説明

飲料中の濁りを防止または減少する方法

【課題】濁りの防止または減少のために、これまでに知られている技術には欠点があり、飲料中の濁りの防止または減少をするための新しい方法の必要性のために、飲料中の濁りを防止または減少する新規な技術を提供する。
【解決手段】プロリル特異的エンドプロテアーゼの添加によって飲料中の濁りを防止または減少する方法、及び得られうる新しい飲料。新しいエンドプロテアーゼ、ゲノムDNA、cDNAの配列情報ならびに蛋白質配列。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の属する技術分野]
本願発明は、エンドプロテアーゼの添加によって飲料中の濁りを防止または減少する方法、及び本願発明に従う方法によって得られうる新しい飲料に関する。本願発明はまた、新しいエンドプロテアーゼに関する。
【0002】
[従来の技術]
濁りは飲料業界で周知の現象である。濁りは、例えばビール、ワイン及びフルーツジュース中に存在しうる。濁り形成は、醸造工程の間に種々の過程で起こりうる。T. Nagodawithana及びG. Reedによって編集された「Enzymes in food processing」、第3版、アカデミック出版、サンディエゴ、第V章、第448〜449頁では、ビール中の濁りはビール蛋白質とポリフェノール性プロシアニジンンとの間の相互作用の結果であることが提案されている。ビールでは濁りが、ビールの冷却に応じてしばしば形成されることが説明されている。ビールは発酵されて、そしてその後しばしば冷却された条件下で熟成される。清澄を達成するために、ビールは冷えた間にしばしはろ過される。濾過にもかかわらず、ビールは、それが梱包されて顧客に流通され、そして給仕される前に再び冷やされた後にしばしば濁ったようになる。ビールが冷やされない又はもはや冷やされない場合であっても、やがては濁りがビール中に形成され、そして沈殿物が現れうる。濁り形成は、濁り形成によって生じた曇りが微生物損傷によって生成した曇り(それは特にブライト(bright)ビールにおいて望ましくない)と似ている故に望ましくない。
【0003】
「Industrial Enzymology」、第2版、第2.6章、第124〜125頁では、ビール中の濁りは、疎水性アミノ酸の高い比率を含み、プロアントシアニジンとカテキン(フラボノイド)から主として成るポリフェノールと結合する、モルトの高分子量ホルデイン(hordein)画分の架橋に起因しうることが記載されている。少量の炭水化物及び微量無機物イオンが、濁り形成、並びに酸化(不可逆的な濁りを生成するためにポリフェノールの重合で重要な割合を果たすといわれている)にまた関与していることが記載されている。ポリフェノールは、冷却されたときに蛋白質とゆっくりと結合して冷え濁り(chill haze)を形成するが、それは温められたときに再溶解することが提案されている。結局のところは、しかしながらポリフェノールが重合しサイズが増加する場合に、それらは室温で不溶性になって、不可逆的な又は永久的な濁りを形成する。
【0004】
いくつかの他の刊行物において、例えばビール、ワイン及びフルーツジュース、コーヒー及び紅茶中の濁りの形成は、蛋白質とポリフェノールとの間の相互作用の結果であると提案されている(K. J. Siebertら、J. Agric. Food Chem.、第44巻、1996年、第1997〜2005頁、及びK. J. Siebertら、J. Agric. Food Chem.、第44巻、1996年、第80〜85頁、K. J. Siebert、J. Agric. Food Chem.、第47巻、1999年、第353〜362頁)。
【0005】
1911年のL. Wallersteinによるその発見以来、ビール中の冷え濁り形成を減少する方法は、ビールへのパパインの添加であることが知られている。パパインは、蛋白質分解活性を有するパパイヤの抽出物である。T. Nagodawithana及びG. Reedによって編集された「Enzymes in food processing」、第3版、アカデミック出版、サンディエゴ、第V章、第448〜449頁では、ビール中の冷え濁りの防止のために、パパインは他のいかなる酵素よりも特に優れていることが記載されている。しかしながら、パパインが機能するところの正確な機構は、今までに決定されていない(T. Nagodawithana及びG. Reedによって編集された「Enzymes in food processing」、第3版、アカデミック出版、サンディエゴ、第V章、第448〜449頁)。
【0006】
しかしながら、パパインの使用の不利点は、それが泡に対する否定的な効果を有することである。蛋白質は、ビールに安定な泡を形成するために必要である。しかしながら、その蛋白質分解活性によって、パパインは上部泡安定性に不利に影響する。
【0007】
ワイン中の濁り形成は、例えばT. Nagodawithana及びG. Reedによって編集された「Enzymes in food processing」、第3版、アカデミック出版、サンディエゴ、第16章、第425頁において議論され、そこではブドウ蛋白質がワインの保管の間の濁り形成に責任があると記載されている。沈殿物が瓶詰め後にワイン中に形成される場合、該ワインは顧客にとって魅力がなくなり、それは販売に影響する。沈殿物を防止するために、例えばベントナイトが使用される。ベントナイト及び他の吸着剤が蛋白質を除去する際に効を奏するが、それは選択的でなく且つワインから他の望ましい化合物を除去し、しばしばワインの感覚器による特性にしばしば影響を与える。加えて、ベントナイトの使用はワインのかなりの損失を結果として生じ、かつそれはベントナイトを含む廃棄物の投棄が困難性を示す。
【0008】
機構はあまり理解されていないが、パパインの添加は、蛋白質−ポリフェノール濁りが形成されない又はより少ない程度で形成されるところのそのような程度に、ビール中の蛋白質を加水分解することが想定されている。ベントナイトは、ワインにおいて同様の理由(蛋白質を吸収することによって)のために使用され、それは蛋白質−ポリフェノール濁り及び沈殿物の形成を防ぐ。しかしながら、蛋白質を除去する代わりに、ポリフェノールが濁り形成を減少し又は防止するために除去されうる。飲料からポリフェノールを除去するために使用される化合物の典型的な例は、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)である。最近、ポリフェノールは重要な抗酸化剤であることが認識されている。抗酸化剤に起因する全ての有益な効果の故に、飲料からポリフェノールを除去する選択は、濁りの形成を防止するための最も魅力的な方法ではない。
【0009】
[発明が解決しようとする課題]
濁りの防止または減少のための全ての知られた技術は欠点を有する故に、飲料中の濁りの防止または減少をするための新しい方法の必要性がまだある。
【0010】
飲料中の濁りを防止または減少する方法を提供することが本願発明の目的である。
【0011】
[課題を解決するための手段]
驚くべきことに、この目的は、プロリル特異的エンドプロテアーゼが飲料中に添加されるところの飲料中の濁りを防止または減少する方法を提供することによって達成されることがわかった。
【0012】
本願発明の枠組みにおいて、用語「飲料」は、それらの調製の全ての段階の飲料を含む。従って、飲料は消費のために出来上がった飲料だけでなく、飲料を調製するために使用される任意の組成物である。例えば、ビール調製で使用されるオルト(wort)は、本明細書中において使用される用語「飲料」によって包含される。また、飲料の調製の間にプロリル特異的エンドプロテアーゼを液体でない又は完全には液体でない組成物へ添加することは、本願発明に従う方法に入るものと意図される。ビール醸造の開始時にマッシュ(mash)に添加されるプロリル特異的エンドプロテアーゼは、そのような組成物の例である。
【0013】
プロリル特異的エンドプロテアーゼは、蛋白質又はペプチドがその鎖中にプロリル残基を含む位置で又はその近くで蛋白質又はペプチドを切断するエンドプロテアーゼとして定義される。好ましくは、プロリル特異的エンドプロテアーゼは、蛋白質又はペプチドがプロリル残基を含む位置で蛋白質又はペプチドを切断するエンドプロテアーゼである。本願発明に従う方法では、C−末端でプロリル残基を切断するプロリル特異的エンドプロテアーゼが好ましくは使用される。そのNH2−末端でプロリル残基を切断するプロリル特異的エンドプロテアーゼは例えば、刊行物(Nature、1988年1月15日発行、第391巻、第301〜304頁)に記載されている。
【0014】
本明細書中では、用語 プロリル特異的エンドプロテアーゼ、プロリル特異的エンドプロテアーゼ、プロリル特異的エンドペプチターゼ、及びプロリル特異的活性又は類似の発現を有するペプチド は、互換的に使用される。
【0015】
本明細書中では、用語 ペプチド及び蛋白質 は、互換的に使用される。本明細書中では、用語「濁り(haze)」、「曇り(cloudiness)」及び「混濁(turbidity)」はまた、互換的に使用される。飲料中の濁りの量を決めるために、濁度計がしばしば使用される。濁度計では、入射する光ビームの方向と相対的な所定の角度で散乱される光の量が、測定される。濁度測定は、蛋白質−ポリフェノール相互作用の結果として形成された濁りの測定のために非常に適している。
【0016】
ポリフェノールは、少なくとも1つの水酸基で置換された少なくとも2つの芳香族環を含む化学構造を有する又は少なくとも2つの水酸基で置換された少なくとも1つの芳香族環を含む化学構造を有する化合物として定義される。
【0017】
ポリフェノールの例は、タンニン及びフラボノイドであり、それは例えばカテキン、フラボノール及びアントシアニンを含む。
【0018】
プロリル特異的活性を有するエンドプロテアーゼは、知られている(E.C.3.4.21.26)。しかしながら、飲料中の濁りを防止または減少するためにプロリル特異的エンドプロテアーゼを使用することは、今までに記載されまたは示唆されていない。
【0019】
酵素活性に典型なように、プロリル特異的エンドプロテアーゼの活性は、pHに依存する。本願発明に従う方法の好ましい実施態様では、エンドプロテアーゼは、エンドプロテアーゼが添加される飲料のpHに対応するpHで最大のプロリル特異的活性を有する飲料に添加される。好ましい飲料は、蛋白質を含有する飲料である。他の好ましい実施態様では、飲料は、蛋白質及びポリフェノールを含む。好ましい飲料は、7未満のpH値を有する飲料である。
【0020】
本願発明に従う方法は、ビール、ワイン及びフルーツジュースに有利に適用される。それは、ビール及びワイン以外のアルコール飲料にも有利に適用されうる。
【0021】
本明細書で使用される用語「ビール」は、モルトされていない穀物から調製されたマッシュ並びにモルトされた穀物から調製された全てのマッシュ、及びモルトされた及びモルトされていない穀物の混合物から調製された全てのマッシュから調製されたビールを少なくとも包含することが意図される。用語「ビール」は、添加物を用いて調製されたビール、及びあらゆる可能なアルコール含量を有するビールをも包含する。
【0022】
フルーツジュースは、例えばレッドベリー、イチゴ、リンゴ、梨、トマト、柑橘類の果実、野菜などから得られるジュースでありうる。
【0023】
本願発明に従う方法において飲料に添加されるプロリル特異的エンドプロテアーゼの量は、広い範囲で変化しうる。本願発明に従う方法の好ましい実施態様では、飲料中の1グラム蛋白質あたり少なくとも150ミリ・ユニットのプロリル特異的エンドプロテアーゼ活性が添加され、ここで活性は基質としてZ−Gly−Pro−pNAを使用し活性測定によって決定された。
【0024】
より好ましくは、少なくとも500ミリ・ユニットのプロリル特異的エンドプロテアーゼが飲料に添加され、かつ最も好ましくは少なくとも1ユニットのプロリル特異的エンドプロテアーゼが添加される。
【0025】
添加されるべきプロリル特異的エンドプロテアーゼ活性の最大量は、特定され得ない。最大量は例えば、濁り減少または防止の望ましい量、飲料の組成、飲料のpH、及びエンドプロテアーゼがその最大活性を有するところのpHに依存する。
【0026】
プロリル特異的エンドプロテアーゼは、飲料の調製の間の種々の段階で添加されうる。
【0027】
ビールの調製工程の間に、プロリル特異的エンドプロテアーゼはマッシュに有利に添加される。他の実施態様では、プロリル特異的エンドプロテアーゼは、濁りが形成される前の発酵されたビールに添加される。しかしながら、プロリル特異的エンドプロテアーゼが濁りが形成された後の発酵されたビールに添加されることも可能である。プロリル特異的エンドプロテアーゼは、ビールの調製の工程においてすりつぶし(mashing)または成熟工程に有利に添加されうる。
【0028】
ワインの調製の間に、プロリル特異的エンドプロテアーゼは、発酵されたワインに好ましくは添加される。プロリル特異的エンドプロテアーゼは、ワインの製造の工程において、アルコール発酵後またはマロアクティック(maloactic)発酵後に有利に添加されうる。
【0029】
フルーツジュースの調製の工程では、プロリル特異的エンドプロテアーゼは、浸漬または脱ペクチン化(depectinization)の間に好ましくは添加される。
【0030】
濁り形成は、例えばビール、ワイン及びフルーツジュースのような酸性飲料中でしばしば生じる故に、7未満のpH値でプロリル特異的活性を有するプロリル特異的エンドプロテアーゼが好ましくは使用される。最も好ましくは、7未満のpH値で最大のプロリル特異的活性を有するプロリル特異的エンドプロテアーゼしくが、本願発明に従う方法で使用される。
【0031】
本願発明は、
(a)配列ID No.4、配列ID No.5若しくは配列ID No.7、またはそれらのフラグメントと少なくとも40%の全長アミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドと、
(b)(i)配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6の核酸配列、または60、好ましくは100のヌクレオチドにわたって少なくとも80%あるいは90%同一である、より好ましくは200のヌクレオチドにわたって少なくとも90%同一であるそれらのフラグメントと、あるいは(ii)(i)の核酸配列と相補的な核酸配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと
から成る群から選択されるプロリル特異的エンドプロテアーゼを有するところの単離されたポリペプチドをさらに提供する。
【0032】
本願発明は、プロリル特異的エンドプロテアーゼをコードする核酸分子をまた提供する。
【0033】
