説明

食品用蓋付き容器

【課題】 耐久性等の良い食品用蓋付き容器の提供。
【解決手段】 (A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)(B−1)ABS樹脂及び(B−2)AS樹脂から選ばれる少なくとも1種であるスチレン系樹脂を含有する樹脂組成物を成形してなる食品用蓋付き容器。(A)成分と(B)成分の比率(質量比)〔(A)/(B)〕は95/5〜20/80が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形性や耐煮沸性が優れており、使い捨てではなく、繰り返し使用できる食品用蓋付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
弁当箱等の食品用の蓋付き容器は、軽量で、成形加工性や着色性が良いことから、熱可塑性樹脂を材料とするものが主流である。熱可塑性樹脂としては、コスト、機能の点からポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂が使用されている。
【0003】
しかし、最近では、食器洗い乾燥機の普及、洗浄剤の洗浄力の向上に伴い、樹脂容器に対する洗浄条件が過酷になるなか、熱水又は洗剤の存在下における、繰り返しの洗浄や煮沸処理に耐えうるものが要求されている。また、容器に食品が入った状態で、容器ごと電子レンジで温めるような使い方も増加している。
【特許文献1】特開平11−11483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスチレン系樹脂からなる容器では、耐久性、耐薬品性(耐洗剤性)、耐熱性が十分ではなく、繰り返し使用する間に容器にそりが生じるという課題がある。
【0005】
本発明は、耐久性、耐薬品性(耐洗剤性)、耐熱性が良く、食器洗い乾燥機や電子レンジにも適用できる、食品用蓋付き容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、課題の解決手段として、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)スチレン系樹脂を含有する樹脂組成物を成形してなる食品用蓋付き容器を提供する。
【0007】
本発明は、課題の他の解決手段として、(B)成分のスチレン系樹脂が、(B−1)ABS樹脂及び(B−2)AS樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の食品用蓋付き容器を提供する。
【0008】
本発明は、課題の他の解決手段として、(A)成分と(B)成分の比率(質量比)〔(A)/(B)〕が95/5〜20/80である請求項1又は2記載の食品用蓋付き容器を提供する。
【0009】
本発明は、課題の他の解決手段として、食品用蓋付き容器が、蓋部、中蓋部及び本体部の組み合わせのものであり、少なくとも1つ以上の部分が(A)及び(B)成分を含む樹脂組成物からなるものである請求項1〜3のいずれかに記載の食品用蓋付き容器を提供する。
【0010】
本発明は、課題の他の解決手段として、弁当箱である請求項1〜4のいずれかに記載の食品用蓋付き容器を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の食品用蓋付き容器は、耐久性、耐薬品性(耐洗剤性)、耐熱性が良く、食器洗い乾燥機や電子レンジにも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<樹脂組成物>
〔(A)成分〕
(A)成分のポリブチレンテレフタレート系樹脂としては、1,4−ブタンジオールとジメチルテレフタレートから合成されたポリマーを挙げることができる。また、合成の際に、必要に応じてエチレングリコールや1,3−プロパンジオール等のジオール、テレフタル酸以外のジカルボン酸等の少量の第3成分を添加して、共縮合させたものでもよい。
【0013】
〔(B)成分〕
(B)成分のスチレン系樹脂は、(B−1)ABS樹脂及び(B−2)AS樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0014】
(B−1)成分のABS樹脂は、ジエン系ゴム10〜70質量部(単量体全量100質量部に対する割合)の存在下に、芳香族ビニル単量体55〜85質量%、シアン化ビニル系単量体15〜45質量%、及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体0〜30質量%からなる単量体混合物を共重合させた共重合体が好ましい。
【0015】
ジエン系ゴムとしては、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム等を挙げることができる。芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン等から選ばれる1又は2以上を挙げることができる。
【0016】
(B−2)成分のAS樹脂は、芳香族ビニル単量体55〜85質量%、シアン化ビニル系単量体15〜45質量%、及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体0〜30質量%からなる単量体混合物を共重合させたグラフト共重合体が好ましい。
【0017】
〔含有割合〕
樹脂組成物中における(A)及び(B)成分の含有割合は、次のとおりである。
【0018】
(A)成分は、好ましくは20〜95質量%、より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜80質量%、特に好ましくは30〜70質量%である。
【0019】
(B)成分は、好ましくは80〜5質量%、より好ましくは80〜20質量%、更に好ましくは70〜20質量%、特に好ましくは70〜30質量%である。
【0020】
(B)成分として(B−1)成分と(B−2)成分を併用するときの質量比〔(B−1)/(B−2)〕は、好ましくは100/0〜10/90、より好ましくは100/0〜30/70、更に好ましくは95/5〜20/80、特に好ましくは90/10〜30/70、最も好ましくは80/20〜40/60である。
【0021】
〔その他の成分〕
樹脂組成物には、その他の成分として、本発明の課題を解決できる範囲で他の熱可塑性樹脂を配合することができ、更に、熱、光又は酸素に対する安定剤、結晶核剤、可塑剤、滑剤、離型剤、着色剤、充填剤等を配合することができる。
【0022】
<食品用蓋付き容器>
本発明の食品用蓋付き容器は、蓋部と本体部、又は蓋部、中蓋部、本体部の組み合わせからなるものにすることができ、必要に応じて留め具(樹脂製、金属製、ゴム製又はこれらを組み合わせたもの)を取り付けることができる。
【0023】
蓋部と本体部の組み合わせの場合は、2つの部分の一方又は両方を上記した樹脂組成物で成形することができ、上記した樹脂組成物で成形しない部分については、ポリプロピレン等の他の熱可塑性樹脂で成形することができる。
【0024】
蓋部、中蓋部、本体部の組み合わせの場合は、3つの部分の1つ、2つ又は3つを上記した樹脂組成物で成形することができ、上記した樹脂組成物で成形しない部分については、ポリプロピレン等の他の熱可塑性樹脂で成形することができる。
【0025】
本発明の食品用蓋付き容器は、上記した樹脂組成物を用い、公知の押出機や射出成形機等を用いて製造することができる。
【0026】
本発明の食品用蓋付き容器の形状、厚み、大きさ(容積)等は、用途に応じて適宜決定することができる。本発明の食品用蓋付き容器は、使い捨て容器ではなく、使用と洗浄を繰り返して長期間使用するものとして適しており、特に弁当箱として好適である。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0028】
実施例1〜3、比較例1〜4
表1に示した配合割合でタンブラーを使用して混合した後、二軸押出機(日本製鋼所,TEX30α)を用いて溶融混練して、樹脂組成物をペレット化した。押出機のシリンダー温度は、実施例1〜3及び比較例1では240℃とし、比較例2〜4では220℃とした。
【0029】
得られたペレットを用い、金型温度50℃にて、シリンダー温度は240℃(実施例1〜3、比較例1)又は220℃(比較例2〜4)で射出成形(名機製作所製 M−140AL−SJ)して、図1に示す蓋付きの弁当箱(本体の寸法は、縦が約14cm、横が約20cm、深さが約5cm)を得た。成形品は、蓋部、中蓋、本体、止め具(左右2個)。得られた蓋付きの弁当箱について、下記の各試験を行った。結果を表1に示す。
【0030】
(剛性)
弁当箱を組み立て、蓋をした状態の弁当箱の中央部を指で押し、下記の基準で剛性を評価した。
:押した部分がへこんだと明らかには認識できなかった。
×:押した部分がへこんだと明らかに認識できた。
【0031】
(そりの有無及び寸法変化)
弁当箱の蓋部を100℃の熱湯中にて10分間煮沸後、恒温機(オーブン)にて110℃で10分間アニールする。これを1サイクルとして、計2サイクル行った。その後、弁当箱の煮沸前後における「そり」の状態を目視で観察すると共に、煮沸前後における弁当箱の寸法変化(縦の寸法変化)を測定し、次式から寸法変化率を求めた。
【0032】
寸法変化率(%)=(煮沸前寸法−煮沸後寸法)/煮沸前寸法×100
【0033】
【表1】

