食欲を抑制し及び/又は食物摂取量を低減する方法及び装置の改良
【課題】食欲抑制および/または食物摂取量低減に寄与する装置を動作させる装置および方法を提供する。
【解決手段】1つまたはそれ以上の生物学的満腹信号の刺激を起こさせる少なくとも1つの流速低減素子200を有する長尺部材を備える小腸/十二指腸挿入具20を含む。挿入される装置が胃内にある固定部材によって十二指腸内部位で固定される実施形態もあれば、装置が適切な長さ、および小腸内の目標部位の屈曲部に対応する装置の1つまたはそれ以上の屈曲部によって目標部位で安定化される実施形態もある。装置の実施形態は物理的存在、および生物活性物質の放出や神経細胞の電気刺激などのより能動的な形式の介入により効果を発揮する。
【解決手段】1つまたはそれ以上の生物学的満腹信号の刺激を起こさせる少なくとも1つの流速低減素子200を有する長尺部材を備える小腸/十二指腸挿入具20を含む。挿入される装置が胃内にある固定部材によって十二指腸内部位で固定される実施形態もあれば、装置が適切な長さ、および小腸内の目標部位の屈曲部に対応する装置の1つまたはそれ以上の屈曲部によって目標部位で安定化される実施形態もある。装置の実施形態は物理的存在、および生物活性物質の放出や神経細胞の電気刺激などのより能動的な形式の介入により効果を発揮する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119条に基づき、2006年5月26日に提出されたBinmoellerの米国仮特許出願第60/808820号の「食欲を抑制するおよび/または食物摂取量を低減する方法および装置の改良」に対して優先権を主張し、該出願の開示は参照により本明細書に組み込む。本願は、2005年12月15日に提出され、2006年8月10日に米国公開第2006/0178691号として公開された、本願の一部継続出願であるBinmoellerの米国出願第11/300283号にも優先権を主張する。出願第11/300283号はそれ自体、2004年11月30日に提出され、2005年9月1日に米国第2005/0192614号として公開された米国特許出願第10/999410号の一部継続出願である。出願第10/999410号は、2004年2月26日に提出された米国仮特許出願第60/547630号に優先権を主張する。本願は、本明細書に組み込まれたこれらの上記出願のそれぞれに優先権を主張する。
【0002】
(参照による組込)
本明細書に言及された出版物および特許出願はすべて、個々の出版物または特許出願が参照により組み込まれることを明確にかつ個別に示される程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、食欲抑制および/または食物摂取量低減に関連する医療装置および方法の分野に属する。
【背景技術】
【0004】
30を超える肥満度指数(BMI)で定義される肥満は、米国をはじめとする国々で大きな健康上の問題である。米国人の3人に1人、3億人を超える人々が肥満であると推定されている。肥満の合併症としては、高血圧症、糖尿病、冠動脈疾患、脳卒中、鬱血性心不全、肺機能不全、複数の整形外科的疾患、各種癌、および余命の大幅な低減などの重篤で命にかかわる多数の病気がある。ただし、意図的な体重減少は、肥満にかかわるこうした合併症の多くを改善する可能性がある。
【0005】
体重減少は肥満にかかわるこうした合併症の多くを改善する可能性があるが、健康上の問題としての体重管理は困難であることが立証されている。食事療法、心理療法、行動改善、薬物療法などの様々なアプローチはどれもある程度の成功を収めてきたが、概して、米国に見られる肥満の発生率および重症度の急増を効果的に抑えられずにいる。肥満にかかわる疾患の重症度は、思い切った外科手術の発展を導いてきた。こうした処置の1つでは、以前ほど大量に食物を摂取できないように、胃のサイズを物理的に低減する。こういった胃の外科縮小手術は、当初はわずかに成功を収めたが、時の経過とともに胃が伸びて元の体積に戻り、多くの個人で持続的な体重減少の達成を妨げることが分かっている。別の思い切った外科手術では、普通は小腸のバイパス部を介して胃腸(GI)管の吸収面を低減することによって食物の吸収不良を導く。この胃のバイパス処置は、胃縮小手術とも組み合わされてきた。上述の外科的処置は、人によっては食物摂取量の低減および/または全体的な体重減少を導くのに有効であるが、非常に侵襲性が高く、過度な痛みと不快感をもたらす。そのうえ、上述の処置の結果、生命を脅かす術後合併症が発生する場合が多い。こういった外科的処置は費用も高く、元に戻すのが困難で、国家の医療制度に大きな負担を課す。
【0006】
肥満治療の非外科的アプローチも開発されている。そうした肥満治療のための非外科的な内視鏡アプローチの一例は、胃内に胃バルーンを埋め込むというものである。胃バルーンは胃の一部を満たして患者に満腹感を与えることによって、食物摂取量を低減させる。このアプローチは、非常にうまくいくことがまだ納得いくように立証されておらず、患者の耐性低下やバルーンの破損および/または移動による合併症など多くの疾患が、胃バルーン装置に関連する。体重減少を導くように設計された他の非外科的装置は、食物が小腸内で完全に消化あるいは吸収されないように、胃から小腸内のチューブに食物を注ぎ込むことによって、小腸での栄養吸収を抑える。この種の装置は摂取された食物の吸収を抑える点ではいくらか有効だが、体重減少および/または食物摂取量低減を導くように設計された非外科的装置には様々な改良の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
満腹信号の生成の原因となる生物学的事象を理解すれば、こうした事象の引き金となり得る「高性能の」非外科的装置を開発する機会が生まれる。個人が摂取する食物の量は、腸と脳との間の生物学的信号に左右される。具体的には、腸から脳へのホルモン信号は、食物摂取の開始と停止の両方ともに相関関係を有する。グレリン、モチリン、アグーチ関連ペプチドといったホルモンのレベルが上昇すれば食欲が増進し食物摂取が開始される一方で、その他多くのホルモンのレベルが上昇すれば食物摂取が停止される。
【0008】
様々な生物学的事象が、食物摂取の生理学的停止の原因となる。通常、食事を採ると、消化された食物と消化の副産物が、GI管を通過しながら一連の受容器と相互作用し、満腹信号を生成する。満腹信号は、十分量の食物が摂取されたことと、器官が食事を止めるべきであることを脳に伝達する。具体的には、GI管の化学受容器が消化の生成物(糖、脂肪酸、アミノ酸、ペプチドなど)に反応し、胃と胃に隣接する小腸内の伸張受容器と機械的受容器が摂取した食物の物理的存在に反応する。化学受容器は、ホルモン信号やその他の分子信号を放出させることによって消化の生成物に反応する。これらの放出された関連ホルモンおよび/またはその他の分子信号は、満腹信号を脳に送るように神経線維を刺激することができる。脳にこれらの信号が到達すると、食物摂取量を低減することができる様々な神経経路を始動させることができる。放出されたホルモンおよび/またはその他の分子信号は、満腹信号の生成を助けるようにそれ自体脳まで移動することもできる。伸張受容器および化学受容器は通常、脳に信号を送る周辺の神経繊維の刺激を通じて脳に満腹信号を送る。本発明は、満腹信号の生成に寄与する上記生物学的事象を開始させる非外科的装置および方法を提供することによって、食物摂取量の低減を助ける方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、小腸に挿入される装置に関し、該装置は通常、小腸挿入具と称することができる。最初に概説するのが、生分解性材料を含む実施形態である。挿入具の実施形態は、近位端と、遠位端と、近位端と遠位端間の少なくとも1つの屈曲部(angled portion)であって、小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位(angled target site)に対応する屈曲部と、生分解性材料から成る挿入具の少なくとも一部とを含む細長の中央部材を備える。実施形態は、最初は目標部位内に安定して配置され、生分解性材料の分解後、目標部位から離されるように非安定化された後、腸管を通って身体から除去することができるように構成された長尺部材を含むことができる。
【0010】
屈曲部が生分解性材料を含む実施形態もあれば、屈曲部が形状記憶材料を含む実施形態もある。これらの実施形態のいくつかにおいては、形状記憶材料は、形状記憶合金または生分解性形状記憶ポリマーのいずれかを含む。他の実施形態では、屈曲部は形状記憶合金部と生分解性部の両方を含む。これらの後者の実施形態のいくつかでは、生分解性部は分解後、形状記憶合金部の非安定化と除去を簡易化するように構成される。これらの実施形態のいくつかでは、形状記憶合金部および生分解性部は接合部で接合され、接合部は生分解性部の分解に伴って分解するように構成される。
【0011】
いくつかの実施形態では、小腸内の屈曲目標部位は十二指腸にある。さらに、いくつかの実施形態では、十二指腸の屈曲目標部位は2つの角度を含み、挿入具は十二指腸の2つの角度に対応する2つの角度を有する。
【0012】
小腸挿入具のいくつかの実施形態では、装置は長尺部材に支持される少なくとも1つの流速低減素子(流速低減要素)を含み、流速低減素子は小腸内の糜粥の流速を低減するように構成される。これらの実施形態のいくつかでは、流速低減素子は、生分解性材料から少なくとも部分的に形成される。いくつかの実施形態では、流速低減素子は、リブ、ネット、スリーブ、バスケット、中央に搭載されるバッフル、周縁に搭載されるバッフル、発泡体状材料、またはファンのいずれかを含む。発泡体状材料を含む流速低減素子の実施形態では、発泡体状材料は、連続気泡発泡体(open cell foam)、独立気泡発泡体(closed cell foam)、またはヒドロゲルのいずれかを含むことができる。これらの実施形態のいくつかでは、発泡体状材料は内部に組み込まれた生物活性物質を含む。これらの実施形態のいくつかでは、発泡体状材料は生分解性で、生物活性物質は発泡体状材料の分解後に放出される。他の実施形態では、流速低減素子は、1つまたはそれ以上の生物活性物質の少なくとも1つの放出可能な貯蔵部を含む。
【0013】
流速低減素子を有するいくつかの実施形態では、素子が生化学的プロフィールを変更するのに十分なほど糜粥の流速を低減する。これらの実施形態のいくつかでは、生化学的プロフィールは、ホルモン満腹信号を生成させるのに十分なほど変更される。
【0014】
いくつかの実施形態では、挿入具の物理的寸法は、挿入具が設置されたときに小腸の一部を拡張させ、その拡張がそれに反応して小腸の伸張受容器または他の神経細胞に満腹信号を生成させるように設定される。拡張を起こさせる挿入具の物理的寸法または特徴は、長さ、幅、体積、密度、重量、多孔度、または表面特性のいずれも含む。
【0015】
挿入具のいくつかの実施形態は、1つまたはそれ以上の生物活性物質を含み、長尺部材によって直接的または間接的に支持される1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部と、長尺部材によって直接的または間接的に支持される活性薬剤放出機構とを備え、活性薬剤放出機構と1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部とは互いに動作可能に連通する。
【0016】
挿入具のいくつかの実施形態は、生物活性物質を配送するための活性薬剤放出機構としてポンプを含み、ポンプは長尺部材に支持されて、1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部に連結される。ポンプの実施形態は、浸透圧ポンプ、電動機械ポンプ、圧電ポンプ、流駆動ポンプ、または蠕動ポンプのいずれも含むことができる。これらの実施形態のいくつかは、ポンプにエネルギーを提供するように構成されたエネルギー貯蔵素子(エネルギー貯蔵部)をさらに含む。これらの実施形態のいくつかでは、ポンプは遠隔装置によって制御される。
【0017】
他の実施形態では、挿入具は小腸または胃のいずれかの部位に電位を印加するように構成される電子エミッタまたは神経刺激器をさらに含むことができ、エミッタは長尺部材によって支持される。これらの実施形態のいくつかでは、エミッタは、始動後、満腹信号に寄与する神経反応を刺激する。いくつかの実施形態では、装置はポンプにエネルギーを提供するように構成されるエネルギー貯蔵素子または装置をさらに含むことができ、いくつかの実施形態では、電子エミッタは遠隔装置によって制御することができる。
【0018】
装置のいくつかの実施形態は、長尺部材の近位端に係合される固定部材をさらに含むことができ、固定部材は目標部位での装置の安定化に寄与するように構成される。これらの固定される実施形態のいくつかでは、長尺部材が小腸内の目標部位に配置されると、固定部材は胃内にある。
【0019】
2番目に概説するのが、小腸の神経を電気的に刺激する神経刺激器を含む小腸挿入具の実施形態で、その神経は満腹信号の生成に関連する。この本発明の側面は、近位端、遠位端、近位端と遠位端間の、小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する少なくとも1つの屈曲部とを含む長尺部材と、長尺部材によって支持される神経刺激器とを備える小腸挿入具に関連する。
【0020】
これらの実施形態のいくつかでは、挿入具は生分解性材料から形成される部分を含む。これらの実施形態のいくつかは、最初は目標部位内に安定的に配置され、その後、生分解性材料の分解後、目標部位から離れ、腸管を通って身体から除去されて非安定化されるように構成される。
【0021】
いくつかの実施形態では、神経刺激器は、1つまたはそれ以上の満腹信号を生成するのに十分なほど小腸の1つまたはそれ以上の神経を刺激するために採用される。これらの実施形態のいくつかでは、挿入具は、エネルギーを神経刺激器に提供するように構成されるエネルギー貯蔵素子をさらに含む。これらの実施形態のいくつかでは、神経刺激器は遠隔装置によって制御される。
【0022】
挿入具のいくつかの実施形態では、小腸の屈曲目標部位は十二指腸にある。いくつかの実施形態では、十二指腸の屈曲目標部位は2つの角度を有し、挿入具は十二指腸の2つの角度に対応する2つの角度を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、挿入具は少なくとも1つの流速低減素子を含み、該素子は、小腸内の糜粥の流速を低減するように構成される。これらの実施形態のいくつかでは、流速低減素子は少なくとも部分的に生分解性材料から形成される。
【0024】
挿入具のいくつかの実施形態では、挿入具の少なくとも一部は生分解性材料で形成され、長尺部材は、最初は目標部位に安定的に配置され、その後、生分解性材料の分解後、目標部位から離れるように非安定化するように構成される。これらの実施形態のいくつかでは、挿入具の屈曲部は生分解性材料を含む。さらに他の実施形態では、挿入具は長尺部材の近位端に係合される固定部材をさらに含み、固定部材は目標部位での装置の安定化に寄与するように構成される。
【0025】
3番目に概説するのが、1つまたはそれ以上の生物活性物質を含有する1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部と、十二指腸内の部位に生物活性物質を送るために貯蔵部に連結される活性薬剤放出機構とを含む小腸挿入具の実施形態である。この本発明の側面は、近位端、遠位端、近位端と遠位端との間で小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する少なくとも1つの屈曲部を含む長尺部材と、1つまたはそれ以上の生物活性物質を含有し、長尺部材によって支持される1つまたはそれ以上の貯蔵部と、長尺部材によって支持される活性薬剤放出機構とを備え、長尺部材、活性薬剤放出機構と1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部が互いに動作可能に連通する小腸挿入具に関連する。
【0026】
これらの実施形態のいくつかでは、挿入具は生分解性材料から形成される部分を含む。これらの実施形態のいくつかは、最初は目標部位内に安定的に配置され、その後、生分解性材料の分解後、目標部位から離れ、腸管を通って身体から除去されて非安定化されるように構成される。これらの実施形態のいくつかでは、生分解性材料を含むのは装置の屈曲部である。
【0027】
挿入具の実施形態は、浸透圧ポンプ、電動機械ポンプ、流駆動ポンプ、蠕動ポンプ、または圧電ポンプのいずれかを含むことができる薬剤放出機構を含むことができる。実施形態は、エネルギーをポンプに提供するように構成されるエネルギー貯蔵素子をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、活性薬剤放出機構は遠隔装置によって制御される。これらの実施形態のいくつかでは、活性薬剤放出機構によって放出される生物活性物質は満腹信号を生成するのに十分である。
【0028】
これらの実施形態のいくつかでは、小腸の屈曲目標部位は十二指腸にある。これらのいくつかの実施形態では、十二指腸の屈曲目標部位は2つの角度を有し、挿入具は十二指腸の2つの角度に対応する2つの角度を有する。
【0029】
挿入具のいくつかの実施形態では、屈曲部は形状記憶部を備える。他の実施形態では、屈曲部は形状記憶合金部および生分解性部を含む。挿入具のいくつかの実施形態は、挿入具は小腸内の部位に電位を印加するように構成される電子エミッタをさらに含み、該部位は満腹信号に寄与する神経反応を生成する。
【0030】
本発明はさらに、被験者に十二指腸内挿入装置を挿入することによって被験者に満腹感を与える方法に関する。概説する第1の方法は、上述したように生分解性材料を含む装置の実施形態を使用する方法である。この方法で使用される実施形態は、近位端、遠位端、近位端と遠位端との間で、小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する少なくとも1つの屈曲部を有する長尺部材を備え、挿入具の少なくとも一部は生分解性材料で形成され、長尺部材は、最初は目標部位内に安定的に配置され、その後、生分解性材料の分解後、目標部位から離れるように非安定化されるように構成される。この装置を使用する方法は、挿入具の存在または挿入具による能動的介入のいずれかの1つまたはそれ以上の効果により、1つまたはそれ以上の満腹信号を生成するステップを含む。
【0031】
前記方法は、挿入具の生分解性材料を生物分解するステップと、目標部位から装置を離すステップと、身体から装置を除去するステップとをさらに含むことができる。前記方法のいくつかの実施形態では、挿入具は形状記憶合金を有する部分を含み、生分解性材料の生物分解は形状記憶合金部の除去を簡易化する。
【0032】
挿入具が糜粥流速低減素子(糜粥流速低減部)をさらに備える方法のいくつかの実施形態では、該方法は流速低減素子で糜粥の通過を減速させるステップをさらに含む。これらの実施形態のうちいくつかでは、糜粥の通過を減速させるステップは、糜粥の生化学的プロフィールを変更する。これらの実施形態のいくつかでは、糜粥の生化学的プロフィールを変更すると、化学受容器などの腸内の細胞が始動し、化学受容器は神経信号を生成する、あるいはそれに反応して生物活性物質を分泌する。
【0033】
前記方法のいくつかの実施形態では、満腹信号を生成するステップは、挿入具の存在により、十二指腸の少なくとも一部の拡張に反応する腸の伸張感応性神経細胞を含む。前記方法のいくつかの実施形態では、満腹信号を生成するステップは、挿入具の存在に反応して1つまたはそれ以上の生物活性物質を分泌する腸の細胞を含む。
【0034】
挿入具が放出可能な貯蔵部に生物活性物質をさらに備える方法のいくつかの実施形態の方法では、挿入具の能動的介入は、挿入具の1つまたはそれ以上の生物活性物質の放出を含む。これらの実施形態のいくつかでは、1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップは、貯蔵部からの流出または溶出を含む。他の実施形態では、挿入具が放出可能な貯蔵部と動作可能に連通するポンプをさらに含み、1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップは、貯蔵部から材料をポンプで送出することを含む。このような実施形態では、ポンプでの送出は浸透圧ポンプ、電動ポンプ、圧電構造、流駆動ポンプ、または蠕動ポンプのいずれからでも行うことができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、生物活性物質が生分解性材料を備える装置の部分内に含まれ、生物活性物質が生分解性材料の分解後に放出される。いくつかの実施形態では、生分解性材料は、連続気泡発泡体、独立気泡発泡体、またはヒドロゲルなどの発泡体状材料を含む挿入具の1つまたはそれ以上の流速低減素子に含まれる。
【0036】
いくつかの実施形態では、挿入具は長尺部材によって支持される神経刺激器をさらに含み、能動的介入は刺激器で十二指腸の1つまたはそれ以上の神経を刺激することを含む。
【0037】
本発明はさらに、神経刺激器を含む十二指腸内挿入装置の実施形態を被験者に配置することによって被験者に満腹感を与える、2番目に説明される方法に関する。挿入具の実施形態は、近位端、遠位端、近位端と遠位端との間で、小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する少なくとも1つの屈曲部を有する長尺部材と、長尺部材によって支持される神経刺激器とを含む。前記方法は、神経刺激器で十二指腸の細胞を刺激するステップを含む。該方法は、より具体的には、満腹信号を送ることによって挿入具の存在の拡張に反応する腸の伸張感応性神経細胞をさらに有することができる。
【0038】
前記方法は流速低減素子で糜粥の通過を減速させるステップをさらに含むことができ、前記糜粥流を減速させるステップは満腹信号のさらなる生成に寄与する。前記方法は、直接経路または神経媒介経路のいずれかにより神経刺激器に反応する腸の内分泌細胞をさらに含むことができ、反応は1つまたはそれ以上のホルモンの分泌を含む。
【0039】
挿入具が放出可能な貯蔵部に生物活性物質を含む場合、方法は挿入具1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、挿入具は生分解性材料を含み、方法は挿入具の生分解性材料を生物分解するステップと身体から挿入具を除去するステップとをさらに含むことができる。
【0040】
本発明はさらに、1つまたはそれ以上の生物活性物質を含有する1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部と活性薬剤放出機構とを含む十二指腸内挿入装置の実施形態を配置することによって、被験者に満腹感を与える第3のセットの方法に関連する。挿入具の実施形態は、近位端、遠位端、近位端と遠位端との間で、小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する少なくとも1つの屈曲部を含む長尺部材と、1つまたはそれ以上の生物活性物質を含有し、長尺部材によって支持される1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部と、長尺部材によって支持される活性薬剤放出機構とを備え、活性薬剤放出機構と1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部は互いに動作可能に連通する。本実施形態を使用する方法は、1つまたはそれ以上の生物活性剤を十二指腸に放出するステップを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップは、貯蔵部からポンプで送出することを含む。挿入具の実施形態に含まれるポンプは、浸透圧ポンプ、電動ポンプ、圧電構造、流駆動ポンプ、または蠕動ポンプのいずれも含むことができる。
【発明の効果】
【0042】
方法の実施形態は、流速低減素子で糜粥の通過を減速させるステップをさらに含むことができ、前記糜粥流を減速させるステップは、満腹信号のさらなる生成に寄与する。方法の実施形態は、挿入具の物理的存在に反応する腸の伸張感応性神経細胞をさらに含むことができる。前記方法の実施形態は、挿入具の物理的存在に反応して、または活性薬剤放出機構によって放出される生物活性剤に反応して1つまたはそれ以上のホルモンを分泌する腸の内分泌細胞をさらに含むことができる。前記方法の実施形態は、挿入具の生分解性材料を生物分解するステップと、身体から挿入具を除去するステップとをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】胃および小腸の十二指腸の概略図である。
【図2】満腹信号を生成するいくつかの例示のメカニズムの図である。
【図3】胃および小腸内に配置された本発明に係る十二指腸/小腸挿入具の一実施形態の斜視図である。
【図4】装着された流速低減素子と中央内腔を示す中央管の部分断面図である。
【図5】偏心的に装着された流速低減素子と中央内腔を示す中央管の部分断面図である。
【図6】長尺部材と装着された流速低減素子を示す代替実施形態の斜視図である。
【図7】中央管および固定部材の斜視断面図である。
【図8】中央管および固定部材の代替実施形態の斜視図である。
【図9】胃または幽門への固定なしで一定期間、小腸にとどまることのできる本発明の中央管の断面図である。
【図10】中央管の特定部分の拡張を可能にし、流速低減素子を形成する拡張可能スリーブに装着された中央管の図である。
【図11】小腸への挿入のために収縮構造にある拡張可能スリーブを示す。
【図12】拡張可能スリーブで形成された流速低減素子を所望の拡張構造に保持する一機構を示す。
【図13】1つまたはそれ以上の満腹信号の生成に寄与する際の腸挿入具の役割を示すフロー図である。
【図14】十二指腸の斜視図である。
【図15】挿入具装置の実施形態が配置される内部空間の周囲を形成するひだの折り目を示す十二指腸の側面図である。
【図16A】単純なコイルの形状の流速低減素子を有する挿入具の実施形態を示す。
【図16B】単純なコイルの形状の流速低減素子を有する挿入具の実施形態を示す。
【図17A】リブ付きの棘突起の形状の流速低減素子を有する挿入具の実施形態を示す。
【図17B】リブ付きの棘突起の形状の流速低減素子を有する挿入具の実施形態を示す。
【図18】ネット付きの棘突起の形状の流速低減素子を有する挿入具の実施形態を示す。
【図19】スリーブ形状の流速低減素子を有する挿入具の実施形態を示す。
【図20A】閉鎖したメッシュバスケットの形状の流速低減素子を有し、ピグテール近位端および遠位端をさらに示す挿入具の実施形態を示す。
【図20B】閉鎖したメッシュバスケットの形状の流速低減素子を有し、ピグテール近位端および遠位端をさらに示す挿入具の実施形態を示す。
【図21】中央に搭載され、外方に延在するバッフルの形状の流速低減素子を有し、ピグテール近位端および遠位端をさらに示す挿入具の実施形態を示す。
【図22】周縁に搭載され、内方に延在するバッフルの形状の流速低減素子を有し、ピグテール近位端および遠位端をさらに示す挿入具の実施形態を示す。
【図23】発泡体形状の流速低減素子を有し、ピグテール近位端および遠位端をさらに示す挿入具の実施形態を示す。
【図24】多孔栄養滲出ステントの形状の流速低減素子を有する挿入具の実施形態を示す。
【図25】中央に搭載されたファンの形状の流速低減素子を有し、さらにピグテール近位端および遠位端を示す挿入具の実施形態を示す。
【図26】受動的に溶出する貯蔵部内の生物活性物質を有する挿入具の実施形態を示す。
【図27】生物活性物質搭載浸透圧ポンプを有する挿入具の実施形態を示す。
【図28】電動ポンプに連結された生物活性物質搭載貯蔵部、エネルギー貯蔵ユニット、および外部制御装置を有する挿入具の実施形態を示す。
【図29】局所電気刺激用電極、エネルギー貯蔵ユニット、および外部制御装置を有する挿入具の実施形態を示す。
【図30A】生分解性素子および形状記憶素子を含む挿入具の中央部材の実施形態を示す図であり、原型構造の中央部材を示す。
【図30B】生分解性素子および形状記憶素子を含む挿入具の中央部材の実施形態を示す図であり、生分解後の中央部材を示す。
【図31A】生分解性形状記憶ポリマー材料を含む挿入具の中央部材の実施形態を示す図であり、原型構造の中央部材を示す。
【図31B】生分解性形状記憶ポリマー材料を含む挿入具の中央部材の実施形態を示す図であり、生分解後の中央部材を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(生体内原位置での装置の実施形態)
図1は、胃4と小腸の十二指腸10とを含むヒトの胃腸(GI)管の図である。主要な特徴は、食道2、胃4、洞腔7、幽門8、幽門弁11、十二指腸10、空腸12、および、膵管と総胆管の連結によって形成されるファーテル膨大部(または胆膵管膨大部)13である。機能上、食道2はその上端は鼻または口から始まり、下端は胃4で終わる。胃4は、部分的には、食道−胃接合部6(食道2に対する開口部)と洞腔−幽門接合部5(洞腔7から幽門8を通り小腸の十二指腸10までの経路)によって特徴づけられる空洞を取り囲む。幽門8は、括約筋によって、十分に消化された胃内容物(すなわち、約1立方センチ以下の物体)を通過させるだけの幅に幽門8を開放させる幽門弁11を介した、胃4の内容部の排出を制御する。胃の内容物は十二指腸10を通過後、空腸12に進み、次に回腸(図示せず)へと入る。十二指腸10、空腸12、および回腸が小腸として知られる部分を構成する。しかしながら、これらの消化管の個々の部分もそれぞれ小腸と称されることもある。本発明の文脈では、小腸は十二指腸、空腸および/または回腸の全部または一部を指すことができる。消化を助ける胆汁および膵臓液を提供するファーテル膨大部13は、十二指腸10の中間壁上の小さな突起物として示される。
【0045】
本発明の装置の実施形態は、2つの基本的な形状を含む。腸挿入具のいくつかの実施形態は、胃にある固定部材によって腸内に固定され、幽門で払いのけられるほど大きい。他の実施形態は、胃内の別個の固定部材ではなく、腸の屈曲部に適合する、あるいは対応する屈曲部を有する、全体として小腸に嵌合する装置によって腸内に安定して位置し、該装置は十分な構造上の一体性をさらに有しており、遠位位置は装置の形状に物理的に順応しないため、遠位に移動させられることに抵抗する。腸の目標部位で固定なしに安定化されるよう調節される装置の特徴には、装置の長や幅などの物理的寸法や装置の角度などが含まれ、それらはすべて腸の目標部分を補完する。他の実施形態では、腸内での安定化の特徴は、十二指腸の遠位部よりも大きな十二指腸球部に装置の拡張部を配置することで、それによって、(たとえば図18に示されるように)遠位への移動を有効に防止する。他の安定または固定素子は、腸壁に係合する装置上のフック、突刺、または突起などである。
【0046】
装置および装置を用いる関連方法のいくつかの実施形態は、食物の移動速度に介入する物理的機構によって、腸内の食物の移動速度を低減させることに向けられている。別の側面では、本発明の実施形態は、生理学的機構により満腹信号を誘発すること、生物活性物質または生物活性剤を通じて満腹信号を直接提供すること、あるいは、神経細胞を刺激して食物摂取量を行動的に低減することによって機能する。装置のいくつかの実施形態は単に満腹および消化生理学よりも広い医療目的に向けられているが、装置および方法の実施形態の満腹および摂食機能については本明細書で以下より詳細に説明する。いくつかの側面では、装置の実施形態は、装置の単なる物理的存在に直接反応して腸により生成される満腹信号によって、食物移動速度の低下および/または食物摂取量の低減に寄与することがある。このような信号は、たとえば、腸壁の伸張反応性神経細胞または機械受容器を媒介とすることができる。他の実施形態では、満腹信号は、腸内の物質の物理的存在に反応する、あるいは二次的に機械受容器に反応するホルモンを媒介とすることができる。他の実施形態では、食物の低速化または滞留時間の増加およびその結果生じる腸の化学環境の変化が、腸内に位置する化学受容器からの反応を誘発し、満腹信号の正味効果を有する方法で神経的にまたはホルモン的に信号を送ることができる。
【0047】
本発明のさらに別の実施形態では、装置は、腸内で時間をかけて放出される生物活性物質または生物活性剤を運ぶことができ、生物活性剤は正味満腹信号を運ぶ。いくつかの実施形態では、正味満腹信号効果を有する生物活性剤は、装置内の塗膜、蓄積部、または貯蔵部などの部位から受動的に放出される。生物活性物質または生物活性剤を詳述したが、概して、より広い側面では、ホルモン、薬剤、または細胞のいずれも含むことができる。いくつかの実施形態では、生物活性剤は浸透圧ポンプ内に保持され、浸透圧駆動によって放出される。浸透圧ポンプなどの放出機構は、生物活性剤放出のあるレベルの制御と予測可能性を提供するが、比較的受動的で仲裁手段を持たない。ただし、本発明の他の実施形態は、保管された生物活性剤の放出を印加電流に応じて許可または促進する電動ポンプまたは圧電素子によって提供されるように、生物活性剤の放出または配送のためのより能動的な機構を含むことができる。このような装置は電力貯蔵素子を含むことができる、あるいは、有線または無線アプローチで外部電源から電力を得ることができる。
【0048】
本発明のさらに別の実施形態では、装置は、腸内の神経に電気刺激を提供する結果、脳に満腹信号を送る正味効果に寄与する神経活動をもたらす電極または導電素子を含むことができる。いくつかの実施形態では、満腹関連の神経活動は、内分泌機構によって媒介されることができる。生物活性剤放出用の動力機構を有する本発明の実施形態と同様、電気的性能を有する実施形態は、電力貯蔵装置を含むことができる、あるいは外部ソースから運ばれるエネルギーを受け取ることができる。