本願発明は、プロリル特異的エンドプロテアーゼ活性を有する精製された又は単離されたポリペプチドにまた関連する。7未満のpH値で最大活性を有する精製されたプロリル特異的エンドプロテアーゼが好ましい。
【0034】
本願発明は、配列ID No.4、配列ID No.5または配列ID No.7に従うアミノ酸配列、適切な宿主内で配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6のポリヌクレオチド配列を発現することによって得られうるアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドを提供する。また、上記ポリペプチドの機能的同等物を含むペプチドまたはポリペプチドが、本願発明に含まれる。上記ポリペプチドは、用語「本願発明に従うポリペプチド」にまとめて含まれる。
【0035】
用語「ペプチド」及び「オリゴペプチド」は同義語と見なされ(通例、認識されているように)、且つ各用語はペプチジル結合によって結合された少なくとも2つのアミノ酸の鎖を示すために、文脈が要求するときに交換的に使用されうる。用語「ポリペプチド」は、7より大きいアミノ酸残基を含む鎖のために本明細書中で使用される。本明細書中における全てのオリゴペプチド及びポリペプチド式または配列は、左から右へ且つアミノ末端からカルボキシ末端への方向で記載される。本明細書で使用されるアミノ酸の1文字コードは、当業者に一般に知られており、且つSambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory編集、Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州、1989年)内に見つけられうる。
【0036】
「単離された」若しくは「精製された」ポリペプチドまたは蛋白質は、その天然環境から除去されたポリペプチドまたは蛋白質を意図される。例えば、宿主細胞で発現された、組み換え的に生成されたポリペプチド及び蛋白質は、例えば、Smith及びJohnson、Gene、67巻、第31−40頁(1998年)に記載されたシングル・ステップ精製方法のような任意の適切な技術によって実質的に精製されたところの天然の又は組み換えのポリペプチドがそうであるように、本願発明の目的のために単離されたと考えられる。
【0037】
本願発明に従うポリペプチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを含む周知の方法によって、組み換え細胞培養物から回収され且つ精製されうる。最も好ましくは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)が、精製のために用いられる。
【0038】
本願発明のポリペプチドは、天然に精製された製品、化学合成手法の生産物、及び例えば細菌、酵母菌、高等植物、昆虫及び哺乳類の細胞を含む、原核生物の又は真核生物宿主からの組み換え技術によって生産された生成物を含む。組み換え生産手法で使用される宿主に応じて、本願発明のポリペプチドは、グリコシル化されてもよく又はグリコシル化されなくともよい。さらに、本願発明のポリペプチドは、宿主が介在する工程の結果としていくつかの場合に、初期の修飾されたメチオニン残基をまた含みうる。
【0039】
本願発明の有利な実施態様は、エンドプロテアーゼ活性を有する、精製された又は単離されたポリペプチドに関係する。そのような精製された又は単離されたポリペプチドは、本願発明に従う生物、例えば本願発明に従うポリヌクレオチドを運ぶA. niger株が培養されたところの発酵培養液から得られうる。当業者は、そのような培養物の上清から少なくとも部分的に精製された酵素をどのようにして得るかを知っている。
【0040】
精製の特に有利な方法は、以下の通りである。適切な発酵培養液中で細胞を培養した後、該細胞は遠心分離によって培養上清から分離された。該上清は、濁った外観を有した。その後、該上清中内に残るより大きな粒子は、次の工程で適用される濾過の目詰まりを防止するために、0.5%Dicaliteで、または好ましくは1.0%Dicaliteで濾過することによって引き続き除去された。次に、溶液中の細菌の量を減少するために、細菌減少濾過(Germ reduction filtration)が適用された。なお、該濾液は、透明でなかった。10Kダルトンの分子量カットオフ値を有するミリポア(Millipore)・フィルタが、水、該溶液の塩及び糖含量の更なる減少のために引き続き使用された。1バールの圧力が、フィルタ上に適用された。得られた典型的な収率は、発酵培養液中に存在するユニット対該精製された限外濾過液中で得られたユニットに基づいて50〜92%の間であった。限外濾過液中の酵素の典型的な濃度は、1ml当たり4〜10ユニットの範囲でプロリル特異的エンドプロテアーゼ活性という結果である。
【0041】
さらに、精製は次の方法のいずれかを適用することによって得られた。
実験室規模精製は、24ml Q−セファロースFFカラム(ベッド高さ12cm/直径1.6cm)上にAkta Explorerを使用し行われた。10ml UF濃縮物が、バッファーA中に10倍希釈され、そしてカラムに適用された。蛋白質は、グラジエント(20CVで0〜50%B)で溶出された。バッファーAは、20mM NaAc、pH5.1であった。バッファーBは、20mM NaAc+1M NaCl pH5.1であった。流速は、5ml/分であった。
精製は、500ml Q−セファロースFFカラム(ベッド高さ 23.5cm/直径5cm)上にAkta purifierを使用し、作業指示書W−0894.Aに従い行われた。200ml UF濃縮物がバッファーA中に10倍希釈され、そしてカラムに適用された。蛋白質は、グラジエント(20CVで0〜40%B)で溶出された。バッファーAは、20mM NaAc、pH5.1であった。バッファーBは、20mM NaAc+1M NaCl pH5.1であった。流速は、10ml/分であった。フラクションは、手動で集められた。
【0042】
得られた生成物は、HPSEC上で単一ピークを示し且つSDS PAGE及びIEFで単一バンドとして現れた。従って、プロリル特異的エンドプロテアーゼは、Q−セファロースFFを使用し同質まで精製されうることが結論付けられうる。推測される純度は90%を超え、且つZ−Gly−Pro−pNAに対する特異的活性は、少なくとも0.094U/mgであった。
【0043】
本願発明のポリペプチドは、単離された形でありうる。該ポリペプチドは、ポリペプチドの意図された目的を妨害せず且つ単離されたとまだ見なされる、担体または希釈剤と混合されてもよいと理解される。本願発明のポリペプチドは、より実質上精製された形でもよく、その場合それは、調製物中に蛋白質の70%より上、例えば80%、90%、95%、98%または99%より上が本願発明のポリペプチドであるところの調製物中に該ポリペプチドを一般に含む。
【0044】
本願発明のポリペプチドは、それらがそれらの天然の細胞環境外であるような形で提供されうる。従って、それらは、上記で述べられたように実質的に単離され若しくは精製され、またはそれらは天然に生じない細胞内、例えば他のかびの種、動物、植物または細菌の細胞内でありうる。
【0045】
有利に、単離された又は精製されたプロリル特異的エンドプロテアーゼが、本願発明に従う方法で使用される。
【0046】
本願発明に従う単離された又は精製されたプロリル特異的エンドプロテアーゼは好ましくは、蛋白質性物質のグラム当たり、少なくとも10ユニットのプロリル特異的エンドプロテアーゼ活性を有する。これらのユニットは、方法の部で記載されているように、37℃、pH5で合成ペプチドZ−Gly−Pro−pNAを使用し測定されるべきである。
【0047】
プロリル特異的エンドプロテアーゼは、動物及び植物において広く見つけられるが、微生物内のそれらの存在は制限されているように思われる。現在まで、プロリル特異的エンドプロテアーゼは、アスペルギルス(Aspergillus)(EP 0 522 428)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)(EP 0 967 285)及びアエロモナス(Aeromonas)(J. Biochem.、第113巻、第790−796頁)、キサントモナス(Xanthomonas)及びバクテロイデス(Bacteroides)の種で同定されている。これらの生物のほとんどからのプロリル特異的酵素は約pH8で活性であるが、Aspergillus酵素は、約pH5で好ましくは活性である。本願発明のプロリル特異的エンドプロテアーゼは、上記で述べた微生物種の1つ、特にAspergillusの種から単離されうる。好ましくは、プロリル特異的エンドプロテアーゼは、Aspergillus nigerの株から単離される。他の宿主例えばE. coliは適切な発現ベクターであるが、より好ましくは、プロリル特異的エンドプロテアーゼは、プロリル特異的エンドプロテアーゼをコードする遺伝子を過剰発現するために設計されたAspergillus niger宿主から単離される。例えば、とりわけE. Coli内でプロリル特異的エンドプロテアーゼを誘導されるFlabovacteriumのクローニング及び過剰生産は、純粋な形で利用可能なあるプロリル特異的エンドプロテアーゼを作る。そのような過剰生産する構成物の例は、World Journal of Microbiology & Biotechnology、第11巻、第209〜212頁に与えられている。Aspergillus niger宿主が、A. nigerプロモーターを使用し非組み換え自己構成物利用を生産して、A. nigerプロリル特異的エンドプロテアーゼをコードする遺伝子の発現を促進するために、好ましくは使用される。
【0048】
第1の実施態様では、本願発明は、少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、一層より好ましくは少なくとも約90%、なおより好ましくは少なくとも約95%、及び最も好ましくは少なくとも約97%の配列ID No.4、配列ID No.5若しくは配列ID No.7(すなわち、ポリペプチド)のアミノ酸にアミノ酸配列同一性の全体程度を有し且つプロリル特異的エンドプロテアーゼ活性を有するアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドを提供する。
【0049】
本願発明の目的のために、2またはそれ以上のアミノ酸配列間の同一性の程度が、BLAST P蛋白質データベース検索プログラム(Altschulら、1997年、Nucleic Acids Research、第25巻、第3389〜3402頁)によって、基質Blosum 62及び期待される閾値10と決定された。
【0050】
本願発明のポリペプチドは、配列ID No.4、配列ID No.5もしくは配列ID No.7に記載されるアミノ酸配列、または実質的に相同な配列、あるいはプロリル特異的エンドプロテアーゼ活性を有するいずれかの配列のフラグメントを含みうる。一般に、配列ID No.4、配列ID No.5もしくは配列ID No.7で示される、天然に生じるアミノ酸配列が好ましい。
【0051】
本願発明のポリペプチドは、配列ID No.4、配列ID No.5または配列ID No.7のポリペプチドの、天然に生じる変種または種相同物をもまた含みうる。
【0052】
変種は、例えばかびの、細菌の、酵母又は植物の細胞内に天然に生じるポリペプチドであり、該変種は、プロリル特異的エンドプロテアーゼ活性及び配列ID No.4、配列ID No.5または配列ID No.7の蛋白質と実質的に類似の配列を有する。用語「変種」は、配列ID No.4、配列ID No.5または配列ID No.7のプロリル特異的エンドプロテアーゼとして同一の本質的な性質又は基本的な生物学的機能性を有するポリペプチドを言及し、且つ対立遺伝子の変種を含む。好ましくは、変種のポリペプチドは、配列ID No.4、配列ID No.5または配列ID No.7のポリペプチドとして、少なくと同じレベルのプロリル特異的エンドプロテアーゼ活性を有する。変種は、配列ID No.4、配列ID No.5若しくは配列ID No.7のポリペプチドとして同じ株、または同じ属若しくは種の種々の株からのいずれかの対立遺伝子を含む。
【0053】
同様に、本願発明の蛋白質の種相同物は、プロリル特異的エンドプロテアーゼであり且つAspergillusの他の種で天然に生じる類似の配列の等価蛋白質である。
【0054】
変種及び種相同体は、配列ID No.4、配列ID No.5または配列ID No.7のポリペプチドを単離するために使用された本明細書中で記載された手順を使用し且つ適切な細胞起源例えば細菌の、酵母、カビの又は植物の細胞に対するそのような手順を実行し、単離されうる。配列ID No.4、配列ID No.5若しくは配列ID No.7のポリペプチドの変種又は種相同体を発現するクローンを得るために、本願発明のプローブを使用して、酵母、細菌の、カビの又は植物の細胞から作成されたライブラリーをプローブすることもまた可能である。これらのクローンは、それ自体知られている組み換え又は合成技術によってその後生産されうるところの本願発明のポリペプチドを生成するために、慣用の技術によって操作されうる。
【0055】
配列ID No.4、配列ID No.5または配列ID No.7のポリペプチド及び変種並びに種相同体の配列は、本願発明のポリペプチドを提供するために修飾されうる。アミノ酸置換体、例えば1、2、または3から10、20若しくは30置換体が作成されうる。同じ数の欠失および挿入がまた作成されうる。これらの変化は、修飾されたポリペプチドがそのプロリル特異的エンドプロテアーゼ活性を保持するが、ポリペプチドの機能に対して不可欠な領域の外に作成されうる。
【0056】
本願発明のポリペプチドは、配列ID No.4、配列ID No.5または配列ID No.7で提示された配列のフラグメントを含む、上記に記載された全長ポリペプチド及びそれらの変異体のフラグメントを含む。そのようなフラグメントは、プロリル特異的エンドプロテアーゼとして活性を典型的には保持する。フラグメントは、少なくとも50、100又は200アミノ酸長でありうり、又は配列ID No.4、配列ID No.5または配列ID No.7で示される全長配列以外のアミノ酸の数でもよい。
【0057】
本願発明のポリペプチドは、必要であれば、合成方法によって生産されうるが、通常それらは、下記に記載されるように組み換え的に作成される。合成ポリペプチドは、例えばそれらの識別若しくは精製を助けるためにヒスチジン残基又はT7タグの添加によって、或いは細胞からのそれらの分泌を促進するためにシグナル配列の添加によって修飾されうる。
【0058】
