説明

食品スライサ

【課題】ムラのない状態で食品の形状及び大きさを揃えて刃物側へ供給可能とする。
【解決手段】食品スライサ1は、ブロック肉Mがセットされる下型28と、下型28に対して開閉動作する上型29とによってブロック肉Mを所定形状に成形する成形部4を備え、成形部4では、上型29を、プッシャー31による押し出し方向の前方側が先にブロック肉Mに当接する前傾姿勢から閉動作させて、ブロック肉Mを押し出し方向の後方へ伸ばしながら成形するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック肉等の食品を所定厚さにスライスする食品スライサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の食品スライサは、例えば特許文献1に示すように、ブロック肉等の食品を上下の供給コンベアで挟むようにして刃物装置側へ供給し、食品の前端を、刃物装置に設けた固定刃と可動刃とによって所定厚さでスライスし、送り出しコンベア装置によって下流側へ供給する構成となっている。
また、食品が生肉のブロックであると、形状が歪である上、切断時に断面形状が変形してスライス片の重量が均等にならない場合があることから、特許文献2では、ガイド筒を用いて生肉等を内部に充填し、その状態でシリンダ装置等の押し出し手段によって刃物側へ押し出すことで、生肉等の形状及び大きさを揃えて供給し、スライス片の重量を均等にしようとする切断装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−144286号公報
【特許文献2】特開2001−260081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献2の切断装置においては、いちいちガイド筒に生肉等の食品を充填する作業が必要となり、手間が掛かる。また、ガイド筒への充填によって食品の形状や大きさが一定となっても、押し込まれるガイド筒内でムラが生じやすく、密度が一定とならないため、スライス片の重量にばらつきが生じたり、切断面が粗くなって品質が低下したりするおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、ムラのない状態で食品の形状及び大きさを揃えて刃物側へ供給でき、スライス片の重量も均等となって品質の高いスライスが可能となる食品スライサを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、食品がセットされる固定型とその固定型に対して開閉動作する可動型とによって食品を所定形状に成形する成形部と、その成形部で成形された食品を成形部の外部へ徐々に押し出す押し出し手段と、その押し出し手段によって成形部から押し出された食品を刃物によってスライスする切断部とを備えた食品スライサであって、成形部では、可動型を、押し出し手段による押し出し方向の前方側が先に食品に当接する前傾姿勢から閉動作させて、食品を押し出し方向の後方へ伸ばしながら成形することを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、食品を固定型上の適正位置へ確実にセット可能とするために、固定型を、基板の左右に側壁を立設させた横断面U字状とすると共に、少なくとも一方の側壁を、基板と別体として前端を中心に回転可能に設けて、後端に駆動手段を連結し、固定型に食品がセットされる際には、駆動手段によって側壁を外側へ回転させて固定型の側方を後方への拡開状に開放して食品を受け入れ、食品のセット後に側壁を内側へ回転させて固定型の側方を閉塞する構成としたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、複数の食品をスムーズに成形部へ供給するために、成形部の前段に、複数の食品を左右方向への並列状態でセット可能で、セットされた食品を成形部の後方に当たる所定位置へ搬送可能な横送りコンベアと、所定位置の食品の後端に当接して成形部へ搬送可能な押圧板を備えた縦送りコンベアとを設けたことを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、食品の形状にばらつきがあっても均一な重量でのスライスを可能とするために、前記食品の押圧方向での前記可動型の位置を検出する位置検出手段を設けて、前記成形部では、前記可動型による前記食品の押圧が所定の圧力となるとそれ以上の押圧を停止するようにし、前記押圧の停止時に前記位置検出手段によって前記可動型の位置が検出されると、当該検出位置から前記固定型と可動型とにより形成されるキャビティの横断面積を算出して、前記横断面積と前記食品の比重とに基づいて、前記切断部でスライスするスライス片が所望の重量となるように前記押し出し手段による前記食品の押し出し量を決定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、簡単に食品の形状及び大きさを揃えてムラのない状態で切断部側へ供給できる。