説明

飲料生成機および飲料生成機の開口装置のための穿刺部材

【課題】 本発明は、カプセルを使用して浸出装置で飲料を生成して供給するための飲料生成機に関する。
【解決手段】
本発明は、カプセル(2)内に収容される原料に基づいて飲料を浸出するようになっている装置(10)を備える飲料生成機であって、浸出装置(10)が、カプセル(2)を所定の位置に保持するための手段(63,51)と、カプセルが所定の位置に保持されている間にカプセルへの温水入口を開口するための注入手段(38)と、カプセルが所定の位置に保持されている間にカプセルからの飲料出口(41)を開口するための手段(37)とを備える飲料生成機は、注入手段(38)が少なくとも1つの出口開口(114,118)を備え、カプセルが所定の位置に保持されている間に該出口開口がカプセルの最下部へ向かう下方を向いていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセルを使用して浸出装置で飲料を生成して供給するための飲料生成機に関する。特に、本発明は、浸出させたティーを供給するカプセルを使用する飲料生成機の提供を目的とするが、他の飲料もカプセル内でしっかりと浸出させることができる。
【背景技術】
【0002】
ティー飲料の品質は、リーフティー原料の品質、すなわち、用いられるティーの由来(土壌、乾燥方法、ブレンドなど)およびそれらの保存状態に大きく依存している。例えば、ティー原料は、通常、酸素および光に影響される。好ましいティー原料は、小さな断片へと刻まれたあるいは破断されたばらばらの葉から採取される。しかしながら、使用される原料の品質を十分に生かすためには、浸出状態も重要である。
【0003】
飲料を浸出するためにカプセルを使用する様々な飲料生成機が既に知られている。しかしながら、従来技術によれば、温水をカプセルへ注入するために使用される穿刺針には、温水が穿刺方向でカプセルに注入されるように、穿刺針の先端で開口する軸方向チャンネルが設けられている。
【0004】
EP242556には、穿刺針が互いに正反対の好ましくは2つの穴をその先端に有する、コーヒーを抽出するためのそのような機械が既に記載されている。これらの穴の軸は、カートリッジ内のコーヒーの塊の全体にわたる水の効果的な拡散を可能にして、完全な抽出を得るとともに、挽いたコーヒーにおけるチャンネルの形成を回避するため、針の軸方向チャンネルと70°〜80°の角度を成している。
【0005】
EP469162およびEP468080には同じタイプの機械が記載されているが、穿刺針の先端の穴の軸は、水平に対して0〜25°の角度を成している。ここでの水平とは、平坦な円形表面によって形成される面を意味し、また、角度とは、水平の面の上方へ形成される角度を意味する。したがって、針の穴の形状によって、水はカプセルの上端へ向けられ、それにより、水はカプセルの上端での偏向後にカプセルの全面にわたって均一に分配される。
【0006】
EP1510158は同じタイプの機械について記載しているが、穿刺針は、連続的、発散的、かつ多方向に延びるとともにカプセル内部において円弧状態に噴射面を覆う少なくとも1つの薄層の形態で、液体をカプセル内に注入するようになっている。そのような噴射形態は、噴射のパワーおよび速度の利点を保持しつつ、液体を広い表面にわたって分散することを目的とするが、噴射が別々の向きを向いて物質を抜ける穴または優先路が形成されることが回避される。温水の薄層は、少なくとも2つの噴射層を形成する穿刺要素または注入要素のスロットによって得られ、各噴射層は、45〜180°の円弧、好ましくは120〜180°の円弧を成す。噴射層は、好ましくは飲料がカプセルから抜け出す方向へと横方向に向けられ、それにより、可能な限り最も幅広い表面を噴射するとともに、注入された液体がその後にコーヒーの塊を通じて流れることができるようにする。
【0007】
WO01/72187は、可溶性原料を備えるマグカップ内に穿刺針が温水を注入する温水分配装置について記載している。マグカップは、マグカップ内に温水の水平噴射を形成する針によって水平に穿孔され、それにより、針の先端に対面するマグの上側の壁に上記噴射がぶつかって砕ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術の教示内容は、炒ったコーヒー抽出に特に適合される。しかし、EP1774878、EP1775234またはEP1859712に記載されるような公知の飲料生成機を用いてティーが抽出される場合には、リーフティー原料が最適に溶出されない。したがって、本発明の目的は、既知の実施形態のこの不都合を克服し且つティー飲料の生成に更に適する飲料生成機のための構造を提案することである。