【0049】
本発明の他の側面では、挿入される装置の実施形態は、固定具の有無にかかわらず、満腹感をもたらす、あるいは食物移動に介入する以外のより広い医療目的で、生物活性剤配送、神経刺激配送、または放射線療法配送のためのプラットフォームを提供することができる。生物活性剤の配送の場合、活性剤の腸の部位への局地的配送に関連する大きな利点がある。その利点とは、投与の局地化、口腔配送で生じる胃酸との接触排除、静脈内薬剤配送またはあらゆる種類の全身性配送による肝臓および腎臓の代謝機構との接触の低減などである。さらに、装置の実施形態は複数の薬剤に順応し、いくつかの実施形態では、複数の薬剤の放出を個々に制御することができる。
【0050】
(本発明の消化器系での状況)
次に、本発明の実施形態に関係する、消化器系、消化プロセス、および満腹に関する内分泌学および神経生理学の側面について説明する。大人の十二指腸は約20〜25cmの長さで、小腸で最も短く、最も幅広く、最も予測可能に配置される部分である。十二指腸は、臥位で第1および第3腰椎の間にある細長いC型構造を形成する。Susan Standring(編)、「グレイの解剖学」第39版、1163〜64(2005)が標準参照値を提供する。参照と消化器系側面の詳細のため図1に戻ると、十二指腸球部10aと称されることの多い十二指腸の第1の部分は長さが約5cmで、幽門8の十二指腸端部の延長部分として始まる。十二指腸の第1の部分は、十二指腸の第1の部分の端部を示す上側十二指腸湾曲部465へと下方向に急に湾曲する前に5cm、上方、後方、および側方に通過する。縦十二指腸10bと称されることの多い十二指腸の第2の部分は、長さが約8〜10cmである。第2の部分は上側十二指腸湾曲部465から始まり、第3腰椎に向かって緩やかに湾曲しつつ下方向に延びる。ここで、第2の部分は、十二指腸の第3の部分との接合部を示す下側十二指腸湾曲部475へと急に内側に曲がる。十二指腸の第3の部分は横十二指腸10cと称されることが多く、下側十二指腸湾曲部から始まり、長さは約10cmである。第2の部分は上方にわずかに屈曲した第3腰椎の下縁の右側から始まり、左方へ横断し、腹大動脈の前方の十二指腸の第4の部分と連通する端部へと延びる。十二指腸の第4の部分は長さが約2.5cmであり、腹大動脈のちょうど左で始まり、第2腰椎の下縁のレベルまで上方および側方に延びる。その後、十二指腸空腸湾曲部で前方下方向に曲がり、空腸と連通する。本発明のいくつかの実施形態は、この小腸の予測可能な構造を利用し、以下より詳細に説明するように、幽門または胃内での固定を必要としない十二指腸/小腸インプラントを提供する。
【0051】
消化プロセスは、摂取した食物が口腔内で唾液および酵素と混合したときに始まる。いったん飲み込まれれば、食物は食道と胃でも継消化され続け、酸および追加酵素と結びついて液化する。食物はしばらくの間胃にとどまってから、小腸の十二指腸を通過して胆汁および膵臓液と混じり合う。摂取した食物と胆汁および膵臓液とが混合すると、栄養分が含まれて、小腸の絨毛や微絨毛、および体内の他の吸収器官により吸収される。
【0052】
胃と小腸内に部分的に消化された食物が存在すると、満腹信号を生成する生物学的信号が連続的に始動され、食物摂取の停止の原因となる。このような満腹信号の1つは、コレシストキニン(CCK)の放出によって始動される。小腸細胞は、消化された食物の存在、特に、食事脂肪、脂肪酸、小ペプチド、およびアミノ酸に反応してCCKを放出する。CCKのレベルが上昇すると、食事のサイズと持続時間が減り、多数の各種機構を通じてそれを行うことができる。たとえば、CCKは、肝臓と中枢神経系内のCCK−A受容器に作用して、満腹信号を誘発することができる。CCKは、視床下部と通信して食物摂取量と接触行動を中央で調節する脳領域である孤束核に突出する、肝臓と幽門の両方の迷走神経求心性繊維を刺激する。CCKは膵臓および胆嚢からの酵素の放出も刺激して、胃内容排出を妨げる。CCKは胃内容排出の抑制因子となりうるため、食物摂取の制限に対する効果の一部は、胃における食物の滞留によって媒介されることができる。
【0053】
小腸の細胞(特にL細胞)は、消化の栄養信号に反応して、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)とオキシントモジュリン(OXM)も放出する。GLP−IおよびOXMのレベル上昇は、満腹信号と食物摂取の停止に関連付けられる。これらのホルモンは、肝臓および/またはGI管の求心性迷走神経の受容器を駆動する、および/または胃内容物排出を抑制することによって、満腹を知らせることができる。
【0054】
膵臓ペプチド(PP)は、摂取カロリーの量に比例し、胃拡張に反応して放出される。PPのレベル上昇は、食物摂取量と体重を低減させることが証明されている。PPは、脳幹への迷走神経求心性経路を介した食欲低下効果、およびたとえば胃のグレリン生成の抑制によるより局所的な効果を幾分か発揮することができる。
【0055】
ペプチドYY3−36(PYY3−36)は別の生物学的信号で、その末梢放出は食物摂取量の低減および/または接触の停止と相関関係を有することができる。具体的には、低レベルのPYY3−36は肥満と相関関係があり、PYY3−36を投与するとカロリー摂取量と自覚的な空腹度が減少する。PYY3−36を静脈投与すると、グレリンの発現を抑え、胃内容排出を遅らせ、膵臓および胃からの様々な分泌を遅らせ、食後の回腸からの液と電解液の吸収を高めるという効果を通じて食物摂取を低減することができる。
【0056】
インシュリンとレプチンは、満腹と接触行動を調節する2つの追加の生物学的信号である。副交感神経支配によって、膵内分泌ベータ細胞は、グルコースやアミノ酸などの栄養素の循環と、GLP−1および胃抑制ペプチド(GIP)の存在に反応してインシュリンを放出する。インシュリンは、グルコース代謝の増大を介して脂肪組織からのレプチン生成を刺激する。脳内インシュリンレベルが上昇すれば、食物摂取量の低減につながる。高レプチンレベルは食物摂取量を減少させ、体重減少を導く。インシュリンとレプチンの投与は、食物摂取量の減少のみによって説明可能なよりも大きな体重減少を導くため、エネルギー消費の調節にも関連している。インシュリンとレプチンはどちらも中枢神経系内で作用して、主に交感神経系を始動させることによって、食物摂取を抑制し、エネルギー消費を増大させる。食物摂取量を減少させるというインシュリンの効果は、NPYやメラノコルチンリガンドなどの、摂食行動の調節にも関連するいくつかの視床下部神経ペプチドとの相互作用も含む。
【0057】
食物摂取の抑制や阻害に関係する他のホルモンまたは生物学的信号には、たとえば、GIP(グルコースの投与、または高炭水化物の食事の消化後に胃腸の内分泌K細胞から分泌される)、エンテロスタチン(食事脂肪に反応して生成される)、アミリン(膵臓ベータ細胞からインシュリンと共分泌される)、グルカゴン、ガストリン放出ペプチド(GRP)、ソマトスタチン、ニューロテンシン、ボンベシン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、ニューロメジンU(NMU)、ケトンなどがある。
【0058】
本発明の実施形態に関連して、部分的に消化された食物、すなわち糜粥の通過が小腸の十二指腸内で部分的に阻害されて、この領域での流速が低下する場合(あるいは、別の方法で同じ現象を発生させるため、滞留時間が増大する場合)、胃と十二指腸の内容物排出は遅れる。この減速はそれ自体、(胃での食物の滞留時間の延長により)満腹感を長引かせ、食物摂取量を低減させる。食物通過の減速は、部分的に消化された食物がGI管に沿って化学受容器、伸張受容器、および機械受容器と相互作用する時間をより多く提供するため、満腹信号の刺激が増大され、および/または延長されて、食事時間および/または延長された摂食間の時間内での食物摂取量が低減する。
【0059】
部分的に消化された食物の小腸内での保持時間の延長に加えて、本発明の方法および装置は、小腸に信号を放出することによって満腹信号の放出を強化および/または延長することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、本発明の方法および装置は、化学受容器を刺激する消化の栄養生成物を放出して、満腹信号の生成に寄与するホルモン信号および/またはその他の分子信号を放出することができる。別の実施形態では、本発明の方法および装置は、GI管の壁に少量の圧力を加えて伸張受容器および/または機械受容器を刺激して、満腹信号を生成して脳に送ることができる。別の実施形態では、本発明の方法および装置は、たとえば、食物の消化の栄養副産物によって上記のように化学受容器を刺激する信号を放出し、上記のように満腹信号の生成に寄与する少量の圧力を小腸の壁に印加することができる。
【0060】
(流速低減素子を有する装置、および固定部材を有する実施形態)
本発明の方法および装置は、小腸壁の一部を覆うことによって栄養分の摂取をいくらか阻害する、および/または消化液の混合を邪魔または軽減することによって、減量や肥満治療に貢献することができる。いくつかの実施形態では、本発明の方法および装置は、完全に消化または吸収させずに、摂取した食物の一部を小腸に注ぎ込む中央管をさらに備えることができる。このようにして、本発明の方法および装置は、部分的に消化された食物の吸収を阻害することができる。その後、部分的に消化された食物は、身体にあまりカロリー吸収されないで、排出のために大腸へと送られる。
【0061】
図2は、満腹信号を生成可能ないくつかの例示の非限定的機構を示す。この図2では、脂肪酸または他のタンパク質などの消化の副産物が小腸のL細胞を刺激して、CCKを局所的に、および血液循環へ放出する。局所的に放出されたCCKは、中枢神経系(CNS)に対して満腹信号を生成する領域で、迷走神経求心性繊維を刺激することができる。血液循環に入るCCKは肝臓へと移動して、肝臓の迷走神経求心性繊維を刺激し、CNSに対して満腹信号を生成する。血液循環内のCCKは胆嚢と膵臓に移動して、これらの器官の消化関連活動を上方制御する。血液循環内のCCKはCNS自体へも移動して、満腹信号の生成に寄与することもできる。いったん満腹信号を受け取り、CNS内部に組み込んだ後、CNSは満腹感および/または食物摂取の停止、減速、または低減に寄与する働きの生理学的作用を始動させることができる。
【0062】
次に本発明の実施形態に移ると、図3は、満腹信号の生成に寄与することのできる本発明に従い作製された例示の小腸挿入具20を示す。挿入具20は胃4と小腸10に配置される。挿入具20は、近位部30、遠位部40、近位部30から遠位部40に延在する中央管50を有する。小腸10内に適合するような寸法の1つまたはそれ以上の流速低減素子200を中央管50に装着することができる。必ずではないが、ファーテル膨大部13近傍の中央管50の部分には通常、小腸への胆汁および膵臓液の導入が阻害されないように流速低減素子200を含まない。
【0063】
いくつかの実施形態では、中央管50は近位端52の近傍に固定部材100を有し、固定部材100は中央管50の近位端52を胃の洞腔7内に固定する。固定部材100は、幽門8を通過しないようなサイズに設定される。このように、固定部材を含む本発明の実施形態は、流速低減素子200を小腸内に固定する。いくつかの実施形態では、固定部材は、膨張時に幽門8より大きな1つまたはそれ以上の膨張式バルーン102によって確定することができる。膨張式バルーン102は胃への配送のために収縮させた後、胃内で膨張させることができる。膨張式バルーン102は、内視鏡技術を使用して後で除去するために収縮させることもできる。
【0064】
以下より詳細に説明するように、流速低減素子200の実施形態は多くの構造をとることができ、バルク材の構成、表面の性質、多孔度などの物理的特徴に対してさらに変更することができる。流速低減素子200のいくつかの別の例示的実施形態を図16A〜25に示す。いくつかの実施形態では、図16A、図16Bに示されるように、長尺部材とも称される中央管または中央部材が、十二指腸内での糜粥の流速を低減するような形状に構成することができる。流速低減素子の実施形態が共通して有する機能上の特性は、消化される食物を、臨床上適切なガイドラインに沿って遮断せずにゆっくりと移動させることである。移動速度の減速プロセスは、代謝されつつある栄養化合物に関する生化学的プロフィールの変更といった、消化される食物の組成にも影響を及ぼすことがある。十二指腸の化学受容器と神経は、糜粥内の代謝産物の生化学的プロフィールに反応し、消化と満腹および空腹との生理学の調節に参加する。このように、流速、ひいては糜粥の生化学的プロフィールを変更することによって、本発明の小腸挿入具の実施形態は、満腹と関連する信号の生成に寄与する。流速低減素子は、流速低減素子が提供する混合作用によって、消化中の食物の組成にも影響を及ぼすことができる。
【0065】
中央管50の長さは、所望する治療結果に応じて確定することができる。たとえば、中央管50とそれに装着された1つまたはそれ以上の流速低減素子200は、十二指腸10の一部または全体に延長させることができる。患者によっては、中央管50とそれに装着された1つまたはそれ以上の流速低減素子200は、十二指腸10を超えて空腸12にまで延在させることができる。中央管の長さや流速低減素子の数および構造を変化させることで、医師は様々な身体のタイプや代謝の需要に対処することができると予測される。一例では、患者が20%過体重である場合、医師は、通常の1日のカロリー摂取量で採れる栄養分の80%のみが吸収されるように、流速低減素子200を装着した中央管50の長さを選択することができる。このように時間をかけてカロリー摂取を低減することで、患者は適量の減量を達成することができる。
【0066】
図4は、内部空間58を画定する外壁54および内壁56を含む中央管50を有する本発明の実施形態を含む。内部空間58は、中央管50の近位端52から中央管50の遠位端53のちょうど手前まで連続し得る内腔59を形成する。中央管50の遠位端53は地点55で封止されるので、中央管50に導入される流体は遠位方向に漏れ出して小腸に入ることはない。いくつかの実施形態では、弁90を内腔59の近位端辺りに置くことができる。弁90は、内腔59へ流体を導入させるための針または平滑末端管によって進入可能な隔膜92を有する自己封止弁であってもよい。弁90は中央管50の内腔59内の流体が除去のために吸引されるように進入することができる。弁の種類は隔膜タイプの弁だけに限定されず、他の種類の機械的弁を上述の隔膜弁の代わりに使用できると理解すべきである。本発明の特定の実施形態はこのように流体を受け入れるように採用されるため、本発明の装置は収縮構造で埋め込まれた後、膨張構造に拡張することができる。
【0067】
図4に示され、上述したように、1つまたはそれ以上の流速低減素子200は中央管50に装着することができる。いくつかの実施形態では、各流速低減素子200の径は中央管50の軸と同心にすることができる。図4に示される実施形態では、各流速低減素子200は、外壁210、内壁212、および内部空間214を有する。近位配向面220またはその近傍で、および遠位配向面222またはその近傍で、各流速低減素子200は流速低減素子200の内部空間214を中央管50の内腔59と流体連通させて中央管50に装着することができるため、内部空間214は中央管50の外壁54を囲む。各流速低減素子200は、たとえば、接着剤、熱結合、機械的拘束具、またはその他の適切な方法によって中央管50に装着することができる。
【0068】
図4に示されるように、中央管50は、各自の流速低減素子200内に配置される複数の入口/出口216を有して形成することができる。より具体的には、各口216は、中央管50の内腔59と各自の流速低減素子200の内部空間214との間の流体輸送のための経路を確立する中央管壁51を貫通して形成される。したがって、中央管50の内腔59は、流速低減素子200の内部空間214へ流体を導入し、流速低減素子200の挿入と除去が簡易化される収縮構造から、食物通過への抵抗が増大して満腹を導く図4に示される膨張構造へ流速低減素子200を膨張させるために使用することができる。よって、先に示唆したように、本実施形態の流速低減素子200は、小腸への導入のために中央管50周囲で収縮および縮小でき、その後、所定位置に就いた後は所望の径に膨張させることのできるバルーンとしての役割を果たす。
【0069】
流速低減素子200の実施形態は、周縁に搭載されるか中央に搭載される、コイル、リブ、ファン、バッフル、およびスリーブ、メッシュケージまたはバスケットなどの他の形状を取ることができる。このような実施形態は、生分解性要素、活性生体材料放出機構、および神経刺激機能を有し、図15〜31Bに示されるような実施形態の説明も含む「本発明の別の実施形態」という後のセクションでさらに説明する。
【0070】
いくつかの実施形態では、本発明の個々の流速低減素子200は弾性バルーンまたは非弾性バルーンであってもよい。弾性バルーン材料が流速低減素子200を確立するのに使用される際、流速低減素子200は、流速低減素子の内部空間に導入される流体の量に依存する径まで膨張する。本実施形態は、医師の決定するバルーンサイズの調節を可能にする。バルーンが小さすぎると、たとえば、追加の流体が導入されてバルーンの径を拡大することができる。あるいは、バルーンが大きすぎると、追加の流体が除去されてバルーンの径を縮小することができる。内部空間に導入される流体の量とは関係しない径まで膨張する非弾性バルーンを備える別の実施形態も本発明に含まれると理解される。この種のバルーンの径は製造時に固定され、バルーンサイズの調節が原位置でできない。ただし、この種のバルーンは、多すぎる流体がバルーンに導入される場合に起こり得る過膨張や破損を防止する。
【0071】
図4に示される流速低減素子200は、円形の球形状である。ただし、他の形状も考えられ、部分的に消化された食物の小腸内の通過を妨げるように有効に機能するいかなる形状も本発明で許容可能である。小腸挿入具の小腸内に留まる能力は、流速低減素子200の形状、配向、および緊縮性によって影響を受ける場合があると理解される。たとえば、卵型、楕円、細長楕円、さらには不規則な非幾何学的形状などの別の形状も本発明に従い使用することができる。
【0072】
図5は、1つまたはそれ以上の流速低減素子300が中央管350に同心で装着される本発明の代替実施形態を示す。本実施形態では、流速低減素子300の軸または径は中央管の軸と同心ではない。流速低減素子の外壁302は、中央管350の外壁354の側壁に装着される。各流速低減素子300の内部空間314は中央管350の軸に対して偏心で、各自の開口部316を通って中央管350の内腔359と流体連通する。図4に示される実施形態の場合のように、図5に示される実施形態では、内腔359は、流速低減素子300の内部空間314に流体を出し入れし、膨張構造と収縮構造との間で流速低減素子300を交換するのに使用することができる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態では、流速低減素子300は、液体および/または気体などの流体で膨張させることができる。いくつかの実施形態では、気体は、たとえば、空気、窒素、または二酸化炭素であってもよい。別の実施形態では、液体は、たとえば、水や他の溶液を混ぜた水であってもよい。いかなる適切な膨張媒体も、本発明の挿入具から小腸へ放散して生物学的満腹信号を始動させる生物活性物質または他の信号を配送するように変更することができる。生物活性物質が膨張媒体を介して配送される際、中央管および/または流速低減素子は生物活性物質を透過できるべきである。多孔度は、生物活性物質の拡散速度を制御するのに調節することができる。
【0074】
本発明の流速低減素子を膨張させる際、医師が小腸内の流速低減素子300の位置と小腸の径に対する流速低減素子の径とを監視することが重要であろう。このため、流速低減素子は、X線上で可視な放射線不透過性流体で膨張させることができる。流速低減素子が放射線不透過性流体を含む際、医師は患者の身体の外部から流速低減素子のサイズと位置を非侵襲的に視ることができる。これを知ることによって、医師は流速低減素子のサイズおよび/または位置を調節することができる。同様に、図5に示されるような放射線不透過性マーカバンド218を中央管の周りに置いて、小腸内の中央管の位置の視覚化を簡易化することができる。放射線不透過性マーカバンド218は、小腸内の距離が深度マーカーとして使用され、身体の外部から測定できるように、所定の間隔を置いて配置することができる。
【0075】
本発明の中央管および流速低減素子は可撓性を有する。いくつかの実施形態では、既知の技術によって容易に形成または押出され、内視鏡を使って配送することのできるポリマー材料で構成してもよい。軟らかく可撓性を有する中央管50は胃腸管の構造の輪郭に沿い、胃腸壁への刺激が少ない。
【0076】
図6は、通常自己拡張し、中央内腔を必ずしも含まない流速低減素子を有する本発明の代替実施形態を示す。これらの実施形態は、周囲に同心で装着された流速低減素子400および/または偏心で装着された流速低減素子410を有する中央シャフト450を含む。素子400および410は、たとえば、熱融合、接着剤、または当該技術において既知な他の適切な方法によって中央シャフト450に装着することができる。これらの流速低減素子400は、内視鏡を使って挿入するのに適した第1の体積まで折り畳む、あるいは縮小させ、その後、本発明に従い部分的に消化された食物の流速を制限するのに適した第2の体積まで自己拡張する材料で作製することができる。これらの流速低減素子はそれらの材料から製造することができる、あるいは、それらの材料は、小さな体積に圧縮させ、その後、制約を受けないときに所定の形状および体積まで自己拡張することのできる海綿、発泡体、ヒドロゲル、またはバネなどの形状を取るように構成することができる。ゲルまたは海綿系の実施形態は、連続気泡または独立気泡形状を含むことができる。上記ゲルまたは海綿系の実施形態を配備のために縮小および拡張可能とする特徴に加えて、上記実施形態は通常、生物活性剤を含み、生分解性のために導電性である、本実施形態において有益な高表面領域を有する。別の発泡体関連の実施形態を下の「本発明の別の実施形態」のセクションで説明し、図23に示す。流速低減素子は自己拡張するため、膨張システムを設ける必要がなく、本実施形態は単純な機械的設計を提供する。これらの流速低減素子は、生物学的満腹信号を始動させることのできる生物活性物質または他の信号に含浸させることもできる。
【0077】
図6に示されるような実施形態の中央シャフト450は中実で、内腔や内部空間がなくてもよい。別の実施形態では、中央シャフト450は、摂取した食物が完全に吸収されずに小腸を通過するようにした食物用の経路を含んでもよい。
【0078】
次に、本発明に従い使用することのできる各種固定部材に移ると、図7がそのような1つの部材を示す。図7では、中央管50は近位端52の近傍に固定部材100を有する。上述したように、固定部材100は、1つまたはそれ以上の膨張式バルーン102によって確立することができる。これらのバルーン102はおそらく偏心的に、中央管50の近位端52近傍の地点104で中央管に装着される。これらのバルーンは多くの形状で形成することができ、図示される球形に限定されない。中央管は各自のバルーン102に対する開口部116を有して形成することができるため、中央管50の内腔59と各バルーン106の内部空間との間に流体連通用の経路が確立される。内腔59は、バルーン106の内部空間に流体を導入し、収縮状態での第1の体積から膨張状態の第2の体積までバルーン102を膨張させるために使用される。
【0079】
固定部材100の1つまたはそれ以上のバルーン102は、完全に膨張すると、中央管52の近位端を胃の洞腔内に固定する。1つまたはそれ以上の膨張式バルーン102は合わせると、幽門弁の径よりも大きな断面径を有し、幽門の通過を妨げる。膨張式バルーン102は、中央管内腔59に流体を追加する、あるいは中央管内腔59から流体を除去することによって、収縮および膨張させることができる。膨張式バルーン102は、中央管に装着される1つまたはそれ以上の流速低減素子と同じ中央管内腔59に接続され、流速低減素子と同時に膨張させることができる。中央管50は、膨張式バルーン102と個々の1つまたはそれ以上の流速低減素子が個別に収縮および膨張できるように2つ以上の内腔を有することもできる。
【0080】
図8は、本発明の固定部材100が洞腔7内に配備される本発明の別の実施形態を示す。本実施形態では、中央管50は逆さまの傘状骨組160に装着される。この骨組160は、中央管50を囲み支柱によって支持されるリング162を有する。図示される実施形態では、リング162は3つの支柱164、165、および166によって支持されるが、それより多いまたは少ない支柱も支障なく採用することができる。図8に示される実施形態では、支柱は中央管50において、地点167で一緒に接合され、地点170、171、および172でリング162に装着される。この固定構造のリング162は、たとえば可撓性プラスチック材料または可撓性ワイヤから形成することができ、幽門弁の径よりも十分大きな径を有する。この傘状骨組160は、内視鏡の助けを借りて胃に挿入するために中央管50の周囲で収縮させることができる。装置が内視鏡から解放されれば、傘状骨組160は飛び出して、図8に示されるのと同じ構造を取ることができる。支柱164、165、および166はたとえば、プラスチック、金属、またはプラスチック被覆金属から形成することができる。洞腔壁163に接触するリングの縁部は、傘状リング162を洞腔壁に固定する際に助けとなるように構成することができる。いくつかの実施形態では、表面を表面摩擦を増大するように粗くすることができる、あるいは胃壁に物理的に装着するために突起または棘突起を胃に設けることができる。
【0081】
(固定部材なしの装置)
図9は、胃または幽門への固定なしにある期間、小腸にとどまることのできる本発明の中央管または長尺部材50を示す。胃または幽門への固定なしにある期間、小腸にとどまることのできる本発明の実施形態は、(i)小腸の輪郭を模して適切に配置された角度の中央管を採用することと、(ii)腸挿入具を所定位置に保持する助けとなる適切な径の流速低減素子によってそれを行う。一実施形態では、必須ではないが、これらの流速低減素子は、小腸の壁にくっつくのを助ける研磨面または固定棘突起を有することができる。
【0082】
図9では、十二指腸球部10A、縦十二指腸10B、および横十二指腸10Cの十二指腸の最初の3つの部分が示される。図示される実施形態の流速低減素子は、明瞭にするため除去しておく。幽門8から遠位に、十二指腸10に入って直後、中央管50は十二指腸球部10Aと縦十二指腸10B間で半径βで急に屈曲し、縦十二指腸10Bと横十二指腸10Cの間で半径αで急に屈曲することができる。いくつかの実施形態では 半径βおよび半径αは約45度〜約110度とすることができる。別の実施形態では、半径βおよび半径αは、中央管50が予測可能に構成される屈曲を含むこれらの場所で、十二指腸10の内腔に従う、あるいは対応するよう屈曲するように約60度〜約100度とすることができる。別の実施形態では、半径βと半径αは約80度とすることができる。本発明の大部分の実施形態は角度βと角度αの採用を必要とする長さを含むが、別の角度を採用するより短い装置も本発明の範囲に含まれる。これらの上述した本発明の実施形態では、中央管50は、ねじれを防ぐために小腸の急な角度に対応するのに十分な可撓性を有することが有益であろう。小腸の径とほぼ等しい径を有する1つまたはそれ以上の流速低減素子も、中央管50の長さに沿って設けられる。いくつかの実施形態では、この径は約3cmで、他の実施形態では約4cmである。
【0083】
固定素子を使用する必要なく原位置で腸挿入具を安定させるため、中央管または長尺部材50は、身体に挿入する前に十二指腸の角度に一致する構造で予め形成することができる。本発明の実施形態は、図示されるように中央管50の内腔59に配置される補強ロッド110によって直線構造で拘束することができる。この補強ロッド110は、補強ロッドを収容するように設計された別の内腔に配置してもよいし、中央管50の壁に埋め込んでもよい。内視鏡の助けを借りて患者に挿入した後、中央管50が十二指腸10の急な屈曲部の位置に到達すると、補強ロッド110が退却させられることによって、中央管50は予め形成された形状を取ることができる。
【0084】
固定部材なしで原位置で安定させる別の実施形態では、中央管または長尺部材50は、中央管壁51に埋め込まれた、あるいは内腔59に位置する形状記憶合金ワイヤを有することができる。この形状記憶合金ワイヤは、十二指腸の屈曲構造に一致または対応する半径βおよび半径αを有する予め設定された屈曲構造を有し、中央管50内の対応位置に配置される。内視鏡の助けを借りて患者内に挿入された後、中央管50が十二指腸10内の急な屈曲位置に到達し、形状記憶合金ワイヤが約37℃の体温に等しい予め設定された遷移温度に到達すると、ワイヤはプログラムされた形状を取り、中央管50と中央管壁51にも同じ形状を強制的に取らせる。
【0085】
別の実施形態では、中央管または長尺部材50は、中央管壁51または内腔59内に埋め込まれたバネを有することができる。このバネは、小腸の壁の構造に合わせてあらかじめ成形することができる。バネは配送中に直線的に保持され、解放後に小腸の構造に一致し、このような形状によって装置を所定の位置にとどまらせることができる。その形状によって、装置は適切な位置にとどまることができる。一実施形態では、小腸の予測可能な配置と構造に一致または対応する構造により、装置は、胃または胃の幽門に固定されずに小腸内にある期間、適切な位置にとどまることができる。
【0086】
本発明の実施形態は胃または胃の幽門に固定されずに小腸内にとどまることができるが、無期限にとどまるように意図されていない。いくつかの実施形態では、挿入具は所定期間の経過後、内視鏡によって除去される。他の実施形態では、挿入具は、最終的には分解され、身体から排出される1つまたはそれ以上の生分解性材料で形成することができる。本発明の装置の任意の実施形態の生分解速度は、実施形態の生分解性側面を変更して調節することができ、よって腸管での滞留時間を臨床的に適切なレベルまで制御するルートの作製を可能にする。生分解性成分は、材料の組成を変更することによって、質の点で変動させることができる。装置の生分解性は、たとえば生分解に弱い位置で材料の量を変更することによって、量の点で変更することができる。たとえば、生分解脆弱性のために設計された接合部の厚みを変更すると、脆弱性を厚みに応じて変動させることができる。
【0087】
本発明の実施形態の生分解性側面を以下に説明する。本明細書に記載のすべての実施形態、および図3〜12と図16A〜31Bに示されるすべての実施形態は、長尺部材50および/または糜粥流速低減素子200の各種実施形態と同義語として称される中央管または中央部材の中に生分解性材料を含む部分を有することができる。以下の説明では、いくつかの実施形態は生分解性材料から全部または一部が形成される具体的な説明例として使用されるが、上述するように、固定部材を有する、あるいは有していない実施形態を含め、このように具体的に定義されていない場合でも、すべての実施形態が生分解性材料を含むことができる。
【0088】
(挿入具および流速低減素子の配備)
次に、いくつかの実施形態が流速低減素子を含む本発明の挿入具の配備に関する検討に移る。流速低減素子は全般的に符号200で参照されるが、いくつかの例示的実施形態は特定の機能のために別の参照符号を使用している。図10は、流速低減素子を拡張可能スリーブの一部の拡張により作製することのできる本発明の実施形態を示す。本実施形態は、流速低減素子を有する装置の配備方法の例を説明する状況で使用される。図10に示される実施形態では、中央管50は、本発明の十二指腸/小腸挿入具の遠位部近傍の拡張可能スリーブの遠位端510で拡張可能スリーブ508に装着される。図示される実施形態の配送構造では、中央管50の反対の近位端は、流速低減素子530が拡張される(後配送)際に中央管50の近位部上で係止することのできる脱着可能延長管520に装着される。脱着可能な装着の非限定的方法の1つは、1つまたはそれ以上のネジ504を使用して、中央管50に延長管520をねじ込むことである。中央管50は、図1に示される十二指腸10の構造に沿う構造を有するように予め形成することができる。そのように記載される中央管50は、拡張可能スリーブ508に強制的に中央管50の構造を取らせる。中央管50は、単にたとえば、ワイヤ、バネ、超弾性または形状記憶合金、中空スチール管またはプラスチックポリマーで構成することができる。いくつかの実施形態では、補強ロッドまたはガイドワイヤ110は、中央管50の内腔を通じて挿入することもできる。
【0089】
本明細書に記載される拡張可能スリーブ508は、流速低減素子530の形成を可能にするため所定のセグメントで拡張するように設計される。いくつかの実施形態では、拡張可能スリーブ508の非拡張部532は、拡張を防止するようにポリマーで塗布することができる。別の実施形態では、流速低減素子530は、部分的に消化された食物が流速低減素子530に入らないように可撓性ポリマーで被覆することができる。別の実施形態では、補強ロッドまたはガイドワイヤ110は、装置が十二指腸内に配送されたときに中央管50を補強するように中央管50の内腔に挿入することができる。
【0090】
