説明

食品用フィルムケース

【課題】例えば、弁当箱内において副食品の収容に用いられる食品用フィルムケースに関して、環境保護や食品の安全性の向上を低コストで図る上で非常に有益であるのに加え、ブロッキング防止用の処理を不要あるいは片面のみとすることができる食品用フィルムケースを提供すること。
【解決手段】ケース本体3に、水性インキを用いた印刷4が施されている。また、前記印刷を覆う状態でケース本体3に接着されるフィルム体が設けられていてもよく、さらに、前記ケース本体4とフィルム体との接着に、非溶剤系の接着剤が用いられていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、弁当箱内において副食品の収容に用いられる食品用フィルムケースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストア等で販売されている弁当には、副食等の食品がフィルムケース内に収容された状態で入っていることが多く、このフィルムケースには、必要な表示を行ったり外観を良くする等の目的で印刷が施されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−328552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記印刷に用いられるインキは、トルエン、酢酸エチル、MEK(メチルエチルケトン)等の石油系の有機溶剤(揮発性溶剤)を含んだ油性インキが広く使用されており、前記フィルムケースに印刷を施す工程等で揮発した有機溶剤が環境汚染を引き起こすことが懸念されている。この有機溶剤による環境汚染を防止するには、フィルムケースの工場等を高度の気密性を備えた構造にして有機溶剤が外部に漏出しないようにすると共に、工場等の作業環境内に漏出した有機溶剤を確実に回収するための対策を講じなければならないが、それらを実施するには多くの費用や時間がかかり実現するのはかなり困難である。
【0005】
また、前記印刷は、フィルムケースの内側に収容された状態の食品が接触しないようにフィルムケースの外側面に施されているが、例えば前記弁当がその運搬中に傾いて前記食品が印刷に接触することがあり、その結果、食品内に残留した有機溶剤が食品の品質等に影響を及ぼすおそれもある。上記のことから、現在では、前記有機溶剤の使用自体を規制する動きが国、自治体レベルで活発化している。
【0006】
一方、前記印刷を施した面をフィルム体で覆ったフィルムケースがあり、このフィルムケースを用いれば弁当内の食品が印刷に直接接触することが前記フィルム体によって防止され、残留溶剤の問題が解決されると考えられてきた。しかし、最新の検出器により従来は計測できなかったレベル(IPPMの単位)まで計測できるようになった結果、フィルムケースとフィルム体との間に密閉されているはずの印刷からかなりの量の有機溶剤が流出し、食品に混入している可能性が否定できなくなっているのが実状である。
【0007】
上記のように有機溶剤が流出するのは、有機溶剤がフィルム体を通過するのみならず、フィルムケースの成型時に発生する多数のピンホールを通って直接流出することが原因と考えられており、フィルム体に付着した食品の油分が前記流出をさらに加速させる危険性も指摘されている。しかも、前記フィルムケースは電子レンジで弁当ごと温められる場合もあり、そのように加熱を行った場合には、前記フィルムケースに施されている印刷を形成する有機溶剤が揮発し、より多量の有機溶剤が食品中に残留することとなる。以上のことから明らかなように、フィルム体を設けたフィルムケースを用いても有機溶剤により食品の安全性が損なわれるおそれがあった。
【0008】
また、上記フィルム体を設けたフィルムケースでは、有機溶剤が前記インキに含まれているだけでなく、フィルムケースにフィルム体を接着するための接着剤にも含まれていることがあり、この場合、フィルムケースの印刷工程、ラミネート工程、加熱成形工程等の種々の工程や弁当の加熱時に、揮発する有機溶剤の量が増大することになる。従って、それだけ、環境保護や食の安全の面で向上を図るのに不都合となっていた。
【0009】
さらに、前記フィルムケースは、複数枚が一度に加熱成型され、このとき複数枚のフィルムケースは積層状態となっているため、その離型性が低いといわゆるブロッキング(重なったフィルムケースが互いに剥がれない不具合)が生じる。そこで、特許文献1に示すように、各フィルムケースをコロナ放電処理することで離型性を向上させることも考えられるが、この場合、フィルムケースの表裏両面のそれぞれにブロッキング防止のためのコロナ放電処理を行わなければならない。
【0010】
この発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、環境保護や食品の安全性の向上を低コストで図る上で非常に有益であるのに加え、ブロッキング防止用の処理を不要あるいは片面のみとすることができる食品用フィルムケースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、この発明の食品用フィルムケースは、ケース本体に、水性インキを用いた印刷が施されていることを特徴としている(請求項1)。
【0012】
また、前記印刷を覆う状態でケース本体に接着されるフィルム体が設けられていてもよい(請求項2)。
【0013】
さらに、前記ケース本体とフィルム体との接着に、非溶剤系の接着剤が用いられていてもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、印刷を水性インキによって施し、有機溶剤を含む油性インキを用いないので、有機溶剤による環境汚染や食品の残留溶剤の問題が解消され、環境保護や食品の安全性の向上を低コストで図る上で非常に有益である食品用フィルムケースが得られる。また、この発明では、水性インキを施すことにより離型性が向上し、ひいてはブロッキング防止用の処理が不要となる。
【0015】
