説明

食品鮮度保持具

【課題】 食品等の鮮度を長期に亘り安定して保持することができ、商品価値を高めることができるようにする。
【解決手段】 吸着体2を外側から覆う包装カバー3は、上,下2枚の積層フィルム4を互いに重ね合わせ、この状態で各積層フィルム4の周縁部4Aを封止することにより形成する。積層フィルム4は、アルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えた樹脂材料からなるフィルムを用いて形成され前記鮮度保持液が気化した状態で透過するのを許し液体状態での透過を防ぐ透明または半透明のフィルム体5と、フィルム体5の内側面に形成された印刷層6と、この印刷層6を挟んでフィルム体5の内側面に設けられアルコール親和性と熱融着性を有する繊維を含んだ内,外の不織布7A,7Bからなる内側不織布層7とにより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食料品、菓子等の食品類を長期に保存し、その鮮度を保持するのに好適に用いられるアルコール蒸散型の食品鮮度保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品を含む被保存物の鮮度を保つために、アルコール蒸散型の食品鮮度保持具を用いることは知られている。そして、このような食品鮮度保持具は、例えば食料品、菓子類等の食品包装体内に、一個または複数個挿入して用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の従来技術による食品鮮度保持具は、例えばエチルアルコール等を主成分とする揮発性の鮮度保持液を吸着体に含浸させることにより構成され、この吸着体は、例えば天然パルプ材等を用いて長方形状をなす小型の平板片として形成されるものである。
【0004】
また、このような吸着体を外側から覆うフィルム状カバーは、吸着体の側方に張出すスカート部を有し、このスカート部には、前記鮮度保持液が吸着体から徐々に外部へと揮散するように揮散用開口を設ける構成としている。そして、前記吸着体内の鮮度保持液は、カバーのスカート部から前記揮散用開口を介して食品包装体内に徐々に揮散する。これにより、鮮度保持液は、食品包装体内の空間(ヘッドスペース)を揮発した気体(ガス化雰囲気)で満たすと共に、親水性のある食品に対しては表層側に吸着され、例えばカビ等の微生物の増殖を抑制するものである。
【0005】
一方、他の従来技術として、例えばエチルアルコール等を主成分とする揮発性の鮮度保持液を、粉末状シリカゲルからなる多数の吸着体に吸着させると共に、これらの吸着体をフィルム状カバー内に収納する構成とした鮮度保持具も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
ここで、他の従来技術で用いている前記フィルム状カバーは、フッ素系撥水撥油剤で処理した和紙と、アルコール透過性とヒートシール性を有する樹脂材料(例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体であるEVA樹脂)からなるフィルム体とを積層化(ラミネート)してなる積層フィルムにより構成されている。そして、この積層フィルムは、その4辺(四方)がヒートシールにより封止され、吸着体が外部にはみ出すのを防ぐと共に、鮮度保持液の漏出を防ぐ構成としている。この結果、揮発性の鮮度保持液は、前記フィルム体を透過して徐々に外部へと揮散することにより、前述した特許文献1による従来技術と同様に鮮度保持効果を発揮するものである。
【0007】
別の従来技術による鮮度保持具は、吸着体を外側から覆う包装カバーを、親水性の樹脂材料からなるフィルム体により形成し、該フィルム体を包装カバーとして製作するときに前記吸着体の周囲でフィルム体を接着剤(シーラント層)により封止する構成としている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3159691号公報
【特許文献2】特開昭60−149452号公報
【特許文献3】特開2010−173684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した特許文献1による従来技術は、吸着体を外側から覆うフィルム状カバーに揮散用開口を設け、吸着体内の鮮度保持液を揮散用開口から食品包装体内へと徐々に揮散させる構成である。しかし、消費者等のユーザにとっては、このような揮散用開口がカバーの不良(シール不良、損傷による開口)と誤解することがあり、さらなる改良が望まれている。
【0010】
また、例えば菓子類等の食品包装体内に食品鮮度保持具を挿入して用いる場合に、複数個の食品包装体を積み重ねた状態で運搬、搬送すると、その途中等で食品鮮度保持具に大きな外力が作用することがある。そして、吸着体内に含浸させた鮮度保持液は、外力の作用を受けると、前記揮散用開口から液体状態のまま外部に滲み出す虞れがある。しかも、鮮度保持液が液体状態のまま、食品包装体内に滲み出してしまうと、吸着体内の鮮度保持液が菓子類(食品)の方へと局部的に吸い取られることがあり、これにより食品鮮度保持具としての効果が低下するばかりでなく、食品の味等に影響を与える可能性もある。
【0011】
さらに、鮮度保持剤を吸着させる吸着体には、例えば製造時の切断工程等で生じる紙粉が残ることがある。そして、このような紙粉がフィルム状カバーの揮散用開口から外部に出てくると、消費者等のユーザは、これを異物と誤解する虞れがあるために、食品鮮度保持具としての商品価値を低下させる原因になるという問題がある。
【0012】
一方、特許文献2による従来技術の鮮度保持具では、吸着体を外側から覆うフィルム状カバーのフィルム体を、アルコール透過性とヒートシール性を有したEVA樹脂を用いて形成している。しかし、このようなEVA樹脂からなるフィルム体は、鮮度保持具の外装カバーとして十分な強度を確保することができない上に、印刷時の作業性も悪いという問題がある。
【0013】
このため、特許文献2による従来技術では、EVA樹脂からなるフィルム体の補強と印刷を可能ならしめる必要性から、フッ素系撥水撥油剤で処理をした和紙を、EVA樹脂からなるフィルム体に積層化する構成としている。この場合、フッ素系撥水撥油剤は、和紙が鮮度保持液を吸収したり、あるいは食品中に含まれる水分及び油分を吸収したりして、和紙の強度が低下することを避けるために用いている。また、フッ素系撥水撥油剤は、印刷された和紙の表面を覆うことにより、印刷インキが直接食品と接触することを防止している。
【0014】
然るに、このようなフッ素系撥水撥油剤は、人体への毒性あるいは環境への蓄積性が懸念されることが報告されている。このため、フッ素系撥水撥油剤の使用は、制限を受けるようになっているのが実状である。即ち、特許文献2による従来技術の鮮度保持具は、フッ素系撥水撥油処理した和紙の使用を前提としているため、将来的に存続が困難になることが予想されるという問題がある。
【0015】
さらに、特許文献3による従来技術は、吸着体の包装カバーを製作するときにフィルム体の周囲を接着剤(シーラント層)により封止する必要があるため、接着剤の選択が難しい。また、アルコールを透過させる上で未だ改善の余地が残されている。
【0016】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、鮮度保持液が外力の作用等でカバーの外側に滲み出してしまうのを防止でき、食品等の鮮度を長期に亘り安定して保持できると共に、商品価値を高めることができるようにした食品鮮度保持具を提供することにある。
【0017】
また、本発明の他の目的は、例えばフッ素系撥水撥油処理を施した和紙を使用することなく、アルコール透過性を備えた樹脂材料からなるフィルムを用いて外側の包装カバーを形成することができるようにした食品鮮度保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題を解決するために、本発明は、食品を含む被保存物の鮮度を保持するための鮮度保持剤と、該鮮度保持剤を外側から覆う包装カバーとからなり、前記鮮度保持剤は、アルコールを主成分とした揮発性の鮮度保持液と、該鮮度保持液が含浸状態で吸着された吸着体とのいずれか一方により構成してなる食品鮮度保持具に適用される。
