説明

食品組成物

【課題】米糠臭が低減された食品組成物及び米糠臭のマスキング方法を提供する。
【解決手段】米糠を搾油処理して得られた脱脂米糠及びグルテンを含む米糠臭が低減された食品組成物、及び米糠を搾油処理して得られた脱脂米糠にグルテンを混合し、該脱脂米糠の米糠臭をマスキングする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米糠臭が低減された食品組成物及び米糠臭のマスキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米糠は、玄米を搗精(精白)して白米を製造する際に副生する米の果皮、種皮、外胚乳、糊粉層等であり、油分、タンパク質、無機質、ビタミンB群(特にB1)が豊富であることが知られている。また、米糠に含まれるγ−オリザノール、フェルラ酸には抗酸化作用、コレステロール低下作用が知られている。このため、米糠加工品を栄養強化用或いはこれらの作用を享受することを目的としたサプリメント、食品添加物として応用することが試みられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
一方、米糠中には20%程度の脂質が含まれており、この脂質は非常に酸化されやすく、米糠を食品として利用する場合には鮮度を保つのが困難という問題点がある。このことから、米糠を食品用途に使用する場合、例えば、搾油処理により米糠からある程度の脂質を取いた脱脂米糠が使用されている(特許文献2〜4)。
【0004】
しかしながら、米糠及び脱脂米糠は米糠独特の米糠臭を有しており、米糠又は脱脂米糠を主成分とする食品は非常に食べにくいという問題点があった。また、脱脂米糠を主成分とする従来の食品は、顆粒状、板状等に成形しても、その後の調理過程で形状が崩れ易いという問題点があり、さらに、脱脂米糠を主成分とすると食感が悪いといった問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−068523号公報
【特許文献2】特開2003−180275号公報
【特許文献3】特開2004−65236号公報
【特許文献4】特開2005−143364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、米糠臭が低減された食品組成物及び米糠臭のマスキング方法を提供することを主な課題とする。更に詳しくは、脱脂米糠を含む食品組成物の米糠臭が効果的に低減され、さらに保形性及び食感の点でも優れた食品組成物、並びに脱脂米糠の米糠臭を低減し、さらに脱脂米糠を含む食品組成物に優れた保形性及び食感を付与する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねてきた。その結果、米糠を搾油処理して得られた脱脂米糠とグルテンとを混合することにより、驚くべきことに、従来低減することが困難であった脱脂米糠の米糠臭が著しく低減され、さらに、食感、調理過程での保形性等の点にも優れることを見出した。本発明は、この様な知見に基づきさらに鋭意検討を重ねて完成されたものである。
【0008】
本発明は、例えば下記項1〜9に示す米糠臭が低減された食品組成物及び米糠臭のマスキング方法を提供する。
項1. 米糠を搾油処理して得られた脱脂米糠及びグルテンを含む食品組成物。
項2. 前記食品組成物中の前記脱脂米糠の含有量が30〜90重量%である項1に記載の食品組成物。
項3. 前記脱脂米糠100重量部に対してグルテンを10〜70重量部含む項1又は2に記載の食品組成物。
項4. さらにトランスグルタミナーゼを含む項1〜3のいずれかに記載の食品組成物。
項5. さらにβ−グルカン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、及びグアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む項1〜4のいずれかに記載の食品組成物。
項6. さらに水不溶性の着色剤を含む請求項1〜5のいずれかに記載の食品組成物。
項7. 顆粒状、フレーク状、粒状、ブロック状又は麺状である項1〜6のいずれかに記載の食品組成物。
項8. 米糠を搾油処理して得られた脱脂米糠にグルテンを混合して、該脱脂米糠の米糠臭をマスキングする方法。
項9. 前記脱脂米糠100重量部に対してグルテンを12〜70重量部混合する項8に記載のマスキング方法。
【0009】
本発明は、米糠及び脱脂米糠が有する独特の米糠臭が低減された食品組成物に関し、脱脂米糠にグルテンを混合することにより該食品組成物を得ることができる。
【0010】
