説明

食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤

【課題】 インスリンやGIP等のホルモン分泌抑制効果を有する食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤の提供。
【解決手段】 セルロース繊維を含む食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤であって、前記セルロース繊維が、平均繊維径が200nm以下で、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gのものである、食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食事によるインスリンやGIP等の分泌を抑制することができる食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
Gastric inhibitory polypeptide(GIP)は、グルコース依存性インスリン分泌を増強する消化管ホルモンであり、摂食時、食餌中の脂質等によりその分泌が亢進されることが知られている。また、GIPは、胃酸分泌抑制作用や胃運動抑制作用を有することが知られている(非特許文献1〜3)ことから、GIPの分泌を阻害する物質は、消化促進や胃もたれの改善に有用であると考えられる。そして、これまでの研究によって、GIPの機能を阻害する物質として、3−ブロモ−5−メチル−2−フェニルピラゾロ[1,5−a]ピリミジンー7−オール(BMPP)が知られ、食後GIPの分泌を抑制するものとして、グアガム等が知られている(特許文献1、非特許文献4〜9)。しかしながら、前者の物質は、in vivoにおけるGIP機能阻害効果が確認されておらず、また後者の物質は脂質摂取時のGIP分泌抑制効果が検討されていないという問題があり、また、胃もたれ改善効果等の点で必ずしも十分なものとはいえない。
【0003】
食後、血糖が上昇すると膵臓の膵β細胞からインスリンが分泌され、脂肪・筋肉への糖の取り込みが促進され、脂肪組織・筋肉での脂肪合成の促進と、分解と燃焼の抑制が行われる。
【0004】
しかし、高血糖状態となり、インスリンの分泌が続くと、インスリンの標的臓器である骨格筋、肝臓、脂肪組織でのインスリンの感受性の低下(インスリン抵抗性)が生じ、さらに膵臓からインスリンがより多く分泌されるようになる。
【0005】
このようなインスリンの分泌が繰り返されると、最終的は膵臓が疲弊し、膵β細胞からのインスリンの分泌が低下するが、各標的臓器のインスリン抵抗性は増大したままの状態となる。このようにインスリン作用機構がうまく機能しなくなると、結局、糖尿病等になりやすい体質になってしまうことが知られている。
【0006】
一方、GIPの分泌が上昇すると、消化不良や胃もたれを引き起こすほか、インスリンの分泌を促進する要因にもなるため、やはり肥満等を引き起こすことが考えられる。
【0007】
現在、セルロース繊維に対して、機械的に剪断力を加えて製造した微細化されたセルロースが、食品改良剤(安定化剤)、化粧品材料(ゲル・分散化安定剤)、濾過剤、バインダーとして販売されているが、これらの食後のGIPやインシュリン等のホルモンの分泌抑制効果は知られていない。
【特許文献1】国際公開第01/87341号パンフレット
【非特許文献1】J.C.Brownら、Canadian J Physiol Pharmacol 47 : 113-114, 1969
【非特許文献2】J. M. Falkoら、J Clin Endocrinol Metab 41(2) : 260-265, 1975
【非特許文献3】織田敏次ら、消化管 機能と病態、1981年、中外医学社、P205−216
【非特許文献4】Gagenby S Jら、Diabet Med. 1996 Apr; 13(4):358-64
【非特許文献5】Ellis PRら、Br J Nutr. 1995 Oct;74(4):539-56
【非特許文献6】Simoes Nunes Cら、Reprod Nutr Dev. 1992;32(1):11-20
【非特許文献7】Morgan LMら、Br J Nutr. 1990 Jul;64(1):103-10
【非特許文献8】Requejo Fら、Diabet Med. 1990 Jul;7(6):515-20
【非特許文献9】Morganら、Br J Nutr. 1985 May;53(3):467-75
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、食事によるインスリンやGIP等のホルモン分泌を抑制させることができる、食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、課題の解決手段として、セルロース繊維を含む食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤であって、前記セルロース繊維が、平均繊維径が200nm以下で、下記条件で調製した調整液の光線透過率が5%以上のものである、食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤を提供する。
【0010】
(調製及び観察方法)
イオン交換水990g(25℃)が入ったビーカーにセルロース繊維10gを添加した後、ジューサーミキサーにて10秒間攪拌した後、吸光光度計にて光路長1cm、600nmの波長時の透過率を測定する。
【0011】
請求項2の発明は、課題の解決手段として、セルロース繊維を含む食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤であって、平均繊維径が200nm以下で、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gのものである、食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤を提供する。
【0012】
請求項3の発明は、課題の解決手段として、前記セルロースの平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が10〜5,000である、請求項1又は2記載の食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤を提供する。
