説明

飲料用プラスチック容器及びそれを用いた飲料製品

【課題】本発明の目的は、非炭酸系飲料充填用の飲料用プラスチック容器において、縦圧縮荷重がかかったときに、容器の曲がりを防ぎつつ、かつ、容器の底部における座屈などの底変形を少なくすることである。
【解決手段】本発明に係る飲料用プラスチック容器は、延伸成形されてなる非炭酸系飲料充填用の飲料用プラスチック容器において、容器底部5aの中央部が容器内方向に凹んだ中央凹入部51と、中央凹入部を取り囲み、かつ、容器底部の周縁52に沿って環状に設けた接地面53と、接地面に、接地面の環状に沿って配置した、容器内方向に凹んでなる複数の小凹部と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お茶、水、果汁飲料、スポーツドリンクなど、非炭酸系飲料の容器として用いられる飲料用プラスチック容器に関し、特に縦圧縮荷重がかかったときに、ボトル曲がり(容器に縦圧縮荷重がかかったときに、無荷重時の容器主軸を基準として容器主軸が横に傾く変形をいう。)が少なく、容器の底部における座屈などの底変形の少ない飲料用プラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
お茶、水、果汁飲料、スポーツドリンクなど、非炭酸系飲料の容器として用いられる飲料用プラスチック容器としては、PETボトル(ポリエチレンテレフタレート樹脂製ボトル)が多用されている。
【0003】
従来、PETボトルに内容物をホット充填する場合に、容器の底部が延伸されていないために高温の内容物により加熱されて熱収縮が生じる問題、又は、内容物の自重で容器の外側へ熱変形し、内容量の変化が生じるという問題が指摘されていた。
【0004】
これらの問題に対処するために、容器の底を内方に窪ませた門入部を設け、その門入部に略球状のリブを複数放射状に配置する技術が開示されている(例えば、特許文献1又は2を参照。)。
【0005】
また、底部に周縁環状突出部とその内側に凹部を設けた容器において、凹部の下の空間と周縁環状突出部の外側の空間とを連通する溝部を形成する技術がある(例えば特許文献3を参照。)。特許文献3の技術において、溝部は周縁環状突出部を横切る形状をなしているが、それを形成する目的はホット充填時において凹部の下の空間に溜まりやすい加熱膨張空気が容易に逸出するようにするためである。この結果、リフター上での容器のすべりが起こり難くなるということである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7‐112729号公報
【特許文献2】実開平1‐107510号公報
【特許文献3】実開昭58‐67717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、飲料用プラスチック容器は、環境面及びコスト面から軽量化・薄肉化の要請が強い。その一方で、飲料用プラスチック容器は数本〜数十本単位で段ボール箱に入れられて輸送・保管されるが、このとき段ボール箱は段積みされるため、飲料用プラスチック容器には縦圧縮荷重がかかる。縦圧縮荷重がかかったときに、ボトル曲がりが少なく、容器の底部における座屈などの底変形の少ない飲料用プラスチック容器が望まれる。
【0008】
引用文献1及び2は、いずれも、ホット充填時の内容物から受ける熱による熱収縮又は熱変形を予防するために、底中央の凹部に球状リブを更に設けて、該凹部の強度向上を図るという技術である。また、引用文献3は、周縁環状突出部にリブ様の溝部を設けるが、底中央に設けた容器内方に窪む凹部に溜まりやすい加熱膨張空気を逃がす技術である。したがって、引用文献1〜3はいずれも、縦圧縮荷重がかかったときに、ボトル曲がりを少なくし、容器の底部における座屈などの底変形を予防するための技術ではない。ここで、倉庫などにおける荷積みや物流における積載などにおいて容器の底部が一旦座屈すると、容器に座屈変形跡が残り、美観上の商品価値を低下させてしまう。
【0009】
特に、非炭酸系飲料を充填した容器は、内圧が減圧若しくは常圧であるため、高い内圧にて充填されている炭酸系飲料製品と比較して、容器の底がより一層高い座屈強度を有することが望まれる。さらに、1〜2リットルの大容量プラスチック容器、例えば1.5リットル又は2リットルの大容量の飲料用プラスチック容器は、冷蔵庫等における収納性を考慮して角型(水平断面形状が隅を落とした矩形であることが多い。)が採用されているが、このような角型容器においても、座屈強度を有することが望まれる。