脱脂米糠の原料となる米糠は玄米の果皮、種皮、外胚乳、糊粉層等であり、通常玄米の8〜10重量%程度を占める。米糠は玄米を搗精(精白)して白米を製造する際に副生するため、本発明ではこれを利用することができる。搗精後に得られた米糠(生米糠)には脂質が通常18〜20重量%程度含まれている。生米糠ではリパーゼによる油の酸化が急速に進むため、生米糠にはリパーゼ失活処理を施すことが好ましい。生米糠のリパーゼ失活処理は公知であり、一般的には、生米糠を70〜130℃程度で加熱焙煎することにより行われており、本発明においても公知のリパーゼ失活処理を適用できる。また、加熱手段としては、クッキング装置、乾式エクストルーダー、湿式エクストルーダー、水蒸気処理装置が例示される。なお、加熱処理された米糠は市販もされており、本発明ではこのような市販品も使用できる。また、加熱焙煎処理の前に、生米糠を乾燥処理して水分含量が5〜10重量%程度の乾燥米糠を調製する予備乾燥処理を行ってもよい。
【0011】
加熱処理された米糠は圧搾されて搾油と搾り滓である脱脂米糠とを生成する。ここで、圧搾により生成する脱脂米糠は、溶媒抽出(特に、ヘキサン等の非極性又は低極性有機溶媒抽出)により生成する脱脂米糠とは異なるものである。有機溶媒抽出の方が搾油よりも油の歩留まりが高いため、米糠の圧搾により得られる脱脂米糠(本発明に用いる脱脂米糠)は有機溶媒抽出により得られる脱脂米糠よりも脱脂の程度は低いものである。溶媒抽出によって脱脂を行うと、米糠油以外の油溶性成分の多くも米糠から除かれる。通常、米糠油の製造には溶媒抽出法が採用されるが、本発明に用いる脱脂米糠は、米糠を圧搾法により圧搾処理して得られたものであり、脱脂の程度、脱脂米糠中に含まれる油溶性成分の量が溶媒抽出法により得られた脱脂米糠とは異なるものである。圧搾処理の方法は公知であり、例えば加熱焙煎処理され100〜115℃程度になった米糠を低温連続圧搾機(例えば(株)テクノシグマ社より販売されているミラクルチャンバー)により圧搾する方法が挙げられる。本発明ではこれに限られず公知の圧搾方法を適用できる。圧搾の程度は、圧搾後の脱脂米糠中の脂質が5〜15重量%、好ましくは5〜14重量%、より好ましくは5〜12重量%となる程度である。
【0012】
圧搾により得られた脱脂米糠はこれをそのまま本発明に利用できるが、精製米糠油を脱脂米糠に対して10〜30重量%程度添加し、均一混合したものも利用できる。また、これらは、粉砕、分級することにより、ハンドリングが容易な粉末状や顆粒状に加工処理されたものを利用することが好ましい。このような加工処理がされた市販品として、例えば、サンブラン株式会社製の「ハイブレフ」、「ネオハイブレフ」等が入手できる。
【0013】
好ましい脱脂米糠の平均粒径は30〜200μm程度、より好ましくは40〜100μm程度である。また、脱脂米糠の脂質含量は5〜15重量%程度が好ましく、5〜12重量%程度がより好ましい。なお、本発明において脱脂米糠の平均粒径はメジアン径であり、レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2200(島津製作所)を用い、分散剤は水として、レーザ回折・散乱法により測定した値である。
【0014】
本発明の食品組成物中の脱脂米糠の含有量は、通常30〜90重量%程度、好ましくは45〜85重量%程度、より好ましくは50〜80重量%程度である。
【0015】
本発明において使用されるグルテンは、小麦、ライ麦等の穀物の胚乳から生成されるタンパク質であり、小麦蛋白の一種である。小麦粉等のグルテン前駆体(グリアジン、グルテニン)を含む穀物粉に水を加えると、グリアジンとグルテニンが絡み合ってグルテンができる。グルテニンは弾力性に富むが伸びにくい性質を有するタンパク質であり、グリアジンは弾力性に乏しいが延びやすい性質を有するタンパク質である。このような性質の異なるタンパク質が結びつくと、両方の性質(粘着性と弾性)を適度に兼ね備えたグルテンになる。小麦粉等のグルテン前駆体(グリアジン、グルテニン)を持つ穀物粉に水を加えて十分に捏ねることによりグルテンを生成させ、これを水で洗うと水溶性タンパク質やデンプン粒が流出し、グルテン塊を分離することができる。グルテンは、市販のグルテン粉等を使用してもよく、グルテン含量が50重量%以上、好ましくは55重量%以上、最も好ましくは60重量%以上のものを使用できる。市販品としては、例えば、グリコ栄養食品株式会社製のA−グルK(グルテン含量75%以上)、A−グルG(グルテン含量75%以上)、A−グルWP(グルテン含量80%以上)、ファイングルVP(グルテン含量60%以上)が挙げられる。
【0016】
