説明

食品の連続加熱装置における反転装置

【課題】フライヤ等に適用する食品の連続加熱装置における反転装置の全体構成を簡単化する。
【解決手段】材料の搬送方向Kに平行に配列する規制部材11と、規制部材11の間を通過するようにして移動させる櫛歯形のプッシャ21とを設け、各規制部材11には、上り斜面11a、下り斜面11b、係止突部11cを形成することで、駆動部やセンサを必要とせずに構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、揚げ物を連続生産するフライヤなどに好適に適用可能な食品の連続加熱装置における反転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
揚げ物を連続生産するフライヤには、材料の反転装置を組み込むことがある(たとえば特許文献1)。
【0003】
従来の反転装置は、揚げ加工中の材料を受ける受け板と、受け板を反転させる駆動部とを組み合わせ、材料が上流側から受け板上に搬送されると、受け板を反転させて材料を反転させ、下流側に放出させることができる。
【特許文献1】特開2005−168604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によるときは、反転装置は、受け板と、受け板を反転させる駆動部と、受け板を反転させるタイミングを検出するセンサとを組み合わせ、最適のタイミングで受け板を反転させる必要があり、全体構成が複雑高価になりがちであるという問題があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、複数の固定の規制部材と、櫛歯形のプッシャとを組み合わせることによって、格別な駆動部やセンサを必要とせず、全体構成を著るしく簡単化することができる食品の連続加熱装置における反転装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、材料の搬送方向に平行に配列する複数の規制部材と、規制部材の間を通過するようにして移動させる櫛歯形のプッシャとを備えてなり、規制部材は、それぞれの上縁部分の形状を揃えることにより、材料の搬送方向の上流側から下流側にかけて、材料を所定の高さに押し上げる上り斜面と、上り斜面に連続する下り斜面と、下り斜面の末端の係止突部とを形成することをその要旨とする。
【0007】
なお、各規制部材は、共通の支持板上に配列することができ、同心円状に湾曲させることができる。
【発明の効果】
【0008】
かかる発明の構成によるときは、プッシャは、規制部材の間を通過する櫛歯形であるから、規制部材の上縁部分が形成する上り斜面、下り斜面に沿って加熱処理中の材料を移動させ、下り斜面の末端の係止突部に係止して下り斜面上に斜めに停止する材料を確実に反転させることができる。下り斜面上の材料は、搬送方向前端側が係止突部を介して移動不能に拘束され、しかも、上面が搬送方向前方側に傾く斜めの姿勢をとるからである。なお、プッシャは、規制部材の配設範囲だけを対象にして往復するように移動させてもよく、材料の連続加熱の全行程について材料を搬送するように移動させてもよい。前者のプッシャは、材料を加熱処理するために材料を搬送する搬送手段と別に設ける材料反転用の専用部材であり、後者のプッシャは、材料の搬送手段と兼用する兼用部材である。また、ここでいう食品の連続加熱装置とは、連続生産形の揚げ加工装置や焼き加工装置などをいうものとする。
【0009】
各規制部材は、共通の支持板上に配列することにより、加熱処理中の材料の反転の要否に応じて、支持板を介して連続加熱装置に容易に着脱することができる。また、各規制部材は、同心円状に湾曲させることにより、材料の搬送方向の曲線部分に簡単に設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0011】
食品の連続加熱装置における反転装置は、複数の規制部材11、11…と、櫛歯状のプッシャ21とを備えてなる(図1)。
【0012】
各規制部材11は、丸棒材を山形に屈曲させて形成されている。各規制部材11は、上縁部分の形状が揃えられており、材料の搬送方向K、すなわちプッシャ21の移動方向の上流側から下流側にかけて、上り斜面11a、下り斜面11b、係止突部11cが形成されている。各規制部材11は、支柱11dを介して上り斜面11a、下り斜面11bの間の頂部を支持することにより、共通の支持板12上に等間隔に平行に配列されている。ただし、各規制部材11は、上り斜面11aの始点が支持板12上に固定されており、下り斜面11bの末端の係止突部11cは、支持板12から所定高さに保持されている。
【0013】
プッシャ21は、水平の支持ロッド21aに櫛歯状のプッシャ板21bを付設して構成されている。プッシャ板21bには、規制部材11、11…に対応するスリット21c、21c…が形成されており、したがって、プッシャ21は、規制部材11、11…の間を通過するようにして、支持板12と平行に図1の矢印K方向に移動させることができる。
【0014】
かかる反転装置は、たとえば連続生産形のフライヤ30の油槽31の直線部分に装着して使用することができる(図2の領域A)。
【0015】
フライヤ30は、長円形の油槽31と、チェーン32を介して油槽31内を水平循環するプッシャ21、21…とを備えている。チェーン32は、両端のスプロケット32a、32aに巻き掛けられており、スプロケット32a、32aを介して図2の矢印K、K…方向に循環走行することができる。そこで、プッシャ21、21…によって区切られる油槽31の特定の領域に図示しない材料を投入すると(たとえば図2の矢印P1 方向)、材料は、プッシャ21、21…を介して油槽31内を搬送され、油槽31内の加熱油によって揚げ加工され、完成品の揚げ物として外部に排出される(たとえば図2の矢印P2 方向)。ただし、材料は、途中の領域Aにおいて、反転装置によって上下反転される。
