説明

食肉製品の製造方法

【課題】リン酸塩を使用することなく、加熱後の最終製品の食塩含量が1.5%未満で、加水歩留が対肉130%以上であっても、製品の硬さ、繊維感が良好な食肉製品を得ることのできる方法を提供する。
【解決手段】トランスグルタミナーゼとアルカリ性素材と卵白とを含有してなる溶液を、加水歩留が130%以上となるよう、原料肉へマッサージング法により浸透させる。
【効果】リン酸塩を使用することなく、加熱後の最終製品の食塩含量が1.5%未満で、加水歩留が対肉130%以上であっても、製品の硬さ、繊維感が良好な食肉製品を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食塩含量が1.5%未満で、加水歩留が対肉130%以上の食肉製品においても、製品の硬さ、繊維感が損なわれることのない食肉製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食肉製品、具体的には、から揚げ、竜田揚げ、カツ類は一般的に、硬すぎず柔らかすぎず、肉の繊維感に富んでいるものが好まれる。これらの食肉製品には調味料や改質剤の浸透、柔らかさの付与、コストダウンを目的として、加水がなされるケースが多い。特にコストダウンを目的とする場合は、加水量が多いほど製造者の利益につながるが、加水量を多くするほど柔らかくなり、肉の繊維感も乏しくなるので、食感的に好ましいものではなくなる。
【0003】
食肉に加水する方法として浸漬法、マッサージング法、インジェクション法がある。浸漬法は、調味料や改質剤の溶液に原料肉を漬けて静置する方法であり、特別な設備は必要なく、肉に衝撃を与えることがないので肉の繊維感や形が損なわれにくい長所があるが、溶液の浸透は非常に遅く、加水歩留(加水後の肉重量÷加水前の肉重量×100)に限界があり、加水歩留120%以上の加水は難しい。マッサージング法は、タンブラー等を用いてタンブリングすることにより、肉に衝撃を与え、溶液の浸透を促す方法であり、比較的短い時間で高い加水歩留を達成できるが、高い加水歩留を目指して処理時間を延ばすと、肉に過度な衝撃が与えられることになり、肉の繊維や形が崩れ、商品価値が下がってしまう。具体的には、130%以上の加水を行おうとすると、処理時間が長時間にわたることになり、繊維感や肉の形が損なわれてしまう。この課題を解決する目的で、重合リン酸塩が使用されることがある。しかしながら、リン酸塩は生体内のカルシウムとリンのバランスを崩すこと、特に重合リン酸塩はその強力な金属封鎖能によりカルシウムを不溶化させその吸収を阻害するということが明らかになりつつあり、リン酸塩を多用する加工食品の消費量が高まる中で、栄養学的にリン酸塩の過剰摂取が問題と考えられるようになっていることより、重合リン酸塩使用を控える動きもある。インジェクション法は、インジェクターと呼ばれる専用の注射器を用いて溶液を肉に注入する方法であり、ほぼ瞬時に肉に加水することができる。インジェクターで注入した溶液は、注射箇所に局在しているため、ほとんどの場合は注入後にマッサージングを行って溶液を分散させる。この方法は、達成しうる加水量も高く、生産性も高いが、インジェクターは複雑で高価な機器であること、インジェクターの注射針が肉を傷つけて肉の繊維感や形を壊しやすいことから、食感を重視した商品には適していない。
【0004】
また、食肉製品においては、好ましいとされる味付けや食感のため食塩の添加量が低いことも、加水歩留を上げにくい原因である。ハムやソーセージなどは、食塩濃度が2%前後と高く、低くとも1.5%は添加される。高い食塩濃度は、食塩によって肉の線維を溶かして緻密なゲルを形成させ、ハム・ソーセージに特有の弾力性、食感的にはしなやかさを付与すると同時に、保水性を高め、高い加水歩留を達成するためである。また、1.5%以上の食塩量は、一般的な食品においては塩辛い水準であるが、ハム・ソーセージのように緻密な組織で非常にしなやかな食感の場合、咀嚼時の呈味成分の放出が遅く、適度な塩味を付与するためには1.5%以上の食塩量が必要とされる。
【0005】
一方、から揚げやトンカツなどの食肉製品は、肉の繊維感が重要視されるため、その組織は粗であり、食塩の添加量が1.5%を超えると塩辛くて食べにくいものとなる。しかし、食塩濃度が低いため、肉の線維はほとんど溶かされておらず、従って保水性は低く、加水歩留を上げにくい。