本発明においては、脱脂米糠にグルテンを加えることにより、脱脂米糠を主成分とする食品組成物にした場合にも、米糠臭を著しく低減することができる。また、グルテンは、食感が悪く食べにくかった該食品組成物を食べやすくし、さらに、該食品組成物の調理過程における形状の保持にも貢献する。
【0017】
例えば、小麦粉中にはタンパク質が約6〜15%含まれ、該タンパク質の約85%が前記グルテン前駆体(グリアジン、グルテニン)である。本発明においては、穀物等から抽出したグルテンを脱脂米糠と混合することにより、脱脂米糠の米糠臭を効果的に抑えること等が可能となる。小麦粉に水を加えて捏ねるとグルテンが生成するが、小麦の種類や品質、加水量、副材料、添加物の種類及び量、捏ね方等によってグルテンの生成量が大きく異なる。脱脂米糠に前記グルテン前駆体(グリアジン、グルテニン)を含む穀物粉、水等を加えて混合するだけでは、脱脂米糠を主成分とする食品組成物中のグルテン量が極めて少なくなり、本発明の米糠臭のマスキング効果、保形性及び食感の改善効果は十分に発揮されない。
【0018】
脱脂米糠の米糠臭を効果的に抑えるためには、脱脂米糠とグルテンとを均一に混合することが好ましい。例えば、脱脂米糠の粉末とグルテンの粉末を攪拌機等により均一に混合したり、必要に応じて、水等の液体を加えて、脱脂米糠とグルテンとをより均一に混合することが好ましい。脱脂米糠とグルテンとを均一に混合することにより、米糠臭をより効果的に抑えるだけでなく、形状維持等の点でも優れた効果を発揮する。脱脂米糠とグルテンとが均一に混合されれば、これらを混合する際には、他の成分が存在していてもよい。
【0019】
本発明において、脱脂米糠とグルテンとの混合割合は、脱脂米糠100重量部に対してグルテンを通常10〜70重量部程度、好ましくは12〜70重量部程度、より好ましくは15〜60重量部程度、さらに好ましくは15〜50重量部程度とすればよい。
【0020】
本発明においては、グルテンの他にトランスグルタミナーゼを混合してもよい。脱脂米糠にグルテンとトランスグルタミナーゼを混合することにより、食感及び調理過程における形状保持の効果が更に向上する。トランスグルタミナーゼは、従来公知の酵素であり、市販品を使用すればよい。市販品としては、例えば、味の素株式会社製のアクティバ コシキープ速効タイプ(トランスグルタミナーゼ0.1%含有)が挙げられる。
【0021】
本発明の食品組成物中のトランスグルタミナーゼの含有量は、0.0001〜0.005重量%程度、好ましくは0.001〜0.004重量%程度、より好ましくは0.0013〜0.003重量%程度とすればよい。
【0022】
脱脂米糠、グルテン、及びトランスグルタミナーゼの混合順序は、特に限定されない。また、前記の通り、脱脂米糠、グルテン、及びトランスグルタミナーゼをなるべく均一に混合することが好ましく、必要に応じて、水、食用油等の液体を加えてもよい。脱脂米糠、グルテン、及びトランスグルタミナーゼを均一に混合できれば、これらの混合時に他の成分が存在していてもよい。
【0023】
さらに、本願発明においては、グルテンに加えて、増粘多糖類を配合することが好ましく、特に、β−グルカン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、及びグアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種を混合することが好ましい。これらの増粘多糖類は、市販品を使用すればよい。
【0024】
脱脂米糠とβ−グルカン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、及びグアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種との混合割合は、脱脂米糠100重量部に対してβ−グルカン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、及びグアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種を通常0.1〜7重量部程度、好ましくは0.1〜5重量部程度、より好ましくは0.5〜4重量部程度とすればよい。
【0025】
脱脂米糠、グルテン、並びにβ−グルカン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、及びグアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の混合順序は、特に限定されない。また、前記の通り、脱脂米糠、グルテン、並びにβ−グルカン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、及びグアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種をなるべく均一に混合することが好ましく、必要に応じて、水、食用油等の液体を加えてもよい。脱脂米糠、グルテン、並びにβ−グルカン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、及びグアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種を均一に混合できれば、混合時にさらに他の成分が存在していてもよい。
