説明

食品用添加剤及びそれを含有する食品、並びに該食品の製造方法

【課題】 本発明は、高級不飽和脂肪酸化合物又はそれを含む油脂からなり、高温条件でも酸化を受けにくい食品用添加剤を供給することを課題とし、更に該食品用添加剤を含む食品及びその製造方法を供給することを課題とする。
【解決手段】 本発明の食品用添加剤は、親水性媒体中で食品を加熱する際に用いられる食品用添加剤であって、高級不飽和脂肪酸化合物又はそれを含む油脂と、親油性界面活性剤とを含有する油性組成物からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品用添加剤に関し、詳しくは高級不飽和脂肪酸化合物又をこれを含む油脂を含有する食品用添加剤、該食品用添加剤を含有する食品、及び該食品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準」(2005年度版、第一出版社)によると、n−3系脂肪酸〔α−リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等〕は、国民の健康の維持、増進に大きな役割を果たすとともに、生活習慣病の予防等に対して優れた生理作用を示すことから、その摂取基準が示されている。それによると、1日の摂取基準量は、1~9才:平均1〜2g、9才以上:平均2〜2.9gである。
【0003】
n−3系脂肪酸は、主に魚介類、特に、まぐろ、サンマ、イワシ等に含まれているが、その基準量をその魚介類のみから毎日食事により摂取しようとすると、非常に困難である。しかも、日本人の中には、魚嫌いの人が人口の40%程度いるといわれており、このような人にとっては、その摂取基準量を食事のみによって摂取することは、殆ど不可能である。
【0004】
n−3系脂肪酸を摂取するための有効な方法の一つは、食事による方法であるが、他の有効な方法として、n−3系脂肪酸をグリセリンエステルとして含む油脂を摂取する方法である。この場合の有効な方法の一つとして、該油脂を主食である御飯に混ぜて摂取する方法がある。しかし、この場合には、n−3系脂肪酸は2重結合を有し、非常に酸化されやすいため、炊飯時における高温条件での酸化を受け、得られた炊飯米には、不快臭が発生するという問題がある。更に、このようにして得られた炊飯米には、不快臭が空気中を漂って来ることはないが、食すると口の中に不快臭が発生する(以下、不快味ともいう)という問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平11−009187号公報
【特許文献2】特開平08−073351号公報
【特許文献3】特開平07−017855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な課題は、以下の通りである。
(1)高級不飽和脂肪酸化合物又はそれを含む油脂からなり、高温条件でも酸化を受けにくい食品用添加剤を供給すること。
(2)該食品用添加剤を含む食品及びその製造方法を供給すること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の食品用添加剤及びそれを含む食品、更に該食品の製造方法が提供される。
〔1〕親水性媒体中で食品を加熱する際に用いられる食品用添加剤であって、高級不飽和脂肪酸化合物又はそれを含む油脂類と、親油性界面活性剤とを含有する油性組成物からなることを特徴とする食品用添加剤。
〔2〕親水性媒体中で食品を加熱する際に用いられる食品用添加剤であって、高級不飽和脂肪酸化合物又はそれを含む油脂類と、親油性界面活性剤と、親水性界面活性剤とを含有する油性組成物からなることを特徴とする食品用添加剤。
〔3〕該親水性界面活性剤が、モノラウリン酸デカグリセリンであることを特徴とする前記〔2〕に記載の食品用添加剤。
〔4〕該高級不飽和脂肪酸化合物が、n−3系脂肪酸化合物であることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の食品用添加剤。
〔5〕 該親油性界面活性剤が、ジグリセリンモノオレイン酸エステルであることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の食品用添加剤。
〔6〕該油脂が魚油からなることを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の食品用添加剤。
〔7〕植物油を含有することを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の食品用添加剤。
〔8〕該植物油がナタネ油であることを特徴とする前記〔7〕に記載の食品用添加剤。
〔9〕ポリフェノール化合物を含有することを特徴とする前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の食品用添加剤。
〔10〕トレハロースを含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の食品用添加剤。
〔11〕前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の食品用添加剤を含有する食品。
〔12〕該食品が炊飯米であることを特徴とする前記〔11〕に記載の食品。
〔13〕親水性媒体中で食品を加熱する際に、該親水性媒体中に、前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の食品用添加剤を添加することを特徴とする食品の製造方法。
〔14〕該親水性媒体と接触する器具表面が、茶抽出液を含む洗浄水で洗浄処理されていることを特徴とする前記〔13〕に記載の食品の製造方法。
