説明

飲料および苦味低減方法

【課題】 スポーツ時の有効な水分補給を目的としてマグネシウムやカルシウム等のミネラルを添加した飲料が数多く上市されている。しかしながら、ミネラルは苦味、渋味、えぐ味等を本来有するものであり、消費者の嗜好性を考慮すると、これら不快な味覚を低減する必要がある。
【解決手段】 水を溶媒とし、該溶媒100mlあたりマグネシウムイオンを0.05mg〜10mgの割合で含有する飲料において、ナリンギンを1μg〜50mg添加してなる飲料。水を溶媒とし、該溶媒100mlあたりマグネシウムイオンを0.05mg〜10mgの割合で含有する飲料において、ナリンギンを1μg〜50mg添加することを特徴とする苦味低減方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料および苦味低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ時の有効な水分補給を目的としてマグネシウムやカルシウム等のミネラルを添加した飲料が数多く上市されている。しかしながら、ミネラルは苦味、渋味、えぐ味等を本来有するものであり、消費者の嗜好性を考慮すると、これら不快な味覚を低減する必要がある。なお、ミネラルの苦味、渋味、えぐ味等をマスキングする方法は従来から数多く提案されているが(例えば特許文献1参照)、マグネシウムやカルシウム等を電解質として特定量含有する飲料の上記不快な味覚を抑制するには不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−79337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ミネラルの有する苦味、渋味、えぐ味等を抑制した飲料および苦味低減方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水を溶媒とし、該溶媒100mlあたりマグネシウムイオンを0.05mg〜10mgの割合で含有する飲料において、ナリンギンを1μg〜50mg添加してなる飲料を提供するものである。
また本発明は、水を溶媒とし、該溶媒100mlあたりマグネシウムイオンを0.05mg〜10mgの割合で含有する飲料において、ナリンギンを1μg〜50mg添加することを特徴とする苦味低減方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ミネラルの有する苦味、渋味、えぐ味等を抑制した飲料および苦味低減方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に使用されるナリンギン(naringin)は、例えば柑橘類に含まれる苦味成分として公知の化合物であり、柑橘類の果皮、果汁または種子から抽出し、精製して得ることができる。また、市販されているものも利用できる。
本発明者は、ミネラル、とくにマグネシウムを電解質として特定量含有する水を主成分とする飲料において、柑橘類に含まれる苦味成分として知られるナリンギンをあえて添加することにより、理由は定かではないが、ミネラルの有する苦味、渋味、えぐ味等(以下不快味という)を抑制できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
本発明における飲料は、水を溶媒とし、該溶媒100mlあたりマグネシウムイオンを0.05mg〜10mgの割合で含有するものであり、そこにさらにナリンギンを1μg〜50mg添加するものである。ナリンギンが1μg未満であると、添加量が少なすぎて本発明の効果を奏することができない。逆に50mgを超えると、マグネシウムの不快味を抑制できないばかりか、ナリンギンのもつ苦味を強く感じ、好ましくない。なおマグネシウムイオンが10mgを超えると、ナリンギンの苦味抑制作用が充分に働かず、好ましくない。
また、本発明の飲料において、マグネシウムイオンは、水100mlあたり0.1mg〜7mg含有するのが好ましく、0.1mg〜5mg含有するのがさらに好ましく、0.2mg〜2mg含有するのがとくに好ましく、0.4mg〜0.8mg含有するのが最適である。
ナリンギンの上記添加量は、2μg〜30mgであるのが好ましく、10μg〜20mgであるのがさらに好ましく、20μg〜10mgであるのがとくに好ましく、25μg〜1mgであるのが最適である。
また、本発明の飲料は、カルシウムに由来する不快味を抑制することも可能である。本発明の飲料において、カルシウムイオンは、水100mlあたり0.1mg〜50mg含有するのが好ましく、0.2mg〜45mg含有するのがさらに好ましく、1mg〜20mg含有するのがとくに好ましく、2mg〜8mg含有するのが最適である。
【0009】
本発明の飲料は、味覚を向上させるため、あるいは栄養素の添加を目的として、水100mlあたり、炭水化物を例えば0〜10g、好ましくは1〜8g、さらに好ましくは1〜7g添加することができる。
またタンパク質および/またはアミノ酸を水100mlあたり1g以下の割合で添加してもよい。
さらに各種ビタミン類を水100mlあたり1g以下の割合で添加してもよい。
また、飲料に通常添加可能である他の成分、例えば食物繊維、核酸類、有機酸類、脂質等を添加することもできる。
本発明の飲料は上記のように溶媒である水を主成分とするものであり、そこに溶解される溶質は例えば20質量%以下、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下であるのが望ましい。
【0010】
本発明の飲料の製法はとくに制限されず、公知技術に基づき製造することができる。本発明では、飲料にナリンギンを前記特定範囲で添加することにより、マグネシウムを電解質として特定量含有する飲料の不快味を抑制する方法も提供できる。
【実施例】
【0011】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
【0012】