従って、変種配列は、配列ID No.4、配列ID No.5または配列ID No.7のポリペプチドが単離されたところの株以外のAspergillusの株から得られるそれらを含みうる。変種は、本明細書中で記載されているようにプロリル特異的エンドプロテアーゼ、かつクローニング及び配列を探すことによって、他のAspergillus株から識別されうる。変種は、ペプチドが配列ID No.4、配列ID No.5または配列ID No.7のプロリル特異的エンドプロテアーゼの基本的な生物学的機能を維持する限りは、単一アミノ酸又は蛋白質配列内の一群のアミノ酸の欠失、修飾又は追加を含んでもよい。
【0059】
アミノ酸置換は、例えば1、2、又は3から10、20若しくは30までの置換がなされうる。修飾されたポリペプチドは、プロリル特異的エンドプロテアーゼとして活性を一般に保持する。保守的な置換がなされうり、そのような置換は当業者にとって周知である。好ましくは、置換は、ポリペプチドの折り畳み又は活性に影響を与えない。
【0060】
より短いポリペプチド配列は、本願発明の範囲内である。例えば少なくとも50アミノ酸若しくは60、70、80、100、150又は200アミノ酸長さまでのペプチドは、それが配列ID No.4、配列ID No.5または配列ID No.7のプロリル特異的エンドプロテアーゼの基本的な生物学的機能を発揮する限りは、本願発明の範囲内であるとみなされる。特に、排他的ではないが、本願発明のこの観点は、蛋白質が完全な蛋白質配列のフラグメントであるところの状況を包含する。
【0061】
第2の実施態様では、本願発明は、プロリル特異的エンドプロテアーゼ活性を有し、且つ(i)配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6の核酸配列、または配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6のC−末端部分を少なくとも含み、しかし配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6の塩基と異なる全てを有しない或いは異なる塩基を有する核酸フラグメントと、あるいは(ii)配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6と相補的な核酸配列ストランドと、あるいは(ii)配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6に相補的な核酸ストランドと低いストリンジェンシィー条件下で、より好ましくは中程度のストリンジェンシィー条件下で、及び最も好ましくは高いストリンジェンシィー条件下で、ハイブリダイズする又はハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドによってコードされる、単離されたポリペプチドを提供する。
【0062】
用語「ハイブリダイズすることが可能な」は、本願発明の目的ポリヌクレオチドが、バックグランドよりも著しく上のレベルで、プローブ(例えば、配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6に記載された核酸配列又はそれらのフラグメント、或いは配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6の補体)として使用される核酸にハイブリダイズできることを意味する。本願発明は、本願発明のプロリル特異的エンドプロテアーゼをコードするポリヌクレオチド、並びにそれらに相補的であるヌクレオチド配列をまた含む。該ヌクレオチド配列は、RNA、又はゲノムDNA、合成DNA若しくはcDNAを含むDNAでありうる。好ましくは、該ヌクレオチド配列はDNAであり、最も好ましくはゲノムDNA配列である。典型的に、本願発明のポリヌクレオチドは、配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6のコード配列又はそれらのコード配列の補体に選択的な条件下でハイブリダイズすることが可能であるヌクレオチドの連続した配列を含む。そのようなヌクレオチドは、当業者に周知の方法に従い合成されうる。
【0063】
本願発明のポリヌクレオチドは、バックグラウンドよりも著しく上のレベルで、配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6のコード配列又はそれらのコード配列の補体にハイブリダイズできる。バックグラウンド・ハイブリダイゼーションは、例えばcDNAライブラリー中に存在する他のcDNAの理由で生じうる。本願発明のポリヌクレオチド間の相互作用によって生じるシグナル・レベル及び配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6の、コード配列又はそれらのコード配列の補体は、他のポリヌクレオチドと配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6のコード配列との間の相互作用と同じ強さで、典型的に少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも50倍、及び一層より好ましくは少なくとも100倍である。相互作用の強度は、例えばプローブを放射性同位体でラベル付けする(例えば32P)ことによって測定されうる。選択的ハイブリダイゼーションは典型的に、低いストリンジェンシィーの条件(約40℃で、0.3M塩化ナトリウム及び0.03Mクエン酸ナトリウム)、中程度のストリンジェンシィー(例えば、約50℃で、0.3M塩化ナトリウム及び0.03Mクエン酸ナトリウム)又は高いストリンジェンシィー条件(例えば、約60℃で、0.3M塩化ナトリウム及び0.03Mクエン酸ナトリウム)を使用して達成されうる。
【0064】
修飾
本願発明のポリヌクレオチドは、DNA又はRNAを含みうる。それらは、一又は二本鎖でありうる。それらは、その中に、ペプチド核酸を含む、合成の又は修飾されたヌクレオチドを含むポリヌクレオチドでまたありうる。ポリヌクレオチドに対する修飾の多くの種々の型が、当業者に知られている。これらは、メチルホスホナート及びホスホロチオエート骨格、及び分子の3及び/又は5末端でアクリジン又はポリリシン鎖の付加を含む。本願発明の目的のために、本明細書中で記載されたポリヌクレオチドは、当業者に利用可能な任意の方法によって修飾されうることが理解されるべきである。
【0065】
当業者は、ルーチン技術を使用し、本願発明のポリペプチドが発現されるところの任意の特定の宿主生物のコドン使用を反映するために、本願発明のポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチド配列に影響しないヌクレオチド置換を作成しうることが理解されるべきである。
【0066】
配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6のコード配列は、例えば1、2、又は3から10、25、50若しくは100置換までのヌクレオチド置換によって修飾されうる。配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6のポリヌクレオチドは、1又はそれ以上の挿入及び/又は欠失によって、及び/又はいずれか又は両方の末端での伸長によって、代替的に又は付加的に修飾されうる。該修飾されたポリヌクレオチドは、プロリル特異的エンドプロテアーゼ活性を有するポリペプチドを一般にコードする。該修飾された配列が例えば後にポリペプチドに参照され議論されるように、翻訳されるときに、縮重置換が作成されうり及び/又は保存的なアミノ酸置換を結果として生じる置換が作成されうる。
【0067】
相同体
配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6のDNAコード配列の補体に選択的にハイブリダイズすることが可能であるヌクレオチド配列は本願発明に含まれ、且つ配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6の少なくとも60、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200連続ヌクレオチドの領域にわたって又は最も好ましくは全長にわたって、配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6のコード配列に少なくとも50%又は60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%配列同一性を一般に有する。同様に、活性プロリル特異的エンドプロテアーゼをコードし且つ配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6のDNAコード配列の補体のフラグメントに選択的にハイブリダイズすることが可能であるヌクレオチドは、本願発明によってまた包含される。60、好ましくは100のヌクレオチドにわたって少なくとも80%あるいは90%同一である、より好ましくは200のヌクレオチドにわたって少なくとも90%同一である、配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6の核酸配列のC−末端フラグメントは、本願発明によって包含される。
【0068】
上記に記載された同一の程度及び最小サイズの任意の組み合わせは、本願発明のポリヌクレオチドを定義するために使用されうり、よりストリジェントな組み合わせ(すなわち、より長い長さにわたってより高い同一性)が好ましい。従って例えば、60、好ましくは100のヌクレオチドにわたって少なくとも80%又は90%同一であるポリヌクレオチドは、200のヌクレオチドにわたって少なくとも90%同一であるポリヌクレオチドと同様に、本願発明の一局面を形成する。
【0069】
UWGCGパッケージは、同一性を計算するために使用されうるBESTFITプログラムを提供する(例えばそのデフォルト・セッティングで使用される)。
【0070】
PILEUP及びBLAST Nアルゴリズムは、配列同一性を計算するために又は配列を並べるために(例えばそれらのデフォルト・セッティングで、等価又は対応する配列を識別するように)また使用される。
【0071】
BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、the National Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて、公的に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列内に同じ長さのワードで並べられた場合に、いくつかの肯定的な値である閾値スコアTとマッチする又は満足するいずれかである問い合わせ配列内に短いワードの長さWを識別することによって、第1の識別する高い得点配列ペアー(high scoring sequence pair)(HSPs)を含む。Tは、隣接ワードスコア閾値として言及される。これらの最初の隣接ワード・ヒットは、それらを含むHSPsを見つけるために調査を開始するための種として振る舞う。ワード・ヒットは、累積の整列スコアが増加する限り、各配列に沿って両方向に伸長される。各方向のワード・ヒットの伸長は、累積のスコアがその最大達成される値から両Xによって減少し;1又はそれ以上の否定的スコア残余整列の累積の故に、累積のスコアがゼロ若しくはゼロ未満に落ち;、或いは各配列の末端が達したときに中止される。BLASTアルゴリズム・パラメータW、T及びXは、整列の感度及び速度を決定する。BLASTプログラムは、11のワード長(W)、50のBLOSUM62スコア・マトリックス整列、10の期待値、M=5、N=4及び両方のストランドの比較をデフォルトとして使用する。
【0072】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似度の統計的分析を実行する。BLASTアルゴリズムによって提供される類似度の1つの測定は、最小の合計可能性(P(N))であり、それは、偶然によって2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列の間で起こる一致によって可能性の指示を提供する。例えば、第1の配列と第2の配列の比較における最小の合計可能性が約1より少ない、好ましくは約0.1より低い、より好ましくは約0.01より低い、及び最も好ましくは約0.001より低い場合に、配列は他の配列に類似していると見なされる。
【0073】
プライマー及びプローブ
本願発明のポリヌクレオチドは、プライマー又はプローブを含み且つプライマー(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーとして、代替の増幅反応のプライマーとして)、又は例えば放射活性若しくは非放射活性ラベルを使用し慣用手段によって露出ラベルでラベルされたプローブとして使用されうり、又は該ポリヌクレオチドは、ベクター内にクローニングされうる。そのようなプライマー、プローブ及び他のフラグメントは、少なくとも15例えば少なくとも20、25、30又は40ヌクレオチド長である。それらは、典型的に40、50、60、70、100、150、200又は300ヌクレオチド長まで、又は配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6のコード配列以外はなお少数のヌクレオチド(例えば5若しくは10ヌクレオチド)まである
【0074】
一般に、プライマーは、一度に望ましい核酸配列1つヌクレオチドのステップ・ワイズ製造を含む、合成手段によって生産される。自動化されたプロトコルを使用しこれを達成するための技術は、当業者に容易に利用可能である。より長いポリヌクレオチドは、組み換え手段を使用し(例えばPCRクローニング技術を使用し)一般に生成される。これは、クローンされるべきプロリル特異的エンドプロテアーゼの望ましい領域を増幅し、酵母、バクテリアの、植物、原核生物の若しくはかびの細胞、好ましくはアスペルギルス(Aspergillus)株から得られるmRNA、cDNA又はゲノムDNAと接触するプライマーをもたらし、望ましい領域の増幅のために適切な条件下でポリメラーゼ連鎖反応を実行し、該増幅されたフラグメントを単離し(例えば、アガローズ・ゲル上で反応混合物を精製することによって)、及び該増幅されたDNAを回収するために、一対のプライマー(典型的に約15−30ヌクレオチド)を作成することを含む。該プライマーは、該増幅されたDNAが適切なクローニング・ベクター中にクローンニングされうるように適切な制限酵素認識部位を含むために設計されうる。
【0075】
そのような技術は、本明細書で記載されたプロリル特異的エンドプロテアーゼ配列をコードするポリヌクレオチドの全て又は部分を得るために使用されうる。イントロン、プロモーター及び終端部領域は、本願発明の範囲内であり且つかび、酵母、バクテリア、植物又は原核生物からのゲノムDNAで開始する、類似の方法(例えば、組み換え手段、PCR又はクローニング技術によって)でまた得られうる。