〔15〕該洗浄水が熱水であることを特徴とする前記〔14〕に記載の食品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、α−リノレン酸、DHA、EPA等のn−3系脂肪酸(高級不飽和脂肪酸化合物)を含有し、しかも不快臭がなければ不快味もない食品を与える食品用添加剤、それを含む食品及び該食品の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の食品用添加剤(以下、単に添加剤ともいう)は、親水性媒体(水や親水性栄養成分が溶解した水性液等)中で食品を加熱する際に用いられる食品用添加剤である。このものには、添加剤(I)と添加剤(II)の二通りの態様がある。添加剤(I)は、高級不飽和脂肪酸化合物又はそれを含む油脂と、親油性界面活性剤(L)とを含有する油性組成物からなる。そして、添加剤(II)は、高級不飽和脂肪酸化合物又はそれを含む油脂と、親油性界面活性剤(L)と、親水性界面活性剤(H)とを含有する油性組成物からなる。
【0010】
本発明の添加剤(I)、(II)は水を含むことができ、その量は0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%、より好ましくは0〜2重量%である。
【0011】
本発明の添加剤(I)及び添加剤(II)は、高級不飽和脂肪酸化合物又はそれを含む油脂(以下、これらを油性物質ともいう)を含有するものである。
本発明で用いる油性物質を構成する高級不飽和脂肪酸化合物は、カルボキシル基(−COOH)またはエステル基(−COOR、R:アルコール残基)を有するものであり、該高級不飽和脂肪酸化合物において、その不飽和脂肪酸の炭素数は8〜30、好ましくは12〜24、より好ましくは16〜22である。該不飽和脂肪酸に含まれる2重結合の数は、特に制限されないが、少なくとも1つ、好ましくは2〜8、より好ましくは4〜6である。
【0012】
このような高級不飽和脂肪酸化合物には、高級不飽和脂肪酸自体の他、その炭素数1〜6、好ましくは炭素数2〜4の一価アルコールエステル(例えば、エチルアルコールエステル)、炭素数2〜6のアルキレングリコールエステル(例えば、エチレングリコールのモノ又はジエステル)、三価以上の多価アルコールのモノ−、ジ−又はトリ−エステル等が包含される。
【0013】
前記高級不飽和脂肪酸化合物(エステル)を構成する多価アルコールには、糖アルコールの他、グリセリンや、そのグリセリンの複数(2以上、好ましくは3〜10)が重合して形成されるポリグリセリンが包含される。この場合のポリグリセリンにおいて、その重合度の上限は特に制限されないが、通常16程度である。
【0014】
該高級不飽和脂肪酸化合物において、その高級不飽和脂肪酸の具体例を示すと、α−リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)等のn−3系脂肪酸の他、リノール酸、オレイン酸、エライジン酸、リノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。これらの中では、n−3系脂肪酸が好ましい。
【0015】
前記高級不飽和脂肪酸化合物は、植物油や動物油等の油脂(脂肪酸トリグリセロイド)との混合物油脂であることができる。自然界には、該高級不飽和脂肪酸トリグレセリドを含む動植物油(油脂)が存在するが、本発明では、このような油脂を添加剤原料として好ましく用いることができる。このような油脂としては、例えば、マグロ油や、サバ油、サンマ油、イワシ油等の魚油、その他にはオリーブ油、大豆油、ナタネ油、ヒマシ油、コーン油、アマニ油、牛脂、綿実油、ココナッツ油、メンハーディン油、シソ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、硬化油、キリ油等が挙げられる。
【0016】
本発明では、このような油脂に、濾過、蒸留、その他の精製処理を施して、本発明の添加剤原料として有利に用いることができる。本発明では、n−3系脂肪酸を含む油脂の使用が好ましいが、このような油脂中に含まれるn−3系脂肪酸の含有量は、通常、10〜50重量%、好ましくは15~35重量%程度である。
【0017】
本発明の添加剤(I)を構成する油性組成物は、高級不飽和脂肪酸化合物又はそれを含む油脂(油性物質)の他、親油性界面活性剤(L)を含有し、本発明の添加剤(II)を構成する油性組成物は、油性物質の他、親油性界面活性剤(L)と親水性界面活性剤(H)とを含有する。
【0018】
本発明の添加剤(I)及び(II)は前記油性物質と共に親油性界面活性剤(L)を含有する。親油性界面活性剤(L)は、添加剤主成分である高級不飽和脂肪酸化合物又はそれを含む油脂(油性物質)に対し、溶解性ないし混和性を有するものである。即ち、油性物質と良くなじむ性質を有するので、油性物質を包み込み、油性物質の水に対する分散性を向上させ、さらに油性物質を食品中に浸透させる性質を有するものである。従って、親油性界面活性剤(L)が添加されていると、親水性媒体を加熱することにより食品を製造する際に、水と共に油性物質が加熱対流し、油性物質が水中に沈むことにより、空気中の酸素と接触しなくなくなるので、高級不飽和脂肪酸化合物の酸化による不快臭の発生が防止される。更に、油性物質が食品の中に浸透するので、食品の栄養価が向上し、食品の中に包み込まれた油性物質はさらに酸化されにくくなる。
【0019】
本発明で用いる親油性界面活性剤(L)は、従来公知のもの、例えば、炭素数12〜30の〔脂肪酸残基(アルキル基やアルケニル基)を含む〕グリセリン(ポリグリセリンを含む)エステルやショ糖の高級脂肪酸エステル等が挙げられ、これらの中の親油性に富むものが選択される。該油性物質に対して、該親油性界面活性剤(L)は可溶性を示す。また、該親油性界面活性剤のHLB値は、通常、10以下、好ましくは8以下であり、その下限値は、特に制約されないが、通常1程度である。
【0020】
本発明で用いられる該親油性界面活性剤(L)としては、例えば、下記(1)式で表されるジグリセリンモノ脂肪酸エステルが好ましく用いられる。
【化1】

前記(1)式中、Rは炭素数12〜30、好ましくは16〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、好ましくはオレイン酸残基である。