【0019】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記包装カバーは、アルコール透過性を有した樹脂材料からなるフィルムを用いて形成され、前記鮮度保持液が気化した状態で透過するのを許し、液体状態での透過を防ぐ透明または半透明のフィルム体と、該フィルム体の内側面に印刷を施すことによって形成された印刷層と、前記フィルム体の内側面に前記印刷層に重ねて設けられ、アルコール親和性と熱融着性を有する繊維を含んだ不織布からなる内側不織布層とにより構成したことにある。
【0020】
前記フィルム体は、アルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えた樹脂材料を用いて形成してもよく、親水性樹脂(例えば、ナイロンに代表されるポリアミド共重合体等)を用いて形成してもよい。親水性フィルムの場合には、接着剤を用いてフィルム体と内側不織布層とを積層化するのがよい。また、前記鮮度保持液が外部に蒸散する前記包装カバーの気体透過度は、前記鮮度保持液のアルコール濃度が50〜99vol %の範囲内にあるときに、170〜1,650(g/m・24hr)に調整する構成とするのがよい。
【0021】
また、請求項2の発明によると、前記包装カバーには、前記フィルム体の外側面に半透明の不織布からなる外被層を設ける構成としている。
【発明の効果】
【0022】
上述の如く、請求項1の発明によれば、鮮度保持剤を外側から覆う包装カバーを、鮮度保持液が気化した状態で透過するのを許し液体状態での透過を防ぐアルコール透過性を有したフィルム体と、該フィルム体の内側面に形成された印刷層と、前記フィルム体の内側面に該印刷層に重ねて設けられアルコール親和性と熱融着性を有する繊維を含んだ不織布からなる内側不織布層とにより構成している。これにより、例えば吸着体に含浸させた鮮度保持液は、その一部が内側不織布層に浸透しフィルム体の内面側表面に液相が形成される。そして、包装カバーのフィルム体(アルコール透過性フィルムまたは親水性フィルム)を透過しつつガス化した気体として外部へと揮散することができる。このため、従来技術のように、揮散用開口等を特別に設けることなく、鮮度保持液を外部に揮散させることができ、食品等に対する鮮度保持効果を発揮することができる。
【0023】
また、包装カバーの外側から吸着体に強制的な外力等を加えたとしても、吸着体内に含浸させた鮮度保持液は、液体状態のままフィルム体を透過することはないので、包装カバーの内部に鮮度保持液を封入状態で収容して溜めておくことができ、鮮度保持液が液体状態のまま外部に滲み出すのを前記フィルム体からなる包装カバーによって防ぐことができる。従って、吸着体に含浸させた鮮度保持液が外力の作用等で外部に滲み出してしまうのを防止でき、食品等の鮮度を長期に亘り安定して保持することができる。
【0024】
しかも、フィルム体は、例えばアルコール透過性とヒートシール性を兼ね備えた樹脂材料、例えば軟質ポリエステル樹脂(軟質の生分解性樹脂材料)を用いて形成することにより、生体、環境への影響が懸念されるフッ素化合物を使用することなく、鮮度保持具の包装カバーとして十分な強度を確保することができ、印刷時の作業性も向上することができる。さらに、フィルム体の内面側に設けた内側不織布層は、アルコール親和性と熱融着性を有することにより、フィルム体の熱シール性を高めると共に、鮮度保持液の気化(ガス化)を促進する効果を奏する。
【0025】
また、請求項2の発明では、包装カバーを構成するフィルム体の外側面に半透明の不織布からなる外被層を設けているので、フィルム体を外被層によって効果的に補強することができる。また、フィルム体の外側面にある光沢感を半透明の不織布からなる外被層で外側から抑え、包装カバーとしての見栄えを向上することができる。即ち、前記光沢感により表面が濡れているかのような誤解をユーザが持つと、これにより、内部の鮮度保持液が包装カバーの外側に滲み出したかのような印象を与えてしまう。しかし、フィルム体の外側面を半透明の外被層で覆うことにより、前記光沢感を外被層によってなくすことができ、ユーザが誤解する等の不具合をなくすことができる。
【0026】
さらに、前記フィルム体を軟質ポリエステル樹脂材料で形成することにより、包装カバーのフィルム体にアルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えた特性を与えることができ、鮮度保持具の外装カバーとしての強度を確保することができる上に、印刷時の作業性も向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態による食品鮮度保持具を斜め側方からみた斜視図である。
【図2】図1の食品鮮度保持具を上側からみた平面図である。
【図3】食品鮮度保持具を図2中の矢示 III−III 方向から拡大してみた断面図である。
【図4】吸着体を上,下2枚の積層フィルムを用いて包み込む前の状態を示す分解斜視図である。
【図5】食品鮮度保持具を図3中の矢示V−V方向から拡大してみた要部断面図である。
【図6】鮮度保持液のアルコール濃度と気体の透過度との関係を示す特性線図である。
【図7】第2の実施の形態による食品鮮度保持具を拡大して示す断面図である。
【図8】第2の実施の形態による積層フィルムを用いて吸着体を上,下方向から包み込む前の状態を示す分解斜視図である。
【図9】フィルム体の外側面に形成した多数の帯状接着剤層からなる接着層を拡大して示す展開図である。
【図10】食品鮮度保持具の要部を図7中の矢示X−X方向からみた拡大断面図である。
【図11】第2の実施の形態による鮮度保持液のアルコール濃度と気体の透過度との関係を示す特性線図である。
【図12】第3の実施の形態による食品鮮度保持具を拡大して示す断面図である。
【図13】第3の実施の形態による積層フィルムを用いて吸着体を上,下方向から包み込む前の状態を示す分解斜視図である。
【図14】第4の実施の形態による食品鮮度保持具を拡大して示す断面図である。
【図15】第5の実施の形態による食品鮮度保持具を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態による食品鮮度保持具を、食品保存のために用いた場合を例に挙げ添付図面に従って詳細に説明する。
【0029】
ここで、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は本実施の形態で採用した食品鮮度保持具を示し、該食品鮮度保持具1は、後述の吸着体2と、吸着体2を外側から封止するように覆う後述の包装カバー3とにより大略構成されている。
【0030】
2は鮮度保持液が含浸状態で吸着された鮮度保持剤としての吸着体で、該吸着体2は、例えば特殊処理高吸着性ヴァージンパルプ材等を用いて、図2〜図4に示すように長方形の平板状に形成され、その長さは、例えば20〜80mm程度で、幅寸法が15〜60mm程度となり、厚さ寸法は1〜6mm程度となっている。
【0031】
そして、吸着体2内には、例えばエチルアルコール等を主成分とする揮発性の鮮度保持液が含浸されている。この場合、鮮度保持液としては、例えばエチルアルコールが50〜99vol %、好ましくは55〜95vol %となるアルコール水溶液が用いられる。このような鮮度保持液は、吸着体2の外側面から徐々に揮発し、後述のフィルム体5を介して外部へと蒸散(揮散)される。これによって、例えば菓子類等の食品包装体(図示せず)内は、ガス化した鮮度保持液の蒸気(気体)で満たされ、鮮度保持効果が得られるものである。
【0032】
3は吸着体2を外側から覆う包装カバーを示し、該包装カバー3は、例えば後述の積層フィルム4を上,下に2枚重ねるように配置した状態で、その周縁部4Aを4辺にわたって封止することにより形成される。即ち、これらの積層フィルム4は、図4に示す如く吸着体2を上,下両側から挟んだ状態で、後述の封止部8により4辺が連続的に封止される。
【0033】
ここで、積層フィルム4は、後述のフィルム体5に対して印刷層6と内側不織布層7を積層化することにより形成される。そして、積層フィルム4は、例えば図4に示すように上,下2枚の組をなして用意され、吸着体2を上,下両側からサンドイッチ状に挟むと共に、その4辺に後述の封止部8を形成することにより、包装カバー3として吸着体2を外側から完全に封止した状態で包み込むものである。
【0034】
また、この場合の積層フィルム4は、それぞれ吸着体2よりも大きい寸法をもって長方形状をなす薄いシート(図4参照)として形成され、吸着体2から側方(例えば、前,後方向と左,右方向)に張り出す周縁部4A側が後述の封止部8により上,下方向で密封(熱シール)されるものである。そして、上,下の積層フィルム4は、各封止部8に該当する部分よりも内側に位置する部分で吸着体2を外側から覆い、これにより吸着体2の包装カバー3を構成するものである。