【0013】
請求項4の発明は、課題の解決手段として、食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤が、錠剤状、顆粒状、粉末状又は液状である、請求項1〜4のいずれか1項記載の食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のセルロース繊維を含む食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤を摂取することにより、インスリンやGIP等のホルモンの分泌を抑制することができ、肥満防止に効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<セルロース繊維>
まず、本発明の食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤に含まれるセルロース繊維について説明する。
【0016】
セルロース繊維は、平均繊維径が200nm以下のものであり、好ましくは1〜200nm、より好ましくは1〜100nm、更に好ましくは1〜50nmのものである。平均繊維径は、実施例に記載の測定方法により、求められるものである。
【0017】
セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量は、0.1〜2mmol/gが好ましく、より好ましくは0.4〜2mmol/g、更に好ましくは0.6〜1.8mmol/gである。カルボキシル基含有量は、実施例に記載の測定方法により、求められるものである。
【0018】
セルロース繊維は、平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が10〜5,000のものが好ましく、より好ましくは10〜2,000、更に好ましくは10〜1,000、また更に好ましくは10〜500のものである。平均繊維径及び平均繊維長は、実施例に記載の測定方法により、求められるものである。
【0019】
セルロース繊維は、公知のセルロース繊維と比べて、非常に微細なものであるため、下記条件で調製した調整液は、水溶液ではないが肉眼観察で透明なものであり、前述の光線透過率の測定方法により測定すると5%以上の光線透過率を示す。例えば、公知のバイオセルロースや機械的に剪断して調製したセルロース(例えば、ダイセル化学工業(株)製の商品名セリッシュFD-200L)の場合には、同条件で懸濁液を調製した場合、白濁液となり光線透過率は0%である。
【0020】
また、本発明のセルロース繊維の光線透過率はその製造方法を調整することにより調整することが可能であるが、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上の光線透過率である。
【0021】
また、本発明のセルロース繊維は結晶化度が高いことも特徴であり、結晶化度は10%〜95%、特には70%〜90%であることが好ましい。
【0022】
(調製及び観察方法)
イオン交換水990g(25℃)が入ったビーカーにセルロース繊維10gを添加した後、ジューサーミキサースターラーにて攪拌した後、吸光光度計にて光路長1cm、600nmの波長時の透過率を測定する。
【0023】
本発明で用いるセルロース繊維の製造方法は特に制限されるものではなく、機械的方法、化学的方法、生化学的方法等を適宜選択したり、組み合わせたりして製造することができる。以下、製造方法の一例を説明する。
【0024】
まず、原料となる天然繊維(絶対乾燥基準)に対して、約10〜1000倍量(質量基準)の水を加え、ミキサー等で処理して、スラリーにする。ここでいう、絶対乾燥基準とは20℃、50%RHの環境下で自然乾燥した酸化パルプの水分率をハロゲン水分計にて測定したものから絶乾パルプ量を算出するものである。
【0025】
原料となる天然繊維としては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、コットン、絹、羊毛、キチン、キトサン、アルギン酸、コラーゲン、再生セルロース、バクテリアセルロース等を用いることができる。
【0026】
次に、触媒として2,2,6,6,−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO)を使用して、前記スラリーを酸化処理する。
【0027】
TEMPOの使用量は、原料として用いた天然繊維(絶対乾燥基準)に対して、約0.1〜10質量%となる範囲である。
【0028】
酸化処理時には、TEMPOと共に、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤、臭化ナトリウム等の臭化物を併用する。
【0029】
酸化剤の使用量は、原料として用いた天然繊維(絶対乾燥基準)に対して、約1〜50質量%となる範囲である。
【0030】
臭化物の使用量は、原料として用いた天然繊維(絶対乾燥基準)に対して、約1〜30質量%となる範囲である。
【0031】
pHは、酸化反応を効率良く進行させる点から9〜12の範囲である。
【0032】
酸化処理の温度(前記スラリーの温度)と時間は、1〜50℃で、1〜300分間である。
【0033】
そして、使用した触媒等を水洗等により除去し、必要に応じて乾燥処理した中間体(後述の微細化処理前のセルロース繊維)を得ることができる。
【0034】
その後、該中間体を水等の溶媒中に分散し、微細化処理をする。微細化処理は、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサーで所望の繊維幅や長さに調整することができる。
【0035】
このような微細化処理後、使用した触媒を水洗等により除去し、上記したようなセルロース繊維を得ることができる。
【0036】
<セルロース繊維を含む食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤>
本発明のセルロース繊維を含む食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤は、使用形態に応じて、錠剤状、顆粒状、粉末状、液状(懸濁液状)、ゲル状等の所望形態にすることができる。
