S15に移行して食事内容照会を行う。ユーザが食事内容を記録した場合には、終了に移行する。
【0050】
本実施の形態によると、呼気ガス情報により食事摂取と判定した場合にのみ食事内容照会が行われるので、ユーザの負担を増大させることなく、確実な食事記録を行うことができる。
【0051】
(実施の形態2)
本実施の形態では、呼気ガス検出に代えて、腕の動きを加速度センサにより検出して、食事摂取か否かを判定するものである。この場合、呼気成分検出手段に代えて加速度センサを、呼気ガス情報を用いて食事摂取を判定する食事摂取判定手段に代えて、加速度食事摂取判定手段を用いること以外は、上記実施の形態1と同様である。また、携帯電話に適用する場合、呼気ガス成分検出部に代えて加速度センサを用いること以外は、上記実施の形態1と同様である。
【0052】
加速度センサは、少なくとも相直交する3軸の加速度を検出するものを用いる。さらに、当該3軸の角速度をも検出できるものであってもよい。このような加速度センサは、公知のものを用いることができる。
【0053】
加速度センサは、動きによる加速度とともに、重力加速度を常に検出するものである。ここで、人間の食行動においては、おおむね、素手で、又は箸やフォーク等の食器具を用いて食品を口に運ぶ動作が行われる。例えば右手で箸を持って食事を行う場合、ユーザの下腕部は、次のように動く。
【0054】
(1)ユーザの左前方に右手を向けた状態で、食品をつかむ。
(2)ユーザの左上方向に右手を向けた状態となるように、ひじを支点に回転し、食品を口元に運ぶ。
(3)食品を口に入れる(短時間のほぼ静止状態)
【0055】
この動きにおいて、食品を落とさないようにするために、重力加速度の3倍を超えるような大きい加速度は検出されない。また、上記(1)の食品をつかむ状態と、上記(3)の食品を口に入れる状態とでは、加速度センサの各軸の重力加速度方向に対する向きが異なっている。したがって、上記のような動き及び動きによる重力加速度方向の変化は、食行動の特有のものであるので、加速度センシング情報から食事摂取か否かを判定できる。また、加速度センサは、少なくともユーザの利き腕側に取り付けることが好ましく、より好ましくは両腕に取り付ける。
【0056】
加速度センサはユーザの下腕部に取り付けられるので、加速度センサを有する端末はなるべく小型であることが好ましい。このため、携帯電話に本実施の形態を適用する場合、加速度センサと、通信部とを備える小型の検出用端末と、加速度センサ以外の各部を備える携帯電話と、からなる構成とすることが好ましい。加速度センサは、例えば腕時計やブレスレットに組み込む構成とすることができる。
【0057】
図4に、本実施の形態に係る食事管理システムの動作フローを示す。
ユーザの腕部の加速度を加速度センサが検出する(S21)。
【0058】
この加速度検出結果を、処理部が分析する(S22)。この際、ノイズ除去、アナログ/デジタル変換、フーリエ変換、初期時に検出される重力加速度をキャンセルする処理等を行ってもよい。
【0059】
処理部が、加速度分析結果と、記憶部に記憶された判定基準と、を比較して、食事摂取であるか否かを判定する(S23)。食事摂取と判定される場合には、S24に移行し、食事摂取ではないと判定される場合には、S21に移行する。
【0060】
この判定は、例えば次のようにして行う。予め加速度センサを取り付けた状態でのユーザの食事摂取の加速度データを記憶部に記録しておき、このデータと波形照合して判定する。
【0061】
ユーザに食事内容を照会するメッセージを提示する(S24)。
【0062】
ユーザの携帯端末に食事入力画面を提示する(S25)。
【0063】
ユーザが食事内容を入力する(S26)。
【0064】
ユーザが食事内容を記録したか否かを判定する(S27)。記録していない場合には、再度S24に移行する。ユーザが食事内容を記録した場合には、S21に移行する。上記S24〜S27は、上記実施の形態1のS15〜18と同様でよい。
【0065】
本実施の形態によると、加速度センシング情報により食事摂取と判定した場合にのみ食事内容照会が行われるので、ユーザの負担を増大させることなく、確実な食事記録を行うことができる。
【0066】
(実施の形態3)
本実施の形態では、呼気ガス検出と加速度センサとを併用する形態について説明する。装置構成や携帯電話の構成は、上記実施の形態1、2を組み合わせたものであり、各部の説明は省略する。図5に、本実施の形態に係る食事管理システムの動作フローを示す。
