説明

食肉包装用フィルム

【課題】 部分肉の真空包装に使用した場合にドリップの滲出を抑制できるセルフ・ウエルド性の最外層(この層が、ヒート・シールと、フィルムのヒダが寄った個所や上下のフィルムが近接している個所におけるフィルム同士の融着に使用される)を有する食肉包装用フィルムの提供。
【解決手段】 三層以上の多層フィルムであって、二層の最外層の中、少なくとも一方はセルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなることを特徴とする食肉包装用フィルムを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として食肉の包装に使用される多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
牛、豚、大型魚類などは、切断されて部分肉となったものが、真空包装されて流通している。また、鶏では、頭部が切断除去されたものや、更に切断されて部分肉となったものが、真空包装されて流通している。このような部分肉等は、包装後においてその切断面から肉汁(以下、「ドリップ」という)が滲出しがちである。このドリップには旨味成分が含まれているため、ドリップの滲出を防止できる包装フィルムや包装方法が求められている。
【0003】
このような要求に応える発明として、特許文献1には、特定範囲内の最大融解ピーク温度を有する合成樹脂を用いたシーラント層を有する食肉包装用フィルムと、そのようなフィルムを用いた食肉の包装方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−119282
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、部分肉の真空包装に使用した場合にドリップの滲出を抑制できるセルフ・ウエルド性の最外層(この層が、ヒートシール及びフィルム同士が近接した個所の融着に使用される)を有する、食肉包装用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち本発明は、三層以上の多層フィルムであって、二層の最外層の中、少なくとも一方はセルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなることを特徴とする食肉包装用フィルムに関する。
【0007】
上記食肉包装用フィルムには、次の(1)乃至(3)の中のいずれか一つ又は二つ以上の組合せを有するものが包含される:
(1)二層の最外層の中、一方のみがセルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなり、他方は高強度ポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなる、
(2)中間層の中の少なくとも一層がガス・バリア性ポリマー(好ましくはエチレン・ビニルアルコール・コポリマー)又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなる、及び
(3)中間層の中の少なくとも一層が強靭性熱可塑性ポリマー(好ましくは6−ナイロン及び/又は6,6−ナイロン)又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなる。
【0008】
前記セルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマーとして、下記式(I)で表される実質的に線状のエチレン・α−オレフィン・コポリマーが好ましい。
【0009】
【化2】

【0010】
本明細書において、「ポリマー組成物」とは、二種以上のポリマーの混合物と、一種又は二種以上のポリマーと一種以上の添加剤とを含む組成物の両者を包含する概念である。また、「部分肉」とは、例えば牛、豚、鶏等の食肉や魚肉であって、切断されてなるもの、例えば枝肉を更に分割した肉をいう。
【発明の効果】
【0011】
本発明の食肉包装用フィルムは、熱風加熱により、真空包装されて近接している部分においてフィルム同士が融着するので、ドリップの滲出を抑制することができる。従って、本発明のフィルムを用いることにより、味のよい食肉等を提供することができるようになる。
【0012】
二層の最外層の中、一方が高強度ポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなる態様や、中間層の中の少なくとも一層が強靭性熱可塑性ポリマー(好ましくは6−ナイロン及び/又は6,6−ナイロン)又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなる態様では、フィルムが強度に優れ、真空包装後に破袋し難い。
【0013】