【0010】
また、容器の胴部の下方に水平方向に周回する溝状のリブを設けることで、底の変形を阻止する技術もあるが、縦圧縮荷重がかかったときに溝状のリブを起点として容器が曲がりやすいという問題がある。
【0011】
そこで本発明の目的は、非炭酸系飲料充填用の飲料用プラスチック容器において、縦圧縮荷重がかかったときに、容器の曲がりを防ぎつつ、かつ、容器の底部における座屈などの底変形を少なくすることである。また、この容器を用いて、美観上の商品価値の低下が起こりにくい非炭酸系飲料製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、容器底部の接地面に、該接地面の環状に沿って、容器内方向に凹んでなる複数の小凹部を配置することで、前記課題が達成できることを見出し、本発明を完成させた。本発明に係る飲料用プラスチック容器は、延伸成形されてなる非炭酸系飲料充填用の飲料用プラスチック容器において、容器底部の中央部が容器内方向に凹んだ中央凹入部と、該中央凹入部を取り囲み、かつ、容器底部の周縁に沿って環状に設けた接地面と、前記接地面に、該接地面の環状に沿って配置した、容器内方向に凹んでなる複数の小凹部と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る飲料用プラスチック容器では、前記小凹部の径は、前記接地面の幅よりも小さいことが好ましい。小凹部が接地面の強度を向上させる。また、縦圧縮荷重を主として受け止める箇所が、接地面の縁と小凹部の縁の両方となるため、応力の分散が図れる。
【0014】
本発明に係る飲料用プラスチック容器では、前記小凹部の縁形状は円形であり、かつ、隣り合う小凹部の中心間距離をDとし、小凹部の半径をrとしたとき(数1)の関係を満たすことが好ましい。
(数1)2r<D≦30r
隣り合う小凹部の縁が重なることがなく、小凹部による効果が十分に発揮される。
【0015】
本発明に係る飲料用プラスチック容器は、内容量が1〜2リットルの大型・角型容器である形態を包含する。内容量が1〜2リットルの大型・角型容器では、底部の接地面も環状の角形となり、この角形の隅部に縦圧縮荷重による応力が集中しやすくなるが、この厳しい条件下においても底変形を少なくすることができる。
【0016】
本発明に係る飲料用プラスチック容器では、容器底部の中央を中心とする放射状方向に、前記接地面を横断するリブを複数本設け、該リブの間に前記小凹部を1個ずつ配置したことが好ましい。放射状方向の溝状のリブによる底の補強と小凹部による底の補強とがバランスよく行われる。
【0017】
本発明に係る飲料製品は、本発明に係る飲料用プラスチック容器に非炭酸系飲料が充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、非炭酸系飲料充填用の飲料用プラスチック容器において、縦圧縮荷重がかかったときに、容器の曲がりを防ぎつつ、かつ、容器の底部における座屈などの底変形を少なくすることができる。また、この容器にて非炭酸系飲料製品を提供することができ、このとき物流・保管時における容器変形が抑制され、消費者に着くまでに製品外観を損ねることが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る角型飲料用プラスチック容器の第1形態を示す概観図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は平面図を示す。
【図2】図1に示した容器の斜視図である。
【図3】本実施形態に係る飲料用プラスチック容器の底部を説明する為の概略図であり、(a)は底部正面図、(b)は右側面図、(C)は底面図、を示す。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図1に示した容器の底部の概略図であり、(a)は底面正面図、(b)は底部の斜視図である。
【図6】小凹部の配列の別形態を示す概略図であり、(a)は接地面の環状に沿って二列に配列する形態、(b)接地面の環状に沿って千鳥様に配列する形態、を示す。
【図7】小凹部の配置の別形態を示す底部の斜視図である。
【図8】小凹部の配置の別形態を示す底部の斜視図である。
【図9】小凹部及びリブの配置の別形態を示す底部の斜視図である。
【図10】カートン単体でのボトル曲がりの評価の結果を示すグラフである。