請求項2に係る発明では、印刷をフィルム体で覆うので、食品が印刷に直接接触する可能性がなくなり、食品の品質や安全性を大いに高めることができる食品用フィルムケースが得られる。
【0016】
請求項3に係る発明では、ケース本体とフィルム体とを接着する接着剤が非溶剤系であり、有機溶剤を含む接着剤を用いる必要がないので、上記の効果に加えて、環境保護や食品の安全性の向上を低コストで図る上での有益性が極めて高い食品用フィルムケースを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の第1の実施の形態に係る食品用フィルムケースの構成を概略的に示す説明図である。
【図2】この発明の第2の実施の形態に係る食品用フィルムケースの構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、この発明の第1の実施の形態に係る食品用フィルムケース(以下、フィルムケースという)の構成を概略的に示す説明図である。前記フィルムケースは、後述するような材料からなるフィルムを用いて形成され副食等の食品の収容に用いられるものであって、収容する食品の性状に合わせて強度(可撓性)、大きさ、撥水性能等を適宜に有している。そして、前記フィルムケースは、平面視ほぼ円形状で水平に延びる底部1と、この底部1の周縁から立ち上がる波板状の側壁部2とからなるケース本体3を備えている。
【0019】
ここで、前記ケース本体3を構成する材料は、ケース本体3の内側に収容する副食等の食品の品質に影響を及ぼすことがなく、経済性、耐熱性、保型性などの点で優れていることが好ましい。そのような材料としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)やOPS(二軸延伸ポリスチレン)等の合成樹脂が挙げられ、さらに環境保護を考慮すると生分解性プラスチックの中にも使用可能なものがあるがポリ乳酸など植物由来のものは特に望ましい。
【0020】
また、図1に示すように、前記ケース本体3の外側面(下側面)には水性インキを用いた水性印刷(水性グラビア印刷)4が施されている。具体的には、前記水性印刷4は、水溶性アクリル、水溶性ウレタン樹脂を主成分とするインキ樹脂と、水および若干のアルコールを含む溶剤とを用いて施されている。従って、前記水性印刷4に、トルエン、酢酸エチル、MEK等の石油系の有機溶剤は殆ど含まれていない。
【0021】
なお、前記水性インキに硬化剤を混合してもよく、この場合には、水性印刷4がより剥がれにくくなるとともに、その耐熱性も向上してブロッキング防止に役立つ。このブロッキング防止効果は、PETに比べて耐熱性が低くブロッキングを起こしやすいOPPによってケース本体3が成形されているような場合に特に好適に発揮される。
【0022】
ここで、前記水性印刷4を適宜に覆ってもよく、以下、そのように構成した第2の実施の形態に係るフィルムケースについて述べる。
【0023】
図2は、この発明の第2の実施の形態に係るフィルムケースの構成を概略的に示す説明図である。なお、図1に示したものと同一または同等の部材等については同じ符号を付し、その説明を省略する。図2に示すように、第2の実施形態のフィルムケースは、前記水性印刷4を覆う状態でケース本体3に接着されるフィルム体5を備え、ケース本体3とフィルム体5との接着に、非溶剤系の接着剤6が用いられている。
【0024】
詳述すると、前記フィルム体5は、たとえばPETあるいはOPPあるいはOPSからなり、その組み合わせは用途等により適宜選択されるものであり、ケース本体3の外側面全体を覆うように構成されている。
【0025】
また、前記接着剤6を用いて行うケース本体3とフィルム体5とのラミネート方法としては、通常のドライラミネートではなく、ノンソル(non−solvent)ラミネートや水性ラミネートの他、サーマルラミネートを採用することが好ましい。
【0026】
さらに、ブロッキング防止用の処理として、フィルム体5の下面はマット加工されている。このマット加工は、シリカ(珪素)で処理するものであり、公知の加工であることからその詳しい説明は省略する。
【0027】
なお、本発明は上記の実施形態に限られず、種々に変形して実施することができる。具体的には、前記ケース本体3には種々の形状のものを採用することができ、例えば、底部1の平面視はほぼ円形状に限られず、矩形状、楕円形状等であってもよい。また、側壁部2も全部ではなく一部が波板状となっていてもよい。
【0028】
また、前記ケース本体3は、合成樹脂からなるものに限られず、紙(和紙等)やアルミ箔及びそれらの複合体からなっていてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 底部
2 側壁部
3 ケース本体
4 印刷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体に、水性インキを用いた印刷が施されていることを特徴とする食品用フィルムケース。
【請求項2】
前記印刷を覆う状態でケース本体に接着されるフィルム体が設けられている請求項1に記載の食品用フィルムケース。
【請求項3】
前記ケース本体とフィルム体との接着に、非溶剤系の接着剤が用いられている請求項2に記載の食品用フィルムケース。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−6152(P2011−6152A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175153(P2010−175153)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【分割の表示】特願2005−146734(P2005−146734)の分割
【原出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(591275296)株式会社シンメイ (2)
【出願人】(301063083)株式会社トップ堂 (1)
【Fターム(参考)】