【0006】
このような背景から、130%以上の高い加水歩留を達成しながら、最終製品の食塩濃度が1.5%未満で、食感が柔らかすぎず、肉の繊維感と形を維持した、おいしく、安価な食肉製品を作ることは、非常に難しいこととされてきた。
【0007】
特許文献1によれば、リン酸塩を用いずとも、動物の筋肉の加工に際し、トランスグルタミナーゼと補助タンパク質を用いると、硬く、保水性の高い食肉製品を製造できるとしている。この方法によると、硬く保水性のあるゲルを形成できるとしているが、繊維感に対する効果は謳われていない。また、加水、すなわち肉に対する水の加え方としては、細切した肉と水を混ぜ合わせたり、インジェクション法を用いるなどして強制的に水を加えており、加水歩留を上げることを課題とはしておらず、加水歩留を上げる効果も謳われていない。また、実施例の食塩濃度は2%以上と高く、容易に高い加水歩留を達成できる水準であることからも、加水歩留を課題としていないことが伺える。
【0008】
特許文献2によれば、食肉単味品の製造にあたって、トランスグルタミナーゼと特定のアルカリ性素材を組み合わせて用いることで、リン酸塩を用いずとも、硬くしなやかな食肉単味品(具体的にはハム、ベーコン、焼豚など)を作ることができるとあるが、繊維感の向上効果は謳われていない。また、最終製品の食塩濃度は1%を超えており、食塩1%以下の食肉製品を製造する本発明の技術とは異なるものである。さらに、当該技術は筋原線維蛋白質の溶出を促して、硬くてしなやかな組織を作ることを目的としているため、繊維感が乏しくなることは当然であり、当該技術においては好ましい方向の変化であり、ゆえに本発明の課題を解決するものではない。また、トランスグルタミナーゼは一般的に食肉製品を硬くしなやかにするものとして認知されているが、トランスグルタミナーゼによるしなやかさの向上を得るためには、結着性が高い状態である必要がある。これは、トランスグルタミナーゼの架橋反応によって強化される蛋白質が緻密な構造をとっている必要があるためである。蛋白質の溶出が進んでいない線維状の筋線維にトランスグルタミナーゼが作用すると、しなやかさよりも線維感を強化する方向に働く。強い線維感は、ハム等の食肉単味品では望ましくないとされている。
【0009】
特許文献3によれば、トランスグルタミナーゼと酸化カルシウムを肉に添加し、繊維感のある食感を実現しているが、硬さへの効果としては、本発明とは逆に柔らかい方向に変化している。さらに、歩留は130%を大きく下回っており、130%以上の高い加水歩留の達成を目的とする本発明とは異なるものである。
【0010】
ところで、アルカリ性素材を組み合わせて筋原線維蛋白質を効果的に溶出させるためには、高濃度の食塩、具体的には1.5%以上の食塩が必要である。食塩濃度が低いと、筋線維が膨張して保水性は向上するが、筋原線維蛋白質の溶出効果は食塩濃度が高い場合と比べると、極端に低い。トランスグルタミナーゼに加えてアルカリ素材を併用してしなやかな食感を実現できるのは、食塩濃度が1.5%より高い状況においてのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許2630829号
【特許文献2】特開2004−248661号
【特許文献3】特開2007−189926号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、リン酸塩を使用することなく、加熱後の最終製品の食塩含量が1.5%未満で、加水歩留が対肉130%以上であっても、製品の硬さ、繊維感が良好な食肉製品を得ることのできる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者らは、鋭意検討の結果、加熱後の最終製品の食塩含量が1.5%未満と低い食肉製品において、トランスグルタミナーゼが繊維感を強化する方向に働くこと、そしてアルカリ性素材が肉の保水性を向上させながら繊維感を損ないにくいこと、卵白が加熱歩留を顕著に向上させながら硬さも向上させることに着目し、トランスグルタミナーゼとアルカリ性素材と卵白を含有してなる溶液を、原料肉へマッサージング法により浸透させて調製した食肉製品が、高い歩留を達成しながら、硬さと繊維感が加水の少ない食肉製品と同等の水準に維持されることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)トランスグルタミナーゼとアルカリ性素材と卵白を含有してなる溶液を、マッサージング法により、原料肉へ浸透させ、加水歩留を130%〜160%とすることを特徴とする、食塩含量が1.5%未満である食肉製品の製造方法。