【0009】
本出願において、「カプセル」または「カートリッジ」または「パッケージ」の用語は同意語と見なされる。用語「カプセル」が優先的に使用される。「浸出」、「溶出」または「煎じる」の用語は同意語として使用される。用語「浸出流体」とは、一般には飲料原料に注ぎ込まれる液体、より一般的には温水のことである。
【0010】
本出願において、用語「ティー」は、緑茶、紅茶、白茶、チャイティー、フレーバーティー、および、ハーブティーまたはフルーツティーなどの全てのタイプのリーフティーを包含する。用語「茶葉」または「リーフ原料」とは、完全な葉、カットされた葉、または、刻まれた葉、葉の小さな断片、粉末(powder or dust)などの任意の形態の浸出可能なティーまたは他の原料のことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、カプセル内に収容される原料に基づいて飲料を浸出するようになっている装置を備える飲料生成機であって、上記浸出装置が、
カプセルを所定の位置に保持するための手段と、
カプセルが所定の位置に保持されている間に温水をカプセル内へ注入するための注入手段であって、温水を案内するための内部軸方向チャンネルを有する穿刺部材を備え、穿刺部材がカプセルのシェルを貫挿している間上記内部軸方向チャンネルが略水平方向を向いている、注入手段と、
を備える飲料生成機において、
注入手段は、カプセルが所定の位置に保持されている間、温水をカプセルの最下部へ向かう下方へ向ける少なくとも1つの出口開口を備える、飲料生成機に関する。
【0012】
本発明は、特に、温水を注入するための穿刺部材が垂直な上下方向以外の方向でカプセルへ導入される飲料生成機に適合される。この飲料生成機は、温水注入手段が温水を案内するための内部軸方向チャンネルを有する穿刺部材を備えかつ穿刺部材がカプセルのシェルを貫挿している間に略水平方向を向いているタイプの飲料生成機に対応する。好ましくは、この内部軸方向チャンネルは、穿刺部材がカプセルのシェルを貫挿したときに水平である。
【0013】
このタイプの飲料生成機は、浸出装置内に「垂直」方向に配置されるカプセルの処理に特に適合する。この「垂直」方向において、カプセルの通常のカップ形状ハウジングは、ハウジング開口と底部とが垂直な位置関係になるように向けられる。こうして、カプセルを保持するための手段は、カプセルを垂直方向に保持するようになっている。
【0014】
この新規な飲料生成機は、ティーの浸出にも特に適合する。これは、カプセルの最下部に集められる茶葉へ直接に温水を注入できるからである。したがって、茶葉が温水噴射によってかき混ぜられ、それにより、温水をカプセル内の全ての茶葉と接触させることができる。したがって、ティーの最適な浸出が実現される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、穿刺部材の内部チャンネルが少なくとも1つの側面出口開口へと通じている。「側面」とは、温水を排出するための出口開口が内部軸方向チャンネルの側部に位置されていることを意味する。この側面出口開口は、温水をカプセルの最下部へ向かって下方へ向けるための出口開口に対応する。このため、側面出口開口が下方へ向けられることが好ましい。
【0016】
好ましくは、穿刺部材は、円筒体と円錐先端部とを有する針である。そのような実施形態において、側面出口開口は、円筒体の側面に配置され、円錐先端部の側面に配置されない。円錐先端部の先端角度は、カプセルのシェルを穿刺できるように十分に尖っている。好ましい実施形態では先端部の角度は60°である。
【0017】
一般に、少なくとも1つの側面出口開口は、注入手段の先端部に近い。
【0018】
特に、穿刺部材の内部チャンネルが温水を案内するための2つの側面出口開口へ通じていることが好ましい。好ましくは、2つの側面出口開口が孔であり、該孔のそれぞれの軸が穿刺部材の内部軸方向チャンネルの軸に対して垂直であり、2つの側孔の軸が穿刺部材の内部軸方向チャンネルの軸に対して垂直な共通の面内に位置する。特定の有利な実施形態では、2つの出口開口が穿刺部材の周囲回りに120°だけ互いに離間される。本発明に係る飲料生成機の好ましい実施形態では、カプセルが所定の位置に保持されかつ穿刺部材がカプセルのシェルを貫挿している間、2つの開口のそれぞれが鉛直線に対して60°の角度で下方へ向けられる。