よって、スライス片の重量が均等となると共に切断面も良好となり、信頼性や品質の高いスライスが可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、食品が傾いた状態で固定型上へ移乗することがあっても、固定型上の適正位置へ確実にセットすることができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加えて、横送りコンベアと縦送りコンベアとの採用により、成形部の前段で複数の食品を準備した上で一つずつスムーズに成形部へ供給可能となる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかの効果に加えて、食品の形状にばらつきがあっても均一な重量でのスライスが高い信頼性で行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[食品スライサ全体の説明]
図1は、食品スライサの斜視図、図2は機台を省略した状態の斜視図、図3〜5は夫々その平面、側面、正面図である。食品スライサ1は、縦長のブロック肉を左右方向(図1の右下側を前方とする。)へ搬送する横送りコンベア2と、その横送りコンベア2の左端上方に設けられ、ブロック肉Mを前方へ搬送する縦送りコンベア3と、その縦送りコンベア3の前端に配置され、ブロック肉Mを所定形状に成形して前方へ押し出す成形部4と、その成形部4の前方に設けられ、押し出されたブロック肉Mの先端を刃物84によってスライスする切断部5とからなる。6は機台で、縦送りコンベア2を後方の上部枠7から吊り下げ支持すると共に、その前方で成形部4及び切断部5を支持して、右側方を除いてカバー8で覆われている。カバー8の前方には、切断部5で切断されたスライス片を排出する排出口9が設けられている。横送りコンベア2は、機台6の右側でサブ機台10に支持されて、突出する左端を機台6内に差し込む格好で縦送りコンベア3の下方にセットしている。
【0009】
[横送りコンベアの説明]
横送りコンベア2は、図6,7にも示すように、サブ機台10の上部で前後に所定間隔をおいて支持された支持バー11,11間において、右端に駆動ローラ12を、左端に従動ローラ13を夫々回転可能に軸支し、両ローラ12,13の間に幅広の横送りベルト14を張設してなる。駆動ローラ12には、サブ機台10内に設けたモータ15の回転が、スプロケット及びチェーンとからなる周知の伝達機構16を介して伝達可能となっており、この駆動ローラ12の回転により、横送りベルト14を左回転させて上面に載置した縦長棒状のブロック肉Mを左方向へ搬送可能としている。横送りベルト14上には、ブロック肉Mの最大幅を規定する複数のガイド片17,17・・が、周方向及び前後方向に立設されている。
さらに、横送りコンベア2は、後述する成形部4の下型28よりも高い位置で支持されており、横送りコンベア2の左端で前方の支持バー11の上端には、横送りベルト14の上面から前下がり傾斜となって下型28の後端へ連続状に繋がる傾斜板18が設けられている。
【0010】
[縦送りコンベアの説明]
縦送りコンベア3は、機台6の上部枠7に連結された左右一対のブラケット19,19間の前後に、横送りベルト14の前後方向の長さと略同じ間隔で前ローラ20と後ローラ21とを軸支して、両ローラ20,21間に幅の狭い縦送りベルト22を張設し、前ローラ20の軸に連結したモータ23により、縦送りベルト22を両ローラ20,21間で回転可能としてなる。縦送りベルト22の外面には、左右幅がやや小さい押圧板24が立設されて、縦送りベルト22の回転に伴い、その下方で横送りコンベア2の左側に達したブロック肉Mの後端を押圧して前方へ押し出し可能としている。左側のブラケット19の前後には、縦送りベルト22の上側で押圧板24の到達を検出する近接センサ25,25が設けられている。