【0067】
ユーザの腕部の加速度を加速度センサが検出する(S301)。
【0068】
この加速度を分析する(S302)。
【0069】
ここで、加速度分析結果が食事摂取であるか否かを判定する(S303)。食事摂取と判定される場合には、S304に移行し、食事摂取ではないと判定される場合には、S301に移行する。
【0070】
ユーザに呼気を採取するメッセージを提示する(S304)。
【0071】
呼気が採取されたかを判定する(S305)。採取ありの場合S306に進み、採取無しの場合は、再度S304を行う。
【0072】
この呼気中の酸素ガス量、二酸化炭素ガス量を、呼気成分検出手段により検出する(S306)。
【0073】
この酸素ガス検出量、二酸化炭素ガス検出量から、間接熱量測定法を用いて、動作強度を算出する(S307)。
【0074】
動作強度(Af)が1.3〜1.5である場合を食事摂取、その他である場合を食事摂取ではないと判定する(S308)。食事摂取と判定される場合には、S309に移行し、食事摂取ではないと判定される場合には、S301に移行する。
【0075】
ユーザに食事内容を照会するメッセージを提示する(S309)。メッセージの提示は、上記実施の形態1と同様でよい。
【0076】
ユーザの携帯端末に食事入力画面を提示する(S310)。
【0077】
ユーザが食事内容を入力する(S311)。
【0078】
ユーザが食事内容を記録したか否かを判定する(S312)。記録していない場合には、再度S309に移行する。ユーザが食事内容を記録した場合には、S301に移行する。
【0079】
本実施の形態では、下腕部の動きから食事摂取であると判定した後に、呼気ガス情報を用いて再度食事摂取か否かを判定している。このため、食事摂取の判定精度が高まるので、ユーザのわずらわしさが低減される。
【0080】
(実施の形態4)
本実施の形態では、食事に関連する動作を検出し、ユーザに呼気採取を促す構成であること以外は、上記実施の形態1と同様である。図6に、本実施の形態に係る食事管理システムの動作フローを示す。
【0081】
食事に関連する行動の信号が検出される(S41)と処理が開始され、当該情報が携帯端末に送信され、携帯端末に呼気採取メッセージが表示される(S42)。ユーザが呼気を採取する(S43)。呼気の採取を判定し(S44)、確認された場合には、実施の形態1のS12に移行し、確認されない場合、再度携帯端末に呼気採取メッセージが表示される(S42)。
【0082】
食事に関連する動作としては、例えば調理器具(IHヒーター、ガスコンロ、電子レンジ等)をONする動作、冷蔵庫を開閉する動作、包丁を動かす動作等がある。これらの器具にセンサ(感圧センサや加速度センサ)と通信機とを設けておき、センサで関連動作が検出された場合、これが通信機によりユーザ側の端末に送られ(管理サーバを介してもよい)、呼気採取メッセージがユーザの端末に提示される。
【0083】
本実施の形態では、食事関連動作を検出した後に、呼気ガス情報により食事摂取の有無を判定するので、高い精度で食事摂取を判定できる。このため、上記関連動作が食事と関連しない場合(例えば、食品収納のために冷蔵庫を開閉する場合)には、ユーザに食事記録を促す処理は行われないので、ユーザの負担が小さい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本発明によると、呼気ガス成分情報や加速度センシング情報を用いてユーザが食事をしたことを検知し、食事内容照会手段がユーザに速やかに食事内容の照会を行うので、ユーザは、食事内容を忘れる前に食事内容入力手段を介して正確な食事内容を記入できる。この食事内容情報を活用することにより、ユーザの食生活を適正に管理することができる。よって、産業上の意義は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気中のガス成分を検出する呼気成分検出手段と、
前記呼気成分検出手段で検出された呼気中の酸素ガス量、二酸化炭素ガス量により、ユーザの食事摂取を判定する食事摂取判定手段と、
前記判定手段によりユーザが食事摂取したと判定した場合に、ユーザに食事内容を照会する食事内容照会手段と、
ユーザが食事内容を入力する食事内容入力手段と、
