食品の調理方法および食品の調理器
【課題】食品内部の組織が破壊されにくく高品位の調理を容易にすることができる食品の調理方法および食品の調理器を提供する。
【解決手段】過熱水蒸気を用いてタンパク質を含む食品を加熱調理する食品の調理方法であって、箱体内に収容した表面温度が100℃以下の食品に対して体積1リットル当たり水分量換算で0.1cm3/分以上の過熱水蒸気を供給し、過熱水蒸気を食品の表面で凝縮させて食品の内部の質量が増加する凝縮工程と、食品の表面から水分量が減少する復元工程と、食品の表面の水分量が凝縮工程の前よりも減少する乾燥工程と、を含み、復元工程よりも前の段階で食品の成分が加熱変性する食品の調理方法とその方法を実施するための食品の調理器である。
【解決手段】過熱水蒸気を用いてタンパク質を含む食品を加熱調理する食品の調理方法であって、箱体内に収容した表面温度が100℃以下の食品に対して体積1リットル当たり水分量換算で0.1cm3/分以上の過熱水蒸気を供給し、過熱水蒸気を食品の表面で凝縮させて食品の内部の質量が増加する凝縮工程と、食品の表面から水分量が減少する復元工程と、食品の表面の水分量が凝縮工程の前よりも減少する乾燥工程と、を含み、復元工程よりも前の段階で食品の成分が加熱変性する食品の調理方法とその方法を実施するための食品の調理器である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品の調理方法および食品の調理器に関し、特に食品内部の組織が破壊されにくく高品位の調理を容易にすることができる食品の調理方法および食品の調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品中の水分量は、食品全体の質量に対して、例えば牛肉類で約73%、魚肉類で約70%、イカで約80%、イモ類で約79%など、ほとんどの食品で50〜80%の範囲にあり、食品内部の組織の形成には、この水分量が大きな役割をなしている。
【0003】
従来の業務や家庭の調理における食品の加熱方法としては、たとえば、熱源として電気やガスを用いた熱風オーブン方式における熱風加熱、輻射型グリル方式における輻射加熱またはマイクロ波を用いた電子レンジにおける電磁波加熱などが利用されている。しかしながら、これらの加熱方法においては、食品の加熱が進行するとともに食品内部から水分が蒸発していき、食品内部の組織が破壊されてしまうという問題があった。
【0004】
また、調理における食品の加熱方法としては、過熱水蒸気ではない水蒸気を用いて食品を加熱するスチーム加熱を利用する方法がある。しかしながら、この加熱方法においては、食品の表面および内部がともに水分によってべたつき、高品位な調理をすることができないという問題があった。
【0005】
そこで、近年、食品の加熱前に食品を樹脂フィルムなどの包装袋の中に入れ、この包装袋の内部を真空引きした後に包装袋の開口部を密封し、包装袋ごと熱湯中で加熱することによって、食品内部の水分を蒸発させずに調理する真空調理法が実用化されている。
【0006】
しかしながら、この真空調理法においては、食品の加熱前に食品を包装袋中に入れ、包装袋の内部を真空状態にする必要があり、非常に手間がかかってしまうという問題があった。
【0007】
また、特許文献1には、常圧下で空気が混じらないようにして過熱蒸気を食品に当てて加熱処理をする食品の加工方法が開示されている(たとえば、特許文献1の請求項1〜5参照。)。しかしながら、この方法においても、食品の加熱が進行するとともに食品内部から水分が蒸発していき、食品内部の組織が破壊されてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2001−46005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、食品内部の組織が破壊されにくく高品位の調理を容易にすることができる食品の調理方法および食品の調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、過熱水蒸気を用いてタンパク質を含む食品を加熱調理する食品の調理方法であって、箱体内に収容した表面温度が100℃以下の食品に対して体積1リットル当たり水分量換算で0.1cm3/分以上の過熱水蒸気を供給し、過熱水蒸気を食品の表面で凝縮させて食品の内部の質量が増加する凝縮工程と、食品の表面から水分量が減少する復元工程と、食品の表面の水分量が凝縮工程の前よりも減少する乾燥工程と、を含み、復元工程よりも前の段階で食品の成分が加熱変性する食品の調理方法である。
【0010】
また、本発明の食品の調理方法においては、過熱水蒸気の供給を停止した後にヒータで食品を加熱することが好ましい。
【0011】
また、本発明の食品の調理方法においては、過熱水蒸気の温度が100℃以上であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の食品の調理方法においては、過熱水蒸気が箱体内の雰囲気の50体積%以上を占めることが好ましい。
【0013】
また、本発明の食品の調理方法においては、過熱水蒸気が箱体の端部に比べて、箱体の中央部に多く供給されることが好ましい。
【0014】
また、本発明の食品の調理方法においては、食品の表面に接触する過熱水蒸気の流速が2m/秒以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、上記のいずれかの食品の調理方法を実施するための食品の調理器であって、食品を収容する箱体と、箱体に連結された蒸気供給装置と、を含む食品の調理器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、食品内部の組織が破壊されにくく高品位の調理を容易にすることができる食品の調理方法および食品の調理器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0018】
図1に、本発明の食品の加熱方法の好ましい一例を説明するための拡大概念図を示す。図1に示すように、本発明においては、食品90を過熱水蒸気100を含む雰囲気下に曝すことにより食品90の表面に過熱水蒸気100が接触し、過熱水蒸気100が凝縮水101に変化する際に生じる凝縮熱が食品90に伝達されて加熱されるとともに、過熱水蒸気100が雰囲気中を対流することによって生じる対流熱および高温である過熱水蒸気100から輻射される輻射熱が食品90に伝達されて加熱される。なお、過熱水蒸気とは、飽和水蒸気にさらに熱を加えて100℃以上とした高温の水蒸気のことをいう。
【0019】
一方、従来の熱風加熱においては、図2の拡大概念図に示すように、熱風である加熱空気102が雰囲気中を対流することによって生じる対流熱のみしか食品90に伝達されない。
【0020】
したがって、図3の比較図に示すように、本発明の食品の加熱方法は、従来の熱風加熱と比べて加熱時間に対する食品の内部温度の立ち上がりが早く、従来の熱風加熱よりも食品の加熱を促進することができる。
【0021】
図4に、本発明の過熱水蒸気による食品の加熱方法と、従来の熱風加熱による食品の加熱方法とスチーム加熱による食品の加熱方法の加熱時間に対する水分変化量を比較した図を示す。本発明の過熱水蒸気による食品の加熱方法においては、上記において説明した熱(凝縮熱、対流熱、輻射熱)の伝達により食品が加熱されるとともに、過熱水蒸気の凝縮水が食品中に染み込み、食品の表面および内部の水分量が増加する。そして、一定の加熱時間が経過すると、今度は食品の表面から水分が蒸発して水分量が減少する復元過程に入る。そして、さらに加熱時間が経過すると、食品の表面の水分量が食品の加熱前よりも減少する乾燥過程に入る。このような過程を経た本発明の食品の加熱方法においては、食品の表面がパリッとし、食品の内部がジューシーである高品位な調理が可能となる。