【0021】
入手可能な親油性界面活性剤(L)の市販品としては、例えば、理研ビタミン(株)製のグリセリン脂肪酸エステル(ジグリセリンモノレイン酸エステル)製剤「ポエムDO−100V」(HLB7.5)が挙げられる。
【0022】
本発明の添加剤(II)は、該親油性界面活性剤(L)とともに、親水性界面活性剤(H)を含有するものである。該親水性界面活性剤(H)は水溶性ないし水混和性を有し、油性物質の水に対する分散性を向上させる性質がある。即ち、前記親油性界面活性剤(L)に包み込まれた油性物質を水に分散させる性質を有し、油性物質の食品中への浸透性を更に向上させる。従って、油性物質の殆どが食品中に浸透して包みこまれ、食品の表面には存在しなくなるので、食品の製造時における不快臭の発生が防止され、さらに製造後に電子レンジなどで再加熱する際にも、高級不飽和脂肪酸化合物の酸化による不快臭の発生が防止される。
【0023】
このような親水性界面活性剤(H)としては、従来公知のもの、例えば、炭素数12〜30の脂肪酸残基を含むグリセリン(ポリグリセリンを含む)エステルやショ糖の高級脂肪酸エステル等が挙げられ、これらの中の親水性に富むものが選択される。
【0024】
該親水性界面活性剤(H)は、水に対して可溶性を示す。また、該親水性界面活性剤(H)のHLB値は、通常、10より高い値、好ましくは14以上、より好ましくは15以上である。その上限値は、特に制約されないが、通常30程度である。
【0025】
親水性界面活性剤(H)としては、例えば、デカグリセリンのモノオレイン酸又はラウリン酸エステルが好ましく用いられる。
【0026】
入手可能な親油性界面活性剤(H)の市販品としては、太陽化学(株)製のグリセリン脂肪酸エステル(モノラウリン酸デカグリセリン)製剤「サンソフトQ−12S」(HLB15.5)が挙げられる。
【0027】
本発明の添加剤(I)を製造するには、前記油性物質に対して、親油性界面活性剤(L)を混合する。この場合の混合温度は、油性物質が油状を示す温度であればよく、通常、40〜95℃が好ましく、より好ましくは40〜80℃、更に好ましくは45〜60℃である。
【0028】
親油性界面活性剤(L)の使用量(添加量)は、油性物質100重量部当り、0.01〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、更に好ましくは1〜5重量部、特に好ましくは1〜3重量部である。
【0029】
本発明の添加剤(II)を製造するには、前記油性物質に対して親油性界面活性剤(L)及び親水性界面活性剤(H)を混合する。この場合、これら2種の界面活性剤の添加順序は特に制約されることはなく、これら2種の界面活性剤を同時に又は別々に添加してもよいが、親油性界面活性剤(L)を添加した後に親水性界面活性剤(H)を混合することが好ましい。
【0030】
界面活性剤の添加量は、前記油性物質100重量部当り、親油性界面活性剤(L)の場合、0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部、更に好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜3重量部であり、親水性界面活性剤(H)の場合、0.01〜15重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部、更に好ましくは0.5〜3重量部、特に好ましくは0.7〜2重量部である。界面活性剤(L)と(H)との重量比(L)/(H)は、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.3〜3、更に好ましくは1〜3である。
【0031】
本発明の添加剤には、必要に応じて、各種の補助成分を添加することができる。このようなものには、酸化防止剤、臭気安定剤、味覚調整剤、凝固点調整剤、甘味料、PH調整剤等が包含される。
【0032】
該臭気安定剤としては、各種の植物油を挙げることができる。油性物質として魚油を用いる場合、それを添加した食品には、その魚油に起因する僅かな不快臭や不快味が付着することがある。このような場合には、不快臭のない植物油を添加することによって、該不快臭や不快味を抑制することができる。
【0033】
該植物油としては、パーム油、ヤシ油、オリーブ油、大豆油、ナタネ油、ヒマシ油、コーン油、アマニ油、綿実油、ココナッツ油、メンハーディン油、シソ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、キリ油、硬化油等が挙げられる。、これらの中ではナタネ油が好ましく用いられる。
【0034】
前記油性物質に対して該植物油を添加する場合、該植物油は、その油状のままで添加しうる他、親油性界面活性剤(L)との混合物として添加することができる。該親油性界面活性剤(L)の添加割合は、該植物油に対して、0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。
【0035】
該油性物質に対する該植物油の添加割合は、該油性物質100重量部当り、0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部である。該植物油の添加により、魚油の臭気は効果的に抑制される。
入手可能な臭気安定剤の市販品としては、理研ビタミン(株)製の「エマテックS−550」が挙げられる。
尚、「エマテックS−550」は、グリセリンとパーム油に由来するグリセリン脂肪酸エステルからなる親油性界面活性剤(L)とナタネ油を含有するものである。
【0036】