【0037】
錠剤状、顆粒状、粉末状等の固体状にする場合には、セルロース繊維単独でもよいし、食品や医薬品に使用できる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を配合し、所望の成形機(打錠機、顆粒製造機、噴霧乾燥機等)を用いて成形することができる。
【0038】
液状(懸濁液状)にするときには、水のみを使用したものでもよいし、水と共に、食品に使用できる他の有機溶媒(例えば、エタノール)、界面活性剤水溶液、酸水溶液、塩基水溶液等との混合溶媒を使用したものでもよい。ゲル状にするときは、増粘剤等を添加配合することができる。
【0039】
本発明の食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤は、食事と共に又は食後に摂取することが望ましく、セルロース繊維としての摂取量は、体重1kg当たり、約0.002〜2g/日が好ましい。
【0040】
本発明の食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤は、ヒト及び動物に投与することができる他、各種飲食品、医薬品、ペットフード等に配合して摂取することができる。食品としては、ホルモン分泌抑制効果をコンセプトとし、その旨を表示した機能性飲食品、病者用飲食品、特定保健用食品に応用できる。飲料の形態は特に限定されないが、例えば、果汁飲料、炭酸飲料、茶系飲料、乳飲料、アルコール飲料、清涼飲料等のあらゆる飲料に配合し、製造のために使用することが可能である。また、ゼリー状食品や各種スナック類、焼き菓子、ケーキ類、チョコレート、ガム、飴、タブレット、カプセル、スープ類等のあらゆる食品形態で配合し、製造のために使用することが可能である。
【0041】
本発明の食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤は、医薬品として錠剤及び粉末のような固形投薬形態、あるいはエリキシロール、シロップ及び懸濁液のような液体投薬形態で経口投与される。なお、経口用固形製剤を調剤する場合には、本発明の食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤に、賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法により、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。また、経口用液体製剤を調製する場合には、矯味剤、緩衝剤、安定化剤等を加えて、常法により製造することができる。
【0042】
また、本発明の食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤は、適当量の栄養補給が困難な高齢者やベッドレスト状態の病者においては、経腸栄養剤等の栄養組成物の形態で投与される。
【実施例】
【0043】
(1)平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比
原子間力顕微鏡(Veeco Dimension 3100 Tapping mode)によって撮影されたセルロース繊維の直径が確認できる画像において、50点以上抽出し、繊維径及び繊維長を測定し平均アスペクトを算出した。
【0044】
(2)カルボキシル基含有量(mmol/g)
絶乾パルプ0.5gを100mlビーカーにとり、イオン交換水を加えて全体で55mlとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加えて0.83質量%パルプ懸濁液とし、パルプが十分に分散するまでスターラーにて攪拌した。そして、0.1M塩酸を加えてpH2.5〜3.0としてから、自動滴定装置(AUT−501、東亜デイーケーケー(株)製)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で注入し、パルプ懸濁液の1分ごとの電導度とpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続けた。そして、得られた電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、カルボキシル基含有量を算出した。
【0045】
製造例1〜3(本発明のセルロース繊維の製造)
(1)原料
天然繊維:針葉樹の漂白クラフトパルプ(製造会社:フレッチャー チャレンジ カナダ、商品名 「Machenzie」、CSF650ml)
TEMPO:市販品(製造会社:ALDRICH、Free radical、98%)
次亜塩素酸ナトリウム:市販品(製造会社:和光純薬工業(株)Cl:5%)
臭化ナトリウム:市販品(製造会社:和光純薬工業(株))。
【0046】
(2)製造手順
まず、上記の針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gを9900gのイオン交換水で十分攪拌後、パルプ質量100gに対し、TEMPO1.24質量%、次亜塩素酸ナトリウム28.1質量%、臭化ナトリウム12.4質量%をこの順で添加し、pHスタッドを用い、0.5M水酸化ナトリウムにて滴下を行い、pHを10.5、温度20℃に保持し、酸化反応を行った。
【0047】
次に、表1に示す各実施例の所定の酸化時間で滴下を停止し、酸化パルプを得た。該酸化パルプをイオン交換水にて十分洗浄し、脱水処理を行い23℃の雰囲気下で自然乾燥した。その後、酸化パルプ10gとイオン交換水990gをミキサー(商品名、ABSOLUTE(Vita-Mix Blender)、大阪ケミカル社製)にて10分間攪拌することにより、繊維の微細化処理を行い、半透明の懸濁液を得た。得られたセルロース繊維中の酸化パルプの量(前述の固形分濃度)は、01.0質量%であった(酸化パルプ10g/イオン交換水990g)。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例
製造例1〜3で得られた本発明のセルロース繊維を食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤として提供した場合のインスリンとGIPの分泌抑制効果を試験した。
【0050】