【0026】
本発明においては、グルテンに加えて、前記トランスグルタミナーゼとβ−グルカン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、及びグアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種とを併用して混合してもよい。トランスグルタミナーゼとβ−グルカン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、及びグアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種とを併用することにより、食感及び調理過程における形状保持性の点で優れた食品組成物を得ることができる。
【0027】
トランスグルタミナーゼとβ−グルカン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、及びグアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種とを併用する場合も、脱脂米糠に対するトランスグルタミナーゼ並びにβ−グルカン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、及びグアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の使用量は、それぞれ前記と同じとすればよい。
【0028】
また、脱脂米糠、グルテン、トランスグルタミナーゼ、並びにβ−グルカン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、及びグアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の混合順序は、特に限定されない。前記の通り、脱脂米糠、グルテン、トランスグルタミナーゼ並びにβ−グルカン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、及びグアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種をなるべく均一に混合することが好ましく、必要に応じて、水、食用油等の液体を加えてもよい。脱脂米糠、グルテン、トランスグルタミナーゼ、並びにβ−グルカン、ペクチン、及び寒天、グルコマンナン、グアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種とを均一に混合できれば、混合時にさらに他の成分が存在していてもよい。
【0029】
本発明の食品組成物には、外観の改善等を目的として、従来公知の種々の食品用着色剤を用いてもよい。該着色剤は、目的に応じて使い分ければよく、例えば、本発明の食品組成物を白米等と共に炊飯する場合は、食品組成物からの着色剤の流出を防ぐため、水不溶性の着色剤を使用することが望ましい。着色剤としては、例えば、パプリカ、リコピン、炭粉、紅芋粉、クチナシ色素、有色野菜粉末、藻類粉末(スピルリナ、クロレラ等)、油溶化処理された色素製剤等が挙げられる。
【0030】
これらの中でも、竹炭等の炭粉を使用すると、米糠臭の低減効果がさらに向上し、食感や調理過程における形状保持性の点でも非常に優れた食品組成物が得られる。これは、前記グルテン等と炭粉とが米糠臭の低減、形状保持に対して相乗的に作用していることに起因すると考えられる。
【0031】
着色剤の使用量は、目的とする食品の外観等に応じて適宜選択すればよく、本発明の食品組成物中、通常、0.01〜10重量%程度、好ましくは0.05〜5重量%程度とすればよい。
【0032】
また、米粉(例えばうるち米粉、もち米粉)や澱粉類(例えばタピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉)等を加えると、食感が向上し、かつ、食品組成物の表面の艶が向上するので好ましい。米粉、澱粉類等の添加量は適宜選択すればよい。
【0033】