拡張可能スリーブ508は、たとえば、金属、ワイヤ、リボン、プラスチックポリマーまたは生分解性材料のうち1つまたはそれ以上から形成できる編物、織物、メッシュ、または組物の1つまたはそれ以上として構成することができる。
【0091】
図11は、小腸への挿入のために収縮構造にある流速低減素子530から成る拡張可能スリーブ508を示す。この構造では、力Aが拡張可能スリーブ508に印加されて流速低減素子530を収縮させる。収縮形状は、単にたとえば、外装またはきつく巻いたひもなどの拘束機構によって、あるいは拡張可能スリーブ508の近位端を持続的に牽引することによって制止することができる。図11も、拡張されずにいる中央管の部分532、脱着可能延長管520、およびガイドワイヤ110を示す。
【0092】
図10および11に示される実施形態での流速低減素子530の拡張は、受動的または能動的に発生しうる。受動的な拡張の一例は、流速低減素子530を最初の拡張状態まで拡張させることのできる拘束機構の除去である。もう1つの非限定的機構は、流速低減素子530を最初の拡張状態まで拡張させることのできる拡張可能スリーブ508の近位端での牽引を解放することである。
【0093】
図10および11に示される実施形態の流速低減素子530は、いくつかの実施形態では、拡張可能スリーブ508と中央管50の相互への移動に関する相対位置に応じて、遠位から近位へ、近位から遠位へ、あるいは中央で拡張することができる。たとえば、流速低減素子内腔の近位端が十二指腸球部内に保持され、中央管50が押し戻される場合、流速低減素子内腔の遠位端がまず拡張する。この方向への拡張は、流速低減素子内腔の近位端の位置が十二指腸球部にとどまるために有益であろう。
【0094】
図12は、流速低減素子を所望の拡張構造に保持する位置で拡張可能スリーブ508の近位端を中央管50に係止することのできる本発明のいくつかの実施形態を示す。延長管520を引っ張ると、ウェッジ52が拡張可能スリーブ508の近位端に係合するまで中央管50が退却する。中央管50は、様々な拡張角度で拡張可能スリーブ508を係止することのできる複数のラチェット状ウェッジを有することができる。延長管は、装置の配備と拡張可能スリーブ508の拡張後に中央管50から取り外すことができる。
【0095】
(生分解性特徴)
本発明の実施形態はある期間、小腸内にとどまることができるが、無期限にとどまることを意図していない。いくつかの実施形態では、挿入具は、所定期間経過後に内視鏡で除去される。他の実施形態では、挿入具は、最終的に分解されて身体から排出される1つまたはそれ以上の生分解性材料から形成する、あるいは部分的に形成することができる。いくつかの実施形態では、装置は、生分解性を有する材料と生分解性を有していない材料とを含むことができる。非生分解性材料を含むいくつかの実施形態では、装置の生分解性部の分解は、非生分解性部の分解と最終的な除去を促進することができる。
【0096】
生分解性は、生物学的環境で発生する可能性のあるあらゆる種類の物質の破壊または崩壊を含むように、広い意味で使用され、上記環境は主に生物学的ホストだけでなくホスト内の微生物によっても定義される。生分解性が広範に包含する他の用語は、生体吸収性および生体内分解性を含む。生分解は、本発明の実施形態では、たとえば、分解、酸の作用などのpHの作用、加水分解機構、水和、分裂などの消化または酵素触媒作用、あるいは身体または筋肉運動の物理的作用によって発生することができる。生分解の例は、加水分解、分解、pHへの反応、または挿入装置のポリマーバックボーンの分裂につながる酵素溶解によって提供される。腸に存在するような微生物はポリマーを食べるか消化することができ、機械的、化学的、または酵素的劣化を開始させることができる。本発明の実施形態の生分解性材料は、生物学的相溶性を有すると同時に、本発明の実施形態に含まれるような生分解性材料の分解生成物である。生分解性材料は有機化合物と無機化合物を含むことができる。いくつかの代表的な無機化合物は、「生物活性剤を収容する装置の特徴」に関連するセクションで後述する。本セクションでは、生分解性ポリマーは、本発明の実施形態として含めて説明される。
【0097】
上述したように、本発明のいくつかの実施形態は弾性形状保持部を含むことができ、いくつかの実施形態では、本発明のC形十二指腸挿入具装置の角度αおよびβの維持に関して、装置の有利な構造の維持をサポートする形状記憶部を含む。金属ならびにいくつかのポリマーは形状を弾性保持することができる。形状記憶材料は合金と生分解性ポリマーを含む。装置の形状記憶合金素子は生分解性ではないが、これらの合金構造素子は、生分解性のポリマー素子と結合または接合することができ、分解後、合金素子は除去を可能にする形状で放出される。このような実施形態は、後述するように、図30Aおよび30Bに示される。本発明の他の実施形態は、生分解性形状記憶ポリマー素子を含むことができる。生分解性形状記憶ポリマーは、米国特許第6160084号、同第6281262号、同第6388043号、同第6720402号、および米国公開出願第20050075405A1号、同第20030055198A1号、同第20040015187A1号、同第20040110285A1号、同第20050245719A1号、同第20060142794A1号などの様々な公開物に記載されている。本発明の実施形態は1つまたはそれ以上のこのような形状記憶材料を含むことができ、さらに、このような材料は、図31Aおよび31Bに示される様々な方法で一緒に接合することができる。
【0098】
様々な天然、合成、および生合成ポリマーは生分解性で、腸挿入具装置の実施形態を備える材料として含めることができる。C−Cバックボーンに基づくポリマーは非生分解性になりがちだが、ヘテロ原子含有ポリマーバックボーンは生分解性を有する。特に、無水物、エステル、またはアミド結合などの化学結合の慎重な追加によりポリマーに生分解性を持たせることができる。分解のための機構は、ポリマーバックボーンの切断につながる加水分解または酵素的開裂による。腸にいるような微生物はポリマーを食べるか消化することができ、機械的、化学的、または酵素的劣化も開始させる。
【0099】
加水分解性化学結合を有する生分解性ポリマーは、生分解性腸挿入具の材料として適する。生体適合性を有することに加えて、その材料は、たとえば、処理可能であること、殺菌可能であること、生物学的条件に反応して安定性または分解を制御できること、などの他の基準も満たすべきである。分解生成物は、必ずしもポリマー自体ではなく、ポリマーの生体適合性を定義する。ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、およびこれらのコポリマーに基づくポリ(エステル)は、生体材料として幅広く採用されている。これらの材料を分解すると、対応するヒドロキシ酸が生じて、生体内使用を安全にする。
【0100】
他の生分解性ポリマーは、PHB−PHVクラスのポリ(ハイドロキシアルカノエート)、追加ポリ(エステル)、および天然ポリマー、特に、改変されたポリ(サッカリド)、たとえば、デンプン、セルロース、およびキトサンなどである。キトサンはキチンに由来し、セルロースに次ぎ世界で2番目に豊富な天然ポリマーである。脱アセチルカ後、新たな生体材料キトサンを生じ、さらなる加水分解後に超低分子量オリゴ糖を生じる。キトサンは生体適合性と抗菌性を有する環境に優しい高分子電解質であるため、薬剤配送における制御放出のための医療機器および材料に適する。
【0101】
ポリ(酸化エチレン)(PEO)は反復構造単位−CH2CH2O−を有するポリマーで、薬剤配送における用途を有する。ポリ(エチレングリコール)(PEG)として知られる物質は実際にはPEOだが、分子の各端に追加のヒドロキシル基を有する。重合化の度合いnが103〜105である高分子量PEOと対照的に、生体材料の場合に最もよく使用される範囲は通常12〜200、すなわちPEG600〜PEG9000だが、20000までのグレードが市販されている。ポリ(酸化エチレン)が生体材料として魅力的である主要な特性は、生体適合性、親水性、および汎用性である。単純で水溶性の線状ポリマーは、化学相互作用によって変質させ、構造のエチレン酸化物部分に関連する所望の特性を保持する水不溶性だが水膨潤性のヒドロゲルを形成することができる。
【0102】
ポリ(酸化エチレン)(PEO)とポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)のマルチブロックコポリマーも、腸内挿入装置に適するかもしれない。これらの材料は、(エステル結合を介する)加水分解と(エーテル結合を介する)酸化の両方にさらされる。分解速度は、PEOの分子量と含有量の影響を受ける。さらに、最高の水分摂取量のコポリマーが最速で分解する。
【0103】
広く使用されている非分解性ポリマーはエチレン−ビニルアセテートコポリマーである。このコポリマーは、生物適合性、物理的安定性、生物学的非活性、および加工性に優れる。薬剤配送用途では、これらのコポリマーは30〜50重量%のビニルアセテートを通常含む。エチレン−ビニルアセテートコポリマー膜は、薬剤拡散の速度制限バリアとしての役割を果たす。II型の分解性ポリマーでは、疎水性置換基から親水性側基への変換は、分解プロセスの第1ステップである。チロシン由来ポリカーボネートポリ(DTE−co−DTカーボネート)は、たとえば、生分解性腸挿入具にとって適切な材料となり得る。その材料は、エチルエステル(DTE)または遊離カルボキシレート(DT)のいずれかとしてチロシンを介しペンダント基で作製することができる。DTEとDTの比の変更を通じて、材料の疎水性/親水性バランスおよび生体内分解速度を操作することができる。
【0104】
水膨潤性ポリマーネットワークは、一端でヒドロゲルとして、他端で超吸収体としての役割を果たすことができる。ヒドロゲルは、水溶液中で溶解するのではなく膨らむという、化学構造の明確な親和性によって特徴づけられる。このようなポリマーネットワークは、穏やかな吸水性、通常は構造内の水の30重量%の保有から、水性流体の重量の何倍をも保有する超吸水性まで及ぶことができる。共有架橋を被りやすいポリマー電解質、親水性および疎水性成分からなる連合ポリマー(親水結合による「有効な」架橋)、および高機械強度の吸水性ポリマーを産む物理的に相互貫入するポリマーネットワークなどの吸収性ポリマーを作製するいくつかの総合的戦略が提案されている。これらのアプローチは相互に排他的ではなく、材料は、温度、pH、イオン強度、溶媒、濃度、圧力、応力、光度、および電界または磁界などの変化を含む様々な刺激下でのポリマー−ポリマーおよびポリマー−溶剤の相互作用間のバランスに大きく依存する合成ゲルを含むことができる。
【0105】
(生物活性物質)
上述したように、いくつかの実施形態では、本発明の中央管および/または流速低減素子は、生物学的満腹信号を始動する生物活性物質または生物活性剤を放出させるために採用することができる。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の流速低減素子および/または中央管は、時間をかけて胃腸(GI)管に信号を放出するように設計された多孔性と可鍛性を有する剛体である。いくつかの実施形態では、消化の栄養生成物は1つまたはそれ以上の流速低減素子200および/または中央管または長尺部材50から放出されてGI管内の化学受容器を始動させ、満腹信号の送信および/または生成に関連する分子信号を放出する。
【0106】
次に、食欲を減退させる、あるいは摂取した食物の吸収を遅らせる際の、装置からの生物活性物質の放出について検討する。「生物活性物質」という用語は、生物学的に活性なあるいは関連する、あらゆる有機、無機、または生体剤を指す。その用語は、米国出願第11/300283号で詳細に説明されているので、ここではごく簡単に説明する。たとえば、生物活性物質は、タンパク質、ポリペプチド、多糖(たとえば、ヘパリン)、オリゴ糖、単糖または二糖、脂質、有機金属化合物、または無機化合物、抗菌剤(抗バクテリアおよび抗真菌剤を含む)、抗ウィルス薬、抗癌剤、免疫剤であってもよい。生物活性物質は、生存細胞または老化細胞、幹細胞、バクテリア、ウィルス、またはそれらの一部を含むことができる。生物活性物質は、ホルモンなどの生物学的活性分子、成長因子、成長因子生成ウィルス、成長因子阻害剤、成長因子レセプタ、抗炎症剤、抗代謝剤、あるいは、完全なまたは部分的な機能インセンスまたはアンチセンス遺伝子も含むことができる。また、生物学的な関連または活性物質を運ぶ人工の粒子または物質も含むことができる。生物活性物質は、周囲環境のpHを変更する消化副産物または作用物質であってもよい。
【0107】
生物活性物質は、生物学的機構に治療的効果をもたらすことのできる科学的または生物学的化合物などの薬剤も含むことができる。生物活性物質は、代謝され、分解され(たとえば、分子成分の分裂)、あるいは他の形で身体内で処理され改質された後、関連する生物学的活動を発揮する前駆体物質も含むことができる。以上の例の組み合わせ、融合、またはその他の配合を行うことができ、本明細書で意図される意味に含まれる生物活性物質と考えられる。生物活性物質に向けられた本発明の側面は、上記例の一部または全部を含むことができる。
【0108】
本発明に含まれる生物活性物質の例は、ホルモンや、満腹促進信号を伝達する他の化合物を含む。本発明の生物活性物質は、他の自然発生または合成ペプチド、タンパク質、およびステロイドホルモンを含むことができる。生物活性剤は、抗腫瘍剤、抗生物質などの抗微生物剤、セファロスポリン系薬剤、アミノグリコシド系薬剤、マクロライド系薬剤、テトラサイクリン系薬剤、化学療法剤、サルファ剤系、尿路消毒薬、嫌気感染抗生物質、結核用薬剤、ハンセン病用薬剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、アメーバ症用化学療法剤、抗蠕虫症剤、抗炎症剤、抗痛風剤、中枢作用性鎮痛薬、甲状腺薬剤、補助療法で使用される薬剤、抗甲状腺剤、ウィルス表面抗原またはウィルス部分、バクテリア表面抗原またはバクテリア部分、寄生虫の病気または寄生虫部分を発生させる寄生虫表面抗原、免疫グロブリン、血清、疾病関連抗原などの免疫反応を誘発する抗原、またはホルモン、酵素、または凝固因子などの生物活性剤として使用される薬剤もさらに含むことができる。
【0109】
(配送用の生物活性剤を収容する装置の特徴)
本発明の中央管20および/または流速低減素子200は、(浸漬塗布、噴霧塗布、スパッタ塗布、および当業者にとって既知なその他の各種技術によって)その表面に付着される、あるいは、表面に進入可能な貯蔵部または蓄積部に含まれる生物活性物質を有することができる、あるいは、腸挿入具を構成する材料が生物活性物質を含み拡散するように製造することができる。生物活性物質を拡散する本発明の中央管および/または流速低減素子は、2005年12月15日に提出され、2006年8月10日に米国公開第2006/0178691号として公開され、Gombotzらの米国特許第5019400号、Bezemerらの米国特許第6685957号、および同第6685957号を参考文献として含む、Binmoellerの米国出願第11/300283号で言及される多数の様々な手順によって作製することができる。
【0110】
ステロイドホルモンなどの疎水性生物活性物質が上記方法によって組み込まれる際、少なくとも1つの疎水性酸化防止剤が存在し得る。採用可能な疎水性酸化防止剤は、トコフェロール(α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、エピシロン−トコフェロール、ゼータ1−トコフェロール、ゼータ2−トコフェロール、およびエタ−トコフェロールなど)、および1−アスコルビン酸6−パルミチン酸などである。このような疎水性酸化防止剤は、コポリマーの分解を遅らせ、生物活性物質の放出を遅らせることができる。
【0111】
上述の技術により作成される搭載ポリマーが親水性生物活性物質を含む際、搭載ポリマーは、疎水性酸化防止剤に加えて、コポリマーからの剤の放出速度を遅らせるのに供することができるコレステロール、エルゴステロール、リトコール酸、コール酸、ジノステロール、ベツリン、またはオレアノール酸などの疎水性分子も含むことができる。このような疎水性分子は搭載ポリマーへの水の浸透を防ぐが、ポリマーマトリックスの分解性は損なわない。さらに、上記分子は、放出される生物活性物質のポリマーマトリックスの拡散係数を低減することによって、ポリマーマトリックスからの生物活性物質の放出をさらに持続することができる。
【0112】
ポリマーに生物活性物質を拡散する方法と熱保護剤を含む凍結乾燥の役割は、2005年12月15日に提出され、引用により組み込まれているBinmoellerの米国出願第11/300283号に提示されている。
【0113】
本発明に従い、特に生物活性剤の収容の放出に関して使用されるポリマーの非限定的な例は、ポリウレタン、ポリエステルウレタン、シリコーン、フルオロポリマー、エチレンビニルアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、トリメチレンカーボネート、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシバレレート、ポリジオキサノン、ポリイミノカーボネート、ポリオルトエステル、エチレンビニルアルコールコポリマー、L−ポリラクチド、D,L−ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ラクチドとグリコリドのコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリ(n−ブチル)メタクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エラストマー、およびその混合物などである。使用可能な代表的なエラストマーは、たとえば、フロリダ州ラルゴのConcept Polymer Technologies社の商標名「C−FLEX」で市販されている熱可塑性エラストマー材料、ポリエーテル−アミド熱可塑性エラストマー、フルオロエラストマー、フルオロシリコーンエラストマー、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−スチレンゴム、ポリイソピレン、ネオピレン(ポリクロロプレン)、エチレン−プロピレンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレンエラストマー、ブチルゴム、多硫化物エラストマー、ポリアクリレートエラストマー、窒化物、ゴム、ポリエステル、スチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエンおよびイソピレン、ポリエステル熱可塑性エラストマー、およびその混合物である。
【0114】
2005年12月15日に提出され、引用により組み込まれているBinmoellerの米国出願第11/300283号に記載されるように、当業者は、特定の治療対象および所望の放出プロフィールに依存して、本発明の腸挿入具の表面上または材料内に含める生物活性物質の量または濃度を決定することができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、本発明の腸挿入具またはその一部は、生物活性物質の拡散または放出を遅らせるためのトップコートまたはバリアを含むことができる。通常、バリアは生体適合性を有するべきで(すなわち、その存在が身体から悪い反応を誘発しない)、約50オングストローム〜約20000オングストロームの厚みを有することができる。いくつかの実施形態では バリアは、生物活性物質を拡散するポリマー上に提供されるポリマーを含むことができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、本発明のバリアは、2005年12月15日に提出され、引用により組み込まれているBinmoellerの米国出願第11/300283号に詳述される無機材料を備える。その出願には、本発明の挿入具にバリアを蒸着させるのに使用することのできる方法がいくつかさらに詳述されている。窒化チタン、炭窒化チタン、窒化クロミウム、窒化チタンアルミニウム、窒化ジルコニウムなどの窒化バリア塗膜は、陰極アーク真空蒸着によって比較的低温で本発明の挿入具に蒸着させることができる。このような方法は、本発明の挿入具内に含まれる生物活性物質が温度に反応する場合に選択することができる。純金属や合金の薄膜を製造する方法も、その出願に詳述されている。
【0117】
いくつかの実施形態では、バリアが主に無機材料を含有すると考えられる。ただし、他の実施形態は、有機材料と無機材料の混合物を有するバリアまたはすべてが有機材料のバリアを含むことができる。本発明に従い使用可能な有機化合物は、たとえば、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニルデン、ナイロン6−6、パーフルオロポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシラート、およびポリカーボネートである。通常、バリア材料内の薬剤の溶解度は、ポリマーキャリア内の薬剤の溶解度より低い。また、通常、バリア材料内の薬剤の拡散性は、ポリマーキャリア内の薬剤の拡散性より低い。いくつかの実施形態では、バリアは生分解性であってもよい。バリアを作製するのに使用可能な適切な生分解性材料は、たとえば、リン酸カルシウム、たとえば、ハイドロキシアパタイト、炭酸ハイドロキシアパタイト、リン酸トリカルシウム、β−リン酸トリカルシウム、リン酸オクタカルシウム、アモルファスリン酸カルシウム、およびオルトリン酸カルシウムなどである。リン酸カルシウム(焼き石膏)などの特定のカルシウム塩も使用することができる。バリアの生分解性は、基礎を成す第1の層からの薬剤放出を制御する追加の機構としての役割を果たすことができる。
【0118】
(生物活性物質放出の能動的制御)
装置および方法のいくつかの実施形態は、表面または蓄積部からの薬剤の受動的拡散と対照的に、生物活性剤を配送するより能動的、制御的、または定量的な方法を提供する。これらのアプローチは、複数の薬剤の配送の取扱も受け入れる。本発明の装置の実施形態は、貯蔵部または蓄積部から1つまたはそれ以上の生物活性剤を投与するポンプを含むことができる。ポンプは電動ポンプ72、機械ポンプ、孔を制御する圧電装置を含むことができ、たとえば、ポンプは浸透圧駆動ポンプ71であってもよい。浸透圧ポンプでの配送は、エネルギー入力を必要としないので比較的受動的だが、制御可能で、予測可能で、較正可能である。浸透圧ポンプは通常、pH差や濃度勾配により駆動または付勢される。生物活性物質の放出は、たとえば、ユーザ制御またはプログラム可能なペーシング/信号装置のいずれかである電気信号装置などの外部制御装置によって制御することができる。生物活性物質または生物活性剤の配送に関するこれらの能動的アプローチを具体化する装置の例を以下説明し、図26〜28に示す。
【0119】
単に消化または食欲の調節に特化する薬剤よりも幅広い生物活性剤の配送に有利に適用できる、腸の内腔内の薬剤配送部位には利点がある。このような他の薬剤は、化学療法剤、または抗癌治療用の放射性粒子を含むことができる。局所的配送から恩恵を得ることのできる他の種類の生物活性物質は、腸の細胞治療用に、幹細胞または活性化免疫細胞などの細胞を含むことができる。十二指腸内の放出部位の利点は、目標部位に近接して、腸内の特定の化学回復受容器を利用し、薬剤が静脈または口腔から配送される際に起こる、肝臓や腎臓などの器官を通過中の薬剤の系統的代謝を最小限に収めることである。
【0120】
食物摂取量を低減することのできる生物活性物質を小腸に配送することに加えて、本発明の方法および装置は、通常口腔からも摂取できる他の生物活性物質を配送するために使用することもできる。生物活性物質を直接小腸内に放出することは、通常口腔から摂取される多くの薬剤を含め、多くの生物活性物質が吸収されるために小腸に達する前に胃内の厳しい状況によって分解されるので都合がよい。このため、多くの生物活性物質は、保護材の層で被覆される。薬剤を含む生物活性物質を小腸に直接放出することによって、生物活性物質を保護する塗膜は必要とされない。必須の保護膜がないことは、不要な物質が系に導入されないために患者にとっては有益であり、工程ステップの低減とコスト削減の手段としても有益である。
【0121】
より介入的な役割を果たす本発明の別の側面では、装置の実施形態は胃または十二指腸の組織に電位を印加するように構成される電子エミッタを含むことができる。この電位は、満腹信号を脳に送るように、神経細胞受容器および/または機械受容器、および/または浸透圧受容器、および/または化学受容器を作動させる。このような装置の例示的実施形態を、図29に示すように以下で説明する。腸挿入具のおよびその使用に関する方法の実施形態の役割は、以下のセクションで詳述するように、図13の状況でより概括的に検討される。
【0122】
(本発明の別の例示的実施形態)
図13は、装置の実施形態がホスト被験者の生理学に関係し、最終的に食物摂取量の低減につながる満腹感を生成するように介入する様々な方法の概略フロー図である。本発明の装置の実施形態は、2つの広範なアプローチにより消化と満腹の生理に介入しており、いずれのアプローチも自然の満腹機構を模す、あるいは利用している。本実施形態は、(1)作用を有する単なる物理的存在によってホスト被験者の生理に関係する、および/または(2)生物活性剤の直接投与または直接的な神経刺激により直接的または能動的に介入することができる。図13とこの関連説明は、本発明を理解するための簡潔化した理論的枠組として提供され、すべての細部を完全に網羅することを意図していない。特異点の様々な相互作用、点線、およびぶれは簡潔にするために省略する。
【0123】
第1に、装置の単なる物理的存在は2つの主要な効果を有する。1つは拡張効果で、明確な流速低減素子を有する場合、糜粥流を妨げる。これらの2つの明白な効果はそれぞれ、装置の寸法と、存在する場合には装置の流速低減システムに左右される。第1に、装置の存在は十二指腸を拡張し、その拡張は、たとえば、十二指腸の伸張感応性神経細胞によって神経的に感知または検知することができる。したがって、たとえば、長さ、幅、総体積、全体的な配座または輪郭、密度、重量、または表面特性などの物理的寸法、側面、または特徴が拡張に影響を及ぼす、あるいは何らかの形で神経的に検知することができる。第2に、糜粥流を物理的に妨げることに関しては、この妨害プロセスが消化中の糜粥の生化学的プロフィールを変更することができ、十二指腸の化学受容器はそのプロフィールを十分に消化されたと感知する。変更された生化学的プロフィールとは別個の情報として、より具体的には、糜粥滞留時間の延長が神経で認知される場合もある。これは後で拡張の神経検知にも関連しうる効果である。神経経路は実際には拡張によって刺激されて、神経電気信号および/または神経ペプチドおよび神経伝達物質を、局所的またはより遠位の活動部位に放出することができる。神経フィードバックを結合するのが、代謝プロフィール自体から、およびCCKなどのホルモン分泌による化学的信号である。神経および化学反応は中枢神経系および他の器官へと広がり、要するに、十分食べ、満腹が達成されたことを示す。さらなる反応で、中枢神経系が摂食の停止および緩やかな消化プロセスをサポートする。
【0124】
第2に、図13を参照すると、装置の実施形態は、単なる物理的存在によって誘発されるよりも能動的に介入することができる。装置の実施形態は、(1)生物活性剤を確実に提供することができる、および/または(2)同じように、あるいは上述の生理学的経路を通じて満腹と消化の生理に関わる神経の電気刺激を提供することができる。要約すると、十二指腸内の装置の存在による様々な効果は、生化学的作用または信号(たとえば、ホルモン反応および/または腸内および血流内の両方の代謝物の生化学的プロフィール)と電気信号を含む神経活動を結果的にもたらし、それらはすべて生理学的に収束して、満腹感の感知、食欲の感知または知覚、心理的相関性、行動及び習慣的反応に補完された「満腹」をもたらす。
【0125】
本発明の実施形態の小腸挿入具は通常、十二指腸での糜粥の通過を遅らせる(あるいは、他の言葉で表現すれば、糜粥の滞留時間を延長する)ための少なくとも1つの屈曲部と少なくとも1つの流速低減素子を有する長尺部材を含むが、装置のいくつかの実施形態は必ずしも(図26〜28に示されるように)流速低減素子を含まず、いくつかの実施形態では、流速を低減するように中央部材または長尺部材自体を構成することができる(たとえば図16A、図16B)。これらの実施形態は通常、実際には十二指腸の目標屈曲部分に対応する1つか2つの屈曲部を有する。流速低減素子を含む挿入具の屈曲部は、装置がある期間、十二指腸内に安定的にとどまるように構成される。挿入具の実施形態は、1つまたはそれ以上の生理学的満腹信号の生成に寄与する調整を含むことができる。挿入具の実施形態は、生分解性部、神経刺激器、および生物活性物質放出機構によって能動的に放出可能な生物活性物質の1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部などの他の特徴を含むことができる。
【0126】
十二指腸内の目標屈曲部位における挿入具の実施形態の滞留時間は、実施形態の構造と、装置の一部を成す生分解性材料の細部とに従い変動する。生物学的プロセスによる装置の分解は通常、目標部位からの装置の解放、追放、または離脱、および腸管を介した装置の除去を引き起こす。したがって、該装置は、最初は小腸の目標屈曲部に配置され、その後、滞留期間の経過後、生分解効果により、目標部位から離脱し、排便によって身体から排出されるように構成することができると了解される。生分解性はいくつかのポリマーの特徴であり、本明細書に記載される、および/または図3〜12、および16A〜29に示される実施形態のポリマー部分に含めることができる。生分解は、図30A、図30B、図31Aおよび図31Bに示される実施形態に明確に示される特徴である。
【0127】
装置の実施形態は、通常、ホルモンまたは神経経路を通じて生理学的満腹信号を導き出す。いくつかの実施形態では、経路は長さ、幅、または総体積などの総合的寸法、あるいは表面特性を有する中央部材および流速低減素子の全体を含む、装置の物理的存在によって刺激されるため、機械受容器または伸張受容器などの腸の神経素子は、部分的に消化された食物の存在として解釈される物質の存在を感知し、したがって、満腹と解釈される神経メッセージを中枢神経系に対して刺激する。他の実施形態では、満腹信号はホルモンである。流速低減素子は、十二指腸で処理されている糜粥の通過を減速させ、食物の分解生成物の生化学的プロフィールを変更し、十二指腸の化学受容器は変更された生化学的プロフィールに反応して中枢神経系および消化器系の他の部分に満腹感を伝える。
【0128】
さらに別の実施形態では、装置は、受動的または能動的機構のいずれかによって放出可能な生物活性物質の貯蔵部を含む。その実施形態では、満腹信号は、挿入具のホストの内分泌経路によってではなく、装置によって直接提供される。装置の実施形態は、たとえば、受動的に溶出する、あるいはホスト被覆材の分解と協調して溶出する薬剤塗膜など、どんな種類の物質貯蔵部も含むことができ、いくつかの実施形態はポンプに連結される貯蔵部を含む。上記ポンプは、たとえば、蠕動によって伝えられる生物学的エネルギー、または電気エネルギー、または機械エネルギーを利用する機械的ポンプであってもよい。いくつかの実施形態は、電気エネルギーの入力を必要としないが、代わりに浸透圧勾配の保存されたエネルギーを引き出す浸透圧ポンプを含むことができる。ポンプによる放出のために電気エネルギーに依存する実施形態は通常、バッテリやコンデンサなどのエネルギー貯蔵装置を含む。動力による実施形態のいくつかは、より大きなシステムの一部として、ポンプの動作を制御できる遠隔刺激器を含み、いくつかの実施形態では、装置は十二指腸の局所神経を刺激する電極を通じて直接神経刺激を与え、中枢神経系に満腹感を伝えることができる。ポンプと同様、神経刺激を含む装置は、直接有線通信で、または無線周波数信号を介してのように無線でのいずれかで通信するエネルギー貯蔵装置および外部オン/オフまたは可変電力制御装置を含むことができる。
【0129】
図14は、洞腔−幽門接合部5から始まり、空腸12の入口で終わる小腸の十二指腸10を中心としたヒトの胃腸管の一部を示す図である。(膵臓9から)の膵管と肝臓からの総胆管との結合によって形成される肝膵膵管15の入口部位であるファーテル膨大部13が示されている。幽門8は括約筋による胃の内容物の排出を制御し、幽門弁11により幽門8は十分に消化された胃内容物を通過させるのに十分広く開放することができる。これらの胃内容物は、十二指腸10の通過後、続いて空腸12、さらに回腸に入る。十二指腸10、空腸12、および回腸が、小腸として知られる部分を構成するが、消化管のこれらの個々の部分も一般的に小腸と称される。本発明の状況では、小腸は十二指腸、空腸および/または回腸の全部または一部を指すことができる。図15は、ひだ19、すなわち、挿入具の実施形態が配置される内部空間の外周を形成する十二指腸の内側に折れたライニング部を含む十二指腸10の平面図である。幽門8、幽門弁11、十二指腸球部1OA、縦十二指腸1OBおよび横十二指腸1OC、ファーテル膨大部13、および空腸12の最初の部分も示される。本図は、十二指腸の目標部位内に固定される本発明の挿入装置の実施形態をそれぞれ示す以下の図16A〜29の視覚的背景を提供する。
【0130】