【図11】パレット段積みのときの評価の結果を示すグラフである。
【図12】比較例1の容器の底部の概略図であり、(a)は底面正面図、(b)は底部の斜視図である。
【図13】比較例2の容器の底部の概略図であり、(a)は底面正面図、(b)は底部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。次に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、次の実施の形態に制限されるものではない。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
【0021】
図1は、本実施形態に係る飲料用プラスチック容器の第1形態を示す概観図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は平面図を示す。図2は、図1に示した容器の斜視図である。図1及び図2に示した本実施形態に係る飲料用プラスチック容器100は、上から順に口部1、肩部2、ラベル部3、胴部4及び底部5を有し、かつ、胴部4が、長辺壁6と、短辺壁7と、長辺壁6と短辺壁7とをつなぐ隅壁8とを有する非炭酸系飲料充填用の飲料用プラスチック容器である。まず、容器全体の形状について説明する。
【0022】
口部1は中身の飲料を注ぎやすいように通常、1.5〜4cmの直径で形成されており、また肩部2は、胴径の大きいラベル部3につながるようにラベル部に向かって胴径を拡径させて錐体形状をしている。なお、図1及び図2に示した容器の肩部2は複数のカット面から形成されているが、曲面で形成してもよい。ラベル部3はその外側にシュリンクラベル又はロールラベル等の商品表示ラベルが装着される。そして、ラベル部3は、水平方向に周回する環状リブ27を有している。また、ラベル部3は把持用エンボスを兼ねた減圧吸収部28を有している。胴部4は、主として消費者に把持される箇所であり、ラベル部3とほぼ同様の胴径が与えられるか、或いは、ラベルのこすれを防止するためにラベル部3よりも長辺、短辺共に1mm程度大きい胴径が与えられる。そして、胴部4は、把持用エンボス部15と横波状のリブ9と水平方向に周回する環状リブ26とを有している。把持用エンボス部15は、胴部4の上端部の長辺壁6の中央に設けることが好ましい。把持用エンボス部15の深さは、例えば、8〜18mmとする。底部5は、縦リブ29が複数設けられて強度を向上させており、自立型を実現している。環状リブ26,27は、隅壁8では浅い溝状のリブであり、長辺壁6及び短辺壁7ではそれよりも深い溝状のリブである。具体的には、環状リブ26,27は、隅壁8では断面U文字状のリブであり、長辺壁6及び短辺壁7では断面V文字状のリブとしている。そして、断面V文字状のリブは、壁面8におけるリブ底面よりも更に深くなるようにした2段リブとしている。
【0023】
飲料用プラスチック容器は、ブロー成形、好ましくは2軸延伸ブロー成形によって得られる。飲料用プラスチック容器の材質は、PET樹脂が好ましいが、必要に応じて他の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0024】
本実施形態に係る飲料用プラスチック容器は、底が円形の丸型容器である形態を除外しないが、内容量が1〜2リットルの大型・角型容器である形態が好適である。特に座屈強度が要求される容量1.5〜2リットルの容器である形態が好適である。角型であるため、図1及び図2に示すように長辺壁6と短辺壁7と隅壁8とからなる。なお、長辺壁6の長辺と短辺壁7の短辺とが同じ長さである形状、すなわち断面がほぼ正方形の角型であってもよい。内容量が1〜2リットルの大型・角型容器では、底部の接地面も環状の角形となり、この角形の隅部に縦圧縮荷重による応力が集中しやすくなるが、この厳しい条件下においても底変形を少なくすることができる。また、図1及び図2の飲料用プラスチック容器100に示すように、隅壁8は、水平断面が円弧状又は楕円弧状のR面とし、かつ、長辺壁と隅壁との境界24b及び短辺壁及び隅壁との境界24aが屈曲部ではなく曲面上にある形状とすることが好ましい。また、隅壁の角が面取りされ、かつ、長辺壁と隅壁との境界及び短辺壁及び隅壁との境界が屈曲部ではなく曲面上にある形状としてもよい(不図示)。隅壁を角が面取りされた形状とすることでカット調の外観を持たせることができる。隅壁では、縦圧縮荷重を支える柱部の構造としつつも水平に周回する環状のリブがあることで弾性変形させることができる。