【0019】
飲料生成機は、カプセルが所定の位置に保持されている間に注入手段の穿刺部材がカプセルのシェルをその中心位置で穿孔するように設けられるべく更に形成することができる。
【0020】
好ましくは、注入手段の穿刺部材およびカプセルを保持するための手段は、相対的に水平方向に移動してカプセルのシェル壁を穿孔するようになっている。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、飲料生成機は、カプセルが所定の位置に保持される間にカプセルからの飲料出口を開口するための開口手段を備える。
【0022】
第2の態様において、本発明は、浸出装置を備える飲料生成機によってカプセル内に収容される原料を浸出するための方法であって、上記浸出装置が、
カプセルを所定の位置に、好ましくは垂直方向に保持するための手段と、
カプセルが所定の位置に保持されている間に温水をカプセル内へ注入するための注入手段と、
を備える方法において、
温水が、まず水平方向に沿って注入手段に注入された後、カプセルの最下部へ向かう下方へ向けられた少なくとも2つの噴射の形態でカプセル内へ注入され、少なくとも2つの噴射がカプセルの垂直軸に対して対称である方法に関する。好ましくは、2つの噴射は、2つの渦を形成する方向に向けられている。本発明の好ましい実施形態によれば、2つの噴射が鉛直線に対して60°の角度で下方へ向けられる。
【0023】
次に、添付図面を参照して、本発明の一実施形態を単なる一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の1つの特定の実施形態に係るカプセルおよびそのカプセルのための浸出装置の両方を示した概略図であって、浸出前の状態を示している。
【図2】図1のカプセルおよび浸出装置の概略図であって、カプセルを浸出している最中の状態を示している。
【図3A】本発明のカプセルの使用に適用される飲料浸出装置の特定の実施形態の動作を示した図である。
【図3B】本発明のカプセルの使用に適用される飲料浸出装置の特定の実施形態の動作を示した図である。
【図3C】本発明のカプセルの使用に適用される飲料浸出装置の特定の実施形態の動作を示した図である。
【図3D】本発明のカプセルの使用に適用される飲料浸出装置の特定の実施形態の動作を示した図である。
【図3E】本発明のカプセルの使用に適用される飲料浸出装置の特定の実施形態の動作を示した図である。
【図4】本発明の第2の態様による穿刺部材を示す長手方向断面図である。
【図5】図4のV−V線に沿っての穿刺部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
最初に、図1および図2に関し、本発明に係る飲料生成機の一般的な浸出原理について説明する。
【0026】
カプセル2と飲料浸出装置10とを備えるカプセルシステムが設けられる。簡素化するため、飲料浸出装置は、単に概略的に描かれており、実際には当業者の通常の知識内で更なる技術的特徴を備えていてもよい。カプセルは、茶葉などの飲料原料を収容する筐体20を備える。筐体は、オーバーフロー壁またはプレート3によって閉じられるカップ形状ハウジング21によって形成される。筐体の内容物はガスおよび光から保護されることが好ましい。ハウジングは、円形、楕円形、正方形、長方形、または、多角形などの様々な断面を有していてもよく、また、この断面が平坦なオーバーフロー壁3の大まかな外形を決定する。
【0027】
筐体は、一般に約1〜10グラム、好ましくは2〜5グラムの用量のリーフ飲料原料を収容する寸法になっている。リーフ原料の用量は、製造する飲料の最終的な量によって決まってもよい。ティーの個々のカップに対しては、約2グラムが一般的な用量となり得るが、ティーポットに対しては、約8〜10グラムが一般的な用量となり得る。図1から明らかなように、オーバーフロー壁3が実質的に筐体の底部から略垂直に延びるように、カプセルが浸出装置に対して配置されている。これに関しては、カプセルは、浸出装置10内において「垂直」方向に配置されることが好ましい。カップ形状ハウジング21は、その大きな開口およびその底部が垂直位置となるように向けられ得る。
【0028】