中間層の中の少なくとも一層がガス・バリア性ポリマー(好ましくはエチレン・ビニルアルコール・コポリマー)又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなる態様では、真空包装後に酸素等が被包装体に到達し難く、従って、この点からも、被包装体の劣化を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のフィルムは、三層以上の多層フィルムである。即ち、二層(上下各一層)の最外層と、それら最外層間に挟まれた少なくとも一層の中間層とからなり、必要に応じ、層間に接着層があってもよいフィルムである。本明細書において、「接着層」は、多層フィルムを構成する「層」の定義には含めない。
【0015】
本発明のフィルムにおいて、二層の最外層の中の少なくとも一方は、セルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなる。ここで、「セルフ・ウェルド性」とは、ポリマー又はポリマー組成物の層がある温度範囲内において軟化し、当該ポリマー又はポリマー組成物の層同士が密着する性質である。また、「ヒート・シール性」とは、ポリマー又はポリマー組成物の層がある温度範囲内において溶融し、被着体(通常は同じポリマー又はポリマー組成物の層)と一体化し、温度が下がった後には容易には剥離できない状態となる性質をいう。本発明においては、食肉等の包装という観点から、60乃至90℃、好ましくは70乃至90℃、さらに好ましくは75乃至85℃程度の温度範囲においてセルフ・ウェルド性を示し、120乃至200℃程度(好ましくは低温側)の温度範囲においてヒート・シール性を示すポリマーが好ましい。
【0016】
セルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマーの例としては、下記式(I)で表される実質的に線状で超低密度のエチレン・α−オレフィン・コポリマーが挙げられる。
【0017】
【化3】

【0018】
「超低密度」とは、ASTM D−792に従って測定した密度が0.935g/cm未満(好ましくは0.880g/cm乃至0.915g/cm)であることをいう。このような超低密度のエチレン・α−オレフィン・コポリマーは、例えば、シングル・サイト触媒(カミンスキー触媒等)を用い、溶液法で合成することができる。
【0019】
式(I)中のR、即ちアルキル基の炭素数は1以上であるが、4乃至8であることが好ましく、6であることことが特に好ましい。また、式(I)で表されるエチレン・α−オレフィン・コポリマーの中で、モノマー比率がy/x+y=(0.01〜3)/500であるものやアルキレン・コモノマーの割合が2乃至20重量%であるもの、メルト・インデックス(ASTM D−1238)が約1.0乃至5.0であるものが好ましい。
【0020】
セルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなる最外層の厚さは、特に限定されず、また、中間層を構成するポリマーの種類や中間層の厚さにもよるが、通常は5乃至20μm程度、好ましくは10乃至20μm程度である。
【0021】
本発明の多層フィルムの最外層は、両者(上下二層)共にセルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなるものであってもよい。この場合、二層の最外層を構成するポリマーは、互いに融点の異なるものを用いることが好ましい。
【0022】
また、本発明の多層フィルムの最外層は、一方は上記のセルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマー又はポリマー組成物からなり、他方は、高強度ポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなるものであってもよい。
【0023】
高強度ポリマーとは、引張り強さ、剛性、耐衝撃性等の性質を有するポリマーをいう。このようなポリマーを用いるのは、この最外層が食肉等を包装した際に外側となるので、外部からの衝撃等があってもフィルムが破れないようにするためである。また、本発明で使用する高強度ポリマーは、セルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマーよりも、融点が5乃至10℃高いものであることが好ましい。そのような高強度ポリマーを用いると、セルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマーの層(シーラント層)が軟化、融着しても、高強度ポリマーの層同士が融着し難いからである。
【0024】
高強度ポリマーの代表例として、線状低密度ポリエチレンが挙げられる。線状低密度ポリエチレンは、エチレンとα−オレフィンとのコポリマーであり、密度は0.915g/cm乃至0.935g/cm程度である。
【0025】
高強度ポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなる最外層の厚さは、特に限定されず、また、中間層を構成するポリマーの種類や中間層の厚さにもよるが、通常は5乃至30μm程度、好ましくは10乃至20μm程度である。
【0026】
