説明

食品成形装置

【課題】食品素材に加わる圧力をできるだけ小さくしながら、常に一定量の食品素材を成形して送り出すことができるという相反するテーマを解決することができる食品成形装置を得る。
【解決手段】食品成形装置10は、貯留室14を含み、貯留室14内に、下ローラ18、溝ローラ20、案内ローラ26などが配置される。貯留室14に貯留された食品素材は、下ローラ18によって溝ローラ20の溝22部分に引き込まれる。そして、食品素材は、下ローラ18と溝ローラ20とで溝22の断面形状に成形されながら、貯留室14外に引き出される。貯留室14内には、センサ36が取り付けられ、貯留室14内の食品素材の量を検知して調整し、食品素材に不要な圧力が加わらないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食品成形装置に関し、特にたとえば、クッキー生地、パン生地、肉団子素材などのような粘性を有する食品素材からオカラなどのようなポーラス(まとまりのない)な食品素材まで、種々の食品素材を成形するための食品成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クッキー生地、パン生地、肉団子素材などの食品素材をたとえば一定量の板状に成形する場合、たとえば、食品素材を型に押し出す押出成形などの方法が用いられる。しかしながら、食品素材に圧力を加えると、食品素材が発熱し、色や食感、味などに影響を及ぼす場合がある。たとえば、メロンパンの生地を押出成形すると、押出前は黄色い生地であったものが、押出後には白い生地になってしまう場合がある。また、オカラなどのようなポーラスな食品素材の場合、圧力をかけて押し出すには、非常に大きな圧力をかける必要がある。
【0003】
そこで、できるだけ食品素材に圧力を加えずに成形する装置が考えられている。このような食品成形装置の一例として、図5に示すような食品成形装置1がある。この食品成形装置1は、ホッパーに投入された食品素材を搬送するためのスクリューコンベア2を含む。スクリューコンベア2の終端側には、溝付きドラム3が配置される。溝付きドラム3の外周面には、その周方向に円周溝4が形成されている。さらに、溝付きドラム3に接するようにして、底板から隆起する隆起部5が形成される。隆起部5は、スクリューコンベア2側にある上流側傾斜面と、その反対側の下流側傾斜面とを有する。そして、溝付きドラム3は、円周溝4の外側の外周面が隆起部5の下流側傾斜面に沿うように配置される。溝付きドラム3の下方には、ベルトコンベア6が配置される。そして、ベルトコンベア6の中間部には、カッター7が配置される。
【0004】
この食品成形装置1では、ホッパーに粘性を有する食品素材が投入され、スクリューコンベア2によって溝付きドラム3の位置まで食品素材が搬送される。ここで、溝付きドラム3が回転することにより、食品素材が隆起部5と溝付きドラム3とで挟まれた円周溝4に引き込まれる。引き込まれた食品素材は、回転する溝付きドラム3の円周溝4内において、隆起部5の下流側傾斜面を通ってベルトコンベア6上に引き出される。引き出された食品素材は、溝付きドラム3の円周溝4の断面形状に合わせた断面形状を有し、ベルトコンベア6で帯状に搬送される。帯状の食品素材は、カッター7で切断される。
【0005】
なお、溝付きドラム3の円周溝4内の食品素材をベルトコンベア6上に排出するために、図6に示すように、円周溝4にベルト8を掛け、ベルト8をベルトコンベア6の搬送面に沿って回転させることができる。この場合、溝付きドラム3の円周溝4内の食品素材は、ベルト8に沿ってベルトコンベア6で搬送され、ベルト8の折り返し部分でベルト8から離れて、ベルトコンベア6で搬送される。
【0006】
このような食品成形装置1では、溝付きドラム3の回転により、円周溝4内に食品素材が引き込まれるため、押出成形に比べて食品素材にあまり圧力がかからず、食品素材の変質を防止することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−329030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような食品成形装置では、溝付きドラムが回転して食品素材が円周溝部分に引き込まれるが、溝付きドラムに沿って形成される隆起部は静止しているため、ある程度食品素材を押し込まないと、食品素材が溝付きドラムの円周溝内に入り込まない。そのため、押出成形などに比べれば大幅に低い圧力ではあるが、ある程度の圧力が食品素材に加わることは避けることができない。