ユーザの食事内容の入力を記憶する記憶手段と、
を備えることを特徴とする食事管理システム。
【請求項2】
ユーザの下腕部に取り付けられる加速度センサと、
前記加速度センサで検知された加速度情報により、ユーザの食事摂取を判定する加速度食事摂取判定手段と、
前記加速度食事摂取判定手段により、ユーザが食事摂取したと判定した場合に、ユーザに食事内容を照会する食事内容照会手段と、
ユーザが食事内容を入力する食事内容入力手段と、
ユーザの食事内容の入力を記憶する記憶手段と、
を備えることを特徴とする食事管理システム。
【請求項3】
ユーザの腕に取り付けられる加速度センサと、
呼気採取手段と、
前記加速度センサで検知された加速度情報により、ユーザの食事摂取を判定する加速度食事摂取判定手段と、
前記加速度食事摂取判定手段により、ユーザが食事摂取したと判定した場合に、ユーザに呼気採取を促す呼気採取要請手段と、
前記呼気採取手段で採取された呼気中の酸素ガス量、二酸化ガス量により、ユーザの食事摂取を判定する食事摂取判定手段と、
前記食事摂取判定手段により、ユーザが食事摂取したと判定した場合に、ユーザに食事内容を照会する食事内容照会手段と、
ユーザが食事内容を入力する食事内容入力手段と、
ユーザの食事内容の入力を記憶する記憶手段と、
を備えることを特徴とする食事管理システム。
【請求項4】
前記食事摂取判定手段は、呼気中の酸素ガス量、二酸化炭素ガス量により消費カロリーを算出し、消費カロリーと基礎代謝量とからユーザの食事摂取を判定する、
ことを特徴とする請求項1または3に記載の食事管理システム。
【請求項5】
前記基礎代謝量は、ユーザの年齢、身長、体重、性別により算出する、
ことを特徴とする請求項4に記載の食事管理システム。
【請求項6】
ユーザの呼気ガスに含まれる酸素ガス量、二酸化ガス量を検出する呼気ガス検出ステップと、
呼気ガス中の酸素ガス量、二酸化ガス量により、ユーザの食事摂取の有無を判定する呼気ガス判定ステップと、
前記呼気ガス判定ステップにおいて食事摂取と判定した場合に、ユーザに食事内容を照会する食事内容照会ステップと、
ユーザが食事内容を入力するユーザ入力ステップと、
ユーザの食事内容の入力を記憶する記憶ステップと、
を備えることを特徴とする食事管理方法。
【請求項7】
ユーザの腕部の動きを加速度センサで検出する加速度検出ステップと、
加速度センサによる信号により、ユーザの食事摂取の有無を判定する加速度判定ステップと、
前記加速度判定ステップにおいて食事摂取と判定した場合に、ユーザに食事内容を照会する食事内容照会ステップと、
ユーザが食事内容を入力するユーザ入力ステップと、
ユーザの食事内容の入力を記憶する記憶ステップと、
を備えることを特徴とする食事管理方法。
【請求項8】
ユーザの腕部の動きを加速度センサで検出する加速度検出ステップと、
加速度センサによる信号により、ユーザの食事摂取の有無を判定する加速度判定ステップと、
前記加速度判定ステップにおいて食事摂取と判定した場合に、ユーザに呼気採取を促す呼気採取要請ステップと、
ユーザの呼気ガスに含まれる酸素ガス量、二酸化ガス量を検出する呼気ガス検出ステップと、
呼気ガス中の酸素ガス量、二酸化ガス量により、ユーザの食事摂取の有無を判定する呼気ガス判定ステップと、
前記呼気ガス判定ステップにおいて食事摂取と判定した場合に、ユーザに食事内容を照会する食事内容照会ステップと、
ユーザが食事内容を入力するユーザ入力ステップと、
ユーザの食事内容の入力を記憶する記憶ステップと、
を備えることを特徴とする食事管理方法。
【請求項9】
前記呼気判定ステップは、呼気中の酸素ガス量、二酸化炭素ガス量により消費カロリーを算出し、消費カロリーと基礎代謝量とからユーザの食事摂取を判定するステップである、
ことを特徴とする請求項6または8に記載の食事管理方法。
【請求項10】
前記基礎代謝量は、ユーザの年齢、身長、体重、性別により算出する、
ことを特徴とする請求項9に記載の食事管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−103087(P2011−103087A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258322(P2009−258322)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】