該酸化防止剤としては、従来公知の各種のもの、例えば、ビタミンEや、ポリフェノール化合物等が好ましく用いられる。本発明では、茶由来のポリフェノール化合物の使用が好ましい。茶ポリフェノール化合物は、前記した油性物質に対する酸化防止効果を有する他、含窒素臭気成分(トリメチルアミン等)、含イオウ臭気成分(メチルメルカプタン等)、アンモニア等の不快臭成分に対して優れた消臭効果を有するものである。更に、茶ポリフェノール化合物は、虫歯予防の効果、血中コレステロール濃度上昇を抑制する効果、体内での脂質の酸化防止に効果、ガン発症の予防効果、抗菌、抗ウイルス、解毒効果、痴呆症予防機能向上の効果を有するものである。
【0037】
該茶ポリフェノール化合物は茶に由来する化合物であって、分子内にフェノール水酸基を複数もつ化合物の総称であり、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等を主要成分とする食用に供される食物素材である。
【0038】
茶ポリフェノール化合物の添加量は、油性物質100重量部当り、6×10−4〜0.3重量部、好ましくは6×10−3〜0.18重量部である。
【0039】
この場合、茶ポリフェノール化合物単独では食品に浸透しないので、このものは油性茶ポリフェノール化合物として添加することにより、茶ポリフェノール化合物を食品中に浸透させることができる。油性茶ポリフェノール化合物は、茶ポリフェノールと共に、乳化剤と植物油を含有するものである。
【0040】
該植物油としては、パーム油、ヤシ油、オリーブ油、大豆油、ナタネ油、ヒマシ油、コーン油、アマニ油、綿実油、ココナッツ油、メンハーディン油、シソ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、キリ油、硬化油等やこれらから2種以上選択したものが挙げられ、その中でもナタネ油が好ましく用いられる。
【0041】
油性茶ポリフェノールの添加量は、前記油性物質100重量部当り、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.05〜4重量部、更に好ましくは0.1〜3重量部、特に好ましくは0.2〜1.0重量部である。
【0042】
入手可能な油性茶ポリフェノールの市販品としては、三井農林(株)製の「サンカテキン油性E」が挙げられる。尚、「サンカテキン油性E」は、茶ポリフェノール化合物と、グリセリンとリシノレイン酸に由来する乳化剤を含有するものであり、該リシノレイン酸は、ヒマシ油より得られるものである。
【0043】
該味覚調節剤は、製造される食品の味を調整するものである。このようなものとしては、従来公知の各種の有味物質、例えば、トレハロースが好ましく用いられる。
トレハロースの添加量は、前記油性物質100重量部当り、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部、更に好ましくは0.5〜3重量部、特に好ましくは0.5〜1.5重量部である。
【0044】
トレハロースは、油に溶けにくい性質を有するので、40〜70℃の温水に溶かして用いることが好ましい。この場合の、水100重量部当りに対するトレハロースの添加量は、30〜200重量部が好ましく、50〜150重量部がより好ましく、70〜130重量部が更に好ましい。
【0045】
本発明の添加剤における其の他の補助添加成分についても、従来公知の方法に従い、該油性物質に対し、適宜添加することができる。
【0046】
植物油、茶ポリフェノール、更にトレハロースが添加された添加剤(I)を製造するには、前記油性物質に対して親油性界面活性剤(L)と植物油とトレハロースを混合すればよい。この場合、これらの添加順序は特に制約されることはなく、これらを同時に又は別々に添加してもよいが、親油性界面活性剤(L)を添加した後に、植物油を添加し、次に茶ポリフェノール化合物を添加し、次にトレハロースを添加することが好ましい。
【0047】
植物油、茶ポリフェノール、更にトレハロースが添加された添加剤(II)を製造するには、前記油性物質に対して親油性界面活性剤(L)と親水性界面活性剤(H)と植物油と茶ポリフェノール化合物とトレハロースを混合する。この場合、これらの添加順序は特に制約されることはなく、これらは同時に又は別々に添加してもよいが、親油性界面活性剤(L)を添加し、次に親水性界面活性剤(H)を添加した後に、植物油を添加し、次に茶ポリフェノール化合物を添加し、次にトレハロースを添加することが好ましい。
【0048】
該油性物質に対して前記した如き各種の添加成分を混合する場合、通常、攪拌混合が行われる。但し、この攪拌混合においては、ホモジナイザーやホモミキサー等の回転数10,000rpm以上の高速回転で攪拌することは好ましくない。不飽和結合(2重結合)を有する油性物質は、その不飽和結合が酸化を受けて変質を生じ、不快臭を生じやすいという特性がある。例えば、該油性物質をホモジナイザーやホモミキサー等により高速回転する場合、その高速攪拌に際して起る摩擦熱やセン断応力の作用により、該油性物質は外気(空気)や溶存酸素により容易に酸化を受けるようになる。その結果、該油性物質には、その酸化変質により不快臭を発生するようになる。従って、本発明の場合、該攪拌混合は、6000rpm以下、好ましくは4000rpm以下、更に好ましくは2000rpm以下の条件で行うのが好ましい。その下限値は、5rpm程度である。
【0049】
油性物質と界面活性剤等との混合温度は、油性物質等が液状を示す温度であればよく、好ましくは界面活性剤(L)、(H)が油状を示す温度である。一般的には15〜95℃が好ましく、より好ましくは40〜80℃、更に好ましくは45〜60℃である。
【0050】
本発明の添加剤(I)、(II)は、親水性媒体中での加熱により食品を製造(調理)する方法において、その親水性媒体に添加することができる。この場合の加熱食品例を示すと、炊飯米、穀物(大豆、小豆等)、めん類(うどん、そば、ラーメン等)、各種野菜の煮物、魚介類の煮物、おでん、スープ、菓子、パン類等が挙げられるが、勿論、これらのものに限定されるものではない。
【0051】