26,26・・は、縦送りベルト22の上側前寄りでブラケット19の対向面に前後一対ずつ支持され、縦送りベルト22の上側両端に当接する抑えローラ、27は、抑えローラ26,26の間でブラケット19,19から吊り下げられ、縦送りベルト22内で上側に当接するテンションローラで、テンションローラ27の上下位置の設定によって縦送りベルト22の張り具合を調節可能となっている。
【0011】
[成形部の説明]
成形部4は、縦送りコンベア3から送られるブロック肉をセットする固定型としての下型28と、下型28に対して開閉動作する可動型としての上型29と、上下の型28,29の前方を開閉する開閉板30と、上下の型28,29で成形されたブロック肉を前方へ押圧する押し出し手段としてのプッシャー31とを有する。
まず下型28は、図8及び図9に示すように、ブロック肉の下半分を所定形状に成形する横断面U字状を有するが、ここでは右側の側壁と一体化した横断面L字状の基板32に対して、左側の側壁33のみが別体に形成され、その前端が基板32上でピン34によって水平回転可能に連結される一方、側壁33の後端は、機台6に支持された駆動手段としてのエアシリンダ35のピストンロッド36の先端に連結されて、ピストンロッド36の伸縮に伴い、側壁33をピン34を中心に水平回転可能としている。すなわち、ピストンロッド36が伸長した状態では、図9(A)の実線及び同図(B)に示すように、側壁33は右側の側壁と平行となって下型28の側方を閉塞し、ピストンロッド36が収縮すると、同図に二点鎖線で示すように、側壁33の後端がピン34を中心に左側へ水平回転して、下型28の側方を後方への拡開状に開放するようになっている。
【0012】
次に、上型29は、下型28の左右の側壁間に全長に亘って嵌合してブロック肉の上半分を所定形状に成形する横断面形状を有し、上面には、図10,11に示すように、長手方向に沿って延びる左右一対の縦枠38,38と、その縦枠38,38間を連結する複数の軸39,39・・とからなるフレーム37が取り付けられて、このフレーム37の前後にエアシリンダ40,41が連結されている。38aは、フレーム37における左側の縦枠38の下縁から逆L字状に延設される規制板で、ブロック肉の成形時に下型28の側壁33の外側に位置して側壁33の外側への回転を規制するものである。
まず前方のエアシリンダ40は、機台6の上部枠7に前連結板42を介して下向きに固定され、ピストンロッド43の先端へ直交状に連結した連結バー44が、その下方へ突設した突設片45,45を介してフレーム37の前端の軸39に連結されている。連結バー44の上面には、ピストンロッド43を中心にした左右対称位置に、一対のガイドロッド46,46が立設されて、前連結板42に下向きに装着されたガイドスリーブ47,47に遊挿している。
【0013】
よって、ピストンロッド43が最大長さまで伸長すると、上型29の前端はフレーム37を介して下降し、図12(A)に示すように下型28の上方を閉塞して横断面長円形状のキャビティ48を形成する下限位置に下降し、ピストンロッド43が収縮すると、上型29は、下型28の上方を開放する上限位置に上昇する。このピストンロッド43の伸縮に伴い、ガイドロッド46,46がガイドスリーブ47,47内を摺動してピストンロッド43の伸縮をガイドするため、上型29の安定した昇降が可能となる。
なお、左側のガイドロッド46は、右側よりも上方へ長く形成されており、ガイドスリーブ47から上方への突出部分と、その後方側で前連結板42に立設された支持プレート49との間には、図12(B)に示す如く、ガイドロッド46の側面後方側で軸方向に沿って固定されるスケール51と、支持プレート49の上端に固定される走査ヘッド52とからなる位置検出手段としてのリニアエンコーダ50が設けられている。すなわち、ピストンロッド43の伸縮に伴うガイドロッド46のスライドによって走査ヘッド52をスケール51に沿って相対移動させることで、ピストンロッド43のストロークを間接的に検出可能としたものである。
【0014】
一方、後方のエアシリンダ41も後連結板53に下向きに固定されるが、後連結板53は、左右の側面に突設したピン54,54が、上部枠7に固定された左右一対の横板55,55の中央部で支持されている。よって、エアシリンダ41は、後連結板53と共にピン54,54を中心にして前後へ揺動可能となる。エアシリンダ41のピストンロッド56は、突設片58,58を設けた連結バー57を介して、フレーム37の後方寄りの軸39に連結されている。また、連結バー57にも、後連結板53に設けたガイドスリーブ60,60に遊挿するガイドロッド59,59が設けられ、左側のガイドロッド59には、前方のエアシリンダ40と同様にリニアエンコーダ50が設けられている。