【0035】
5は積層フィルム4の主要部を構成する透明または半透明のフィルム体で、該フィルム体5は、アルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えた樹脂材料からなる単一層(1層)のフィルムを用いて形成され、前記鮮度保持液が気化した状態でフィルム体5を透過するのを許し、液体状態での透過を防ぐものである。そして、単一層のフィルムからなるフィルム体5は、例えば10〜70μm程度の厚みをもって形成され、鮮度保持液の気体透過度は、フィルム体5の厚みにほぼ反比例して増減される。即ち、鮮度保持液の気体透過度は、フィルム体5の厚みを薄くすると高くなり、厚くすると透過度は下がるものである。
【0036】
ここで、フィルム体5に用いる樹脂材料(アルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えた樹脂材料)としては、例えば軟質の生分解性樹脂材料である軟質ポリエステル樹脂材料が用いられる。即ち、フィルム体5に用いる樹脂材料としては、例えばポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル、または、これらの材料の幾つかを用いた共重合体、並びに、これらの複数物を主成分とした配合物から得られる軟質フィルムが挙げられる。また、フィルム体5に用いる樹脂材料として、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等の脂肪族芳香族ポリエステルから得られる軟質フィルムを用いてもよいものである。
【0037】
そして、フィルム体5は、上述の如きアルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えたフィルム材料を用いることにより、鮮度保持液が気化した状態で透過するのを許し、液体状態での透過を防ぐ機能を有している。これにより、積層フィルム4(フィルム体5)は、気体に対する透過性を有するものの、液体の透過は阻止するという性質を有するものである。
【0038】
6はフィルム体5の内側面に形成された印刷層で、この印刷層6は、例えば耐アルコール性インクを用いて、フィルム体5の内側面に印刷を施すことにより形成される。そして、フィルム体5の内側面には、印刷層6により例えば商品名、製造メーカ名、効能書き、注意書き等が必要に応じて印字される。また、印刷層6の厚みは、2〜7μm程度に設定される。積層フィルム4は、フィルム体5に印刷層6と後述の内側不織布層7を重ね合わせるように積層化して形成されるものである。
【0039】
7はフィルム体5の内側面に印刷層6に重ねて設けられた内側不織布層で、この内側不織布層7は、アルコール親和性と熱融着性とを有した繊維からなる不織布、例えばパルプ繊維の坪量が5〜30g/m、好ましくは10〜25g/mの不織布を用いて形成される。この場合、パルプ繊維は、木材、紙等の繊維に限るものではなく、この他にもセルロース、レーヨン、リンター等の親水性繊維であってもよい。以下の説明では、親水性繊維の代表例としてパルプ繊維を例に挙げて説明する。
【0040】
内側不織布層7は、アルコール親和性の高いパルプ繊維に対し、良好な熱融着性を与えるために樹脂繊維(例えば、低融点ポリオレフィンの繊維、熱溶融性ポリエチレンテレフタレートの繊維)を配合してなる2枚の不織布7A,7Bを重ね合せて構成されている。2枚の不織布7A,7Bのうち、内側に位置する不織布7Aは吸着体2と直接的に接触し、外側の不織布7Bは、フィルム体5の内側面(印刷層6)と直接的に接触してフィルム体5に積層化されるものである。
【0041】
内,外の不織布7A,7Bは、前記パルプ繊維と樹脂繊維との配合割合を適宜に変えてもよく、同一の配合割合に設定した不織布材料により形成してもよい。前記パルプ繊維と樹脂繊維との配合割合を適宜に変える場合、内側の不織布7Aは、前記パルプ繊維よりも樹脂繊維の配合割合を多くすることにより、後述の封止部8における2枚の積層フィルム4間での熱融着性、熱シール性を高めることができる。一方、外側の不織布7Bは、前記樹脂繊維よりもパルプ繊維の配合割合を大きくすることによって、熱融着性よりもアルコール親和性、アルコール透過性をより一層に高めることができる。
【0042】
より具体的には、内側の不織布7Aは、パルプ繊維の配合割合が20〜50%に対して、樹脂繊維の配合割合が50〜80%と高くなるように設定するのがよい。外側の不織布7Bは、樹脂繊維の配合割合が5〜50%に対して、パルプ繊維の配合割合が50〜95%と高くなるように設定するのがよい。前記パルプ繊維と樹脂繊維との配合割合を内,外の不織布7A,7Bで同一の割合に設定する場合には、例えばパルプ繊維の配合割合を30〜70%とし、これに応じて樹脂繊維の配合割合を適宜に選択すればよい。
【0043】
このように、内側の不織布7Aと外側の不織布7Bとからなる不織布層7は、フィルム体5の内側面に印刷層6を覆って設けられることにより、包装カバー3の内側層を構成し、封止部8における熱シール性、熱融着性を高めると共に、吸着体2に含浸させた鮮度保持液の透過を促進させる。即ち、吸着体2に含浸させた鮮度保持液は、その一部が不織布層7に浸透し、特にパルプ繊維の配合割合を多くすることにより内,外の不織布7A,7Bに鮮度保持液が浸透し、直接フィルム体5に接することによりパーベーパレーション作用が発揮され鮮度保持液の透過が促進される。また、不織布層7は、フィルム体5もよりも融点が低い樹脂繊維を用いることにより、積層フィルム4の熱シール性を高めることができる。
【0044】
8は各積層フィルム4の周縁部4A側に形成された封止部で、これらの封止部8は、図3、図4に示すように吸着体2を上,下両側から挟んだ2枚の積層フィルム4を、その外縁側に位置する4辺で封止することにより形成されている。これにより、上,下2枚の積層フィルム4は、その周縁部4Aに位置する4辺が封止部8となって密封され、内部に吸着体2を封入して収容する包装カバー3を構成するものである。
【0045】
この場合、積層フィルム4の主要部を構成するフィルム体5は、前述の如くアルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えたフィルム材料で形成され、その内側には、アルコール親和性と熱融着性とを有した繊維の不織布7A,7Bからなる不織布層7が設けられている。このため、積層フィルム4の周縁部4A側にヒートシール手段を適用することにより、フィルム体5と不織布層7(不織布7A,7B)の該当部位である外縁部側が互いに溶融される。
【0046】
この結果、上,下の積層フィルム4は、それぞれの溶融箇所において4辺の周縁部4が熱圧着(熱シール)され、吸着体2を外側から覆う包装カバー3を構成する。そして、合計4辺からなる封止部8は、各フィルム体5と不織布層7の外縁部側を密封するようにシールし、例えば吸着体2内の鮮度保持液が封止部8の位置から外部に漏れたり、揮散したりするのを阻止するものである。
【0047】
第1の実施の形態による食品鮮度保持具1は上述の如き構成を有するもので、次に、その鮮度保持動作について説明する。
【0048】
まず、食品鮮度保持具1を製造する場合には、例えば図2に示すように小袋状をなした食品鮮度保持具1が、縦方向と横方向とに多数個並べられた一連の列設状態(所謂連続包装の状態)で製造される。そして、このように一連の列設状態となった多数の食品鮮度保持具1は、製造ラインの切断工程等で図1、図2に示すような四角形の小袋状をなす食品鮮度保持具1として個別にカットされるものである。
【0049】
次に、このように製造された1つの小袋からなる食品鮮度保持具1は、例えば菓子類等の食品包装体内に一個または複数個挿入して用いられる。そして、この状態で食品鮮度保持具1の吸着体2内に含浸させた鮮度保持液は、包装カバー3内で徐々に揮発、蒸散し、ガス化した鮮度保持液の揮発成分(気体)が積層フィルム4を透過して外部に揮散される。
【0050】
この場合、包装カバー3内でガス化した鮮度保持液の揮発成分が、積層フィルム4(フィルム体5)を気体状態で透過するときに、鮮度保持液の揮散速度が過度に速いと、例えば食品包装体内(図示せず)への封入工程でアルコールが揮散してしまい、本来の鮮度保持性能を確保するのが難しくなる。一方、鮮度保持液の揮散速度が過度に遅い場合には、食品包装体内で食品の鮮度保持効果を実現するまでに時間がかかり、食品鮮度保持具としての信頼性が低下してしまう。
【0051】