そのために、たとえば、溝付きドラムと隆起部の上の食品素材の量をある程度多くして、その重量により食品素材が溝付きドラムの円周溝に押し込まれるようにする必要がある。このような圧力により、食品素材に何らかの変質が発生することが考えられる。また、溝付きドラムと隆起部の上の食品素材の量が少なくなると、その重量が小さくなるため、常に一定量の食品素材をベルトコンベア上に送り出すことが難しくなる。特に、ポーラスな食品素材の場合には、食品素材自体にまとまりがないため、食品素材の量が少ないと、溝付きドラムに連続して引き込まれない場合があり、一定量の食品素材を送り出すことが困難である。
【0009】
それゆえに、この発明の主たる目的は、食品素材に加わる圧力をできるだけ小さくしながら、常に一定量の食品素材を成形して送り出すことができるという相反するテーマを解決することができる食品成形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、食品素材を貯留する貯留室と、貯留室内に配置される下ローラと、下ローラに隣接して配置され、外周面に貯留室の内外に通じる溝が形成されて溝の外側における外周面が下ローラと近接する溝ローラとを含み、貯留室に貯留された食品素材側から下ローラと溝ローラとの近接部に向かって下ローラおよび溝ローラが回転する、食品成形装置である。
下ローラが回転することにより、貯留室内に貯留された食品素材が溝ローラの溝部分に引き込まれ、下ローラおよび溝ローラの回転により、食品素材が溝の形状に成形されて帯状に貯留室外に引き出される。このとき、食品素材は下ローラの回転により、溝ローラの溝に引き込まれるため、溝部分に向かって食品素材を押し込む必要はなく、食品素材に加わる圧力を極力小さくすることができる。しかも、ポーラスな食品素材も、下ローラの回転によって溝ローラの溝部分に引き込むことができる。
【0011】
このような食品成形装置において、貯留室の外側において溝ローラの溝に付着した食品素材を掻き取るための掻き取り手段を含めることができる。
溝ローラの溝に食品素材が付着して、そのまま溝ローラが回転を続けると、貯留室外に食品素材を引き出すことができないため、たとえばスクレーパなどの掻き取り手段によって、溝内の食品素材が掻き取られて貯留室外に引き出される。
【0012】
また、貯留室内において溝ローラの上方に配置され、食品素材を下ローラと溝ローラとの近接部側に案内するための案内ローラを含めてもよい。
案内ローラを回転させることにより、食品素材を下ローラと溝ローラの近接部側に案内して、溝ローラの溝部分に引き込むことができる。
【0013】
さらに、食品素材を投入するためのホッパーと、ホッパーから貯留室に食品素材を移動させるためのスクリューコンベアとを含めてもよい。
貯留室に食品素材を搬送するために、ホッパーに投入した食品素材をスクリューコンベアで搬送することができる。スクリューコンベアを用いることにより、食品素材に大きな圧力を与えることなく貯留室まで搬送することができる。
【0014】
また、貯留室内における食品素材のレベルを検知してスクリューコンベアの回転数を制御するためのセンサを含めてもよい。
貯留室内に多量の食品素材が貯留されると、それ自体の重量で圧力が加わるため、食品素材が多量に貯留されないように、スクリューコンベアの回転数が制御される。
【0015】
さらに、下ローラと溝ローラによって貯留室から引き出された食品素材を搬送するためのベルトコンベアを含めてもよい。
ベルトコンベアを用いることにより、下ローラと溝ローラによって貯留室から引き出された帯状の食品素材を搬送することができる。
【0016】
また、ベルトコンベアで搬送される食品素材を切断するための切断装置を含めてもよい。
ベルトコンベア上には、下ローラと溝ローラとで引き出された帯状の食品素材が載置されているため、切断装置を用いて適当な大きさに切断することができる。
【0017】
さらに、ベルトコンベア上に食品粉体を撒布するための粉体撒布装置を含めてもよい。
粉体撒布装置を用いて、小麦粉や片栗粉などの食品粉体をベルトコンベア上に撒布することにより、引き出された食品素材がベルトコンベアに付着するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、食品素材が押し出されるのではなく、下ローラと溝ローラとで引き込まれて、貯留室外に引き出されるため、食品素材に大きい圧力がかかることを防止することができる。そのため、食品素材が発熱したりせず、食品素材の変質を防止することができる。そのため、最終的に得られる食品は、所望の食感や味を有するものとすることができる。しかも、ポーラスな食品素材についても、下ローラと溝ローラとで引き込むことができ、大きな圧力を加えることなく、常に一定量の食品素材を送り出すことができる。
