説明

食品の解凍・冷蔵保存方法および装置

【課題】簡単な構成および食材の見分けなどの熟練度を要することなく、数日間の間でも安定した品質維持が可能な解凍・冷蔵保存方法およびこれを用いる保存装置を提供する。
【解決手段】保存対象物Wを電気的に絶縁した状態で搭載可能な載置部材2と、該載置部材2と電気的に絶縁状態で設けられている接地電極3と、保存対象物Wを挟んで該保存対象物Wと電気的に絶縁され、上下方向で前記接地電極3と対向する電圧印加電極5とを設け、これら両電極3、5間に500〜1500Vに設定された高周波の交流電圧を印加して電界を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の解凍・冷蔵方法および装置に関し、さらに詳しくは、電界を用いて冷凍食品を解凍保存しまたは非冷凍の生鮮食品等を冷蔵保存する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生鮮食品の保存方法として冷蔵や冷凍保存が知られている。しかし、冷蔵保存では水分の蒸散(乾燥)により、また、冷凍保存では食材の水分の氷結による細胞破壊やタンパク質の低温変性等によって食材の鮮度、外見、味覚等の品質低下を招くという問題がある。
【0003】
これに対し、冷凍保存に対しては特許文献1に示すように、冷凍庫内の食材収容空間に電界を形成して過冷却工程と電界の付与を停止する冷却工程とを繰り返すことにより、氷結する水分(自由水)の結晶粒の大型化を防止して細胞破壊を防止する方法が公知である。
【0004】
また、冷凍食品の解凍及び解凍後の保存に関しては、特許文献2に示すように、冷凍庫内で500〜1500Vの比較的低電圧の微弱エネルギーで食品を帯電させる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−259709号公報
【特許文献2】特許第2696310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術は、過冷却を利用して食品の冷凍を行うための方法や装置であって、解凍や解凍後の保存に係るものではない他、食材の水分量や重量等に応じて各工程での時間や電圧、周波数値を設定する必要があり、制御も複雑である。
【0007】
また、特許文献2の方法や装置は、冷凍庫内の物品棚や容器を導電性材料にして食品自体を帯電させるものであるため、これを大型の冷凍庫や冷蔵庫に適用する場合は電極となる食品棚や容器と冷凍庫自体を大型化する必要があり、或いは、多数の冷凍庫を準備する必要がある等のコスト的に不経済であるばかりでなく、電力ロスも大きいという欠点がある。
【0008】
本発明の目的は、上記従来の保存方法における問題に鑑み、簡単な構成および食材の見分けなどの熟練度を要することなく、数日間の間でも安定した品質維持が可能な食品の解凍・冷蔵保存方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
(1)保存対象物Wを電気的に絶縁した状態で搭載可能な載置部材2と、該載置部材2と電気的に絶縁状態で設けられている接地電極3と、保存対象物Wを挟んで該保存対象物Wと電気的に絶縁され、上下方向で前記接地電極3と対向する電圧印加電極5とを設け、これら両電極3、5間に高周波の交流電圧を印加して電界を形成することを特徴とする解凍・冷蔵保存方法。
【0010】
(2)(1)に記載の解凍・冷蔵保存方法において、
前記印加電極での高電圧は500〜1500Vに設定されていることを特徴とする解凍・冷蔵保存方法。
【0011】
(3)(1)または(2)に記載の解凍・冷蔵保存方法に使用する保存装置であって、
保存対象物Wを上面に搭載可能であって、該保存対象物Wとの間が電気的絶縁されているパレット2と、
前記パレット2の底面に設けられて接地接続されている接地電極3と、
前記パレット2の上面に搭載される保存対象物Wを挟んで保存対象物Wと電気的に絶縁され、上下方向で前記接地電極3に対向して設けられ、給電装置4に接続されている電圧印加電極5と、
前記電圧印加電極5を電気的絶縁状態で懸垂支持し、前記パレット2の上面に対向する位置まで移動可能な構成を備えた電極支持部材6とを備えたことを特徴とする保存装置。
【0012】
(4)(3)に記載の保存装置において、
前記電極支持部材6は、前記保存対象物Wの上面に対する対向間隔を調整可能であることを特徴とする保存装置。
【0013】
(5)(3)に記載の保存装置において、
前記電極支持部材6は、底部に車輪7を備えた枠体が用いられることを特徴とする保存装置。
【0014】