【0015】
よって、ピストンロッド56が最大長さまで伸張すると、上型29の後端はフレーム37を介して下降し、図13に実線で示すように下型28の上方を閉塞して前端と同様にキャビティ48を形成する下限位置に下降し、前方のエアシリンダ40のピストンロッド43の収縮と共にピストンロッド56が収縮すると、同図に二点鎖線Aで示すように、フレーム37及び上型29は下型28の上方を開放する略水平な上限位置に上昇する。一方、上型29を前端が下限位置のままピストンロッド56を収縮させて後端のみを上昇させると、二点鎖線Bや図2,4に示すように、フレーム37が前端の軸39を中心に回転して上型29が前傾姿勢になる。このときピストンロッド56が連結される軸39は円弧状の軌跡で上昇するが、後連結板53と共にエアシリンダ41が傾動して追従するため、上型29の傾斜はスムーズに行える。
なお、前後のエアシリンダ40,41には、上記リニアエンコーダ50に加えて図示しない圧力センサが設けられて、ピストンロッド43,56の伸長時には、上型29が下型28上のブロック肉を押圧した際の圧力が検出されるようになっている。
【0016】
開閉板30は、機台6に設けられた開閉機構61によって、下型28及び上型29の前方でキャビティ48の開口を閉塞する閉塞位置と、その閉塞位置から上昇してキャビティ48の開口を開放する退避位置との間を移動可能に支持されている。この開閉機構61は、図2〜4及び図13等に示すように、機台6に支持されて右側へ突出する支持ロッド62の途中に、3本の軸64,64・・によって所定間隔をおいて連結される左右一対の固定板63,63を有し、下側の2本の軸64,64に夫々連結した一対の平行リンク65,65の後端に開閉板30の前面を連結している。また、上側の軸64には、エアシリンダ66が下向きに連結されて、そのピストンロッド67の先端が、上側の平行リンク65,65の中間部位間に架設した軸68と連結されている。69は、開閉板30の中央下部に検出面を後方に向けて取り付けられた近接センサである。
よって、ピストンロッド67が伸張すると、図13に実線で示すように平行リンク65,65が水平姿勢となって開閉板30を閉塞位置に支持し、ピストンロッド67が収縮すると、同図に二点鎖線で示すように平行リンク65,65が上方へ傾動して開閉板30を退避位置へ移動させる。70は、支持ロッド62の右端を機台6に連結する支持板である。
【0017】
そして、プッシャー31は、キャビティ48に嵌合する形状のブロック体で、前面には、図1,2に示すように、ブロック肉の後面に刺さる針71,71・・が突設され、後面には、後方へ向かって一対の押し出しバー72,72が連結されている。この押し出しバー72,72の下方には、図2〜4及び図7等に示すように、機台6上で前後に立設された前板73及び後板74の間で一対のガイドバー75,75が押し出しバー72と平行に架設され、このガイドバー75,75に遊挿されてガイドバー75,75に沿って前後へスライド可能に設けられた連係ブロック76に、押し出しバー72,72の後端が連結されている。
【0018】
また、ガイドバー75,75の間には、ネジロッド77が前板73と後板74とによって回転可能に軸支され、連係ブロック76の中央へ一体に設けられたナットスリーブ78に螺合している。ネジロッド77の後端は、後板74の後方へ突出して、その端部に設けたプーリ79と、機台6に固定されたモータ80の出力軸に設けたプーリ81との間にベルト82が張設されている。
よって、モータ80が駆動してベルト82を介してネジロッド77が回転すると、ナットスリーブ78がネジ送りによって連係ブロック76と共に前後方向へスライドすることになる。この連係ブロック76のスライドに伴い、押し出しバー72,72を介して一体となるプッシャー31が下型28上で前後へ移動するものとなる。
【0019】
[切断部の説明]
切断部5は、図3,5に示すように、成形部4の前方左側において機台6上で回転可能に軸支されたスピンドル83の前端に、勾玉状の刃物84の基端を直交状に連結し、スピンドル83の後端と、機台6上でスピンドル83の左側に配置したモータ85の出力軸との間にベルト86を張設してなる。よって、モータ85が駆動してベルト86を介してスピンドル83が回転すると、刃物84は、先端側がキャビティ48の開口前面を上方から横切るように回転することになる。なお、キャビティ48の開口前面の下方には、刃物84によって切断されたスライス片を排出口9へ送る排出コンベア87が設けられている(図13に図示)。