本発明の多層フィルムには、中間層が一層以上存在する。中間層は、多層フィルムに求められる特性に応じたポリマー又はポリマー組成物を用いて構成する。例えば、多層フィルムにガス・バリアー性を付与したいとき(例えば、部分肉を0℃前後の温度で流通させる場合の包装フィルムとして用いる場合)には、ガス・バリア性ポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物で形成し、多層フィルムの強度を高めたい場合には、強靭性熱可塑性ポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物で形成し、低温特性を高めたいときには低温特性に優れるポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物で形成し、さらに、耐突刺し性を高めたい場合には、そのような性質を有するポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物で形成する。
【0027】
中間層の数は特に限定されないので、所望の性質を有する中間層を二層以上設けてもよい。
【0028】
中間層の中の少なくとも一層を、ガス・バリア性ポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物で構成することが好ましい。ガス・バリア性ポリマーの例として、エチレン・ビニルアルコール・コポリマー及びメタキシリレンジアミンとアジピン酸との共重合体(バリヤー・ナイロン)が挙げられる。これらの中では、エチレン・ビニルアルコール・コポリマーの方がガス・バリア性に優れる。
【0029】
ガス・バリア性ポリマーを用いた中間層の厚さは、特に限定されないが、通常は2乃至10μm程度である。
【0030】
中間層の中の少なくとも一層を、強靭性熱可塑性ポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物で構成することも好ましい。強靭性熱可塑性ポリマーの例として、6−ナイロン及び6,6−ナイロンが挙げられる。なお、6−ナイロン及び6,6−ナイロンは、ある程度のガス・バリア性も示す。
【0031】
強靭性熱可塑性ポリマーを用いた中間層の厚さは、特に限定されないが、通常は2乃至20μm程度である。
【0032】
本発明の多層フィルムの各層の形成に際し、ポリマーを単独で使用してもよいし、二種以上のポリマーを混合した及び/又はポリマーに各種添加剤を加えたポリマー組成物を使用してもよい。但し、ポリマー組成物を用いる場合には、各層について、前記したポリマーが主成分となるような量で、他のポリマーや各種添加剤を用いる。ここで、「主成分となるような量」とは、50重量%超であるが、通常は70重量%以上、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上である。
【0033】
主成分となるポリマーに添加して使用される他のポリマーは、主成分となるポリマーと相溶性があり、主成分となるポリマーの所望の性質を損ねないものである限り、特に限定されない。
【0034】
また、各種添加剤の例としては、滑剤、アンチ・ブロッキング剤、可塑剤及び安定剤などが挙げられる。滑剤の具体例としては、パラフィン、ポリエチレン・ワックス等の炭化水素、ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリル・アルコール等の脂肪族アルコール、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪族アミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ブチル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリルステアレート等の脂肪酸塩及び脂肪酸エステルが挙げられる。また、アンチ・ブロッキング剤の具体例としては、シリカ粉末(天然、合成)、合成ゼオライト、天然ゼオライト、合成ワックス、ホウ酸トリブチル、ポリマービーズ等が挙げられる。これらの使用量は、フィルムの分野において通常使用されている量である。
【0035】
本発明の多層フィルムにおいては、二つの最外層の形成に際しては、滑剤及びアンチ・ブロッキング剤を含むポリマー組成物を用いることが好ましい。シーラント層となるセルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマーを主成分とする組成物は、滑剤を500乃至1200ppm、アンチ・ブロッキング剤を2000乃至3500ppm程度、肉等を包装した際に外側となる最外層を構成するポリマー組成物は、滑剤を300乃至700ppm、アンチ・ブロッキング剤を800乃至1500ppm程度含有することが好ましい。
【0036】
また、本発明の多層フィルムは巻き取って保管されるため、二層の最外層(包装に使用する場合、一方がシーラント層となり、他方が外表面層となる)が接触する。よって、これら二層の最外層の間の動摩擦係数が1.2以下となるような量で、二層の最外層のいずれか又は両者を構成するポリマー組成物に、滑剤とアンチ・ブロッキング剤のいずれか又は両者を添加することが好ましい。
【0037】