【0019】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の食品成形装置の一例を示す図解図である。
【図2】図1に示す食品成形装置の内部構造を示す図解図である。
【図3】図1に示す食品成形装置のホッパーとスクリューコンベアとを示す図解図である。
【図4】この発明の食品成形装置の他の例を示す図解図である。
【図5】従来の食品成形装置の一例を示す図解図である。
【図6】図5に示す従来の食品成形装置の一部の詳細を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、この発明の食品成形装置の一例を示す図解図である。食品成形装置10は、後述の食品素材が移動する向きである長手方向と、長手方向と直交する幅方向と、長手方向および幅方向の両方に直交する高さ方向とを有する基台12を含む。基台12は、たとえば、ステンレス製の鋼材などを溶接することによって形成される。基台12の長手方向の一端側には、貯留室14が形成される。貯留室14は、食品素材を貯留して、後述のベルトコンベア上に引き出すためのものである。貯留室14は、たとえば図2に示すように、底板16を含み、底板16上に基台12の幅方向に平行に配置される下ローラ18が形成される。
【0022】
基台12の長手方向において、下ローラ18に対してさらに基台12の端部側には、下ローラ18の斜め上方に隣接して溝ローラ20が配置される。溝ローラ20は、下ローラ18と同じ幅を有し、下ローラ18とそれぞれの軸が平行に配置される。溝ローラ20の外周面には、その周方向に貯留室14の内外に通じる溝22が全周にわたって形成される。溝ローラ20は、溝22の両側における外周面22aが下ローラ18と近接するように配置される。したがって、下ローラ18と溝ローラ20の近接部において、溝22内における溝ローラ20の外周面22b(溝22の底面)と下ローラ18の外周面との間に、成形される食品素材の断面形状に近似し、かつ溝22の深さに相当する隙間が形成される。
【0023】
また、下ローラ18と溝ローラ20の近接部の上側において、この近接部近傍でこれらの下ローラ18の周面と溝ローラ20の周面とが向き合い、この部分に食品素材が貯留される。そして、図2に矢印で示すように、貯留された食品素材側から下ローラ18と溝ローラ20の近接部側に向かって(図2においては、下ローラ18が反時計回りに、溝ローラ20が時計回りに)これらのローラ18,20が回転することにより、貯留された食品素材が下ローラ18によって溝ローラ20の溝22に引き込まれる。下ローラ18および溝ローラ20は、たとえばステンレス鋼などの腐食しにくい金属で円筒状に形成され、その両端部に十字状のスポーク部18a,20cが形成される。そして、これらのスポーク部18a,20cの中心に、軸18b,20dが挿通される。なお、取り扱う食品素材の種類によっては、下ローラ18および溝ローラ20は、合成樹脂などで形成されてもよく、その直径も食品素材に合わせて適宜調整することができる。
【0024】
下ローラ18と溝ローラ20の近接部の下側には、下ローラ18および溝ローラ22と同じ幅を有し、下ローラ18および溝ローラ22と平行に配置される第1の沿面部材24が形成される。第1の沿面部材24は、下ローラ18の円弧状の外周面に沿う円弧状の側面24aと、溝22の両側における溝ローラ20の円弧状の外周面22aに沿う円弧状の側面24bとを含む。そして、溝22内における溝ローラ20の外周面22bと第1の沿面部材24の側面24bとの間に、溝22の深さに相当する隙間が形成される。第1の沿面部材24の側面24aは、下ローラ18と溝ローラ20の近接部から始まり、この近接部と下ローラ18の最下点との中間部まで形成される。また、第1の沿面部材24の側面24bは、下ローラ18と溝ローラ20の近接部から始まり、溝ローラ20の最下点付近まで形成される。
【0025】
また、貯留室14内において、溝ローラ20の基台12側の斜め上方に近接し、かつ下ローラ18のほぼ上方において下ローラ18と間隔を隔てた位置に、案内ローラ26が形成される。案内ローラ26は、下ローラ18および溝ローラ20と同じ幅に形成され、下ローラ18および溝ローラ20と平行に配置される。また、案内ローラ26は、たとえば合成樹脂などで形成されて、その中心部に軸26aが挿通される。