【0020】
[食品スライサの動作説明]
以上の如く構成された食品スライサ1は、横送りコンベア2のモータ15、縦送りコンベア3のモータ23、成形部4のエアシリンダ35,40,41、開閉機構61のエアシリンダ66、プッシャー31のモータ80、切断部5のモータ85を、各センサやリニアエンコーダ50の検出信号に基づき、図示しない制御部が所定のプログラムに従って駆動制御することで動作する。以下当該動作について詳述する。
まず動作前の待機状態では、縦送りコンベア3の押圧板24は図2,3のように後方の近接センサ25の位置にあり、プッシャー31は下型28上の最後方位置にある。また、成形部4では、下型28の側壁33は左側へ回転して下型28の側方を開放し、上型29は、前後端が共に上限位置で略水平姿勢(図13の二点鎖線A位置)となっている。さらに、開閉板30は閉塞位置にある。
【0021】
この状態で横送りコンベア2の横送りベルト14上に所定数のブロック肉Mを並べてセットし、横送りコンベア2をスタートさせると、図6に示すように、左端のブロック肉Mが横送りコンベア2の左端に達するまで(図示しない近接センサで検出する)搬送される。ブロック肉Mが左端に達すると、モータ23の回転によって縦送りコンベア3が駆動して、押圧板24が前方の近接センサ25の検出位置に達するまで縦送りベルト22を回転させる。すると、図7に示すように縦送りベルト22の下方に回り込んだ押圧板24がブロック肉Mの後端に当接してブロック肉Mを前方へ移動させ、傾斜板18から下型28上に移乗させる。このとき、下型28では、側壁33によって側方が拡開状に開いてブロック肉Mを受け入れるため、下型28上へスムーズに移乗する。ブロック肉Mの移乗後、モータ23が逆回転して縦送りベルト22を逆回転させ、押圧板24を後方の近接センサ25の検出位置まで復帰させる。
【0022】
ブロック肉Mが下型28上に載ると、エアシリンダ35のピストンロッド36が伸張して側壁33が回転し、下型28の側方を閉塞すると共に、モータ80が駆動してプッシャー31を前進させ、ブロック肉Mを前進させる。ブロック肉Mの前端が開閉板30に当接したことを近接センサ69で検出すると、プッシャー31は最後方位置まで復帰する。
次に、成形部4の前側のエアシリンダ40のピストンロッド43のみが伸長して、上型29の前端がブロック肉Mに当接して所定の圧力となるまで前端を下降させる。よって、上型29は前傾姿勢となる(図13二点鎖線B位置)。続いて後側のエアシリンダ41のピストンロッド56が伸長して、上型29が下型28と平行になるまで後端を下降させる。この前後端の段階的な当接により、下型28上のブロック肉Mは、上型29の後端が下降するに従って前方から後方へ向かって伸ばされるように押圧され、上型29が同図の実線で示すように水平姿勢となると、キャビティ48内で所定の形状及び大きさに成形される。このとき、押圧されるブロック肉Mによってキャビティ48の内圧が高まり、側壁33は外方へ押圧されるが、図12(A)に示すように規制板38aによって外方への回転が規制されるため、キャビティ48の形状は維持される。
【0023】
こうして成形が終了すると、エアシリンダ66のピストンロッド67が収縮して開閉板30を退避位置へ移動させ、キャビティ48の開口前面を開放する。その後、モータ85が駆動して刃物84の回転(図12(A)で左回転)を開始させると共に、モータ80が駆動してプッシャー31を前進させる。すると、プッシャー31に押されたブロック肉Mの前端がキャビティ48の開口前面から突出し、その突出部分が刃物84によって切断される。回転する刃物84はキャビティ48の開口前面を断続的に横切るため、刃物84が一回転して再びキャビティ48の開口前面に達するまでにブロック肉Mが突出した量でスライスされ、スライス片は排出コンベア87によって排出口9に搬送されることになる。このプッシャー31の前進と刃物84の回転とはプッシャー31が下型28の最前方位置に達するまで行われる。
【0024】
このスライスの際、ブロック肉Mは上型29によって後方へ伸ばされた状態で成形されているため、一定密度でキャビティ48の開口前面へ供給される。よって、スライス片の重量が均一となり、切断面も綺麗となる。