本発明の添加剤(I)は親水性界面活性剤(H)を含まないため、そのもの自体の油性物質を水中に分散させる効果は小さいものである。従って、味噌汁や、めん類(うどん、そば、ラーメン等)などのスープに添加する場合には、添加剤(I)を水中に分散させるための攪拌が必要とされる。この場合の攪拌は各種の方法で行うことができる。このような攪拌には、例えば、加熱対流攪拌や、機械的攪拌、手動攪拌等が包含される。
【0052】
しかしながら、水等の親水性媒体と共に加熱して食品を製造する場合には自然に加熱対流攪拌が起きるので、この攪拌と親油性界面活性剤(L)の相乗効果により添加剤(I)は十分な程度に水中に分散する。但し、加熱対流攪拌以外に機械的攪拌や手動攪拌等を併用してもよい。特に、大量に製造する場合には機械的攪拌を併用することが好ましい。
【0053】
本発明の添加剤(II)は、親水性界面活性剤(H)を含んでいるため、油性物質を水中に分散させることは容易である。但し、機械的攪拌や手動攪拌等を併用してもよく、特に、大量に製造する場合には、機械的攪拌を併用することが好ましい。
【0054】
次に、本発明の添加剤(I)、(II)を用いた食品、及びその製造方法について説明する。
本発明の添加剤(I)、(II)は、DHA炊飯米等を含む御飯の製造に有利に用いることができる。この場合には、米と水の混合物に本発明の添加剤(I)又は(II)を添加し、常法により加熱炊飯する。このようにして、DHA等の所望の油性物質を含有する炊飯米を得ることができる。この場合、添加剤(I)又は(II)の添加量は、原料米100重量部(乾燥物基準)当り、1〜10重量部であり、好ましくは1〜4重量部である。
【0055】
このようにして得られる炊飯米は、DHAやEPA等のn−3系脂肪酸を豊富に含んだ栄養価に富むものであり、不快臭が無く美味しいものである。更に、得られる炊飯米の味が向上し、美味なものとなる。例えば、添加剤(II)と標準米を用いて製造された炊飯米(御飯)は味が向上し、特級の「コシヒカリ」の炊飯米に劣らないものとなる。
【0056】
尚、炊飯米(御飯)等の製造において、添加剤(I)が添加されている場合、炊飯に伴って起きる加熱対流により、添加剤(I)中の前記油性物質は水中に沈んで分散されるとともに、親油性界面活性剤(L)が油性物質を包み込むので、食品中に浸透しやすくなった油性物質は食品中に浸透していく。これにより、油性物質は空気中の酸素とは接触しなくなるので、得られる炊飯米(御飯)等の食品は酸化による不快匂が無いものとなる。
【0057】
炊飯米(御飯)等の製造において、添加剤(II)が添加さている場合、添加剤(II)中の前記油性物質は水中に沈んで分散されるとともに、親油性界面活性剤(L)が油性物質を包み込み、更に親水性界面活性剤(H)が油性物質を包み込んだ親油性界面活性剤(L)と水の馴染みを良くするので、油性物質はお米等の食品中に容易に浸透し、そのほとんどが得られる炊飯米等の食品の中に移行する。これにより、油性物質は空気中の酸素とは接触しなくなるので、加熱時に不快匂が発生することが無い。また、このようにして得られる食品は、電子レンジ等で再加熱しても不快匂が発生することが防止される。
【0058】
さらに、前記植物油が添加されていると、炊飯米等の加熱食品に不快味の染み付くことが防止される。
【0059】
さらに、茶ポリフェノール化合物が添加されていると、高級不飽和脂肪酸化合物の酸化がより確実に防止され、さらにまた、トレハロースが添加されていると不快味の発生がより確実に防止される。
【0060】
本発明の食品の製造方法において、食品を製造するために用いる鍋や釜等の加熱用調理器具は、脱臭処理を施したものであることが好ましい。即ち、DHAやEPA等のn−3系脂肪酸を含有する油性物質を含む添加剤(I)、(II)を用いて、御飯などの食品を製造すると鍋や釜等の加熱用調理器具の蓋やパッキン等に、n−3系脂肪酸を含有する油性物質が付着するので、空気中の酸素に接触して長時間経過すると、わずかであるが魚臭等の不快臭が発生する。そのため、次に食品を製造する際に、蓋やパッキン等に付着していたn−3系脂肪酸を含有する油性物質が炊飯等の熱によって更に酸化されて不快臭が発生し、この臭が食品へ移行してしまう。
【0061】
この調理器具に付着した不快臭を除去するには、茶抽出液を含む洗浄水で、その器具表面を洗浄処理する。この場合の洗浄水は、温度60℃以上、好ましくは80〜100℃の熱水であることが好ましい。なお、茶抽出液とは、茶を水中に入れ、必要に応じ、40〜100℃に加熱して得られる、茶中の水溶性物質を含む液(水溶液)である。
【0062】
この調理器具の表面洗浄を好ましく行うには、水道水や米のとぎ汁等の洗浄水にお茶を入れ、これを加熱して加熱水を作り、これを器具表面と接触させる。加熱水中の茶抽出成分(溶質)の量は10ppm〜5重量%、好ましくは50ppm〜1重量%である。この場合の調理器具表面に対する熱洗浄水との接触は、各種の方法、例えば器具表面に対する熱洗浄水の吹き付け等により行うことができるが、その器具が炊飯器や釜等の容器状のものである場合、該器具内に洗浄水を入れ、これにお茶を入れた後、該容器を介して該洗浄水を加熱沸騰させることにより実施することができる。
このような熱水洗浄処理の場合、その処理時間は5〜60分、好ましくは10〜30分である。
【0063】
洗浄水に加える茶抽出液を与えるお茶としては、各種のもの、例えば、緑茶、ほうじ茶、紅茶、ウーロン茶等が挙げられる。洗浄水中の茶抽出液の量は、0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%である。
【0064】
本発明の添加剤(I)、(II)は、15℃より低い温度、好ましくは冷蔵庫温度(10℃以下)で固体状態を示し、それより高い温度で液状を示すものが好ましく用いられる。このような添加剤(I)、(II)は固体状態にあれば、空気中であっても酸化されないので、長時間の保存や輸送において安定性の良い固体物質として取扱うことが可能となる。
【0065】
なお、添加剤(I)、(II)の凝固点又は融点は、油性物質や界面活性剤の種類や温度によって調節することができるし、凝固点調整剤(油脂等)の添加によって調節することができる。
【実施例】
【0066】