本発明の多層フィルムの各層が、例えば加熱や加圧によって互いに付着するものである場合には、そのような手段で複数の層を互いに接着することができるが、隣接する二層が付着し難い場合には、接着剤を用いる。接着剤の種類は、接着しようとする二層の何れにも親和性があり、それら二層の接着剤として有効なものである限り、特に限定されない。接着剤の例として、三井化学株式会社製のアドマーや、日本ポリエチレン株式会社製のアドテックスが挙げられる。接着層の厚さは、特に限定されないが、通常は2乃至10μm程度である。
【0038】
本発明の多層フィルムの製造に際しては、用いるポリマー又はポリマー組成物の性質に応じて適切な方法が選択されるが、最も好ましい方法は、Tダイ・キャスト機を用いた共押出法である。この場合、接着層も共押出しされる。
【0039】
次に、本発明に係る、最外層の一方がセルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマーの層であり、他方が高強度ポリマーの層であり、これらの最外層間に中間層を有する多層フィルムを使用した部分肉の真空包装方法の例を説明する。
【0040】
工程a: ヒート・シールにより、フィルムの進行方向先端で上フィルムと繋がっている
下フィルムを巻出す。この際、下フィルムの向きは、セルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマーの層(シーラント層)が上に、高強度ポリマーの層が下に位置する向きである。
【0041】
工程b: 下フィルムのセルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマーの層上に、部分肉を載置する。
【0042】
工程c: 上フィルムを巻出す。この際、上フィルムの向きは、セルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマーの層(シーラント層)が下に、高強度ポリマーの層が上に位置する向きである。
【0043】
工程d: 巻出した上フィルムを、前記部分肉に被せる。
【0044】
工程e: 部分肉の存在する個所よりもフィルムの進行方向後方の部分肉の存在しない個所において、上下フィルムを、フィルムの進行方向に対してほぼ直角の方向でヒート・シール及び切断を行い、筒状体(内部に部分肉が入っているもの)を得る。
【0045】
工程f: 前記筒状体の両開口部からの吸引及び脱気を行う。
【0046】
工程g: 脱気された筒状体の両開口部をヒート・シールして真空包装シール体を得る。
【0047】
工程h: 真空包装シール体を、熱風トンネルを通過させる。
【0048】
この工程hにより、部分肉の存在しない平坦部分においては、上下のフィルムの互いに対向する面を構成するシーラント層同士が融着し、吸引及び脱気工程(工程f)で部分肉の存在する部分にできたヒダにおいては、上フィルム同士、下フィルム同士でシーラント層が融着する。この融着による結合の程度は、引張れば容易に剥がれる程度である。しかし、このような弱い結合でも、食肉や魚肉の切り口からドリップが滲出し難くなり、あるいは、滲出したドリップが拡散し難くなる。
【0049】
以下に、実施例により、本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0050】
多層フィルムの製造
(1)牛肉包装用ハイ・バリア性フィルム、(2)牛豚肉包装用ハイ・バリア性フィルム、(3)ミドル・バリア性フィルム及び(4)ノンバリア性フィルムを製造した。それらの層構成は、表1に示すとおりである。
【0051】
【表1】

【0052】
各フィルムの用途及び製造方法の概要は、以下のとおりである。
【0053】
(1)牛肉包装用ハイ・バリア性フィルム
(用途)このフィルムは、牛の部分肉の包装に適したものであり、このフィルムを用いて真空包装した牛部分肉は、0℃保管で40乃至60日間の賞味期間がある。
【0054】
(製造方法)表1の牛肉包装用ハイ・バリア性フィルムの欄に示す順序と厚さで全七層(Tieと記載された接着層二層を含む)を共押出しし、五層フィルムを製造した。
【0055】
(2)牛豚肉包装用ハイ・バリア性フィルム
(用途)このフィルムは、牛や豚の部分肉の包装に適したものであり、このフィルムを用いて真空包装した牛や豚の部分肉は、0℃保管で20乃至30日間の賞味期間がある。
【0056】
(製造方法)表1の牛豚肉包装用ハイ・バリア性フィルムの欄に示す順序と厚さで全七層(Tieと記載された接着層二層を含む)を共押出しし、五層フィルムを製造した。
【0057】
(3)ミドル・バリア性フィルム
(用途)このフィルムは、豚の部分肉の包装に適したものであり、このフィルムを用いて真空包装した豚部分肉は、0℃保管で7乃至15日間の賞味期間がある。
【0058】
(製造方法)表1のミドル・バリア性フィルムの欄に示す順序と厚さで全五層(Tieと記載された接着層二層を含む)を共押出しし、三層フィルムを製造した。
【0059】
(4)ノンバリア性フィルム
(用途)このフィルムは、流通用に使用される。
【0060】
(製造方法)表1のノンバリア性フィルムの欄に示す順序と厚さで全三層を共押出しし、三層フィルムを製造した。
【実施例2】