本発明の食品組成物には、前記脱脂米糠、グルテン等に加えて、小麦、米粉等の穀類、大豆、小豆等の豆類、果物、水飴等の糖質、食物繊維、水、玄米油等の食用油等の他の原料や、甘味剤、抗酸化剤、ビタミン類、ミネラル類、香料、色素等の従来公知の食品添加物等、従来食品に添加される他の成分を含んでもよい。
【0034】
また、本発明の食品組成物の形状は、例えば、顆粒状、フレーク状、粒状、ブロック状、麺状等の任意の形状とすることができる。また、本発明の食品組成物は、クッキー、ビスケット、栄養バー、フルーツバー、ふりかけ、米飯添加剤、麺類、煎餅、あられ等の任意の形態とすることができる。本発明の食品組成物は、例えば、前記脱脂米糠、グルテン等を攪拌機等で均一に混合し、所望の形状に成形した後、焼成する方法等の従来公知の方法により任意の形状、形態とすることができる。また、各原料の混合の際、水、食用油等の液体を加えて攪拌、混練等してペースト状にし、これを成形、焼成等してもよい。
【0035】
前記の通り、本発明の米糠臭のマスキング方法において、脱脂米糠、グルテン等の各原料の混合順序は特に限定されず、例えば、脱脂米糠にグルテンを混合する工程の前及び/又は後に下記工程(1)〜(3)
(1)脱脂米糠にトランスグルタミナーゼを混合する工程、
(2)脱脂米糠にβ−グルカン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、及びグアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種を混合する工程、
(3)脱脂米糠に水不溶性の着色剤を混合する工程
の少なくとも1つの工程行ってもよい(工程(1)〜(3)の順序、回数は問わない)。
【0036】
また、これらの工程に加え、(4)水、食用油等を加えて各原料をより均一に混合する工程、(5)前記他の成分を加える工程を任意の順序、回数有していてもよい。
【0037】
脱脂米糠が食品組成物中の主成分である場合、従来の食品組成物は米糠臭が強く、食感も悪く非常に食べにくいものであったが、本願発明の食品組成物は、米糠臭が効果的にマスキングされており、食感も良く食べやすい。
【0038】
本発明の食品組成物は、顆粒状にして(即ち人造米として)白米とともに炊飯することにより、固く、ぼそぼそして食べにくい玄米を食べなくても、玄米と同等の栄養価を摂取することができる。玄米一膳(約150g)中には、約7gの米糠が含まれている。よって、脱脂米糠を7g程度含む本発明の食品組成物を摂取することにより、玄米一膳に含まれる米糠の栄養価を手軽に摂取することができる。また、本発明の食品組成物は、米糠臭が効果的にマスキングされており、食感も良く食べやすいので、脱脂米糠を主成分とするクッキー等としても効果的に玄米の栄養価を摂取することもできる。
【0039】
なお、パン類、ビスケット・クッキー類、パイ類、ケーキ類等のベーカリー食品とする場合、平均粒径が好ましくは20〜200μm程度、より好ましくは50〜100μm程度の脱脂米糠をグルテン等の他の成分と混合してベーカリー食品を製造することが好ましい。例えば、クッキーの場合、当該脱脂米糠をグルテン等の他の成分と混合してクッキー等の形状に成形し焼成することが好ましい。脱脂米糠の平均粒径がこの範囲よりも小さいと、食べた後に口の中に粉っぽい残留感が出るおそれがあり、平均粒径がこの範囲よりも大きいと、ボサボサとした食感になるおそれがある。
【0040】
本発明の食品組成物をベーカリー食品とする場合は、オリゴ糖及び/又は水飴類をさらに加えることで、食した際の口の中での残留感や吸湿感が低減できるため好ましい。オリゴ糖としては、例えばマルトオリゴ糖、グリコシルスクロース、ラクトスクロース、イソマルトオリゴ糖等を挙げることができる。また、水飴類としては、例えば還元水飴、還元麦芽糖水飴、酸糖化水飴、酵素糖化水飴等を挙げることが出来る。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、配合量は適宜設定できるが、食品組成物に対して好ましくは5〜30質量%、より好ましくは15〜25質量%である。
【0041】
また、本発明の食品組成物をベーカリー食品とする場合は、ショートニングをさらに加えることで、食した際の残留感やねたつき感がよりさらに低減できるため好ましい。配合量は適宜設定できるが、食品組成物に対して好ましくは10〜30質量%、より好ましくは15〜25質量%である。さらに、ショートニングとレシチン及びグリセリンモノ脂肪酸エステルを併せて用いることで、食品組成物の油っこさがさらに改善され得る。レシチン及びグリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量は適宜設定できる。
【0042】