そこで、発明者等は、包装カバー3を構成する積層フィルム4の素材となるフィルム体5として、アルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えた複数種類のフィルム材料を選択し、この上でフィルム材料毎に、1m当たりでの24時間(1日)にわたるアルコール透過度(g/m・24hr)と、アルコール濃度(vol %)との関係を、それぞれ個別に実験することにより調べてみた。また、フィルム体5の内側面に不織布層7を設けた場合も調べてみた。なお、このような実験は、例えば25℃の温度条件下で行ったものである。
【0052】
この場合、図6中に一点鎖線で示す特性線9(パルシールGE−F)は、例えば東セロ株式会社製の「パルシールGE−F」と呼ばれる無延伸ポリエステル共重合体(ポリブチレンサクシネート/ポリブチレンアジペートテレフタレート混合物)からなる軟質フィルムを用いてフィルム体5を形成した場合の特性を示している。なお、この「パルシールGE−F」によるフィルム体5の厚みは、例えば30μmとした場合である。
【0053】
そして、「パルシールGE−F」によるフィルム体5の場合は、例えば50〜99%の範囲内で鮮度保持液のアルコール濃度を順次変えて、その気化状態での透過度(g/m・24hr)を調べると、図6中の特性線9に示すように、アルコール濃度が99%のときには約296g、95%のときは約390g、65%では約462gとなり、50%では470g程度まで気体の透過度が高くなることを確認した。
【0054】
また、図6中に二点鎖線で示す特性線10(パルシールGE−S)の場合は、前述した特性線9とほぼ同様の材料、例えば東セロ株式会社製の「パルシールGE−S」と呼ばれる無延伸ポリエステル共重合体からなる軟質フィルムを用いてフィルム体5を形成し、該フィルム体5の厚みを、例えば50μmとした場合である。そして、この場合の気体透過度(g/m・24hr)は、特性線10に示すように、アルコール濃度が99%のときに約200g、95%のときは約300g、65%では約380gとなり、50%でも約380g程度となることが確認された。
【0055】
また、図6中に破線で示す特性線11(GS Pla)の場合は、アルコール透過性とヒートシール性を兼ね備えた材料、例えば三菱化学株式会社製の「GS Pla」と呼ばれるポリブチレンサクシネートからなる軟質フィルムを用いてフィルム体5を形成し、その厚みを20μmとした場合である。そして、この場合の気体透過度(g/m・24hr)は、特性線11に示すように、アルコール濃度が99%のときに、例えば170g前,後となり、アルコール濃度が95%では例えば260g程度となり、例えば65%程度にすると390g程度となり、例えば50%程度にすると420g程度の気体の透過度を得られることが確認された。
【0056】
また、図6中に点線で示す特性線12(エコローム)の場合は、アルコール透過性とヒートシール性を兼ね備えた材料、例えば大倉工業株式会社製の「エコローム」と呼ばれるポリブチレンサクシネートアジぺートからなる軟質フィルムを用いてフィルム体5を形成し、その厚みを30μmとした場合である。そして、この場合の気体透過度(g/m・24hr)は、特性線12で示すように、アルコール濃度が99%のときに、例えば690g前,後となり、アルコール濃度が95%では、例えば800g程度まで透過度が増加し、例えば65%程度にすると900g程度となり、例えば50%程度にすると950g程度の気体の透過度が得られることが確認された。
【0057】
一方、図6中に実線で示す特性線13(エコローム/HOS−18P)は、前述したエコローム(特性線12)からなるフィルム体5に対し内側不織布層7を追加して設けた場合のアルコール透過特性を表している。この場合、内側不織布層7は、「HOS−18P」と呼ばれる廣瀬製紙製パルプ不織布(坪量18g/m)を用い、内,外の不織布7A,7Bは、パルプ繊維と樹脂繊維との配合割合が等しい、即ちパルプ繊維60%、樹脂繊維(熱溶融性ポリエチレンテレフタレート)40%となった2枚の不織布により形成されている。
【0058】
そして、特性線13(エコローム/HOS−18P)の場合は、フィルム体5に対し内側不織布層7を追加して設けることにより、アルコール濃度が99%のときに、例えば1350g以上までアルコール(気体)の透過度が上がり、アルコール濃度が95%では、例えば1400g程度まで透過度が増加する。そして、特性線13の如くアルコール濃度を徐々に下げて、例えば65%程度にすると1500g程度の透過度となり、例えば50%程度にすると1550g程度の気体の透過度が得られることを確認できた。
【0059】
また、図6中に実線で示す特性線14(パルシールGE−F/HOS−18P)は、前述した「HOS−18P」からなる内側不織布層7を、パルシールGE−F(特性線9)からなるフィルム体5の内側面に追加して設けた場合の透過特性を表している。この場合も内側不織布層7を設けることにより、アルコール濃度が99%のときに、例えば634g程度まで透過度が上がり、アルコール濃度が95%では、例えば708g程度まで透過度が増加する。そして、アルコール濃度を65%程度にすると、例えば813g程度の透過度となり、例えば50%程度にすると840g程度の気体の透過度が得られることを確認できた。
【0060】
また、図6中に実線で示す特性線15(パルシールGE−S/HOS−18P)は、前述した「HOS−18P」からなる内側不織布層7を、パルシールGE−S(特性線10)からなるフィルム体5の内側面に追加して設けた場合の透過特性を表している。この場合も内側不織布層7を設けることにより、アルコール濃度が99%のときに、例えば480g程度まで透過度が上がり、アルコール濃度が95%では、例えば550g程度まで透過度が増加する。そして、アルコール濃度を65%程度にすると、例えば640g程度の透過度となり、例えば50%程度にすると660g程度の気体の透過度が得られることを確認できた。
【0061】
さらに、図6中に実線で示す特性線16(GS Pla/HOS−18P)は、前述した「HOS−18P」からなる内側不織布層7を、GS Pla(特性線11)からなるフィルム体5の内側面に追加して設けた場合の透過特性を表している。この場合も内側不織布層7を設けることにより、アルコール濃度が99%のときに、例えば320g程度まで透過度が上がり、アルコール濃度が95%では、例えば480g程度まで透過度が増加する。そして、アルコール濃度を65%程度にすると、例えば670g程度の透過度となり、例えば50%程度にすると750g程度の気体の透過度が得られることを確認できた。
【0062】
そこで、本発明者等は、フィルム体5に用いるアルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えたフィルム材料の特性(即ち、その材質、厚さと鮮度保持液のアルコール濃度との関係)とに注目し、例えば図6中の特性線9〜12に示した透過特性等を参考にして、所望される鮮度保持の用途等を満たすフィルム体5を形成することを検討した。この上で、フィルム体5の内側面に不織布層7を設けることにより、フィルム体5の良好なヒートシール性を確保すると共にアルコール透過度を上昇させることを検討した。
【0063】
即ち、アルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えたフィルム体5の材質、フィルム体5の厚さ、不織布層7の材料特性、吸着体2に含浸させる鮮度保持液のアルコール濃度を適宜に選択することにより、例えば食品包装体内の食品(図示せず)に対する鮮度の保持期間を、それぞれの用途に応じて適正に調整することができ、鮮度保持液の揮散速度が過度に速くなったり、遅くなったりするのを抑えることができるとの知見を得たものである。
【0064】
かくして、本実施の形態によれば、1つの小袋からなる食品鮮度保持具1を例に挙げた場合に、吸着体2を外側から覆う包装カバー3は、上,下2枚の積層フィルム4を互いに重ね合わせ、この状態で2枚の積層フィルム4の周縁部4Aを4辺にわたって封止することにより形成している。実際の製造工程では、多数の鮮度保持具1を包装カバー3と共に連続包装の状態で並べて製造し、最終段階で1つの小袋からなる食品鮮度保持具1にカットする。
【0065】
そして、この積層フィルム4は、アルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えた樹脂材料からなるフィルムを用いて形成され前記鮮度保持液が気化した状態で透過するのを許し液体状態での透過を防ぐ透明または半透明のフィルム体5と、該フィルム体5の内側面に印刷を施すことによって形成された印刷層6と、該印刷層6に重合せるようにフィルム体5の内側面に設けられアルコール親和性と熱融着性を有する繊維を含んだ内,外の不織布7A,7Bからなる内側不織布層7とにより構成している。