【0022】
一方、熱風加熱においては、食品の加熱開始時から食品の表面および内部の水分量が減少して食品の表面および内部がともに乾燥しすぎる。また、スチーム加熱においては、食品の加熱開始時から食品の表面および内部の水分量が増加して食品の表面および内部がともにべたつく。
【0023】
ここで、本発明の食品の加熱方法においては、食品の成分の加熱変性時における食品内部の水分量を減少させないことを特徴とする。食品の水以外の成分としては、タンパク質、炭水化物または油脂などであるが、これらは加熱されるとともに熱による変性、酸素による酸化反応などの複雑な変化が起こる。この変化が起こるときに、食品成分の大半を占め、食品内部の組織形成に大きな役割を果たしている水分が減少することは、食品内部の組織を著しく破壊することになるとともに食品内部が乾燥して高品位の調理ができないという問題がある。そこで、食品の成分の加熱変性時における食品内部の水分量を減少させないことによって、このような問題が解消されることとなる。
【0024】
なお、本明細書において、「食品の成分の加熱変性時」には、食品のタンパク質の変性時だけでなく、油脂などが酸化される時などのように食品の成分がある状態から他の状態へ変化する場合も含まれる。特に、食品に含まれるタンパク質の変性時に食品内部の水分量が減少しない場合には、食品内部の組織が破壊されにくくなることから、上記食品の成分の加熱変性時は食品のタンパク質の変性時であることが好ましい。
【0025】
図5(A)に加熱前の食品に含まれるタンパク質の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。この食品について本発明による加熱方法と従来の熱風加熱による加熱方法を用いて加熱を行なう。すると、本発明による加熱方法においては、タンパク質の変性時に食品内部の水分量が減少しないことから、図5(B)のSEM写真に示すように、食品内部の組織構造は保持される。一方、従来の熱風加熱による加熱方法においては、タンパク質の変性時に食品内部の水分量が減少してしまうことから、図5(C)のSEM写真に示すように、筋原繊維が分解した後に凝集して食品内部の組織構造が破壊される。
【0026】
図6に、本発明に用いられる食品の加熱器の好ましい一例の模式的な構成図を示す。この加熱器は、食品を収容する容器としての加熱室20と、加熱室20に連結された蒸気供給装置50とを含む。
【0027】
加熱室20は直方体形状であって、その一面が全面的に開口している。そして、その開口している面は扉(図示せず)と接している。加熱室20の内面および扉の内面は、加熱室20の内部が高圧となった場合にも耐えることができるように、ステンレス鋼板で形成されていることが好ましい。また、加熱室20の周囲および扉の内側にはそれぞれ断熱材が設置されていることが好ましい。この場合には加熱室20の内部温度は、加熱室20の外部の影響を受けにくくなるためである。また、加熱室20の床面には、ステンレス鋼板製の受皿21が設置され、受皿21の上には食品を載置するためのステンレス鋼板製のラック22が設置される。
【0028】
また、加熱室20の上部からは加熱室20の床面近くまで垂下するステンレス製の気流制御板23が設置されている。なお、気流制御板23における加熱室20の床面側の端部と加熱室20の側壁との間の隙間が気体吸込口24となって、外部循環路30に過熱水蒸気を含む気体を導く。
【0029】
図7に、本発明に用いられる蒸気供給装置50の好ましい一例の模式的な拡大断面図を示す。蒸気供給装置50は、円筒形のポット51と、ポット51の外面に密着するように設置された蒸気発生ヒータ56と、ポット51の内部に水を供給する給水パイプ63と、排水パイプ52と、伝熱ユニット60とを含む。そして、ポット51の上部には蒸気吸引エジェクタ34が形成されており、蒸気吸引エジェクタ34はパイプ33とノズル35とを備えている。
【0030】
ポット51の底部は漏斗状に成形され、そこから排水パイプ52が垂下している。排水パイプ52の下端部は水平に対しやや勾配をなす形で配置された図6に示す排水路53に接続されている。図6に示すように、排水パイプ53の端部は加熱室20の側壁を通じ、受皿21に向かって開口している。また、排水パイプ52と排水パイプ53との間には排水バルブ54および水位センサ55が設置されている。また、蒸気発生ヒータ56とほぼ同じ高さになるように、伝熱ユニット60がポット51の内部に設置されている。
【0031】
伝熱ユニット60は、ポット51の側壁内面に密着するリング61と、このリング61の内部に放射状に設置されている複数のフィン62とを備えている。リング61とフィン62とは押出成形、溶接またはろう付けなどの手法により一体化されている。リング61およびフィン62は、ポット51の軸線方向に所定の長さを有している。
【0032】
ポット51、伝熱ユニット60および給水パイプ63は、熱の良導体である金属で形成されることが好ましい。金属としては熱伝導率のよい銅やアルミニウムなどが適する。ただし、銅や銅合金の場合、緑青が発生するので、熱伝導率は少し劣るものの、緑青を懸念せずにすむステンレス鋼を用いることとしてもよい。
【0033】
このような蒸気供給装置50においては、まず、図6に示す水タンク71からポンプ73によって水タンク71内の水が給水パイプ63に圧送される。なお、ポンプ73は、ポンプケーシング74と、ポンプケーシング74に収容されたインペラ75と、インペラ75に動力を伝えるモータ76とにより構成されている。モータ76は、水タンク71が所定位置にセットされるとインペラ75に電磁的に結合される。
【0034】
給水パイプ63に圧送されてきた水は、図7に示すように、給水パイプ63の先端部から噴水のように溢れ出し、ポット51の内部に供給される。水位が伝熱ユニット60の長さ半ばまで達したことを水位センサ55が検知したら、一旦、水の供給が中止される。
【0035】
このように所定量の水がポット51の内部に供給された後、蒸気発生ヒータ56への通電が開始される。蒸気発生ヒータ56はポット51の壁面を介してポット51の中の水を加熱する。ポット51の壁面が加熱されると、その熱は伝熱ユニット60に伝わり、伝熱ユニット60から水へと伝えられる。蒸気発生ヒータ56の設置箇所と伝熱ユニット60の設置箇所とはほぼ高さにあるので、蒸気発生ヒータ56から伝熱ユニット60へとストレートに熱が伝わり、伝熱効率が向上する。
【0036】
蒸気発生ヒータ56への通電と同時に、図6に示す送風装置25および蒸気加熱ヒータ41への通電も開始される。送風装置25は、気体吸込口24から加熱室20の内部の気体を吸い込み、外部循環路30に気体を送り出す。遠心ファン26によって、気体が送り出されるので、プロペラファンに比べて気体の流速が速い。また、遠心ファン26を直流モータで高速回転させた場合には、気体の流速は極めて速くなる。
【0037】
そして、ポット51の中の水が沸騰して水蒸気が発生する。水蒸気は蒸気吸引エジェクタ34によって速やかに吸上げられ、ノズル35から後段エジェクタ37に噴出される。
【0038】
後段エジェクタ37においては、蒸気吸引エジェクタ34のノズル35から噴出された水蒸気にバイパス路38から流れてきた気体が合流する。後段エジェクタ37を経た水蒸気を含む気体は高速でサブキャビティ40に突入する。
【0039】
サブキャビティ40に入った水蒸気は、蒸気加熱ヒータ41により加熱されて過熱水蒸気となる。過熱水蒸気は温度上昇により膨張し、噴気口43から勢いよく噴出して、加熱室20の内部の雰囲気に供給される。
【0040】
