説明

食品および/または経口剤製造のためのヒドロキシクエン酸誘導体又はその塩の使用

【課題】従来より効果の優れたダイエット食品および/またはダイエット用経口剤を提供すること。
【解決手段】食品および/または経口剤を製造するための、下記式(I):


(式(I)中、R1は、分岐、不飽和結合もしくは置換基を有していてもよい、炭素数2〜30の脂肪族カルボン酸または炭素数7〜30の芳香族カルボン酸の残基からなるアシル基を表す。)で示されるヒドロキシクエン酸誘導体又はその塩の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた食品および/または経口剤に関する。より具体的には、本発明は、ダイエット食品および/またはダイエット用経口剤を製造するための、ヒドロキシクエン酸誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の肥満傾向の増大を受けて、さまざまなダイエット食品やダイエット用経口剤、例えば、コレステロールの吸収を阻害するキトサン含有食品(特許文献1参照)、体内への糖質の供給を抑制するギムネマ含有食品(特許文献2参照)、脂肪酸の代謝を促進するL−カルニチン含有食品(特許文献3参照)、脂肪酸合成経路を阻害するヒドロキシクエン酸含有食品(特許文献4参照)などが、ダイエット効果を有すると報告されている。
【0003】
しかしながらその効果はいまだ充分ではない。
【特許文献1】特開平5−62112
【特許文献2】特開平9−2963
【特許文献3】特開平11−253130
【特許文献4】特開平9−51779
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来より効果の優れたダイエット食品および/またはダイエット用経口剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ヒドロキシクエン酸は、アセチルCoAを原料として脂肪酸を合成する経路にあるATP-クエン酸リアーゼの拮抗阻害剤である。本発明者らは、優れたダイエット効果を有する食品を得るべく鋭意検討を重ねた結果、消化管での吸収を改善した特定のヒドロキシクエン酸誘導体が高脂肪合成抑制(蓄積量低減)作用と皮膚浸透性とを通じて示す、脂肪酸/脂肪合成抑制作用を利用することにより、従来より優れたダイエット効果を示す食品および/または経口剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は以下の[1]〜[5]の事項に関する。
[1] 食品および/または経口剤を製造するための、下記式(I):
【0007】
【化1】

【0008】
(式(I)中、R1は、分岐、不飽和結合もしくは置換基を有していてもよい、炭素数2〜30の脂肪族カルボン酸または炭素数7〜30の芳香族カルボン酸の残基からなるアシル基を表す。)
で示されるヒドロキシクエン酸誘導体又はその塩の使用。
[2] 前記式(I)中のR1が、分岐、不飽和結合もしくは置換基を有していてもよい、炭素数8〜24の脂肪族カルボン酸の残基からなるアシル基、又はケイヒ酸、カフェ酸(カフェイン酸)もしくはクロロゲン酸の残基からなるアシル基であることを特徴とする上記[1]に記載のヒドロキシクエン酸誘導体又はその塩の使用。
[3] 前記式(1)で示されるヒドロキシクエン酸誘導体又はその塩を、ダイエット作用を有する他の成分と組合せて使用することを特徴とする上記[1]または[2]に記載の使用。
[4] 前記式(I)で示されるヒドロキシクエン酸誘導体又はその塩を、投与するのに適した組成物中に0.01〜20質量%の量で配合して使用することを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の使用。
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかに記載の使用により製造されたことを特徴とする食品および/または経口剤。
【発明の効果】
【0009】
上記式(I)で示されるヒドロキシクエン酸誘導体又はその塩を配合したダイエット食品は、優れたダイエット作用を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。
なお本発明でいうダイエット作用とは、単に体重を減少せしめる作用のみならず、血糖値の上昇・血中コレステロールや脂質の増加など、一般に肥満に伴うか肥満の促進要因となる現象を改善する作用を包含する。
【0011】
また、本発明でいう食品および/または経口剤とは、食用に供するものであれば制限は無く、例えば、パン、麺、焼菓子、ガム、飴、粉末食品、飲料、ゼリー、錠剤、カプセルなどが挙げられる。
【0012】
本発明で使用されるヒドロキシクエン酸誘導体は下記一般式(1)で示される。このヒドロキシクエン酸誘導体又はその塩は食品および/または経口剤を製造するために使用される。
【0013】
【化2】