次に、本発明を実施例により詳述する。尚、実施例において用いた素材は次の通りである。
【0067】
(1)精製魚油…日本水産(株)製の精製マグロ油:製品名「DDオイル3G」(DHA約22%、EPA約7%含有、比重0.9)
(2)親油性界面活性剤(L)…理研ビタミン(株)製のグリセリン脂肪酸エステル系製剤:製品名「ポエムDO−100V」(HLB値7.5)
(3)親水性界面活性剤(H)…太陽化学(株)製のモノラウリン酸デカグリセリン製剤:製品名「サンソフトQ−12S」(HLB値15.5)
(4)理研ビタミン(株)製のナタネ油製剤:製品名「エマテックS−550」
(5)三井農林(株)製の「サンカテキン油性E」
(6)林原商事(株)製のトレハロースを水溶液にしたもの(重量比で水1:トレハロース1)
(7)エバーグリーンオーガニックフーズ(株)製の「Green Tea TB−DODR」(緑茶5g/1袋)
【0068】
実施例1
<添加剤(I)の製造>
油性物質として、前記(1)「DDオイル3G」96gを50℃に加温し、これに親油性界面活性剤(L)として、前記(2)「ポエムD0−100V」3gを添加し、ゆっくりと手で攪拌した。
これにより、マグロ油中に親油性界面活性剤(L)が溶解した油性溶液が得られた。
【0069】
この溶液に、前記(5)「サンカテキン油性E」0.1gと前記(6)「トレハロース溶液」1gとを投入し、ゆっくりと手で攪拌して分散させた。
【0070】
次に、この溶液を80℃で10分間加温して滅菌して添加剤Aを得た。
これをビン(密閉容器)に入れ、冷蔵庫内で7℃に冷却した。これにより、ビンの内容物は固化し、固化状態の添加剤Aとなった。
この固化状態の添加剤Aは、15℃以上に加熱すると、液体となる。この添加剤A:100g中のDHA含量は211mg、EPA含量は58mg(DHA・EPA含量269mg/g)である。
【0071】
実施例2
<添加剤(II)の製造>
油性物質として、前記(1)「DDオイル3G」94.5gを50℃に加温し、これに親油性界面活性剤(L)として、前記(2)「ポエムD0−100V」2gを添加し、ゆっくりと手で攪拌し、「ポエムD0−100V」を溶解させた。この溶液に、親水性界面活性剤(H)として前記(3)「サンソフトQ−12S」1gを添加し、ゆっくりと手で攪拌し、「サンソフトQ−12S」を溶液中に分散させた。
これにより、マグロ油中に親油性界面活性剤(L)が溶解し、親水性界面活性剤(H)が分散した溶液が得られた。
【0072】
この溶液に、前記(5)「サンカテキン油性E」0.5gと前記(6)「トレハロース溶液」2gとを投入し、ゆっくりと手で攪拌して分散させた。
【0073】
次に、この溶液を80℃で10分間加温して滅菌して添加剤Bを得た。
これをビン(密閉容器)に入れ、冷蔵庫内で7℃に冷却した。これにより、ビンの内容物は固化し、固化状態の添加剤Bとなった。
この固化状態の添加剤Bは、15℃以上に加熱すると、液体となる。この添加剤B:100g中のDHA含量は208mg、EPA含量は57mg(DHA・EPA含量265mg/g)である。
【0074】
実施例3
<添加剤(II)の製造>
油性物質として、前記(1)「DDオイル3G」93.5gを50℃に加温し、これに親油性界面活性剤(L)として前記(2)「ポエムD0−100V」2gを添加し、ゆっくりと手で攪拌して、「ポエムD0−100V」を溶解させた。この溶液に、親水性界面活性剤(H)として前記(3)「サンソフトQ−12S」1gを添加し、ゆっくりと手で攪拌して、「サンソフトQ−12S」を溶液中に分散させた。この溶液に、前記(4)「エマテックS−550」1gを添加し、ゆっくりと手で攪拌して、溶液中に分散させた。これにより、これにより、マグロ油中に親油性界面活性剤(L)が溶解し、親水性界面活性剤(H)と植物油が分散した溶液が得られた。
【0075】
この溶液に、前記(5)「サンカテキン油性E」0.5gと前記(6)「トレハロース溶液」2gとを投入し、ゆっくりと攪拌して分散させた。
【0076】
次に、この溶液を80℃で10分間加温して滅菌して添加剤Cを得た。
これをビン(密閉容器)に入れ、冷蔵庫内で7℃に冷却した。これにより、ビンの内容物は固化し、固化状態の添加剤Cとなった。
この固化状態の添加剤Cは、15℃以上に加熱すると、液体となる。この添加剤C:100g中のDHA含量は206mg、EPA含量は56mg(DHA・EPA含量262mg/g)である。
【0077】
以下の、参考例、応用実施例においては、前記(7)「Green Tea TB−DODR」を用いて、後記の段落[0081]に記載した方法で不快臭を取り除いた電気釜等の加熱調理器具を用いた。
【0078】
参考例1
白米2合(282g)を水洗し、家庭用電気釜(ナショナルSR−IHZE10型)に入れ、水量を指定量に調節した後、40分間炊飯し、約600gの炊飯米(御飯)を得た。
【0079】
応用実施例1
<添加剤Aを用いた炊飯米の製造>
参考例1において、添加剤A:7.2gを添加した以外は同様にして炊飯米A(御飯A)606.4gを得た。得られた炊飯米Aは御飯100g中DHA・EPAを320mg含有するものであった。
【0080】
この炊飯米Aには魚臭等の不快臭は全く生じていなかった。
【0081】
応用比較例1
参考例1において、前記(1)「DDオイル3G」4.6gを添加した以外は同様にして炊飯米(御飯)604.6gを得た。得られた炊飯米は御飯100g中DHA・EPAを319mg含有するものであるが、不快臭の激しいものであった。これは、炊飯時に釜の中で油が水に浮いた状態で炊飯されたため、精製魚油「DDオイル3G」中の高級不飽和脂肪酸化合物が、水の表面で空気に触れた状態で加熱され、100℃以上の蒸気(空気)によって酸化し不快臭を発生したことによるものである。
【0082】
応用比較例1で用いた家庭用電気釜は不快臭が漂ってくるものであった。そこで、電気釜の中に水200mlを入れ、これに前記(7)「Green Tea TB−DODR」を一袋加えて15分煮沸処理を施した。その結果、電気釜の不快臭を完全に取り除くことができた。