【0025】
本実施形態に係る飲料用プラスチック容器の具体的寸法は、例えば、プラスチック容器の高さが200〜370mm、矩形で外挿した胴径、つまり長辺壁と短辺壁の接線で囲まれる矩形で近似した胴径が(60〜120)×(60〜100)mm、胴部肉厚が0.10〜0.30mmである。無菌充填用のボトルの場合、胴部肉厚は0.10〜0.30mmとすることが好ましい。また、ホット充填用の容器とすることも可能であり、この場合、胴部肉厚は0.20〜0.50mmとすることが好ましい。本発明は、肉厚を薄くすることが求められる無菌充填用のボトルとして、胴部肉厚が0.10〜0.30mmである場合に好適である。なお、1リットル未満の容量のプラスチック容器についても、前記寸法のプラスチック容器を基準として相似形状を維持しながら小型化させることで対応できる。
【0026】
次に底部5について詳細に説明する。図3は本実施形態に係る飲料用プラスチック容器の底部を説明する為の概略図であり、(a)は底部正面図、(b)は右側面図、(C)は底面図、を示す。図4は、図3のA−A断面図である。図5は、図1に示した容器の底部の概略図であり、(a)は底面正面図、(b)は底部の斜視図である。図3、図4及び図5に示すように、本実施形態に係る飲料用プラスチック容器100は、延伸成形されてなる非炭酸系飲料充填用の飲料用プラスチック容器において、底部5の底面である容器底部5aの中央部が容器内方向に凹んだ中央凹入部51と、中央凹入部51を取り囲み、かつ、容器底部5aの周縁52に沿って環状に設けた接地面53と、接地面53に、接地面53の環状に沿って配置した、容器内方向に凹んでなる複数の小凹部54と、を有する。
【0027】
中央凹入部51は、特許文献1又は2で指摘されているように、底部5において延伸がかかり難いため、強度向上を目的として容器底部5aの中央部を容器内方向に凹ませている。中央凹入部51を設けたために、接地面53は、中央凹入部51を取り囲み、かつ、容器底部5aの周縁52に沿って環状となる。
【0028】
小凹部54は、容器内方向に凹んでなる。容器内方向に凹むことで、接地面53が床と当接することとなる。小凹部54の縁の形状は、円形又は楕円形が好ましい。小凹部54の直径(円形の場合)又は長径(楕円形の場合)(以降、単に「径」という。)は、円形である場合、例えば2.0〜10.0mm、好ましくは4.5〜6.0mmとし、楕円形である場合、例えば2.0〜10.0mm、好ましくは4.5〜6.0mmとする。小凹部54の径が2.0mm未満であると、小凹部54を接地面53に設けたことによる底変形抑制効果が少なくなる場合があり、小凹部54の径が10.0mmを超えると、接地面53の面積が小さくなり、応力が特定箇所に集中しやすくなる場合がある。そして、小凹部54の径は、接地面53の幅よりも小さいことが好ましい。小凹部54の径を接地面53の幅よりも小さくすることによって、接地面53の縁と小凹部54の縁とが重なることが無いように離して配置することができるため、小凹部が接地面の強度を向上させやすい。また、縦圧縮荷重を主として受け止める箇所が、接地面の縁と小凹部の縁の両方となるため、応力の分散が図れる。小凹部54の深さは例えば1.0〜4.0mm、好ましくは1.5〜2.5mmとする。小凹部54の深さが1.0mm未満であると、小凹部54を接地面53に設けたことによる底変形抑制効果が少なくなる場合があり、小凹部54の深さが4.0mmを超えると、成形が難しくなる場合がある。
【0029】
接地面53には小凹部54を複数個配置するが、その配列のパターンとしては、例えば、図3に示すように、接地面53の環状に沿って一列に配列する形態がある。図6は、小凹部の配列の別形態を示す概略図であり、(a)は接地面の環状に沿って二列に配列する形態、(b)接地面の環状に沿って千鳥様に配列する形態、を示す。本実施形態に係る飲料用プラスチック容器は、図6(a)に示すように小凹部54の配列のパターンとして接地面53の環状に沿って二列に配列する形態、又は、図6(b)に示すように小凹部54の配列のパターンとして接地面53の環状に沿って千鳥様に配列する形態としてもよい。
【0030】
隣り合う小凹部54同士は、それらの縁が接しておらず、独立していることが好ましい。さらに、小凹部54の縁形状は円形であり、かつ、隣り合う小凹部の中心間距離をDとし、小凹部の半径をrとしたとき(数1)の関係を満たすことが好ましい。