オーバーフロー壁3は、少なくとも1つの(好ましくは、いくつかの)オーバーフロー開口25を更に備える。オーバーフロー開口は、少なくとも、筐体の高さ位置の3/4を超えて配置される。オーバーフロー壁は、ハウジング21の周囲の内側肩部23によって所定位置に保持される。筐体と対向するオーバーフロー壁またはプレート3の面はフィルタ手段を有する。この特定の実施形態によれば、フィルタ手段は、オーバーフロー壁の面から突出するおおよそ平行なスタッド22の配列から成る。また、フィルタ手段は、浸出液の経路上においてオーバーフロー壁3より前にあるフィルタ壁、例えば濾紙であってもよい。
【0029】
カプセルは、カップ形状ハウジング21を密閉するカバー4によって閉じられる。このカバーは、カプセルハウジングの外周リム24に対して取り付けられる。カバーは、接着または溶着あるいは当業者に知られる任意の他の適切な技術によって外周リムに対して取り付けることができる。カバーおよびハウジングはいずれも、酸素気密容器を形成するために酸素バリア材料から形成することができる。このようにすると、筐体20をほぼ無酸素状態にすることができ、それにより、飲料原料の鮮度を長期間にわたって保つことができる。筐体は、注入されたN,NOまたはCOなどの不活性ガスを収容していてもよい。カバー4は、柔軟性のある薄膜または適度に硬質なプラスチック部品であってもよい。適した材料としては、プラスチック、PET、アルミニウム箔、高分子膜、紙などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
カプセルのシェルの形状はあまり重要ではない。様々な理由により、円錐台形状または楕円形状、あるいは、半球形状が好まれる。シェルは、プラスチック熱成型またはアルミニウム深絞りによって工業的に低コストで製造することができる。より滑らかな角部を有するこの形状は、カプセルを排出するためのハンドリング手段の除去に都合よく働く。
【0031】
浸出装置10は、固定フロントプレート51と可動部品61(図3A〜図3Eで確認される)とを備えるカプセルハンドリング手段を備える。可動部品61は、カプセル2のカバー側をフロントプレートに対して押し付けて、カプセルを固定し、前述したようにカプセルを「垂直」方向に保持するようになっている(図1および図2も参照)。可動部品61は、カプセルの周囲を開閉することができ且つカプセルをしっかりと所定位置に保持することができる機械ジョーまたは任意の適した機械的囲繞手段を備えることができる。カプセル内の流体圧が比較的低く保たれているため、好ましくは可能な限り大気圧に近く保たれているため、強い力で閉める必要はない。更に、カプセル自体が低い浸出圧に耐えることができる。したがって、カプセルを必ずしも完全に取り囲む必要はなく、単に浸出中に所定位置に水密に保持しさえすればよい。これは、機械の簡略化に寄与するとともに、機械コストを削減する。
【0032】
浸出装置は、水タンクなどの給水源32と、送水ポンプ33と、ヒータ34と、ハンドリング手段の可動部と関連付けられる温水注入ライン35とを備える。浸出装置は、コントローラおよびユーザインタフェースボード(図示せず)を備えて、当該技術分野において知られている飲料生成サイクルを管理してもよい。注入部材38の入口側の圧力を下げるために背圧弁36を設けることができる。この注入部材は、吸水口としての機能を果たすために、カプセル2のシェルを通り抜けるように形成される。言うまでもなく、背圧弁は省略することができ、低圧流体を送る低圧ポンプを利用することができる。しかしながら、強固かつ高い信頼性のためには、中程度の圧力から高い圧力のポンプが好ましく、そのようなポンプが背圧弁と組み合わせて使用され得る。
【0033】
注入部材38は、針または刃または任意の他の適した装置であってもよい穿刺部材100である。一例として、図4に示される穿刺部材100は、円筒体102と円錐先端部104とを有する針である。円筒体102には、先端部104から離れたその端部に、カプセルハンドリング手段の可動部品61に針を装着するための拡径部106が設けられている。チップ角度αは、90°未満であり、図示の例では60°である。
【0034】
円筒体102は、先端部104から離れた円筒部102の後端で開口する止まり穴を形成する軸孔108を備える。軸孔108は、円筒体102の後端に温水用の入口開口110を形成する。
【0035】
先端部104の近傍には、円筒体102の周壁103に側孔112が形成される。側孔112の孔軸X1は、針100の円筒体102の長手方向軸Xに対して垂直である。側孔112は、チャンネル108を針100の側面に対して開放し、それにより、チャンネル108のための出口開口114を形成し、そのため、入口開口110を通じてチャンネル108内へ入る温水がチャンネル108から出口開口114を通じて抜け出ることができる。