試験例1 本発明のセルロース繊維の食後血中成分への影響(血糖上昇抑制、血中中性脂質上昇抑制、血中インスリン上昇抑制、血中GIP上昇抑制)
1-1 試験試料
本発明のセルロース繊維として、製造例1を用いた。比較例として微細化されたセルロース(非TEMPO酸化品)(セリッシュ FD−200L,ダイセル化学工業化学(株)製,平均繊維径0.1〜0.01μm)を用いた。
【0051】
1-2 試験動物
9週齢の雄性マウスC57BL/6J Jcl(日本クレア)を用いた。各群N=6〜7とした。
【0052】
1-3 経口投与サンプルの調製と投与量
グルコース(関東化学製)とトリオレイン(Glyceryl trioleate:Sigma製)をレシチン(卵製)(関東化学製)とアルブミン(ウシ血清由来)(Sigma製)を用いて乳化し、乳液を調製した。この乳液に、本発明のセルロース繊維と比較用の微細化されたセルロース(非TEMPO酸化品)を添加し、経口投与サンプルを調製した。動物に対する経口投与量は下表のとおりである。
【0053】
【表2】

1-4 経口投与試験(食後血糖、血中中性脂質(血中TG)、血中インスリン、血中GIP測定)
16時間絶食させたマウスをエ−テル麻酔下、眼窩静脈よりヘパリン処理ヘマトクリット毛細管(VITREX製)を用い、初期採血を行った。その後、試験試料を経口ゾンデ針にて経口投与し、10分、30分、1時間、2時間後にエーテル麻酔下、眼窩静脈より採血を行った。
【0054】
採血後、血液の一部を用いてすみやかに血糖簡易測定器(グルコースデヒドロゲナーゼ/電位差測定法、ロシュ・ダイアノグスティック社製)を用いて血糖値を測定した。ヘパリン処理ヘマトクリット毛細管で採取した血液は、血漿分離まで氷冷下で保存後、11000rpmにて5分間遠心分離し、血漿を得た。得られた血漿から、インスリン、GIP、中性脂質(TG)を測定した。
【0055】
血中インスリンの測定は、インスリン測定キット(森永生化学研究所製、ELISA法)、血中GIP濃度は、Rat/Mouse GIP(Total)ELISA キット(Linco Research/Millipore co.製、ELISA法)、血中TG濃度は、トリグリセライド E−テストワコー(和光純薬製、GPO・DAOS法)を用いて測定した。
【0056】
1-5 結果
サンプル経口投与後の血糖値、血中TG、血中インスリン、血中GIPの経時曲線(初期値からのΔ値)を図1〜図4に示した。なお、群間の統計学的有意差については、コントロール群に対するt検定を行ない、両側検定でp値が0.05以下の場合には、グラフ上にp値を示した。
【0057】
図1〜図4の結果から、本発明のセルロース繊維投与群は、コントロール投与群に比べて食後の最大血糖値(10分値)、最大血中TG値(30〜60分値)、最大インスリン値(10分値)、最大GIP値(10分値)が低かった。一方、微細化されたセルロース(非TEMPO酸化品)投与群は、コントロールと変らなかった。この結果から、本発明のセルロース繊維は、食後の血糖上昇抑制、血中中性脂質上昇抑制、インスリン分泌抑制、GIP分泌抑制効果を有することが分かった。
【0058】
一方、比較例となる微細化セルロース投与群の食後血糖値、血中中性脂質、血中インスリン、血中GIPの値は、コントロール投与群とほとんど変わらない経時曲線であり、微細化されたセルロース(非TEMPO酸化品)には食後血糖上昇抑制作用、血中中性脂質上昇抑制作用、血中インスリン上昇抑制作用、血中GIP上昇抑制作用がないと考えられた。すなわち、これらの作用は本発明のセルロース繊維でのみ得られる効果であると考えられた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】サンプル経口投与後の血糖値の経時曲線を示す図。
【図2】サンプル経口投与後の血中TGの経時曲線を示す図。
【図3】サンプル経口投与後の血中インスリンの経時曲線を示す図。
【図4】サンプル経口投与後の血中GIPの経時曲線を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維を含む食後GIP(Gastric inhibitory polypeptide)及び/又は食後インスリン分泌抑制剤であって、前記セルロース繊維が、平均繊維径が200nm以下で、下記条件で調製した調整液の光線透過率が5%以上である、食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤。
(調製及び観察方法)
イオン交換水990g(25℃)が入ったビーカーにセルロース繊維10gを添加した後、ジューサーミキサー(正確には市販のジューサーミキサーでした)にて10秒間攪拌した後、吸光光度計にて光路長1cm、600nmの波長時の透過率を測定する。
【請求項2】
セルロース繊維を含む食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤であって、前記セルロース繊維が、平均繊維径が200nm以下で、前記セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gのものである食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤。
【請求項3】
前記セルロースの平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が10〜5,000である、請求項1又は2記載の食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤。
【請求項4】
食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤が、錠剤状、顆粒状、粉末状又は液状である、請求項1〜3のいずれか1項記載の食後GIP及び/又は食後インスリン分泌抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−126837(P2009−126837A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305428(P2007−305428)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】