【0083】
応用実施例2
<添加剤Bを用いた炊飯米の製造>
参考例1において、添加剤B:7.2gを添加した以外は同様にして炊飯米B(御飯B)609.5gを得た。得られた炊飯米Bは御飯100g中DHA・EPAを313mg含有するものであった。
【0084】
この炊飯米Bには魚臭等の不快臭は全く生じていなかった。この御飯Bを以下の処理に付した。
この炊きたてのご飯Bを、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び、評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(2)前記ご飯Bを10時間自然に冷やした後、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(3)前記10時間自然に冷やしたご飯Bを電子レンジで2分間温め、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(4)前記炊立てのご飯Bを冷凍した。その後、電子レンジで4分間温め、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(5)前記10時間自然に冷やしたご飯Bを炒めてチャーハンを作った。魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。このものは油で強火で炒めても魚臭を発生しなかった。
(6)前記炊立てのご飯Bで、御握りを作り鉄板でやき、焼き御握りを作った。魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。このものは鉄板で焼いても、魚臭を発生しなかった。
【0085】
応用実施例3
<添加剤Cを用いた炊飯米の製造>
参考例1において、添加剤C:7.2gを添加した以外は同様にして炊飯米C(御飯C)607.2gを得た。得られた御飯Cは御飯100g中DHA・EPAを310mg含有するものであった。
【0086】
この炊飯米Cには魚臭等の不快臭は全く生じていなかった。この御飯Cを以下の処理に付した。
(1)この炊きたてのご飯Cを、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び、評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(2)前記ご飯を10時間自然に冷やした後、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(3)前記10時間自然に冷やしたご飯Cを電子レンジで2分間温め、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(4)前記炊立てのご飯Cを冷凍した。その後、電子レンジで4分間温め、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(5)前記10時間自然に冷やしたご飯Cを炒めてチャーハンを作った。魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。このものは油で強火で炒めても魚臭を発生しなかった。
(6)前記炊立てのご飯Cで、御握りを作り鉄板でやき、焼き御握りを作った。魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。このものは鉄板で焼いても、魚臭を発生しなかった。
【0087】
参考例2
<圧力釜での炊飯実験>
白米3合(423g)を水洗いし、30分間吸水させた。これを圧力釜に入れ、その水量を指定量に調節した後、14分間炊飯し(加熱時間4分、蒸らし時間10分)、約860gの炊飯米(御飯)を得た。
【0088】
応用実施例4
<添加剤Cを用いた圧力釜での炊飯実験>
参考例2において、添加剤C:10.2gを加えた以外は同様にして、炊飯米C−2(御飯C−2)856.2gを得た。得られた炊飯米C−2は御飯100g中DHA・EPAを312mg含有するものであった。
【0089】
この炊立ての炊飯米C−2には魚臭等の不快臭は全く生じていなかった。この御飯C−2を以下の処理に付した。
(1)この炊立てのご飯C−2を、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び、評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(2)前記ご飯C−2を10時間自然に冷やした後、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(3)前記10時間自然に冷やしたご飯C−2を電子レンジで2分間温め、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(4)前記炊立てのご飯C−2を冷凍した。その後、電子レンジで4分間温め、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(5)前記10時間自然に冷やしたご飯C−2を炒めてチャーハンを作った。魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。このものは油で強火で炒めても魚臭を発生しなかった。
(6)前記炊立てのご飯C−2で、御握りを作り鉄板でやき、焼き御握りを作った。魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。このものは鉄板で焼いても、魚臭を発生しなかった。
【0090】
応用実施例5
<添加剤Cを用いた業務用ガス釜の炊飯実験>
白米20カップ(2,820g)に洗いの水を加えて5,620gとし、これに添加剤C:72g(DHA・EPA18,850mg)を加えて炊飯し、5,712gのDHA・EPA含有ご飯C−3を得た。このご飯C−3は、100g中にDHA・EPAを330mg含有するものである。