(2)溶液が、リン酸塩を含まないものである(1)記載の方法。
(3)食肉製品が、鶏肉製品である(1)又は(2)記載の方法。
(4)食肉製品が、から揚げ又はカツレツである(1)乃至(3)記載の方法。
(5)トランスグルタミナーゼの量が、原料肉1kgあたり100〜1000ユニットである(1)乃至(4)記載の方法。
(6)卵白の量が、原料肉1kgあたり、乾燥重量として10〜100gである(1)乃至(5)記載の方法。
(7)アルカリ性素材が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムよりなる群より選ばれるものである(1)乃至(6)記載の方法。
(8)アルカリ性素材が、酸化カルシウムであり、酸化カルシウムの量が、原料肉1kgあたり0.5〜3gである(7)記載の方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、リン酸塩を使用することなく、加熱後の最終製品の食塩含量が1.5%未満で、加水歩留が対肉130%以上であっても、製品の硬さ、繊維感が良好な食肉製品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明の食肉製品の製造方法は、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸塩等のリン酸塩や、最終製品の食塩含量が1.5%以上となるほどの量の食塩を使用することなく、トランスグルタミナーゼとアルカリ性素材と卵白とを含有してなる溶液を、加水歩留が130%以上となるよう、原料肉へマッサージング法により浸透させることを特徴とする。
【0017】
本発明に使用される原料肉は、いわゆる食肉と総称される牛肉、豚肉、馬肉、めん羊肉、山羊肉、家兎肉、鶏肉、七面鳥肉、カモ肉、ガチョウ肉、鶉肉が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明の食肉製品は、最大径が1cm以上の食肉片、すなわち、食肉片のいずれかの径が少なくとも1cm以上である食肉片を原料として用いるものを指し、から揚げ(フライドチキン)、ローストチキン(鶏モモ焼き、チキン照り焼き)、焼き鳥、カツレツ(トンカツ、ビーフカツ、チキンカツ)、焼き豚、ローストポーク、ローストビーフ等が例示されるが、筋繊維の細断された挽肉、ミンチ状・ペースト状の食肉を原料として用いるソーセージ類は含まれない。
【0019】
トランスグルタミナーゼにはカルシウム非依存性のものと、カルシウム依存性のものがあるが、本発明においてはいずれも使用することができる。前者の例としては放線菌、枯草菌などの微生物由来のもの(例えば特開昭64−27471参照)をあげることができる。後者の例としてはモルモット肝臓由来のもの(特公平1−50382参照)、卵菌などの微生物由来のもの、牛血液、豚血液など動物由来のもの、鮭、マダイなどの魚由来のもの(例えば関信夫ら「日本水産学会誌「VOL56、125−132(1990)」及び「平成2年度日本水産学会春季大会講演要旨集219頁参照」」、血液等に存在するファクターXIII(第13因子)といわれるもの(WO93/15234)、カキ由来のもの等をあげることができる。この他遺伝子組換により製造されるもの(特開平1−300889号公報、特開平6−225775公報、特開平7−23737公報、欧州特許公開EP−0693556A)等、いずれのトランスグルタミナーゼでも用いることができ、その起源及び製法に限定されることはない。食品用途としての機能性及び経済性の面から、現時点では、カルシウム非依存性のものが好ましい。例えば、上述の微生物由来のトランスグルタミナーゼ(特開昭64−27471)はいずれの条件も満足するものであり現時点では最適といえる。尚、味の素社より「アクティバ」TGとして市販されているものが、これに該当する。