【0014】
式(I)中、R1は、分岐、不飽和結合もしくは置換基を有していてもよい、炭素数2〜30の脂肪族カルボン酸または炭素数7〜30の芳香族カルボン酸の残基からなるアシル基を表す。前記R1としては、分岐、不飽和結合もしくは置換基を有していてもよい、炭素数8〜24の脂肪族カルボン酸の残基からなるアシル基、又はケイヒ酸、カフェ酸(カフェイン酸)もしくはクロロゲン酸の残基からなるアシル基が好ましい。
【0015】
式(I)で示される化合物及びその塩の具体例としては、ヒドロキシクエン酸−2−オクタノエート、ヒドロキシクエン酸−2−カプレート、ヒドロキシクエン酸−2−ラウレート、ヒドロキシクエン酸−2−ミリステート、ヒドロキシクエン酸−2−パルミテート、ヒドロキシクエン酸−2−ステアレート、ヒドロキシクエン酸−2−ベヘノエート、ヒドロキシクエン酸−2−イソパルミテート、ヒドロキシクエン酸−2−イソステアレート、ヒドロキシクエン酸−2−ヘキシルデカノエート、ヒドロキシクエン酸−2−リノレート、ヒドロキシクエン酸−2−クロロゲネート、ヒドロキシクエン酸−2−カフェエート、及びそれらの塩が挙げられる。
【0016】
これらのうち、好ましい例としては、ヒドロキシクエン酸−2−ラウレート、ヒドロキシクエン酸−2−ミリステート、ヒドロキシクエン酸−2−パルミテート、ヒドロキシクエン酸−2−ステアレート、ヒドロキシクエン酸−2−ヘキシルデカノエート、ヒドロキシクエン酸−2−クロロゲネート、およびそれらの塩が挙げられる。
【0017】
さらに好ましい例としては、ヒドロキシクエン酸−2−ミリステート、ヒドロキシクエン酸−2−パルミテート、ヒドロキシクエン酸−2−ステアレート、及びそれらの塩が挙げられる。
【0018】
前記式(I)で示されるヒドロキシクエン酸誘導体の塩としては、上記ヒドロキシクエン酸誘導体のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。
アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩等が挙げられる。
【0019】
なお、本発明の皮膚外用剤には、前記式(I)で示されるヒドロキシクエン酸誘導体又はその塩を1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記式(I)で示されるヒドロキシクエン酸誘導体又はその塩は、所望により、ダイエット作用を有する他の成分と組み合わせることができる。このような成分の例としては、例えば、唐辛子エキス、大蒜エキス、ギムネマ、寒天、蒟蒻マンナン、サイリウム、ウコン、カルニチンなどが挙げられる。
【0020】
前記式(I)で示されるヒドロキシクエン酸誘導体又はその塩は、投与するのに適した組成物に0.01〜20質量%の範囲で配合して使用することができる(組成物全体の量を100質量%とする。)。すなわち、上記化合物の配合量は、食品および/または経口剤の処方成分の合計量(全量)中に、通常0.01〜20質量%の範囲、好ましくは0.1〜10質量%の範囲、最も好ましくは0.1〜5質量%の範囲にある。
【0021】
[実施例]
次に、実施例をあげ、本発明をさらに詳しく説明する。言うまでもなく、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】
[合成例1]
<ヒドロキシクエン酸−2−パルミテートの合成>
(1)ヒドロキシクエン酸トリベンジルエステルの合成
200mLナスフラスコにヒドロキシクエン酸カルシウム塩2.96g(10.1mmol)、トルエンスルホン酸一水和物5.86g(30.8mmol)、ベンジルアルコール10g(92.5mmol)、トルエン20mLを仕込み、共沸する水を除きながら4時間還流下で攪拌した。放冷した後、酢酸エチルを50mL加え、良く攪拌した。これを5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液100mLの入った500mLビーカー中に少しずつ攪拌しながら加えた。不溶物を除き、水層を分離した後、有機層を水で洗浄し、さらに無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒とベンジルアルコールを減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン:酢酸エチル(5:1)で溶出して目的物1.96g(収率40%)を白色固体として得た。
【0023】
(2)ヒドロキシクエン酸トリベンジルエステル−2−パルミテートの合成
50mLナスフラスコに、上記(1)で合成したヒドロキシクエン酸トリベンジルエステル239mg(0.50mmol)、テトラヒドロフラン(THF)5mL、パルミチン酸クロライド165mg(0.60mmol)を仕込み、氷冷下でトリエチルアミン61mg(0.60mmol)をTHF2mLに溶かした溶液を加え、同温で30分、室温で2時間攪拌した。反応液に酢酸エチル100mLと水50mLを加え、常法に従って有機層を洗浄した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン:酢酸エチル(10:1)で溶出して目的物330mg(収率92%)を白色固体として得た。
【0024】
(3)ヒドロキシクエン酸−2−パルミテートの合成
50mLナスフラスコに上記(2)で合成したヒドロキシクエン酸トリベンジルエステル−2−パルミテート300mg(0.42mmol)を仕込み、エタノール5mL、ジメチルホルムアミド(DMF)5mLを加えた。触媒として10質量%パラジウム活性炭を40mg加えて接触還元を2時間行った。触媒をろ別し、溶媒を減圧留去して得られた残渣にヘキサンを加え、析出した固体をろ取し、目的物175mg(収率84%)を白色固体として得た。
【0025】
この目的物の構造は下記の1H−NMRスペクトルにより確認された。
1H−NMR (270 MHz, DMSO−D6, ppm): 5.0 (s, 1H, CH),3.2-3.8 (br, 4H, OH, COOH),2.7-3.0 (dd, 2H, -CH2COOH),2.0-2.2 (m, 2H, -CH2COOC-),1.0-1.5 (m, 26H, -(CH2)13-),0.8-0.9 (t, 3H, CH3-).
(4)ヒドロキシクエン酸−2−パルミテートNa塩の合成
500mLのナスフラスコに上記(3)と同様にして合成したヒドロキシクエン酸−2−パルミテート10g(22.4mmol)を入れ、蒸留水200mLを加えて懸濁した。懸濁液に水酸化ナトリウム2.15g(53.8mmol)を加え、透明になるまで攪拌した。この溶液をエバポレーターで濃縮乾燥し、目的物12.1g(収率99%)を得
た。
【0026】
[実施例1]
以下の処方に従い、ドリンク剤(ドリンク剤1)を調整した。
【0027】
【表1】