【0076】
ポリヌクレオチド又はプライマーは、露出ラベルを運びうる。適切なラベルは、放射線同位体例えば32P又は35S、酵素ラベル又は他の蛋白質ラベル例えばビオチンを含む。そのようなラベルは、本願発明のポリヌクレオチド又はプライマーに添加されうり、且つ当業者に知られた技術を使用し検出されうる。
【0077】
ラベル化或いは非ラベル化された、ポリヌクレオチド又はプライマー(すなわちそれらのフラグメント)は、かびのサンプルでプロリル特異的エンドプロテアーゼ又はそれらの変種の検出し又は配列するための核酸ベースの試験に使用されうる。そのような検出試験は、ハイブリダイズ条件下で本願発明のポリヌクレオチド又はプライマーを含むプローブとの接触へ興味のあるDNAを含む疑わしいかびのサンプルをもたらすこと、及びサンプルでのプローブ及び核酸の間で形成される任意の二重を検出することを一般に含む。検出は、PCRのような技術を使用し、又は固体担体上のプローブを固定化し、該プローブにハイブリダイズ化されない、サンプル中の任意の核酸を除き、そして該プローブにハイブリダイズ化される任意の核酸を検出することによって達成されうる。あるいは、サンプル核酸は固体担体上で固定化され、プローブはハイブリダイズ化され、そして任意の非結合されたプローブの除去後にそのような担体に結合されたプローブの量が検出されうる。
【0078】
本願発明のプローブは、適切な容器中にテスト・キットの形で慣用的にパッケージ化されうる。そのようなキットでは、プローブは、キットが設計されるところのアッセイ・フォーマットがそのような結合を要求するところの固体担体に結合されうる。該キットは、プローブされるべきサンプルを処理し、プローブをサンプル中の核酸にハイブリダイズするための適切な試薬、コントロール試薬、指示書などをまた含みうる。本願発明のプローブ及びポリヌクレオチドは、マイクロアッセイでまた使用されうる。
【0079】
好ましくは、本願発明のポリヌクレオチドは、ポリペプチドとして同じ生物体例えばかび、特に属アスペルギルス(Aspergillus)のかびから得られる。
【0080】
本願発明のポリヌクレオチドは、プロリル特異的エンドプロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードするところの配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6の配列の変種をまた含む。変種は、付加、置換及び/又は欠失によって形成されうる。従って、そのような配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6のコード配列の変種は、プロリンのカルボキシ末端でポリペプチド鎖を消化する能力を有するポリヌクレオチドをコードしうる。
【0081】
ポリヌクレオチドの生産
配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6と100%同一性を有しないが本願発明の範囲内であるポリヌクレオチドは、多くの方法で得られうる。従って、本明細書中で記載されたプロリル特異的エンドプロテアーゼ配列の変種は、生物体例えば本願発明のポリペプチドの起源として記載されたそれらの範囲から作成されたゲノムDNAライブラリーをプローブすることによって例えば得られうる。さらに、他のかびの、植物又は原核相同体のプロリル特異的エンドプロテアーゼが得られうり、且つそのようなそれらの相同体及びフラグメントは、配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6に一般にハイブリダイズすることが可能である。そのような配列は、他の種からcDNAライブラリー又はゲノムライブラリーをプローブし、そして低い、中程度、高いストリジェンシーの条件下(先に記載したように)で配列ID No.1の全て又は部分を含むプローブでそのようなライブラリーをプローブすることによって得られうる。配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6の全て又は部分を含む核酸プローブは、他の種、例えば本願発明のポリペプチドの起源として記載されたそれらからのcDNA又はゲノムライブラリーをプローブするために使用されうる。
【0082】
種相同体は、縮重PCRを使用しまた得られうり、それは、保存アミノ酸配列をコードする、変種及び相同体内にターゲット配列に設計されたプライマーを使用する。該プライマーは、1又はそれ以上の縮重位置を含みうり、かつ知られた配列に対してシングル配列プライマーを有する配列をクローニングするために使用されるそれらよりも低いストリジェンシィー条件で使用される。
【0083】
あるいは、そのようなポリヌクレオチドは、プロリル特異的エンドプロテアーゼ配列又はそれらの変種のサイト・ダイレクティッド突然変異誘発(site directed mutagenesis)によって得られうる。これは、例えばポリヌクレオチド配列が発現されているところの特定のホスト宿主のためのコドン・プリフェレンスを最適化するために、配列に対するサイレント・コドン変化が要求されるところで有用であり得る。他の配列変化は、制限酵素認識部位を導入するために、又はポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドの特性若しくは機能を変更するために作成されうる。
【0084】
本願発明は、本願発明のポリヌクレオチド及びその補体を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含む。
【0085】
本願発明は、上記に記載された本願発明のポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドをまた提供する。そのようなポリヌクレオチドは、本願発明のポリペプチドの組み換え生産のための配列として有用である故に、それらにとって配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6の配列にハイブリダイズすることが可能であることは必要ではなく、このことは一般に望ましい程度である。一方、そのようなポリヌクレオチドは必要であれば上記に記載されたように、標識され、使用され、かつ作成されうる。
【0086】
組み換えポリヌクレオチド
本願発明は、クローニング及び発現ベクターを含む、本願発明のポリヌクレオチドを含むベクター、及び他の観点において、そのようなベクターを適切な宿主細胞例えば本願発明のポリヌクレオチドの発現又は本願発明の配列によってコードされたポリヌクレオチドの発現が起こるところの条件下で成長し、形質転換し又はトランスフェクションする方法をまた提供する。ポリヌクレオチドが宿主細胞のゲノムに対して異種であるところの本願発明のポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞がまた提供される。用語「異種」は、宿主細胞に関して、ポリヌクレオチドが宿主細胞のゲノム内で天然に生じない又はポリヌクレオチドがその細胞によって天然に生産されることを通常意味する。好ましくは、宿主細胞は、例えばクルイベロミセス(Kluyveromyces)属若しくはサッカロミセス(Saccharomyces)属酵母細胞、又は例えばアスペルギルス(Aspergillus)属の糸状菌細胞である。
【0087】
本願発明のポリヌクレオチドは、組み換え複製可能なベクター例えばクローニング又は発現ベクター内に取り込まれうる。ベクターは、互換可能な宿主細胞内に核酸を複製するために使用されうる。従って、さらなる実施態様では、本願発明は、本願発明のポリヌクレオチドを複製ベクター内に導入し、該ベクターを互換可能な宿主細胞を導入し、そして該ベクターの複製をもたらす条件下で該宿主細胞を培養するによって本願発明のポリヌクレオチドを作成する方法を提供する。該ベクターは、宿主細胞から回収されうる。適切な宿主細胞は、発現ベクターに関連して下記に記載される。
【0088】
ベクター
本願発明の発現カセットが挿入されるところのベクターは、組み換えDNA手続きに慣用的にさらされうる任意のベクターでありうり、かつ該ベクターの選択は、それが導入されるべきところの宿主細胞にしばしば依存する。従って、該ベクターは自発的に複製ベクターすなわち余分の染色体エンティティとして存在するところのベクターでありうり、それの複製は、染色体複製例えばプラスミドとして独立している。あるいは、宿主細胞内に導入される場合、該ベクターは、宿主細胞ゲノム内に一体化され且つそれが一体化されるところのクロモゾームととともに複製するところの1つでありうる。
【0089】
好ましくは、本願発明のポリヌクレオチドがベクター内にある場合、それは宿主細胞(すなわち該ベクターは発現ベクターである)によってコード配列の発現を提供することが可能であるところの調節塩基配列に動作可能に結合される。用語「動作可能に結合」は、記載されたコンポーネントがそれらがそれらの意図された方法で機能することを可能にする関係であるところの並列を言及する。コード配列に「動作可能に結合」した調節塩基配列例えばプロモーター、エンハンサー又は他の発現制御シグナルは、コード配列の発現が制御配列に互換可能な条件下で達成されるような方法で配置される。
【0090】
ベクターは、例えばプラスミド、コスミド、ウィルス又はファージ・ベクターの場合、複製の起源、任意的にポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター及び任意的にエンハンサー及び/又はプロモーターの調節因子を提供されうる。末端配列は、ポリアデニレーション配列でありうるように存在されうる。ベクターは1又はそれ以上の選択可能なマーカー遺伝子例えばバクテリアのプラスミドの場合のアンピシリン耐性遺伝子又は哺乳類のベクターのネオマイシン耐性遺伝子を含みうる。ベクターは、例えばRNAの生産のためにインビトロで使用されうり、又は宿主細胞にトランスフェクションするために又は形質転換するために使用されうる。
【0091】
ポリペプチドをコードするDNA配列は、該DNA配列が宿主細胞内にDNA配列の発現を指示することが可能である発現シグナルに動作可能に結合されるところの発現構築物の一部として適切な宿主内に好ましくは導入される。発現構築物で適切な宿主の形質転換のために、当業者に周知である形質転換手法が利用可能である。発現構築物は、選択可能なマーカーを運ぶベクターの一部として宿主の形質転換のために使用されうり、又は該発現構築物は選択可能なマーカーを運ぶベクターとともに個別の分子として同時形質転換される。該ベクターは、1又はそれ以上の選択可能なマーカー遺伝子を含みうる。
【0092】
好ましい選択可能なマーカーは、宿主細胞内の欠陥を補完する又は薬剤に耐性を与えるところのそれらを含むがそれらに制限されない。それらは、例えばほとんどの糸状菌及び酵母例えばアセトアミダーゼ遺伝子若しくはcDNA(amDs、niaD、facA遺伝子、又はA. nidulans、A. oryzae若しくはA. nigerからのcDNA)、又はG418、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、カナマイシン、フレオマイシン又はベノミル耐性(benA)のような抗生物質に対する耐性を提供する遺伝子の形質転換のために使用されうる多用途のマーカー遺伝子を含む。あるいは、対応する突然変異宿主株例えば(S. cerevisiae又は他の酵母からの相同遺伝子からの)URA3、(A. nidulans又はA. nigerからの)pyrG又はpyrA、(A. nidulans又はA. nigerからの)argB、又はtrpCを要求するところの栄養素要求性マーカーのような特定の選択マーカーが使用されうる。好ましい実施態様では、選択マーカーは、選択マーカー遺伝子のないポリペプチドを生産することか可能である形質転換された宿主細胞を得るために発現構築物の導入後に該形質転換された宿主細胞から削除される。
【0093】
他のマーカーは、ATPシンセターゼ・サブユニット9(oliC)、オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ(pvrA)、細菌のG418耐性遺伝子(酵母において有効、しかし糸状菌に有効でない)、アンピシリン耐性遺伝子(大腸菌)、ネオマイシン耐性遺伝子(バチルス菌)及びグルクロニダーゼ(GUS)をコードする大腸菌uidA遺伝子を含む。ベクターは、例えばRNAの生産のため又は宿主細胞をトランスフェクションする若しくは形質転換するために、インビトロで使用されうる。
【0094】
ほとんどの糸状菌及び酵母にとって、発現構成物は、安定な形質転換体を得るために宿主細胞のゲノム内に好ましくは組み入れられる。しかしながら、ある酵母にとって、発現構成物が安定で且つ高いレベルの発現のために組み入れられうるところの適切なエピソームのベクターシステムがまた利用可能である。それらの例は、サッカロミセス(Saccaromyces)及びクルイベロミセス(Kluyveromyces)のそれぞれCEN及びpkD1プラスミド、2μm由来のベクター、又はAMA配列(例えば、アスペルギルス(Aspergillus)からのAMA1)を含むベクターを含む。発現構成物が宿主細胞ゲノム内に組み入れられる場合、該構成物は、ゲノム内の座にランダムで又はターゲット座が高く発現された遺伝子を好ましくは含む場合に、相同性組み換えを使用し所定のターゲット座のいずれかに組み入れられる。高く発現された遺伝子は、mRNAが例えば誘導された条件下で総細胞のmRNAの少なくも0.01%(w/w)を占めうるところの遺伝子、または代替的に遺伝子生産物が総細胞の蛋白質の少なくとも0.2%(w/w)を占めうることができる若しくは分泌された遺伝子生成物の場合少なくとも0.05g/lのレベルまで分泌されうるところの遺伝子である。
【0095】
所定の宿主細胞の発現構成物は、第1の観点のポリペプチドをコードする配列のコードストランドに比例して5−末端から3−末端へ連続した順序でお互いに動作可能に結合された次のエレメントを通常含む:(1)所定の宿主細胞内のポリペプチドをコードするDNA配列の転写を指示することが可能なプロモーター配列、(2)好ましくは、5−翻訳されていない領域(リーダー)、(3)任意的に、培養培地内で所定の宿主細胞からポリペプチドの分泌を指示することが可能なシグナル配列、(4)ポリペプチドの成熟した及び好ましくは活性の形をコードするDNA配列、及び好ましくはまた(5)ポリペプチドをコードするDNA配列の転写ダウンストリームを終結することが可能である転写終結領域(ターミネーター)。
【0096】