【0061】
フィルムの物理特性の測定
実施例1で製造した四種類の多層フィルムの中、牛豚肉包装用ハイ・バリア性フィルムとミドル・バリア性フィルムにつき、物理特性の測定を行った。
【0062】
試験方法は、次のとおりである。
【0063】
引張強さ、引張伸び及び厚さ: JIS Z 1702(ダンベル型試験片;試験速度500mm/分;標線間距離40mm;温度23±2℃;湿度50±5%;試験片の状態調節48時間以上)
摩擦係数: JIS K 7125(試験速度100mm/分;温度23±2℃;湿度50±5%;試験片の状態調節48時間以上))
透湿度: JIS Z 0208(カップ法); 条件B(温度40±0.5℃;相対湿度90±2%)
酸素透過度: JIS K 7126のA法(差圧法); 温度23±2℃;
ヘーズ: JIS K 7105
耐熱温度: 東京都消費生活条例;東京都都民生活局表示指導部「品質表示実施要領」による
牛豚肉包装用ハイ・バリア性フィルムの物理特性測定結果を表2に、ミドル・バリア性フィルムの物理特性測定結果を表3に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【実施例3】
【0066】
牛肉(部分肉)の真空包装
実施例1で製造した四種類の多層フィルムの中、牛肉包装用ハイ・バリア性フィルムを用い、牛部分肉を真空包装した。具体的には、以下のように行った。
【0067】
(i)先端がヒート・シールされて繋がっている上下フィルムの下フィルム(POP層(シーラント層)が上に、LLDPE層が下となるように巻出されている)上に、牛部分肉を載置した。
【0068】
(ii)上フィルム(LLDPE層が上に、POP層(シーラント層)が下となるように巻出されている)を、前記部分肉に被せた。
【0069】
(iii)部分肉の存在する個所よりもフィルムの進行方向後方の部分肉の存在しない個所において、上下フィルムを、フィルムの進行方向に対してほぼ直角の方向でヒート・シール及び切断を行い、筒状体(内部に部分肉が入っているもの)を得た。
【0070】
(iv)前記筒状体の両開口部からの吸引及び脱気を、約7秒間行った。
【0071】
(v)脱気された筒状体の両開口部をヒート・シールして真空包装シール体を得た。
【0072】
(vi)真空包装シール体を、80℃の熱風トンネルを約12秒間で通過させた。
【0073】
以上のようにして製造された真空包装シール体においては、ヒート・シール部間が引き伸ばされておらず、シール個所はしっかりとシールされており、且つ、シール切れはなかった。また、フィルムのヒダが寄った個所や上下のフィルムが近接している個所では、フィルム同士が融着していた。そして、真空包装20日後に状態を観察したところ、ドリップは極く少量であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三層以上の多層フィルムであって、二層の最外層の中、少なくとも一方はセルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなることを特徴とする食肉包装用フィルム。
【請求項2】
二層の最外層の中、一方のみがセルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなり、他方は高強度ポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなる、請求項1に記載の食肉包装用フィルム。
【請求項3】
中間層の中の少なくとも一層がガス・バリア性ポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなる、請求項1又は2に記載の食肉包装用フィルム。
【請求項4】
ガス・バリア性ポリマーがエチレン・ビニルアルコール・コポリマーである、請求項3に記載の食肉包装用フィルム。
【請求項5】
中間層の中の少なくとも一層が強靭性熱可塑性ポリマー又は当該ポリマーを主成分とするポリマー組成物からなる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の食肉包装用フィルム。
【請求項6】
強靭性熱可塑性ポリマーが6−ナイロン及び/又は6,6−ナイロンである、請求項5に記載の食肉包装用フィルム。
【請求項7】
セルフ・ウェルド性及びヒート・シール性を有するポリマーが下記式(I)で表される実質的に線状で超低密度のエチレン・α−オレフィン・コポリマーである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の食肉包装用フィルム。
【化1】


【公開番号】特開2008−127035(P2008−127035A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312486(P2006−312486)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(599167249)ベストパック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】