なお、残留感とは嚥下してもまだ口中にあるように感じることをいう。また、吸湿感とは食べたときに口中の水分が食品に奪われ、パサパサした感触になることをいう。また、ねたつき感とは口中に食品がネバネバと貼り付く感じをいう。
【発明の効果】
【0043】
本発明の食品組成物は、脱脂米糠にグルテンを配合することにより、米糠臭が著しく低減され、さらに、食感、米糠に含まれる栄養価を手軽に摂取することができる。また、該食品組成物は、調理過程での形状保持性等にも優れているので、焼いたり、ゆでたり、揚げたり、白米等と一緒に炊いたりして利用することができる。本発明の米糠臭のマスキング方法は、脱脂米糠にグルテンを混合することにより、米糠臭を効果的にマスキングすることができ、本方法により、食感が良く食べやすい食品組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
[実施例]
以下に、本発明の実施例を挙げて、本発明を一層明らかにするが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表中の%は重量%を示す。また、各実施例、比較例及び処方例において、脱脂米糠はサンブラン株式会社製のHIGH-BREF(ハイブレフ)、小麦蛋白(グルテン)は、グリコ栄養食品株式会社のA−グルG、ファイングルVP、トランスグルタミナーゼ製剤は、味の素株式会社製のアクティバコシキープ 速効タイプ(トランスグルタミナーゼ0.1%アスコルビン酸オキシターゼ 1.5%、アスコルビン酸ナトリウム5.0%、デキストリン他93.4%)を使用した。また、他の成分も市販品を使用した。
【0045】
実施例1〜13及び比較例1〜2
下表1の配合割合で各成分を混合し、常法に従い、エクストルーダーや押出造粒機等を使用して造粒し、次いで棚式乾燥機、熱風流動乾燥機、真空乾燥機などを使用した乾燥工程を経て米飯添加用顆粒(白米の粒と同程度の大きさ)を作製した。当該米飯添加用顆粒は、すなわち人造米である。これを白米と共に炊飯した。米糠臭、形状の保持性等の結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1中の各評価基準を以下に記載する。また、各評価結果は、3人以上のパネラーが試食した後に評価した結果である。
炊飯前の生地のまとまり ○ 良くまとまる
× まとまりにくい
炊飯後の顆粒形状の保持 ◎ 全く崩れない
○ ほとんど崩れない
△ 少しく崩れる
× ほとんど崩れる
炊飯後の味(特に米糠臭) ◎ ほとんど米糠臭がせず食べやすい
○ 少し米糠臭がするが食べやすい
× 米糠臭が強く食べにくい
食感(主に顆粒の食感) ◎ 白米と同様の食感で食べやすい
○ 白米に近い食感で食べやすい
△ 食べにくくはないが少し柔らかい
× 柔らかすぎて食べにくい
【0048】
実施例1で得られた顆粒(すなわち人造米)は、保形性が良く、炊飯後の米糠臭も抑えられており、白米と同等のおいしさが感じられた。白米への顆粒の添加量を極力抑え、かつ、一定量の米糠や機能性の高い玄米油を摂取するためには、顆粒中のグルテン配合割合をできるだけ抑え、脱脂米糠、玄米油の配合割合を多くすることが望ましい。実施例2〜13及び比較例1〜2では、脱脂米糠に対するグルテンの比(グルテン/脱脂米糠)を実施例1の31.3%よりも小さい値に設定して、各評価項目を検討した。脱脂米糠に対するグルテンの比(グルテン/脱脂米糠)が25%である実施例2及び実施例6〜9、20%である実施例10〜13での評価は良好であった。また、竹炭を入れた実施例11〜13では、炊飯後の顆粒の弾力性はより好ましいものとなった。脱脂米糠に対するグルテンの比(グルテン/脱脂米糠)が17.5%である実施例3〜5も比較的評価は高かったが、β−グルカンの少ない実施例3において、顆粒の食感が白米に比べ柔らかくなった。脱脂米糠に対するグルテンの比(グルテン/脱脂米糠)が10%、0%である比較例1及び2では、米糠臭の低減効果は認められず、保形性も良くなかった。
【0049】
実施例14〜25及び比較例3〜8
下表2の配合割合で各成分を混合し、常法に従い、直径3cm、厚さ0.8cm程度に成形し、焼成工程を経て板状の脱脂米糠/グルテン配合クッキーを作製した。米糠臭、形状の保持性等の結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
表2中の各評価基準を以下に記載する。
米糠臭の低減効果 ◎ ほとんど米糠臭がせず食べやすい
○ 少し米糠臭がするが食べやすい
× 米糠臭が強く食べにくい
口中の組成物残留感 ○ 口中に残留感がなく食べやすい
△ 口中に少し残留感が感じられる
【0052】