ポリペプチドをコードするDNA配列のダウンストリームはターミネーターとしてまた言及され、発現構成物は、1又はそれ以上の翻訳終末部位を含む3−翻訳されていない領域を好ましくは含む。ターミネーターの起源は、それほど重要ではない。ターミネーターは、ポリペプチドをコードするDNA配列に例えば由来しうる。しかしながら、好ましくは、酵母ターミネーターは酵母宿主細胞内で使用され、且つ糸状菌のターミネーターは、糸状菌宿主細胞内で使用される。より好ましくは、ターミネーターは、ポリヌクレオチドをコードするDNA配列が発現されるところの宿主細胞に内生的である。
【0097】
本願発明のポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドの促進された発現は、異種規制領域例えばプロモーター、シグナル配列及びターミネーター領域の選択によってまた達成されうり、それは発現及び必要ならば、選択された発現宿主からの利害の蛋白質の分泌レベルを増加するために、及び/又は本願発明のポリペプチドの発現の誘導可能な制御を提供するために役立つ。
【0098】
本願発明のポリペプチドをコードする遺伝子に由来するプロモーターは別として、他のプロモーターは、本願発明のポリペプチドの発現を指示するために使用されうる。該プロモーターは、望ましい発現宿主内で本願発明のポリペプチドの発現を指示する際にその効率性のために選択されうる。
【0099】
プロモーター/エンハンサー及び他の発現制御シグナルは、発現ベクターが設計されるところの宿主細胞に互換可能であるように選択されうる。例えば、原核細胞のプロモーター、特に大腸菌株内で使用に適切なそれらが使用されうる。本願発明のポリペプチドの発現が哺乳類の細胞で実行される場合、哺乳類のプロモーターが使用されうる、組織特異的プロモーター、例えば肝細胞の細胞特異的プロモーターがまた使用されうる。ウィルスのプロモーター、例えばモロネイ(Moloney)マウス白血病ウィルの長い末端反復(MMLV LTR)、ロウス(rous)肉腫ウィルス(RSV)LTRプロモーター、SV40プロモーター、ヒト・サイトメガロウイルス(CMV)IEプロモーター、単純ヘルペス・ウイルス・プロモーター又はアデノウィルスプロモーターがまた使用されうる。
【0100】
適切な酵母プロモーターは、S. cerevisiae GAL4並びにADHプロモーター及びS. pombe nmt1並びにadhプロモーターを含む。哺乳類のプロモーターは、重金属例えばカドミウムに応答して誘導されうるところのメタロチオネイン・プロモーターを含む。ウィルスのプロモーター例えばSV40ラージT抗原プロモーター又はアデノウィルスプロモーターがまた使用されうる。全てのこれらのプロモーターは、当業者にすでに利用可能である。
【0101】
哺乳類のプロモーター例えば竈−アクチンプロモーターが使用されうる。組織特異的プロモーター、特に内皮のまたは神経の細胞特異的プロモーター(例えば、DDAHI及びDDAHIIプロモーター)が、特に好ましい。ウィルスのプロモーター、例えばモロネイ(Moloney)マウス白血病ウィルの長い末端反復(MMLV LTR)、ロウス(rous)肉腫ウィルス(RSV)LTRプロモーター、SV40プロモーター、ヒト・サイトメガロウイルス(CMV)IEプロモーター、アデノウィルス、HSVプロモーター(例えばHSV IEプロモーター)、又はHPVプロモーター、特にHPV上流規制領域(URR)がまた使用されうる。ウィルスのプロモーターが、当業者にすでに利用可能である。
【0102】
本願発明の宿主細胞内で転写を指示することが可能である種々のプロモーターが、使用されうる。好ましくは、プロモーター配列は、前に定義されたように高く発現された遺伝子から得られる。プロモーターが好ましく得られる及び/又は組み入れのために好ましい所定のターゲット座において発現構築物が含まれるところの高く発現された遺伝子の例は、解糖酵素例えばトリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、グリセルアルデヒドリン酸脱水素酵素(GAPDH)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ピルビン酸キナーゼ(PYK)、アルコール脱水素酵素(ADH)、並びにアミラーゼ、グルコアミラーゼ、プロテアーゼ、キシリナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、竈−ガラクトシダーゼ、アルコール(メタノール)オキシダーゼ、伸長因子及びリボソーム蛋白質をコードする遺伝子を含むがこれらに制限されない。適切な高く発現された遺伝子の特定の例は、例えばクルイベロミセス(Kluyveromyces)種からのLAC4遺伝子、Hansenula及びPichiaそれぞれからのメタノールオキシダーゼ遺伝子(AOX及びMOX)、A. niger及びA. awamoriからのグルコアミラーゼ(glaA)遺伝子、A. oryzae TAKA−アミラーゼ遺伝子、A. nidulans gpdA遺伝子、及びT. reeseiセロビオヒドロラーゼ遺伝子を含む。
【0103】
かびの発現宿主で使用のために好ましいところの、強い構造の及び/又は誘導可能なプロモーターの例は、キシリナーゼ(xlnA)、フィターゼ、ATP−シンセターゼ・サブユニット 9(oliC)、トリオースリン酸イソメラーゼ(tpi)、アルコール脱水素酵素(AdhA)、アミラーゼ(amy)、アミログルコシダーゼ(glaA遺伝子からのAG)、アセトアミダーゼ(amdS)及びグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(gpd)プロモーターのかびの遺伝子から得られうるところのそれらである。
【0104】
使用されうる強い酵母プロモーターの例は、アルコール脱水素酵素(ADH)、ラクターゼ、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ及びトリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子から得られうるそれらを含む。
【0105】
使用されうる強い細菌性プロモーターの例は、アミラーゼ及びSPo2プロモーター、並びに細胞外プロテアーゼ遺伝子からのプロモーターを含む。
【0106】
使用されうる植物細胞の適切なプロモーターは、ナパリンシンターゼ(nos)、オクトピンシンターゼ(ocs)、マンノピンシンターゼ(mas)、リブロース小サブユニット(rubisco ssu)、ヒストン、米アクチン、ファゼオリン、カリフラワー・モザイク・ウイルス(CMV)35S並びに19S、及びシルコ(circo)ウィルス・プロモーターを含む。
【0107】
ベクターは、真核遺伝子配列好ましくは哺乳類の遺伝子配列又はウィルスの遺伝子配列からのそれらに同種の配列を含むところのRNAを生じるポリヌクレオチドの側面にある配列をさらに含む。これは、同種の組み換えによって真核細胞又はウィルスのゲノム内に本願発明のポリヌクレオチドの導入を可能にする。特に、ウィルス配列に挟まれた発現カセットを含むプラスミドベクターは、本願発明のポリヌクレオチドを哺乳類の細胞に運ぶために適切なウィルスのベクターを用意するために使用されうる。適切なウィルスのベクターの他の例は、単純ヘルペスウィルスベクター、及びレンチウイルス、アデノウィルス、アデノ関連ウィルス及びHPVウィルス(例えばHPV−16またはHPV−18)を含むレトロウィルスを含む。これらのウィルスを使用する遺伝子導入技術は、当業者に知られている。レトロウィルスは例えば、宿主ゲノム内にアンチセンスRNAを生ずるポリヌクレオチドを安定に組み入れるために使用されうる。複製欠陥のアデノウィルスベクターはそれに反して、エピソーム性を維持し、それ故に一時的発現を可能にする。
【0108】
ベクターは、アンチセンスRNAの生産を提供するためにアンチセンス方向に方向付けられた本願発明のポリヌクレオチドを含みうる。これは、必要に応じて、ポリヌクレオチドの発現のレベルを減少するために使用されうる。
【0109】
宿主細胞及び発現
さらなる観点において、本願発明は、ポリペプチドをコードするコード配列のベクターによって発現するための適切な条件下で、上記で記載されたように発現ベクターとともに、形質転換された又はトランスフェクションされた宿主細胞を培養し、そして該発現されたポリペプチドを回収することを含む本願発明のポリペプチドを調製するための工程を提供する。本願発明のポリヌクレオチドは、組み換え再生可能なベクター例えば発現ベクター内に組み入れられうる。該ベクターは、互換可能な宿主細胞内に核酸を複製するために使用されうる。従って、さらなる実施態様では、本願発明は、本願発明のポリヌクレオチドを複製可能なベクター内に導入し、該ベクターを互換可能な宿主細胞内に導入し、そして該ベクターの複製を生じるところの条件下で該宿主細胞を培養することによって、本願発明のポリヌクレオチドを作成するための方法を提供する。該ベクターは、宿主細胞から回収されうる。適切な宿主細胞は、細菌例えば大腸菌、酵母、哺乳類の細胞株、及び他の真核細胞株例えばSf9細胞のような昆虫細胞、及び(例えば糸状性)かびの細胞を含む。
【0110】
好ましくは、ポリペプチドは、発現構成物でポリペプチドの完成した形をコードするDNA配列がシグナル配列をコードするDNA配列に動作可能に結合されるところの場合に分泌された蛋白質として生産される。分泌された蛋白質をコードする遺伝子が野生型株内にシグナル配列を有するところの場合、好ましくは使用されるシグナル配列は、ポリペプチドをコードするDNA配列に由来(同種)である。あるいは、シグナル配列は、ポリペプチドをコードするDNA配列に異質(異種)であり、その場合、シグナル配列は、DNA配列が発現されるところの宿主細胞に好ましくは内生的である。酵母宿主細胞の適切なシグナル配列の例は、酵母MFアルファ遺伝子由来のシグナル配列である。同様に、糸状菌の宿主細胞の適切なシグナル配列は、例えば糸状菌のアミログルコシダーゼ(AG)遺伝子(例えば、A. niger glaA遺伝子)由来のシグナル配列である。このシグナル配列は、アミログルコシダーゼ((グルコ)アミラーゼとも呼ばれる)プロモーターそれ自身と組み合わせて、並びに他のプロモーターと組み合わせて使用されうる。ハイブリッドシグナル配列は、本願発明の脈絡の中でまた使用されうる。
【0111】
好ましい異種の分泌リーダー配列は、かびのアミログルコシダーゼ(AG)遺伝子(glaA−いずれも18及び24アミノ酸バージョン、例えばAspergillusから)、MFアルファ遺伝子(酵母、例えばサッカロミセス(Saccharomyces)及びKluveromyces)又は痾−アミラーゼ遺伝子(Baccilus)由来のそれらである。
【0112】
ベクターは、本願発明のポリペプチドの発現を提供するために、上記に記載されたように適切な宿主細胞内に形質転換された又はトランスフェクションされうる。この工程は、ポリペプチドの発現に適切な条件下で上記に記載されたように、発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養し、そして任意的に該発現されたポリペプチドを回収することを含む。
【0113】
従って、本願発明のさらなる観点は、本願発明のポリヌクレオチド若しくはベクターで形質転換された又はトランスフェクションされた、或いはそれらを含む宿主細胞を提供する。好ましくは、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの複製及び発現を可能にするところのベクターで運ばれる。該細胞は、前記ベクターに互換可能であるように選択され、かつ例えば原核の(例えば細菌の)又は真核の、かびの、酵母の若しくは植物の細胞でありうる。
【0114】
本願発明は、ポリヌクレオチドをコードするDNA配列の組み換え発現の手段によって本願発明のポリペプチドの生産の工程を含む。この目的のために、本願発明のDNA配列は、適切な同種の又は異種の宿主細胞内にポリペプチドの経済的な生産を可能にするために、遺伝子増幅及び/又は発現シグナル例えば、プロモーター、分泌シグナル配列の交換のために使用されうる。同種の宿主細胞は、同一の種であるところの又はDNA配列が由来するところの種と同一の種内の変種であるところの宿主細胞として本明細書中に定義される。
【0115】
適切な宿主細胞は、好ましくは原核微生物例えば細菌の、又はより好ましくは真核の生物、例えば、菌類、例えば酵母又は糸状菌、或いは植物の細胞である。一般に酵母細胞は、糸状菌細胞を超えて好まれ、なぜならばそれらは複製することが容易である。しかしながら、ある蛋白質は、酵母から不十分に分泌され又はある場合に適切に処理されない(酵母でのハイパーグリコシレーション)のいずれかである。これらの例では、糸状菌宿主生物が選択されるべきである。
【0116】
バチルス(Bacillus)属からの細菌は、培養培地内に蛋白質を分泌するためのそれらの能力の故に、異種の宿主として非常に適切である。宿主として適切な他の細菌は、ストレプトミセス(Streptomyces)属及びシュードモナス(Pseudomonas)属からのそれらである。ポリペプチドをコードするDNA配列の発現のための好ましい酵母宿主細胞は、サッカロミセス(Saccharomyces)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ハンセヌラ(Hansenula)、ピッチア(Pichia)、ヤロビィア(Yarrowia)、又はシゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyses)属の一つである。より好ましくは、酵母宿主細胞は、Saccharomyces cerevisiae、Kluyveromyces lactis(Kluyveromyces marxianus var. lactisとしてまた知られている)、Hansenula polymorpha、Pichia pastoris、Yarrowia lipolytica、及びSchizosaccharomyses pombeの種からなる群から選択される。
【0117】