特にここでは、上型29の前端がブロック肉Mに当接して所定の圧力で停止した際、エアシリンダ40のピストンロッド43の位置をリニアエンコーダ50で検出すると、制御部が上下のキャビティ48の横断面積を計算して予め設定された肉の比重を掛け合わせて、所望の重量のスライス片が得られるようにプッシャー31の送り量(モータ80の回転量)を決定するようにしている。なお、モータ80にサーボモータを使用しているので、決定した送り量でのプッシャー31の前進も正確となる。
よって、ブロック肉Mの形状にばらつきがあっても均一な重量でのスライスが高い信頼性で行えることになる。
【0025】
ブロック肉Mのスライスが終了して刃物84の回転が停止すると、再びプッシャー31が最後方位置へ後退すると共に、上型29が上限位置の略水平姿勢へ復帰し、下型28の側壁33も開放位置へ移動する。また、開閉板30も閉塞位置へ復帰する。よって、前のブロック肉Mの切断の際に横送りコンベア2の左端に送られて待機していた次のブロック肉Mも同様に縦送りコンベア3の押圧板24に押し出されて下型28上に移乗し、同様に成形部4で成形されて切断部5でスライスされる。
【0026】
[食品スライサの効果]
このように、上記形態の食品スライサ1によれば、成形部4では、上型29を、プッシャー31による押し出し方向の前方側が先にブロック肉Mに当接する前傾姿勢から閉動作させて、ブロック肉Mを押し出し方向の後方へ伸ばしながら成形することで、簡単にブロック肉Mの形状及び大きさを揃えてムラのない状態で切断部5側へ供給できる。よって、スライス片の重量が均等となると共に切断面も良好となり、信頼性や品質の高いスライスが可能となる。
【0027】
特にここでは、下型28を、基板32の左右に側壁を立設させた横断面U字状とすると共に、一方の側壁33を、基板32と別体として前端を中心に回転可能に設けて、後端にエアシリンダ35を連結し、下型28にブロック肉Mがセットされる際には、エアシリンダ35によって側壁33を外側へ回転させて下型28の側方を後方への拡開状に開放してブロック肉Mを受け入れ、ブロック肉Mのセット後に側壁33を内側へ回転させて下型28の側方を閉塞するようにしたことで、たとえ傾いた状態でブロック肉Mが下型28上へ移乗しても、ブロック肉Mを下型28上の適正位置へ確実にセットすることができる。
また、成形部4の前段に、複数のブロック肉Mを左右方向への並列状態でセット可能で、セットされたブロック肉Mを成形部4の後方に当たる左端位置へ搬送可能な横送りコンベア2と、左端位置のブロック肉Mの後端に当接して成形部4へ搬送可能な押圧板24を備えた縦送りコンベア3とを設けたことで、成形部4の前段で複数のブロック肉Mを準備した上で一つずつスムーズに成形部4へ供給可能となる。
【0028】
[変更例の説明]
上記形態では、下型に対して上型が別体で上下動する構造となっているが、下型と上型との前端同士を、上型が上下動できる長孔と軸とのヒンジで連結して開閉動作する構造としても差し支えない。
また、固定型として下型が、可動型として上型が用いられて上下方向でブロック肉を成形する構成となっているが、固定型と可動型とが上下方向(鉛直或いは傾斜状でもよい)に設置されてその下方に設けた切断部でスライスする形態であっても本発明は適用可能である。
一方、固定型の側壁は、上記形態では左側が開閉動作する構造となっているが、右側としてもよいし、左右の側壁が共に開閉動作する構造としてもよい。
【0029】
加えて、縦送りコンベアでは、縦送りベルトを逆回転させて押圧板を戻さずに、一回転させて次の押圧を行うようにしてもよいし、押圧板を複数枚設けることもできる。勿論縦送りコンベアの採用に限らず、上記形態のプッシャーのように後方から押し出す押し出し手段を採用して横送りコンベア上から移乗させることも考えられる。
その他、切断部の刃物は、勾玉状に限らず、板状の刃物が往復動作する形態であっても差し支えない。また、可動型や固定型等を開閉動作させる駆動手段としては、エアシリンダに限らず、油圧シリンダやボールネジ等の他のアクチュエータに代えることも可能である。
【0030】
そして、上記形態では、前後のエアシリンダに圧力センサを設けて可動型による所定の圧力の押圧を検出しているが、圧力センサに代えて、エアシリンダのエア回路に減圧弁を設けて、所定の圧力でピストンロッドの伸長が停止するようにしてもよい。この場合は食品を押圧した際の反発力とのバランスで可動型による押圧が停止するため、後は同様にリニアエンコーダ等の位置検出手段から得られた可動型の位置からキャビティの断面積を算出し、食品の比重と掛け合わせて所望の重量のスライス片となるようにプッシャー等の押し出し手段による食品の押し出し量を決定することになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】食品スライサの斜視図である。