図16Aは、電話線状の単純なコイルの形状の中央管または中央部材50を有する挿入具20の実施形態を示す。本実施形態では、流速低減素子200Aは、延長された中央部材50の個々のコイル素子またはセグメントとして理解することができる。図16Bは、装置配備管620から出現する際にピグテール61の形状を取る、装置の近位端または遠位端部の詳細を示す。ピグテール端部の実施形態は、配備中の有用性と利点、および挿入具が目標部位に配置されるときに安定化する非刺激端点を提供する。
【0131】
図17Aは、図3および9に示される実施形態と同様、棘突起に装着されたリブ付きの流速低減素子200を有する、C形棘突起形状の中央管または中央部材50を備える挿入具20の実施形態を示す。図17Bは中央部材50と、配備管620から出現するリブ200の先端を示す。リブ状の流速低減素子200のいくつかの実施形態は、バネ状で、外方に偏向する素子で、その存在によって流速を低減するだけでなく、有利なことに、十二指腸10の壁を刺激することによって、満腹信号の生成と、十二指腸の目標屈曲部位内に位置する際の挿入具の安定化とに寄与する。後者に関しては、十二指腸球部1OAは、十二指腸の遠位部よりも大きな半径に膨張し、そのため、この部位の拡張素子は、特に有効な安定化部分を提供する。
【0132】
図18は、ネット付きの棘突起の形状の流速低減素子を有する挿入具20の実施形態を示す。本実施形態は、図17A、図17Bに示される実施形態に類似すると考えられるが、拡張可能リブの間にネット、フィルタ、またはメッシュが配備される。拡張可能リブは上述したような利点をもたらし、ネット掛けは十二指腸10を通って処理されている糜粥の流速を低減するという点で梃子作用を提供する。流速低減素子200の孔径が変動するメッシュの使用によって、流速を様々な程度に低減した装置の変形を提供することができる。さらに、メッシュ素子は、糜粥流速に影響を及ぼすことのできる親水性または疎水性などの特性が様々に異なる材料で形成することができる。さらに、メッシュは、生物活性物質を吸収し、その後、挿入具20が十二指腸にとどまる期間、受動的に溶出または脱着させる表面積を広げることで、その部位に利点を提供することができる。
【0133】
図19は、近位開放リング状のキャップの形状の近位部30Aによって固定される遠位閉鎖スリーブの形状の流速低減素子を有する挿入具20の実施形態を示す。スリーブは様々な寸法の孔を有することで、様々な度合いの漏れ量を提供し、通常は図18に示される実施形態のネットに帰する特徴をもたらす。
【0134】
図20Aは、中央部材50に沿って、中央部材と連続する閉鎖メッシュバスケットの形状の流速低減素子200を有し、さらにピグテール近位端および遠位端61を示す挿入具20の実施形態を示す。図20Bは、配備管620から出現し、出現後に拡張する装置を示す。メッシュバスケットの実施形態は柔軟で拡張可能で、メッシュは寸法と構成を様々に変更することができる。通常、バスケット部自体は角度を形成しないが、連結中央部50は、所定の角度を形成し、弾性的に保持することができる。バスケットと中央部の構成は同一で連続していてもよいし、互いに構成を変えてもよい。連結中央部50は特に、形状記憶合金または形状記憶ポリマーのいずれかによって提供される形状記憶機能をさらに有することができる。バスケット200および/または中央部材50を備えるポリマー材料は、弾性的な形状保持と形状記憶のいずれにかかわらず、生分解性とすることができる。
【0135】
図21は、中央に搭載され外方に延在するバッフルの形状の流速低減素子200を有し、さらにピグテール近位端および遠位端61を示す挿入具20の実施形態を示す。バッフルは、中央部材50に空間的に間隔を置いて搭載され、図20A、図20Bに示される実施形態の文脈で説明されたように弾性形状または記憶形状材料により保持される屈曲部を含むことができる。
【0136】
図22は、周縁に搭載され内方に延在するバッフル形状の流速低減素子200を有し、さらにピグテール近位端および遠位端61を示す挿入具20の実施形態を示す。バッフルは、図20A、図20Bおよび図21に示される実施形態の文脈で説明したような弾性形状またはメモリ形状材料によって保持される角部または屈曲部を含むことのできる中空の中央部材50に、空間的な間隔を置いて搭載される。本実施形態は、中空の身体側面により示される他の多くの実施形態と全般的に異なる。装置20は近位部30と遠位部40の両方で開放される。この中空形状は、満腹信号の生成に寄与するという点に関していくつか特別な利点を提供する。装置の形状は十二指腸10内の空間を満たすため、十二指腸壁内の機械反応性または伸張反応性神経の刺激に特に適し、こうした神経の刺激は通常、満腹感を提供する。この形状の装置20は、大部分の他の図示される実施形態に見られるように、より中央に配置される中央部材50を有する装置に比べて力分布の利点を有することができる。さらに、装置20の表面構造を変化させることができ、たとえば、中空でない個体またはハウジング状、あるいは孔または開口部(図示せず)を有する実質的なハウジング状であってもよいし、ケージ状またはメッシュ状(図示せず)であってもよい。これらの形状はそれぞれ特定の利点を有する。さらに、図27および28に示される別の実施形態では、一層実質的な物理的存在を有するハウジング状装置は、薬剤貯蔵部、ポンプ、および回路を装着または搭載するための物理的プラットフォームを提供する。さらに、このようなハウジング形状は、図29の実施形態に示されるような神経刺激電極を適切に搭載することができる。この特定の実施形態は、特にバッフルがバネ付勢を有する際、バッフルとの蠕動運動の形で身体から運動エネルギーを捕捉するように特別に順応可能であると理解される。こうしたエネルギーの捕捉は、主流に対して分離し失速する多量の糜粥を詰まらせる、あるいは生み出す可能性を低減しつつ、糜粥の流速を遅らせるという利点を有することができる。
【0137】
図23は、発泡体形状の流速低減素子200を有し、さらにピグテール近位端および遠位端61を示す挿入具20の実施形態を示す。本実施形態は最も広い側面では、図6に示される実施形態に類似する。発泡体状の流速低減素子200は、圧縮可能かつ拡張可能であるため、狭い管や内視鏡を通って目標部位へ配備するのに適している。発泡体状材料は連続気泡形状でも独立気泡形状でもよく、ヒドロゲルであってもよい。このような発泡体状材料は、大きく、弾性で、空間を満たしがちなので流速低減機能に供する。これらの発泡体状材料は、本発明の実施形態により提供されるように、十二指腸内での滞留期間中に後で受動的に脱着させることのできる生物活性剤の吸収にとって都合の良い高表面積も提供する。このような発泡状または海綿状材料は、全体的または部分的に生分解性であってもよい。生分解性は通常、限られた滞留時間を提供する、および材料に組み込まれた、あるいは吸収された生物活性剤を拡散させるという目的に供する。
【0138】
図24は、多孔栄養滲出ステント形状の流速低減素子200を有し、近位端30および遠位端40の両方で開放される挿入具20の実施形態を示す。本実施形態は、形状的に大きな一体性を持たせるため図19に示される実施形態とは全般的に異なる。対照的に、図19の実施形態は開放スリーブに言及され、特定の構造上の形式を持たない。ここに示される栄養滲出ステントの実施形態は構造上の一体性を有し、より積極的に空間を満たす。材料は通常、他の種類の管腔内ステントと同様にメッシュ形状を取り、ポリマーおよび/または金属鎖から構成することができる。メッシュは通常、ステントにより囲まれる経路内の糜粥の総体流を維持しつつ、処理中の糜粥18の液化した高栄養部分の滲出を提供するのに十分開放されている。
【0139】
図25は、中央部材50に空間的な間隔を置いて搭載され、ピグテール近位端および遠位端61をさらに示す、中央搭載ファンまたはブレードの形状の流速低減素子200を有する挿入具20の実施形態を示す。このようなファンブレード200は、回転可能で、最小限の抵抗を含め、回転に対する抵抗を可変とすることができる。上記流速低減実施形態200が処理する糜粥の流速に従い実際に回転する程度まで、糜粥の混合は流速の低減の補助として有益なプロセスであるため、このような移動は図22に示される実施形態で説明したのと同じように有益である。
【0140】
図26は、層状にされ、あるいは吸収され、あるいは生物活性剤が受動的に十二指腸10へと溶出することのできる中央部材または長尺部材50に組み込まれた、貯蔵部または蓄積部内の生物活性物質を有する挿入具20の実施形態を示す。本実施形態は、装置の生物活性物質または生物活性剤の配送側面を重視しており、独自の物理的寸法以外に特別に形成された流速低減素子は示されていないが、このような薬剤溶出中央部材50は他の図面に示される各種流速低減素子200と結合することができると理解すべきである。
【0141】
図27は、中央部材または長尺部材50によって支持される生物活性物質搭載浸透圧ポンプ71を有する挿入具20の実施形態を示す。浸透圧ポンプは当該技術において十分既知であり、たとえば、Alza Corporation(カリフォルニア州クパティーノ)によって提供される。浸透圧ポンプは様々な方法で駆動することができる。たとえば、化学反応力によって駆動される水が浸透圧膜を横断し、塩チャンバに入る。塩チャンバの体積が増加すれば、膨張した膜は強制的に薬剤貯蔵部へと偏向される。拡張膜は貯蔵部に押し入るにつれ、薬剤が1つまたはそれ以上の出口から投与される。
【0142】
図28は、電動ポンプ72に連結される生物活性物質搭載貯蔵部73、エネルギー貯蔵・配送ユニット75(どちらも中央部材または長尺部材50によって支持される)、および外部制御装置77を有する挿入具20の実施形態を示す。図26および27に示されるように、図示される本実施形態は、目標の十二指腸内部位への生物活性剤または生物活性物質の配送を重視している。これらの実施形態のいずれも2つ以上の薬剤を含むことができる。この生物活性剤供給実施形態と図26および27の実施形態との違いは、それらが比較的受動的で、生物活性剤放出機構の細部によって決定されるように所定の時間的経過に基づき動作することである。しかし、図28に示される実施形態では、生物活性物質の放出は、ポンプの能動的制御下にあり、ポンプは埋込ワイヤによって、あるいは、ここで図示されるようにたとえば無線周波数送信などの無線通信によってポンプと通信する外部制御装置の制御下にあってもよい。装置は2つ以上の上記ユニットを含むことができ、あるいは、単独のユニットが2つ以上の貯蔵部とポンプを含み、それによって単独の装置20が個々に2つ以上の生物活性剤を配送することができる。
【0143】
図29は、局所神経刺激用の電極78、バッテリやコンデンサなどのエネルギー貯蔵・配送ユニット75、および外部制御装置77を有する本発明の挿入具20の実施形態を示し、それらの構成要素はすべて中央部材または長尺部材50によって直接的または間接的に支持される。本実施形態は神経刺激に焦点を当てるような方法で説明するが、薬剤溶出装置を参照して説明したように、装置の神経刺激器機能は様々な流速低減素子200のいずれとも組み合わせることができる。本実施形態では、神経があると分かっている部位に電極を有利に配置することができる。電極は、刺激すべき2つ以上の神経を目標とする、あるいは、2つ以上の地点の神経を目標とすることができる。
【0144】
図30A、図30Bは、生分解性素子および形状記憶素子を含む挿入具20の中央部材50の実施形態を示す。図30Aは、角度αおよびβが明瞭な無傷な構造の中央部材を示す。図30Bは、生分解が始まった後の中央部材を示す。後になると、中央部材はさらに劣化し、一体性と立体的配置を失い、角度αおよびβは、C形装置の確定アームが消えるとともに消える。このように、これは、最初は腸内の目標部位に配置されるように構成される装置の実施形態を示し、その後、滞留と生分解の期間後、装置は目標部位との当初の同調する一致を失うことにより、目標部位から離れるように構成される。ここに示される例示的実施形態では、挿入具装置20は、湾曲形状記憶合金部22と比較的直線的な生分解性ポリマー部との組み合わせから形成される。金属部22およびポリマー部24は分節的に一緒に接合されて、完全な寸法と、図9に示される半径αおよび半径βの角度のような所望の完全な角度および屈曲とを有する挿入具を作製する。金属部は、より実質的な接合面を提供し、金属素子が部材20全体の生物学的分解後に崩れる際に、ホスト被験者を鋭利な部分による負傷または炎症から保護するために、各端部に拡張部を有する。金属部とポリマー部は、当業者にはよく知られた、屈曲装置を完成する他の方法で接合することができる。
【0145】
図31A、図31Bは、生分解性ポリマー材料を含む挿入具の中央部材50の実施形態を示す。生分解性ポリマーはすでに広範に上述した。図31Aは、無傷な状態での中央部材を示す。図31Bは、生分解が開始された後の中央部材を示す。後になると、中央部材50はさらに崩壊し、半径αおよび半径βの角度はもはやその形状を保持していない。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、図9に図示される半径αおよび半径βの角度のような角度を弾性的に保持することができ、他の実施形態では、ポリマーは上述したように形状記憶を保持することのできる種類であってもよい。
【0146】
(用語と規則)
別段定義されない限り、本明細書で使用されるどの技術用語も、本発明が属する技術の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。様々な規則や用語は、関連米国出願第11/300283号にも説明されている。具体的な方法、装置、および材料を本願に記載するが、本明細書に記載のものと類似のまたは等価の方法および材料も本発明の実行の際に使用することができる。
【0147】
本発明の装置および方法の実施形態を例示の図解によって詳細に説明したが、そのような図解は理解しやすくするためのものであって、限定することを目的としていない。様々な用語が本発明の理解を導くために本明細書で使用されている。これらの様々な用語はその用語の一般的な言語的または文法的変形または形式にも拡張されると理解される。また、装置、機器、または薬剤に言及する用語が商標名または一般名を有するとき、これらの名前は最新例として提供されており、本発明はこうした文章上の範囲に限定されないと理解される。最新用語の派生語として妥当に理解可能である、あるいは最新用語によって包含される対象のサブセットを示す、後で導入される用語は、最新用語として記載されたものと理解される。さらに、たとえば、本発明の実施形態が満腹の生理学に関わる様々な点に関する理解を深めるために、論理的検討が先に成されているが、本発明の請求項はこうした論理に拘束されない。さらに、本発明の実施形態の1つまたはそれ以上の特徴は、本発明の範囲から逸脱せずに本発明の他の実施形態の1つまたはそれ以上の他の特徴と組み合わせることができる。さらに、本発明は、例示のために記載された実施形態に限定されず、各構成要素に権利として与えられている最大範囲の等価性を含め、特許出願に添付の請求項を公正に読み取ることによってのみ定義されるべきであると理解せねばならない。
【0148】
(1) 小腸挿入具であって、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端の間の少なくとも1つの屈曲部(angled portion)であって、前記小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位(angled target site)に対応する屈曲部と、
生分解性材料(bioactive material)から成る前記挿入具の少なくとも一部と
を含む長尺部材(elongated member)を備え、
前記長尺部材は、最初は前記目標部位内に安定して配置され、その後、前記生分解性材料の分解後、前記目標部位から離されるように非安定化するよう構成される小腸挿入具。
(2) 前記屈曲部が生分解性材料を備える、(1)に記載の挿入具。
(3) 前記屈曲部が形状記憶材料を備える、(1)に記載の挿入具。
(4) 前記形状記憶材料が形状記憶合金または生分解性形状記憶ポリマーのいずれかを備える、(3)に記載の挿入具。
(5) 前記屈曲部が形状記憶合金部および生分解性部を備える、(1)に記載の挿入具。
(6) 前記生分解性部が、分解後、前記形状記憶合金部の除去を簡易化するように構成される、(5)に記載の挿入具。
(7) 前記形状記憶合金部および前記生分解性部が接合部で接合され、前記接合部が前記生分解性部の分解に伴って分解するように構成される、(5)に記載の挿入具。
(8) 前記小腸内の前記屈曲目標部位が前記十二指腸にある、(1)に記載の挿入具。
(9) 前記十二指腸内の前記屈曲目標部位が2つの角度を備え、前記挿入具が前記十二指腸の2つの角度に対応する2つの角度を有する、(8)に記載の挿入具。
(10) 前記長尺部材によって支持される少なくとも1つの流速低減素子をさらに備え、前記流速低減素子が前記小腸内の糜粥の流速を低減するように構成される、(1)に記載の挿入具。
(11) 前記流速低減素子が少なくとも部分的に生分解性材料から形成される、(10)に記載の挿入具。
(12) 前記流速低減素子がリブ、ネット、スリーブ、バスケット、中央に搭載されるバッフル、周縁に搭載されるバッフル、発泡体状材料、またはファンのいずれかを含む、(10)に記載の挿入具。
(13) 前記発泡体状材料がオープンセル泡発泡体(open cell foam)、クローズドセル発泡体(closed cell foam)、またはヒドロゲルのいずれかを含む、(12)に記載の挿入具。
(14) 前記発泡体状材料が内部に組み込まれた生物活性物質を備える、(13)に記載の挿入具。
(15) 前記発泡体状材料は生分解性であり、前記生物活性物質は前記発泡体状材料の分解時に放出される、(14)に記載の挿入具。
(16) 前記流速低減素子が、1つまたはそれ以上の生物活性物質の少なくとも1つの放出可能な貯蔵部を含む、(10)に記載の挿入具。
(17) 前記少なくとも1つの流量低減素が、生化学的プロフィールを変更するのに十分なほど前記糜粥の流速を低減する、(10)に記載の挿入具。
(18) 前記生化学的プロフィールがホルモン満腹信号を生成させるのに十分なほど変更される、(17)に記載の挿入具。
(19) 前記挿入具の物理的特徴は、前記挿入具が、前記挿入具が封止されるときに前記小腸の一部を拡張させ、前記拡張が、それに応じて前記小腸の1つまたはそれ以上の神経に満腹信号を生成させるのに十分であるというものである、(1)に記載の挿入具。
(20) 前記挿入具の前記物理的特徴が長さ、幅、体積、重量、密度、多孔度のいずれでもよい、(19)に記載の挿入具。
(21) 1つまたはそれ以上の生物活性物質を含み、前記長尺部材によって支持される1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部と、前記長尺部材によって支持される活性薬剤放出機構とをさらに備え、前記活性薬剤放出機構と前記1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部が互いに動作可能に連通する、(1)に記載の挿入具。
(22) 生物活性物質を配送するポンプをさらに備え、前記ポンプが前記長尺部材によって支持され、前記1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部に連結される、(1)に記載の挿入具。
(23) 前記ポンプが浸透圧ポンプ、電動機械ポンプ、圧電ポンプ、流駆動ポンプ、蠕動ポンプのいずれかである、(22)に記載の挿入具。
(24) エネルギーを前記ポンプに提供するように構成されるエネルギー貯蔵素子をさらに備える、(22)に記載の挿入具。
(25) 前記ポンプが遠隔装置によって制御される、(22)に記載の挿入具。
(26) 前記小腸または胃のいずれかの部位に電位を印加するように構成される電子エミッタをさらに備え、前記エミッタが前記長尺部材によって支持される、(1)に記載の挿入具。
(27) 前記エミッタが、起動後、満腹信号に寄与する神経反応を刺激する、(26)に記載の挿入具。
(28) エネルギーを前記ポンプに提供するように構成されるエネルギー貯蔵素子をさらに備える、(27)に記載の挿入具。
(29) 前記電子エミッタが遠隔装置によって制御される、(26)に記載の挿入具。
(30) 前記長尺部材の前記近位端に係合される固定部材をさらに備え、前記固定部材は前記目標部位への前記装置の安定化に寄与するように構成される、(1)に記載の挿入具。
(31) 前記固定部材は、前記長尺部材が前記小腸内の前記目標部位に配置されるときに前記胃にある、(30)に記載の挿入具。
(32) 小腸挿入具であって、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端の間の少なくとも1つの屈曲部であって、前記小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する屈曲部と
を含む長尺部材と、
前記長尺部材によって支持される神経刺激器と
を備える小腸挿入具。
(33) 前記挿入具が生分解性材料から形成される部分を含む、(32)に記載の挿入具。
(34) 前記長尺部材が最初は前記目標部位内に安定的に配置され、その後、前記生分解性材料の分解後、前記目標部位から離れるように非安定化されるように構成される、(33)に記載の挿入具。
(35) 前記挿入具の前記屈曲部が生分解性材料を備える、(33)に記載の挿入具。
(36) 前記神経刺激器が、1つまたはそれ以上の満腹信号を生成するのに十分なほど前記小腸の1つまたはそれ以上の神経を刺激するために採用される、(32)に記載の挿入具。
(37) エネルギーを前記神経刺激器に提供するように構成されるエネルギー貯蔵素子をさらに備える、(32)に記載の挿入具。
(38) 前記神経刺激器が遠隔装置によって制御される、(32)に記載の挿入具。
(39) 前記小腸内の前記屈曲目標部位が前記十二指腸にある、(32)に記載の挿入具。
(40) 前記十二指腸内の前記屈曲目標部位が2つの角度を備え、前記挿入具が前記十二指腸の2つの角度に対応する2つの角度を有する、(39)に記載の挿入具。
(41) 少なくとも1つの流速低減素子をさらに備え、前記素子が前記小腸内の糜粥の流速を低減するように構成される、(32)に記載の挿入具。
(42) 前記流速低減素子が少なくとも部分的に生分解性材料から形成される、(41)に記載の挿入具。
(43) 前記長尺部材の前記近位端に係合される固定部材をさらに備え、前記固定部材が前記目標部位での前記装置の安定化に寄与するように構成される、(32)に記載の挿入具。
(44) 小腸挿入具であって、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端の間の少なくとも1つの屈曲部であって、前記小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する屈曲部と、
を含む長尺部材と、
1つまたはそれ以上の生物活性材料(bioactive material)を含み、前記長尺部材によって支持される1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部(reservoir)と、
前記長尺部材によって支持される活性薬剤放出機構と
を備え、
前記活性薬剤放出機構と前記1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部が互いに動作可能に連通する(in operable communication with each other)小腸挿入具。
(45) 生分解性材料から形成された部分を含む、(44)に記載の挿入具。
(46) 前記挿入具の少なくとも一部が生分解性材料で形成され、前記長尺部材が、最初は前記目標部位内に安定的に位置し、その後、前記生分解性材料の分解後、前記目標部位から離れるように非安定化されるように構成される、(45)に記載の挿入具。
(47) 前記挿入具の前記屈曲部が生分解性材料を備える、(46)に記載の挿入具。
(48) 前記活性薬剤放出機構が浸透圧ポンプ、電動機械ポンプ、流駆動ポンプ(flow-driven pump)、蠕動ポンプ、または圧電ポンプのいずれかを含む、(44)に記載の挿入具。
(49) エネルギーを前記ポンプに提供するように構成されたエネルギー貯蔵部(energy storage element)をさらに備える、(48)に記載の挿入具。
(50) 前記活性薬剤放出機構が遠隔装置(remote device)によって制御される、(48)に記載の挿入具。
(51) 前記活性薬剤放出機構によって放出される前記生物活性材料が満腹信号(signal of satiety)を生成するのに十分である、(44)に記載の挿入具。
(52) 前記小腸内の前記屈曲目標部位が前記十二指腸にある、(44)に記載の挿入具。
(53) 前記十二指腸内の前記屈曲目標部位は2つの角度を備え、前記挿入具が前記十二指腸の2つの角度に対応する2つの角度を有する、(52)に記載の挿入具。
(54)
前記屈曲部が形状記憶部を備える、(44)に記載の挿入具。
(55) 前記屈曲部が形状記憶合金部および生分解性部を備える、(44)に記載の挿入具。
(56) 前記小腸内の部位に電位を印加するように構成される電子エミッタをさらに備え、前記部位が満腹信号に寄与する神経反応を生成する、(44)に記載の挿入具。
(57) 被験者に満腹感を起こさせる方法であって、
前記小腸に挿入具を配置するステップであって、前記挿入具が、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端の間の少なくとも1つの屈曲部であって、前記小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する屈曲部と、
生分解性材料から成る前記挿入具の少なくとも一部と
を含む長尺部材を備え、
前記長尺部材は、最初は前記目標部位内に安定して配置され、前記生分解性材料の分解後、前記目標部位から離されるように非安定化するよう構成されるステップと、
前記挿入具の存在または前記挿入具による能動的介入のいずれかの1つまたはそれ以上の効果により1つまたはそれ以上の満腹信号を生成するステップと
を備える方法。
(58) 前記挿入具の前記生分解性材料を生物分解するステップと、前記目標部位から前記装置を離すステップと、前記身体から前記装置を除去するステップとをさらに備える、(57)に記載の方法。
(59) 前記挿入具が形状記憶合金を有する部分を含み、前記生分解性材料を生物分解するステップが前記形状記憶合金部の除去を簡易化する、(58)に記載の方法。
(60) 前記挿入具が糜粥流速低減素子をさらに備え、前記流速低減素子で前記糜粥の通過を減速させるステップをさらに備える、(57)に記載の方法。
(61) 前記糜粥の通過を減速させるステップが、前記糜粥の前記生化学的プロフィールを変更する、(60)に記載の方法。
(62) 前記糜粥の前記生化学的プロフィールを変更することで前記腸の化学受容器が始動され、前記化学受容器がそれに反応して生物活性物質を分泌する、(61)に記載の方法。
(63) 満腹信号を生成するステップが、前記挿入具の存在により前記十二指腸の少なくとも一部の拡張に反応する前記腸の伸張感応性神経細胞を含む、(57)に記載の方法。
(64) 満腹信号を生成するステップが、前記挿入具の存在に反応して1つまたはそれ以上の生物活性物質を分泌する前記腸の細胞を含む、(57)に記載の方法。
(65) 前記挿入具が、放出可能な貯蔵部に生物活性物質を備え、前記挿入具による能動的介入が、前記挿入具が1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップを含む、(57)に記載の方法。
(66) 1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップが前記貯蔵部からの流出を含む、(65)に記載の方法。
(67) 前記挿入具が、前記放出可能な貯蔵部と動作可能に連通するポンプをさらに含み、1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップが、前記貯蔵部から前記材料をポンプで送出することを含む、(65)に記載の方法。
(68) ポンプでの送出が、浸透圧ポンプ、電動ポンプ、圧電構造、流駆動ポンプ、または蠕動ポンプのいずれからでも行うことができる、(67)に記載の方法。
(69) 前記生物活性物質は生分解性材料を備える前記装置の一部内に含まれ、前記生物活性物質は前記生分解性材料の分解後に放出される、(65)に記載の方法。
(70) 前記挿入具の1つまたはそれ以上の流速低減素子に含まれる前記生分解性材料が発泡体状材料を備える、(69)に記載の方法。
(71) 前記流速低減素子が、連続気泡発泡体、独立気泡発泡体、またはヒドロゲルのいずれかを含む発泡体状材料を含む、(70)に記載の方法。
(72) 前記挿入具が、前記長尺部材によって支持される神経刺激器をさらに含み、前記能動的介入が、前記刺激器で前記十二指腸の神経を刺激することを含む、(57)に記載の方法。
(73) 被験者に満腹感を起こさせる方法であって、
前記小腸に挿入具を配置するステップであって、前記挿入具が、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端の間の少なくとも1つの屈曲部であって、前記小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する屈曲部と
を含む長尺部材と、
前記長尺部材によって支持される神経刺激器とを備えるステップと、
前記十二指腸の細胞を前記神経刺激器で刺激するステップと
を備えるステップ。
(74) 前記神経刺激器に反応する神経が、満腹信号を送ることによって反応する前記腸の伸張感応性神経細胞である、(73)に記載の方法。
(75) 前記流速低減素子で前記糜粥の通過を減速させるステップをさらに備え、前記糜粥流を減速させるステップが満腹信号のさらなる生成に寄与する、(73)に記載の方法。
(76) 直接経路または神経媒介経路のいずれかにより前記神経刺激器に反応する前記腸の内分泌細胞をさらに備え、前記反応は1つまたはそれ以上のホルモンを分泌することを含む、(73)に記載の方法。
(77) 前記挿入具が生物活性物質放出可能な貯蔵部を備え、1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出する挿入具をさらに備える、(73)に記載の方法。
(78) 前記挿入具が生分解性材料を備え、前記挿入具の前記生分解性材料を生物分解するステップと、身体から前記挿入具を除去するステップとをさらに備える、(73)に記載の方法。
(79) 被験者に満腹感を起こさせる方法であって、
前記小腸に挿入具を配置するステップであって、前記挿入具は、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端の間の、前記小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する少なくとも1つの屈曲部と
を含む長尺部材と、
1つまたはそれ以上の生物活性物質を含み、前記長尺部材によって支持される1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部と、
前記長尺部材によって支持される活性薬剤放出機構と
を含み、
前記活性薬剤放出機構と前記1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部とは互いに動作可能に連通するステップと、
1つまたはそれ以上の生物活性剤を前記十二指腸に放出するステップと
を備える方法。
(80) 1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップは、前記貯蔵部からポンプで送出することを含む、(79)に記載の方法。
(81) ポンプでの送出は、浸透圧ポンプ、電動ポンプ、圧電構造、流駆動ポンプ、または蠕動ポンプのいずれからでも行うことができる、(80)に記載の方法。
(82) 前記流速低減素子で前記糜粥の通過を減速させるステップをさらに備え、前記糜粥流を減速させるステップが満腹信号のさらなる生成に寄与する、(79)に記載の方法。
(83) 前記挿入具の前記物理的存在に反応する前記腸の伸張感応性神経細胞をさらに備える、(79)に記載の方法。
(84) 前記挿入具の物理的存在に反応して、または前記活性薬剤放出機構により放出される前記生物活性剤に反応して、1つまたはそれ以上のホルモンを分泌する前記腸の内分泌細胞をさらに備える、(79)に記載の方法。
(85) 前記挿入具の前記生分解性材料を生物分解するステップと、身体から前記挿入具を除去するステップとをさらに備える、(79)に記載の方法。
【符号の説明】
【0149】
2 食道、 4 胃、 5 洞腔−幽門接合部、 6 食道−胃接合部、 7 洞腔、 8 幽門、10 十二指腸、 11 幽門弁、 12 空腸、 13 ファーテル膨大部。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119条に基づき、2006年5月26日に提出されたBinmoellerの米国仮特許出願第60/808820号の「食欲を抑制するおよび/または食物摂取量を低減する方法および装置の改良」に対して優先権を主張し、該出願の開示は参照により本明細書に組み込む。本願は、2005年12月15日に提出され、2006年8月10日に米国公開第2006/0178691号として公開された、本願の一部継続出願であるBinmoellerの米国出願第11/300283号にも優先権を主張する。出願第11/300283号はそれ自体、2004年11月30日に提出され、2005年9月1日に米国第2005/0192614号として公開された米国特許出願第10/999410号の一部継続出願である。出願第10/999410号は、2004年2月26日に提出された米国仮特許出願第60/547630号に優先権を主張する。本願は、本明細書に組み込まれたこれらの上記出願のそれぞれに優先権を主張する。