ここで、加熱室20の内部の過熱水蒸気の温度は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。過熱水蒸気の温度が100℃以上である場合には水が完全に気体となるため、加熱室20の内部の雰囲気の水蒸気量を大幅に増加することができ、食品の表面に付着する凝縮水量を増加させることができる。また、過熱水蒸気の温度が150℃以上である場合には、焼き調理などの調理において、特に高品位な調理が可能となる傾向にある。
【0041】
また、加熱室20の内部の雰囲気への過熱水蒸気の供給量は、食品内部の水分量を減少させない観点から、加熱室20の内部の雰囲気の体積(容積)1リットル当たり水分量換算で0.1cm3/分以上であることが好ましく、0.3cm3/分以上であることがより好ましい。ここで、過熱水蒸気の供給量は、1分間当たりに水タンク71から減少する水の量を測定し、これを加熱室20の容積1リットル当たりに換算することによって算出される。
【0042】
また、過熱水蒸気は、加熱室20の内部の雰囲気の端部に比べて、中央部に多く供給されることが好ましい。この場合には、食品の表面に付着する凝縮水の量が増加して、食品の加熱を効率的に行なうことができる傾向にある。
【0043】
加熱室20の内部に過熱水蒸気を含む気体が供給されると、加熱室20の内部の温度が急速に上昇する。加熱室20の内部の温度が調理可能領域に達したことを温度センサ(図示せず)が検知すると、表示や音などにより調理可能になったことを使用者に知らせる。そして、使用者は扉を開けて、加熱室20の内部に食品90を設置する。
【0044】
すると、噴気口43から吹き下ろす過熱水蒸気が食品90の表面に接触して、上記のように食品90に過熱水蒸気の凝縮熱、対流熱および輻射熱が伝達されて食品90の加熱が行なわれる。
【0045】
ここで、過熱水蒸気は、加熱室20の内部の雰囲気の50体積%以上を占めることが好ましく、90体積%以上を占めることがより好ましい。過熱水蒸気が加熱室20の内部の雰囲気の50体積%以上を占める場合には、食品90に付着する凝縮水の量が増加して食品90の昇温速度が速くなるため、食品90の加熱終了時までの水分の移動時間が短くなることから、食品90の内部の組織がより破壊されにくくなる傾向にある。また、雰囲気中の酸素濃度も減少することから、酸化しやすい食品の成分の変性を抑止できる傾向にある。特に、過熱水蒸気が加熱室20の内部の雰囲気の90体積%以上を占める場合には、これらの傾向がさらに大きくなる。なお、加熱室20の内部の雰囲気を占める過熱水蒸気の割合は、たとえば加熱室20の内部に酸素濃度計を設置して測定された酸素濃度から算出する方法を用いることができる。すなわち、加熱室20の内部の雰囲気が空気と過熱水蒸気とからなる場合には、空気中の酸素濃度は約20%であるため加熱室20の内部の雰囲気の空気の割合は酸素濃度計により測定された酸素濃度の約4倍となり、空気以外の成分が過熱水蒸気となる。したがって、加熱室20の内部の雰囲気の過熱水蒸気の割合は下記式により表わされる。
過熱水蒸気の割合(%)=100(%)−4×(酸素濃度計により測定された酸素濃度(%))
また、食品90の表面に接触する過熱水蒸気の流速は2m/秒以上であることが好ましく、5m/秒以上であることがより好ましい。この過熱水蒸気の流速が2m/秒未満である場合には、食品90への凝縮水の付着量が減少して伝熱効率が悪くなる傾向にある。また、過熱水蒸気の流速が5m/秒以上である場合には、食品90への凝縮水の付着量が増加して特に伝熱効率が良好となり、また、食品90の表面の油を効率良く除去することができる傾向にある。なお、食品90の表面に接触する過熱水蒸気の流速は、たとえばプロペラ型風速計などを食品90の近傍に設置することによって測定される。
【0046】
過熱水蒸気は食品90に衝突した後、加熱室20の上方へと向きを転じる。過熱水蒸気は空気より軽いため、自然な形でこのように方向転換することとなり、これが加熱室20の内部に対流をもたらす。この対流により、加熱室20の内部の温度を維持しつつ、食品90にはサブキャビティ40で加熱されたばかりの過熱水蒸気を衝突させることができ、熱を大量かつ速やかに食品90に与えることができる。
【0047】
なお、蒸気発生装置50で飽和水蒸気を発生し続けていると、ポット51の中の水位が低下する。水位が所定レベルまで下がったことを水位センサ55が検出すると、制御装置はポンプ73の運転を再開させる。ポンプ73は水タンク71の中の水を押し上げ、蒸発した分の水を補給する。そして、ポット51の内部の水が所定レベルまで達したことを水位センサ55が検知した時点で、制御装置はポンプ73の運転を停止させる。このようにしてポンプ73は、調理期間中、間欠的に給水動作を行なうことができる。
【0048】
また、上記においては、加熱室20の内部または外部にヒータ(図示せず)を設置することができ、加熱室20への過熱水蒸気の供給を停止した後、食品90をヒータにより加熱することもできる。この場合には、食品90の表面に焦げ目などの焼き目を付けることができるので、加工食品の商品価値が高まって有利となる傾向にある。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
図6に示す食品の加熱器を用い、加熱室20の内部に230℃の過熱水蒸気を加熱室20の内部の雰囲気の体積1リットル当たり水分量換算で11.5cm3/分の割合で供給し、加熱室20の内部の雰囲気の90体積%を過熱水蒸気が占めるようにした。ここで、ラック22上に食品90としてハムを加熱室20の中央部に設置したところ、過熱水蒸気は加熱室20の側壁近傍に比べて加熱室20の中央部に多く供給され、ハムの表面に接触する過熱水蒸気の流速は3m/秒であった。そして、ハムを加熱し、所定時間加熱したハムの表面および内部の質量変化を測定するとともに、ハムの表面および内部の温度を測定した。なお、最長加熱時間はハムの内部温度が85℃となった時点とした。この加熱の間のハムの表面および内部における温度変化および質量変化と経過時間との関係を図8に示す。
【0050】
図8に示すように、実施例1においては、ハムの内部温度が85℃となるまでの経過時間が約22分と短かった。これは、実施例1においては、過熱水蒸気による凝縮熱、対流熱および輻射熱によってハムの加熱が効率的に行なわれたためであると考えられる。
【0051】
また、図8に示すように、実施例1においては、加熱の間においてハムの表面の質量は減少したが、ハムの内部の質量は加熱前と比べて減少することがなかった。これは、過熱水蒸気によって、ハムの内部の水分量が減少しなかったためと考えられる。
【0052】
なお、実施例1において、食品表面および内部の質量変化は、同形状のハム3枚を縦積みにし、上側と下側のハムを表面、真ん中のハムを内部として加熱前後にそれぞれ測定された質量を比較することによって計測された。食品表面および内部の温度変化は、上記と同様に3枚縦積みされたハムのうち上側のハムの中心部を表面、真ん中のハムの中心部を内部としてそれぞれ熱電対を挿入することによって計測された。
【0053】
(比較例1)
図6に示す食品の加熱器を用いることなく、230℃の熱風加熱によりハムを加熱し、所定時間加熱したハムの表面および内部の質量変化を測定するとともに、ハムの表面および内部の温度を測定した。なお、最長加熱時間はハムの内部温度が85℃となった時点とした。この加熱の間のハムの表面および内部における温度変化および質量変化と経過時間との関係を図8に示す。
【0054】
図8に示すように、比較例1においては、ハムの内部温度が85℃となるまでの経過時間が約28分もかかった。これは、比較例1においては、熱風の対流熱のみによる加熱であるため、効率的にハムを加熱することができなかったためであると考えられる。
【0055】
また、図8に示すように、比較例1においては、加熱の間においてハムの表面および内部の質量はともに加熱前と比べて減少した。これは、水分をほとんど含まない熱風によって、ハムが加熱されたためと考えられる。