(数1)2r<D≦30r
2r<Dを満たせば、小凹部54同士の縁が接しない。Dが30rを超えると、飲料用プラスチック容器が角型であれば、容器底部5aの四隅に小凹部54を少なくとも1つずつの配置することが難しくなる。数1を満たすことで、隣り合う小凹部の縁が重なることがなく、小凹部による効果が十分に発揮される。
【0031】
図3に示すように、容器底部5aの中央5bを中心とする放射状方向に、接地面53を横断する溝状のリブ55を複数本設けてもよい。リブ55は、中央凹入部51が容器の内方向に更に窪むような力が働いた場合、又は、内圧が高まって外方向へ飛び出すような力が働いた場合、容器底部5aが変形することを抑制する。リブ55は、強度向上を目的に設けるため、断面V文字形状としてリブ深さを深くすることが好ましい。リブ55の幅は、例えば、2.0〜12.0mm、好ましくは5.0〜9.0mm、リブ55の深さは、例えば、2.0〜5.0mm、好ましくは2.5〜3.5mmとする。リブ55は接地面53を横断し、図3(b)及び(c)に示すように、リブの末端は、縦リブ29を形成していることが好ましい。
【0032】
図3では、長辺壁6側と短辺壁7側においてリブ55の間にそれぞれ小凹部54を4個配置し、隅壁8側においてリブ55の間にそれぞれ小凹部54を2個配置した形態を示した。本実施形態に係る飲料用プラスチック容器では、この配置に限定されず、小凹部54の配置数が異なる形態としてもよい。例えば、図7に示した長辺壁側と短辺壁側においてリブの間にそれぞれ小凹部を2個配置し、隅壁側においてリブの間にそれぞれ小凹部を1個配置した形態、及び、図8に示した長辺壁側と短辺壁側においてリブの間にそれぞれ小凹部を3個配置し、隅壁側においてリブの間にそれぞれ小凹部を1個配置した形態、がある。小凹部の配置数を変更することで、(数1)のDを変更することができる。四隅には縦圧縮荷重がかかったときに底を変形させる力がかかり易いため、図3、図7及び図8に示すように、隅壁8側の四隅には小凹部53を必ず配置することが好ましい。
【0033】
図9は、小凹部及びリブの配置の別形態を示す底部の斜視図である。本実施形態に係る飲料用プラスチック容器では、図9に示すように、容器底部5aの中央5bを中心とする放射状方向に、接地面53を横断するリブ58を複数本設け、リブ58の間に小凹部54を1個ずつ配置したことが好ましい。より具体的には、リブ58として、長リブ56と短リブ57を設け、長リブ56と短リブ57とを接地面53の環状方向Sに沿って交互に配置し、長リブ56と短リブ57との間に小凹部54を1個ずつ配置する。長リブ56の深さは短リブ57の深さよりも深くすることが好ましい。図9に示す底部の形態とすることで、放射状方向の溝状のリブによる底の補強と小凹部による底の補強とがバランスよく行われる。
【0034】
本実施形態に係る角型飲料用プラスチック容器は、非炭酸系飲料が充填されている製品特に容量1〜2リットル、さらには容量1.5〜2リットル用として好適に使用される。
【実施例】
【0035】
次に、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されない。
【0036】
(実施例1)
実施例1として図3に示した底部を有する容器(2リットル)を使用した。すなわち、容器高さを307mm、胴径90×103mm、胴部肉厚0.21mm(場所により0.10〜0.30mmと肉厚分布があり、平均的な厚さが0.21mmである)とした。8本のリブ55の幅は9.0mm、深さ(V文字溝)を3.5mmとした。小凹部54は縁の形状を円形状とし、その径は5.0mm、深さは2.3mmとした。容器のPET樹脂使用量は42gとした。この容器に2リットルの水を無菌充填で入れて蓋をして密封した。
【0037】
(ボトル曲がりの評価)
次に、市場に流通している段ボール箱(2リットル、6本収納用箱)に前記水入りの容器を6本入れ、重さ160kgの重り(パレット2段積み相当)を当該段ボール箱の上に載せ30℃、80%RHで5日間保管した。その後、段ボール箱から水入りの容器を取り出し、ダイヤルゲージにてボトルの傾きを測定した。ボトルの傾き具合は、容器底面から高さ300mmのところにおけるズレ量を測定した。このとき、n=12本とした。結果を図10に示す。
【0038】
(パレット段積みのときの評価)