【0016】
プッシャ21を介して図3(A)の矢印K方向に搬送される材料Wは、反転装置を設置する領域Aにおいて、まずプッシャ21によって規制部材11、11…の上り斜面11a、11a…に沿って斜め上向きに押し上げられる(図3(A)の矢印K1 方向)。ただし、図3において、符号Lは、油槽31内の加熱油の油面を示し、同図には、単一の規制部材11のみが代表的に図示されている。
【0017】
そこで、材料Wは、プッシャ21を介して規制部材11の頂部を越えるまで押し上げられると(図3(A)の二点鎖線)、規制部材11の下り斜面11b上に回転するようにして落下し(同図の矢印K2 方向)、前端部分が規制部材11の係止突部11cに係止して下り斜面11b上に斜めに傾斜して停止する(図3(B)の実線)。その後、プッシャ21が下り斜面11bにまで進行すると(同図の二点鎖線)、下り斜面11b上の材料Wは、プッシャ21によって強制的に引き起こされ(同図の矢印K3 方向、二点鎖線)、係止突部11cのまわりに回転するようにして反転させることができる(図3(C)の矢印K4 方向)。すなわち、材料Wは、反転装置の上流側において片面が揚げられ、反転装置により反転され、反転装置の下流側において他の片面が揚げられるから、両面を適切に揚げ加工して完成品として仕上げ、排出することができる。
【他の実施の形態】
【0018】
反転装置は、油槽31の曲線部分に装着することができる(図2の領域B、図4)。
【0019】
反転装置の規制部材11、11…は、共通の支持板12上において、同心円状に湾曲して等間隔に配列されている(図4、図5(A))。ただし、図5(A)、(B)は、それぞれ図4の要部平面図、代表的な規制部材11の展開側面図である。
【0020】
各規制部材11は、プッシャ21による材料の搬送方向(図4、図5(B)の各矢印K方向)の上流側から下流側にかけて、長い上り斜面11a、短い下り斜面11b、係止突部11cが形成されている。各規制部材11は、たとえば板材を図5(B)の形状に打ち抜き、上縁部分の形状を滑らかに仕上げた上、所定の曲率に曲げ加工し、全体にテフロン(登録商標)などの耐熱性樹脂によるコーティング処理を施すことが好ましい。また、各規制部材11は、図4の内周側から外周側にかけて上り斜面11aの長さaを順に長くするが、下り斜面11bから係止突部11cの先端までの長さbを揃えて形成し、上り斜面11a、下り斜面11bの間の頂部をスプロケット32aのまわりの同一方向(たとえば図5(A)の矢印P3 方向)に揃えるようにして支持板12上に配列されている。
【0021】
なお、図4において、プッシャ21は、規制部材11、11…の間を通過する複数のプッシャ板21b、21b…を共通の支持ロッド21aに垂設して形成されており、プッシャ板21b、21b…は、最内周の規制部材11の内側、最外周の規制部材11の外側にも配置されている。また、プッシャ21の支持ロッド21aは、ブラケット21dを介してチェーン32に着脱自在に取り付けられており、支持ロッド21aの先端には、油槽31の周縁に沿って転動するローラ21eが付設されている。
【0022】
かかる反転装置は、プッシャ21がチェーン32を介してスプロケット32aのまわりを転回するようにして進行するとき(図4の矢印K方向)、プッシャ21を介して規制部材11、11…の上り斜面11a、11a…上に材料を押し上げ、係止突部11c、11cを介して下り斜面11b、11b…上に材料を斜めに停止させ、下り斜面11b、11b…上の材料を係止突部11c、11c…のまわりに反転させることができる。
【0023】
以上の説明において、プッシャ21のプッシャ板21bは、加熱油中を円滑に移動させるために、油抜き用の孔を明けてもよく、金網材を使用してもよい。なお、この発明の反転装置は、フライヤ30のような揚げ加工装置に限らず、連続生産形の焼き加工装置にも適用可能である。ただし、焼き加工装置は、一般に、材料搬送用のコンベヤを備えているから、反転装置のプッシャ21は、コンベヤとは別体の専用部材とし、コンベヤ上の材料を規制部材11、11…の上り斜面11a、11a…上に押し上げ、下り斜面11b、11b…、係止突部11c、11c…を経て反転させるように、規制部材11、11…の配設範囲だけを対象にして往復循環させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】全体模式斜視図
【図2】使用状態平面図
【図3】動作説明図
【図4】他の実施の形態を示す全体斜視図
【図5】図4の要部構成説明図
【符号の説明】
【0025】
W…材料
K…搬送方向
11…規制部材
11a…上り斜面
11b…下り斜面
11c…係止突部
12…支持板
21…プッシャ

特許出願人 アサヒ装設株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の搬送方向に平行に配列する複数の規制部材と、該規制部材の間を通過するようにして移動させる櫛歯形のプッシャとを備えてなり、前記規制部材は、それぞれの上縁部分の形状を揃えることにより、材料の搬送方向の上流側から下流側にかけて、材料を所定の高さに押し上げる上り斜面と、該上り斜面に連続する下り斜面と、該下り斜面の末端の係止突部とを形成することを特徴とする食品の連続加熱装置における反転装置。
【請求項2】
前記各規制部材は、共通の支持板上に配列することを特徴とする請求項1記載の食品の連続加熱装置における反転装置。
【請求項3】
前記各規制部材は、同心円状に湾曲させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の食品の連続加熱装置における反転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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