尚、業務用ガス釜は、1Lの水と5袋の「Green Tea TB−DODR」を用いて、15分煮沸処理を行うことにより不快臭を取り除いた業務用ガス釜を用いた。
【0091】
この炊立ての炊飯米C−3には魚臭等の不快臭は全く生じていなかった。この御飯C−3を以下の処理に付した。
(1)この炊立てのご飯C−3を、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び、評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(2)前記ご飯C−3を10時間自然に冷やした後、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(3)前記10時間自然に冷やしたご飯C−3を電子レンジで2分間温め、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(4)前記炊立てのご飯C−3を冷凍した。その後、電子レンジで4分間温め、魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
(5)前記10時間自然に冷やしたご飯C−3を炒めてチャーハンを作った。魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。このものは油で強火で炒めても魚臭を発生しなかった。
(6)前記炊立てのご飯C−3で、御握りを作り鉄板でやき、焼き御握りを作った。魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。このものは鉄板で焼いても、魚臭を発生しなかった。
【0092】
応用実施例6
<添加剤Cを用いたみそ汁>
添加剤C:6gを添加して、1000mlのみそ汁を製造した。このみそ汁1杯(200g)のDHA・EPA含有量は、314mgである。添加剤Cはみそ汁に乳化して溶け込み、表面に魚油が浮くことなく、油の感じは全く無く、魚臭は発生しなかった。魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
【0093】
応用実施例7
<添加剤Cを用いたうどん>
通常家庭において行われている方法でうどんを調理した。この場合、うどんのスープには、あらかじめ「添加剤C」を1.5gを入れた。この一杯のうどんは、DHA、EPAを393mg含有するものである。
魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。
【0094】
応用実施例8
<添加剤Cを用いたラーメン>
通常家庭において行われている方法でラーメンを調理した。この場合、ラーメンのスープには、あらかじめ「添加剤C」を1.5gを入れた。この一杯のラーメンは、DHA、EPAを393mg含有するものである。
魚嫌いのパネラー男性5人:女性5人を選び評価したところ魚臭を感じたパネラーはいなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性媒体中で食品を加熱する際に用いられる食品用添加剤であって、高級不飽和脂肪酸化合物又はそれを含む油脂と、親油性界面活性剤とを含有する油性組成物からなることを特徴とする食品用添加剤。
【請求項2】
親水性媒体中で食品を加熱する際に用いられる食品用添加剤であって、高級不飽和脂肪酸化合物又はそれを含む油脂と、親油性界面活性剤と、親水性界面活性剤とを含有する油性組成物からなることを特徴とする食品用添加剤。
【請求項3】
該親水性界面活性剤が、モノラウリン酸デカグリセリンであることを特徴とする請求項2に記載の食品用添加剤。
【請求項4】
該高級不飽和脂肪酸化合物が、n−3系脂肪酸化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の食品用添加剤。
【請求項5】
該親油性界面活性剤が、ジグリセリンモノオレイン酸エステルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の食品用添加剤。
【請求項6】
該油脂が魚油からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の食品用添加剤。
【請求項7】
植物油を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の食品用添加剤。
【請求項8】
該植物油がナタネ油であることを特徴とする請求項7に記載の食品用添加剤。
【請求項9】
ポリフェノール化合物を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の食品用添加剤。
【請求項10】
トレハロースを含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の食品用添加剤。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の食品用添加剤を含有する食品。
【請求項12】
該食品が炊飯米であることを特徴とする請求項11に記載の食品。
【請求項13】
親水性媒体中で食品を加熱する際に、該親水性媒体中に、請求項1〜10のいずれかに記載の食品用添加剤を添加することを特徴とする食品の製造方法。
【請求項14】
該親水性媒体と接触する器具表面が、茶抽出液を含む洗浄水で洗浄処理されていることを特徴とする請求項13に記載の食品の製造方法。
【請求項15】
該洗浄水が熱水であることを特徴とする請求項14に記載の食品の製造方法。

【公開番号】特開2007−267726(P2007−267726A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154193(P2006−154193)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(500579844)
【Fターム(参考)】