説明

飲料冷却供給装置及び飲料冷却方法

【課題】 冷却コイル分離型の飲料冷却供給装置において、注出の間隔があいた場合であっても、常に、冷却された飲料の供給を可能とする。
【解決手段】 飲料冷却供給装置20は、冷却水を収容する水槽3と、水槽内に配置され、飲料を通過させて冷却する冷却コイル11と、冷却コイルの端部に接続され、飲料を注出するための注出タップ12を備え、冷却コイル11は水槽3より分離して取り出し可能とした冷却コイル分離型とされている。冷却コイルの前記注出タップの接続部近傍の大気中に露出する部位(イ)に水浸透性のガーゼ15を巻き付け、その一端を前記前記冷却水に浸漬させている。。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールその他の飲料を冷却して供給する飲料冷却供給装置及び飲料冷却方法に係り、特に飲料冷却装置の飲料冷却部を構成する冷却コイルを分離して取り出せるようにした冷却コイル分離型の飲料冷却供給装置及びこれを使用する飲料の冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール、発泡酒、清涼飲料、ジュース等の飲料を飲食店で販売する場合、貯蔵タンクに収容された飲料を適度の温度に冷却してカップやグラス等の飲料容器に注出するために飲料冷却供給装置(以下、単に「飲料サーバー」という。)が使用される。この飲料サーバーは貯蔵タンクから取り出された飲料を冷却槽内に配置された冷却コイル内を通す過程で冷却し、注出タップより飲料容器に注がれる。
【0003】
この飲料サーバーは冷却効果を十分発揮させるために、注出タップの直前、即ち、冷却コイルと注出タップとの接続部まで冷却槽内の冷却水に浸漬するような構造になっている。このような構造にすることにより、飲料サーバーの使用間隔が長い場合にも冷却コイル中の飲料の液温が上昇してしまうことがない。 しかしながら、メンテナンスの関係から飲料の流通路である、冷却コイル、注出タップは定期的に洗浄する必要があり、注出タップはサーバー本体から外して洗浄する必要がある。この場合、本体から注出タップを外すと、その開口から冷却水が流れ出てしまうため、流れ防止用の栓手段を設けたり、予め、冷却水を減らして上記開口より水位を低くするようにする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、他の方法として注出タップの本体の取付位置を冷却水面より高い位置に設けることにより上記問題は解消できるが、注出タップと冷却コイルとの接続部分が冷却水で冷却できなくなってしまう。特に、近年サーバーを使用する店のメンテナンス作業を大幅に軽減するために、飲料サーバーの冷却コイル及び注出タップを装置から一体的に分離して取り出し、管理会社の洗浄工場で洗浄できるようにした、冷却コイル分離型サーバーが提案されている。
【0005】
図1及び図2によりこの冷却コイル分離型の飲料サーバーを説明する。すなわち、図1は、飲料サーバー1全体の内部の概略構造を示す。飲料サーバー1は筐体2と、筐体2内に配置された水槽3と、水槽3内に配置される冷却コイル組立体10とを有する。水槽3には水槽内の冷却水5を冷却する冷却コイル4が設けられており、図示しない冷却装置より低温の冷媒が供給されて冷却水を冷却する。冷却コイル組立体10は、図示しないビール樽のような飲料供給源に一端が接続され、他端が注出タップ12に接続されるコイル11を有する。
【0006】
図2は飲料サーバーの冷却コイル組立体10を示し、(a)は正面図、(b)は側面図を示す。また、図3は冷却コイル組立体の斜視図を示す。図に示された冷却コイル組立体10は螺旋状に巻回された2系統のコイル状の飲料通路11(11a,11b)を有する。各冷却通路11a,11bの一方の端部には注出タップ12(12a,12b)が取り付けられており、他方の端部はビール樽などの飲料貯蔵容器と接続される管継手13a,13bが設けられている。注出タップ12は冷却コイル11全体を支持する支持板14の前面パネル14aに着脱自在に取り付けられて全体として冷却コイル組立体10を構成している。冷却コイル組立体10は、前述のように、飲料冷却用の冷水が供給され循環する水槽3内に配置されて飲料サーバーの冷却部として機能する。
【0007】