【0002】
(参照による組込)
本明細書に言及された出版物および特許出願はすべて、個々の出版物または特許出願が参照により組み込まれることを明確にかつ個別に示される程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、食欲抑制および/または食物摂取量低減に関連する医療装置および方法の分野に属する。
【背景技術】
【0004】
30を超える肥満度指数(BMI)で定義される肥満は、米国をはじめとする国々で大きな健康上の問題である。米国人の3人に1人、3億人を超える人々が肥満であると推定されている。肥満の合併症としては、高血圧症、糖尿病、冠動脈疾患、脳卒中、鬱血性心不全、肺機能不全、複数の整形外科的疾患、各種癌、および余命の大幅な低減などの重篤で命にかかわる多数の病気がある。ただし、意図的な体重減少は、肥満にかかわるこうした合併症の多くを改善する可能性がある。
【0005】
体重減少は肥満にかかわるこうした合併症の多くを改善する可能性があるが、健康上の問題としての体重管理は困難であることが立証されている。食事療法、心理療法、行動改善、薬物療法などの様々なアプローチはどれもある程度の成功を収めてきたが、概して、米国に見られる肥満の発生率および重症度の急増を効果的に抑えられずにいる。肥満にかかわる疾患の重症度は、思い切った外科手術の発展を導いてきた。こうした処置の1つでは、以前ほど大量に食物を摂取できないように、胃のサイズを物理的に低減する。こういった胃の外科縮小手術は、当初はわずかに成功を収めたが、時の経過とともに胃が伸びて元の体積に戻り、多くの個人で持続的な体重減少の達成を妨げることが分かっている。別の思い切った外科手術では、普通は小腸のバイパス部を介して胃腸(GI)管の吸収面を低減することによって食物の吸収不良を導く。この胃のバイパス処置は、胃縮小手術とも組み合わされてきた。上述の外科的処置は、人によっては食物摂取量の低減および/または全体的な体重減少を導くのに有効であるが、非常に侵襲性が高く、過度な痛みと不快感をもたらす。そのうえ、上述の処置の結果、生命を脅かす術後合併症が発生する場合が多い。こういった外科的処置は費用も高く、元に戻すのが困難で、国家の医療制度に大きな負担を課す。
【0006】
肥満治療の非外科的アプローチも開発されている。そうした肥満治療のための非外科的な内視鏡アプローチの一例は、胃内に胃バルーンを埋め込むというものである。胃バルーンは胃の一部を満たして患者に満腹感を与えることによって、食物摂取量を低減させる。このアプローチは、非常にうまくいくことがまだ納得いくように立証されておらず、患者の耐性低下やバルーンの破損および/または移動による合併症など多くの疾患が、胃バルーン装置に関連する。体重減少を導くように設計された他の非外科的装置は、食物が小腸内で完全に消化あるいは吸収されないように、胃から小腸内のチューブに食物を注ぎ込むことによって、小腸での栄養吸収を抑える。この種の装置は摂取された食物の吸収を抑える点ではいくらか有効だが、体重減少および/または食物摂取量低減を導くように設計された非外科的装置には様々な改良の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
満腹信号の生成の原因となる生物学的事象を理解すれば、こうした事象の引き金となり得る「高性能の」非外科的装置を開発する機会が生まれる。個人が摂取する食物の量は、腸と脳との間の生物学的信号に左右される。具体的には、腸から脳へのホルモン信号は、食物摂取の開始と停止の両方ともに相関関係を有する。グレリン、モチリン、アグーチ関連ペプチドといったホルモンのレベルが上昇すれば食欲が増進し食物摂取が開始される一方で、その他多くのホルモンのレベルが上昇すれば食物摂取が停止される。
【0008】
様々な生物学的事象が、食物摂取の生理学的停止の原因となる。通常、食事を採ると、消化された食物と消化の副産物が、GI管を通過しながら一連の受容器と相互作用し、満腹信号を生成する。満腹信号は、十分量の食物が摂取されたことと、器官が食事を止めるべきであることを脳に伝達する。具体的には、GI管の化学受容器が消化の生成物(糖、脂肪酸、アミノ酸、ペプチドなど)に反応し、胃と胃に隣接する小腸内の伸張受容器と機械的受容器が摂取した食物の物理的存在に反応する。化学受容器は、ホルモン信号やその他の分子信号を放出させることによって消化の生成物に反応する。これらの放出された関連ホルモンおよび/またはその他の分子信号は、満腹信号を脳に送るように神経線維を刺激することができる。脳にこれらの信号が到達すると、食物摂取量を低減することができる様々な神経経路を始動させることができる。放出されたホルモンおよび/またはその他の分子信号は、満腹信号の生成を助けるようにそれ自体脳まで移動することもできる。伸張受容器および化学受容器は通常、脳に信号を送る周辺の神経繊維の刺激を通じて脳に満腹信号を送る。本発明は、満腹信号の生成に寄与する上記生物学的事象を開始させる非外科的装置および方法を提供することによって、食物摂取量の低減を助ける方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、小腸に挿入される装置に関し、該装置は通常、小腸挿入具と称することができる。最初に概説するのが、生分解性材料を含む実施形態である。挿入具の実施形態は、近位端と、遠位端と、近位端と遠位端間の少なくとも1つの屈曲部(angled portion)であって、小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位(angled target site)に対応する屈曲部と、生分解性材料から成る挿入具の少なくとも一部とを含む細長の中央部材を備える。実施形態は、最初は目標部位内に安定して配置され、生分解性材料の分解後、目標部位から離されるように非安定化された後、腸管を通って身体から除去することができるように構成された長尺部材を含むことができる。
【0010】
屈曲部が生分解性材料を含む実施形態もあれば、屈曲部が形状記憶材料を含む実施形態もある。これらの実施形態のいくつかにおいては、形状記憶材料は、形状記憶合金または生分解性形状記憶ポリマーのいずれかを含む。他の実施形態では、屈曲部は形状記憶合金部と生分解性部の両方を含む。これらの後者の実施形態のいくつかでは、生分解性部は分解後、形状記憶合金部の非安定化と除去を簡易化するように構成される。これらの実施形態のいくつかでは、形状記憶合金部および生分解性部は接合部で接合され、接合部は生分解性部の分解に伴って分解するように構成される。
【0011】
いくつかの実施形態では、小腸内の屈曲目標部位は十二指腸にある。さらに、いくつかの実施形態では、十二指腸の屈曲目標部位は2つの角度を含み、挿入具は十二指腸の2つの角度に対応する2つの角度を有する。
【0012】
小腸挿入具のいくつかの実施形態では、装置は長尺部材に支持される少なくとも1つの流速低減素子(流速低減要素)を含み、流速低減素子は小腸内の糜粥の流速を低減するように構成される。これらの実施形態のいくつかでは、流速低減素子は、生分解性材料から少なくとも部分的に形成される。いくつかの実施形態では、流速低減素子は、リブ、ネット、スリーブ、バスケット、中央に搭載されるバッフル、周縁に搭載されるバッフル、発泡体状材料、またはファンのいずれかを含む。発泡体状材料を含む流速低減素子の実施形態では、発泡体状材料は、連続気泡発泡体(open cell foam)、独立気泡発泡体(closed cell foam)、またはヒドロゲルのいずれかを含むことができる。これらの実施形態のいくつかでは、発泡体状材料は内部に組み込まれた生物活性物質を含む。これらの実施形態のいくつかでは、発泡体状材料は生分解性で、生物活性物質は発泡体状材料の分解後に放出される。他の実施形態では、流速低減素子は、1つまたはそれ以上の生物活性物質の少なくとも1つの放出可能な貯蔵部を含む。
【0013】
流速低減素子を有するいくつかの実施形態では、素子が生化学的プロフィールを変更するのに十分なほど糜粥の流速を低減する。これらの実施形態のいくつかでは、生化学的プロフィールは、ホルモン満腹信号を生成させるのに十分なほど変更される。
【0014】
いくつかの実施形態では、挿入具の物理的寸法は、挿入具が設置されたときに小腸の一部を拡張させ、その拡張がそれに反応して小腸の伸張受容器または他の神経細胞に満腹信号を生成させるように設定される。拡張を起こさせる挿入具の物理的寸法または特徴は、長さ、幅、体積、密度、重量、多孔度、または表面特性のいずれも含む。
【0015】
挿入具のいくつかの実施形態は、1つまたはそれ以上の生物活性物質を含み、長尺部材によって直接的または間接的に支持される1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部と、長尺部材によって直接的または間接的に支持される活性薬剤放出機構とを備え、活性薬剤放出機構と1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部とは互いに動作可能に連通する。
【0016】
挿入具のいくつかの実施形態は、生物活性物質を配送するための活性薬剤放出機構としてポンプを含み、ポンプは長尺部材に支持されて、1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部に連結される。ポンプの実施形態は、浸透圧ポンプ、電動機械ポンプ、圧電ポンプ、流駆動ポンプ、または蠕動ポンプのいずれも含むことができる。これらの実施形態のいくつかは、ポンプにエネルギーを提供するように構成されたエネルギー貯蔵素子(エネルギー貯蔵部)をさらに含む。これらの実施形態のいくつかでは、ポンプは遠隔装置によって制御される。
【0017】
他の実施形態では、挿入具は小腸または胃のいずれかの部位に電位を印加するように構成される電子エミッタまたは神経刺激器をさらに含むことができ、エミッタは長尺部材によって支持される。これらの実施形態のいくつかでは、エミッタは、始動後、満腹信号に寄与する神経反応を刺激する。いくつかの実施形態では、装置はポンプにエネルギーを提供するように構成されるエネルギー貯蔵素子または装置をさらに含むことができ、いくつかの実施形態では、電子エミッタは遠隔装置によって制御することができる。
【0018】
装置のいくつかの実施形態は、長尺部材の近位端に係合される固定部材をさらに含むことができ、固定部材は目標部位での装置の安定化に寄与するように構成される。これらの固定される実施形態のいくつかでは、長尺部材が小腸内の目標部位に配置されると、固定部材は胃内にある。
【0019】
2番目に概説するのが、小腸の神経を電気的に刺激する神経刺激器を含む小腸挿入具の実施形態で、その神経は満腹信号の生成に関連する。この本発明の側面は、近位端、遠位端、近位端と遠位端間の、小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する少なくとも1つの屈曲部とを含む長尺部材と、長尺部材によって支持される神経刺激器とを備える小腸挿入具に関連する。
【0020】
これらの実施形態のいくつかでは、挿入具は生分解性材料から形成される部分を含む。これらの実施形態のいくつかは、最初は目標部位内に安定的に配置され、その後、生分解性材料の分解後、目標部位から離れ、腸管を通って身体から除去されて非安定化されるように構成される。
【0021】
いくつかの実施形態では、神経刺激器は、1つまたはそれ以上の満腹信号を生成するのに十分なほど小腸の1つまたはそれ以上の神経を刺激するために採用される。これらの実施形態のいくつかでは、挿入具は、エネルギーを神経刺激器に提供するように構成されるエネルギー貯蔵素子をさらに含む。これらの実施形態のいくつかでは、神経刺激器は遠隔装置によって制御される。
【0022】
挿入具のいくつかの実施形態では、小腸の屈曲目標部位は十二指腸にある。いくつかの実施形態では、十二指腸の屈曲目標部位は2つの角度を有し、挿入具は十二指腸の2つの角度に対応する2つの角度を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、挿入具は少なくとも1つの流速低減素子を含み、該素子は、小腸内の糜粥の流速を低減するように構成される。これらの実施形態のいくつかでは、流速低減素子は少なくとも部分的に生分解性材料から形成される。
【0024】
挿入具のいくつかの実施形態では、挿入具の少なくとも一部は生分解性材料で形成され、長尺部材は、最初は目標部位に安定的に配置され、その後、生分解性材料の分解後、目標部位から離れるように非安定化するように構成される。これらの実施形態のいくつかでは、挿入具の屈曲部は生分解性材料を含む。さらに他の実施形態では、挿入具は長尺部材の近位端に係合される固定部材をさらに含み、固定部材は目標部位での装置の安定化に寄与するように構成される。
【0025】
3番目に概説するのが、1つまたはそれ以上の生物活性物質を含有する1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部と、十二指腸内の部位に生物活性物質を送るために貯蔵部に連結される活性薬剤放出機構とを含む小腸挿入具の実施形態である。この本発明の側面は、近位端、遠位端、近位端と遠位端との間で小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する少なくとも1つの屈曲部を含む長尺部材と、1つまたはそれ以上の生物活性物質を含有し、長尺部材によって支持される1つまたはそれ以上の貯蔵部と、長尺部材によって支持される活性薬剤放出機構とを備え、長尺部材、活性薬剤放出機構と1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部が互いに動作可能に連通する小腸挿入具に関連する。
【0026】
これらの実施形態のいくつかでは、挿入具は生分解性材料から形成される部分を含む。これらの実施形態のいくつかは、最初は目標部位内に安定的に配置され、その後、生分解性材料の分解後、目標部位から離れ、腸管を通って身体から除去されて非安定化されるように構成される。これらの実施形態のいくつかでは、生分解性材料を含むのは装置の屈曲部である。
【0027】
挿入具の実施形態は、浸透圧ポンプ、電動機械ポンプ、流駆動ポンプ、蠕動ポンプ、または圧電ポンプのいずれかを含むことができる薬剤放出機構を含むことができる。実施形態は、エネルギーをポンプに提供するように構成されるエネルギー貯蔵素子をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、活性薬剤放出機構は遠隔装置によって制御される。これらの実施形態のいくつかでは、活性薬剤放出機構によって放出される生物活性物質は満腹信号を生成するのに十分である。
【0028】
これらの実施形態のいくつかでは、小腸の屈曲目標部位は十二指腸にある。これらのいくつかの実施形態では、十二指腸の屈曲目標部位は2つの角度を有し、挿入具は十二指腸の2つの角度に対応する2つの角度を有する。
【0029】
挿入具のいくつかの実施形態では、屈曲部は形状記憶部を備える。他の実施形態では、屈曲部は形状記憶合金部および生分解性部を含む。挿入具のいくつかの実施形態は、挿入具は小腸内の部位に電位を印加するように構成される電子エミッタをさらに含み、該部位は満腹信号に寄与する神経反応を生成する。
【0030】
本発明はさらに、被験者に十二指腸内挿入装置を挿入することによって被験者に満腹感を与える方法に関する。概説する第1の方法は、上述したように生分解性材料を含む装置の実施形態を使用する方法である。この方法で使用される実施形態は、近位端、遠位端、近位端と遠位端との間で、小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する少なくとも1つの屈曲部を有する長尺部材を備え、挿入具の少なくとも一部は生分解性材料で形成され、長尺部材は、最初は目標部位内に安定的に配置され、その後、生分解性材料の分解後、目標部位から離れるように非安定化されるように構成される。この装置を使用する方法は、挿入具の存在または挿入具による能動的介入のいずれかの1つまたはそれ以上の効果により、1つまたはそれ以上の満腹信号を生成するステップを含む。
【0031】
前記方法は、挿入具の生分解性材料を生物分解するステップと、目標部位から装置を離すステップと、身体から装置を除去するステップとをさらに含むことができる。前記方法のいくつかの実施形態では、挿入具は形状記憶合金を有する部分を含み、生分解性材料の生物分解は形状記憶合金部の除去を簡易化する。
【0032】
挿入具が糜粥流速低減素子(糜粥流速低減部)をさらに備える方法のいくつかの実施形態では、該方法は流速低減素子で糜粥の通過を減速させるステップをさらに含む。これらの実施形態のうちいくつかでは、糜粥の通過を減速させるステップは、糜粥の生化学的プロフィールを変更する。これらの実施形態のいくつかでは、糜粥の生化学的プロフィールを変更すると、化学受容器などの腸内の細胞が始動し、化学受容器は神経信号を生成する、あるいはそれに反応して生物活性物質を分泌する。
【0033】
前記方法のいくつかの実施形態では、満腹信号を生成するステップは、挿入具の存在により、十二指腸の少なくとも一部の拡張に反応する腸の伸張感応性神経細胞を含む。前記方法のいくつかの実施形態では、満腹信号を生成するステップは、挿入具の存在に反応して1つまたはそれ以上の生物活性物質を分泌する腸の細胞を含む。
【0034】
挿入具が放出可能な貯蔵部に生物活性物質をさらに備える方法のいくつかの実施形態の方法では、挿入具の能動的介入は、挿入具の1つまたはそれ以上の生物活性物質の放出を含む。これらの実施形態のいくつかでは、1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップは、貯蔵部からの流出または溶出を含む。他の実施形態では、挿入具が放出可能な貯蔵部と動作可能に連通するポンプをさらに含み、1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップは、貯蔵部から材料をポンプで送出することを含む。このような実施形態では、ポンプでの送出は浸透圧ポンプ、電動ポンプ、圧電構造、流駆動ポンプ、または蠕動ポンプのいずれからでも行うことができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、生物活性物質が生分解性材料を備える装置の部分内に含まれ、生物活性物質が生分解性材料の分解後に放出される。いくつかの実施形態では、生分解性材料は、連続気泡発泡体、独立気泡発泡体、またはヒドロゲルなどの発泡体状材料を含む挿入具の1つまたはそれ以上の流速低減素子に含まれる。
【0036】
いくつかの実施形態では、挿入具は長尺部材によって支持される神経刺激器をさらに含み、能動的介入は刺激器で十二指腸の1つまたはそれ以上の神経を刺激することを含む。
【0037】
本発明はさらに、神経刺激器を含む十二指腸内挿入装置の実施形態を被験者に配置することによって被験者に満腹感を与える、2番目に説明される方法に関する。挿入具の実施形態は、近位端、遠位端、近位端と遠位端との間で、小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する少なくとも1つの屈曲部を有する長尺部材と、長尺部材によって支持される神経刺激器とを含む。前記方法は、神経刺激器で十二指腸の細胞を刺激するステップを含む。該方法は、より具体的には、満腹信号を送ることによって挿入具の存在の拡張に反応する腸の伸張感応性神経細胞をさらに有することができる。
【0038】
前記方法は流速低減素子で糜粥の通過を減速させるステップをさらに含むことができ、前記糜粥流を減速させるステップは満腹信号のさらなる生成に寄与する。前記方法は、直接経路または神経媒介経路のいずれかにより神経刺激器に反応する腸の内分泌細胞をさらに含むことができ、反応は1つまたはそれ以上のホルモンの分泌を含む。
【0039】
挿入具が放出可能な貯蔵部に生物活性物質を含む場合、方法は挿入具1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、挿入具は生分解性材料を含み、方法は挿入具の生分解性材料を生物分解するステップと身体から挿入具を除去するステップとをさらに含むことができる。
【0040】
本発明はさらに、1つまたはそれ以上の生物活性物質を含有する1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部と活性薬剤放出機構とを含む十二指腸内挿入装置の実施形態を配置することによって、被験者に満腹感を与える第3のセットの方法に関連する。挿入具の実施形態は、近位端、遠位端、近位端と遠位端との間で、小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する少なくとも1つの屈曲部を含む長尺部材と、1つまたはそれ以上の生物活性物質を含有し、長尺部材によって支持される1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部と、長尺部材によって支持される活性薬剤放出機構とを備え、活性薬剤放出機構と1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部は互いに動作可能に連通する。本実施形態を使用する方法は、1つまたはそれ以上の生物活性剤を十二指腸に放出するステップを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップは、貯蔵部からポンプで送出することを含む。挿入具の実施形態に含まれるポンプは、浸透圧ポンプ、電動ポンプ、圧電構造、流駆動ポンプ、または蠕動ポンプのいずれも含むことができる。
【発明の効果】
【0042】
方法の実施形態は、流速低減素子で糜粥の通過を減速させるステップをさらに含むことができ、前記糜粥流を減速させるステップは、満腹信号のさらなる生成に寄与する。方法の実施形態は、挿入具の物理的存在に反応する腸の伸張感応性神経細胞をさらに含むことができる。前記方法の実施形態は、挿入具の物理的存在に反応して、または活性薬剤放出機構によって放出される生物活性剤に反応して1つまたはそれ以上のホルモンを分泌する腸の内分泌細胞をさらに含むことができる。前記方法の実施形態は、挿入具の生分解性材料を生物分解するステップと、身体から挿入具を除去するステップとをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】胃および小腸の十二指腸の概略図である。
【図2】満腹信号を生成するいくつかの例示のメカニズムの図である。
【図3】胃および小腸内に配置された本発明に係る十二指腸/小腸挿入具の一実施形態の斜視図である。
【図4】装着された流速低減素子と中央内腔を示す中央管の部分断面図である。
【図5】偏心的に装着された流速低減素子と中央内腔を示す中央管の部分断面図である。
【図6】長尺部材と装着された流速低減素子を示す代替実施形態の斜視図である。
【図7】中央管および固定部材の斜視断面図である。
【図8】中央管および固定部材の代替実施形態の斜視図である。
【図9】胃または幽門への固定なしで一定期間、小腸にとどまることのできる本発明の中央管の断面図である。
【図10】中央管の特定部分の拡張を可能にし、流速低減素子を形成する拡張可能スリーブに装着された中央管の図である。
【図11】小腸への挿入のために収縮構造にある拡張可能スリーブを示す。
【図12】拡張可能スリーブで形成された流速低減素子を所望の拡張構造に保持する一機構を示す。
【図13】1つまたはそれ以上の満腹信号の生成に寄与する際の腸挿入具の役割を示すフロー図である。
【図14】十二指腸の斜視図である。
【図15】挿入具装置の実施形態が配置される内部空間の周囲を形成するひだの折り目を示す十二指腸の側面図である。
【図16A】単純なコイルの形状の流速低減素子を有する挿入具の実施形態を示す。
【図16B】単純なコイルの形状の流速低減素子を有する挿入具の実施形態を示す。
【図17A】リブ付きの棘突起の形状の流速低減素子を有する挿入具の実施形態を示す。
【図17B】リブ付きの棘突起の形状の流速低減素子を有する挿入具の実施形態を示す。
【図18】ネット付きの棘突起の形状の流速低減素子を有する挿入具の実施形態を示す。
【図19】スリーブ形状の流速低減素子を有する挿入具の実施形態を示す。
【図20A】閉鎖したメッシュバスケットの形状の流速低減素子を有し、ピグテール近位端および遠位端をさらに示す挿入具の実施形態を示す。
【図20B】閉鎖したメッシュバスケットの形状の流速低減素子を有し、ピグテール近位端および遠位端をさらに示す挿入具の実施形態を示す。
【図21】中央に搭載され、外方に延在するバッフルの形状の流速低減素子を有し、ピグテール近位端および遠位端をさらに示す挿入具の実施形態を示す。
【図22】周縁に搭載され、内方に延在するバッフルの形状の流速低減素子を有し、ピグテール近位端および遠位端をさらに示す挿入具の実施形態を示す。
【図23】発泡体形状の流速低減素子を有し、ピグテール近位端および遠位端をさらに示す挿入具の実施形態を示す。
【図24】多孔栄養滲出ステントの形状の流速低減素子を有する挿入具の実施形態を示す。
【図25】中央に搭載されたファンの形状の流速低減素子を有し、さらにピグテール近位端および遠位端を示す挿入具の実施形態を示す。
【図26】受動的に溶出する貯蔵部内の生物活性物質を有する挿入具の実施形態を示す。
【図27】生物活性物質搭載浸透圧ポンプを有する挿入具の実施形態を示す。
【図28】電動ポンプに連結された生物活性物質搭載貯蔵部、エネルギー貯蔵ユニット、および外部制御装置を有する挿入具の実施形態を示す。
【図29】局所電気刺激用電極、エネルギー貯蔵ユニット、および外部制御装置を有する挿入具の実施形態を示す。
【図30A】生分解性素子および形状記憶素子を含む挿入具の中央部材の実施形態を示す図であり、原型構造の中央部材を示す。
【図30B】生分解性素子および形状記憶素子を含む挿入具の中央部材の実施形態を示す図であり、生分解後の中央部材を示す。
【図31A】生分解性形状記憶ポリマー材料を含む挿入具の中央部材の実施形態を示す図であり、原型構造の中央部材を示す。
【図31B】生分解性形状記憶ポリマー材料を含む挿入具の中央部材の実施形態を示す図であり、生分解後の中央部材を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(生体内原位置での装置の実施形態)
図1は、胃4と小腸の十二指腸10とを含むヒトの胃腸(GI)管の図である。主要な特徴は、食道2、胃4、洞腔7、幽門8、幽門弁11、十二指腸10、空腸12、および、膵管と総胆管の連結によって形成されるファーテル膨大部(または胆膵管膨大部)13である。機能上、食道2はその上端は鼻または口から始まり、下端は胃4で終わる。胃4は、部分的には、食道−胃接合部6(食道2に対する開口部)と洞腔−幽門接合部5(洞腔7から幽門8を通り小腸の十二指腸10までの経路)によって特徴づけられる空洞を取り囲む。幽門8は、括約筋によって、十分に消化された胃内容物(すなわち、約1立方センチ以下の物体)を通過させるだけの幅に幽門8を開放させる幽門弁11を介した、胃4の内容部の排出を制御する。胃の内容物は十二指腸10を通過後、空腸12に進み、次に回腸(図示せず)へと入る。十二指腸10、空腸12、および回腸が小腸として知られる部分を構成する。しかしながら、これらの消化管の個々の部分もそれぞれ小腸と称されることもある。本発明の文脈では、小腸は十二指腸、空腸および/または回腸の全部または一部を指すことができる。消化を助ける胆汁および膵臓液を提供するファーテル膨大部13は、十二指腸10の中間壁上の小さな突起物として示される。
【0045】
本発明の装置の実施形態は、2つの基本的な形状を含む。腸挿入具のいくつかの実施形態は、胃にある固定部材によって腸内に固定され、幽門で払いのけられるほど大きい。他の実施形態は、胃内の別個の固定部材ではなく、腸の屈曲部に適合する、あるいは対応する屈曲部を有する、全体として小腸に嵌合する装置によって腸内に安定して位置し、該装置は十分な構造上の一体性をさらに有しており、遠位位置は装置の形状に物理的に順応しないため、遠位に移動させられることに抵抗する。腸の目標部位で固定なしに安定化されるよう調節される装置の特徴には、装置の長や幅などの物理的寸法や装置の角度などが含まれ、それらはすべて腸の目標部分を補完する。他の実施形態では、腸内での安定化の特徴は、十二指腸の遠位部よりも大きな十二指腸球部に装置の拡張部を配置することで、それによって、(たとえば図18に示されるように)遠位への移動を有効に防止する。他の安定または固定素子は、腸壁に係合する装置上のフック、突刺、または突起などである。
【0046】
装置および装置を用いる関連方法のいくつかの実施形態は、食物の移動速度に介入する物理的機構によって、腸内の食物の移動速度を低減させることに向けられている。別の側面では、本発明の実施形態は、生理学的機構により満腹信号を誘発すること、生物活性物質または生物活性剤を通じて満腹信号を直接提供すること、あるいは、神経細胞を刺激して食物摂取量を行動的に低減することによって機能する。装置のいくつかの実施形態は単に満腹および消化生理学よりも広い医療目的に向けられているが、装置および方法の実施形態の満腹および摂食機能については本明細書で以下より詳細に説明する。いくつかの側面では、装置の実施形態は、装置の単なる物理的存在に直接反応して腸により生成される満腹信号によって、食物移動速度の低下および/または食物摂取量の低減に寄与することがある。このような信号は、たとえば、腸壁の伸張反応性神経細胞または機械受容器を媒介とすることができる。他の実施形態では、満腹信号は、腸内の物質の物理的存在に反応する、あるいは二次的に機械受容器に反応するホルモンを媒介とすることができる。他の実施形態では、食物の低速化または滞留時間の増加およびその結果生じる腸の化学環境の変化が、腸内に位置する化学受容器からの反応を誘発し、満腹信号の正味効果を有する方法で神経的にまたはホルモン的に信号を送ることができる。
【0047】
本発明のさらに別の実施形態では、装置は、腸内で時間をかけて放出される生物活性物質または生物活性剤を運ぶことができ、生物活性剤は正味満腹信号を運ぶ。いくつかの実施形態では、正味満腹信号効果を有する生物活性剤は、装置内の塗膜、蓄積部、または貯蔵部などの部位から受動的に放出される。生物活性物質または生物活性剤を詳述したが、概して、より広い側面では、ホルモン、薬剤、または細胞のいずれも含むことができる。いくつかの実施形態では、生物活性剤は浸透圧ポンプ内に保持され、浸透圧駆動によって放出される。浸透圧ポンプなどの放出機構は、生物活性剤放出のあるレベルの制御と予測可能性を提供するが、比較的受動的で仲裁手段を持たない。ただし、本発明の他の実施形態は、保管された生物活性剤の放出を印加電流に応じて許可または促進する電動ポンプまたは圧電素子によって提供されるように、生物活性剤の放出または配送のためのより能動的な機構を含むことができる。このような装置は電力貯蔵素子を含むことができる、あるいは、有線または無線アプローチで外部電源から電力を得ることができる。
【0048】
本発明のさらに別の実施形態では、装置は、腸内の神経に電気刺激を提供する結果、脳に満腹信号を送る正味効果に寄与する神経活動をもたらす電極または導電素子を含むことができる。いくつかの実施形態では、満腹関連の神経活動は、内分泌機構によって媒介されることができる。生物活性剤放出用の動力機構を有する本発明の実施形態と同様、電気的性能を有する実施形態は、電力貯蔵装置を含むことができる、あるいは外部ソースから運ばれるエネルギーを受け取ることができる。
【0049】
本発明の他の側面では、挿入される装置の実施形態は、固定具の有無にかかわらず、満腹感をもたらす、あるいは食物移動に介入する以外のより広い医療目的で、生物活性剤配送、神経刺激配送、または放射線療法配送のためのプラットフォームを提供することができる。生物活性剤の配送の場合、活性剤の腸の部位への局地的配送に関連する大きな利点がある。その利点とは、投与の局地化、口腔配送で生じる胃酸との接触排除、静脈内薬剤配送またはあらゆる種類の全身性配送による肝臓および腎臓の代謝機構との接触の低減などである。さらに、装置の実施形態は複数の薬剤に順応し、いくつかの実施形態では、複数の薬剤の放出を個々に制御することができる。
【0050】
(本発明の消化器系での状況)
次に、本発明の実施形態に関係する、消化器系、消化プロセス、および満腹に関する内分泌学および神経生理学の側面について説明する。大人の十二指腸は約20〜25cmの長さで、小腸で最も短く、最も幅広く、最も予測可能に配置される部分である。十二指腸は、臥位で第1および第3腰椎の間にある細長いC型構造を形成する。Susan Standring(編)、「グレイの解剖学」第39版、1163〜64(2005)が標準参照値を提供する。参照と消化器系側面の詳細のため図1に戻ると、十二指腸球部10aと称されることの多い十二指腸の第1の部分は長さが約5cmで、幽門8の十二指腸端部の延長部分として始まる。十二指腸の第1の部分は、十二指腸の第1の部分の端部を示す上側十二指腸湾曲部465へと下方向に急に湾曲する前に5cm、上方、後方、および側方に通過する。縦十二指腸10bと称されることの多い十二指腸の第2の部分は、長さが約8〜10cmである。第2の部分は上側十二指腸湾曲部465から始まり、第3腰椎に向かって緩やかに湾曲しつつ下方向に延びる。ここで、第2の部分は、十二指腸の第3の部分との接合部を示す下側十二指腸湾曲部475へと急に内側に曲がる。十二指腸の第3の部分は横十二指腸10cと称されることが多く、下側十二指腸湾曲部から始まり、長さは約10cmである。第2の部分は上方にわずかに屈曲した第3腰椎の下縁の右側から始まり、左方へ横断し、腹大動脈の前方の十二指腸の第4の部分と連通する端部へと延びる。十二指腸の第4の部分は長さが約2.5cmであり、腹大動脈のちょうど左で始まり、第2腰椎の下縁のレベルまで上方および側方に延びる。その後、十二指腸空腸湾曲部で前方下方向に曲がり、空腸と連通する。本発明のいくつかの実施形態は、この小腸の予測可能な構造を利用し、以下より詳細に説明するように、幽門または胃内での固定を必要としない十二指腸/小腸インプラントを提供する。