(6)(3)に記載の保存装置において、
前記パレット2および電極支持部材6は、保冷空間内に複数並置させて設置可能であることを特徴とする保存装置。
【0015】
(7)(6)に記載の保存装置において、
前記保冷空間としては、保冷倉庫100などの大型施設が対象とされ、該保冷倉庫100において前記電極支持部材6がホイスト101により前記パレット2に搭載された保存対象物Wとの位置関係を制御されることを特徴とする保存装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電圧印加電極と接地電極との間に形成される電界内に、両電極と電気的に絶縁されて保存対象物が配置されることにより、目標温度への伝達速度が増すので、目標温度への到達を早めることができる。このことにより、食材の細胞破壊やタンパク質の低温変性が防止されるほか、水分の蒸散が抑制されて鮮度その他の品質の低下が抑止できる。
【0017】
しかも、電圧印加電極において高周波の交流電圧が印加されるので、保存対象物内で水分子が盛んに動くことにより氷結に至るのを阻止することができる。これにより、青果類の場合もこれに適した保存温度に維持して氷結による細胞の破壊を阻止することができる。また、魚肉類においても、保存温度に維持してドリップなどが発生するのを防止することができる。
【0018】
特に、これらの作用は、保存対象物と載置部材との間および載置部材と接地電極との間を絶縁構造とすることにより、電極間での高電位電場を構成することができ、より一層確実となる。
また、電極は、食品棚や保冷庫とは別に設けられるので、冷凍・冷蔵設備を大型化する場合も、食品棚自体や容器等の大型化を伴うことなく、電極やパレット数を増やすだけで足り、設備コストやエネルギーコストの面で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明により解凍・冷蔵保存方法に用いられる保存装置の原理構造を説明するための図である。
【図2】図1に示した保温装置に用いられる給電装置の構成を説明するための回路図である。
【図3】図2に示した給電装置により印加される交流電圧の周波数と温度変化及び過冷却の発生状態を示すグラフである。
【図4】保存対象物に対する電界強度を実験するための条件および電界強度に関するシミュレーション結果を示す図である。
【図5】図1に示した保存装置の応用例を示す図である。
【図6】図1に示した保存装置の他の応用例を説明するための図である。
【図7】図1に示した保存装置を保冷倉庫に適用した例を示す図である。
【図8】本発明による保存装置を用いた保存方法による実験例の結果をメロンの含水量変化によって示す図である。
【図9】図8に示した結果においてメロンの熟成度の違いを示す図である。
【図10】本発明による保存装置を用いた保存方法による実験例の結果をイチゴの含水量変化によって示す図である。
【図11】本発明による保存装置を用いた保存方法による実験例の結果を里芋の含水量変化によって示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面により本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による解凍・冷蔵保存方法に適用される保存装置の原理構造を示す模式図である。
【0021】
同図において保存装置1は、青果物や魚肉などの生鮮食料が対象となる保存対象物Wを上面に搭載可能であって、その保存対象物Wとの間が電気的絶縁されているパレット2と、パレット2の底面に設けられて接地部に接続されている接地側の電極(接地電極)3と、パレット2の上面に搭載される保存対象物Wを挟んで上下方向で接地電極3に対向して設けられ、給電装置4に接続されている非接地側の電極(電圧印加電極)5と、電圧印加電極5を電気的絶縁状態で懸垂支持し、パレット2の上面に対向する位置まで移動可能な構成を備えた電極支持部材6とを備えて構成されている。以下、各部材の詳細について説明する。
【0022】
パレット2は、上下に平板を対向させてその間にフォークリフトのフォークが差し入られる空間を設けて、通常、運搬に用いられる木製部材であり、その底面には導電性板材から成る接地電極3が一体化されている。
【0023】
接地電極3は、金網などを用いた接地電極3Aが地面との間に接続されており、さらに、接地電極3Aを接地した範囲以外の部分は碍子3Bにより地面との間が絶縁されている。
【0024】
パレット2の上面に搭載される保存対象物Wは、パレット2の上面との間に絶縁体W1を介して搭載されており、パレット2の底面に位置する接地電極3との間で電気的に絶縁されている。