【0056】
(実施例2)
図6に示す加熱室20の内部に250℃の過熱水蒸気を供給して、ハムの代わりに冷凍食パンを加熱したこと以外は、実施例1と同様にして過熱水蒸気による加熱を行なった。そして、所定時間加熱した冷凍食パンの表面および内部の質量変化を測定するとともに、冷凍食パンの表面および内部の温度を測定した。この加熱の間の食パンの表面および内部における温度変化および質量変化と経過時間との関係を図9に示す。
【0057】
図9に示すように、実施例2においては、加熱開始から6分間は食パン内部の質量が増加していることが確認された。なお、実施例2の状況から、この増加分は水分の増加分であると考えられる。また、図9に示す食パン内部の温度変化を見ると、加熱開始から3〜6分間に急激に温度が上昇していることから、この間に食パン内部の成分の加熱変性が起こっていると考えられるため、実施例2においては、食パン内部の成分の加熱変性時に食パン内部の水分量が減少していないものと考えられる。
【0058】
(比較例2)
図6に示す食品の加熱器を用いることなく、250℃の熱風加熱により冷凍食パンを加熱し、所定時間加熱した冷凍食パンの表面および内部の質量変化を測定するとともに、冷凍食パンの表面および内部の温度を測定した。この加熱の間の冷凍食パンの表面および内部における温度変化および質量変化と経過時間との関係を図9に示す。
【0059】
図9に示すように、比較例2においては、加熱開始直後から食パン内部の水分量が減少し続けた。したがって、上述した図9に示す実施例2の食パン内部の水分量の増加分は、冷凍食パンが加熱されたときに生じる水分ではなく、過熱水蒸気の凝縮水であると考えられる。
【0060】
(実施例3)
図6に示す食品の加熱器を用いて、実施例1と同様の条件で、魚の焼き調理を行なった。焼き調理後の魚の写真を図10に示す。なお、図10において、左側の皿に載せられている魚が実施例3によって焼き調理された魚である。図10に示すように、実施例3による焼き調理後の魚は表面全体に焼き色がついて局部的な焦げ目がなく、内部がふっくらと仕上がっていた。
【0061】
(比較例3)
図6に示す食品の加熱器を用いることなく、従来のグリル調理器を用いて、魚の焼き調理を行なった。焼き調理後の魚の写真を図10に示す。なお、図10において、右側の皿に載せられている魚が比較例3によって焼き調理された魚である。図10に示すように、焼き調理後の魚は、左側の皿の実施例3の魚と比べて表面に焦げ目が目立ち、内部もふっくらと仕上がらなかった。
【0062】
(実施例4)
図6に示す食品の加熱器を用いて、実施例1と同様の条件で、イカの焼き調理を行なった。焼き調理後のイカの写真を図11(A)に示す。図11(A)に示すように、焼き調理後のイカは収縮することなく、ふっくらと仕上がった。
【0063】
(比較例4)
図6に示す食品の加熱器を用いることなく、従来のグリル調理器を用いて、イカの焼き調理を行なった。焼き調理後のイカの写真を図11(B)に示す。図11(B)に示すように、焼き調理後のイカは、図11(A)に示す実施例4のイカと比べて収縮してしまい、ふっくらと仕上がらなかった。
【0064】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明においては、食品内部の組織が破壊されにくく高品位の調理を容易にすることができる食品の調理方法および食品の調理器を提供することができることから、本発明は蓄肉、魚肉、魚介類、イモ類または野菜などの食品のグリル(焼き物)調理、オーブン調理、温め調理、茹で調理または蒸し調理などに好適に利用される。また、本発明はゆで卵調理または目玉焼き調理などにも好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の食品の加熱方法の好ましい一例を説明するための拡大概念図である。
【図2】従来の熱風加熱による食品の加熱方法の一例を説明するための拡大概念図である。
【図3】本発明の過熱水蒸気による食品の加熱方法と、従来の熱風加熱による食品の加熱方法の加熱時間に対する食品内部温度の変化の比較図である。
【図4】本発明の過熱水蒸気による食品の加熱方法と、従来の熱風加熱による食品の加熱方法とスチーム加熱による食品の加熱方法の加熱時間に対する水分変化量の比較図である。
【図5】(A)は加熱前の食品に含まれるタンパク質のSEM写真であり、(B)は本発明の加熱方法による加熱後の食品に含まれるタンパク質のSEM写真であり、(C)は従来の熱風加熱による加熱後の食品に含まれるタンパク質のSEM写真である。
【図6】本発明に用いられる食品の加熱器の好ましい一例の模式的な構成図である。
【図7】本発明に用いられる蒸気供給装置の好ましい一例の模式的な拡大断面図である。
【図8】実施例1および比較例1において、ハムの表面および内部における温度変化および質量変化と経過時間との関係を示した図である。
【図9】実施例2および比較例2において、冷凍食パンを加熱した時の食パンの表面および内部における温度変化および質量変化と経過時間との関係を示した図である。
【図10】実施例3および比較例3において、焼き調理された後の魚の写真である。
【図11】(A)は実施例4における焼き調理後のイカの写真であり、(B)は比較例4における焼き調理後のイカの写真である。
【符号の説明】
【0067】
20 加熱室、21 受皿、22 ラック、23 気流制御板、24 気体吸込口、25 送風装置、26 遠心ファン、30 外部循環路、33 パイプ、34 蒸気吸引エジェクタ、35 ノズル、37 後段エジェクタ、38 バイパス路、40 サブキャビティ、41 蒸気加熱ヒータ、43 噴気口、50 蒸気供給装置、51 ポット、52 排水パイプ、53 排水路、54 排水バルブ、55 水位センサ、56 蒸気発生ヒータ、60 伝熱ユニット、61 リング、62 フィン、63 給水パイプ、71 水タンク、73 ポンプ、74 ポンプケーシング、75 インペラ、76 モータ、90 食品、100 過熱水蒸気、101 凝縮水。
【技術分野】
【0001】
本発明は食品の調理方法および食品の調理器に関し、特に食品内部の組織が破壊されにくく高品位の調理を容易にすることができる食品の調理方法および食品の調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品中の水分量は、食品全体の質量に対して、例えば牛肉類で約73%、魚肉類で約70%、イカで約80%、イモ類で約79%など、ほとんどの食品で50〜80%の範囲にあり、食品内部の組織の形成には、この水分量が大きな役割をなしている。
【0003】
従来の業務や家庭の調理における食品の加熱方法としては、たとえば、熱源として電気やガスを用いた熱風オーブン方式における熱風加熱、輻射型グリル方式における輻射加熱またはマイクロ波を用いた電子レンジにおける電磁波加熱などが利用されている。しかしながら、これらの加熱方法においては、食品の加熱が進行するとともに食品内部から水分が蒸発していき、食品内部の組織が破壊されてしまうという問題があった。
【0004】
また、調理における食品の加熱方法としては、過熱水蒸気ではない水蒸気を用いて食品を加熱するスチーム加熱を利用する方法がある。しかしながら、この加熱方法においては、食品の表面および内部がともに水分によってべたつき、高品位な調理をすることができないという問題があった。
【0005】
そこで、近年、食品の加熱前に食品を樹脂フィルムなどの包装袋の中に入れ、この包装袋の内部を真空引きした後に包装袋の開口部を密封し、包装袋ごと熱湯中で加熱することによって、食品内部の水分を蒸発させずに調理する真空調理法が実用化されている。
【0006】
しかしながら、この真空調理法においては、食品の加熱前に食品を包装袋中に入れ、包装袋の内部を真空状態にする必要があり、非常に手間がかかってしまうという問題があった。