上記のような冷却コイル分離型の飲料サーバーは、冷却コイル組立体10を取外し可能な構成であるため、注出タップ12が取付けられる前面パネル14aは筐体2の上部に配置せざるを得ない。このため、注出タップ12が水槽の上部に位置し、冷却コイル11の注出タップ12が接続される部位(図1において(イ)で示す部位)は水槽3の水面Hより上部に位置し、冷却水に浸漬できない露出部分となる。したがって、飲料の注出が短時間のうちに繰り返してなされる場合は、その露出する部分に飲料が停滞する時間が短く、問題となることはないが、注出の間隔があいて、この露出部分に長い間停滞すると、水槽上部は常温雰囲気か、或いは冷却水の攪拌機などの発熱により温度の高い雰囲気となっているため、冷却された飲料の温度が上昇することとなる。この状態で、コップやジョッキに注出すると、液温が上昇したり、発泡性の飲料にあっては、液温の高い飲料が初期に注出されることにより、過度に発泡してしまい、注出不良を来たす。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、飲料冷却コイルの注出タップとの接続部近傍が冷却用水槽の水面上の大気中に露出する構造の飲料サーバーにおいて当該露出部分に滞留する飲料の温度の上昇を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は本発明による以下の手段により解決される。
【0010】
本発明は、冷却水を収容する水槽と、前記水槽内に配置され、飲料を通過させて冷却する冷却コイルと、冷却コイルの端部に接続され、飲料を注出するための注出タップを備え、前記注出タップの水槽への取付位置が前記水槽内の冷却水水面より高い位置にある飲料冷却供給装置において、
前記冷却コイルの前記注出タップの接続部近傍の大気中に露出する部位に水浸透性を有する薄織物を巻き付け、該織物の一端を前記前記冷却水に浸漬させたことを特徴とする飲料冷却供給装置である。
【0011】
本発明はまた、冷却水を収容する水槽と、前記水槽内に配置され、飲料を通過させて冷却する冷却コイルと、冷却コイルの端部に接続され、飲料を注出するための注出タップを備え、前記注出タップの水槽への取付位置が前記水槽内の冷却水水面より高い位置にある飲料冷却供給装置を使用する飲料の冷却方法であって、
前記冷却コイルの前記注出タップの接続部近傍の大気中に露出する部位に水浸透性を有する薄織物を巻き付け、当該織物の一端を前記前記冷却水に浸漬させることにより前記冷却コイルの大気に露出する部位を冷却するようにしたことを特徴とする飲料冷却供給装置を使用する飲料の冷却方法である。
【0012】
尚、前記織物としてガーゼを使用することにより本発明をより効果的に実施することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、飲料冷却コイルの大気露出部分を常に保湿し、その水分の蒸発熱によりコイル露出部分を常に低温に保つことができ、常に、注出タップから低温に冷却された飲料を注出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図4は、本発明の実施形態に係る飲料サーバー20を説明する図で、図1乃至図3により説明した分離型の飲料サーバー1に本発明を適用した場合の概略構成図を示す。したがって、図1乃至図3において説明した飲料サーバー1と同じ構成要素は説明の便宜上、同じ符号を使用している。
【0016】
飲料サーバー20は、筐体2、冷却用水槽3、及び取出し分離可能な冷却コイル組立体10により構成されている。冷却コイル組立体10は螺旋状に巻回されたコイル状の飲料通路11を有し、冷却通路11の一方の端部には注出タップ12が取り付けられ、他方の端部はビール樽などの飲料貯蔵容器と接続されている。注出タップ12は冷却コイル11全体を支持する支持板14の前面パネル14aに着脱自在に取り付けられて全体として冷却コイル組立体10を構成している。
【0017】
既に、図1乃至図3の飲料サーバー1において説明したように、冷却サーバー20は、冷却コイル11の注出タップとの接続部位(イ)は水槽の水面Hから上の大気中に露出している。本実施形態においては、この露出部位(イ)を帯状のガーゼ15を巻きつけ、このガーゼの端部を水槽3の冷却水5に浸漬させるようにしている。端部を冷却水5に浸漬させる形態としては、コイルに巻付けた状態で、冷却水に浸漬させてもよく、端部15aを図示のように、冷却水5中に垂下させるようにしてもよい。
【0018】