【0025】
保存対象物Wを挟んで接地電極3に対向、換言すれば、上下方向でパレット2の上方に位置する電圧印加電極5は、電極支持部材6を構成する移動可能なフレームに設けられている支持板6Aによって碍子6Bにより絶縁された状態で鎖6Cなどにより懸垂支持される導電性板部材が用いられている。
【0026】
電極支持部材6は、支持板6Aが上面に固定されてパレット2の4隅近傍に位置する支柱部を備えたフレームであり、支柱部には、キャスタなどの転動部材7が設けられて移動できるようになっている。
電極支持部材6は、自身が移動できることにより、パレット2が置かれている位置に移動させて接地電極3に対して電圧印加電極5を対向させることができる。
【0027】
一方、給電装置4は、図2に示す構成が用いられている。
図2において、変圧器4Aの1次コイル4A1には交流電源4A2が接続されており、変圧器4Aの2次コイル4A3側と1次コイル4A1とは短絡回路4Bを介して接地されている。
【0028】
2次コイル4A3側は、増圧変圧器4Cの1次コイル4C1に接続され、鉄心4C2を介して2次コイル4C3には図1に示した電圧印加電極5が抵抗器4Dを介して接続されている。なお、符号4Eは、増圧変圧器4Cの2次コイル4C3の一相に設けられた絶縁封鎖部である。
【0029】
この構成は、本出願人の先願である、特許第2696310号公報に一部が記載された構成であり、電圧印加電極5に対しては、増圧変圧器4Cにより500〜1500Vに昇圧された高電圧が導電線4Fを介して電圧印加電極5に印加されて接地電極3との間に高圧の交流(交番)電界を形成する。
これにより、保存対象物Wは、高電位電界内に位置して交番電界の影響下にあり、例えば、−5℃〜8℃の温度域にあっても水分は氷結せず、且つ、蒸発(乾燥)を抑えられる。
【0030】
特に、本実施例においては、保存対象物Wとパレット2との間およびパレット2と接地電極3との間を絶縁構造とすることにより、電極間での高電位静電場中に保存対象物Wを曝することができる。
【0031】
ところで、本発明においては、前記電圧条件の他に望ましい周波数を設定する必要があり、図3は、冷却雰囲気温度−6〜−10℃の下で水(水道水を280ml用のペットボトルに入れる)(重量250g、水分率99%)を冷却した場合の芯温変化を、電界形成がない場合と周波数fが100Hz、500Hz、1000Hzの場合についてシミュレーションしたものである。
その結果、この例では、1000Hzの場合が温度変化(降下)速度が高く、且つ、過冷却温度が最も低いこと、さらに冷却開始後、約65分前後に過冷却の低温ピークがあることが明らかである。
換言すれば、印加電圧の周波数は電極間に形成される電界強度に影響を与えるパラメータであり、電界強度が温度変化の速度と過冷却のピーク等に大きく影響すると考えられる。
【0032】
図4(A)、(B)は、パレット2上に7段に積み上げられた箱詰めのメロンを対象として、電界を形成させた場合の装置と、対象物の配置状態と、各段の電圧及び電界強度のシミュレーション値とを示す模式図である。
上記シミュレーションでは、食材に対し高電位によって帯電させる場合の電界強度を、電圧測定記録(値)・電界強度シミュレーションソフトウエアにより食材の誘電率εを想定した(ε=50とした)。
上記データにおいては、シミュレーション値と実測値間に差があるが、これはシミュレーション値では、漏洩電流等が一切ないのに対し、実測では絶縁碍子等を施しても電気が他方に流れる等の原因による。但し、後述する長期保存結果によれば、電圧値が100V以上あれば、(1)〜(7)の各段とも鮮度等の品質保存が可能であることが判明した。
また、上記の他、一段積みのみでシミュレーションを行った結果と対比した場合、メロンにおける電圧値にも差が生じ、メロンを収容した段ボール箱は7段積みの方が一体となって帯電しやすく、非接地側の電極5は、できるだけ対象に対して近接させることが望ましい。
【0033】
図1に示した原理構造の保存装置1は、パレット2を1段だけ設けることに限らず、例えば、図5に示すように、複数段の棚にパレット2を搭載することも可能である。この構成においては、各パレット2を配置した空間においてパレット2側に接地電極3を、そしてこれと対向する位置に電圧印加電極5をそれぞれ設ける。なお、図5(B)においては、図5(A)に示した金網3Aをはじめとして一部の部材が省略されている。
この場合の接地電極3同士および電圧印加電極5同士は、接地電路30、給電電路40により共通接続されている。
【0034】