【0007】
また、特許文献1には、常圧下で空気が混じらないようにして過熱蒸気を食品に当てて加熱処理をする食品の加工方法が開示されている(たとえば、特許文献1の請求項1〜5参照。)。しかしながら、この方法においても、食品の加熱が進行するとともに食品内部から水分が蒸発していき、食品内部の組織が破壊されてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2001−46005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、食品内部の組織が破壊されにくく高品位の調理を容易にすることができる食品の調理方法および食品の調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、過熱水蒸気を用いてタンパク質を含む食品を加熱調理する食品の調理方法であって、箱体内に収容した表面温度が100℃以下の食品に対して体積1リットル当たり水分量換算で0.1cm3/分以上の過熱水蒸気を供給し、過熱水蒸気を食品の表面で凝縮させて食品の内部の質量が増加する凝縮工程と、食品の表面から水分量が減少する復元工程と、食品の表面の水分量が凝縮工程の前よりも減少する乾燥工程と、を含み、復元工程よりも前の段階で食品の成分が加熱変性する食品の調理方法である。
【0010】
また、本発明の食品の調理方法においては、過熱水蒸気の供給を停止した後にヒータで食品を加熱することが好ましい。
【0011】
また、本発明の食品の調理方法においては、過熱水蒸気の温度が100℃以上であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の食品の調理方法においては、過熱水蒸気が箱体内の雰囲気の50体積%以上を占めることが好ましい。
【0013】
また、本発明の食品の調理方法においては、過熱水蒸気が箱体の端部に比べて、箱体の中央部に多く供給されることが好ましい。
【0014】
また、本発明の食品の調理方法においては、食品の表面に接触する過熱水蒸気の流速が2m/秒以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、上記のいずれかの食品の調理方法を実施するための食品の調理器であって、食品を収容する箱体と、箱体に連結された蒸気供給装置と、を含む食品の調理器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、食品内部の組織が破壊されにくく高品位の調理を容易にすることができる食品の調理方法および食品の調理器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0018】
図1に、本発明の食品の加熱方法の好ましい一例を説明するための拡大概念図を示す。図1に示すように、本発明においては、食品90を過熱水蒸気100を含む雰囲気下に曝すことにより食品90の表面に過熱水蒸気100が接触し、過熱水蒸気100が凝縮水101に変化する際に生じる凝縮熱が食品90に伝達されて加熱されるとともに、過熱水蒸気100が雰囲気中を対流することによって生じる対流熱および高温である過熱水蒸気100から輻射される輻射熱が食品90に伝達されて加熱される。なお、過熱水蒸気とは、飽和水蒸気にさらに熱を加えて100℃以上とした高温の水蒸気のことをいう。
【0019】
一方、従来の熱風加熱においては、図2の拡大概念図に示すように、熱風である加熱空気102が雰囲気中を対流することによって生じる対流熱のみしか食品90に伝達されない。
【0020】
したがって、図3の比較図に示すように、本発明の食品の加熱方法は、従来の熱風加熱と比べて加熱時間に対する食品の内部温度の立ち上がりが早く、従来の熱風加熱よりも食品の加熱を促進することができる。
【0021】
図4に、本発明の過熱水蒸気による食品の加熱方法と、従来の熱風加熱による食品の加熱方法とスチーム加熱による食品の加熱方法の加熱時間に対する水分変化量を比較した図を示す。本発明の過熱水蒸気による食品の加熱方法においては、上記において説明した熱(凝縮熱、対流熱、輻射熱)の伝達により食品が加熱されるとともに、過熱水蒸気の凝縮水が食品中に染み込み、食品の表面および内部の水分量が増加する。そして、一定の加熱時間が経過すると、今度は食品の表面から水分が蒸発して水分量が減少する復元過程に入る。そして、さらに加熱時間が経過すると、食品の表面の水分量が食品の加熱前よりも減少する乾燥過程に入る。このような過程を経た本発明の食品の加熱方法においては、食品の表面がパリッとし、食品の内部がジューシーである高品位な調理が可能となる。
【0022】
一方、熱風加熱においては、食品の加熱開始時から食品の表面および内部の水分量が減少して食品の表面および内部がともに乾燥しすぎる。また、スチーム加熱においては、食品の加熱開始時から食品の表面および内部の水分量が増加して食品の表面および内部がともにべたつく。
【0023】
ここで、本発明の食品の加熱方法においては、食品の成分の加熱変性時における食品内部の水分量を減少させないことを特徴とする。食品の水以外の成分としては、タンパク質、炭水化物または油脂などであるが、これらは加熱されるとともに熱による変性、酸素による酸化反応などの複雑な変化が起こる。この変化が起こるときに、食品成分の大半を占め、食品内部の組織形成に大きな役割を果たしている水分が減少することは、食品内部の組織を著しく破壊することになるとともに食品内部が乾燥して高品位の調理ができないという問題がある。そこで、食品の成分の加熱変性時における食品内部の水分量を減少させないことによって、このような問題が解消されることとなる。
【0024】
なお、本明細書において、「食品の成分の加熱変性時」には、食品のタンパク質の変性時だけでなく、油脂などが酸化される時などのように食品の成分がある状態から他の状態へ変化する場合も含まれる。特に、食品に含まれるタンパク質の変性時に食品内部の水分量が減少しない場合には、食品内部の組織が破壊されにくくなることから、上記食品の成分の加熱変性時は食品のタンパク質の変性時であることが好ましい。
【0025】
図5(A)に加熱前の食品に含まれるタンパク質の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。この食品について本発明による加熱方法と従来の熱風加熱による加熱方法を用いて加熱を行なう。すると、本発明による加熱方法においては、タンパク質の変性時に食品内部の水分量が減少しないことから、図5(B)のSEM写真に示すように、食品内部の組織構造は保持される。一方、従来の熱風加熱による加熱方法においては、タンパク質の変性時に食品内部の水分量が減少してしまうことから、図5(C)のSEM写真に示すように、筋原繊維が分解した後に凝集して食品内部の組織構造が破壊される。
【0026】
図6に、本発明に用いられる食品の加熱器の好ましい一例の模式的な構成図を示す。この加熱器は、食品を収容する容器としての加熱室20と、加熱室20に連結された蒸気供給装置50とを含む。
【0027】
加熱室20は直方体形状であって、その一面が全面的に開口している。そして、その開口している面は扉(図示せず)と接している。加熱室20の内面および扉の内面は、加熱室20の内部が高圧となった場合にも耐えることができるように、ステンレス鋼板で形成されていることが好ましい。また、加熱室20の周囲および扉の内側にはそれぞれ断熱材が設置されていることが好ましい。この場合には加熱室20の内部温度は、加熱室20の外部の影響を受けにくくなるためである。また、加熱室20の床面には、ステンレス鋼板製の受皿21が設置され、受皿21の上には食品を載置するためのステンレス鋼板製のラック22が設置される。
【0028】