【0066】
このため、吸着体2に予め含浸させた鮮度保持液は、その一部が不織布層7内へと毛細管現象等により浸透し、内,外の不織布7A,7Bにおいて吸着体2からの液体の供給が促進され、不織布層7は、鮮度保持液を直接フィルム体5に接触させることによりアルコール透過を促進させるパーベーパレイション作用を発揮する。即ち、吸着体2に含浸させた鮮度保持液のうち不織布層7内に浸透した液体は、アルコール透過性を有する包装カバー3(積層フィルム4)のフィルム体5の内表面全体に直接供給され、このフィルム体5を透過して外部へと揮散することができる。これにより、不織布層7を持たないフィルム体5のみの場合に比較して、より促進された状態で鮮度保持液を外部に揮散させることができ、食品等に対する鮮度保持効果を発揮することができる。
【0067】
また、吸着体2を外側から覆う包装カバー3は、積層フィルム4の主要部を構成するフィルム体5を、アルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えたフィルム材料で形成し、その内側には、アルコール親和性と熱融着性とを有した繊維の不織布層7を設ける構成としている。このため、上,下2枚の積層フィルム4からなる包装カバー3は、合計4辺からなる封止部8により各フィルム体5と不織布層7の外縁部側を密封するようにシールでき、封止部8における熱シール性、熱融着性を高めることができる。
【0068】
これにより、吸着体2に含浸させた鮮度保持液が封止部8の位置から外部に漏れたり、揮散したりするのを抑えることができる。即ち、包装カバー3の外側から吸着体2に強制的な外力等を加えたとしても、吸着体2内に含浸させた鮮度保持液は、液体状態のままフィルム体5を透過することはないので、包装カバー3の内部に鮮度保持液を封入状態で溜めておくことができ、鮮度保持液が液体状態のまま外部に滲み出すのをフィルム体5からなる包装カバー3によって防ぐことができる。
【0069】
しかも、フィルム体5は、アルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えたフィルム材料の材質と厚みを適宜に選択して形成し、鮮度保持液のアルコール濃度も適宜に選択して調整すると共に、印刷層6(アルコール耐性インク)による印刷面積と非印刷面積との割合も適宜に選択して調整している。これにより、鮮度保持液の気体が吸着体2から包装カバー3の外側へと透過、揮散するときの速度を適正化することができ、例えば食品包装体内の食品(図示せず)に対する鮮度保持具1による鮮度保持効果を適正に調整することができる。
【0070】
即ち、包装カバー3の気体透過度は、前記鮮度保持液のアルコール濃度を50〜99vol %の範囲、好ましくは65〜95vol %の範囲内としたときに、170〜1,650g/m・24hr、好ましくは260〜1,600g/m・24hrとなるように調整されるものである。例えば、フィルム体5の厚みを大きくすれば、図6中の特性線15,16に示す透過度を170〜260g程度まで下げることができ、フィルム体5を薄くすることにより、例えば特性線13に示す透過度を1600〜1650g程度まで上げることができる。
【0071】
従って、本実施の形態による食品鮮度保持具1によれば、吸着体2に含浸させた鮮度保持液が包装カバー3の外部に滲み出してしまうのを防止でき、食品鮮度保持具1としての寿命、信頼性を高めることができる。そして、フィルム体5に用いる軟質ポリエステル樹脂フィルム(軟質の生分解性樹脂フィルム)としては、例えば図6中に特性線9〜12で示した透過特性の如く、それぞれの材質、厚み等の選択を行ったり、アルコール濃度を調整したりすることができる。また、内側不織布層7についても、例えばパルプ繊維の坪量を5〜30g/m、好ましくは10〜25g/mの範囲内に設定し、内,外の不織布7A,7Bにおいてはパルプ繊維と樹脂繊維との配合割合を適宜に変えることができる。
【0072】
このように、パルプ繊維と樹脂繊維との配合割合を適宜に変える場合、内側の不織布7Aは、前記パルプ繊維よりも樹脂繊維の配合割合を多くすることにより、各封止部8における2枚の積層フィルム4間での熱融着性、熱シール性を高めることができる。一方、外側の不織布7Bは、前記樹脂繊維よりもパルプ繊維の配合割合を大きくすることによって、熱融着性よりもアルコール親和性、アルコール透過性をより一層に高めることができる。
【0073】
これにより、鮮度保持液が吸着体2から包装カバー3(フィルム体5)の外部に揮散するときの揮散速度を、保存対象の食品等に応じて適正に調整することができる。この結果、食品鮮度保持具1としての商品価値をより一層に高めることができ、食品等の鮮度を長期に亘り安定して保持することができる。
【0074】
また、本実施の形態で採用した食品鮮度保持具1の包装カバー3は、吸着体2を外側から完全に包み込んだ状態で4辺の封止部8により封止する構造であるから、例えば食品包装体内の食品(図示せず)に吸着体2が直に接触することはなく、吸着体2内の鮮度保持液が食品の方に吸い取られる等の不具合を解消でき、食品鮮度保持具1としての寿命を延ばすことができる。
【0075】
一方、例えば商品名、注意書き等を必要に応じて印字する印刷層6は、例えば食品衛生性が確保される耐アルコール性インクを用いてフィルム体5の内側面に印刷を施すことにより形成される。このため、食品等の鮮度を保持する上での食品安全性を確保することができ、印刷層6に用いたインクが包装カバー3の外側に滲み出す等の不具合をなくすことができる。
【0076】
また、アルコール透過性とヒートシール性を兼ね備えたフィルム材料によりフィルム体5を形成し、その内側には、アルコール親和性と熱融着性とを有した繊維の不織布層7を設けているため、積層フィルム4の周縁部4A側にヒートシール手段を適用することにより、フィルム体5と不織布層7の該当部位(外縁部側)を溶融させ、上,下の積層フィルム4間を互いに溶融させて熱圧着(熱シール)を容易に行うことができる。
【0077】
このように、フィルム体5と不織布層7からなる積層フィルム4の周縁部4A寄りの位置では、フィルム体5と不織布層7自体が持つヒートシール性により、包装カバー3の4辺側に各封止部8を容易に形成することができ、その内部に吸着体2を封じ込めておくことができる。しかも、フィルム体5と不織布層7は、ヒートシール性に加えてアルコール透過性を有することにより、鮮度保持液の気体をフィルム体5からなる包装カバー3の外側へと透過させ、食品に対する鮮度保持効果を発揮することができる。
【0078】
次に、図7ないし図11は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、包装カバーを構成するフィルム体の外側面に、半透明の不織布からなる外被層を追加して設ける構成したことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0079】
図中、21は本実施の形態で採用した食品鮮度保持具で、該食品鮮度保持具21は、第1の実施の形態で述べた食品鮮度保持具1と同様に、吸着体2と、フィルム体5、内側不織布層7等からなる包装カバー22とにより構成されている。しかし、この場合の食品鮮度保持具21は、後述の積層フィルム23の外側面に外被層26が追加されている点で第1の実施の形態とは異なるものである。
【0080】
22は吸着体2を外側から覆う包装カバーで、該包装カバー22も第1の実施の形態で述べた包装カバー3と同様に構成され、内部に吸着体2を装入した状態で4辺が封止部8により連続的に封止される。しかし、この場合の包装カバー22は、その素材となる積層フィルム23に後述の外被層26が追加されている点で第1の実施の形態とは異なっている。
【0081】
ここで、積層フィルム23は、フィルム体5の内側面に対して印刷層6と不織布層7を積層化し、フィルム体5の外側面には後述の接着層24を介して外被層26を積層化することにより形成される。そして、積層フィルム23は、第1の実施の形態で述べた積層フィルム4(図4参照)と同様に吸着体2よりも大きい寸法をもって長方形状をなす薄いシートとして形成され、吸着体2から側方(例えば、前,後方向と左,右方向)に張り出す周縁部23A側が封止部8により上,下方向で密封(熱シール)されるものである。このとき、後述する外被層26の周縁部も、フィルム体5に熱圧着されるものである。
【0082】