【0028】
[比較例1]
上記処方よりヒドロキシクエン酸―2−パルミテートNa塩を除いたものをドリンク剤2とした(陰性コントロール)。
【0029】
[実施例2]
<ダイエット作用の試験>
(使用対象および観察期間)
体脂肪率約30%前後の20〜30代の女性各5名に、3ヶ月間使用させた。
【0030】
(使用方法)
毎日毎食後3回、飲用させた。その他の食生活・運動等は日常と変えないようにした。
(効果の測定)
3ヶ月後、被験者の体重と体脂肪率(測定には、オムロン(株)製の体重計及び体脂肪計を使用)、血中中性脂肪と総コレステロール濃度を測定(日立7150自動分析機を使用)し、飲用前より改善(低下)したものを2点、変化の無いものを1点、悪化(増加)したものを0点として点を付け、それぞれその合計点を評点とした。その結果を表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
[比較例2]
上のように調整したドリンク剤2を用いた以外は、実施例2と同様にダイエット作用の試験を行った。その結果を表3に示す。なお被験者は、実施例2の被験者とは異なる。
【0033】
【表3】

【0034】
以上のように、本発明のヒドロキシクエン酸誘導体又はその塩を配合したダイエット食品は、優れたダイエット作用を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品および/または経口剤を製造するための、下記式(I):
【化1】

(式(I)中、R1は、分岐、不飽和結合もしくは置換基を有していてもよい、炭素数2〜30の脂肪族カルボン酸または炭素数7〜30の芳香族カルボン酸の残基からなるアシル基を表す。)
で示されるヒドロキシクエン酸誘導体又はその塩の使用。
【請求項2】
前記式(I)中のR1が、分岐、不飽和結合もしくは置換基を有していてもよい、炭素数8〜24の脂肪族カルボン酸の残基からなるアシル基、又はケイヒ酸、カフェ酸もしくはクロロゲン酸の残基からなるアシル基であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記式(I)で示されるヒドロキシクエン酸誘導体又はその塩を、ダイエット作用を有するか有する他の成分と組合せて使用することを特徴とする請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記式(I)で示されるヒドロキシクエン酸誘導体又はその塩を、投与するのに適した組成物中に0.01〜20質量%の量で配合して使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の使用により製造されたことを特徴とする食品および/または経口剤。

【公開番号】特開2007−252276(P2007−252276A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81509(P2006−81509)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】