【0036】
図5は、図4に示した針100の線V−Vに沿う断面図を示している。図示のように、出口開口114を形成する側孔112に加えて、先端部104の近傍の針の壁103に第2の側孔116が設けられる。第2の側孔116は、温水のための第2の出口開口118を形成する。第2の側孔116の軸X2も針100の長手方向軸Xに対して垂直であり、それにより、2つの側孔112,116の軸X1,X2は、針100の長手方向軸Xに対して垂直な共通の面内に位置する。
【0037】
図5から更に分かるように、軸X1,X2は、互いの間で120°の角度βを規定する。針100は、角度βの二等分線X3が垂直下方に向けられることにより、軸X1,X2が垂直線の左および右のそれぞれへと60°の角度で斜め下方に向けられるように、可動部品61に対して装着される。
【0038】
浸出装置は、カバー4の最下部の近傍に出口を形成するために設けられる穿孔手段を穿孔要素43と協働して形成する機械プッシャ37を更に備える。機械プッシャ37は、浸出装置の固定フロントプレート51の最上部に形成される開口内において上下方向にスライド可能に配置される。機械プッシャは、該プッシャの本体から下方へ延びるロッド54を備える。プッシャ37の本体は、本体の下面とフロントプレートの肩部との間に配置されるスプリング53によって支持される。機械プッシャの本体は、水平ストッパ57を受けるようになっている垂直スロット55を更に備える。機械プッシャがその休止位置にあるときには(図1)、スプリング53がスロット55の下端をストッパ57に押し付ける。プッシャがその作動位置にあるときには(図2)、スロットの上端がストッパに当接する。
【0039】
この例では、穿孔手段がレバーアーム59を更に備える。このレバーアームは、該レバーが下げられるときには常に、機械プッシャ37の上面と接触するようになっている。図2に示されるように、レバーアーム59を完全に下降させることにより、浸出装置10のユーザは、機械プッシャをその作動位置へと駆動させる。他の実施形態では、ソレノイドまたは任意の他の等価な駆動手段により、機械プッシャをその作動位置へと自動で駆動させることができることは言うまでもない。
【0040】
機械プッシャは、穿孔要素43を操作するために使用される。機械プッシャ37がその休止位置からその作動位置へと移動すると、機械プッシャ37は、カバー4の上側部分を切り開き、穿孔要素43の後端近傍に形成された肩部44と直接に接触する。他の実施形態では、カバーを穿刺する代わりに、機械プッシャ37は、カバー4の上側部分の変形可能領域に圧接して、この領域を肩部44と接触させることができる。前述したように、プッシャ37により肩部44に対して直接的にあるいは間接的に加えられる機械的な圧力によって、穿孔要素が溝に沿ってスライドし、それにより、カバー4の最下部近傍の飲料出口41の開口がもたらされる。
【0041】
他の実施形態では、肩部44を省いて、機械プッシャ37を単に穿孔要素43の後端に押し付けることができる。しかしながら、図2に示されるように、肩部44を有する1つの利点は、機械プッシャ37のロッド54が肩部44と接触するときに、穿孔要素の後端がロッドの側面によってオーバーフロー壁3に対して押さえ付けられるという点である。この有利な特徴により、確実に、穿孔要素は、溝を下降する間にわたって適切に案内される。
【0042】
機械プッシャ37によって穿孔要素43がその下方移動を完了すると、プッシャ37は、カプセルから退避することができあるいはその作動位置にとどまることができる。しかしながら、穿孔要素43は、図2に示される「使用」位置にとどまることが好ましい。この位置では、穿刺尖端部92が飲料出口41から延出する。穿刺尖端部92は、カプセルの最下部よりも下側へ延びることが好ましい。このようにすれば、穿刺尖端部92が飲料ガイドとして機能することができ、飲料出口から出てくる流体は、この飲料ガイドに沿って、それがカップ内へ真直ぐに入るまで流れ落ちることができる。この形態では、当然、表面張力により、飲料が穿刺尖端部92の表面の長さに沿って流れ、したがって、乱流および泡立ちが回避されるとともに、カプセルからカップ内への直接的な鮮やかできれいな流れがもたらされる。
【0043】
機械プッシャ37は、カプセルをカプセルハンドリング手段51,61で封止している最中または封止した後(好ましくは、封止している最中)に作動させることができる。しかしながら、本発明によれば、機械プッシャを省略することもできることは言うまでもない。この場合、好ましくはカプセル2を飲料浸出装置10に嵌め込む前に穿孔要素43が手動で操作される。
【0044】
図3A〜図3Eは、前述したカプセルを使用するようになっている飲料浸出装置の特定の実施形態の動作を示している。ここでは、図3A〜図3Eのほかに図2も参照しつつ、本発明の方法の特定の実施を説明する。ユーザは、最初に、浸出装置の上の開口内へ手でカプセルを挿入する。その際、ユーザは、前述した「垂直」方向でカプセルを保持する。その後、カプセルは、それが事前固定手段(図示せず)によって保持される事前固定位置に達するまで、垂直開口を通じて下降する。例えば、事前固定手段が一対の柔軟アームであってもよい。これらのアームは、図3Aに概略的に示される位置でカプセルを保持する。この位置で、カプセルは、フロントプレート51から僅かに離れ且つ該フロントプレートに対向して保持される。この段階では、カプセルハンドリング手段の可動部品61がプロントプレート51から離れて位置しており、この状態が可動部品の「開放」位置に対応する。可動部品は、詳しくは後ほど説明するが、図3Aに示されるようにこの段階では水平面に対して僅かに回転している。
【0045】
可動部品61は中空開口63を備えており、中空開口63の形状は、カプセルのシェル21の外形と一致するように形成される。可動部品は、手動操作できるレバーアーム59に接続される。ユーザがレバーアームを操作すると、可動部品61は、まず、図3Bに示される位置へと移動する。この中間位置では、可動部品およびフロントプレート51が、実質的にお互い係合している。また、このとき、カプセル2のシェル21が可動部品の中空開口63内に保持される。最初の段階でカプセルを保持していた柔軟アームはここでは無用となり、これらのアームは、前進する可動部品61によって押し退けられ、それにより柔軟アームがカプセルから外される。
【0046】
浸出が始まる前に、吸水口および飲料出口の両方がカプセルに開口される。前述したように、温水注入ライン35(図1および図2に示される)および注入部材38が可動部品61と関連付けられる。レバーアーム59は、可動部品の閉塞および注入部材38の移動の両方を制御するようになっている。ユーザがレバーアームを完全に下降させると、可動部品がカプセルをフロントプレート51に対して押し付ける。同時に、流体注入部材38がその事前の引込位置から図3Cに示される突出位置へと移動する。流体注入部材38の前方移動により、流体注入部材がカプセルのシェル21を通り抜ける。プラスチック材料で形成されるカプセルを穿刺することは難しい。しかしながら、中空開口63の側面もカプセルのシェルを追加的に支持するので、プラスチック壁が注入部材と係合したときに歪む可能性は低くなっている。レバーアームがその最下位置に近づくと(図3C)、注入ライン35が温水を供給し始める。温水は、注入部材38を通じてカプセルに流入する。温水は、入口開口110を通じて針100の軸方向チャンネル108に入り、出口開口114,118を通じてカプセル2の最下部へ注入されて、カプセルの最下部内に集められた茶葉上に至り、それにより、出口開口114,118からの2つの温水噴射によって茶葉がかき混ぜられる。温水は、比較的低い圧力、好ましくは1バールを越えない圧力、より好ましくは0.2バールの圧力、上述の大気圧で注入される。温水は、150〜250mlであってもよい。温水は、ゆっくりと筐体を充たして筐体内に収容された飲料原料を浸していく。飲料は、フィルタ手段22を通過することにより、筐体内の流体の水面の高さ位置までの様々な垂直高さ位置において濾過される。
【0047】
既に説明したように、レバーアーム59を完全に下降させると、機械プッシャ37が更に作動される。したがって、温水が筐体内へ流入し始めるときに、プッシャ37により、穿孔要素43がカバー4の下側へと下方にスライドし、それにより、カプセルのカバーの最下部の近傍で飲料出口41が開口する。このようにして、浸出液体を、筐体20からオーバーフロー開口25を通じて飲料ガイド手段に沿って排出することができ、飲料出口41を通じて最終的にカプセルから出すことができる。この特定の実施形態では、カプセルハンドリング手段の閉めている最中および閉め終わるあたりで機械プッシャ37が作動していることが理解されるであろう。
【0048】
オーバーフロー開口25から出てくる飲料は、その後、それが穿孔要素43の下部に達するまで案内された後、(図2に示されるように)カップ内へと真直ぐに落ちる。
【0049】
飲料装置のユーザが使用済みのカプセルを除去したい場合、ユーザはレバーアーム59を引き上げる。レバーアームを引き上げると、機械プッシャ37が解放され、機械プッシャがスプリング53によってその休止位置へと戻される(図3D)。しかしながら、浸出段階(図3C)からカプセル挿入段階(図3E)への移行は、閉塞動作の単なる逆ではない。実際には、可動部品がフロントプレート51から分離するとき、注入部材38は、引っ込まず、その突出位置のままである。これは、注入部材38とシェル21の穴の周面との間に存在する摩擦に起因する。したがって、注入部材は、可動部品の中空開口63内にカプセルを保持することができる。そのため、可動部品61は、フロントプレート51から分離するときにカプセル2を伴う。
【0050】
ユーザが徐々にレバーアーム59を上方へ回動させると、可動部品61が次第に水平面に対して回転される。更に、図3Dに示される段階から図3Eに示される段階への最終的な移行中に、ようやく、注入部材38がその突出位置から引っ込む。注入部材との摩擦係合によってこれまで保持されていたカプセル2は、傾けられた可動部品から外れる。したがって、カプセルは、飲料浸出装置の下側に配置された廃棄物容器(図示せず)内へ落ちる。
【0051】
なお、他の実施形態によれば、注入部材38がその突出位置に永久的に保持されるように、注入部材を可動部品61に対して強固に固定することができることに注目されたい。この実施形態によれば、レバーアームが引き上げられると、可動部品61の傾動(図3E)により、カプセルが注入部材38および中空開口63の両方から外れる。
【0052】
添付の請求項によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書本文に記載される実施形態に対して様々な変更及び/又は適合を成すことができることは言うまでもない。
【0053】
筐体の「全高」とは、浸出動作できる状態にある飲料生成機内にカプセルが位置されるときの筐体の最下点から筐体の最上点までの距離全体のことである。フィルタ手段を筐体の全高に略等しく延在させるという形態があり得る。
【0054】
なお、「直接的な流れ」は、浸出された液体が容器6(図2)(例えば、カップ、マグカップなど)に直接入れられるときに得られる。「直接的な流れ」とは、浸出された液体が出口41から出るときにその液体が常設の装置や部品にぶつからないように、浸出装置に対して出口41が配置されていることを意味する。すなわち、出口は、浸出された液体がでるときに、これらの部材と悪影響のある接触しないように、十分に低くかつカプセルハンドリング手段から横方向に離れて配置される。
【符号の説明】
【0055】
2…カプセル、3…オーバーフロー壁、4…カバー、6…容器、10…浸出装置、20…筐体、21…シェル、22…スタッド、23…肩部、24…外周リム、25…オーバーフロー開口、32…給水源、33…送水ポンプ、34…ヒータ、35…温水注入ライン、36…背圧弁、37…機械プッシャ、38…注入部材、41…飲料出口、43…穿孔要素、44…肩部、51…フロントプレート、53…スプリング、54…ロッド、55…垂直スロット、57…水平ストッパ、59…レバーアーム、61…可動部品、63…中空開口、92…穿刺尖端部、100…針、102…円筒体、103…周壁、104…円錐先端部、106…拡径部、108…チャンネル、110…入口開口、112、116…側孔、114、118…出口開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル(2)内に収容される原料に基づいて飲料を浸出するようになっている浸出装置(10)を備える飲料生成機であって、
前記浸出装置(10)が、
前記カプセル(2)を所定の位置に保持するための手段(63,51)と、
前記カプセルが前記所定の位置に保持されている間に温水を前記カプセル内へ注入するための注入手段(38)と
を備え、
前記注入手段(38)が、温水を案内するための内部軸方向チャンネル(108)を有する穿刺部材(100)を備え、
前記穿刺部材(100)が前記カプセル(2)のシェルを貫挿している間、前記内部軸方向チャンネル(108)が略水平方向を向いている、飲料生成機において、
前記注入手段(38)は、前記カプセル(2)が前記所定の位置に保持されている間、温水を前記カプセル(2)の最下部へと下方に向ける少なくとも1つの出口開口(114,118)を備えることを特徴とする、飲料生成機。
【請求項2】
前記カプセル(2)を保持するための前記手段(63,51)が、前記カプセルを垂直方向に保持するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の飲料生成機。
【請求項3】
前記内部軸方向チャンネル(108)が、少なくとも1つの側面出口開口(114,118)へと通じていることを特徴とする、請求項1または2に記載の飲料生成機。
【請求項4】
前記穿刺部材(100)が、円筒体(102)と円錐先端部(104)とを有する針であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の飲料生成機。
【請求項5】
前記少なくとも1つの出口開口(114,118)が、前記注入手段(38)の先端に近いことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の飲料生成機。
【請求項6】
前記穿刺部材(100)の前記内部チャンネル(108)が、2つの側面出口開口(114,118)へ通じていることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか一項に記載の飲料生成機。
【請求項7】
前記2つの側面出口開口(114,118)が孔であり、前記孔のそれぞれの軸(X1,X2)が前記穿刺部材(100)の前記内部軸方向チャンネル(108)の軸(X)に対して垂直であり、2つの側孔(112,116)の軸(X1,X2)が前記穿刺部材(100)の内部軸方向チャンネル(108)の軸(X)に対して垂直な共通の面内に位置することを特徴とする、請求項6に記載の飲料生成機。
【請求項8】
前記2つの側面出口開口(114,118)が、前記穿刺部材の周囲回りに120°だけ互いに離間していることを特徴とする、請求項6または7に記載の飲料生成機。
【請求項9】
前記カプセルが前記所定の位置に保持され、かつ前記穿刺部材(100)が前記カプセル(2)のシェルを貫挿している間、前記2つの側面出口開口(114,118)のそれぞれが鉛直線に対して60°の角度で下方へ向けられることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の飲料生成機。
【請求項10】
前記注入手段(38)の前記穿刺部材(100)は、前記カプセル(2)が前記所定の位置に保持される間に前記カプセルのシェルをその中心位置で穿孔するように設けられていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の飲料生成機。
【請求項11】
前記注入手段(38)の前記穿刺部材(100)およびカプセル(2)を保持するための前記手段は、相対的に水平方向に移動して前記カプセル(2)のシェルを穿孔するように構成されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の飲料生成機。
【請求項12】
浸出装置(10)を備える飲料生成機によってカプセル(2)内に収容された原料を浸出するための方法であって、
前記浸出装置が、
前記カプセル(2)が垂直方向に位置される所定の位置に前記カプセルを保持するための手段(63,51)と、
前記カプセルが前記所定の位置に保持されている間に温水をカプセル内へ注入するための注入手段(38)と、
を備える方法において、
前記温水を、まず水平方向に沿って前記注入手段(38)に注入した後、前記カプセル(2)の最下部へと下方に向けられた2つの噴射の形態でカプセル内へ注入し、
前記噴射が前記カプセルの垂直軸に対して対称であることを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記2つの噴射が2つの渦を形成する方向に向けられていることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記2つの噴射が鉛直線に対して60°の角度で下方へ向けられることを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−165833(P2009−165833A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−5921(P2009−5921)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】