24はフィルム体5の外側面に形成された接着層を示し、この接着層24は、例えば食品衛生性が確保される耐油性及び耐アルコール性を有する接着剤等により形成され、後述の外被層26をフィルム体5の外側面に積層化するために用いるものである。そして、接着層24は、例えば図9に示すように格子模様をなしてフィルム体5の外側面に形成された多数の帯状接着剤層24A,24B等により構成され、これらの厚みは、3〜10μm程度に形成されるものである。
【0083】
ここで、各帯状接着剤層24A,24B間に区画される格子状または菱形状空間25(図9参照)は、鮮度保持液の気体がフィルム体5を透過するときの透過空間を適正に確保できるようにしている。これにより、接着層24の各帯状接着剤層24A,24Bが、気体(揮発してガス化した鮮度保持液)に対し高い不透過性を有する場合でも、これらの各帯状接着剤層24A,24B間に形成される透過空間としての菱形状空間25を通じて、鮮度保持液の気体はフィルム体5の外側へと透過することができる。
【0084】
そして、フィルム体5の透過度が大きい場合には、各帯状接着剤層24A,24Bからなる不透過性接着剤層の塗布面積を大きく取って透過空間を制限すればよい。これにより、適正な鮮度保持液の気体をフィルム体5の外側へと透過させることができる。また、後述の外被層26は、接着層24の各帯状接着剤層24A,24Bによってフィルム体5の外側面に積層化されるものである。なお、フィルム体5が十分なヒートシール性を備えている場合には、当該フィルム体5の外側面に接着層なしで、外被層26を直接重ね合わせる構成としてもよい。
【0085】
26はフィルム体5等と共に積層フィルム23を構成する外被層で、該外被層26は、半透明の不織布を用いて形成され、フィルム体5と同様な大きさを有している。不織布からなる外被層26は、フィルム体5の外側面に接着層24を介して貼り合せるように一体化(積層化)される。外被層26を構成する不織布の素材は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ乳酸、または、これらの材料のうち2種類以上を選択的に組合せた合成樹脂材料からなる微細な繊維を、絡め合わせて布状または薄いシート状に形成した気体透過性の材料を用いて形成されている。
【0086】
ここで、不織布からなる外被層26は、その内,外を気体が透過するのを許し、液体の透過もある程度は許す性質を有している。そして、外被層26は、フィルム体5の外側面を全面にわたって覆うことにより、フィルム体5を外側から補強することができる。また、フィルム体5の外側面にある光沢感を、半透明の外被層26により外側から抑えることができ、包装カバー22(食品鮮度保持具21)の見栄え、商品価値を高めるものである。
【0087】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、包装カバー22の素材となる積層フィルム23を、アルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えたフィルム材料からなるフィルム体5と、該フィルム体5の内側面に積層化して形成された印刷層6と、該印刷層6を挟んでフィルム体5の内側面に設けられアルコール親和性と熱融着性を有する繊維を含んだ内,外の不織布7A,7Bからなる内側不織布層7と、フィルム体5の外側面に接着層24を介して積層化された外被層26とにより構成している。これにより、吸着体2から鮮度保持液を包装カバー22の外側へと徐々に揮散させることができ、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0088】
ここで、図11中に示す特性線27(M/PS)は、前述した東セロ株式会社製の「パルシールGE−F」からなる軟質フィルム(厚み30μm)を用いてフィルム体5を形成し、外被層26を「マリックス」と呼ばれるユニチカ製ポリエステル長繊維不織布70200WSO(目付20g/m)により形成した場合の透過特性を示している。なお、この場合の実験は、例えば28℃の温度条件下で行ったものである。
【0089】
そして、フィルム体5に外被層26を設けた「M/PS」による鮮度保持具の場合は、例えば50〜99%の範囲内で鮮度保持液のアルコール濃度を順次変えて、その気化状態での透過度(g/m・24hr)を調べると、図11中の特性線27に示すように、アルコール濃度が99%のときには約543g、95%のときは約600g、65%では約630gとなり、50%では620g程度に気体の透過度を設定できることを確認した。
【0090】
これに対し、図11中に実線で示す特性線28(M/PS/HOS−2P−18)は、前述した「M/PS」による鮮度保持具のフィルム体5の内側面に不織布層7を追加して設けた場合の透過特性であり、この場合の不織布層7は、「HOS−2P−18」と呼ばれる廣瀬製紙製パルプ不織布(坪量18g/m)を用いて形成されている。不織布層7のうち内側の不織布7Aは、パルプ繊維が30%で、熱溶融性ポリエチレンテレフタレートの樹脂繊維が70%の配合割合に設定され、外側の不織布7Bは、パルプ繊維90%、前記樹脂繊維が10%の配合割合に設定されている。
【0091】
そして、特性線28(M/PS/HOS−2P−18)の場合は、フィルム体5の内側に「HOS−2P−18」の不織布層7を設けることにより、アルコール濃度が99%のときに、例えば680g程度までアルコール(気体)の透過度が上がり、アルコール濃度が95%では、例えば800g程度まで透過度が増加する。そして、特性線28の如くアルコール濃度を徐々に下げて、例えば65%程度にすると840g程度の透過度となり、例えば50%程度にすると830g程度の気体の透過度が得られることを確認できた。
【0092】
また、図11中に実線で示す特性線29(M/PS/NP−2P−18)は、前述した「M/PS」による鮮度保持具のフィルム体5の内側面に不織布層7を追加して設けた場合の透過特性であり、この場合の不織布層7は、「NP−2P−18」と呼ばれる廣瀬製紙製パルプ不織布(坪量18g/m)を用いて形成されている。不織布層7のうち内側の不織布7Aは、パルプ繊維が30%で、低融点ポリオレフィンの樹脂繊維が70%の配合割合に設定され、外側の不織布7Bは、パルプ繊維90%、前記樹脂繊維が10%の配合割合に設定されている。
【0093】
そして、特性線29(M/PS/NP−2P−18)の場合は、フィルム体5の内側に「NP−2P−18」の不織布層7を設けることにより、アルコール濃度が99%のときに、例えば600g程度にアルコール(気体)の透過度が設定され、アルコール濃度が95%では770g程度となり、例えば65%程度にすると760g程度の透過度となり、例えば50%程度にすると750g程度の気体の透過度が得られることを確認できた。
【0094】
ここで、第2の実施の形態で採用した積層フィルム23は、図8に示すように内側面に印刷層6と内側不織布層7が形成されるフィルム体5の外側面に、例えば櫛歯状をなす吐出ノズル手段(図示せず)等を用いて接着層24を形成する。そして、接着層24の上側から外被層26を被せ、この状態で外被層26をフィルム体5の外側面に積層化することにより、フィルム体5、接着層24および外被層26が一体化された積層フィルム23を形成する。
【0095】
次に、このように製作された積層フィルム23は、例えば上,下2枚の組をなして用意され、吸着体2を上,下両側からサンドイッチ状に挟むと共に、その4辺に封止部8を形成することにより、包装カバー22として吸着体2を外側から完全に封止した状態で包み込むものである。
【0096】
また、第2の実施の形態による食品鮮度保持具21を製造する場合でも、第1の実施の形態で述べた小袋状をなす食品鮮度保持具1(図2参照)と同様に、縦方向と横方向とに多数個並べられた一連の列設(連続包装)状態で製造される。そして、このように連続包装の状態となった多数の食品鮮度保持具21は、製造ラインの切断工程等で四角形の小袋状をなす食品鮮度保持具21(図1参照)として個別にカットされるものである。
【0097】
然るに、第2の実施の形態では、フィルム体5の外側面に接着層24を介して外被層26を積層化し、これによって積層フィルム23(包装カバー22)を形成する構成としている。このため、フィルム体5を外被層26により補強できると共に、フィルム体5の外側面にある光沢感を半透明の外被層26により外側から抑えることができ、包装カバー22(食品鮮度保持具21)としての見栄え、商品価値を高めることができる。
【0098】