【0020】
本発明におけるトランスグルタミナーゼの使用量は、原料肉1kgあたり100〜1000ユニットが好ましく、200〜500ユニットがより好ましい。尚、トランスグルタミナーゼの活性単位「ユニット」は、次に示すヒドロキサメート法で測定され、かつ定義される。すなわち、温度37℃、pH6.0の0.2Mトリス緩衝液中、ベンジルオキシカルボニル−L−グルタミルグリシン及びヒドロキシルアミンを基質とする反応系で、トランスグルタミナーゼを作用せしめ、生成したヒドロキサム酸をトリクロロ酢酸存在下で鉄錯体にする。次に、反応系の525nmにおける吸光度を測定し、生成したヒドロキサム酸量を検量線により求める。そして、1分間に1μモルのヒドロキサム酸を生成せしめる酵素量をTGaseの活性単位、即ち1ユニット(1U)と定義する(特開昭64−27471号、米国特許5156956号参照)。
【0021】
本発明において、アルカリ性素材とは原料肉のpHを上昇させうる素材すべてをさす。食肉製品に適しているアルカリ性素材としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムが挙げられる。特に、鶏肉製品に対しては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムが適しており、特に硬く締まった食感を得ようとする場合は酸化カルシウム、水酸化カルシウムが好ましい。尚、酸化カルシウムを主成分とする焼成カルシウムは、本発明における酸化カルシウムに含まれる。
【0022】
本発明におけるアルカリ性素材の使用量は、アルカリ性素材の種類によって大きく異なるが、本質的にはマッサージングを終えた肉のpHが6〜7、好ましくはpH6.2〜6.7となる量である。酸化カルシウムの場合、原料肉1kgあたり0.5〜3gの添加が好ましい。
【0023】
本発明の卵白には、卵白の乾燥物、濃縮物も含まれる。卵白は硬いゲルを作る性質があること、溶液の粘性が低いため、タンブリング法における加水歩留を上げやすいことから、本発明には適している。また、卵白は風味が比較的少なく、薄味の鶏肉製品においては特に相性がよい。本発明における卵白の使用量は、原料肉1kgあたり、乾燥重量として10〜100gが好ましく、20〜50gがより好ましい。
【0024】
本発明における、トランスグルタミナーゼとアルカリ性素材と卵白とを含有してなる溶液は、それぞれを水に所定量溶解させて調製すればよい。他に、醤油、香辛料、うまみ調味料、砂糖、食塩等の調味料原料を混合して、調味液としてもよい。但し、調味液の食塩濃度は、130%以上の加水を行った際の最終製品の食塩含量が1.5%未満となるようにする必要がある。
【0025】
トランスグルタミナーゼとアルカリ性素材と卵白とを含有してなる溶液を原料肉へ浸透させる方法は、マッサージング法が適している。本発明におけるマッサージング法とは、溶液と原料肉とを合わせて連続的に物理的衝撃を与える方法を指す。具体的な方法としては、タンブラーと呼ばれる内部に羽がついた回転機構のあるドラムに溶液と肉とを投入し、ドラムを回転させて肉に衝撃を与える方法が最も一般的である(この方法を特にタンブリングと称する)。その際のドラムの角度は横、斜め、縦など機器によって異なる。また、ドラム内を減圧し、原料肉内の気泡と溶液の置換を促すことで、加水歩留を向上することができる。タンブラーのほかにも、パドルミキサーやリボンミキサーなどの、比較的攪拌速度が遅い混合用の機械を用いる場合もある。タンブラーはドラムの直径や回転速度によって、ミキサーはミキサーのサイズや羽の形、攪拌速度によって、肉への衝撃の強さが異なるため、溶液の浸透スピードも異なる。
【0026】
本発明における加水歩留とは、加水前の原料肉重量に対する加水後の肉の重量を意味し、加水後の肉重量÷加水前の原料肉重量×100(%)で表される。加水後の肉重量は、マッサージング後の肉をザルに移して吸収しきれなかった溶液を除いた上で、測定する。本発明の加水歩留は130%以上、好ましくは130%〜160%、より好ましくは130%〜150%である。