脱脂米糠に対するグルテンの比(グルテン/脱脂米糠)を12.5%以上とした実施例14〜25において、米糠臭の低減効果が認められた。脱脂米糠に対するグルテンの比(グルテン/脱脂米糠)を10%以下とした比較例3〜8では、米糠臭の低減効果は認められなかった。さらに、脱脂米糠の平均粒径を100μm程度にすることで、食感が改善され、口中の組成物残留感も改善できた。
【0053】
処方例1及び2
下表3の配合割合で各成分を混合し、常法に従い、エクストルーダーや押出造粒機等を使用して造粒し、次いで棚式乾燥機、熱風流動乾燥機、真空乾燥機などを使用した乾燥工程を経て米飯添加用顆粒(白米の粒と同程度の大きさ)を作製した。当該米飯添加用顆粒は、すなわち人造米である。これを白米と共に炊飯した。
【0054】
【表3】

【0055】
処方例3〜6
下表4の配合割合で各成分を混合し、常法に従い、幅0.3cm、厚さ0.3cm、長さ30cm程度の麺状に成形し、乾燥させた。
【0056】
【表4】

【0057】
処方例7及び8
下表5の配合割合で各成分を混合し、常法に従い、直径約5cm、厚さ0.2cm程度に成形し、焼成工程を経て板状の脱脂米糠/グルテン配合煎餅を作製した。
【0058】
【表5】

【0059】
処方例9及び10
下表6の配合割合で各成分を混合し、常法に従い、縦横4cm、厚さ0.2cm程度に成形し、焼成工程を経て板状の脱脂米糠/グルテン配合クラッカーを作製した。
【0060】
【表6】

【0061】
処方例11及び12
下表7の配合割合で各成分を混合し、常法に従い、縦7cm、横1.5cm、厚さ1cm程度に成形し、焼成工程を経て板状の脱脂米糠/グルテン配合バーを作製した。
【0062】
【表7】

【0063】
処方例13及び14
下表8の配合割合(重量部比)で各成分を混合し、常法に従い、シリアルバーを作製した。
【表8】

【0064】
処方例13および処方例14では、マルトオリゴ糖を配合しない処方に比べ、食感(口の中での残留感、ねとつき感、吸湿感)が改善された。特に処方例14では処方例13に比べて食感がより改善された。
【0065】
処方例15〜18
下表9の配合割合(重量部比)で各成分を混合し、常法に従い、米飯添加用粒状物(人造米)を作製した。具体的には、圧搾脱脂米糠と精製玄米油を均一混合後、小麦蛋白とトランスグルタミナーゼ製剤を添加し混合し、表9に記載の原料総量に対して約25%量の精製水を加えて均一にし、その後室温で1時間静置した後にエクストルーダーを用いて焼成すると共に粒状に加工した。
【0066】
【表9】

【0067】
デンプンを添加することにより、デンプンを添加していない処方に比べて、炊飯後の粒の表面の滑らかさや食感(弾力性)が向上した。このうち特にもち米粉、タピオカデンプンを加えた処方例16及び処方例15が良好であった。
【0068】
処方例19
下表10の配合割合(重量部比)で各成分を混合し、常法に従い、米飯添加用粒状物(人造米)を作製した。具体的には、処方例15〜18を作製したのと同様に行った。
【0069】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
米糠を搾油処理して得られた脱脂米糠及びグルテンを含む食品組成物。
【請求項2】
前記食品組成物中の前記脱脂米糠の含有量が30〜90重量%である請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
前記脱脂米糠100重量部に対してグルテンを10〜70重量部含む請求項1又は2に記載の食品組成物。
【請求項4】
さらにトランスグルタミナーゼを含む請求項1〜3のいずれかに記載の食品組成物。
【請求項5】
さらにβ−グルカン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、及びグアガムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜4のいずれかに記載の食品組成物。
【請求項6】
さらに水不溶性の着色剤を含む請求項1〜5のいずれかに記載の食品組成物。
【請求項7】
顆粒状、フレーク状、粒状、ブロック状又は麺状である請求項1〜6のいずれかに記載の食品組成物。
【請求項8】
米糠を搾油処理して得られた脱脂米糠にグルテンを混合して、該脱脂米糠の米糠臭をマスキングする方法。
【請求項9】
前記脱脂米糠100重量部に対してグルテンを12〜70重量部混合する請求項8に記載のマスキング方法。

【公開番号】特開2010−227096(P2010−227096A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46648(P2010−46648)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】