しかしながら、ポリペプチドをコードするDNA配列の発現の最も好ましいものは、糸状菌宿主細胞である。好ましい糸状菌宿主細胞は、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、フサリウム(Fusarium)、ディスポロトリクム(Disporotrichum)、ペニシリウム(Penicillium)、アクレモニウム(Acremonium)、ニューロスポラ(Neurospora)、サーモアスカス(Thermoascus)、ミセリオフトラ(Myceliophtora)、スポロトリクム(Sporotrichum)、チエラビア(Thielavia)及びタラロミセス(Talaromyces)の属から成る群から選択される。より好ましくは、糸状菌宿主細胞は、Aspergillus oryzae、Aspergillus sojae若しくはAspergillus nidulansの種、またはAspergillus niger群(Raper及びFennell、The Genus Aspergillus、The Williams & Wilkins Company、ボルティモア、第293−344頁、1965年によって定義されるような)からの種である。これらは、Aspergillus niger、Aspergillus awamori、Aspergillus tubigensis、Aspergillus aculeatus、Aspergillus foetidus、Aspergillus nidulans、Aspergillus japonicus、Aspergillus oryzae及びAspergillus ficuum、並びにTrichoderma reesei、Fusarium graminearum、Penicillium chrysogenum、Acremonium alabamense、Neurospora crassa、Myceliophtora thermophilum、Sporotrichum cellulophilum、Disporotrichum dimorphosporum及びThielavia terrestrisの種のそれらをまた含むがそれらに制限されるものではない。
【0118】
本願発明の範囲内の好ましい発現宿主の例は、菌類例えばAspergillus種(特に欧州公開特許公報184,438号、及び欧州公開特許公報284,603号に記載されているそれら)及びTrichoderma種;細菌例えばBacillus種(特に欧州公開特許公報134,048号、及び欧州公開特許公報253,455号に記載されているそれら)、特にBacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Bacillus amyloiquefaciens、Pseudomonas種、並びに酵母例えばKluyveromyces種(特に欧州公開特許公報096,430号例えばKluyveromyces lactis、及び欧州公開特許公報301,670号に記載されているそれら)及びSaccharomyces種例えばSaccharomyces cerevisiaeである。
【0119】
本願発明に従う宿主細胞は植物細胞を含み、そしてそれ故に本願発明はトランスジェニック生物例えば植物及びそれらの部分に及び、それらは本願発明の1つ又はそれ以上の細胞を含む。該細胞は、本願発明のポリペプチドを異種的に発現しうり、又は本願発明のポリヌクレオチドの1つ又はそれ以上を異種的に含みうる。それ故に、トランスジェニック(すなわち遺伝子的に修飾された)植物は、本願発明のポリペプチドをコードする配列をそのゲノム内に挿入(典型的には安定に)しうる。植物細胞の形質転換は、公知の技術を使用し、例えばアグロバクテリウムツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)からのTi又はRiプラスミドを使用し実行されうる。従って、プラスミド(又はベクター)は、植物に感染するために必要な配列を含みうり、かつTi及び/又はRiプラスミドの誘導体が使用されうる。
【0120】
宿主細胞は、ポリペプチドを過剰発現しうり、及び過剰発現をエンジニアリングするための技術は周知であり且つ本願発明に使用されうる。従って、該宿主は、ポリヌクレオチドの2又はそれ以上のコピーを有しうる。
【0121】
あるいは、植物の一部分の直接感染例えば葉、根又は茎が達成することができる。この技術では、感染されるべき植物は、例えばカミソリで植物を切る、針で植物に穴を開ける又は研磨剤で植物を磨くことによって傷つけられうる。その後、該傷は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)で接種される。その後、植物又は植物部分は、適切な培養培地上で培養されうり、そして成長した植物に成長することを可能にされうる。遺伝子的に修飾された植物内に形質転換された細胞の再生は、周知の技術例えば抗生物質を使用し形質転換されたシュートを選択することによって及び適切な栄養素、植物ホルモンなどを含む培地上でシュートを継代培養することによって達成されうる。
【0122】
宿主細胞の培養及び組み換え生産
本願発明は、プロリル特異的エンドプロテアーゼを発現するために修飾される細胞又はそれらの変種をまた含む。そのような細胞は、一時の又は好ましくは安定に修飾されたより高い真核細胞系列例えば哺乳類の細胞又は昆虫細胞、より低い真核細胞例えば酵母及び糸状菌の細胞、または原核細胞例えば細菌の細胞を含む。
【0123】
細胞株内では例えばバキュロウイルス(baculovirus)発現システムのような膜上で一時的に発現されることは、本願発明のポリペプチドにとってまた可能である。本願発明に従い蛋白質を発現するために適用されるところのそのようなシステムは、本願発明の範囲内にまた含まれる。
【0124】
本願発明によると、本願発明のポリペプチドの生産は、微生物の発現宿主を培養することによって達成されうり、それは、慣用の栄養発酵培地で、本願発明の1つ又はそれ以上のポリヌクレオチドで形質転換される。
【0125】
本願発明に従う組み換え宿主細胞は、当業者に公知の手段を使用し培養されうる。プロモーター及び宿主細胞の各組み合わせにとって、ポリペプチドをコードするDNA配列の発現につながる培養条件が利用可能である。所望の細胞密度又はポリペプチドの力価に達した後に、該培養は中止され、そして該ポリペプチドは公知の手段を使用し回収される。
【0126】
発酵培地は、炭素源(例えば、グルコース、マルトース、モラセスなど)、窒素源(例えば、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウムなど)、有機窒素源(例えば、酵母エキス、麦芽エキス、ペプトンなど)及び無機栄養源(例えば、リン酸、マグネシウム、カリウム、亜鉛、鉄など)を含む公知の培養培地を含みうる。任意的に、(使用される発現構成物に依存する)誘導剤が、含まれ又はその後添加されうる。
【0127】
適切な培地の選択は、発現宿主の選択に基づき及び/又は発現構成物の調整要求に基づきうる。適切な培地は、当業者に周知である。該培地は、必要に応じて、他の潜在的に汚染する微生物にわたって形質転換された発現宿主を好む追加的な成分を含む。
【0128】
発酵は、0.5〜30日の期間にわたって実行されうる。発酵は、0℃〜45℃の範囲の温度で、及び例えば2から10までのpHで、バッチ、継続的な又はフェッド−バッチ工程でありうる。好ましい発酵条件は、20℃〜37℃の範囲内の温度、及び/又は3〜9のpHを含む。適切な条件は、発現宿主及び発現されるべき蛋白質の選択に基づいて通常選択される。
【0129】
発酵後、必要ならば、細胞は、遠心分離又は濾過の手段によって発酵培養液から除去されうる。発酵が中止した後又は細胞の除去後、本願発明のポリペプチドはその後回収されうり、及び必要に応じて慣用手段によって精製されそして単離される。本願発明のプロリル特異的エンドプロテアーゼは、かびの菌糸体から又はプロリル特異的エンドプロテアーゼが、培養されたかびの細胞によって放出されるところの培養液から精製されうる。
【0130】
好ましい実施態様では、ポリペプチドは、かびから、より好ましくはAspergillusから、最も好ましくはAspergillus nigerから得られる。
【0131】
修飾
本願発明のポリペプチドは、化学的に修飾、例えばポスト翻訳的に修飾されうる。例えば、それらは、グリコシル化され(1又はそれ以上の回数)又は修飾されたアミノ残基を含みうる。それらは、それらの精製を助けるためにヒスチジン残基の添加によって、又は細胞からの分泌を促進するためにシグナル配列の添加によってまた修飾されうる。ポリペプチドは、アミノ−又はカロボキシル−末端伸長例えばアミノ末端のメチオニン残基、約20−25残基までの小さいリンカーペプチド、又は精製を促進する小さい伸長例えばポリ−ヒスチジン・トラクト、抗原性エピトープ若しくは束縛領域を有しうる。
【0132】
本願発明のポリペプチドは、露出標識で標識されうる。露出標識は、ポリペプチドが検出されることを可能にする任意の適切な標識でありうる。適切な標識は放射性同位体、例えば125I、35S、酵素、抗体、ポリヌクレオチド及びリンカー例えばビオチンを含む。
【0133】
ポリペプチドは、非天然的に生じるアミノ酸を含むために、又はポリペプチドの安定性を増加するために修飾されうる。蛋白質又はペプチドが、合成手段によって生産される場合、そのようなアミノ酸は生産の間に導入されうる。蛋白質又はペプチドは、合成的に又は組み換え生産のいずれかに従いまた修飾されうる。
【0134】
本願発明のポリペプチドは、D−アミノ酸を使用しまた生産されうる。そのような場合、該アミノ酸は、N配向性へのCで逆配列でリンクされる。これは、そのような蛋白質又はペプチドを生産をするために当業者に慣用的である。
【0135】
多くの側鎖修飾は当業者に知られ、且つ本願発明の蛋白質又はペプチドの側鎖に作成されうる。そのような修飾は、アルデヒドと反応させ引き続きNaBH4で還元し、メチルアセトイミデートでアミド化又は無水酢酸でアシル化による還元的アルキル化によってアミノ酸の修飾を例えば含む。
【0136】
本願発明によって提供される配列は、「第2の世代」酵素の構成物の開始物質としてまた使用されうる。「第2の世代」プロリル特異的プロテアーゼは、突然変異生成技術(例えば、部位特異的突然変異誘発)によって変更された、プロリル特異的プロテアーゼであり、それは、野生型のプロリル特異的プロテアーゼ又は組み換えプロリル特異的プロテアーゼ(例えば、本願発明によって生成されたそれら)のそれらと異なる特性を有する。例えば、それらの温度又はpH最適、特異活性、基質アフィニティ又は温度安定性は、特定の工程で使用するためにより適切であるように変更されうる。
【0137】
本願発明のプロリル特異的エンドプロテアーゼの活性に必須の且つそれ故に好ましい置換に付されるアミノ酸は、当業者に公知の手段例えば部位特異的突然変異誘発又はアラニン−スキャンニング突然変異誘発に従い識別されうる。後者の技術では、突然変異は、分子の全ての残基で導入され、且つ結果として生じる変異分子が、分子の活性に不可欠であるアミノ酸残基を識別するために、生物活性(例えばプロリル特異的エンドプロテアーゼ活性)のために試験される。酵素基質相互作用の部位は、核磁気共鳴、結晶学又はフォト−アフィニティ標識付けのような技術によって決定されるように結晶の構造の分析によってまた決定されうる。
【0138】
酵母及び糸状菌宿主細胞の使用は、本願発明の組み換え発現生成物に対する最適の生物活性を比較するために必要とされうるように、そのようなポスト翻訳的修飾(例えば、蛋白質分解の処理、ミリスチレーション(myristilation)、グルコシル化、トランケーション(truncation)、及びチロシン、セリン又はスレオニン・リン酸化)を提供することを期待される。
【0139】
調製
本願発明のポリペプチドは、単離された形でありうる。ポリペプチドは、ポリペプチドの意図される目的に干渉せず且つ単離されたとなお見なされるキャリヤー又は希釈剤と混合されうると理解される。本願発明のポリペプチドは、実質的に精製された形でまたありうり、その場合、本願発明のポリペプチドである調製物内で蛋白質の70%より上、80%、90%、95%、98%又は99%より上での調製品内のポリペプチドを一般に含む。
【0140】
本願発明のポリペプチドは、それらがそれらの天然の細胞の環境外であるような形で用意されうる。従って、それらは、上記に記載されたように実質的に単離された又は精製されうり、またはそれらが天然に生じないところの細胞例えば他のかびの種、動物、植物又は細菌の細胞内にありうる。
【0141】
本願発明は、飲料の調製でプロリル特異的エンドプロテアーゼの使用にまた関連する。プロリル特異的エンドプロテアーゼは、ビール、ワイン又はフルーツジュースの調製で好ましくは使用される。本願発明に従う方法に従いプロリル特異的エンドプロテアーゼの添加によって、濁りの減少または防止が達成される。これらのプロリル特異的エンドプロテアーゼを添加することによって、新しい飲料が得られる。従って、本願発明は、本願発明に従う方法によって得られうる飲料にまた関連する、これらの飲料は、本願発明に従う方法によって得られうる例えばビール、ワイン及びフルーツジュースを含む。
【0142】
本願発明に従う方法によって得られうる飲料の利点は、これら飲料が高含有量の抗酸化剤を有することである。ポリフェノールは抗酸化剤である。ビールは、濁りの形成を防止するためにポリフェノール除去剤で通常処理され、そして結果として、得られるビールは低い抗酸化剤活性を有する。同じことが、ポリフェノール除去剤で処理された他の飲料について同じことがいえる。本願発明に従う方法により得られうるビールは、より高い内生の抗酸化活性を有する。抗酸化は健康増進成分としてみられる故に、本願発明に従う方法により得られうる飲料は、ポリフェノール除去剤例えばPVPPで調製される飲料の同一の型よりもより健康である飲料としてみなされうる。該方法により得られうるフルーツジュースの色は、ポリフェノールの除去後に得られうるフルーツジュースの色よりも退色されない又はより少なく退色されることが本願発明に従う方法の利点である。本願発明に従う方法により得られうるワイン及びフルーツジュースは、ベントナイト又は類似の化合物が使用されるところの方法によって得られる飲料に比較して改善された香り及び風味を有し、それ故にベントナイトは蛋白質だけでなく香り及び/又は風味成分をも除去する。
【実施例】
【0143】
実施例及び比較実験
材料
プロリル特異的エンドプロテアーゼ酵素(エンドプロテアーゼ)
Aspergillus niger G306が、2001年9月10日にCBS(CBS109712)に預託された。A. niger G306は、本願発明に従うプロリル特異的エンドプロテアーゼをコードする遺伝子を含む。この微生物から得られる遺伝子又はcDNAは、公知の方法を使用し、任意のAspergillus niger宿主細胞内でクローニングされそして発現されうる。
【0144】
次のサンプルが使用される。
1)「エンドプロテアーゼA」、プロリル特異的エンドプロテアーゼが、ビールの実験で使用された。該試料は、プロリル特異的エンドプロテアーゼコードする遺伝子を含むAspergillus niger株の発酵後に得られる発酵培養液の限外濾過後に得られる限外濾過濃縮物であった。該エンドプロテアーゼAサンプルのプロリル特異的活性は、下記方法の項で記載されるように決定され、5.06U/mlであった。蛋白質濃縮物は、90%よりも高い純度でプロリル特異的エンドプロテアーゼのサンプルの特異的活性に基づいて、50g/lであると測定された。