【図2】機台を省略した状態の食品スライサの斜視図である。
【図3】図2の食品スライサの平面図である。
【図4】図2の食品スライサの側面図である。
【図5】図2の食品スライサの正面図である。
【図6】横送りコンベアを後方から見た説明図である。
【図7】縦送りコンベアを側方から見た説明図である。
【図8】下型の斜視図である。
【図9】(A)は下型の正面図、(B)は下型の平面図である。
【図10】上型の斜視図である。
【図11】上型の説明図で、上が平面、下が側面、右が正面を夫々示す。
【図12】(A)は成形部及び刃物部の正面図、(B)はリニアエンコーダの説明図である。
【図13】成形部及び開閉板の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・食品スライサ、2・・横送りコンベア、3・・縦送りコンベア、4・・成形部、5・・切断部、6・・機台、8・・カバー、9・・排出口、10・・サブ機台、14・・横送りベルト、15,23,80,85・・モータ、22・・縦送りベルト、24・・押圧板、25,69・・近接センサ、28・・下型、29・・上型、30・・開閉板、31・・プッシャー、32・・基板、33・・側壁、35,40,41,66・・エアシリンダ、48・・キャビティ、61・・開閉機構、84・・刃物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品がセットされる固定型とその固定型に対して開閉動作する可動型とによって食品を所定形状に成形する成形部と、その成形部で成形された食品を前記成形部の外部へ徐々に押し出す押し出し手段と、その押し出し手段によって前記成形部から押し出された食品を刃物によってスライスする切断部とを備えた食品スライサであって、
前記成形部では、前記可動型を、前記押し出し手段による押し出し方向の前方側が先に食品に当接する前傾姿勢から閉動作させて、食品を前記押し出し方向の後方へ伸ばしながら成形することを特徴とする食品スライサ。
【請求項2】
前記固定型を、基板の左右に側壁を立設させた横断面U字状とすると共に、少なくとも一方の側壁を、前記基板と別体として前端を中心に回転可能に設けて、後端に駆動手段を連結し、前記固定型に食品がセットされる際には、前記駆動手段によって前記側壁を外側へ回転させて前記固定型の側方を後方への拡開状に開放して食品を受け入れ、食品のセット後に前記側壁を内側へ回転させて前記固定型の側方を閉塞することを特徴とする請求項1に記載の食品スライサ。
【請求項3】
前記成形部の前段に、複数の食品を左右方向への並列状態でセット可能で、セットされた食品を前記成形部の後方に当たる所定位置へ搬送可能な横送りコンベアと、前記所定位置の食品の後端に当接して前記成形部へ搬送可能な押圧板を備えた縦送りコンベアとを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の食品スライサ。
【請求項4】
前記食品の押圧方向での前記可動型の位置を検出する位置検出手段を設けて、前記成形部では、前記可動型による前記食品の押圧が所定の圧力となるとそれ以上の押圧を停止するようにし、前記押圧の停止時に前記位置検出手段によって前記可動型の位置が検出されると、当該検出位置から前記固定型と可動型とにより形成されるキャビティの横断面積を算出して、前記横断面積と前記食品の比重とに基づいて、前記切断部でスライスするスライス片が所望の重量となるように前記押し出し手段による前記食品の押し出し量を決定することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の食品スライサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−172683(P2009−172683A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10638(P2008−10638)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000151139)ワタナベフーマック株式会社 (8)
【Fターム(参考)】