一方、電極間での電界強度を効率よく形成するために、例えば、図6に示すように、電圧印加電極5を保存対象物Wに対して昇降させて離間させることができる昇降機構10を用いることができる。
【0035】
昇降機構10には、電圧印加電極(便宜上、図1において用いた符号5により示す)に取り付けられている電動モータ10Aの出力軸に有するピニオンギヤ(図示されず)を電極支持部材(便宜上、図1において用いた符号6により示す)の支柱部に設けられているラックに噛み合わせることにより昇降できる構成が用いられている。
【0036】
電動モータ10Aは、図示しない操作盤に設けられている昇降スイッチの操作に応じて昇降することができ、保存対象物Wの上面での位置を決められるようになっている。保存対象物Wの上面と電圧印加電極5との対向間隔に関しては、正確な規定はないが、電界を形成する上で最も効率の良い位置を予め実験などによって割り出しておき、保存対象物W内の水分の蒸散が効率よく抑えられる位置が得られる電界強度を設定できる位置とすることが望ましい。なお、図6(B)には、図6(A)に示した部材の一部が省略されている。
【0037】
また、電圧印加電極5は、一つのパレット2を対象として設けられるものであるので、パレット2を複数並置した場所においても適用することができる。
図7は、この場合の構成を示す図であり、同図に示す例は、パレット2を保冷倉庫100に適用した場合を示している。
【0038】
図7において保冷倉庫100の内部には、図示しないが冷蔵装置が備えられて倉庫内を一定の冷蔵温度に維持できるようになっている。
倉庫内天井部には、電動ホイスト101が複数設けられており、その下方にパレット2を位置決めすることができる。
【0039】
電動ホイスト101には、電圧印加電極5が懸垂支持されており、パレット2上に搭載された保存対象物Wとの対向間隔を所望する間隔に位置決めできるようになっている。
パレット2は、電圧印加電極5に対向する位置までフォークリフト102により運搬されて位置決めされる。
【0040】
パレット2は、図1に示した構成が用いられており、電圧印加電極5との間で保冷倉庫100の底面に装備されている接地電極3との間で電界を形成できるようになっている。なお、図示していないが、保存対象物Wとパレット2との間には絶縁体が配置されている。
【0041】
本発明は以上のような構成であるので、電圧印加電極5と接地電極3との間に保存対象物Wがパレット2との間で絶縁した状態で搭載されると、電圧印加電極5に対して交流電源4から500〜1500Vで100〜1000Hzの高周波電圧が印加される。
【0042】
電極間には一方が接地されていることにより電位差による電界が形成され、電界内で絶縁されている保存対象物W内が帯電することにより内部で分極が生じる。これにより、保存対象物Wの内部では、電荷が整列して蒸発するに足る条件が規制されることになる。
【0043】
一方、高周波の交流電圧が印加されることにより電子のクラスター化により、細菌の繁殖が抑えられることになる。
【0044】
本発明者等は、図1,図4に示す装置と方法により保冷倉庫内で保存対象物Wの保存状態を実験したところ、次の結果を得た。
【0045】
(実験例1)
実験例1は、メロンを対象として、図4に示すように複数の段ボール箱にそれぞれ5個宛詰めて(図9(A)参照)、7段に段ボール箱を積層した状態でパレット2上に搭載し、図4に示した電界強度の下で、メロンの含水量変化およびメロン内部での熟成状態を観察した。
メロンは、帯電ありのもの(電界形成を用いるもの)では段ボール箱7箱にそれぞれ5個ずつ収容したものを、帯電無しのもの(電界形成を用いないもの)では同じく5個詰めのものを1箱用意し、測定値は2回の平均値を求めた。
【0046】
図8は、含水量を、メロン重量の減量度合いから求めた結果であり、図9は、(A)に示す実験前の状態から、電界を形成した場合(図9(B)左)と、電界を用いない場合(図9(B)右)とでメロン内部の熟成変化状態を比較して示したものである。その結果、重量変化の面ではスタート時の平均重量1247g/個のものの平均減量が、帯電ありの場合には21.86g/個(1.76%)、帯電なしでは27.00g/個(2.24%)というように、両者に有意な差があった。
【0047】
このように図8,図9において、含水量に関しては、電界を形成しないで保存対象物が帯電しない場合に比べて電界形成を行った場合の方が含水量の低下が少ないことが分かり、また熟成状態に関しても、電界形成しない場合の方が電界形成した場合よりも熟成変化(鮮度低下)が進行していることが目視によっても明確に確認できる結果が得られた。