また、加熱室20の上部からは加熱室20の床面近くまで垂下するステンレス製の気流制御板23が設置されている。なお、気流制御板23における加熱室20の床面側の端部と加熱室20の側壁との間の隙間が気体吸込口24となって、外部循環路30に過熱水蒸気を含む気体を導く。
【0029】
図7に、本発明に用いられる蒸気供給装置50の好ましい一例の模式的な拡大断面図を示す。蒸気供給装置50は、円筒形のポット51と、ポット51の外面に密着するように設置された蒸気発生ヒータ56と、ポット51の内部に水を供給する給水パイプ63と、排水パイプ52と、伝熱ユニット60とを含む。そして、ポット51の上部には蒸気吸引エジェクタ34が形成されており、蒸気吸引エジェクタ34はパイプ33とノズル35とを備えている。
【0030】
ポット51の底部は漏斗状に成形され、そこから排水パイプ52が垂下している。排水パイプ52の下端部は水平に対しやや勾配をなす形で配置された図6に示す排水路53に接続されている。図6に示すように、排水パイプ53の端部は加熱室20の側壁を通じ、受皿21に向かって開口している。また、排水パイプ52と排水パイプ53との間には排水バルブ54および水位センサ55が設置されている。また、蒸気発生ヒータ56とほぼ同じ高さになるように、伝熱ユニット60がポット51の内部に設置されている。
【0031】
伝熱ユニット60は、ポット51の側壁内面に密着するリング61と、このリング61の内部に放射状に設置されている複数のフィン62とを備えている。リング61とフィン62とは押出成形、溶接またはろう付けなどの手法により一体化されている。リング61およびフィン62は、ポット51の軸線方向に所定の長さを有している。
【0032】
ポット51、伝熱ユニット60および給水パイプ63は、熱の良導体である金属で形成されることが好ましい。金属としては熱伝導率のよい銅やアルミニウムなどが適する。ただし、銅や銅合金の場合、緑青が発生するので、熱伝導率は少し劣るものの、緑青を懸念せずにすむステンレス鋼を用いることとしてもよい。
【0033】
このような蒸気供給装置50においては、まず、図6に示す水タンク71からポンプ73によって水タンク71内の水が給水パイプ63に圧送される。なお、ポンプ73は、ポンプケーシング74と、ポンプケーシング74に収容されたインペラ75と、インペラ75に動力を伝えるモータ76とにより構成されている。モータ76は、水タンク71が所定位置にセットされるとインペラ75に電磁的に結合される。
【0034】
給水パイプ63に圧送されてきた水は、図7に示すように、給水パイプ63の先端部から噴水のように溢れ出し、ポット51の内部に供給される。水位が伝熱ユニット60の長さ半ばまで達したことを水位センサ55が検知したら、一旦、水の供給が中止される。
【0035】
このように所定量の水がポット51の内部に供給された後、蒸気発生ヒータ56への通電が開始される。蒸気発生ヒータ56はポット51の壁面を介してポット51の中の水を加熱する。ポット51の壁面が加熱されると、その熱は伝熱ユニット60に伝わり、伝熱ユニット60から水へと伝えられる。蒸気発生ヒータ56の設置箇所と伝熱ユニット60の設置箇所とはほぼ高さにあるので、蒸気発生ヒータ56から伝熱ユニット60へとストレートに熱が伝わり、伝熱効率が向上する。
【0036】
蒸気発生ヒータ56への通電と同時に、図6に示す送風装置25および蒸気加熱ヒータ41への通電も開始される。送風装置25は、気体吸込口24から加熱室20の内部の気体を吸い込み、外部循環路30に気体を送り出す。遠心ファン26によって、気体が送り出されるので、プロペラファンに比べて気体の流速が速い。また、遠心ファン26を直流モータで高速回転させた場合には、気体の流速は極めて速くなる。
【0037】
そして、ポット51の中の水が沸騰して水蒸気が発生する。水蒸気は蒸気吸引エジェクタ34によって速やかに吸上げられ、ノズル35から後段エジェクタ37に噴出される。
【0038】
後段エジェクタ37においては、蒸気吸引エジェクタ34のノズル35から噴出された水蒸気にバイパス路38から流れてきた気体が合流する。後段エジェクタ37を経た水蒸気を含む気体は高速でサブキャビティ40に突入する。
【0039】
サブキャビティ40に入った水蒸気は、蒸気加熱ヒータ41により加熱されて過熱水蒸気となる。過熱水蒸気は温度上昇により膨張し、噴気口43から勢いよく噴出して、加熱室20の内部の雰囲気に供給される。
【0040】
ここで、加熱室20の内部の過熱水蒸気の温度は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。過熱水蒸気の温度が100℃以上である場合には水が完全に気体となるため、加熱室20の内部の雰囲気の水蒸気量を大幅に増加することができ、食品の表面に付着する凝縮水量を増加させることができる。また、過熱水蒸気の温度が150℃以上である場合には、焼き調理などの調理において、特に高品位な調理が可能となる傾向にある。
【0041】
また、加熱室20の内部の雰囲気への過熱水蒸気の供給量は、食品内部の水分量を減少させない観点から、加熱室20の内部の雰囲気の体積(容積)1リットル当たり水分量換算で0.1cm3/分以上であることが好ましく、0.3cm3/分以上であることがより好ましい。ここで、過熱水蒸気の供給量は、1分間当たりに水タンク71から減少する水の量を測定し、これを加熱室20の容積1リットル当たりに換算することによって算出される。
【0042】
また、過熱水蒸気は、加熱室20の内部の雰囲気の端部に比べて、中央部に多く供給されることが好ましい。この場合には、食品の表面に付着する凝縮水の量が増加して、食品の加熱を効率的に行なうことができる傾向にある。
【0043】
加熱室20の内部に過熱水蒸気を含む気体が供給されると、加熱室20の内部の温度が急速に上昇する。加熱室20の内部の温度が調理可能領域に達したことを温度センサ(図示せず)が検知すると、表示や音などにより調理可能になったことを使用者に知らせる。そして、使用者は扉を開けて、加熱室20の内部に食品90を設置する。
【0044】
すると、噴気口43から吹き下ろす過熱水蒸気が食品90の表面に接触して、上記のように食品90に過熱水蒸気の凝縮熱、対流熱および輻射熱が伝達されて食品90の加熱が行なわれる。
【0045】
ここで、過熱水蒸気は、加熱室20の内部の雰囲気の50体積%以上を占めることが好ましく、90体積%以上を占めることがより好ましい。過熱水蒸気が加熱室20の内部の雰囲気の50体積%以上を占める場合には、食品90に付着する凝縮水の量が増加して食品90の昇温速度が速くなるため、食品90の加熱終了時までの水分の移動時間が短くなることから、食品90の内部の組織がより破壊されにくくなる傾向にある。また、雰囲気中の酸素濃度も減少することから、酸化しやすい食品の成分の変性を抑止できる傾向にある。特に、過熱水蒸気が加熱室20の内部の雰囲気の90体積%以上を占める場合には、これらの傾向がさらに大きくなる。なお、加熱室20の内部の雰囲気を占める過熱水蒸気の割合は、たとえば加熱室20の内部に酸素濃度計を設置して測定された酸素濃度から算出する方法を用いることができる。すなわち、加熱室20の内部の雰囲気が空気と過熱水蒸気とからなる場合には、空気中の酸素濃度は約20%であるため加熱室20の内部の雰囲気の空気の割合は酸素濃度計により測定された酸素濃度の約4倍となり、空気以外の成分が過熱水蒸気となる。したがって、加熱室20の内部の雰囲気の過熱水蒸気の割合は下記式により表わされる。
過熱水蒸気の割合(%)=100(%)−4×(酸素濃度計により測定された酸素濃度(%))