【0051】
消化プロセスは、摂取した食物が口腔内で唾液および酵素と混合したときに始まる。いったん飲み込まれれば、食物は食道と胃でも継消化され続け、酸および追加酵素と結びついて液化する。食物はしばらくの間胃にとどまってから、小腸の十二指腸を通過して胆汁および膵臓液と混じり合う。摂取した食物と胆汁および膵臓液とが混合すると、栄養分が含まれて、小腸の絨毛や微絨毛、および体内の他の吸収器官により吸収される。
【0052】
胃と小腸内に部分的に消化された食物が存在すると、満腹信号を生成する生物学的信号が連続的に始動され、食物摂取の停止の原因となる。このような満腹信号の1つは、コレシストキニン(CCK)の放出によって始動される。小腸細胞は、消化された食物の存在、特に、食事脂肪、脂肪酸、小ペプチド、およびアミノ酸に反応してCCKを放出する。CCKのレベルが上昇すると、食事のサイズと持続時間が減り、多数の各種機構を通じてそれを行うことができる。たとえば、CCKは、肝臓と中枢神経系内のCCK−A受容器に作用して、満腹信号を誘発することができる。CCKは、視床下部と通信して食物摂取量と接触行動を中央で調節する脳領域である孤束核に突出する、肝臓と幽門の両方の迷走神経求心性繊維を刺激する。CCKは膵臓および胆嚢からの酵素の放出も刺激して、胃内容排出を妨げる。CCKは胃内容排出の抑制因子となりうるため、食物摂取の制限に対する効果の一部は、胃における食物の滞留によって媒介されることができる。
【0053】
小腸の細胞(特にL細胞)は、消化の栄養信号に反応して、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)とオキシントモジュリン(OXM)も放出する。GLP−IおよびOXMのレベル上昇は、満腹信号と食物摂取の停止に関連付けられる。これらのホルモンは、肝臓および/またはGI管の求心性迷走神経の受容器を駆動する、および/または胃内容物排出を抑制することによって、満腹を知らせることができる。
【0054】
膵臓ペプチド(PP)は、摂取カロリーの量に比例し、胃拡張に反応して放出される。PPのレベル上昇は、食物摂取量と体重を低減させることが証明されている。PPは、脳幹への迷走神経求心性経路を介した食欲低下効果、およびたとえば胃のグレリン生成の抑制によるより局所的な効果を幾分か発揮することができる。
【0055】
ペプチドYY3−36(PYY3−36)は別の生物学的信号で、その末梢放出は食物摂取量の低減および/または接触の停止と相関関係を有することができる。具体的には、低レベルのPYY3−36は肥満と相関関係があり、PYY3−36を投与するとカロリー摂取量と自覚的な空腹度が減少する。PYY3−36を静脈投与すると、グレリンの発現を抑え、胃内容排出を遅らせ、膵臓および胃からの様々な分泌を遅らせ、食後の回腸からの液と電解液の吸収を高めるという効果を通じて食物摂取を低減することができる。
【0056】
インシュリンとレプチンは、満腹と接触行動を調節する2つの追加の生物学的信号である。副交感神経支配によって、膵内分泌ベータ細胞は、グルコースやアミノ酸などの栄養素の循環と、GLP−1および胃抑制ペプチド(GIP)の存在に反応してインシュリンを放出する。インシュリンは、グルコース代謝の増大を介して脂肪組織からのレプチン生成を刺激する。脳内インシュリンレベルが上昇すれば、食物摂取量の低減につながる。高レプチンレベルは食物摂取量を減少させ、体重減少を導く。インシュリンとレプチンの投与は、食物摂取量の減少のみによって説明可能なよりも大きな体重減少を導くため、エネルギー消費の調節にも関連している。インシュリンとレプチンはどちらも中枢神経系内で作用して、主に交感神経系を始動させることによって、食物摂取を抑制し、エネルギー消費を増大させる。食物摂取量を減少させるというインシュリンの効果は、NPYやメラノコルチンリガンドなどの、摂食行動の調節にも関連するいくつかの視床下部神経ペプチドとの相互作用も含む。
【0057】
食物摂取の抑制や阻害に関係する他のホルモンまたは生物学的信号には、たとえば、GIP(グルコースの投与、または高炭水化物の食事の消化後に胃腸の内分泌K細胞から分泌される)、エンテロスタチン(食事脂肪に反応して生成される)、アミリン(膵臓ベータ細胞からインシュリンと共分泌される)、グルカゴン、ガストリン放出ペプチド(GRP)、ソマトスタチン、ニューロテンシン、ボンベシン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、ニューロメジンU(NMU)、ケトンなどがある。
【0058】
本発明の実施形態に関連して、部分的に消化された食物、すなわち糜粥の通過が小腸の十二指腸内で部分的に阻害されて、この領域での流速が低下する場合(あるいは、別の方法で同じ現象を発生させるため、滞留時間が増大する場合)、胃と十二指腸の内容物排出は遅れる。この減速はそれ自体、(胃での食物の滞留時間の延長により)満腹感を長引かせ、食物摂取量を低減させる。食物通過の減速は、部分的に消化された食物がGI管に沿って化学受容器、伸張受容器、および機械受容器と相互作用する時間をより多く提供するため、満腹信号の刺激が増大され、および/または延長されて、食事時間および/または延長された摂食間の時間内での食物摂取量が低減する。
【0059】
部分的に消化された食物の小腸内での保持時間の延長に加えて、本発明の方法および装置は、小腸に信号を放出することによって満腹信号の放出を強化および/または延長することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、本発明の方法および装置は、化学受容器を刺激する消化の栄養生成物を放出して、満腹信号の生成に寄与するホルモン信号および/またはその他の分子信号を放出することができる。別の実施形態では、本発明の方法および装置は、GI管の壁に少量の圧力を加えて伸張受容器および/または機械受容器を刺激して、満腹信号を生成して脳に送ることができる。別の実施形態では、本発明の方法および装置は、たとえば、食物の消化の栄養副産物によって上記のように化学受容器を刺激する信号を放出し、上記のように満腹信号の生成に寄与する少量の圧力を小腸の壁に印加することができる。
【0060】
(流速低減素子を有する装置、および固定部材を有する実施形態)
本発明の方法および装置は、小腸壁の一部を覆うことによって栄養分の摂取をいくらか阻害する、および/または消化液の混合を邪魔または軽減することによって、減量や肥満治療に貢献することができる。いくつかの実施形態では、本発明の方法および装置は、完全に消化または吸収させずに、摂取した食物の一部を小腸に注ぎ込む中央管をさらに備えることができる。このようにして、本発明の方法および装置は、部分的に消化された食物の吸収を阻害することができる。その後、部分的に消化された食物は、身体にあまりカロリー吸収されないで、排出のために大腸へと送られる。
【0061】
図2は、満腹信号を生成可能ないくつかの例示の非限定的機構を示す。この図2では、脂肪酸または他のタンパク質などの消化の副産物が小腸のL細胞を刺激して、CCKを局所的に、および血液循環へ放出する。局所的に放出されたCCKは、中枢神経系(CNS)に対して満腹信号を生成する領域で、迷走神経求心性繊維を刺激することができる。血液循環に入るCCKは肝臓へと移動して、肝臓の迷走神経求心性繊維を刺激し、CNSに対して満腹信号を生成する。血液循環内のCCKは胆嚢と膵臓に移動して、これらの器官の消化関連活動を上方制御する。血液循環内のCCKはCNS自体へも移動して、満腹信号の生成に寄与することもできる。いったん満腹信号を受け取り、CNS内部に組み込んだ後、CNSは満腹感および/または食物摂取の停止、減速、または低減に寄与する働きの生理学的作用を始動させることができる。
【0062】
次に本発明の実施形態に移ると、図3は、満腹信号の生成に寄与することのできる本発明に従い作製された例示の小腸挿入具20を示す。挿入具20は胃4と小腸10に配置される。挿入具20は、近位部30、遠位部40、近位部30から遠位部40に延在する中央管50を有する。小腸10内に適合するような寸法の1つまたはそれ以上の流速低減素子200を中央管50に装着することができる。必ずではないが、ファーテル膨大部13近傍の中央管50の部分には通常、小腸への胆汁および膵臓液の導入が阻害されないように流速低減素子200を含まない。
【0063】
いくつかの実施形態では、中央管50は近位端52の近傍に固定部材100を有し、固定部材100は中央管50の近位端52を胃の洞腔7内に固定する。固定部材100は、幽門8を通過しないようなサイズに設定される。このように、固定部材を含む本発明の実施形態は、流速低減素子200を小腸内に固定する。いくつかの実施形態では、固定部材は、膨張時に幽門8より大きな1つまたはそれ以上の膨張式バルーン102によって確定することができる。膨張式バルーン102は胃への配送のために収縮させた後、胃内で膨張させることができる。膨張式バルーン102は、内視鏡技術を使用して後で除去するために収縮させることもできる。
【0064】
以下より詳細に説明するように、流速低減素子200の実施形態は多くの構造をとることができ、バルク材の構成、表面の性質、多孔度などの物理的特徴に対してさらに変更することができる。流速低減素子200のいくつかの別の例示的実施形態を図16A〜25に示す。いくつかの実施形態では、図16A、図16Bに示されるように、長尺部材とも称される中央管または中央部材が、十二指腸内での糜粥の流速を低減するような形状に構成することができる。流速低減素子の実施形態が共通して有する機能上の特性は、消化される食物を、臨床上適切なガイドラインに沿って遮断せずにゆっくりと移動させることである。移動速度の減速プロセスは、代謝されつつある栄養化合物に関する生化学的プロフィールの変更といった、消化される食物の組成にも影響を及ぼすことがある。十二指腸の化学受容器と神経は、糜粥内の代謝産物の生化学的プロフィールに反応し、消化と満腹および空腹との生理学の調節に参加する。このように、流速、ひいては糜粥の生化学的プロフィールを変更することによって、本発明の小腸挿入具の実施形態は、満腹と関連する信号の生成に寄与する。流速低減素子は、流速低減素子が提供する混合作用によって、消化中の食物の組成にも影響を及ぼすことができる。
【0065】
中央管50の長さは、所望する治療結果に応じて確定することができる。たとえば、中央管50とそれに装着された1つまたはそれ以上の流速低減素子200は、十二指腸10の一部または全体に延長させることができる。患者によっては、中央管50とそれに装着された1つまたはそれ以上の流速低減素子200は、十二指腸10を超えて空腸12にまで延在させることができる。中央管の長さや流速低減素子の数および構造を変化させることで、医師は様々な身体のタイプや代謝の需要に対処することができると予測される。一例では、患者が20%過体重である場合、医師は、通常の1日のカロリー摂取量で採れる栄養分の80%のみが吸収されるように、流速低減素子200を装着した中央管50の長さを選択することができる。このように時間をかけてカロリー摂取を低減することで、患者は適量の減量を達成することができる。
【0066】
図4は、内部空間58を画定する外壁54および内壁56を含む中央管50を有する本発明の実施形態を含む。内部空間58は、中央管50の近位端52から中央管50の遠位端53のちょうど手前まで連続し得る内腔59を形成する。中央管50の遠位端53は地点55で封止されるので、中央管50に導入される流体は遠位方向に漏れ出して小腸に入ることはない。いくつかの実施形態では、弁90を内腔59の近位端辺りに置くことができる。弁90は、内腔59へ流体を導入させるための針または平滑末端管によって進入可能な隔膜92を有する自己封止弁であってもよい。弁90は中央管50の内腔59内の流体が除去のために吸引されるように進入することができる。弁の種類は隔膜タイプの弁だけに限定されず、他の種類の機械的弁を上述の隔膜弁の代わりに使用できると理解すべきである。本発明の特定の実施形態はこのように流体を受け入れるように採用されるため、本発明の装置は収縮構造で埋め込まれた後、膨張構造に拡張することができる。
【0067】
図4に示され、上述したように、1つまたはそれ以上の流速低減素子200は中央管50に装着することができる。いくつかの実施形態では、各流速低減素子200の径は中央管50の軸と同心にすることができる。図4に示される実施形態では、各流速低減素子200は、外壁210、内壁212、および内部空間214を有する。近位配向面220またはその近傍で、および遠位配向面222またはその近傍で、各流速低減素子200は流速低減素子200の内部空間214を中央管50の内腔59と流体連通させて中央管50に装着することができるため、内部空間214は中央管50の外壁54を囲む。各流速低減素子200は、たとえば、接着剤、熱結合、機械的拘束具、またはその他の適切な方法によって中央管50に装着することができる。
【0068】
図4に示されるように、中央管50は、各自の流速低減素子200内に配置される複数の入口/出口216を有して形成することができる。より具体的には、各口216は、中央管50の内腔59と各自の流速低減素子200の内部空間214との間の流体輸送のための経路を確立する中央管壁51を貫通して形成される。したがって、中央管50の内腔59は、流速低減素子200の内部空間214へ流体を導入し、流速低減素子200の挿入と除去が簡易化される収縮構造から、食物通過への抵抗が増大して満腹を導く図4に示される膨張構造へ流速低減素子200を膨張させるために使用することができる。よって、先に示唆したように、本実施形態の流速低減素子200は、小腸への導入のために中央管50周囲で収縮および縮小でき、その後、所定位置に就いた後は所望の径に膨張させることのできるバルーンとしての役割を果たす。
【0069】
流速低減素子200の実施形態は、周縁に搭載されるか中央に搭載される、コイル、リブ、ファン、バッフル、およびスリーブ、メッシュケージまたはバスケットなどの他の形状を取ることができる。このような実施形態は、生分解性要素、活性生体材料放出機構、および神経刺激機能を有し、図15〜31Bに示されるような実施形態の説明も含む「本発明の別の実施形態」という後のセクションでさらに説明する。
【0070】
いくつかの実施形態では、本発明の個々の流速低減素子200は弾性バルーンまたは非弾性バルーンであってもよい。弾性バルーン材料が流速低減素子200を確立するのに使用される際、流速低減素子200は、流速低減素子の内部空間に導入される流体の量に依存する径まで膨張する。本実施形態は、医師の決定するバルーンサイズの調節を可能にする。バルーンが小さすぎると、たとえば、追加の流体が導入されてバルーンの径を拡大することができる。あるいは、バルーンが大きすぎると、追加の流体が除去されてバルーンの径を縮小することができる。内部空間に導入される流体の量とは関係しない径まで膨張する非弾性バルーンを備える別の実施形態も本発明に含まれると理解される。この種のバルーンの径は製造時に固定され、バルーンサイズの調節が原位置でできない。ただし、この種のバルーンは、多すぎる流体がバルーンに導入される場合に起こり得る過膨張や破損を防止する。
【0071】
図4に示される流速低減素子200は、円形の球形状である。ただし、他の形状も考えられ、部分的に消化された食物の小腸内の通過を妨げるように有効に機能するいかなる形状も本発明で許容可能である。小腸挿入具の小腸内に留まる能力は、流速低減素子200の形状、配向、および緊縮性によって影響を受ける場合があると理解される。たとえば、卵型、楕円、細長楕円、さらには不規則な非幾何学的形状などの別の形状も本発明に従い使用することができる。
【0072】
図5は、1つまたはそれ以上の流速低減素子300が中央管350に同心で装着される本発明の代替実施形態を示す。本実施形態では、流速低減素子300の軸または径は中央管の軸と同心ではない。流速低減素子の外壁302は、中央管350の外壁354の側壁に装着される。各流速低減素子300の内部空間314は中央管350の軸に対して偏心で、各自の開口部316を通って中央管350の内腔359と流体連通する。図4に示される実施形態の場合のように、図5に示される実施形態では、内腔359は、流速低減素子300の内部空間314に流体を出し入れし、膨張構造と収縮構造との間で流速低減素子300を交換するのに使用することができる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態では、流速低減素子300は、液体および/または気体などの流体で膨張させることができる。いくつかの実施形態では、気体は、たとえば、空気、窒素、または二酸化炭素であってもよい。別の実施形態では、液体は、たとえば、水や他の溶液を混ぜた水であってもよい。いかなる適切な膨張媒体も、本発明の挿入具から小腸へ放散して生物学的満腹信号を始動させる生物活性物質または他の信号を配送するように変更することができる。生物活性物質が膨張媒体を介して配送される際、中央管および/または流速低減素子は生物活性物質を透過できるべきである。多孔度は、生物活性物質の拡散速度を制御するのに調節することができる。
【0074】
本発明の流速低減素子を膨張させる際、医師が小腸内の流速低減素子300の位置と小腸の径に対する流速低減素子の径とを監視することが重要であろう。このため、流速低減素子は、X線上で可視な放射線不透過性流体で膨張させることができる。流速低減素子が放射線不透過性流体を含む際、医師は患者の身体の外部から流速低減素子のサイズと位置を非侵襲的に視ることができる。これを知ることによって、医師は流速低減素子のサイズおよび/または位置を調節することができる。同様に、図5に示されるような放射線不透過性マーカバンド218を中央管の周りに置いて、小腸内の中央管の位置の視覚化を簡易化することができる。放射線不透過性マーカバンド218は、小腸内の距離が深度マーカーとして使用され、身体の外部から測定できるように、所定の間隔を置いて配置することができる。
【0075】
本発明の中央管および流速低減素子は可撓性を有する。いくつかの実施形態では、既知の技術によって容易に形成または押出され、内視鏡を使って配送することのできるポリマー材料で構成してもよい。軟らかく可撓性を有する中央管50は胃腸管の構造の輪郭に沿い、胃腸壁への刺激が少ない。
【0076】
図6は、通常自己拡張し、中央内腔を必ずしも含まない流速低減素子を有する本発明の代替実施形態を示す。これらの実施形態は、周囲に同心で装着された流速低減素子400および/または偏心で装着された流速低減素子410を有する中央シャフト450を含む。素子400および410は、たとえば、熱融合、接着剤、または当該技術において既知な他の適切な方法によって中央シャフト450に装着することができる。これらの流速低減素子400は、内視鏡を使って挿入するのに適した第1の体積まで折り畳む、あるいは縮小させ、その後、本発明に従い部分的に消化された食物の流速を制限するのに適した第2の体積まで自己拡張する材料で作製することができる。これらの流速低減素子はそれらの材料から製造することができる、あるいは、それらの材料は、小さな体積に圧縮させ、その後、制約を受けないときに所定の形状および体積まで自己拡張することのできる海綿、発泡体、ヒドロゲル、またはバネなどの形状を取るように構成することができる。ゲルまたは海綿系の実施形態は、連続気泡または独立気泡形状を含むことができる。上記ゲルまたは海綿系の実施形態を配備のために縮小および拡張可能とする特徴に加えて、上記実施形態は通常、生物活性剤を含み、生分解性のために導電性である、本実施形態において有益な高表面領域を有する。別の発泡体関連の実施形態を下の「本発明の別の実施形態」のセクションで説明し、図23に示す。流速低減素子は自己拡張するため、膨張システムを設ける必要がなく、本実施形態は単純な機械的設計を提供する。これらの流速低減素子は、生物学的満腹信号を始動させることのできる生物活性物質または他の信号に含浸させることもできる。
【0077】
図6に示されるような実施形態の中央シャフト450は中実で、内腔や内部空間がなくてもよい。別の実施形態では、中央シャフト450は、摂取した食物が完全に吸収されずに小腸を通過するようにした食物用の経路を含んでもよい。
【0078】
次に、本発明に従い使用することのできる各種固定部材に移ると、図7がそのような1つの部材を示す。図7では、中央管50は近位端52の近傍に固定部材100を有する。上述したように、固定部材100は、1つまたはそれ以上の膨張式バルーン102によって確立することができる。これらのバルーン102はおそらく偏心的に、中央管50の近位端52近傍の地点104で中央管に装着される。これらのバルーンは多くの形状で形成することができ、図示される球形に限定されない。中央管は各自のバルーン102に対する開口部116を有して形成することができるため、中央管50の内腔59と各バルーン106の内部空間との間に流体連通用の経路が確立される。内腔59は、バルーン106の内部空間に流体を導入し、収縮状態での第1の体積から膨張状態の第2の体積までバルーン102を膨張させるために使用される。
【0079】
固定部材100の1つまたはそれ以上のバルーン102は、完全に膨張すると、中央管52の近位端を胃の洞腔内に固定する。1つまたはそれ以上の膨張式バルーン102は合わせると、幽門弁の径よりも大きな断面径を有し、幽門の通過を妨げる。膨張式バルーン102は、中央管内腔59に流体を追加する、あるいは中央管内腔59から流体を除去することによって、収縮および膨張させることができる。膨張式バルーン102は、中央管に装着される1つまたはそれ以上の流速低減素子と同じ中央管内腔59に接続され、流速低減素子と同時に膨張させることができる。中央管50は、膨張式バルーン102と個々の1つまたはそれ以上の流速低減素子が個別に収縮および膨張できるように2つ以上の内腔を有することもできる。
【0080】
図8は、本発明の固定部材100が洞腔7内に配備される本発明の別の実施形態を示す。本実施形態では、中央管50は逆さまの傘状骨組160に装着される。この骨組160は、中央管50を囲み支柱によって支持されるリング162を有する。図示される実施形態では、リング162は3つの支柱164、165、および166によって支持されるが、それより多いまたは少ない支柱も支障なく採用することができる。図8に示される実施形態では、支柱は中央管50において、地点167で一緒に接合され、地点170、171、および172でリング162に装着される。この固定構造のリング162は、たとえば可撓性プラスチック材料または可撓性ワイヤから形成することができ、幽門弁の径よりも十分大きな径を有する。この傘状骨組160は、内視鏡の助けを借りて胃に挿入するために中央管50の周囲で収縮させることができる。装置が内視鏡から解放されれば、傘状骨組160は飛び出して、図8に示されるのと同じ構造を取ることができる。支柱164、165、および166はたとえば、プラスチック、金属、またはプラスチック被覆金属から形成することができる。洞腔壁163に接触するリングの縁部は、傘状リング162を洞腔壁に固定する際に助けとなるように構成することができる。いくつかの実施形態では、表面を表面摩擦を増大するように粗くすることができる、あるいは胃壁に物理的に装着するために突起または棘突起を胃に設けることができる。
【0081】
(固定部材なしの装置)
図9は、胃または幽門への固定なしにある期間、小腸にとどまることのできる本発明の中央管または長尺部材50を示す。胃または幽門への固定なしにある期間、小腸にとどまることのできる本発明の実施形態は、(i)小腸の輪郭を模して適切に配置された角度の中央管を採用することと、(ii)腸挿入具を所定位置に保持する助けとなる適切な径の流速低減素子によってそれを行う。一実施形態では、必須ではないが、これらの流速低減素子は、小腸の壁にくっつくのを助ける研磨面または固定棘突起を有することができる。
【0082】
図9では、十二指腸球部10A、縦十二指腸10B、および横十二指腸10Cの十二指腸の最初の3つの部分が示される。図示される実施形態の流速低減素子は、明瞭にするため除去しておく。幽門8から遠位に、十二指腸10に入って直後、中央管50は十二指腸球部10Aと縦十二指腸10B間で半径βで急に屈曲し、縦十二指腸10Bと横十二指腸10Cの間で半径αで急に屈曲することができる。いくつかの実施形態では 半径βおよび半径αは約45度〜約110度とすることができる。別の実施形態では、半径βおよび半径αは、中央管50が予測可能に構成される屈曲を含むこれらの場所で、十二指腸10の内腔に従う、あるいは対応するよう屈曲するように約60度〜約100度とすることができる。別の実施形態では、半径βと半径αは約80度とすることができる。本発明の大部分の実施形態は角度βと角度αの採用を必要とする長さを含むが、別の角度を採用するより短い装置も本発明の範囲に含まれる。これらの上述した本発明の実施形態では、中央管50は、ねじれを防ぐために小腸の急な角度に対応するのに十分な可撓性を有することが有益であろう。小腸の径とほぼ等しい径を有する1つまたはそれ以上の流速低減素子も、中央管50の長さに沿って設けられる。いくつかの実施形態では、この径は約3cmで、他の実施形態では約4cmである。
【0083】
固定素子を使用する必要なく原位置で腸挿入具を安定させるため、中央管または長尺部材50は、身体に挿入する前に十二指腸の角度に一致する構造で予め形成することができる。本発明の実施形態は、図示されるように中央管50の内腔59に配置される補強ロッド110によって直線構造で拘束することができる。この補強ロッド110は、補強ロッドを収容するように設計された別の内腔に配置してもよいし、中央管50の壁に埋め込んでもよい。内視鏡の助けを借りて患者に挿入した後、中央管50が十二指腸10の急な屈曲部の位置に到達すると、補強ロッド110が退却させられることによって、中央管50は予め形成された形状を取ることができる。
【0084】
固定部材なしで原位置で安定させる別の実施形態では、中央管または長尺部材50は、中央管壁51に埋め込まれた、あるいは内腔59に位置する形状記憶合金ワイヤを有することができる。この形状記憶合金ワイヤは、十二指腸の屈曲構造に一致または対応する半径βおよび半径αを有する予め設定された屈曲構造を有し、中央管50内の対応位置に配置される。内視鏡の助けを借りて患者内に挿入された後、中央管50が十二指腸10内の急な屈曲位置に到達し、形状記憶合金ワイヤが約37℃の体温に等しい予め設定された遷移温度に到達すると、ワイヤはプログラムされた形状を取り、中央管50と中央管壁51にも同じ形状を強制的に取らせる。
【0085】
別の実施形態では、中央管または長尺部材50は、中央管壁51または内腔59内に埋め込まれたバネを有することができる。このバネは、小腸の壁の構造に合わせてあらかじめ成形することができる。バネは配送中に直線的に保持され、解放後に小腸の構造に一致し、このような形状によって装置を所定の位置にとどまらせることができる。その形状によって、装置は適切な位置にとどまることができる。一実施形態では、小腸の予測可能な配置と構造に一致または対応する構造により、装置は、胃または胃の幽門に固定されずに小腸内にある期間、適切な位置にとどまることができる。
【0086】
本発明の実施形態は胃または胃の幽門に固定されずに小腸内にとどまることができるが、無期限にとどまるように意図されていない。いくつかの実施形態では、挿入具は所定期間の経過後、内視鏡によって除去される。他の実施形態では、挿入具は、最終的には分解され、身体から排出される1つまたはそれ以上の生分解性材料で形成することができる。本発明の装置の任意の実施形態の生分解速度は、実施形態の生分解性側面を変更して調節することができ、よって腸管での滞留時間を臨床的に適切なレベルまで制御するルートの作製を可能にする。生分解性成分は、材料の組成を変更することによって、質の点で変動させることができる。装置の生分解性は、たとえば生分解に弱い位置で材料の量を変更することによって、量の点で変更することができる。たとえば、生分解脆弱性のために設計された接合部の厚みを変更すると、脆弱性を厚みに応じて変動させることができる。
【0087】
本発明の実施形態の生分解性側面を以下に説明する。本明細書に記載のすべての実施形態、および図3〜12と図16A〜31Bに示されるすべての実施形態は、長尺部材50および/または糜粥流速低減素子200の各種実施形態と同義語として称される中央管または中央部材の中に生分解性材料を含む部分を有することができる。以下の説明では、いくつかの実施形態は生分解性材料から全部または一部が形成される具体的な説明例として使用されるが、上述するように、固定部材を有する、あるいは有していない実施形態を含め、このように具体的に定義されていない場合でも、すべての実施形態が生分解性材料を含むことができる。
【0088】
(挿入具および流速低減素子の配備)
次に、いくつかの実施形態が流速低減素子を含む本発明の挿入具の配備に関する検討に移る。流速低減素子は全般的に符号200で参照されるが、いくつかの例示的実施形態は特定の機能のために別の参照符号を使用している。図10は、流速低減素子を拡張可能スリーブの一部の拡張により作製することのできる本発明の実施形態を示す。本実施形態は、流速低減素子を有する装置の配備方法の例を説明する状況で使用される。図10に示される実施形態では、中央管50は、本発明の十二指腸/小腸挿入具の遠位部近傍の拡張可能スリーブの遠位端510で拡張可能スリーブ508に装着される。図示される実施形態の配送構造では、中央管50の反対の近位端は、流速低減素子530が拡張される(後配送)際に中央管50の近位部上で係止することのできる脱着可能延長管520に装着される。脱着可能な装着の非限定的方法の1つは、1つまたはそれ以上のネジ504を使用して、中央管50に延長管520をねじ込むことである。中央管50は、図1に示される十二指腸10の構造に沿う構造を有するように予め形成することができる。そのように記載される中央管50は、拡張可能スリーブ508に強制的に中央管50の構造を取らせる。中央管50は、単にたとえば、ワイヤ、バネ、超弾性または形状記憶合金、中空スチール管またはプラスチックポリマーで構成することができる。いくつかの実施形態では、補強ロッドまたはガイドワイヤ110は、中央管50の内腔を通じて挿入することもできる。
【0089】
本明細書に記載される拡張可能スリーブ508は、流速低減素子530の形成を可能にするため所定のセグメントで拡張するように設計される。いくつかの実施形態では、拡張可能スリーブ508の非拡張部532は、拡張を防止するようにポリマーで塗布することができる。別の実施形態では、流速低減素子530は、部分的に消化された食物が流速低減素子530に入らないように可撓性ポリマーで被覆することができる。別の実施形態では、補強ロッドまたはガイドワイヤ110は、装置が十二指腸内に配送されたときに中央管50を補強するように中央管50の内腔に挿入することができる。
【0090】
拡張可能スリーブ508は、たとえば、金属、ワイヤ、リボン、プラスチックポリマーまたは生分解性材料のうち1つまたはそれ以上から形成できる編物、織物、メッシュ、または組物の1つまたはそれ以上として構成することができる。
【0091】
図11は、小腸への挿入のために収縮構造にある流速低減素子530から成る拡張可能スリーブ508を示す。この構造では、力Aが拡張可能スリーブ508に印加されて流速低減素子530を収縮させる。収縮形状は、単にたとえば、外装またはきつく巻いたひもなどの拘束機構によって、あるいは拡張可能スリーブ508の近位端を持続的に牽引することによって制止することができる。図11も、拡張されずにいる中央管の部分532、脱着可能延長管520、およびガイドワイヤ110を示す。
【0092】
図10および11に示される実施形態での流速低減素子530の拡張は、受動的または能動的に発生しうる。受動的な拡張の一例は、流速低減素子530を最初の拡張状態まで拡張させることのできる拘束機構の除去である。もう1つの非限定的機構は、流速低減素子530を最初の拡張状態まで拡張させることのできる拡張可能スリーブ508の近位端での牽引を解放することである。
【0093】
図10および11に示される実施形態の流速低減素子530は、いくつかの実施形態では、拡張可能スリーブ508と中央管50の相互への移動に関する相対位置に応じて、遠位から近位へ、近位から遠位へ、あるいは中央で拡張することができる。たとえば、流速低減素子内腔の近位端が十二指腸球部内に保持され、中央管50が押し戻される場合、流速低減素子内腔の遠位端がまず拡張する。この方向への拡張は、流速低減素子内腔の近位端の位置が十二指腸球部にとどまるために有益であろう。
【0094】
図12は、流速低減素子を所望の拡張構造に保持する位置で拡張可能スリーブ508の近位端を中央管50に係止することのできる本発明のいくつかの実施形態を示す。延長管520を引っ張ると、ウェッジ52が拡張可能スリーブ508の近位端に係合するまで中央管50が退却する。中央管50は、様々な拡張角度で拡張可能スリーブ508を係止することのできる複数のラチェット状ウェッジを有することができる。延長管は、装置の配備と拡張可能スリーブ508の拡張後に中央管50から取り外すことができる。
【0095】
(生分解性特徴)
