説明

食品乾燥物の製造方法および食品乾燥物

【課題】食感や歯ごたえのみならず、噛み切り易さ、噛み応え、口の中でのバラけ易さの3項目がそろっており、酒の摘みに要求される硬さが十分で、形状保持性に優れた乾燥食品が得られる食品乾燥物の製造方法および食品乾燥物を提供すること
【解決手段】温度50℃〜200℃で、食品素材中の水分含有率が20%〜50%になるように予備加熱乾燥する第一工程と、前記予備加熱乾燥によって得られた食品素材を相対する二つのドラムの間で挟持しながら、加熱乾燥させて外形形状を保持しつつ薄板状の乾燥物を得る第二工程からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品乾燥物の製造方法および食品乾燥物に関し、詳しくは食品素材をそのまま用いても、素材由来の形状がある程度残っており、目視で確認し易く、且つ素材本来の好ましい風味と食感を有する食品乾燥物の製造方法および食品乾燥物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、食感、歯ごたえが元の生鮮食品に近いようにするために、生鮮食品又はこれを煮沸調理した食品を乾燥するに際して、被乾燥物中の水分が生鮮状態の水分の10〜30%になるまで被乾燥物の温度を10〜40℃として予備乾燥した後、真空凍結乾燥する食品の乾燥方法が開示されている。
【0003】
この技術は、非凍結乾燥と真空凍結乾燥を組み合わせたもので、非凍結乾燥である予備乾燥によって生鮮状態の水分の10〜30%の範囲内に調整する点に特徴がある。
【0004】
そのような範囲に限定する理由は、被乾燥物の水分が生鮮状態の水分の30%より高い状態で真空凍結乾燥を行うと、食品の組織中に数百μmから数mmの氷片が生じる。この氷片が蒸発した後には空孔が残る。このような空孔の生じた乾燥食品を水に戻しても、元の生鮮状態の食感や歯ごたえが得られず、食品としての風味が著しく低下するからであると記載している。また被乾燥物中の水分が生鮮状態の10%より低くなるまで予備乾燥すると、乾燥時間が過大になり、雑菌の繁殖等による食品の変質のおそれがあって好ましくないと記載している。
【特許文献1】特許第3653354号公報
【特許文献2】特開2006−191927号公報:ドラムドライヤーを用いた食品の製造方法
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの調査によると、酒の摘みのような乾燥食品の場合には、食感や歯ごたえのみならず、乾燥食品の噛み切り易さ、噛み応え、口の中でのバラけ易さの3項目がそろっていることが好ましいことがわかった。また近年、乾燥食品の需要者嗜好は、姿見のまま食する傾向が強まっており、いわゆる形状保持性に優れる乾燥技術の開発が望まれている。
【0006】
しかるに、特許文献1の乾燥方法では、後段で真空凍結乾燥を採用するため、薄板状の乾燥物を得ることは出来ず、また真空凍結乾燥によって食品の組織破壊が起こり、酒の摘みなどのような乾燥食品の場合に要求される乾燥食品の硬さが十分でない欠点がある。
【0007】
そこで、本発明は、食感や歯ごたえのみならず、噛み切り易さ、噛み応え、口の中でのバラけ易さの3項目がそろっており、酒の摘みに要求される硬さが十分で、形状保持性に優れた乾燥食品が得られる食品乾燥物の製造方法および食品乾燥物を提供することを課題とする。
【0008】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0010】
請求項1記載の発明は、温度50℃〜200℃で、食品素材中の水分含有率が20%〜50%になるように予備加熱乾燥する第一工程と、前記予備加熱乾燥によって得られた食品素材を相対する二つのドラムの間で挟持しながら、加熱乾燥させて外形形状を保持しつつ薄板状の乾燥物を得る第二工程からなることを特徴とする食品乾燥物の製造方法である。
【0011】
請求項2記載の発明は、相対する二つのドラム間の隙間が、0.001mm〜5.0mmであることを特徴とする請求項1記載の食品乾燥物の製造方法である。
【0012】
請求項3記載の発明は、第二工程で得られる乾燥物の水分含有率が、0.01〜10%であることを特徴とする請求項1又は2記載の食品乾燥物の製造方法である。
【0013】
請求項4記載の発明は、食品素材が、魚介類、肉類、穀類、芋類、キノコ類、野菜類、果実類のうちの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の食品乾燥物の製造方法である。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の食品乾燥物の製造方法により得られることを特徴とする食品乾燥物である。
【0015】
請求項6記載の発明は、得られた食品乾燥物の下記測定方法による硬さが、0.1〜1N/mの範囲であることを特徴とする請求項5記載の食品乾燥物である。
(測定方法)
英国Stable Micro Systems社製テクスチャーアナライザーTA−XT2型(プランジャー:直径3mm、シリンダー貫入距離:5mm)を用いて、圧縮速度10m/Sで測定した。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、いわゆる形状保持性に優れ、食感や歯ごたえのみならず、噛み切り易さ、噛み応え、口の中でのバラけ易さの3項目を満足することができ、酒の摘みなどに要求される硬さが十分な乾燥食品が得られる食品乾燥物の製造方法および食品乾燥物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
本発明の食品乾燥物の製造方法における第一工程は、温度50℃〜200℃で、食品素材中の水分が20%〜50%になるようにする予備加熱乾燥工程であり、第二工程は、前記予備加熱乾燥工程によって得られた食品素材を相対する二つのドラムの間で挟持しながら、加熱乾燥させて外形形状を保持しつつ薄板状の乾燥物を得る工程である。
【0019】
第一工程における予備加熱乾燥の方法は、食品素材を50〜200℃で加熱乾燥させることができれば特に問わない。例えば熱風乾燥、オーブン乾燥、マイクロ波加熱乾燥等を用いることができるが、中でも熱風乾燥が好ましい。また、予備加熱乾燥は常圧下で行うことが好ましい。
【0020】
第一工程において、食品素材を温度50〜200℃の範囲で予備加熱乾燥することにより、食品素材に含有される水分含有率を20%〜50%に調整すると、収縮して(身が締まって)、固形密度が上がる。このため、第二工程で、ドラム乾燥時に食品本来の形状が破壊されることなく、薄板状に成形しやすくなり、形状保持性に優れ、又食感を適度な硬さにすることができる。
【0021】
すなわち、噛み応えが優れるだけでなく、硬さによる咀嚼感、特に噛み切り易さ、噛み応え、口の中でのバラけ易さの3項目を同時に満足することができる。この咀嚼感、特に噛み切り易さ、噛み応え、口の中でのバラけ易さの3項目を同時に満たすことが、酒の摘みなどに要求される乾燥食品の硬さであり、この乾燥食品の需要増大に寄与する。
【0022】
また、後の第二工程で、ドラムに付着した乾燥物を剥離して乾燥製品を得る際に、予備加熱乾燥により固形密度を上昇させると、剥離時に乾燥物破壊を生じることがなく、すなわち剥離に耐え得る強度が得られ、形状保持性に優れ、姿見のままの乾燥物が得られる効果を発揮する。
【0023】
更に第一工程において、温度50℃〜200℃で予備加熱乾燥すると、食品素材中のたん白質等の変性を起こし、食感、また成形性、旨み性等を向上させることができると共に、食品素材が魚介類の場合、生臭さの成分を飛散除去でき、後の第二工程でドラム加熱することにより、好ましい風味(素材本来の香ばしい風味、加熱による素材の香ばしい風味)のみを食品素材に与えることができる。
【0024】
この第一工程において、温度50℃未満では、予備加熱乾燥の温度が低すぎるので、短時間では乾燥不十分となって、長時間の乾燥を要することになり、常圧下で低温長時間乾燥では、異臭が発生するという問題がある。
【0025】
また温度が200℃を超えると、後の第二工程を経て得られる食品乾燥物は、食感は良好であるが、風味は香ばしさを通りすぎ、焦げ臭が強くなる傾向がある。また、本来持っている旨みより弱くなり、形状保持性も悪く、食品乾燥物に壊れが多くなる。また、本来持っている食品の色が失われる(褐変する)傾向がみられるようになる。
【0026】
第一工程での予備加熱乾燥における温度は、好ましくは60〜150℃の範囲であり、より好ましくは60〜100℃の範囲である。
【0027】
本発明における第一工程で、水分含有率20%未満まで乾燥しても本発明の効果の向上は望めず、エネルギーの無駄である。また50%を越えると、形状保持性に劣り、後の第二工程における剥離に耐え得る強度が得られない。第一工程後の水分含有率は、好ましくは30〜50%である。
【0028】
次に、本発明の第二工程について説明する。
【0029】
第二工程は、前記予備加熱乾燥によって得られた食品素材を相対する二つのドラムの間で挟持しながら、加熱乾燥させて外形形状を保持しつつ薄板状の乾燥物を得る工程である。
【0030】
この工程では、相対する二つのドラムを備えたドラムドライヤーを用いることができる。ドラムドライヤーは、通常、食品製造に用いるものでよく、特に限定されない。
【0031】
ドラムドライヤーの加熱乾燥条件は、ドラム表面温度30〜180℃の範囲が好ましく、より好ましくは50〜160℃である。ドラム表面温度が30℃未満であると、乾燥が不十分であり好ましくなく、また180℃を越えると、加熱による焦げが付きすぎて好ましくない。また、ドラムドライヤーの加熱乾燥条件のうち、圧力条件は、常圧下であることが好ましい。
【0032】
ドラム回転速度は、形状保持性や適度な硬さを得る上で、0.1〜10rpmの範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜5rpm、更に好ましくは0.5〜3rpmである。
【0033】
相対するドラム間の隙間は、第一工程から送られる食品素材により適切に設定すれば良いが、好ましくは5mm以下であり、より好ましくは2mm〜0.001mmの範囲で調整可能なことである。
【0034】
本発明において、薄板状とは、このように加熱された相対する回転ドラムの間を通過することにより、薄い形状に加工されたものをいう。
【0035】
第二工程で得られる乾燥物の水分含有率は、本発明の効果が好適に得られる点で20%未満であることが好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10〜0.01%の範囲である。
【0036】
本発明に用いる食品素材は、水分含有率が20%を超える食品素材であれば特に問わないが、例えば動物性食品素材(例えば魚介類、肉類)、植物性食品素材(例えば穀類、芋類、キノコ類、野菜類、果実類)等を使用できる。
【0037】
本発明では、賦形剤を用いることもでき、その際、調味料及び香辛料の少なくとも一種を適量混合させることもできる。
【0038】
本発明を適用する上で、上記食品素材の中で姿見がそのまま存在するものが好ましいが、切り身や半加工品や加工品などでもよい。
【0039】
本発明における食品素材は、第一工程後の乾燥物の大きさが、相対する二つのドラムを通過させることができる程度のものである場合は、そのまま第二工程のドラムドライヤーによる加熱乾燥に移行することができるが、第一工程後の乾燥物が相対する二つのドラムを通過させることができない程度の大きさである場合は、第一工程に入る前に相対する二つのドラムの通過に支障がない程度に破断してもよいし、第一工程と第二工程の間に破断してもよい。
【0040】
本発明の製法によって得られた食品乾燥物は下記測定方法による硬さが、0.1〜1N/mの範囲となり、好ましい食感が得られる。
【0041】
(測定方法)
英国Stable Micro Systems社製テクスチャーアナライザーTA−XT2型(プランジャー:直径3mm、シリンダー貫入距離:5mm)を用いて、圧縮速度10m/Sで測定した。
【0042】
すなわち、上記の硬さは食感に影響し、上記範囲にあると、咀嚼感、特に噛み切り易さ、噛み応え、口の中でのバラけ易さの3項目を同時に満たすことができる。すなわち、硬すぎて顎が疲れることもなく、口に入れた瞬間にすぐにとろけることもなく、サクサク若しくはパリパリと容易に口中で割れるようなものでもない。また、硬さはあるが硬すぎず適度な噛み応えを有している。口に入れた時は、くにゃくにゃ又はもちもちとした弾力を有しているが、噛んでいく毎に次第に柔らかくなり難なく食べられるという今までにない新しい食感を得ることができる。
【0043】
本発明による食品乾燥物を加工食品の材料としてに用いることもでき、素材本来の好ましい風味と上記食感(硬さ及び上記3項目を併せ持つ咀嚼感)を有する食品乾燥物である特徴を利用して、風味豊かで食感に優れた食品に仕上げることができる。
【0044】
本発明による食品乾燥物は、即席麺、即席スープ等に、かやく、あるいは具材として用いることもできる。
【0045】
また、本発明による食品乾燥物を食品組成物に用いることもできる。食品組成物としては、ふりかけの原材料とすることもでき、特に本発明による魚介類や肉類の食品乾燥物は加熱による香ばしい風味を付与し、ふりかけの嗜好性を向上させる。
【0046】
また、本発明による食品乾燥物に加水して煮出し、スープやダシの素材としても用いることができる。また、これ自身を珍味とすることもできる。
【実施例】
【0047】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
食品素材として水分含有率75%の釜上げ桜えびを用いて、温度80℃の熱風乾燥により、予備加熱乾燥して、水分含有率31%の収縮した桜えびを得た。
【0049】
次いで、上記の収縮した桜えび200gを相対する回転ドラムを備えたドラムドライヤー(カツラギ社製、D−0303型、ドラム径315mm、円周989mm)に常圧下で投入し、挟持しながら加熱乾燥することにより、薄板状の食品乾燥物を得た。これを図1に示す。
【0050】
ドラムドライヤーのドラム表面温度は155℃、ドラム回転数は1.75rpm、ドラム間の隙間は0.3mmに設定した。
【0051】
(比較例1)
実施例1と同じ釜上げ桜えびを用いて、温度40℃、水柱−50mmの減圧下で約10時間予備加熱乾燥を行った。その後、予備乾燥した桜えびを−15〜−20℃で凍結し、氷点下の真空タンク内で絶対圧0.1kPa以下の真空下で約15時間真空凍結乾燥を行うことにより食品乾燥物を得た。
【0052】
(比較例2)
実施例1と同じ釜上げ桜えびを用いて、実施例1において温度300℃のオーブン乾燥に変えて予備加熱乾燥を行った以外は、実施例1と同様の方法によって食品乾燥物を得た。これを図2に示す。
【0053】
(比較例3)
実施例1と同じ釜上げ桜えびを用いて、温度を45℃に変えて予備加熱乾燥を行った以外は実施例1と同様の方法によって食品乾燥物を得た。
【0054】
(比較例4)
実施例1と同じ釜上げ桜えびを用いて、水分含有率を55%に変えて予備加熱乾燥を行った以外は実施例1と同様の方法によって食品乾燥物を得た。
【0055】
(比較例5)
実施例1と同じ釜上げ桜えびを用いて、水分含有率を15%に変えて予備加熱乾燥を行った以外は実施例1と同様の方法によって食品乾燥物を得た。
【0056】
(比較例6)
実施例1と同じ釜上げ桜えびを用いて、予備加熱乾燥を行わない以外は実施例1と同様の方法によって食品乾燥物を得た。これを図3に示す。
【0057】
〔評価方法〕
実施例1、比較例1〜6によって得られた各食品乾燥物について、以下の各項目により評価した。その結果を表1に示す。
【0058】
水分含有率:食品衛生検査指針に基づく常圧加熱乾燥法(2g、105℃、5時間)に準拠し測定した。
【0059】
硬さ:得られた乾燥物を、英国Stable Micro Systems社製テクスチャーアナライザーTA−XT2型を用いて、プランジャーには直径3mmシリンダー、貫入距離5mm、圧縮速度10m/Sで測定した。
【0060】
厚み:得られた食品乾燥物を、任意の3箇所で測定した平均値を厚みとした。
【0061】
〔評価試験〕
実施例1と比較例1〜6によって得られた各食品乾燥物の官能評価試験を行った。試験はパネラー10名(男性5名、女性5名)が、以下の項目について以下の評価基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0062】
評価基準
<咀嚼感>
1.噛み切り易さ
○:簡単に噛み切ることができる
×:簡単に噛み切ることができない
2.噛み応え
○:噛み応えがある
×:噛み応えがない
3.食品乾燥物の口の中でのバラけ易さ
○:口の中でバラけ易い
×:口の中でバラけにくい
4.総合評価
○:上記1〜3のうち全て○である(×がない)
△:×が1つある
×:×が2つある
【0063】
<風味>
◎:素材本来の香ばしさ及び素材の加熱による香ばしさがある
○:素材本来の香ばしさはあるが、素材の加熱による香ばしさはない
△:素材本来の香ばしさを通り過ぎ焦げ臭が強い又は素材の生臭さがある
×:素材本来の香ばしさを通り過ぎ焦げ臭が強すぎる又は素材の生臭さが強い
【0064】
<旨み>
◎:凝集された本来の旨みが非常にある
○:比較的本来の旨みがある
△:あまり本来の旨みがない
×:全く本来の旨みがない
【0065】
<形状保持性>
◎:乾燥物に崩れがなく、目視で形を非常によく確認(判別)できる
○:乾燥物に多少崩れがあり、目視で形を確認(判別)しにくい
△:乾燥物に崩れが多く、目視で形を確認(判別)することが困難
×:乾燥物が完全に崩れていて、目視で形の確認(判別)をすることが不可能
【0066】
【表1】

【0067】
表1及び図1からわかるように、第一工程の予備加熱乾燥温度及び第一工程後の水分含有率の条件を満たしている実施例1の場合、咀嚼感、特に噛み切り易さ、噛み応え、口の中でのバラけ易さの3項目を同時に持ち、また風味、旨み及び第二工程でのドラムドライヤーによる加熱乾燥後でも、薄板状で姿見が確認できる形状保持性を有し、酒の摘みなどに要求される十分な硬さと新しい食感とを有している大変好ましい食品乾燥物が得られた。
【0068】
一方、比較例1ではドラムドライヤーを用いないため形状は保っているが、真空凍結乾燥を行っているため組織破壊が起こり、硬さが得られず、それに伴い咀嚼感、特に3項目のうち噛み応え及び口の中でのバラけ易さを得ることができなかった。また、薄板状の乾燥物を得ることもできなかった。
【0069】
比較例2〜5では評価項目全てを満たすことができず、好ましい食品乾燥物とは言えなかった。
【0070】
また、図1〜図3に示すように、ドラムドライヤーによる加熱乾燥後の食品乾燥物は、図1に示す実施例1の食品乾燥物では、素材本来の形が保持されており、同時に素材が持つ本来の色をそのまま保っており、褐変することはなかった。
【0071】
一方、図2に示す比較例2及び図3に示す比較例6の食品乾燥物では、素材本来の形が残っておらず、また素材本来の色が落ちて褐変した。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施例1におけるドラムドライヤーでの加熱乾燥後の桜えびの写真
【図2】比較例2におけるドラムドライヤーでの加熱乾燥後の桜えびの写真
【図3】比較例6におけるドラムドライヤーでの加熱乾燥後の桜えびの写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度50℃〜200℃で、食品素材中の水分含有率が20%〜50%になるように予備加熱乾燥する第一工程と、前記予備加熱乾燥によって得られた食品素材を相対する二つのドラムの間で挟持しながら、加熱乾燥させて外形形状を保持しつつ薄板状の乾燥物を得る第二工程からなることを特徴とする食品乾燥物の製造方法。
【請求項2】
相対する二つのドラム間の隙間が、0.001mm〜5.0mmであることを特徴とする請求項1記載の食品乾燥物の製造方法。
【請求項3】
第二工程で得られる乾燥物の水分含有率が、0.01〜10%であることを特徴とする請求項1又は2記載の食品乾燥物の製造方法。
【請求項4】
食品素材が、魚介類、肉類、穀類、芋類、キノコ類、野菜類、果実類のうちの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の食品乾燥物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の食品乾燥物の製造方法により得られることを特徴とする食品乾燥物。
【請求項6】
得られた食品乾燥物の下記測定方法による硬さが、0.1〜1N/mの範囲であることを特徴とする請求項5記載の食品乾燥物。
(測定方法)
英国Stable Micro Systems社製テクスチャーアナライザーTA−XT2型(プランジャー:直径3mm、シリンダー貫入距離:5mm)を用いて、圧縮速度10m/Sで測定した。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−245557(P2008−245557A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89844(P2007−89844)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000210067)池田食研株式会社 (35)
【Fターム(参考)】