また、食品90の表面に接触する過熱水蒸気の流速は2m/秒以上であることが好ましく、5m/秒以上であることがより好ましい。この過熱水蒸気の流速が2m/秒未満である場合には、食品90への凝縮水の付着量が減少して伝熱効率が悪くなる傾向にある。また、過熱水蒸気の流速が5m/秒以上である場合には、食品90への凝縮水の付着量が増加して特に伝熱効率が良好となり、また、食品90の表面の油を効率良く除去することができる傾向にある。なお、食品90の表面に接触する過熱水蒸気の流速は、たとえばプロペラ型風速計などを食品90の近傍に設置することによって測定される。
【0046】
過熱水蒸気は食品90に衝突した後、加熱室20の上方へと向きを転じる。過熱水蒸気は空気より軽いため、自然な形でこのように方向転換することとなり、これが加熱室20の内部に対流をもたらす。この対流により、加熱室20の内部の温度を維持しつつ、食品90にはサブキャビティ40で加熱されたばかりの過熱水蒸気を衝突させることができ、熱を大量かつ速やかに食品90に与えることができる。
【0047】
なお、蒸気発生装置50で飽和水蒸気を発生し続けていると、ポット51の中の水位が低下する。水位が所定レベルまで下がったことを水位センサ55が検出すると、制御装置はポンプ73の運転を再開させる。ポンプ73は水タンク71の中の水を押し上げ、蒸発した分の水を補給する。そして、ポット51の内部の水が所定レベルまで達したことを水位センサ55が検知した時点で、制御装置はポンプ73の運転を停止させる。このようにしてポンプ73は、調理期間中、間欠的に給水動作を行なうことができる。
【0048】
また、上記においては、加熱室20の内部または外部にヒータ(図示せず)を設置することができ、加熱室20への過熱水蒸気の供給を停止した後、食品90をヒータにより加熱することもできる。この場合には、食品90の表面に焦げ目などの焼き目を付けることができるので、加工食品の商品価値が高まって有利となる傾向にある。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
図6に示す食品の加熱器を用い、加熱室20の内部に230℃の過熱水蒸気を加熱室20の内部の雰囲気の体積1リットル当たり水分量換算で11.5cm3/分の割合で供給し、加熱室20の内部の雰囲気の90体積%を過熱水蒸気が占めるようにした。ここで、ラック22上に食品90としてハムを加熱室20の中央部に設置したところ、過熱水蒸気は加熱室20の側壁近傍に比べて加熱室20の中央部に多く供給され、ハムの表面に接触する過熱水蒸気の流速は3m/秒であった。そして、ハムを加熱し、所定時間加熱したハムの表面および内部の質量変化を測定するとともに、ハムの表面および内部の温度を測定した。なお、最長加熱時間はハムの内部温度が85℃となった時点とした。この加熱の間のハムの表面および内部における温度変化および質量変化と経過時間との関係を図8に示す。
【0050】
図8に示すように、実施例1においては、ハムの内部温度が85℃となるまでの経過時間が約22分と短かった。これは、実施例1においては、過熱水蒸気による凝縮熱、対流熱および輻射熱によってハムの加熱が効率的に行なわれたためであると考えられる。
【0051】
また、図8に示すように、実施例1においては、加熱の間においてハムの表面の質量は減少したが、ハムの内部の質量は加熱前と比べて減少することがなかった。これは、過熱水蒸気によって、ハムの内部の水分量が減少しなかったためと考えられる。
【0052】
なお、実施例1において、食品表面および内部の質量変化は、同形状のハム3枚を縦積みにし、上側と下側のハムを表面、真ん中のハムを内部として加熱前後にそれぞれ測定された質量を比較することによって計測された。食品表面および内部の温度変化は、上記と同様に3枚縦積みされたハムのうち上側のハムの中心部を表面、真ん中のハムの中心部を内部としてそれぞれ熱電対を挿入することによって計測された。
【0053】
(比較例1)
図6に示す食品の加熱器を用いることなく、230℃の熱風加熱によりハムを加熱し、所定時間加熱したハムの表面および内部の質量変化を測定するとともに、ハムの表面および内部の温度を測定した。なお、最長加熱時間はハムの内部温度が85℃となった時点とした。この加熱の間のハムの表面および内部における温度変化および質量変化と経過時間との関係を図8に示す。
【0054】
図8に示すように、比較例1においては、ハムの内部温度が85℃となるまでの経過時間が約28分もかかった。これは、比較例1においては、熱風の対流熱のみによる加熱であるため、効率的にハムを加熱することができなかったためであると考えられる。
【0055】
また、図8に示すように、比較例1においては、加熱の間においてハムの表面および内部の質量はともに加熱前と比べて減少した。これは、水分をほとんど含まない熱風によって、ハムが加熱されたためと考えられる。
【0056】
(実施例2)
図6に示す加熱室20の内部に250℃の過熱水蒸気を供給して、ハムの代わりに冷凍食パンを加熱したこと以外は、実施例1と同様にして過熱水蒸気による加熱を行なった。そして、所定時間加熱した冷凍食パンの表面および内部の質量変化を測定するとともに、冷凍食パンの表面および内部の温度を測定した。この加熱の間の食パンの表面および内部における温度変化および質量変化と経過時間との関係を図9に示す。
【0057】
図9に示すように、実施例2においては、加熱開始から6分間は食パン内部の質量が増加していることが確認された。なお、実施例2の状況から、この増加分は水分の増加分であると考えられる。また、図9に示す食パン内部の温度変化を見ると、加熱開始から3〜6分間に急激に温度が上昇していることから、この間に食パン内部の成分の加熱変性が起こっていると考えられるため、実施例2においては、食パン内部の成分の加熱変性時に食パン内部の水分量が減少していないものと考えられる。
【0058】
(比較例2)
図6に示す食品の加熱器を用いることなく、250℃の熱風加熱により冷凍食パンを加熱し、所定時間加熱した冷凍食パンの表面および内部の質量変化を測定するとともに、冷凍食パンの表面および内部の温度を測定した。この加熱の間の冷凍食パンの表面および内部における温度変化および質量変化と経過時間との関係を図9に示す。
【0059】
図9に示すように、比較例2においては、加熱開始直後から食パン内部の水分量が減少し続けた。したがって、上述した図9に示す実施例2の食パン内部の水分量の増加分は、冷凍食パンが加熱されたときに生じる水分ではなく、過熱水蒸気の凝縮水であると考えられる。
【0060】
(実施例3)
図6に示す食品の加熱器を用いて、実施例1と同様の条件で、魚の焼き調理を行なった。焼き調理後の魚の写真を図10に示す。なお、図10において、左側の皿に載せられている魚が実施例3によって焼き調理された魚である。図10に示すように、実施例3による焼き調理後の魚は表面全体に焼き色がついて局部的な焦げ目がなく、内部がふっくらと仕上がっていた。
【0061】
(比較例3)
図6に示す食品の加熱器を用いることなく、従来のグリル調理器を用いて、魚の焼き調理を行なった。焼き調理後の魚の写真を図10に示す。なお、図10において、右側の皿に載せられている魚が比較例3によって焼き調理された魚である。図10に示すように、焼き調理後の魚は、左側の皿の実施例3の魚と比べて表面に焦げ目が目立ち、内部もふっくらと仕上がらなかった。
【0062】
(実施例4)
図6に示す食品の加熱器を用いて、実施例1と同様の条件で、イカの焼き調理を行なった。焼き調理後のイカの写真を図11(A)に示す。図11(A)に示すように、焼き調理後のイカは収縮することなく、ふっくらと仕上がった。
【0063】
(比較例4)
図6に示す食品の加熱器を用いることなく、従来のグリル調理器を用いて、イカの焼き調理を行なった。焼き調理後のイカの写真を図11(B)に示す。図11(B)に示すように、焼き調理後のイカは、図11(A)に示す実施例4のイカと比べて収縮してしまい、ふっくらと仕上がらなかった。