2)「エンドプロテアーゼB」、プロリル特異的エンドプロテアーゼが、ワインの実験で使用された。該試料は、カラム上に精製後に得られ且つ6.0U/mlの活性を有した。
【0145】
パパイン
コルプリン(collupulin)(DSM(フランス)から入手可能な液体パパイン調整品)が、パパインの実験のために使用された。該活性は、5280 NF/mgである。1ユニットNFは、pH6.0で1時間あたり溶性のチロシンの1マイクログラム当量を生産するためにカゼインの加水分解を触媒するパパイン活性の量である。該パパイン試料の該ロテイン濃が測定され、それは、119g/l(ローリー法)である。
【0146】
ポリビニルポリピロリドン(PVPP)
使用されるPVPPは、「Polyclar AT」という名で商業的に入手可能な非水溶性PVPPであった。
【0147】
ビール
「Les Trosi Brasseus」(リール、フランス)からのモルトビール(ピルスナー タイプ)が、ビールで行われる全ての実験に使用された。このビールのアルコールパーセントは5.2%(容量/容量)であり、且つpHは4.4であった。この特定のビールは、他の商業的に利用可能なビールと比較して、冷やすことでこのビール内に測定できる比較的高い量の濁りの故に選択された。該ビールは、ローリー方法によって測定された場合、0.9g/lの蛋白質濃度を有した。
【0148】
白ワイン
白ソービニョン(Sauvignon)葡萄から調製された白ワインは、いかなる蛋白質除去の処理なしに使用された。ワイン調製の間のアルコール発酵は、ラレマンド(Lallemand)からの選択された酵母VL3で行われた。ワインのオエノロジック(oenologic)は、次の結果を与えた。
【0149】
【表1】

【0150】
方法
プロリル特異的エンドプロテアーゼ活性を決定するための分光学的方法
基質溶液は、40%ジオキサンを含む0.1Mクエン酸/0.2Mリン酸二ナトリウムバッファーpH5.0中で作成されたN−カルボベンゾイル−グリシン−プロリン−p−ニトロアニリド(Z−Gly−Pro−pNA;分子量426.43;Bachem社)の2mM溶液である。
【0151】
バッファーpH5.0の1mLまで、基質溶液の250μlが添加され、引き続き酵素溶液の100μlが添加された(酵素溶液のより大きい又はより小さい容積量が、バッファー溶液のために補正されるべきである)。該反応混合物は37℃で培養され、そしてDNAの放出は410nmで吸収増加を測定することによって引き続き行われた。
【0152】
活性定義:1ユニットは、下記に記載された反応条件下で1分間にZ−Gly−Pro−pNAから1μモルpNAを遊離する酵素活性である。濃度を計算するために、8,800M−1のモル吸光係数(E)が使用される。
【0153】
冷え濁り測定(Lucien Chaponによるアルコール/低温度テスト)
濁りの濁度は、Pfeuffer Gmbh(キッチンゲン、ドイツ)からのタンノメーター(Tannometer)と呼ばれる濁度計で、Pfeufferからの操作指示書に沿って測定された。非常に冷やされた下で、ビールは、沈殿したポリフェノール−蛋白質複合体によって生じる可逆の濁度を示す。アルコールの添加は該複合体の溶解性を減少し、従って濁度の形成を加速する。タンノメーターを校正するために、ホルマジン(formazine)標準溶液が、Jean de Clerk、「Cours de Brasseries」、第2版、(第595〜596頁)、ルーバン大学、ベルギーによって記載されたように調製された。標準は、ユニットEBCでの濁度であった。ビールは、濾紙を介して濾過することによって除炭酸された。冷え濁りテストを実行する直前に、エタノールが、6%(容量/容量)にアルコール含量を増加するために足りる量でサンプルに添加された。冷え濁りテストは、30分間、8℃以下まで、各サンプルを冷やすことによって行われた。形成された濁り(濁度、ユニットEBCで)は、測定チェンバーが8℃以下でまた維持されたところの濁度計で直ちに測定された。
【0154】
ビールのために記載された冷え濁り試験は、オルツ(worts)又はアルコールのないビールでまた行われた。それらの場合、エタノールは、サンプル中で10%(容量/容量)アルコール含有量に達するために足りる量でサンプルにまた添加される。ビール濁り又は使用される濁度ユニットは、ヨーロッパビール会社協議会(European Brewery Convention)によって推奨されるネフェロ濁度であるECBである。
【0155】
加熱濁りテスト
K. J. Siebert(K. J. Siebertら、J. Agric. Food Chem. 第44巻、(1996年))によって記載されるように、ワイン又はフルーツジュースのような飲料中の濁りが、加熱試験によって誘導されうる。形成される濁りの量は主に、飲料中の濁り活性蛋白質及びポリフェノールのレベルの作用である。加熱試験では、(例えばワイン又はフルーツジュースの)サンプルの濁度は、30分間、80℃で加熱前又は後に濁度計で測定される。濁度を測定する前に、加熱されたサンプルは、22〜25℃の温度に達するまで冷水かで冷却される。ワイン試験では(実施例3を参照)、濁度計の校正は、NTU−ホルマジン(formazine)標準溶液でおこなわれ、フルーツジュース試験(実施例5を参照)のために、NTU濁度標準溶液が、Reagecon社(アイルランド)から購入された。NTU=ネフェロ濁度ユニット。
【0156】
対照実験
(i)外因性でない蛋白質が培養の間に添加されたところのブランク試験がおこなわれた。
(ii)培養前に大量のPVPP(1000g/hl)で処理されたビールが使用されたところの実験がおこなわれた。PVPPがビールからポリフェノールを除去し、従って濁りの形成を妨げる故に、この実験は、ポリフェノール−蛋白質沈殿物によるところの冷え濁り試験によって誘導された濁りの平均量の決定を可能にする。
(iii)外因性蛋白質(プロリル特異的エンドプロテアーゼ又はパパイン、それぞれ)が、40℃で、1時間で培養後に、0℃まで冷却されたビールに添加されたところの実験がおこなわれた。0℃での培養は、濁り測定の前に15分間の間行われた。酵素及びパパインは0℃で活性でない又はほとんど活性でない故に、これらの実験は、酵素活性効果と非酵素的蛋白質効果との間で識別を可能にした。
【0157】
様々な試験の間に濁りの効果を示す、実験及び比較実験
実施例1.ビール中の濁り形成に対するプロリル特異的エンドプロテアーゼの添加の効果
除炭酸されたモルトビール(Les Trois Brasseurs)に対する、蛋白質含量:0.9g/l、プロリル特異的エンドプロテアーゼ酵素(「エンドプロテアーゼA」、物質の項参照)の様々な量が添加された。濁り測定の2組が実行された。第1組では、ビール−エンドプロテアーゼA組成物は、冷え濁り試験の前に40℃で、1時間培養された。40℃で培養後、冷え濁り試験の直前に、エタノールが6%(容量/容量)にアルコール含量を増加するために足りる量でビール−エンドプロテアーゼA組成物に添加された。第2組は、エンドプロテアーゼAのないビールは、40℃で、1時間培養され、そしてその後0℃まで冷却された。0℃で、エンドプロテアーゼAが添加され、そして結果として生じる組成物は0℃で、15分間培養された。冷え濁り試験の直前に、エタノールが6%(容量/容量)にアルコール含量を増加するために足りる量でビール−エンドプロテアーゼA組成物に添加された。
【0158】
添加されたエンドプロテアーゼAの量及び非エンドプロテアーゼAが添加された場合に測定された濁りに比例する濁り減少のパーセントが、表1に示される。添加されたエンドプロテアーゼAの量は、ビール中に存在する蛋白質の量に比例して、添加された外因性蛋白質の1%より少なくから10%より多くまでの広い範囲にわたった。
【0159】
【表2】

*「添加された外因性酵素の%」は、酵素の添加前にビール中に損際する蛋白質の総量のパーセントとして表された、添加されたエンドプロテアーゼA−酵素の量を示す。
【0160】
【表3】

【0161】
表1は、冷却される前に、プロリル特異的エンドプロテアーゼが活性であるところの温度で、該プロテアーゼがビールに添加される場合、より少ない濁りが冷却することで形成されることを明らかに示している。表2は、該プロテアーゼが活性でない又はほとんど活性でない温度で、プロリル特異的エンドプロテアーゼがビールへ添加される場合に、ある効果があるが、該効果は、該プロテアーゼがそれが活性であるところの温度で添加されたときに観察された効果に比べて非常に小さいことを明らかに示している。
【0162】
比較試験A.ビール中に濁り形成に対するパパインの添加の効果
除炭酸されたモルトビール(Les Trois Brasseurs)に対する蛋白質含量:0.9g/l、パパインの様々な量(0〜100g/hl)が添加された。冷え濁り測定の2組が実行された。第1組では、ビール−パパイン組成物は、冷え濁り試験の前に40℃で、1時間培養された。エタノールは、濁り測定の前に6%アルコール(容量/容量)に達するために培養されたサンプルに添加された。第2組では、ビールサンプルが、40℃で、1時間培養され、引き続き0℃に冷却された。その後、パパインが添加され、そしてサンプルは、0℃で、15分間培養された。添加されたパパインの量、及びパパインが添加されない場合に測定される濁りに比例する濁り減少のパーセントが、表3に示される。
【0163】
【表4】

(1) 3g/lは、推奨される最大の用量である。
【0164】
【表5】

【0165】
表3の結果は、冷却に応じてビール中に形成された濁りの量に対するパパインの効果を示す。パパインが3g/hl及びそれよりも高い量で添加される場合、濁りに対するパパインの効果は横ばい状態になるであることは明らかである。明らかに、プロリル特異的エンドプロテアーゼのように、パパインで濁り減少の同一の量を達成することは不可能である。
【0166】
比較試験B.ビール中に濁り形成に対するPVPPの添加の効果
ビール−プロリル特異的エンドプロテアーゼ実験とビール−パパイン実験の両方において、対照実験は、培養の前にビールに大量のPVPP(0〜1000g/hl)を添加することによって行われた。混合の15分後に、該PVPPは濾過によって除去された(プロリル特異的エンドプロテアーゼ酵素又はパパインは添加されなかった)。両方の対照において、濁りは、冷え濁り試験の間にほとんど形成されなかった。PVPPは飲料からポリフェノールを除去することが知られている故に、これらの対照試験は、ポリフェノールはビール中の濁り形成に参加していることを示す。ビール濁り安定性に対するPVPP効果を測定するために、PVPPの種々の量が除炭酸されたボールに添加され、そして混合の15分後に濾過によって除去された。PVPPを添加する前に、該ビールは、40℃で、1時間培養された。
【0167】
表5は、冷却に応じてビール中に存在する濁りの量に対するPVPPの種々の量の添加の効果を示す。エンドプロテアーゼA又はパパインは添加されなかった。
【0168】
【表6】

(1)ビール会社で使用される30g/hl最大用量
【0169】
表3では、40℃で、1時間培養後に3gのパパイン/hlビールの添加(それはビール業界で推奨される最大用量である)は、ほぼ36%の濁り減少を生じる。プロリル特異的エンドプロテアーゼの添加の場合、40℃で、1時間培養後に、1%のプロリル特異的エンドプロテアーゼの添加(ビール中の蛋白質の量に比例して)は、38%のビール冷え濁りの減少を生じる(表1参照)。ビール業界において、PVPPは、30g/hlを超えない量で一般に添加される。PVPPは、それがその量で加えられる場合、ほぼ20%によって濁りを減少し、パパイン及びプロリル特異的エンドプロテアーゼ酵素の両方がPVPPよりも、より良い濁り阻害剤であることが結論されうる。
【0170】
実施例2.100%モルトマッシュ(mash)に対するエンドプロテアーゼ添加及び100%モルトオルト(wort)中の濁り減少
目的は、100%モルトマッシュに対するプロリル特異的エンドプロテアーゼの添加が、最終のモルトオルトで濁り減少の結果を生ずるかを決定することであった。
【0171】
各マッシュィング試験は、100mlの水に、25gのミルド・モルトの混合で開始する。その後、マッシュは、50℃まで加熱され、そして「エンドプロテアーゼA」の量の添加後に、該マッシュは、4回の連続的により高い温度へステップ・ワイズ加熱手段に従い処理される。表6は、マッシュィング温度プロフィールを示す。全てのマッシュィングの間、該マッシュは200rpmで撹拌された。マッシュィングの最後に、該マッシュは室温に維持され、そして水蒸発を補うために水が添加された。その後、該マッシュは、固形からのオルト(液体)を分離するために濾紙上で濾過された。
【0172】
【表7】

【0173】
0、200及び500μlエンドプロテアーゼAが、マッシュにそれぞれ添加された。15分間、90℃までエンドプロテアーゼAを加熱することによって不活性化された500μlのエンドプロテアーゼAが使用されたところの対照実験が行われた。オルトの濁りの濁度は、室温で且つ冷え濁り試験後に測定された。オルト冷え試験は、アルコールのないビールに対して、Chaponによって推奨されるようにサンプル中に10%(容量/容量)に達するまでエタノールを加えて、Chapon(冷え濁り試験−Pfeuffer操作指示書)に従い、アルコール/低温度試験で記載されたようにおこなわれた。
【0174】
【表8】

(1)EBC:ヨーロッパビール会社協議会によって推奨されるネフェロ濁度ユニット
【0175】
表7の結果は、プロリル特異的エンドプロテアーゼがモルトマッシュに添加された場合に、結果として生じるオルトが、プロリル特異的エンドプロテアーゼの添加なしに調製されたオルトよりも冷却に応じてより低い濁りであることを明らかに示す。
【0176】
エンドプロテアーゼA効果を試験するために、冷え濁り試験はモルトオルトで実行された。プロリル特異的エンドプロテアーゼの添加は、オルト冷え濁りを減少したことが観察された。冷え濁り試験で形成された減少は、添加されるプロリル特異的エンドプロテアーゼ酵素の低い量でさえ観察された。酵素がマッシュに加えられる前に不活性化される場合、安定化効果は完全に消失する。すなわち、形成される濁りの量は、もはや減少しない。プロリル特異的酵素の添加によって生じた濁り減少は、非常に重要である。実施例では、82%までの濁り減少が達成された。
【0177】