特に、フィルム体5の外側面に光沢感があると、表面が濡れているかのような誤解をユーザに与え易く、これにより、内部の鮮度保持液が包装カバー22の外側に滲み出したかのような印象を与えてしまう。しかし、本実施の形態による食品鮮度保持具21では、フィルム体5の外側面を半透明の外被層26で覆うことにより、前記光沢感を外被層26によってなくすことができ、ユーザが誤解する等の不具合をなくすことができる。
【0099】
しかも、第2の実施の形態では、フィルム体5に用いるアルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えたフィルム材料の材質と厚み、鮮度保持液のアルコール濃度、印刷層6による印刷面積と非印刷面積との割合、内側不織布層7を構成するパルプ繊維の坪量、内,外の不織布7A,7Bにおける樹脂繊維とパルプ繊維との配合割合、並びに帯状接着層24A,24Bによる菱形状空間25の広さを適宜に選択して調整することにより、鮮度保持液の気体が吸着体2から包装カバー22の外側へと透過、揮散するときの速度を適正化することができ、例えば食品包装体内の食品(図示せず)に対する鮮度保持具21による鮮度保持効果を適正に調整することができる。
【0100】
なお、前述した第2の実施の形態では、フィルム体5の外側面に接着層24を介して外被層26を積層化してなる積層フィルム23を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、フィルム体5の外側面に接着層なしで、外被層26を直接重ね合わせる構成としてもよい。
【0101】
この場合、フィルム体5は、アルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えたフィルム材料により形成している。このため、フィルム体5のヒートシール性を活用することにより、外被層26をフィルム体5の外側面に直接的に積層化して設けることができる。即ち、吸着体2から側方(例えば、前,後方向と左,右方向)に張り出す周縁部23A側を、封止部8により上,下方向で密封(熱シール)するときに、外被層26の周縁部もフィルム体5に熱圧着することができるものである。
【0102】
次に、図12および図13は本発明の第3の実施の形態を示し、第3の実施の形態の特徴は、包装カバーを構成する上,下2枚の積層フィルムのうち、一方の積層フィルムはフィルム体の内側面に印刷層と内側不織布層とを設ける構成とし、他方の積層フィルムはフィルム体の内側面に印刷層のみを設け、不織布層は省略する構成したことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0103】
図中、31は本実施の形態で採用した食品鮮度保持具で、該食品鮮度保持具31は、第1の実施の形態で述べた食品鮮度保持具1と同様に、吸着体2と包装カバー32とにより構成されている。しかし、この場合の食品鮮度保持具31は、包装カバー32を構成する上,下2枚の積層フィルム33,34を下記のように変更している点で第1の実施の形態とは異なるものである。
【0104】
即ち、上,下2枚の積層フィルム33,34のうち一方の積層フィルム33は、第1の実施の形態で述べた積層フィルム4と同様にフィルム体5の内側面に印刷層6と内側不織布層7(2枚の不織布7A,7B)とを設ける構成としている。しかし、他方の積層フィルム34は、フィルム体5の内側面に印刷層6を設けているだけであり、不織布層は設けられていない。
【0105】
そして、積層フィルム33,34は、第1の実施の形態で述べた積層フィルム4(図4参照)と同様に吸着体2よりも大きい寸法をもって長方形状をなす薄いシートとして形成され、吸着体2から側方(例えば、前,後方向と左,右方向)に張り出す周縁部33A,34A側が後述の封止部35により上,下方向で密封(熱シール)されるものである。このとき、積層フィルム33,34の周縁部33A,34A間は、一方の積層フィルム33に設けた不織布層7の熱融着性により強固に熱圧着され、封止部35における熱シール性、熱融着性を高めることができる。
【0106】
35は積層フィルム33,34の周縁部33A,34A側に形成された封止部で、これらの封止部35は、例えば上,下に重ね合わせた2枚の積層フィルム33,34を、その外縁側に位置する4辺で封止することにより形成されている。これにより、上,下2枚の積層フィルム33,34は、その周縁部33A,34Aに位置する4辺が封止部35となって密封され、内部に鮮度保持液の吸着体2を収容する包装カバー32を構成するものである。
【0107】
かくして、このように構成される第3の実施の形態でも、包装カバー32を構成する上,下2枚の積層フィルム33,34のうち、一方の積層フィルム33にはフィルム体5の内側面に印刷層6と内側不織布層7とを設ける構成としているので、吸着体2に含浸させた鮮度保持液を、第1の実施の形態と同様に外部に揮散させ、食品等に対する鮮度保持効果を発揮することができる。
【0108】
特に、第3の実施の形態では、上,下2枚の積層フィルム33,34のうち他方の積層フィルム34については、フィルム体5の内側面に印刷層6を設けるだけで、不織布層は省略する構成としている。このため、例えば第1の実施の形態による包装カバー3よりもアルコールの透過度を、包装カバー32の方が下がるように調整でき、2枚の積層フィルム33,34により揮散速度の調整を行うことができる。また、一方の積層フィルム33よりも他方の積層フィルム34を簡単な構成とすることができ、部品点数を削減して製造工程の簡略化等を図ることができる。
【0109】
次に、図14は本発明の第4の実施の形態を示し、この実施の形態の特徴は、鮮度保持液を液体状態で包装カバー内に封入して設ける構成したことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0110】
図中、41は本実施の形態で採用した食品鮮度保持具で、該食品鮮度保持具41は、第1の実施の形態で述べた食品鮮度保持具1のように吸着体2を用いることなく、後述の包装カバー43内に鮮度保持剤としての鮮度保持液42を直接的に封入する構成としている。
【0111】
この場合の鮮度保持液42には、第1の実施の形態でも述べたように、例えばエチルアルコールが50〜99vol %、好ましくは55〜90vol %となるアルコール水溶液が用いられる。そして、このような鮮度保持液42は、包装カバー43内で徐々に揮発し、気体状態となってフィルム体5を介して外部へと蒸散される。
【0112】
43は本実施の形態で採用した包装カバーを示し、該包装カバー43は、第1の実施の形態で述べた包装カバー3と同様に積層フィルム4を用いて構成されている。そして、この積層フィルム4は、第1の実施の形態でも述べたように、フィルム体5の内側面に印刷層6と内側不織布層7(図5参照)を積層化して形成されるものである。
【0113】
44は各積層フィルム4の周縁部4A側に形成された封止部で、これらの封止部44は、例えば上,下に重ね合わせた2枚の積層フィルム4を、その外縁側に位置する4辺で封止することにより形成されている。これにより、上,下2枚の積層フィルム4は、その周縁部4Aに位置する4辺が封止部44となって密封され、内部に鮮度保持液42を封入して収容する包装カバー43を構成するものである。
【0114】
かくして、このように構成される本実施の形態では、フィルム体5、印刷層6および内側不織布層7からなる積層フィルム4を用いて形成した包装カバー43内に、揮発性の鮮度保持液42を液体状態で封入する構成としている。このため、例えば第1の実施の形態で用いた吸着体2を不要にすることができ、部品点数を削減して製造工程の簡略化等を図ることができる。
【0115】
また、第4の実施の形態では、アルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えた軟質の生分解性樹脂フィルムからなるフィルム体5を用いて積層フィルム4、包装カバー43を形成することにより、包装カバー43内の鮮度保持液42が液体状態のままで外部に滲み出すのを防ぐことができ、食品等の鮮度を長期に亘り安定して保持することができると共に、食品鮮度保持具41としての商品価値を高めることができる。
【0116】
そして、包装カバー43の外縁部に設けた合計4辺からなる封止部44は、各フィルム体5の外縁部側を密封するようにシールし、包装カバー43内に液体のまま収容した鮮度保持液42が封止部44の位置から外部に漏れたり、蒸散(揮散)したりするのを阻止することができる。
【0117】