【0048】
(実験例2)
図10は、イチゴを対象として、450×590(mm)の長方形枠内に長手方向の5本の格子を配して6等分した5φの金属線材よりなる上下の電極間の約400mmの空間に500〜1500Vの電圧を印加して電界を形成し、図8,9に示した実験例と同様な条件にて、平成19年2〜3月に実験を行った結果である。
本実験結果からも明らかなように、本実施例においては、他の保存温度条件と同じ場合においても、水分の蒸散が抑えられて含水量の低下が防止されていることが判る。
【0049】
(実験例3)
図11は、里芋を対象として、上記実施例2と同様な装置と電界形成にて、平成19年に実験を行った結果である。
本実験結果からも明らかなように、本実施例においては、他の保存温度条件と同じ場合でも、水分の蒸散が抑えられていることが分かり、含水量の低下による鮮度低下が防止されている。
【0050】
以上のような実施例においては、電圧印加電極に印加される高周波電圧は、一様な値であるので、保存対象物の種別を選択するだけで設定することができる。特に周波数を規定したことにより、保存対象物毎の計量や水分率の割り出しなどの作業が不要となり、作業の熟練度などを要することなく適正な保存状態の設定が可能となる。
【0051】
以上の実験において、少なくとも、メロン、イチゴ、里芋を高電圧での交流電界中で冷蔵保存した場合、食品の鮮度と直接関連すると考えられる水分含量の減少に有意な差が認められ、電界による水分蒸散量の減少の正確なメカニズムは明らかでないが、何らかの作用によって電界が食品の水分の蒸散を抑制することは明らかである。また、これらの作用は水分(特に自由水)を多量に含む食品全般に共通するものと容易に推測できる。
【符号の説明】
【0052】
1 保存装置
2 パレット
3 接地電極
4 給電装置
5 電圧印加電極
6 電極支持部材
7 キャスタ
10 昇降機構
100 保冷倉庫
101 電動ホイスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保存対象物(W)を電気的に絶縁した状態で搭載可能な載置部材(2)と、該載置部材(2)と電気的に絶縁状態で設けられている接地電極(3)と、保存対象物(W)を挟んで該保存対象物(W)と電気的に絶縁され、上下方向で前記接地電極(3)と対向する電圧印加電極(5)とを設け、これら両電極(3)、(5)間に高周波の交流電圧を印加して電界を形成することを特徴とする解凍・冷蔵保存方法。
【請求項2】
請求項1記載の解凍・冷蔵保存方法において、
前記印加電極での高電圧は500〜1500Vに設定されていることを特徴とする解凍・冷蔵保存方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の解凍・冷蔵保存方法に使用する保存装置であって、
保存対象物(W)を上面に搭載可能であって、該保存対象物(W)との間が電気的絶縁されているパレット(2)と、
前記パレット(2)の底面に設けられて接地接続されている接地電極(3)と、
前記パレット(2)の上面に搭載される保存対象物(W)を挟んで保存対象物(W)と電気的に絶縁され、上下方向で前記接地電極(3)に対向して設けられ、給電装置(4)に接続されている電圧印加電極(5)と、
前記電圧印加電極(5)を電気的絶縁状態で懸垂支持し、前記パレット(2)の上面に対向する位置まで移動可能な構成を備えた電極支持部材(6)とを備えたことを特徴とする保存装置。
【請求項4】
請求項3記載の保存装置において、
前記電極支持部材(6)は、前記保存対象物(W)の上面に対する対向間隔を調整可能であることを特徴とする保存装置。
【請求項5】
請求項3記載の保存装置において、
前記電極支持部材(6)は、底部に車輪(7)を備えた枠体が用いられることを特徴とする保存装置。
【請求項6】
請求項3記載の保存装置において、
前記パレット(2)および電極支持部材(6)は、保冷空間内に複数並置させて設置可能であることを特徴とする保存装置。
【請求項7】
請求項6記載の保存装置において、
前記保冷空間としては、保冷倉庫(100)などの大型施設が対象とされ、該保冷倉庫(100)において前記電極支持部材(6)がホイスト(101)により前記パレット(2)に搭載された保存対象物(W)との位置関係を制御されることを特徴とする保存装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図9】
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