本発明の実施形態はある期間、小腸内にとどまることができるが、無期限にとどまることを意図していない。いくつかの実施形態では、挿入具は、所定期間経過後に内視鏡で除去される。他の実施形態では、挿入具は、最終的に分解されて身体から排出される1つまたはそれ以上の生分解性材料から形成する、あるいは部分的に形成することができる。いくつかの実施形態では、装置は、生分解性を有する材料と生分解性を有していない材料とを含むことができる。非生分解性材料を含むいくつかの実施形態では、装置の生分解性部の分解は、非生分解性部の分解と最終的な除去を促進することができる。
【0096】
生分解性は、生物学的環境で発生する可能性のあるあらゆる種類の物質の破壊または崩壊を含むように、広い意味で使用され、上記環境は主に生物学的ホストだけでなくホスト内の微生物によっても定義される。生分解性が広範に包含する他の用語は、生体吸収性および生体内分解性を含む。生分解は、本発明の実施形態では、たとえば、分解、酸の作用などのpHの作用、加水分解機構、水和、分裂などの消化または酵素触媒作用、あるいは身体または筋肉運動の物理的作用によって発生することができる。生分解の例は、加水分解、分解、pHへの反応、または挿入装置のポリマーバックボーンの分裂につながる酵素溶解によって提供される。腸に存在するような微生物はポリマーを食べるか消化することができ、機械的、化学的、または酵素的劣化を開始させることができる。本発明の実施形態の生分解性材料は、生物学的相溶性を有すると同時に、本発明の実施形態に含まれるような生分解性材料の分解生成物である。生分解性材料は有機化合物と無機化合物を含むことができる。いくつかの代表的な無機化合物は、「生物活性剤を収容する装置の特徴」に関連するセクションで後述する。本セクションでは、生分解性ポリマーは、本発明の実施形態として含めて説明される。
【0097】
上述したように、本発明のいくつかの実施形態は弾性形状保持部を含むことができ、いくつかの実施形態では、本発明のC形十二指腸挿入具装置の角度αおよびβの維持に関して、装置の有利な構造の維持をサポートする形状記憶部を含む。金属ならびにいくつかのポリマーは形状を弾性保持することができる。形状記憶材料は合金と生分解性ポリマーを含む。装置の形状記憶合金素子は生分解性ではないが、これらの合金構造素子は、生分解性のポリマー素子と結合または接合することができ、分解後、合金素子は除去を可能にする形状で放出される。このような実施形態は、後述するように、図30Aおよび30Bに示される。本発明の他の実施形態は、生分解性形状記憶ポリマー素子を含むことができる。生分解性形状記憶ポリマーは、米国特許第6160084号、同第6281262号、同第6388043号、同第6720402号、および米国公開出願第20050075405A1号、同第20030055198A1号、同第20040015187A1号、同第20040110285A1号、同第20050245719A1号、同第20060142794A1号などの様々な公開物に記載されている。本発明の実施形態は1つまたはそれ以上のこのような形状記憶材料を含むことができ、さらに、このような材料は、図31Aおよび31Bに示される様々な方法で一緒に接合することができる。
【0098】
様々な天然、合成、および生合成ポリマーは生分解性で、腸挿入具装置の実施形態を備える材料として含めることができる。C−Cバックボーンに基づくポリマーは非生分解性になりがちだが、ヘテロ原子含有ポリマーバックボーンは生分解性を有する。特に、無水物、エステル、またはアミド結合などの化学結合の慎重な追加によりポリマーに生分解性を持たせることができる。分解のための機構は、ポリマーバックボーンの切断につながる加水分解または酵素的開裂による。腸にいるような微生物はポリマーを食べるか消化することができ、機械的、化学的、または酵素的劣化も開始させる。
【0099】
加水分解性化学結合を有する生分解性ポリマーは、生分解性腸挿入具の材料として適する。生体適合性を有することに加えて、その材料は、たとえば、処理可能であること、殺菌可能であること、生物学的条件に反応して安定性または分解を制御できること、などの他の基準も満たすべきである。分解生成物は、必ずしもポリマー自体ではなく、ポリマーの生体適合性を定義する。ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、およびこれらのコポリマーに基づくポリ(エステル)は、生体材料として幅広く採用されている。これらの材料を分解すると、対応するヒドロキシ酸が生じて、生体内使用を安全にする。
【0100】
他の生分解性ポリマーは、PHB−PHVクラスのポリ(ハイドロキシアルカノエート)、追加ポリ(エステル)、および天然ポリマー、特に、改変されたポリ(サッカリド)、たとえば、デンプン、セルロース、およびキトサンなどである。キトサンはキチンに由来し、セルロースに次ぎ世界で2番目に豊富な天然ポリマーである。脱アセチルカ後、新たな生体材料キトサンを生じ、さらなる加水分解後に超低分子量オリゴ糖を生じる。キトサンは生体適合性と抗菌性を有する環境に優しい高分子電解質であるため、薬剤配送における制御放出のための医療機器および材料に適する。
【0101】
ポリ(酸化エチレン)(PEO)は反復構造単位−CH2CH2O−を有するポリマーで、薬剤配送における用途を有する。ポリ(エチレングリコール)(PEG)として知られる物質は実際にはPEOだが、分子の各端に追加のヒドロキシル基を有する。重合化の度合いnが103〜105である高分子量PEOと対照的に、生体材料の場合に最もよく使用される範囲は通常12〜200、すなわちPEG600〜PEG9000だが、20000までのグレードが市販されている。ポリ(酸化エチレン)が生体材料として魅力的である主要な特性は、生体適合性、親水性、および汎用性である。単純で水溶性の線状ポリマーは、化学相互作用によって変質させ、構造のエチレン酸化物部分に関連する所望の特性を保持する水不溶性だが水膨潤性のヒドロゲルを形成することができる。
【0102】
ポリ(酸化エチレン)(PEO)とポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)のマルチブロックコポリマーも、腸内挿入装置に適するかもしれない。これらの材料は、(エステル結合を介する)加水分解と(エーテル結合を介する)酸化の両方にさらされる。分解速度は、PEOの分子量と含有量の影響を受ける。さらに、最高の水分摂取量のコポリマーが最速で分解する。
【0103】
広く使用されている非分解性ポリマーはエチレン−ビニルアセテートコポリマーである。このコポリマーは、生物適合性、物理的安定性、生物学的非活性、および加工性に優れる。薬剤配送用途では、これらのコポリマーは30〜50重量%のビニルアセテートを通常含む。エチレン−ビニルアセテートコポリマー膜は、薬剤拡散の速度制限バリアとしての役割を果たす。II型の分解性ポリマーでは、疎水性置換基から親水性側基への変換は、分解プロセスの第1ステップである。チロシン由来ポリカーボネートポリ(DTE−co−DTカーボネート)は、たとえば、生分解性腸挿入具にとって適切な材料となり得る。その材料は、エチルエステル(DTE)または遊離カルボキシレート(DT)のいずれかとしてチロシンを介しペンダント基で作製することができる。DTEとDTの比の変更を通じて、材料の疎水性/親水性バランスおよび生体内分解速度を操作することができる。
【0104】
水膨潤性ポリマーネットワークは、一端でヒドロゲルとして、他端で超吸収体としての役割を果たすことができる。ヒドロゲルは、水溶液中で溶解するのではなく膨らむという、化学構造の明確な親和性によって特徴づけられる。このようなポリマーネットワークは、穏やかな吸水性、通常は構造内の水の30重量%の保有から、水性流体の重量の何倍をも保有する超吸水性まで及ぶことができる。共有架橋を被りやすいポリマー電解質、親水性および疎水性成分からなる連合ポリマー(親水結合による「有効な」架橋)、および高機械強度の吸水性ポリマーを産む物理的に相互貫入するポリマーネットワークなどの吸収性ポリマーを作製するいくつかの総合的戦略が提案されている。これらのアプローチは相互に排他的ではなく、材料は、温度、pH、イオン強度、溶媒、濃度、圧力、応力、光度、および電界または磁界などの変化を含む様々な刺激下でのポリマー−ポリマーおよびポリマー−溶剤の相互作用間のバランスに大きく依存する合成ゲルを含むことができる。
【0105】
(生物活性物質)
上述したように、いくつかの実施形態では、本発明の中央管および/または流速低減素子は、生物学的満腹信号を始動する生物活性物質または生物活性剤を放出させるために採用することができる。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の流速低減素子および/または中央管は、時間をかけて胃腸(GI)管に信号を放出するように設計された多孔性と可鍛性を有する剛体である。いくつかの実施形態では、消化の栄養生成物は1つまたはそれ以上の流速低減素子200および/または中央管または長尺部材50から放出されてGI管内の化学受容器を始動させ、満腹信号の送信および/または生成に関連する分子信号を放出する。
【0106】
次に、食欲を減退させる、あるいは摂取した食物の吸収を遅らせる際の、装置からの生物活性物質の放出について検討する。「生物活性物質」という用語は、生物学的に活性なあるいは関連する、あらゆる有機、無機、または生体剤を指す。その用語は、米国出願第11/300283号で詳細に説明されているので、ここではごく簡単に説明する。たとえば、生物活性物質は、タンパク質、ポリペプチド、多糖(たとえば、ヘパリン)、オリゴ糖、単糖または二糖、脂質、有機金属化合物、または無機化合物、抗菌剤(抗バクテリアおよび抗真菌剤を含む)、抗ウィルス薬、抗癌剤、免疫剤であってもよい。生物活性物質は、生存細胞または老化細胞、幹細胞、バクテリア、ウィルス、またはそれらの一部を含むことができる。生物活性物質は、ホルモンなどの生物学的活性分子、成長因子、成長因子生成ウィルス、成長因子阻害剤、成長因子レセプタ、抗炎症剤、抗代謝剤、あるいは、完全なまたは部分的な機能インセンスまたはアンチセンス遺伝子も含むことができる。また、生物学的な関連または活性物質を運ぶ人工の粒子または物質も含むことができる。生物活性物質は、周囲環境のpHを変更する消化副産物または作用物質であってもよい。
【0107】
生物活性物質は、生物学的機構に治療的効果をもたらすことのできる科学的または生物学的化合物などの薬剤も含むことができる。生物活性物質は、代謝され、分解され(たとえば、分子成分の分裂)、あるいは他の形で身体内で処理され改質された後、関連する生物学的活動を発揮する前駆体物質も含むことができる。以上の例の組み合わせ、融合、またはその他の配合を行うことができ、本明細書で意図される意味に含まれる生物活性物質と考えられる。生物活性物質に向けられた本発明の側面は、上記例の一部または全部を含むことができる。
【0108】
本発明に含まれる生物活性物質の例は、ホルモンや、満腹促進信号を伝達する他の化合物を含む。本発明の生物活性物質は、他の自然発生または合成ペプチド、タンパク質、およびステロイドホルモンを含むことができる。生物活性剤は、抗腫瘍剤、抗生物質などの抗微生物剤、セファロスポリン系薬剤、アミノグリコシド系薬剤、マクロライド系薬剤、テトラサイクリン系薬剤、化学療法剤、サルファ剤系、尿路消毒薬、嫌気感染抗生物質、結核用薬剤、ハンセン病用薬剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、アメーバ症用化学療法剤、抗蠕虫症剤、抗炎症剤、抗痛風剤、中枢作用性鎮痛薬、甲状腺薬剤、補助療法で使用される薬剤、抗甲状腺剤、ウィルス表面抗原またはウィルス部分、バクテリア表面抗原またはバクテリア部分、寄生虫の病気または寄生虫部分を発生させる寄生虫表面抗原、免疫グロブリン、血清、疾病関連抗原などの免疫反応を誘発する抗原、またはホルモン、酵素、または凝固因子などの生物活性剤として使用される薬剤もさらに含むことができる。
【0109】
(配送用の生物活性剤を収容する装置の特徴)
本発明の中央管20および/または流速低減素子200は、(浸漬塗布、噴霧塗布、スパッタ塗布、および当業者にとって既知なその他の各種技術によって)その表面に付着される、あるいは、表面に進入可能な貯蔵部または蓄積部に含まれる生物活性物質を有することができる、あるいは、腸挿入具を構成する材料が生物活性物質を含み拡散するように製造することができる。生物活性物質を拡散する本発明の中央管および/または流速低減素子は、2005年12月15日に提出され、2006年8月10日に米国公開第2006/0178691号として公開され、Gombotzらの米国特許第5019400号、Bezemerらの米国特許第6685957号、および同第6685957号を参考文献として含む、Binmoellerの米国出願第11/300283号で言及される多数の様々な手順によって作製することができる。
【0110】
ステロイドホルモンなどの疎水性生物活性物質が上記方法によって組み込まれる際、少なくとも1つの疎水性酸化防止剤が存在し得る。採用可能な疎水性酸化防止剤は、トコフェロール(α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、エピシロン−トコフェロール、ゼータ1−トコフェロール、ゼータ2−トコフェロール、およびエタ−トコフェロールなど)、および1−アスコルビン酸6−パルミチン酸などである。このような疎水性酸化防止剤は、コポリマーの分解を遅らせ、生物活性物質の放出を遅らせることができる。
【0111】
上述の技術により作成される搭載ポリマーが親水性生物活性物質を含む際、搭載ポリマーは、疎水性酸化防止剤に加えて、コポリマーからの剤の放出速度を遅らせるのに供することができるコレステロール、エルゴステロール、リトコール酸、コール酸、ジノステロール、ベツリン、またはオレアノール酸などの疎水性分子も含むことができる。このような疎水性分子は搭載ポリマーへの水の浸透を防ぐが、ポリマーマトリックスの分解性は損なわない。さらに、上記分子は、放出される生物活性物質のポリマーマトリックスの拡散係数を低減することによって、ポリマーマトリックスからの生物活性物質の放出をさらに持続することができる。
【0112】
ポリマーに生物活性物質を拡散する方法と熱保護剤を含む凍結乾燥の役割は、2005年12月15日に提出され、引用により組み込まれているBinmoellerの米国出願第11/300283号に提示されている。
【0113】
本発明に従い、特に生物活性剤の収容の放出に関して使用されるポリマーの非限定的な例は、ポリウレタン、ポリエステルウレタン、シリコーン、フルオロポリマー、エチレンビニルアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、トリメチレンカーボネート、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシバレレート、ポリジオキサノン、ポリイミノカーボネート、ポリオルトエステル、エチレンビニルアルコールコポリマー、L−ポリラクチド、D,L−ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ラクチドとグリコリドのコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリ(n−ブチル)メタクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エラストマー、およびその混合物などである。使用可能な代表的なエラストマーは、たとえば、フロリダ州ラルゴのConcept Polymer Technologies社の商標名「C−FLEX」で市販されている熱可塑性エラストマー材料、ポリエーテル−アミド熱可塑性エラストマー、フルオロエラストマー、フルオロシリコーンエラストマー、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−スチレンゴム、ポリイソピレン、ネオピレン(ポリクロロプレン)、エチレン−プロピレンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレンエラストマー、ブチルゴム、多硫化物エラストマー、ポリアクリレートエラストマー、窒化物、ゴム、ポリエステル、スチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエンおよびイソピレン、ポリエステル熱可塑性エラストマー、およびその混合物である。
【0114】
2005年12月15日に提出され、引用により組み込まれているBinmoellerの米国出願第11/300283号に記載されるように、当業者は、特定の治療対象および所望の放出プロフィールに依存して、本発明の腸挿入具の表面上または材料内に含める生物活性物質の量または濃度を決定することができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、本発明の腸挿入具またはその一部は、生物活性物質の拡散または放出を遅らせるためのトップコートまたはバリアを含むことができる。通常、バリアは生体適合性を有するべきで(すなわち、その存在が身体から悪い反応を誘発しない)、約50オングストローム〜約20000オングストロームの厚みを有することができる。いくつかの実施形態では バリアは、生物活性物質を拡散するポリマー上に提供されるポリマーを含むことができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、本発明のバリアは、2005年12月15日に提出され、引用により組み込まれているBinmoellerの米国出願第11/300283号に詳述される無機材料を備える。その出願には、本発明の挿入具にバリアを蒸着させるのに使用することのできる方法がいくつかさらに詳述されている。窒化チタン、炭窒化チタン、窒化クロミウム、窒化チタンアルミニウム、窒化ジルコニウムなどの窒化バリア塗膜は、陰極アーク真空蒸着によって比較的低温で本発明の挿入具に蒸着させることができる。このような方法は、本発明の挿入具内に含まれる生物活性物質が温度に反応する場合に選択することができる。純金属や合金の薄膜を製造する方法も、その出願に詳述されている。
【0117】
いくつかの実施形態では、バリアが主に無機材料を含有すると考えられる。ただし、他の実施形態は、有機材料と無機材料の混合物を有するバリアまたはすべてが有機材料のバリアを含むことができる。本発明に従い使用可能な有機化合物は、たとえば、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニルデン、ナイロン6−6、パーフルオロポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシラート、およびポリカーボネートである。通常、バリア材料内の薬剤の溶解度は、ポリマーキャリア内の薬剤の溶解度より低い。また、通常、バリア材料内の薬剤の拡散性は、ポリマーキャリア内の薬剤の拡散性より低い。いくつかの実施形態では、バリアは生分解性であってもよい。バリアを作製するのに使用可能な適切な生分解性材料は、たとえば、リン酸カルシウム、たとえば、ハイドロキシアパタイト、炭酸ハイドロキシアパタイト、リン酸トリカルシウム、β−リン酸トリカルシウム、リン酸オクタカルシウム、アモルファスリン酸カルシウム、およびオルトリン酸カルシウムなどである。リン酸カルシウム(焼き石膏)などの特定のカルシウム塩も使用することができる。バリアの生分解性は、基礎を成す第1の層からの薬剤放出を制御する追加の機構としての役割を果たすことができる。
【0118】
(生物活性物質放出の能動的制御)
装置および方法のいくつかの実施形態は、表面または蓄積部からの薬剤の受動的拡散と対照的に、生物活性剤を配送するより能動的、制御的、または定量的な方法を提供する。これらのアプローチは、複数の薬剤の配送の取扱も受け入れる。本発明の装置の実施形態は、貯蔵部または蓄積部から1つまたはそれ以上の生物活性剤を投与するポンプを含むことができる。ポンプは電動ポンプ72、機械ポンプ、孔を制御する圧電装置を含むことができ、たとえば、ポンプは浸透圧駆動ポンプ71であってもよい。浸透圧ポンプでの配送は、エネルギー入力を必要としないので比較的受動的だが、制御可能で、予測可能で、較正可能である。浸透圧ポンプは通常、pH差や濃度勾配により駆動または付勢される。生物活性物質の放出は、たとえば、ユーザ制御またはプログラム可能なペーシング/信号装置のいずれかである電気信号装置などの外部制御装置によって制御することができる。生物活性物質または生物活性剤の配送に関するこれらの能動的アプローチを具体化する装置の例を以下説明し、図26〜28に示す。
【0119】
単に消化または食欲の調節に特化する薬剤よりも幅広い生物活性剤の配送に有利に適用できる、腸の内腔内の薬剤配送部位には利点がある。このような他の薬剤は、化学療法剤、または抗癌治療用の放射性粒子を含むことができる。局所的配送から恩恵を得ることのできる他の種類の生物活性物質は、腸の細胞治療用に、幹細胞または活性化免疫細胞などの細胞を含むことができる。十二指腸内の放出部位の利点は、目標部位に近接して、腸内の特定の化学回復受容器を利用し、薬剤が静脈または口腔から配送される際に起こる、肝臓や腎臓などの器官を通過中の薬剤の系統的代謝を最小限に収めることである。
【0120】
食物摂取量を低減することのできる生物活性物質を小腸に配送することに加えて、本発明の方法および装置は、通常口腔からも摂取できる他の生物活性物質を配送するために使用することもできる。生物活性物質を直接小腸内に放出することは、通常口腔から摂取される多くの薬剤を含め、多くの生物活性物質が吸収されるために小腸に達する前に胃内の厳しい状況によって分解されるので都合がよい。このため、多くの生物活性物質は、保護材の層で被覆される。薬剤を含む生物活性物質を小腸に直接放出することによって、生物活性物質を保護する塗膜は必要とされない。必須の保護膜がないことは、不要な物質が系に導入されないために患者にとっては有益であり、工程ステップの低減とコスト削減の手段としても有益である。
【0121】
より介入的な役割を果たす本発明の別の側面では、装置の実施形態は胃または十二指腸の組織に電位を印加するように構成される電子エミッタを含むことができる。この電位は、満腹信号を脳に送るように、神経細胞受容器および/または機械受容器、および/または浸透圧受容器、および/または化学受容器を作動させる。このような装置の例示的実施形態を、図29に示すように以下で説明する。腸挿入具のおよびその使用に関する方法の実施形態の役割は、以下のセクションで詳述するように、図13の状況でより概括的に検討される。
【0122】
(本発明の別の例示的実施形態)
図13は、装置の実施形態がホスト被験者の生理学に関係し、最終的に食物摂取量の低減につながる満腹感を生成するように介入する様々な方法の概略フロー図である。本発明の装置の実施形態は、2つの広範なアプローチにより消化と満腹の生理に介入しており、いずれのアプローチも自然の満腹機構を模す、あるいは利用している。本実施形態は、(1)作用を有する単なる物理的存在によってホスト被験者の生理に関係する、および/または(2)生物活性剤の直接投与または直接的な神経刺激により直接的または能動的に介入することができる。図13とこの関連説明は、本発明を理解するための簡潔化した理論的枠組として提供され、すべての細部を完全に網羅することを意図していない。特異点の様々な相互作用、点線、およびぶれは簡潔にするために省略する。
【0123】
第1に、装置の単なる物理的存在は2つの主要な効果を有する。1つは拡張効果で、明確な流速低減素子を有する場合、糜粥流を妨げる。これらの2つの明白な効果はそれぞれ、装置の寸法と、存在する場合には装置の流速低減システムに左右される。第1に、装置の存在は十二指腸を拡張し、その拡張は、たとえば、十二指腸の伸張感応性神経細胞によって神経的に感知または検知することができる。したがって、たとえば、長さ、幅、総体積、全体的な配座または輪郭、密度、重量、または表面特性などの物理的寸法、側面、または特徴が拡張に影響を及ぼす、あるいは何らかの形で神経的に検知することができる。第2に、糜粥流を物理的に妨げることに関しては、この妨害プロセスが消化中の糜粥の生化学的プロフィールを変更することができ、十二指腸の化学受容器はそのプロフィールを十分に消化されたと感知する。変更された生化学的プロフィールとは別個の情報として、より具体的には、糜粥滞留時間の延長が神経で認知される場合もある。これは後で拡張の神経検知にも関連しうる効果である。神経経路は実際には拡張によって刺激されて、神経電気信号および/または神経ペプチドおよび神経伝達物質を、局所的またはより遠位の活動部位に放出することができる。神経フィードバックを結合するのが、代謝プロフィール自体から、およびCCKなどのホルモン分泌による化学的信号である。神経および化学反応は中枢神経系および他の器官へと広がり、要するに、十分食べ、満腹が達成されたことを示す。さらなる反応で、中枢神経系が摂食の停止および緩やかな消化プロセスをサポートする。
【0124】
第2に、図13を参照すると、装置の実施形態は、単なる物理的存在によって誘発されるよりも能動的に介入することができる。装置の実施形態は、(1)生物活性剤を確実に提供することができる、および/または(2)同じように、あるいは上述の生理学的経路を通じて満腹と消化の生理に関わる神経の電気刺激を提供することができる。要約すると、十二指腸内の装置の存在による様々な効果は、生化学的作用または信号(たとえば、ホルモン反応および/または腸内および血流内の両方の代謝物の生化学的プロフィール)と電気信号を含む神経活動を結果的にもたらし、それらはすべて生理学的に収束して、満腹感の感知、食欲の感知または知覚、心理的相関性、行動及び習慣的反応に補完された「満腹」をもたらす。
【0125】
本発明の実施形態の小腸挿入具は通常、十二指腸での糜粥の通過を遅らせる(あるいは、他の言葉で表現すれば、糜粥の滞留時間を延長する)ための少なくとも1つの屈曲部と少なくとも1つの流速低減素子を有する長尺部材を含むが、装置のいくつかの実施形態は必ずしも(図26〜28に示されるように)流速低減素子を含まず、いくつかの実施形態では、流速を低減するように中央部材または長尺部材自体を構成することができる(たとえば図16A、図16B)。これらの実施形態は通常、実際には十二指腸の目標屈曲部分に対応する1つか2つの屈曲部を有する。流速低減素子を含む挿入具の屈曲部は、装置がある期間、十二指腸内に安定的にとどまるように構成される。挿入具の実施形態は、1つまたはそれ以上の生理学的満腹信号の生成に寄与する調整を含むことができる。挿入具の実施形態は、生分解性部、神経刺激器、および生物活性物質放出機構によって能動的に放出可能な生物活性物質の1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部などの他の特徴を含むことができる。
【0126】
十二指腸内の目標屈曲部位における挿入具の実施形態の滞留時間は、実施形態の構造と、装置の一部を成す生分解性材料の細部とに従い変動する。生物学的プロセスによる装置の分解は通常、目標部位からの装置の解放、追放、または離脱、および腸管を介した装置の除去を引き起こす。したがって、該装置は、最初は小腸の目標屈曲部に配置され、その後、滞留期間の経過後、生分解効果により、目標部位から離脱し、排便によって身体から排出されるように構成することができると了解される。生分解性はいくつかのポリマーの特徴であり、本明細書に記載される、および/または図3〜12、および16A〜29に示される実施形態のポリマー部分に含めることができる。生分解は、図30A、図30B、図31Aおよび図31Bに示される実施形態に明確に示される特徴である。
【0127】
装置の実施形態は、通常、ホルモンまたは神経経路を通じて生理学的満腹信号を導き出す。いくつかの実施形態では、経路は長さ、幅、または総体積などの総合的寸法、あるいは表面特性を有する中央部材および流速低減素子の全体を含む、装置の物理的存在によって刺激されるため、機械受容器または伸張受容器などの腸の神経素子は、部分的に消化された食物の存在として解釈される物質の存在を感知し、したがって、満腹と解釈される神経メッセージを中枢神経系に対して刺激する。他の実施形態では、満腹信号はホルモンである。流速低減素子は、十二指腸で処理されている糜粥の通過を減速させ、食物の分解生成物の生化学的プロフィールを変更し、十二指腸の化学受容器は変更された生化学的プロフィールに反応して中枢神経系および消化器系の他の部分に満腹感を伝える。
【0128】
さらに別の実施形態では、装置は、受動的または能動的機構のいずれかによって放出可能な生物活性物質の貯蔵部を含む。その実施形態では、満腹信号は、挿入具のホストの内分泌経路によってではなく、装置によって直接提供される。装置の実施形態は、たとえば、受動的に溶出する、あるいはホスト被覆材の分解と協調して溶出する薬剤塗膜など、どんな種類の物質貯蔵部も含むことができ、いくつかの実施形態はポンプに連結される貯蔵部を含む。上記ポンプは、たとえば、蠕動によって伝えられる生物学的エネルギー、または電気エネルギー、または機械エネルギーを利用する機械的ポンプであってもよい。いくつかの実施形態は、電気エネルギーの入力を必要としないが、代わりに浸透圧勾配の保存されたエネルギーを引き出す浸透圧ポンプを含むことができる。ポンプによる放出のために電気エネルギーに依存する実施形態は通常、バッテリやコンデンサなどのエネルギー貯蔵装置を含む。動力による実施形態のいくつかは、より大きなシステムの一部として、ポンプの動作を制御できる遠隔刺激器を含み、いくつかの実施形態では、装置は十二指腸の局所神経を刺激する電極を通じて直接神経刺激を与え、中枢神経系に満腹感を伝えることができる。ポンプと同様、神経刺激を含む装置は、直接有線通信で、または無線周波数信号を介してのように無線でのいずれかで通信するエネルギー貯蔵装置および外部オン/オフまたは可変電力制御装置を含むことができる。
【0129】
図14は、洞腔−幽門接合部5から始まり、空腸12の入口で終わる小腸の十二指腸10を中心としたヒトの胃腸管の一部を示す図である。(膵臓9から)の膵管と肝臓からの総胆管との結合によって形成される肝膵膵管15の入口部位であるファーテル膨大部13が示されている。幽門8は括約筋による胃の内容物の排出を制御し、幽門弁11により幽門8は十分に消化された胃内容物を通過させるのに十分広く開放することができる。これらの胃内容物は、十二指腸10の通過後、続いて空腸12、さらに回腸に入る。十二指腸10、空腸12、および回腸が、小腸として知られる部分を構成するが、消化管のこれらの個々の部分も一般的に小腸と称される。本発明の状況では、小腸は十二指腸、空腸および/または回腸の全部または一部を指すことができる。図15は、ひだ19、すなわち、挿入具の実施形態が配置される内部空間の外周を形成する十二指腸の内側に折れたライニング部を含む十二指腸10の平面図である。幽門8、幽門弁11、十二指腸球部1OA、縦十二指腸1OBおよび横十二指腸1OC、ファーテル膨大部13、および空腸12の最初の部分も示される。本図は、十二指腸の目標部位内に固定される本発明の挿入装置の実施形態をそれぞれ示す以下の図16A〜29の視覚的背景を提供する。
【0130】
図16Aは、電話線状の単純なコイルの形状の中央管または中央部材50を有する挿入具20の実施形態を示す。本実施形態では、流速低減素子200Aは、延長された中央部材50の個々のコイル素子またはセグメントとして理解することができる。図16Bは、装置配備管620から出現する際にピグテール61の形状を取る、装置の近位端または遠位端部の詳細を示す。ピグテール端部の実施形態は、配備中の有用性と利点、および挿入具が目標部位に配置されるときに安定化する非刺激端点を提供する。
【0131】
図17Aは、図3および9に示される実施形態と同様、棘突起に装着されたリブ付きの流速低減素子200を有する、C形棘突起形状の中央管または中央部材50を備える挿入具20の実施形態を示す。図17Bは中央部材50と、配備管620から出現するリブ200の先端を示す。リブ状の流速低減素子200のいくつかの実施形態は、バネ状で、外方に偏向する素子で、その存在によって流速を低減するだけでなく、有利なことに、十二指腸10の壁を刺激することによって、満腹信号の生成と、十二指腸の目標屈曲部位内に位置する際の挿入具の安定化とに寄与する。後者に関しては、十二指腸球部1OAは、十二指腸の遠位部よりも大きな半径に膨張し、そのため、この部位の拡張素子は、特に有効な安定化部分を提供する。
【0132】
図18は、ネット付きの棘突起の形状の流速低減素子を有する挿入具20の実施形態を示す。本実施形態は、図17A、図17Bに示される実施形態に類似すると考えられるが、拡張可能リブの間にネット、フィルタ、またはメッシュが配備される。拡張可能リブは上述したような利点をもたらし、ネット掛けは十二指腸10を通って処理されている糜粥の流速を低減するという点で梃子作用を提供する。流速低減素子200の孔径が変動するメッシュの使用によって、流速を様々な程度に低減した装置の変形を提供することができる。さらに、メッシュ素子は、糜粥流速に影響を及ぼすことのできる親水性または疎水性などの特性が様々に異なる材料で形成することができる。さらに、メッシュは、生物活性物質を吸収し、その後、挿入具20が十二指腸にとどまる期間、受動的に溶出または脱着させる表面積を広げることで、その部位に利点を提供することができる。
【0133】
図19は、近位開放リング状のキャップの形状の近位部30Aによって固定される遠位閉鎖スリーブの形状の流速低減素子を有する挿入具20の実施形態を示す。スリーブは様々な寸法の孔を有することで、様々な度合いの漏れ量を提供し、通常は図18に示される実施形態のネットに帰する特徴をもたらす。