ガーゼ15を露出部位に巻き付け、一部を冷却水中に浸漬させるようにすることにより、ガーゼ15が冷却水を吸い上げ、コイル11の露出部位が常時濡れた状態に保たれる。水を保有するガーゼは周囲温度により蒸発することとなるが、この蒸発熱によりコイルの露出部位(イ)は常に低温に保たれる。したがって、冷却コイル11の空気中に露出した部位(イ)の内部に、飲料が停滞したとしても、飲料が温められることがなく、低温の状態を維持することができる。したがって、飲料の注出の間隔があいた場合であっても、良好に冷えた状態で注出することができる。そして、飲料が発泡性であっても、過度に発泡することが防止され、良好な状態で飲料を注出することが可能となる。
【0019】
上述の例では、冷却コイルの露出部分に巻く材料をガーゼとしたが、ガーゼに限ることはなく、吸水性(透水性)、保湿性があり、コイル周囲に巻き付けることができる材料であれば良く、天然植物繊維の織物が好適である。また、フィルム状のスポンジも吸水性がよく、かつ吸水された水分が蒸発し易い構造であり有効である。ガーゼが最も好適な理由は、材料が綿である天然植物繊維の織物であり、粗く織った薄手の平織物であるため、薄手で柔らかく、吸水性、保水性に優れ、しかも、薄手のため吸湿された水分が蒸発し易く、蒸発熱を好適に奪うため、コイルの冷却を効果的にする。
【実施例】
【0020】
次に、本発明を冷却コイル分離型ビール用サーバーに適用した実施例を説明する。
【0021】
図1に示した飲料サーバー1と同じ構造を持ち、冷却コイルの露出部分が約10cmであるビール用サーバーの露出部分にガーゼを2重に巻き付け、一端約2cmを水槽の冷水中に垂下し、注出を30分間停止した状態で冷却パイプの表面温度を測定し、冷却コイルの露出部分に保冷材(発泡ウレタン)を施した場合と、露出のままの状態(無処理)の対照と比較した。また、発泡の状態を調べるため、30分間停止した後にジョッキーに注出し、1杯目の泡厚を、露出部分にガーゼを施した場合、保冷材を施した場合、露出のままの状態(無処理)の対照についてそれぞれ測定し比較した。なお、当該測定場所の気温は30℃であった。
(1)注出停止30分後の表面温度
ガーゼを施した場合:約22℃
保冷材を施した場合:約23℃
対照(無処理) :約29℃
(2)泡厚
ガーゼを施した場合:約12mm
保冷材を施した場合:約16mm
対照(無処理) :約28mm
以上の結果からもわかるように、ガーゼを巻き付けた場合が、保冷効果が最も大きいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】冷却コイル分離型の飲料サーバーの内部構造を示す図である。
【図2】冷却コイル組立体を示し、(a)は正面図を、(b)は側面図を示す。
【図3】冷却コイル組立体の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0023】
1、20 飲料冷却サーバー
10 冷却コイル組立体
11 冷却コイル
12 注出タップ
15 ガーゼ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水を収容する水槽と、前記水槽内に配置され、飲料を通過させて冷却する冷却コイルと、冷却コイルの端部に接続され、飲料を注出するための注出タップを備え、前記注出タップの水槽への取付位置が水槽内の冷却水水面より高い位置である飲料冷却供給装置において、
前記冷却コイルの前記注出タップの接続部近傍の大気中に露出する部位に水浸透性を有する薄織物を巻き付け、当該織物の一端を前記前記冷却水に浸漬させたことを特徴とする飲料冷却供給装置。
【請求項2】
前記織物は、ガーゼである請求項1記載の飲料冷却供給装置。
【請求項3】
冷却水を収容する水槽と、前記水槽内に配置され、飲料を通過させて冷却する冷却コイルと、冷却コイルの端部に接続され、飲料を注出するための注出タップを備え、前記注出タップの水槽への取付位置が水槽内の冷却水水面より高い位置である飲料冷却供給装置を使用する飲料の冷却方法であって、
前記冷却コイルの前記注出タップの接続部近傍の大気中に露出する部位に水浸透性を有する薄織物を巻き付け、当該織物の一端を前記前記冷却水に浸漬させることにより前記冷却コイルの大気に露出する部位を冷却するようにしたことを特徴とする飲料冷却供給装置を使用する飲料の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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