水100mlに、塩化マグネシウムまたは塩化カルシウムを添加し、マグネシウムイオンまたはカルシウムイオンが水100ml中、下記の濃度となるように調整した。さらにナリンギンを下記の濃度となるように添加し、本発明の飲料を調製した。20〜40代の男女パネラー10名によって、ダブルブラインド法により各飲料を飲用したときの苦味、えぐ味の強さを下記のように官能評価した。なおパネラーは、下記の官能評価の基準点に対し、小数をつけることにより詳細に評価してもよいことにした。
【0013】
飲料1−1:水100ml中にマグネシウムイオンが0.5mgおよびナリンギンが10μg。
飲料1−2:水100ml中にマグネシウムイオンが0.5mgおよびナリンギンが1mg。
飲料1−3:水100ml中にマグネシウムイオンが0.5mgおよびナリンギンが8mg。
飲料1−4:水100ml中にマグネシウムイオンが0.5mgおよびナリンギンが25mg。
飲料1−5:水100ml中にマグネシウムイオンが0.5mgおよびナリンギンが45mg。
飲料1比:水100ml中にマグネシウムイオンが0.5mg
【0014】
苦味を感じない:4点
苦味をやや感じる:3点
苦味を感じる:2点
苦味をかなり感じる:1点
苦味を非常に感じる:0点
【0015】
えぐ味を感じない:4点
えぐ味をやや感じる:3点
えぐ味を感じる:2点
えぐ味をかなり感じる:1点
えぐ味を非常に感じる:0点
【0016】
上記の試験の結果、
飲料1−1の苦味は、3.8点、えぐ味は3.7点であった(いずれも平均点。以下同様)。
飲料1−2の苦味は、3.9点、えぐ味は3.9点であった。
飲料1−3の苦味は、3.8点、えぐ味は3.8点であった。
飲料1−4の苦味は、3.7点、えぐ味は3.6点であった。
飲料1−5の苦味は、3.0点、えぐ味は3.3点であった。
飲料1比の苦味は、0.5点、えぐ味は0.5点であった。
【0017】
飲料2−1:水100ml中にマグネシウムイオンが1mgおよびナリンギンが10μg。
飲料2−2:水100ml中にマグネシウムイオンが1mgおよびナリンギンが1mg。
飲料2−3:水100ml中にマグネシウムイオンが1mgおよびナリンギンが8mg。
飲料2−4:水100ml中にマグネシウムイオンが1mgおよびナリンギンが25mg。
飲料2−5:水100ml中にマグネシウムイオンが1mgおよびナリンギンが45mg。
飲料2比:水100ml中にマグネシウムイオンが1mg
【0018】
上記の試験の結果、
飲料2−1の苦味は、3.6点、えぐ味は3.4点であった(いずれも平均点。以下同様)。
飲料2−2の苦味は、3.7点、えぐ味は3.7点であった。
飲料2−3の苦味は、3.5点、えぐ味は3.4点であった。
飲料2−4の苦味は、3.5点、えぐ味は3.4点であった。
飲料2−5の苦味は、3.4点、えぐ味は3.3点であった。
飲料2比の苦味は、0.4点、えぐ味は0.4点であった。
【0019】
飲料3−1:水100ml中にマグネシウムイオンが8mgおよびナリンギンが10μg。
飲料3−2:水100ml中にマグネシウムイオンが8mgおよびナリンギンが1mg。
飲料3−3:水100ml中にマグネシウムイオンが8mgおよびナリンギンが8mg。
飲料3−4:水100ml中にマグネシウムイオンが8mgおよびナリンギンが25mg。
飲料3−5:水100ml中にマグネシウムイオンが8mgおよびナリンギンが45mg。
飲料3比:水100ml中にマグネシウムイオンが8mg
【0020】
上記の試験の結果、
飲料3−1の苦味は、3.2点、えぐ味は3.0点であった(いずれも平均点。以下同様)。
飲料3−2の苦味は、3.2点、えぐ味は3.2点であった。
飲料3−3の苦味は、3.1点、えぐ味は3.0点であった。
飲料3−4の苦味は、3.0点、えぐ味は2.9点であった。
飲料3−5の苦味は、2.9点、えぐ味は2.8点であった。
飲料3比の苦味は、0.2点、えぐ味は0.1点であった。
【0021】
飲料4−1:水100ml中にマグネシウムイオンが8mg、カルシウムイオンが5mgおよびナリンギンが10μg。
飲料4−2:水100ml中にマグネシウムイオンが8mg、カルシウムイオンが5mgおよびナリンギンが1mg。
飲料4−3:水100ml中にマグネシウムイオンが8mg、カルシウムイオンが5mgおよびナリンギンが8mg。
飲料4−4:水100ml中にマグネシウムイオンが8mg、カルシウムイオンが5mgおよびナリンギンが25mg。
飲料4−5:水100ml中にマグネシウムイオンが8mg、カルシウムイオンが5mgおよびナリンギンが45mg。
飲料4比:水100ml中にマグネシウムイオンが8mgおよびカルシウムイオンが5mg
【0022】
上記の試験の結果、
飲料4−1の苦味は、3.2点、えぐ味は2.9点であった(いずれも平均点。以下同様)。
飲料4−2の苦味は、3.0点、えぐ味は2.9点であった。
飲料4−3の苦味は、2.9点、えぐ味は2.8点であった。
飲料4−4の苦味は、2.7点、えぐ味は2.5点であった。
飲料4−5の苦味は、2.7点、えぐ味は2.5点であった。
飲料4比の苦味は、0.1点、えぐ味は0.1点であった。
【0023】
なお、上記各飲料において、ナトリウムイオンを水100ml中、30mg添加しても上記と同様の結果を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を溶媒とし、該溶媒100mlあたりマグネシウムイオンを0.05mg〜10mgの割合で含有する飲料において、ナリンギンを1μg〜50mg添加してなる飲料。
【請求項2】
水を溶媒とし、該溶媒100mlあたりマグネシウムイオンを0.05mg〜10mgの割合で含有する飲料において、ナリンギンを1μg〜50mg添加することを特徴とする苦味低減方法。

【公開番号】特開2009−279013(P2009−279013A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−204290(P2009−204290)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(707000691)辻堂化学株式会社 (104)
【Fターム(参考)】