【0134】
図20Aは、中央部材50に沿って、中央部材と連続する閉鎖メッシュバスケットの形状の流速低減素子200を有し、さらにピグテール近位端および遠位端61を示す挿入具20の実施形態を示す。図20Bは、配備管620から出現し、出現後に拡張する装置を示す。メッシュバスケットの実施形態は柔軟で拡張可能で、メッシュは寸法と構成を様々に変更することができる。通常、バスケット部自体は角度を形成しないが、連結中央部50は、所定の角度を形成し、弾性的に保持することができる。バスケットと中央部の構成は同一で連続していてもよいし、互いに構成を変えてもよい。連結中央部50は特に、形状記憶合金または形状記憶ポリマーのいずれかによって提供される形状記憶機能をさらに有することができる。バスケット200および/または中央部材50を備えるポリマー材料は、弾性的な形状保持と形状記憶のいずれにかかわらず、生分解性とすることができる。
【0135】
図21は、中央に搭載され外方に延在するバッフルの形状の流速低減素子200を有し、さらにピグテール近位端および遠位端61を示す挿入具20の実施形態を示す。バッフルは、中央部材50に空間的に間隔を置いて搭載され、図20A、図20Bに示される実施形態の文脈で説明されたように弾性形状または記憶形状材料により保持される屈曲部を含むことができる。
【0136】
図22は、周縁に搭載され内方に延在するバッフル形状の流速低減素子200を有し、さらにピグテール近位端および遠位端61を示す挿入具20の実施形態を示す。バッフルは、図20A、図20Bおよび図21に示される実施形態の文脈で説明したような弾性形状またはメモリ形状材料によって保持される角部または屈曲部を含むことのできる中空の中央部材50に、空間的な間隔を置いて搭載される。本実施形態は、中空の身体側面により示される他の多くの実施形態と全般的に異なる。装置20は近位部30と遠位部40の両方で開放される。この中空形状は、満腹信号の生成に寄与するという点に関していくつか特別な利点を提供する。装置の形状は十二指腸10内の空間を満たすため、十二指腸壁内の機械反応性または伸張反応性神経の刺激に特に適し、こうした神経の刺激は通常、満腹感を提供する。この形状の装置20は、大部分の他の図示される実施形態に見られるように、より中央に配置される中央部材50を有する装置に比べて力分布の利点を有することができる。さらに、装置20の表面構造を変化させることができ、たとえば、中空でない個体またはハウジング状、あるいは孔または開口部(図示せず)を有する実質的なハウジング状であってもよいし、ケージ状またはメッシュ状(図示せず)であってもよい。これらの形状はそれぞれ特定の利点を有する。さらに、図27および28に示される別の実施形態では、一層実質的な物理的存在を有するハウジング状装置は、薬剤貯蔵部、ポンプ、および回路を装着または搭載するための物理的プラットフォームを提供する。さらに、このようなハウジング形状は、図29の実施形態に示されるような神経刺激電極を適切に搭載することができる。この特定の実施形態は、特にバッフルがバネ付勢を有する際、バッフルとの蠕動運動の形で身体から運動エネルギーを捕捉するように特別に順応可能であると理解される。こうしたエネルギーの捕捉は、主流に対して分離し失速する多量の糜粥を詰まらせる、あるいは生み出す可能性を低減しつつ、糜粥の流速を遅らせるという利点を有することができる。
【0137】
図23は、発泡体形状の流速低減素子200を有し、さらにピグテール近位端および遠位端61を示す挿入具20の実施形態を示す。本実施形態は最も広い側面では、図6に示される実施形態に類似する。発泡体状の流速低減素子200は、圧縮可能かつ拡張可能であるため、狭い管や内視鏡を通って目標部位へ配備するのに適している。発泡体状材料は連続気泡形状でも独立気泡形状でもよく、ヒドロゲルであってもよい。このような発泡体状材料は、大きく、弾性で、空間を満たしがちなので流速低減機能に供する。これらの発泡体状材料は、本発明の実施形態により提供されるように、十二指腸内での滞留期間中に後で受動的に脱着させることのできる生物活性剤の吸収にとって都合の良い高表面積も提供する。このような発泡状または海綿状材料は、全体的または部分的に生分解性であってもよい。生分解性は通常、限られた滞留時間を提供する、および材料に組み込まれた、あるいは吸収された生物活性剤を拡散させるという目的に供する。
【0138】
図24は、多孔栄養滲出ステント形状の流速低減素子200を有し、近位端30および遠位端40の両方で開放される挿入具20の実施形態を示す。本実施形態は、形状的に大きな一体性を持たせるため図19に示される実施形態とは全般的に異なる。対照的に、図19の実施形態は開放スリーブに言及され、特定の構造上の形式を持たない。ここに示される栄養滲出ステントの実施形態は構造上の一体性を有し、より積極的に空間を満たす。材料は通常、他の種類の管腔内ステントと同様にメッシュ形状を取り、ポリマーおよび/または金属鎖から構成することができる。メッシュは通常、ステントにより囲まれる経路内の糜粥の総体流を維持しつつ、処理中の糜粥18の液化した高栄養部分の滲出を提供するのに十分開放されている。
【0139】
図25は、中央部材50に空間的な間隔を置いて搭載され、ピグテール近位端および遠位端61をさらに示す、中央搭載ファンまたはブレードの形状の流速低減素子200を有する挿入具20の実施形態を示す。このようなファンブレード200は、回転可能で、最小限の抵抗を含め、回転に対する抵抗を可変とすることができる。上記流速低減実施形態200が処理する糜粥の流速に従い実際に回転する程度まで、糜粥の混合は流速の低減の補助として有益なプロセスであるため、このような移動は図22に示される実施形態で説明したのと同じように有益である。
【0140】
図26は、層状にされ、あるいは吸収され、あるいは生物活性剤が受動的に十二指腸10へと溶出することのできる中央部材または長尺部材50に組み込まれた、貯蔵部または蓄積部内の生物活性物質を有する挿入具20の実施形態を示す。本実施形態は、装置の生物活性物質または生物活性剤の配送側面を重視しており、独自の物理的寸法以外に特別に形成された流速低減素子は示されていないが、このような薬剤溶出中央部材50は他の図面に示される各種流速低減素子200と結合することができると理解すべきである。
【0141】
図27は、中央部材または長尺部材50によって支持される生物活性物質搭載浸透圧ポンプ71を有する挿入具20の実施形態を示す。浸透圧ポンプは当該技術において十分既知であり、たとえば、Alza Corporation(カリフォルニア州クパティーノ)によって提供される。浸透圧ポンプは様々な方法で駆動することができる。たとえば、化学反応力によって駆動される水が浸透圧膜を横断し、塩チャンバに入る。塩チャンバの体積が増加すれば、膨張した膜は強制的に薬剤貯蔵部へと偏向される。拡張膜は貯蔵部に押し入るにつれ、薬剤が1つまたはそれ以上の出口から投与される。
【0142】
図28は、電動ポンプ72に連結される生物活性物質搭載貯蔵部73、エネルギー貯蔵・配送ユニット75(どちらも中央部材または長尺部材50によって支持される)、および外部制御装置77を有する挿入具20の実施形態を示す。図26および27に示されるように、図示される本実施形態は、目標の十二指腸内部位への生物活性剤または生物活性物質の配送を重視している。これらの実施形態のいずれも2つ以上の薬剤を含むことができる。この生物活性剤供給実施形態と図26および27の実施形態との違いは、それらが比較的受動的で、生物活性剤放出機構の細部によって決定されるように所定の時間的経過に基づき動作することである。しかし、図28に示される実施形態では、生物活性物質の放出は、ポンプの能動的制御下にあり、ポンプは埋込ワイヤによって、あるいは、ここで図示されるようにたとえば無線周波数送信などの無線通信によってポンプと通信する外部制御装置の制御下にあってもよい。装置は2つ以上の上記ユニットを含むことができ、あるいは、単独のユニットが2つ以上の貯蔵部とポンプを含み、それによって単独の装置20が個々に2つ以上の生物活性剤を配送することができる。
【0143】
図29は、局所神経刺激用の電極78、バッテリやコンデンサなどのエネルギー貯蔵・配送ユニット75、および外部制御装置77を有する本発明の挿入具20の実施形態を示し、それらの構成要素はすべて中央部材または長尺部材50によって直接的または間接的に支持される。本実施形態は神経刺激に焦点を当てるような方法で説明するが、薬剤溶出装置を参照して説明したように、装置の神経刺激器機能は様々な流速低減素子200のいずれとも組み合わせることができる。本実施形態では、神経があると分かっている部位に電極を有利に配置することができる。電極は、刺激すべき2つ以上の神経を目標とする、あるいは、2つ以上の地点の神経を目標とすることができる。
【0144】
図30A、図30Bは、生分解性素子および形状記憶素子を含む挿入具20の中央部材50の実施形態を示す。図30Aは、角度αおよびβが明瞭な無傷な構造の中央部材を示す。図30Bは、生分解が始まった後の中央部材を示す。後になると、中央部材はさらに劣化し、一体性と立体的配置を失い、角度αおよびβは、C形装置の確定アームが消えるとともに消える。このように、これは、最初は腸内の目標部位に配置されるように構成される装置の実施形態を示し、その後、滞留と生分解の期間後、装置は目標部位との当初の同調する一致を失うことにより、目標部位から離れるように構成される。ここに示される例示的実施形態では、挿入具装置20は、湾曲形状記憶合金部22と比較的直線的な生分解性ポリマー部との組み合わせから形成される。金属部22およびポリマー部24は分節的に一緒に接合されて、完全な寸法と、図9に示される半径αおよび半径βの角度のような所望の完全な角度および屈曲とを有する挿入具を作製する。金属部は、より実質的な接合面を提供し、金属素子が部材20全体の生物学的分解後に崩れる際に、ホスト被験者を鋭利な部分による負傷または炎症から保護するために、各端部に拡張部を有する。金属部とポリマー部は、当業者にはよく知られた、屈曲装置を完成する他の方法で接合することができる。
【0145】
図31A、図31Bは、生分解性ポリマー材料を含む挿入具の中央部材50の実施形態を示す。生分解性ポリマーはすでに広範に上述した。図31Aは、無傷な状態での中央部材を示す。図31Bは、生分解が開始された後の中央部材を示す。後になると、中央部材50はさらに崩壊し、半径αおよび半径βの角度はもはやその形状を保持していない。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、図9に図示される半径αおよび半径βの角度のような角度を弾性的に保持することができ、他の実施形態では、ポリマーは上述したように形状記憶を保持することのできる種類であってもよい。
【0146】
(用語と規則)
別段定義されない限り、本明細書で使用されるどの技術用語も、本発明が属する技術の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。様々な規則や用語は、関連米国出願第11/300283号にも説明されている。具体的な方法、装置、および材料を本願に記載するが、本明細書に記載のものと類似のまたは等価の方法および材料も本発明の実行の際に使用することができる。
【0147】
本発明の装置および方法の実施形態を例示の図解によって詳細に説明したが、そのような図解は理解しやすくするためのものであって、限定することを目的としていない。様々な用語が本発明の理解を導くために本明細書で使用されている。これらの様々な用語はその用語の一般的な言語的または文法的変形または形式にも拡張されると理解される。また、装置、機器、または薬剤に言及する用語が商標名または一般名を有するとき、これらの名前は最新例として提供されており、本発明はこうした文章上の範囲に限定されないと理解される。最新用語の派生語として妥当に理解可能である、あるいは最新用語によって包含される対象のサブセットを示す、後で導入される用語は、最新用語として記載されたものと理解される。さらに、たとえば、本発明の実施形態が満腹の生理学に関わる様々な点に関する理解を深めるために、論理的検討が先に成されているが、本発明の請求項はこうした論理に拘束されない。さらに、本発明の実施形態の1つまたはそれ以上の特徴は、本発明の範囲から逸脱せずに本発明の他の実施形態の1つまたはそれ以上の他の特徴と組み合わせることができる。さらに、本発明は、例示のために記載された実施形態に限定されず、各構成要素に権利として与えられている最大範囲の等価性を含め、特許出願に添付の請求項を公正に読み取ることによってのみ定義されるべきであると理解せねばならない。
【0148】
(1) 小腸挿入具であって、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端の間の少なくとも1つの屈曲部(angled portion)であって、前記小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位(angled target site)に対応する屈曲部と、
生分解性材料(bioactive material)から成る前記挿入具の少なくとも一部と
を含む長尺部材(elongated member)を備え、
前記長尺部材は、最初は前記目標部位内に安定して配置され、その後、前記生分解性材料の分解後、前記目標部位から離されるように非安定化するよう構成される小腸挿入具。
(2) 前記屈曲部が生分解性材料を備える、(1)に記載の挿入具。
(3) 前記屈曲部が形状記憶材料を備える、(1)に記載の挿入具。
(4) 前記形状記憶材料が形状記憶合金または生分解性形状記憶ポリマーのいずれかを備える、(3)に記載の挿入具。
(5) 前記屈曲部が形状記憶合金部および生分解性部を備える、(1)に記載の挿入具。
(6) 前記生分解性部が、分解後、前記形状記憶合金部の除去を簡易化するように構成される、(5)に記載の挿入具。
(7) 前記形状記憶合金部および前記生分解性部が接合部で接合され、前記接合部が前記生分解性部の分解に伴って分解するように構成される、(5)に記載の挿入具。
(8) 前記小腸内の前記屈曲目標部位が前記十二指腸にある、(1)に記載の挿入具。
(9) 前記十二指腸内の前記屈曲目標部位が2つの角度を備え、前記挿入具が前記十二指腸の2つの角度に対応する2つの角度を有する、(8)に記載の挿入具。
(10) 前記長尺部材によって支持される少なくとも1つの流速低減素子をさらに備え、前記流速低減素子が前記小腸内の糜粥の流速を低減するように構成される、(1)に記載の挿入具。
(11) 前記流速低減素子が少なくとも部分的に生分解性材料から形成される、(10)に記載の挿入具。
(12) 前記流速低減素子がリブ、ネット、スリーブ、バスケット、中央に搭載されるバッフル、周縁に搭載されるバッフル、発泡体状材料、またはファンのいずれかを含む、(10)に記載の挿入具。
(13) 前記発泡体状材料がオープンセル泡発泡体(open cell foam)、クローズドセル発泡体(closed cell foam)、またはヒドロゲルのいずれかを含む、(12)に記載の挿入具。
(14) 前記発泡体状材料が内部に組み込まれた生物活性物質を備える、(13)に記載の挿入具。
(15) 前記発泡体状材料は生分解性であり、前記生物活性物質は前記発泡体状材料の分解時に放出される、(14)に記載の挿入具。
(16) 前記流速低減素子が、1つまたはそれ以上の生物活性物質の少なくとも1つの放出可能な貯蔵部を含む、(10)に記載の挿入具。
(17) 前記少なくとも1つの流量低減素が、生化学的プロフィールを変更するのに十分なほど前記糜粥の流速を低減する、(10)に記載の挿入具。
(18) 前記生化学的プロフィールがホルモン満腹信号を生成させるのに十分なほど変更される、(17)に記載の挿入具。
(19) 前記挿入具の物理的特徴は、前記挿入具が、前記挿入具が封止されるときに前記小腸の一部を拡張させ、前記拡張が、それに応じて前記小腸の1つまたはそれ以上の神経に満腹信号を生成させるのに十分であるというものである、(1)に記載の挿入具。
(20) 前記挿入具の前記物理的特徴が長さ、幅、体積、重量、密度、多孔度のいずれでもよい、(19)に記載の挿入具。
(21) 1つまたはそれ以上の生物活性物質を含み、前記長尺部材によって支持される1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部と、前記長尺部材によって支持される活性薬剤放出機構とをさらに備え、前記活性薬剤放出機構と前記1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部が互いに動作可能に連通する、(1)に記載の挿入具。
(22) 生物活性物質を配送するポンプをさらに備え、前記ポンプが前記長尺部材によって支持され、前記1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部に連結される、(1)に記載の挿入具。
(23) 前記ポンプが浸透圧ポンプ、電動機械ポンプ、圧電ポンプ、流駆動ポンプ、蠕動ポンプのいずれかである、(22)に記載の挿入具。
(24) エネルギーを前記ポンプに提供するように構成されるエネルギー貯蔵素子をさらに備える、(22)に記載の挿入具。
(25) 前記ポンプが遠隔装置によって制御される、(22)に記載の挿入具。
(26) 前記小腸または胃のいずれかの部位に電位を印加するように構成される電子エミッタをさらに備え、前記エミッタが前記長尺部材によって支持される、(1)に記載の挿入具。
(27) 前記エミッタが、起動後、満腹信号に寄与する神経反応を刺激する、(26)に記載の挿入具。
(28) エネルギーを前記ポンプに提供するように構成されるエネルギー貯蔵素子をさらに備える、(27)に記載の挿入具。
(29) 前記電子エミッタが遠隔装置によって制御される、(26)に記載の挿入具。
(30) 前記長尺部材の前記近位端に係合される固定部材をさらに備え、前記固定部材は前記目標部位への前記装置の安定化に寄与するように構成される、(1)に記載の挿入具。
(31) 前記固定部材は、前記長尺部材が前記小腸内の前記目標部位に配置されるときに前記胃にある、(30)に記載の挿入具。
(32) 小腸挿入具であって、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端の間の少なくとも1つの屈曲部であって、前記小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する屈曲部と
を含む長尺部材と、
前記長尺部材によって支持される神経刺激器と
を備える小腸挿入具。
(33) 前記挿入具が生分解性材料から形成される部分を含む、(32)に記載の挿入具。
(34) 前記長尺部材が最初は前記目標部位内に安定的に配置され、その後、前記生分解性材料の分解後、前記目標部位から離れるように非安定化されるように構成される、(33)に記載の挿入具。
(35) 前記挿入具の前記屈曲部が生分解性材料を備える、(33)に記載の挿入具。
(36) 前記神経刺激器が、1つまたはそれ以上の満腹信号を生成するのに十分なほど前記小腸の1つまたはそれ以上の神経を刺激するために採用される、(32)に記載の挿入具。
(37) エネルギーを前記神経刺激器に提供するように構成されるエネルギー貯蔵素子をさらに備える、(32)に記載の挿入具。
(38) 前記神経刺激器が遠隔装置によって制御される、(32)に記載の挿入具。
(39) 前記小腸内の前記屈曲目標部位が前記十二指腸にある、(32)に記載の挿入具。
(40) 前記十二指腸内の前記屈曲目標部位が2つの角度を備え、前記挿入具が前記十二指腸の2つの角度に対応する2つの角度を有する、(39)に記載の挿入具。
(41) 少なくとも1つの流速低減素子をさらに備え、前記素子が前記小腸内の糜粥の流速を低減するように構成される、(32)に記載の挿入具。
(42) 前記流速低減素子が少なくとも部分的に生分解性材料から形成される、(41)に記載の挿入具。
(43) 前記長尺部材の前記近位端に係合される固定部材をさらに備え、前記固定部材が前記目標部位での前記装置の安定化に寄与するように構成される、(32)に記載の挿入具。
(44) 小腸挿入具であって、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端の間の少なくとも1つの屈曲部であって、前記小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する屈曲部と、
を含む長尺部材と、
1つまたはそれ以上の生物活性材料(bioactive material)を含み、前記長尺部材によって支持される1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部(reservoir)と、
前記長尺部材によって支持される活性薬剤放出機構と
を備え、
前記活性薬剤放出機構と前記1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部が互いに動作可能に連通する(in operable communication with each other)小腸挿入具。
(45) 生分解性材料から形成された部分を含む、(44)に記載の挿入具。
(46) 前記挿入具の少なくとも一部が生分解性材料で形成され、前記長尺部材が、最初は前記目標部位内に安定的に位置し、その後、前記生分解性材料の分解後、前記目標部位から離れるように非安定化されるように構成される、(45)に記載の挿入具。
(47) 前記挿入具の前記屈曲部が生分解性材料を備える、(46)に記載の挿入具。
(48) 前記活性薬剤放出機構が浸透圧ポンプ、電動機械ポンプ、流駆動ポンプ(flow-driven pump)、蠕動ポンプ、または圧電ポンプのいずれかを含む、(44)に記載の挿入具。
(49) エネルギーを前記ポンプに提供するように構成されたエネルギー貯蔵部(energy storage element)をさらに備える、(48)に記載の挿入具。
(50) 前記活性薬剤放出機構が遠隔装置(remote device)によって制御される、(48)に記載の挿入具。
(51) 前記活性薬剤放出機構によって放出される前記生物活性材料が満腹信号(signal of satiety)を生成するのに十分である、(44)に記載の挿入具。
(52) 前記小腸内の前記屈曲目標部位が前記十二指腸にある、(44)に記載の挿入具。
(53) 前記十二指腸内の前記屈曲目標部位は2つの角度を備え、前記挿入具が前記十二指腸の2つの角度に対応する2つの角度を有する、(52)に記載の挿入具。
(54)
前記屈曲部が形状記憶部を備える、(44)に記載の挿入具。
(55) 前記屈曲部が形状記憶合金部および生分解性部を備える、(44)に記載の挿入具。
(56) 前記小腸内の部位に電位を印加するように構成される電子エミッタをさらに備え、前記部位が満腹信号に寄与する神経反応を生成する、(44)に記載の挿入具。
(57) 被験者に満腹感を起こさせる方法であって、
前記小腸に挿入具を配置するステップであって、前記挿入具が、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端の間の少なくとも1つの屈曲部であって、前記小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する屈曲部と、
生分解性材料から成る前記挿入具の少なくとも一部と
を含む長尺部材を備え、
前記長尺部材は、最初は前記目標部位内に安定して配置され、前記生分解性材料の分解後、前記目標部位から離されるように非安定化するよう構成されるステップと、
前記挿入具の存在または前記挿入具による能動的介入のいずれかの1つまたはそれ以上の効果により1つまたはそれ以上の満腹信号を生成するステップと
を備える方法。
(58) 前記挿入具の前記生分解性材料を生物分解するステップと、前記目標部位から前記装置を離すステップと、前記身体から前記装置を除去するステップとをさらに備える、(57)に記載の方法。
(59) 前記挿入具が形状記憶合金を有する部分を含み、前記生分解性材料を生物分解するステップが前記形状記憶合金部の除去を簡易化する、(58)に記載の方法。
(60) 前記挿入具が糜粥流速低減素子をさらに備え、前記流速低減素子で前記糜粥の通過を減速させるステップをさらに備える、(57)に記載の方法。
(61) 前記糜粥の通過を減速させるステップが、前記糜粥の前記生化学的プロフィールを変更する、(60)に記載の方法。
(62) 前記糜粥の前記生化学的プロフィールを変更することで前記腸の化学受容器が始動され、前記化学受容器がそれに反応して生物活性物質を分泌する、(61)に記載の方法。
(63) 満腹信号を生成するステップが、前記挿入具の存在により前記十二指腸の少なくとも一部の拡張に反応する前記腸の伸張感応性神経細胞を含む、(57)に記載の方法。
(64) 満腹信号を生成するステップが、前記挿入具の存在に反応して1つまたはそれ以上の生物活性物質を分泌する前記腸の細胞を含む、(57)に記載の方法。
(65) 前記挿入具が、放出可能な貯蔵部に生物活性物質を備え、前記挿入具による能動的介入が、前記挿入具が1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップを含む、(57)に記載の方法。
(66) 1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップが前記貯蔵部からの流出を含む、(65)に記載の方法。
(67) 前記挿入具が、前記放出可能な貯蔵部と動作可能に連通するポンプをさらに含み、1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップが、前記貯蔵部から前記材料をポンプで送出することを含む、(65)に記載の方法。
(68) ポンプでの送出が、浸透圧ポンプ、電動ポンプ、圧電構造、流駆動ポンプ、または蠕動ポンプのいずれからでも行うことができる、(67)に記載の方法。
(69) 前記生物活性物質は生分解性材料を備える前記装置の一部内に含まれ、前記生物活性物質は前記生分解性材料の分解後に放出される、(65)に記載の方法。
(70) 前記挿入具の1つまたはそれ以上の流速低減素子に含まれる前記生分解性材料が発泡体状材料を備える、(69)に記載の方法。
(71) 前記流速低減素子が、連続気泡発泡体、独立気泡発泡体、またはヒドロゲルのいずれかを含む発泡体状材料を含む、(70)に記載の方法。
(72) 前記挿入具が、前記長尺部材によって支持される神経刺激器をさらに含み、前記能動的介入が、前記刺激器で前記十二指腸の神経を刺激することを含む、(57)に記載の方法。
(73) 被験者に満腹感を起こさせる方法であって、
前記小腸に挿入具を配置するステップであって、前記挿入具が、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端の間の少なくとも1つの屈曲部であって、前記小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する屈曲部と
を含む長尺部材と、
前記長尺部材によって支持される神経刺激器とを備えるステップと、
前記十二指腸の細胞を前記神経刺激器で刺激するステップと
を備えるステップ。
(74) 前記神経刺激器に反応する神経が、満腹信号を送ることによって反応する前記腸の伸張感応性神経細胞である、(73)に記載の方法。
(75) 前記流速低減素子で前記糜粥の通過を減速させるステップをさらに備え、前記糜粥流を減速させるステップが満腹信号のさらなる生成に寄与する、(73)に記載の方法。
(76) 直接経路または神経媒介経路のいずれかにより前記神経刺激器に反応する前記腸の内分泌細胞をさらに備え、前記反応は1つまたはそれ以上のホルモンを分泌することを含む、(73)に記載の方法。
(77) 前記挿入具が生物活性物質放出可能な貯蔵部を備え、1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出する挿入具をさらに備える、(73)に記載の方法。
(78) 前記挿入具が生分解性材料を備え、前記挿入具の前記生分解性材料を生物分解するステップと、身体から前記挿入具を除去するステップとをさらに備える、(73)に記載の方法。
(79) 被験者に満腹感を起こさせる方法であって、
前記小腸に挿入具を配置するステップであって、前記挿入具は、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端の間の、前記小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応する少なくとも1つの屈曲部と
を含む長尺部材と、
1つまたはそれ以上の生物活性物質を含み、前記長尺部材によって支持される1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部と、
前記長尺部材によって支持される活性薬剤放出機構と
を含み、
前記活性薬剤放出機構と前記1つまたはそれ以上の放出可能な貯蔵部とは互いに動作可能に連通するステップと、
1つまたはそれ以上の生物活性剤を前記十二指腸に放出するステップと
を備える方法。
(80) 1つまたはそれ以上の生物活性物質を放出するステップは、前記貯蔵部からポンプで送出することを含む、(79)に記載の方法。
(81) ポンプでの送出は、浸透圧ポンプ、電動ポンプ、圧電構造、流駆動ポンプ、または蠕動ポンプのいずれからでも行うことができる、(80)に記載の方法。
(82) 前記流速低減素子で前記糜粥の通過を減速させるステップをさらに備え、前記糜粥流を減速させるステップが満腹信号のさらなる生成に寄与する、(79)に記載の方法。
(83) 前記挿入具の前記物理的存在に反応する前記腸の伸張感応性神経細胞をさらに備える、(79)に記載の方法。
(84) 前記挿入具の物理的存在に反応して、または前記活性薬剤放出機構により放出される前記生物活性剤に反応して、1つまたはそれ以上のホルモンを分泌する前記腸の内分泌細胞をさらに備える、(79)に記載の方法。
(85) 前記挿入具の前記生分解性材料を生物分解するステップと、身体から前記挿入具を除去するステップとをさらに備える、(79)に記載の方法。
【符号の説明】
【0149】
2 食道、 4 胃、 5 洞腔−幽門接合部、 6 食道−胃接合部、 7 洞腔、 8 幽門、10 十二指腸、 11 幽門弁、 12 空腸、 13 ファーテル膨大部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と遠位端とを有する長尺部材と、
前記近位端と前記遠位端との間に位置する少なくとも1つの屈曲部とを備えている小腸挿入具であって、
前記屈曲部は、小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応し、
該小腸挿入具は、生分解性材料で形成され該小腸挿入具の一部なす少なくとも1つの生分解性部分をさらに備えていて、
前記長尺部材は、最初は前記屈曲目標部位内に安定して配置され、その後、前記生分解性材料の分解の後に非安定化して前記屈曲目標部位から脱離するように構成されていることを特徴とする小腸挿入具。
【請求項1】
近位端と遠位端とを有する長尺部材と、
前記近位端と前記遠位端との間に位置する少なくとも1つの屈曲部とを備えている小腸挿入具であって、
前記屈曲部は、小腸内の少なくとも1つの屈曲目標部位に対応し、
該小腸挿入具は、生分解性材料で形成され該小腸挿入具の一部なす少なくとも1つの生分解性部分をさらに備えていて、
前記長尺部材は、最初は前記屈曲目標部位内に安定して配置され、その後、前記生分解性材料の分解の後に非安定化して前記屈曲目標部位から脱離するように構成されていることを特徴とする小腸挿入具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【図31A】
【図31B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30A】
【図30B】
【図31A】
【図31B】
【公開番号】特開2013−48905(P2013−48905A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−200812(P2012−200812)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【分割の表示】特願2009−513196(P2009−513196)の分割
【原出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(508178353)エンドスフィア・インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】ENDOSPHERE, INC.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−200812(P2012−200812)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【分割の表示】特願2009−513196(P2009−513196)の分割
【原出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(508178353)エンドスフィア・インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】ENDOSPHERE, INC.
【Fターム(参考)】
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