【0026】
溝ローラ20と案内ローラ26の近接部の上方には、第2の沿面部材28が形成される。第2の沿面部材28は、溝ローラ20および案内ローラ26と同じ幅に形成され、溝ローラ20および案内ローラ26と平行に配置される。第2の沿面部材28は、溝22の両側における溝ローラ20の円弧状の外周面22aに沿う円弧状の側面28aを含み、この側面28aと溝22内における溝ローラ20の外周面22bとの間に溝22の深さに相当する隙間が形成される。また、第2の沿面部材28は、案内ローラ26の円弧状の外周面に沿う円弧状の側面28bを含む。第2の沿面部材28の側面28aは、溝ローラ20と案内ローラ26の近接部から始まり、この近接部と溝ローラ20の最高点との中間部まで形成される。さらに、第2の沿面部材28の側面28bは、溝ローラ20と案内ローラ26の近接部から始まり、この近接部と案内ローラ26の最高点との中間部まで形成される。
【0027】
下ローラ18、溝ローラ20、案内ローラ26は、基台12の幅方向の両側、つまり底板16の両側において平行に配置される2つの側壁30を貫通する軸18b,20d,26aによって支持される。これらの軸18b,20d,26aは、一方の側壁30の外側に形成される駆動装置32に接続され、この駆動装置32によって、下ローラ18、溝ローラ20および案内ローラ26が回転させられる。なお、溝ローラ20と案内ローラ26とは、ギア結合などにより一定の周速比で駆動され、下ローラ18は、溝ローラ20および案内ローラ26とは独立して駆動される。また、第1の沿面部材24および第2の沿面部材28は、一方の側壁30に固定して形成される。
【0028】
また、2つの側壁30の間において、基台12の長手方向における溝ローラ20の反対側には、底板16から直立するように端部壁34が形成され、底板16、下ローラ18、溝ローラ20、案内ローラ26、側壁30および端部壁34で囲まれた空間が、貯留室14を形成する。さらに、側壁30には、貯留室14内の食品素材のレベルを検知するためのセンサ36が取り付けられる。
【0029】
さらに、基台12上には、基台12の長手方向の他端側に、貯留室14に搬送される食品素材を投入するためのホッパー38が形成される。ホッパー38から貯留室14まで、基台12の長手方向に沿って搬送路40が形成される。ホッパー38から搬送路40にわたって、図3に示すように、スクリューコンベア42が形成される。スクリューコンベア42は、ホッパー38に隣接する駆動装置44によって駆動される2本のスクリューで構成される。そして、これらのスクリューが回転することによって食品素材が搬送される。ここで、スクリューの回転数を変化させることにより、単位時間当たりの食品素材の搬送量を変えることができる。なお、スクリューコンベア42の代わりに、ベルトコンベアを用いて、ホッパー38から貯留室14まで食品素材を搬送してもよく、この場合、ベルトコンベアの速度を調整することにより、単位時間当たりの食品素材の搬送量を変えることができる。
【0030】
搬送路40の終端部には、貯留室14内に突出するようにして、上下に間隔を隔てて配置される2枚の案内板46が取り付けられる。これらの案内板46は、下ローラ18とほぼ同じ幅に形成される。スクリューコンベア42で搬送されてきた食品素材は、下の案内板46の上を通って貯留室14内の下ローラ18上に導かれるが、下の案内板46は、その上に食品素材が滞留しないように、食品素材が流れる方向においてはできるだけ短くすることが好ましい。また、上の案内板46は、搬送されてきた食品素材の上面の凹凸を均して、センサ36で食品素材の量を誤検知しないようにするためのものである。したがって、上の案内板46の代わりに、たとえば小径のローラを設けて、ローラで食品素材の上面を均してもよく、このとき、ローラを回転させることにより、食品素材の移動を促して、下の案内板46上に食品素材が滞留するのを防止することができる。
【0031】
また、貯留室14の外側において、溝22内における溝ローラ20の外周面22bに押し付けられるようにして、鋭角の先端部を有する合成樹脂などで形成されたスクレーパ48が取り付けられる。このスクレーパ48は、溝ローラ20の溝22に付着した食品素材を掻き取るための掻き取り手段として用いられる。
【0032】
スクレーパ48が取り付けられた溝ローラ20の下方から基台12の長手方向に続いて延びるように、ベルトコンベア50が配置される。ベルトコンベア50の中間部には、切断手段としてのカッター52が配置される。