【0034】
PBT:ウィンテックポリマー、品番 TRE−DM2
ABS−1:ダイセルポリマー(株)製、品番 セビアンV500
ABS−2:日本A&L、品番 AT−05
AS:ダイセルポリマー(株)製、品番 セビアンN 070SF
PP:サンアロマー、品番 PM900M
沈降硫酸バリウム:堺化学、品番 B55
カーボンブラック−1:住化カラー、品番 PAB−8A2018HC
カーボンブラック−2:尾関、SPブラック880B
カーボンブラック−3:大日本インキ化学工業、BLACK F−31150MM
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例で得た蓋をした状態の弁当箱の外観写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)スチレン系樹脂を含有する樹脂組成物を成形してなる食品用蓋付き容器。
【請求項2】
(B)成分のスチレン系樹脂が、(B−1)ABS樹脂及び(B−2)AS樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の食品用蓋付き容器。
【請求項3】
(A)成分と(B)成分の比率(質量比)〔(A)/(B)〕が95/5〜20/80である請求項1又は2記載の食品用蓋付き容器。
【請求項4】
食品用蓋付き容器が、蓋部、中蓋部及び本体部の組み合わせのものであり、少なくとも1つ以上の部分が(A)及び(B)成分を含む樹脂組成物からなるものである請求項1〜3のいずれかに記載の食品用蓋付き容器。
【請求項5】
弁当箱である請求項1〜4のいずれかに記載の食品用蓋付き容器。




【図1】
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【公開番号】特開2006−151432(P2006−151432A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343521(P2004−343521)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(390019312)株式会社オーエスケー (3)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】