次に、図15は本発明の第5の実施の形態を示し、この実施の形態の特徴は、外被層を有した包装カバー内に鮮度保持液を封入して設ける構成したことにある。なお、本実施の形態では前記第2の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0118】
図中、51は本実施の形態で採用した食品鮮度保持具で、該食品鮮度保持具51は、第2の実施の形態で述べた食品鮮度保持具21のように吸着体2を用いることなく、後述の包装カバー52内に鮮度保持液42を直接的に封入する構成としている。この場合の鮮度保持液42は、前記第4の実施の形態で述べたものと同様である。
【0119】
52は本実施の形態で採用した包装カバーを示し、該包装カバー52は、第2の実施の形態で述べた包装カバー22と同様に積層フィルム23を用いて構成されている。そして、この積層フィルム23は、第2の実施の形態でも述べたように、フィルム体5の内側面に印刷層6と内側不織布層7(図10参照)を積層化し、フィルム体5の外側面には接着層24を介して外被層26を積層化することにより形成されている。
【0120】
53は各積層フィルム23の周縁部23A側に形成された封止部で、これらの封止部53は、例えば上,下に重ね合わせた2枚の積層フィルム23を、その外縁側に位置する4辺で封止することにより形成されている。これにより、上,下2枚の積層フィルム23は、その周縁部23Aに位置する4辺が封止部53となって密封され、内部に鮮度保持液42を封入して収容する包装カバー52を構成するものである。
【0121】
かくして、このように構成される本実施の形態では、フィルム体5、印刷層6、内側不織布層7、接着層24および外被層26からなる積層フィルム23を用いて形成した包装カバー52内に揮発性の鮮度保持液42を液体状態で封入する構成としている。このため、例えば第1,第2の実施の形態で用いた吸着体2を不要にすることができ、部品点数を削減して製造工程の簡略化等を図ることができる。
【0122】
また、鮮度保持液42を内部に封入した包装カバー52は、フィルム体5の外側面に接着層24を介して外被層26を積層化しているため、外側面の光沢感を半透明の外被層26により抑えることができ、包装カバー52(食品鮮度保持具51)の見栄え、商品価値を高めることができる。
【0123】
なお、前述した第5の実施の形態では、包装カバー52に用いる積層フィルム23を、フィルム体5の外側面に接着層24、外被層26を積層化して設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、フィルム体5の外側面に接着層なしで、外被層26を直接重ね合わせる構成としてもよい。この場合、フィルム体5は、アルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えたフィルム材料により形成しているので、フィルム体5のヒートシール性を活用することにより、外被層26をフィルム体5の外側面に直接的に積層化して設けることができるものである。
【0124】
また、前記各実施の形態では、アルコール透過性とヒートシール性とを兼ね備えた樹脂材料を用いてフィルム体5を形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば前述した特許文献3に記載のアルコール透過性を備えた親水性フィルム(例えば、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド共重合体、または「エバール」と呼ばれるエチレン・ビニルアルコール共重合体等)を用いてフィルム体を形成してもよい。そして、この場合には、親水性フィルムからなるフィルム体と内側不織布層との間を、接着剤により印刷層と重ね合せて接着し、これにより積層フィルムを構成してもよいものである。
【0125】
一方、前記各実施の形態では、内側不織布層7を内,外2枚の不織布7A,7Bを用いて構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば1枚の不織布で内側不織布層を構成してもよく、3枚以上の不織布を重ね合わせて内側不織布層を構成してもよい。この場合の不織布は、パルプ繊維によりアルコール親和性、透過性を高めることができ、樹脂繊維により熱融着性を高めるものである。
【0126】
また、前記第1の実施の形態では、図4に例示したように2枚の積層フィルム4により、吸着体2を上,下両側からサンドイッチ状に挟む構成とする場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば1枚の積層フィルムを用いて吸着体を外側から包み込むように、半分に折曲げて残りの三辺を封止するかたちで包装カバーを形成する構成としてもよいものである。そして、このような変更は、第2〜第5の実施の形態についても同様に可能である。
【0127】
また、前記第1の実施の形態では、フィルム体5を単一層のフィルムにより形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば2枚または3枚のフィルムを積層化してなるラミネートフィルムによりフィルム体を形成してもよい。そして、この場合のフィルム体は、例えば同一種類のアルコール透過性を有するフィルムをラミネート(積層化)して形成してもよく、異なる種類のフィルム材料を選択してラミネートフィルムを構成してもよい。そして、この点は第2〜第5の実施の形態についても同様である。
【0128】
また、前記第2,第4および第5の実施の形態においても、前記第3の実施の形態で述べたように、包装カバーを構成する上,下2枚の積層フィルムのうち、一方の積層フィルムはフィルム体の内側面に印刷層と内側不織布層とを設ける構成とし、他方の積層フィルムはフィルム体の内側面に印刷層のみを設け、不織布層をなくす構成としてもよいものである。
【0129】
また、前記第1の実施の形態では、吸着体2と包装カバー3(積層フィルム4)を長方形状に形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば吸着体は粉末状、粒状、長方形以外の多角形状をなす平板体または円柱体等により形成してもよく、包装カバーについても吸着体の形状に応じて変更が可能である。そして、この点は第2の実施の形態についても同様である。
【0130】
さらに、前記第1の実施の形態では、例えば高吸着性ヴァージンパルプ材等を用いて吸着体2を構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば厚紙、濾紙等からなる紙類、スポンジ、シリカゲルまたはゼオライト等からなる多孔質吸収材を用いて吸着体を構成してもよい。そして、この点は第2の実施の形態についても同様である。
【符号の説明】
【0131】
1,21,31,41,51 食品鮮度保持具
2 吸着体(鮮度保持剤)
3,22,32,43,52 包装カバー
4,23,33,34 積層フィルム
5 フィルム体
6 印刷層
7 内側不織布層
7A、7B 不織布
8,35,44,53 封止部
24 接着層
26 外被層
42 鮮度保持液(鮮度保持剤)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を含む被保存物の鮮度を保持するための鮮度保持剤と、該鮮度保持剤を外側から覆う包装カバーとからなり、前記鮮度保持剤は、アルコールを主成分とした揮発性の鮮度保持液と、該鮮度保持液が含浸状態で吸着された吸着体とのうちいずれか一方により構成してなる食品鮮度保持具において、
前記包装カバーは、
アルコール透過性を有した樹脂材料からなるフィルムを用いて形成され、前記鮮度保持液が気化した状態で透過するのを許し、液体状態での透過を防ぐ透明または半透明のフィルム体と、
該フィルム体の内側面に印刷を施すことによって形成された印刷層と、
前記フィルム体の内側面に前記印刷層に重ねて設けられ、アルコール親和性と熱融着性を有する繊維を含んだ不織布からなる内側不織布層とにより構成したことを特徴とする食品鮮度保持具。
【請求項2】
前記包装カバーには、前記フィルム体の外側面に半透明の不織布からなる外被層を設ける構成としてなる請求項1に記載の食品鮮度保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−62102(P2012−62102A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208946(P2010−208946)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(500025019)株式会社フレテック (5)
【Fターム(参考)】