【0064】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明においては、食品内部の組織が破壊されにくく高品位の調理を容易にすることができる食品の調理方法および食品の調理器を提供することができることから、本発明は蓄肉、魚肉、魚介類、イモ類または野菜などの食品のグリル(焼き物)調理、オーブン調理、温め調理、茹で調理または蒸し調理などに好適に利用される。また、本発明はゆで卵調理または目玉焼き調理などにも好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の食品の加熱方法の好ましい一例を説明するための拡大概念図である。
【図2】従来の熱風加熱による食品の加熱方法の一例を説明するための拡大概念図である。
【図3】本発明の過熱水蒸気による食品の加熱方法と、従来の熱風加熱による食品の加熱方法の加熱時間に対する食品内部温度の変化の比較図である。
【図4】本発明の過熱水蒸気による食品の加熱方法と、従来の熱風加熱による食品の加熱方法とスチーム加熱による食品の加熱方法の加熱時間に対する水分変化量の比較図である。
【図5】(A)は加熱前の食品に含まれるタンパク質のSEM写真であり、(B)は本発明の加熱方法による加熱後の食品に含まれるタンパク質のSEM写真であり、(C)は従来の熱風加熱による加熱後の食品に含まれるタンパク質のSEM写真である。
【図6】本発明に用いられる食品の加熱器の好ましい一例の模式的な構成図である。
【図7】本発明に用いられる蒸気供給装置の好ましい一例の模式的な拡大断面図である。
【図8】実施例1および比較例1において、ハムの表面および内部における温度変化および質量変化と経過時間との関係を示した図である。
【図9】実施例2および比較例2において、冷凍食パンを加熱した時の食パンの表面および内部における温度変化および質量変化と経過時間との関係を示した図である。
【図10】実施例3および比較例3において、焼き調理された後の魚の写真である。
【図11】(A)は実施例4における焼き調理後のイカの写真であり、(B)は比較例4における焼き調理後のイカの写真である。
【符号の説明】
【0067】
20 加熱室、21 受皿、22 ラック、23 気流制御板、24 気体吸込口、25 送風装置、26 遠心ファン、30 外部循環路、33 パイプ、34 蒸気吸引エジェクタ、35 ノズル、37 後段エジェクタ、38 バイパス路、40 サブキャビティ、41 蒸気加熱ヒータ、43 噴気口、50 蒸気供給装置、51 ポット、52 排水パイプ、53 排水路、54 排水バルブ、55 水位センサ、56 蒸気発生ヒータ、60 伝熱ユニット、61 リング、62 フィン、63 給水パイプ、71 水タンク、73 ポンプ、74 ポンプケーシング、75 インペラ、76 モータ、90 食品、100 過熱水蒸気、101 凝縮水。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱水蒸気を用いてタンパク質を含む食品を加熱調理する食品の調理方法であって、
箱体内に収容した表面温度が100℃以下の前記食品に対して体積1リットル当たり水分量換算で0.1cm3/分以上の前記過熱水蒸気を供給し、
前記過熱水蒸気を前記食品の表面で凝縮させて前記食品の内部の質量が増加する凝縮工程と、
前記食品の表面から水分量が減少する復元工程と、
前記食品の表面の水分量が前記凝縮工程の前よりも減少する乾燥工程と、を含み、
前記復元工程よりも前の段階で前記食品の成分が加熱変性することを特徴とする、食品の調理方法。
【請求項2】
前記過熱水蒸気の供給を停止した後にヒータで前記食品を加熱することを特徴とする、請求項1に記載の食品の調理方法。
【請求項3】
前記過熱水蒸気の温度が100℃以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の食品の調理方法。
【請求項4】
前記過熱水蒸気が前記箱体内の雰囲気の50体積%以上を占めることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の食品の調理方法。
【請求項5】
前記過熱水蒸気が前記箱体の端部に比べて、前記箱体の中央部に多く供給されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の食品の調理方法。
【請求項6】
前記食品の表面に接触する前記過熱水蒸気の流速が2m/秒以上であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の食品の調理方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の食品の調理方法を実施するための食品の調理器であって、食品を収容する箱体と、前記箱体に連結された蒸気供給装置と、を含むことを特徴とする、食品の調理器。
【請求項1】
過熱水蒸気を用いてタンパク質を含む食品を加熱調理する食品の調理方法であって、
箱体内に収容した表面温度が100℃以下の前記食品に対して体積1リットル当たり水分量換算で0.1cm3/分以上の前記過熱水蒸気を供給し、
前記過熱水蒸気を前記食品の表面で凝縮させて前記食品の内部の質量が増加する凝縮工程と、
前記食品の表面から水分量が減少する復元工程と、
前記食品の表面の水分量が前記凝縮工程の前よりも減少する乾燥工程と、を含み、
前記復元工程よりも前の段階で前記食品の成分が加熱変性することを特徴とする、食品の調理方法。
【請求項2】
前記過熱水蒸気の供給を停止した後にヒータで前記食品を加熱することを特徴とする、請求項1に記載の食品の調理方法。
【請求項3】
前記過熱水蒸気の温度が100℃以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の食品の調理方法。
【請求項4】
前記過熱水蒸気が前記箱体内の雰囲気の50体積%以上を占めることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の食品の調理方法。
【請求項5】
前記過熱水蒸気が前記箱体の端部に比べて、前記箱体の中央部に多く供給されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の食品の調理方法。
【請求項6】
前記食品の表面に接触する前記過熱水蒸気の流速が2m/秒以上であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の食品の調理方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の食品の調理方法を実施するための食品の調理器であって、食品を収容する箱体と、前記箱体に連結された蒸気供給装置と、を含むことを特徴とする、食品の調理器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−48740(P2008−48740A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270424(P2007−270424)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【分割の表示】特願2006−117347(P2006−117347)の分割
【原出願日】平成16年3月1日(2004.3.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【分割の表示】特願2006−117347(P2006−117347)の分割
【原出願日】平成16年3月1日(2004.3.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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