市場に流通している段ボール箱(2リットル、6本収納用箱)に水入りの容器を入れ、箱を4段積み(一段ごとに交互に積む、パレット2段積みの状態)し、30℃・80%RH、1週間保管した後、段ボール箱から水入りの容器を取り出し、CCDカメラでボトルを観察し、最下段の箱に入れられたボトル(n=90本)についてボトルの傾き具合を観察した。ボトルの傾き具合は、容器底面から高さ307mmのところにおけるズレ量を測定した。結果を図11に示す。
【0039】
(比較例1)
比較例1として、図3に示した底部を有する容器(2リットル)において、小凹部を設けていない以外は同じ形状の容器を使用し、2リットルの水を無菌充填で入れて蓋をして密封した。図12は、比較例1の容器の底部の概略図であり、(a)は底面正面図、(b)fは底部の斜視図である。
【0040】
実施例1と同様に、ボトル曲がりの評価及びパレット段積みのときの評価を行った。結果をそれぞれ図10、図11に示す。
【0041】
(比較例2)
比較例2として、図3に示した底部を有する容器(2リットル)において、小凹部を設ける代わりに、接地面に、接地面の環状に沿って設けた環状の断面V文字型リブを設けた以外は同じ形状の容器を使用し、2リットルの水を無菌充填で入れて蓋をして密封した。図13は、比較例2の容器の底部の概略図であり、(a)は底面正面図、(b)は底部の斜視図である。
【0042】
実施例1と同様に、ボトル曲がりの評価を行った。結果を図10に示す。
【0043】
図10のグラフによれば、実施例1は、底変形が抑制され、比較例1及び比較例2よりも、ボトル曲がりが軽減されていることを確認できた。図11のグラフによれば、パレット段積みにおいても、実施例1は、底変形が抑制され、比較例1よりも、ボトル曲がりが軽減されていることを確認できた。
【符号の説明】
【0044】
100 飲料用プラスチック容器
1 口部
2 肩部
3 ラベル部
4 胴部
5 底部
5a 容器底部
5b 容器底部の中央
6 長辺壁
7 短辺壁
8 隅壁
9 横波状のリブ
15 把持用エンボス部
24a 短辺壁及び隅壁との境界
24b 長辺壁と隅壁との境界
26,27 環状リブ
28減圧吸収部
29 縦リブ
51中央凹入部
52容器底部の周縁
53 接地面
54 小凹部
55,58 リブ
56 長リブ
57 短リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸成形されてなる非炭酸系飲料充填用の飲料用プラスチック容器において、
容器底部の中央部が容器内方向に凹んだ中央凹入部と、
該中央凹入部を取り囲み、かつ、容器底部の周縁に沿って環状に設けた接地面と、
前記接地面に、該接地面の環状に沿って配置した、容器内方向に凹んでなる複数の小凹部と、
を有することを特徴とする飲料用プラスチック容器。
【請求項2】
前記小凹部の径は、前記接地面の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の飲料用プラスチック容器。
【請求項3】
前記小凹部の縁形状は円形であり、かつ、隣り合う小凹部の中心間距離をDとし、小凹部の半径をrとしたとき(数1)の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の飲料用プラスチック容器。
(数1)2r<D≦30r
【請求項4】
内容量が1〜2リットルの大型・角型容器であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の飲料用プラスチック容器。
【請求項5】
容器底部の中央を中心とする放射状方向に、前記接地面を横断するリブを複数本設け、該リブの間に前記小凹部を1個ずつ配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の飲料用プラスチック容器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の飲料用プラスチック容器に非炭酸系飲料が充填されていることを特徴とする飲料製品。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−116429(P2011−116429A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277209(P2009−277209)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】