【0027】
本発明の方法で加水された食肉製品は、加熱調理処理を経て流通される場合もあるし、加熱工程を経ずに冷蔵または冷凍流通され、家庭や外食店舗等喫食される時点で加熱調理される場合もある。本発明においては製品を硬く仕上げるためには、加熱時間は短い方がよい。肉を柔らかく仕上げることが重要とされるシチューや角煮などの例にあるように、長時間の加熱時間では、肉が柔らかくなってしまうためである。
【0028】
本発明の食肉製品の加熱後の最終製品の食塩含量(衣つきの製品の場合は、衣を除いた肉の部分の食塩含量)は、1.5%未満、好ましくは1.3%以下、より好ましくは1.1%以下である。
【実施例1】
【0029】
皮を除き25〜30g/個にカットした鶏モモ肉計2000gと、表1の配合にて調製した調味液とを、直径30cmのタンブラーに投入し、タンブラー内を0.1MPaまで減圧し、タンブラーの角度をななめ45度とし、30rpmで60分間回転させた。なお、鶏モモ肉、調味液、タンブラーの温度は一律5℃±2℃を維持した。タンブリング後の肉をザルに移して吸収しきれなかった調味液を除いてこれを漬込み肉とし、重量を測定し、加水歩留(漬込み肉重量÷鶏モモ肉重量×100)を算出した。漬込み肉に対して10%量の片栗粉をまぶして衣付き肉とし、重量を測定した。175℃のサラダ油に衣付き肉を投入し、4分30秒間油ちょうしてから揚げとし、重量を測定し、加熱歩留(油ちょう後のから揚げ重量÷油ちょう前の衣付き肉重量×100)を算出した。また、油ちょうしたから揚げの硬さ、繊維感について官能評価を行った。結果を表1に示す。尚、表中のTGはトランスグルタミナーゼ(1000ユニット/g)を意味している。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に示したとおり、アルカリ性素材は加水歩留を向上させたが、硬さと繊維感は低下させた。トランスグルタミナーゼは繊維感を向上させ、卵白は加熱歩留と硬さを向上させた。アルカリ性素材とトランスグルタミナーゼと卵白は、歩留と硬さと繊維感を向上させ、アルカリ性素材として焼成カルシウムを用いた場合、特に繊維感が良好で、最も食感のよいから揚げに仕上がった。尚、加熱後のから揚げの食塩含量は、例えば発明品2の場合、調味液中の食塩が全てから揚げに残ったとしても30÷(2000×135÷100)=1.1%であり、実際には、食塩もドリップに含まれるため、調味液中の食塩の全てから揚げに残ることはないので、発明品1〜3の食塩含量は1.1%以下である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によると、リン酸塩を使用することなく、加熱後の最終製品の食塩含量が1.5%未満で、加水歩留が対肉130%以上であっても、製品の硬さ、繊維感が良好な食肉製品を得ることができるので、本発明は、食品産業、特に食肉加工産業、外食産業にとって有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスグルタミナーゼとアルカリ性素材と卵白を含有してなる溶液を、マッサージング法により、原料肉へ浸透させ、加水歩留を130%〜160%とすることを特徴とする、食塩含量が1.5%未満である食肉製品の製造方法。
【請求項2】
溶液が、リン酸塩を含まないものである請求項1記載の方法。
【請求項3】
食肉製品が、鶏肉製品である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
食肉製品が、から揚げ又はカツレツである請求項1乃至3記載の方法。
【請求項5】
トランスグルタミナーゼの量が、原料肉1kgあたり100〜1000ユニットである請求項1乃至4記載の方法。
【請求項6】
卵白の量が、原料肉1kgあたり、乾燥重量として10〜100gである請求項1乃至5記載の方法。
【請求項7】
アルカリ性素材が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムよりなる群より選ばれるものである請求項1乃至6記載の方法。
【請求項8】
アルカリ性素材が、酸化カルシウムであり、酸化カルシウムの量が、原料肉1kgあたり0.5〜3gである請求項7記載の方法。