【0033】
この食品成形装置10を使用する場合、ホッパー38に、たとえば、パン生地、クッキー生地、肉団子素材などの粘性を有する食品素材食品素材や、オカラなどのようなポーラスな食品素材が投入される。
【0034】
ホッパー38に投入された食品素材は、スクリューコンベア42によって、搬送路40を搬送されて、貯留室14の下ローラ18上に貯留される。貯留室14においては、図2の矢印に示すように、下ローラ18と溝ローラ20とが、互いに逆方向、つまり、貯留室14の内側において、貯留された食品素材側からローラ18,20の近接部に向かって回転している。下ローラ18および溝ローラ20は、それぞれのローラ18,20の周速度が等しくなるように同期して駆動されるが、食品素材の種類によっては、下ローラ18のほうが溝ローラ20よりも速く回転させられる。また、案内ローラ26は、溝ローラ20と同じ方向、つまり、図2の矢印に示すように、貯留室14内において、溝ローラ20との近接部に向かって回転している。案内ローラ22の周速度は、溝ローラ20の周速度よりも速く、たとえば溝ローラ20の周速度の1.1〜1.2倍程度に設定される。
【0035】
下ローラ18が回転することにより、貯留室14に貯留する食品素材が溝ローラ20の溝22部分に引き込まれる。そして、下ローラ18と溝ローラ20との間に挟まれた食品素材は、溝ローラ20と第1の沿面部材24との間に送られる。溝ローラ20の回転とともに溝22内を移動した食品素材は、溝22の断面形状を有する帯状にベルトコンベア50上に引き出される。
【0036】
貯留室14内において、溝ローラ20の上方に移動した食品素材は、案内ローラ26の回転によって、下ローラ18と溝ローラ20の近接部に向かって戻される。案内ローラ26に付着した食品素材は、第2の沿面部材28で掻き取られ、掻き取られた食品素材は、溝ローラ20の回転によって下ローラ18と溝ローラ20の近接部に向かって運ばれる。なお、食品素材の特性や量などによって、食品素材が上方に移動することがない場合には、案内ローラ26は設けられなくてもよい。
【0037】
貯留室14内の食品素材のレベルは、センサ36で検知される。センサ36が検知した食品素材のレベルに応じて、スクリューコンベア42の回転数が制御される。つまり、貯留室14内の食品素材のレベルが所定のレベルより高い場合、スクリューコンベア42の回転数は減らされ、食品素材の搬送量が減らされる。反対に、貯留室14内の食品素材のレベルが所定のレベルより低い場合、スクリューコンベア42の回転数は上げられ、食品素材の搬送量が増やされる。スクリューコンベア42の回転数制御は、たとえばインバータによって、スクリューコンベア42のための駆動装置44に設けられたモータの電源周波数を制御することにより行うことができる。このようにして、貯留室14内の食品素材の量が制御される。
【0038】
ベルトコンベア50は、食品素材の引き出し速度に同期した速度で運転される。したがって、貯留室14から引き出された食品素材は、ベルトコンベア50によって帯状に搬送される。帯状の食品素材は、カッター52で所定の大きさに切断される。なお、貯留室14から引き出される食品素材の量を調整するために、溝ローラ20の溝22の幅や深さを調整することができる。また、溝ローラ20の外周面に複数の溝22が形成されてもよい。食品素材の所望の形状がカッター52で切断された形状でない場合、ベルトコンベア50の後段に、二次成形機を設置してもよい。たとえば、食品素材が肉団子素材である場合、最終的に球形に近い形状の食品素材が求められるため、カッター52で切断された食品素材を丸めるための二次成形機が設置される。
【0039】
この食品成形装置10では、貯留室14内において、下ローラ18が食品素材を溝ローラ20の溝22部分に引き込んで、食品素材が溝22の形状に成形される。そして、食品素材は、下ローラ18と溝ローラ20とで引き込まれて、貯留室14の外に引き出される。そのため、食品素材には、押出成形のような大きい圧力が加わらない。また、下ローラ18で食品素材が溝ローラ18の溝22部分に引き込まれるため、図5や図6に示すような下ローラのない食品成形装置に比べて、溝22部分に食品素材を押し込むために貯留室14に多くの食品素材を貯留する必要はない。したがって、食品素材に加わる圧力を小さくしながら、溝ローラ20の溝22部分に食品素材を引き込むことができる。また、オカラなどのようなポーラスな食品素材についても、下ローラ18の回転により、溝ローラ20の溝22部分に引き込むことができる。したがって、ポーラスな食品素材についても、大きな圧力を加えることなく、常に一定量の食品素材を送り出すことができる。