モルトオルト中及び大麦オルト中のプロリル特異的エンドプロテアーゼ酵素の添加の影響を比較するために、エンドプロテアーゼAの種々の量が大麦マッシュに添加されたところの実験がおこなわれた。pHは、それぞれモルトオルトで5.6、大麦オルトで6.1であった。大麦オルト冷え濁り試験で得られた結果は、モルトオルトに対して前に観察されたように、プロリル特異的エンドプロテアーゼによる大麦マッシュの処理は、大麦オルト冷え濁りの重大な減少を生じることを示した。プロリル特異的エンドプロテアーゼで処理されたモルト及び大麦のマッシュの両方が、高く安定化されたオルトであるという結果を生じるが、効果は大麦オルトよりもモルトオルトでより強い。実に、200μlのエンドプロテアーゼAのマッシュへの添加は、大麦オルトで約59%且つモルトオルトで70%より上の濁り減少を生じる。500μlのエンドプロテアーゼAで行われた試験は、モルトオルトで82%まで濁り減少を増加し、200μlエンドプロテアーゼA実験に比較して大麦オルトに濁り減少を改善しなかった。驚くべきことに、大麦マッシュへのエンドプロテアーゼAの添加は明らかに濾過されたオルトを結果として生じ、一方、処理された非エンドプロテアーゼは曇った濾過されたオルトを結果として生じた(大麦マッシュ濾過は室温でおこなわれ、且つオルトの濁度はエタノール添加なしに室温で測定された)。その効果は、大麦マッシュに添加されたプロリル特異的エンドプロテアーゼの量でも観察された。
【0178】
実施例3.ワインでの濁り減少
6.0U/mlの特異的活性を有するプロリル特異的エンドプロテアーゼ(エンドプロテアーゼB)の種々の用量(0、30、60,150μl)が、500mlの白ワイン(下記「材料」の項で記載されたワイン)を含むフラスコに添加され、そして室温(22〜25℃)で、19日間、窒素環境下で培養された。ワイン濁り安定は、下記「方法」の項で記載された加熱試験を使用し0、6、8、12及び19日後に測定された。
【0179】
実験の結果が、表8に示される。表8では、濁りのワイン濁度は、ネフェロス濁度ユニット(NTU)で表される。ΔNTU=加熱後にワインサンプルに対して測定されたNTUでの濁度、加熱前にワインサンプルに対して測定されたNTUでの濁度。ワインの蛋白質を安定するために要求されるベントナイトの量は、式:(1.48×ΔNTU)+2に従い計算された。知られているように、ワインが濁り形成にそれほど影響されない場合に、より少ないベントナイトがワイン中で濁り形成を防ぐために必要とされる。
【0180】
【表9】

【0181】
表8の結果は、加熱前に白ワインへのプロリル特異的エンドプロテアーゼの添加が、加熱後にワイン中に形成された濁りを減少することを示す。室温で培養の6日後に、該効果は観察される。実に、濁り減少は、添加された150μlのエンドプロテアーゼBで39%、かつ30μl又は60μlのエンドプロテアーゼBでほほ12%に達した。12日後にかつ使用されるプロリル特異的エンドプロテアーゼの量が何であれ、濁り減少は46%に達し、そして19日後に70%を超えた。それ故に、プロリル特異的エンドプロテアーゼは、濁り形成に対してワインを安定化するために要求されるベントナイトの量を防止するために又は強く減少するために使用されうることが明らかである。
【0182】
実施例4.イチゴジュースでの濁り減少
イチゴフルーツジュースは、次のようにして調製された。イチゴは解凍されそして破砕されて、引き続き全ての外因性酵素例えばポリフェノールオキシダーゼを破壊し且つ蛋白質を変成するために、90℃でブランチされた(加熱された)。その後、破砕されたイチゴは、50℃に冷却され、Rapidase BE スーパー(DSMの商業的酵素製品、フランス)の600g/tで30分間、50℃で柔らかくされ、そして空気プレスで圧縮された。変成した蛋白質を除去するために、結果として生じる混合物は、8000rpmの速度で遠心分離され、そして濾過された。ストロベリージュースが集められた。酸性化アルコール試験は陰性であり、それはジュースペクチンがないことが確認された。該ジュースのpH値は、3.3であった。
【0183】
エンドプロテアーゼA/イチゴジュース培養:エンドプロテアーゼA(5.06U/ml)の種々の容量(0、5、10、20μl)が100mlのイチゴジュースに添加され、そして50℃で、60分間培養された。2つの対照実験がおこなわれた。(i)20μlの不活性化されたエンドプロテアーゼA(30分、80℃で培養された)を添加することによる1つ目、及び(ii)1時間、50℃で事前に培養された20mlのイチゴジュースに200mgのPVPPを添加することによる2つ目。15分間、室温で混合された後に、該PVPPが遠心分離で除去された。
【0184】
ジュース加熱試験:該ジュース濁度は、80℃、30分間でフルーツジュースを加熱する前及び後に測定された。濁度を測定する前に、該加熱されたジュースは冷水下で冷却された。
【0185】
濁度測定は、Reagecon(アイルランド)からのNTU濁度標準で事前に校正された濁度計でおこなわれた。
【0186】
【表10】

【0187】
表9での結果は、100mlイチゴジュース中に5μlのエンドプロテアーゼAの添加は、ジュース加熱試験後に形成された濁りを25.7%まで減少したことを示す。100mlイチゴジュースへの10μlのエンドプロテアーゼAの添加は、5μl試験に比較して濁り減少効果を改善しなかった。もしかすると、酵素活性は5μlで最大であり、及びより多い酵素添加で、より多い蛋白質沈殿が得られる。
【0188】
不活性化された酵素は、形成された濁りの量をなお減少したが、しかしながら、該効果はましてや目立たない。PVPPの添加後に、ほとんど少しも濁りが観察されなかったが、サンプルの色がまた除去された。PVPPの添加は濁り形成防止を結果として生じるという事実は、イチゴジュースにおいても濁りはおそらくポリフェノール−蛋白質相互作用の結果であることをまた表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料中の濁りを防止または減少する方法であって、プロリル特異的エンドプロテアーゼが飲料に添加される方法。
【請求項2】
エンドプロテアーゼが添加される飲料のpHに対応するpHで最大のプロリル特異的活性を有するエンドプロテアーゼが添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
飲料が蛋白質を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
飲料がポリフェノールを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
飲料が7未満のpH値を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
基質としてZ−Gly−Pro−pNAを使用し活性測定によって決定されたときに、飲料中の1グラム蛋白質あたりで少なくとも150ミリ・ユニットのプロリル特異的エンドプロテアーゼ活性が飲料に添加される、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
基質としてZ−Gly−Pro−pNAを使用し活性測定によって決定されたときに、飲料中の1グラム蛋白質あたりで少なくとも500ミリ・ユニットのプロリル特異的エンドプロテアーゼ活性が飲料に添加される、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
基質としてZ−Gly−Pro−pNAを使用し活性測定によって決定されたときに、飲料中の1グラム蛋白質あたりで少なくとも1ユニットのプロリル特異的エンドプロテアーゼ活性が飲料に添加される、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
飲料がビールである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
飲料がワインである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
飲料がフルーツジュースである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
プロリル特異的エンドプロテアーゼが麦芽汁に添加される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
プロリル特異的エンドプロテアーゼは、濁りが生成される前にビールに添加される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
プロリル特異的エンドプロテアーゼは、濁りが生成された後に、発酵させたビールに添加される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
プロリル特異的エンドプロテアーゼが、発酵させたワインに添加される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
プロリル特異的エンドプロテアーゼが、単離された又は精製されたプロリル特異的エンドプロテアーゼである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
プロリル特異的エンドプロテアーゼ活性を有する単離されたポリペプチドであって、
(a)配列ID No.4、配列ID No.5若しくは配列ID No.7、またはそれらのフラグメントと少なくとも40%の全長アミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドと、
(b)(i)配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列IDNo.6の核酸配列、または60、好ましくは100のヌクレオチドにわたって少なくとも80%あるいは90%同一である、より好ましくは200のヌクレオチドにわたって少なくとも90%同一であるそれらのフラグメントと、あるいは(ii)(i)の核酸配列と相補的な核酸配列と、低いストリンジェンシィー条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと
から成る群から選択される、ポリペプチド。
【請求項18】
配列ID No.4、配列ID No.5または配列ID No.7と少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、一層より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、及び一層最も好ましくは少なくとも97%同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項19】
配列ID No.4、配列ID No.5または配列ID. No.7のアミノ酸配列を含む、請求項17または18のポリペプチド。
【請求項20】
(i)配列ID No.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列IDNo.6の核酸配列、またはそれらのフラグメントと、あるいは(ii)配列ID No.1、配列IDNo.2、配列ID No.3若しくは配列ID No.6の核酸配列と相補的な核酸配列と、低いストリンジェンシィー条件下で、より好ましくは中程度のストリンジェンシィー条件下で、及び最も好ましくは高いストリンジェンシィー条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる、請求項17または18に記載のポリペプチド。
【請求項21】
菌類、好ましくはAspergillusから、より好ましくはAspergillusnigerから得られうる、請求項17〜21のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項22】
請求項17〜21のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸配列、または低いストリンジェンシィー条件下で、より好ましくは中程度のストリンジェンシィー条件下で、及び最も好ましくは高いストリンジェンシィー条件下で、配列IDNo.1、配列ID No.2、配列ID No.3若しくは配列IDNo.6とハイブリダイズする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項23】
適切な発現ホストにおいて上記ポリペプチドの生産を指示する1またはそれ以上の制御配列に動作可能に結合された請求項22に記載のポリヌクレオチドを含む核酸構成物。
【請求項24】
請求項23に記載の核酸構成物を含む組み換え発現ベクター。
【請求項25】
請求項23に記載の核酸構成物または請求項24に記載のベクターを含む組み換え宿主細胞。
【請求項26】
請求項25の記載の菌株/組み替え宿主細胞を培養して、上記ポリペプチドを含む上清及び/又は細胞を生産し、そして該ポリペプチドを回収することを含む請求項16、18〜22のいずれか1項に記載のポリペプチドを生産する方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法によって生産されたポリペプチド。
【請求項28】
ポリペプチドの生産に適切な条件下で、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸構成物を含む宿主細胞を培養し、そして前記ポリペプチドを回収することを含む請求項16、18〜21のいずれか1項に記載のポリペプチドを生産する方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法によって生産されたポリペプチド。
【請求項30】
請求項16に記載のエンドプロテアーゼをコードするDNA分子。
【請求項31】
飲料中の濁りの防止または減少において、請求項28に記載の方法によって得られうる発酵培養液から得られたろ液を使用する方法。
【請求項32】
飲料の調製において、請求項17〜21のいずれか1項に記載のプロリル特異的エンドプロテアーゼを使用する方法。
【請求項33】
ビール、ワインまたはフルーツジュースの調製において、精製されたプロリル特異的エンドプロテアーゼを使用する方法。
【請求項34】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法によって得られる飲料。
【請求項35】
請求項9に記載の方法によって得られうるビール。
【請求項36】
請求項10に記載の方法によって得られうるワイン。
【請求項37】
請求項11に記載の方法によって得られうるフルーツジュース。



【公開番号】特開2009−165484(P2009−165484A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65016(P2009−65016)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【分割の表示】特願2002−548099(P2002−548099)の分割
【原出願日】平成13年12月6日(2001.12.6)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】