【0040】
なお、できるだけ食品素材に圧力を加えないために、貯留室14に貯留される食品素材の量が少なくなるように制御される。さらに、貯留室14内に多量の食品素材が貯留されると、下ローラ18および溝ローラ20の回転により、食品素材に脈流が発生する場合がある。このような脈流により、食品素材が練られて、本来の食感が得られない場合がある。そこで、搬送されてきた食品素材は、できるだけはやく下ローラ18と溝ローラ20で引き込むことにより、食品素材に発生する脈流の影響を小さくすることができる。したがって、センサ36で検知される食品素材は、貯留室14内において、できるだけ低いレベルを保つように制御されることが好ましい。
【0041】
このように、この食品成形装置10を用いることにより、食品素材にほとんど圧力を加えることなく、食品素材の成形を行なうことができる。そのため、食品素材が発熱せず、食品素材の変質を防止することができる。したがって、この食品成形装置10を用いることにより、食品素材本来の味、色、食感などを保ちながら、最終的な食品を製造することができる。しかも、オカラなどのようなポーラスな食品素材についても、大きな圧力を加えることなく、常に一定量を送り出すことができる。
【0042】
なお、図4に示すように、ベルトコンベア50を貯留室14の下方を超えるように長く形成し、その上流側に小麦粉や片栗粉などの食品粉体を撒布するための粉体撒布装置54を設置してもよい。このように、ベルトコンベア50上に食品粉体を撒布することにより、貯留室14から引き出された食品素材がベルトコンベア50に付着することを防止することができる。なお、図4においては、下ローラ18と溝ローラ20とをほぼ同じ高さに配置して、貯留室14の下部にベルトコンベア50を配置するスペースを確保している。このように、下ローラ18と溝ローラ20との位置関係は、必要に応じて変更することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 食品成形装置
14 貯留室
18 下ローラ
20 溝ローラ
22 溝
26 案内ローラ
36 センサ
38 ホッパー
40 搬送路
42 スクリューコンベア
46 案内板
48 スクレーパ
50 ベルトコンベア
52 カッター
54 粉体撒布装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品素材を貯留する貯留室、
前記貯留室内に配置される下ローラ、および
前記下ローラに隣接して配置され、外周面に前記貯留室の内外に通じる溝が形成されて前記溝の外側における外周面が前記下ローラと近接する溝ローラを含み、
前記貯留室内に貯留された前記食品素材側から前記下ローラと前記溝ローラとの近接部に向かって前記下ローラおよび前記溝ローラが回転する、食品成形装置。
【請求項2】
前記貯留室の外側において前記溝ローラの溝に付着した前記食品素材を掻き取るための掻き取り手段を含む、請求項1に記載の食品成形装置。
【請求項3】
前記貯留室内において前記溝ローラの上方に配置され、前記食品素材を前記下ローラと前記溝ローラとの近接部側に案内するための案内ローラを含む、請求項1または請求項2に記載の食品成形装置。
【請求項4】
前記食品素材を投入するためのホッパーと、前記ホッパーから前記貯留室に前記食品素材を移動させるためのスクリューコンベアとを含む、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の食品成形装置。
【請求項5】
前記貯留室内における前記食品素材のレベルを検知して前記スクリューコンベアの回転数を制御するためのセンサを含む、請求項4に記載の食品成形装置。
【請求項6】
前記下ローラと前記溝ローラによって前記貯留室から引き出された前記食品素材を搬送するためのベルトコンベアを含む、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の食品成形装置。
【請求項7】
前記ベルトコンベアで搬送される前記食品素材を切断するための切断装置を含む、請求項6に記載の食品成形装置。
【請求項8】
前記ベルトコンベア上に食品粉体を撒布するための粉体撒布装置を含む、請求項6または請求項7に記載の食品成形装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate